(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
アルミナまたはシリカまたはシリカ−アルミナをベースとする担体と、第VIII族の少なくとも1種の元素と、第VIB族の少なくとも1種の元素と、γ−バレロラクトン、4−ヒドロキシ吉草酸、2−ペンテン酸、3−ペンテン酸または4−ペンテン酸から選択される少なくとも1種の添加物と、リンとを含み、リン含有率は、触媒の全重量に対するP2O5として表される重量で0.1〜20%であり、触媒中のリン対第VIB族の元素の比は0.05以上である、水素化処理用触媒。
第VIB族の元素の含有率は、触媒の全重量に対する第VIB族の金属の酸化物として表される重量で5〜40%であり、第VIII族の元素の含有率は、触媒の全重量に対する第VIII族の金属の酸化物として表される重量で1〜10%である、請求項1に記載の触媒。
γ−バレロラクトン、4−ヒドロキシ吉草酸、2−ペンテン酸、3−ペンテン酸または4−ペンテン酸から選択される添加物(1種または複数種)の全含有率は、触媒の全重量に対して1〜35重量%である、請求項1〜4のいずれか1つに記載の触媒。
γ−バレロラクトン、4−ヒドロキシ吉草酸、2−ペンテン酸、3−ペンテン酸または4−ペンテン酸から選択される添加物以外の有機化合物をさらに含有し、前記有機化合物は、酸素および/または窒素および/または硫黄を含有する、請求項1〜5のいずれか1つに記載の触媒。
有機化合物は、カルボキシ、アルコール、チオール、チオエーテル、スルホン、スルホキシド、エーテル、アルデヒド、ケトン、エステル、カルボナート、アミン、ニトリル、イミド、オキシム、ウレアおよびアミドの官能基から選択される1個以上の化学官能基を含む化合物から選択される、請求項6に記載の触媒。
有機化合物は、トリエチレングリコール、ジエチレングリコール、エチレンジアミンテトラ酢酸、マレイン酸、クエン酸、ジメチルホルムアミド、ビシン、またはトリシンから選択される、請求項7に記載の触媒。
γ−バレロラクトン、4−ヒドロキシ吉草酸、2−ペンテン酸、3−ペンテン酸または4−ペンテン酸から選択される添加物(1種または複数種)対第VIII族の元素(1種または複数種)の全モル比は、0.1〜5.0mol/molである、請求項11〜16のいずれか1つに記載の方法。
炭化水素含有留分の水素化処理および/または水素化分解のための方法における、請求項1〜10のいずれか1つに記載の触媒または請求項10〜17のいずれか1つにより調製された触媒の使用。
【発明を実施するための形態】
【0038】
(発明の詳細な説明)
(触媒)
本発明による触媒は、γ−バレロラクトン、4−ヒドロキシ吉草酸、2−ペンテン酸、3−ペンテン酸または4−ペンテン酸から選択される少なくとも1種の添加物を含有する添加触媒である。より特定的には、本発明による触媒は、アルミナまたはシリカまたはシリカ−アルミナをベースとする担体と、第VIII族の少なくとも1種の元素と、第VIB族の少なくとも1種の元素と、γ−バレロラクトン、4−ヒドロキシ吉草酸、2−ペンテン酸、3−ペンテン酸または4−ペンテン酸から選択される少なくとも1種の添加物とを含む。
【0039】
本発明による触媒は、新鮮な触媒、すなわち、触媒装置において、特に、水素化処理および/または水素化分解において触媒として前もって用いられていない触媒であってよい。
【0040】
本発明による触媒は、再活触媒であってもよい。再活触媒(rejuvenated catalyst)とは、触媒装置において特に水素化処理および/または水素化分解において触媒として用いられ、かつ、コークを焼き払うために少なくとも1回の焼成の工程(再生)を経た触媒を意味する。次いで、γ−バレロラクトン、4−ヒドロキシ吉草酸、2−ペンテン酸、3−ペンテン酸または4−ペンテン酸から選択される少なくとも1種の添加物は、この再生触媒に加えられて、再活触媒が得られる。この再活触媒は、1種以上の他の有機添加物を含有してよく、この有機添加物は、γ−バレロラクトン、4−ヒドロキシ吉草酸、2−ペンテン酸、3−ペンテン酸または4−ペンテン酸から選択される1種または複数種の添加物の前、その後またはそれと同時に加えられてよい。
【0041】
活性相とも呼ばれる前記触媒の水素化機能基は、第VIB族の少なくとも1種の元素および第VIII族の少なくとも1種の元素によって保証される。
【0042】
第VIB族の好ましい元素は、モリブデンおよびタングステンである。第VIII族の好ましい元素は、非貴金属元素、特に、コバルトおよびニッケルである。有利には、水素化機能基は、コバルト−モリブデン、ニッケル−モリブデン、ニッケル−タングステンまたはニッケル−コバルト−モリブデン、またはニッケル−モリブデン−タングステンの元素の組合せを含む群から選択される。
【0043】
水素化脱硫、または水素化脱窒および芳香族化合物の水素化において高い活性が望まれる場合、水素化機能基は、有利には、ニッケルおよびモリブデンの組合せによって提供される;モリブデンの存在下のニッケルおよびタングステンの組合せも有利であってよい。真空蒸留物タイプの供給原料またはより重質な供給原料の場合、コバルト−ニッケル−モリブデンのタイプの組合せが有利には用いられてよい。
【0044】
第VIB族および第VIII族の元素の全含有率は、有利には、触媒の全重量に対する酸化物として表される重量で6%より高い。
【0045】
第VIB族の元素の含有率は、触媒の全重量に対する第VIB族の金属の酸化物として表される重量で5〜40%、好ましくは8〜35重量%、より好ましくは10〜30重量%である。
【0046】
第VIII族の元素の含有率は、触媒の全重量に対する第VIII族の金属の酸化物として表される重量で1〜10%、好ましくは1.5〜9重量%、より好ましくは2〜8重量%である。
【0047】
触媒中の第VIII族の元素対第VIB族の元素のモル比は、好ましくは0.1〜0.8、好ましくは0.15〜0.6、一層より好ましくは0.2〜0.5である。
【0048】
本発明による触媒は、有利には、ドーパントとしてリンも含む。ドーパントは、添加される元素であって、それ自体は、あらゆる触媒特性を有していないが、活性相の触媒活性を増加させる、元素である。
【0049】
前記触媒中のリン含有率は、好ましくはP
2O
5として表される重量で0.1〜20%、好ましくはP
2O
5として表される重量で0.2〜15%、非常に好ましくはP
2O
5として表される重量で0.3〜10%である。
【0050】
触媒中のリン対第VIB族の元素のモル比は、0.05以上、好ましくは0.07以上、好ましくは0.08〜1、好ましくは0.08〜0.7、非常に好ましくは0.08〜0.5である。
【0051】
本発明による触媒は、有利には、ホウ素と、フッ素と、ホウ素およびフッ素の混合物とから選択される少なくとも1種のドーパントをさらに含有してよい。
【0052】
触媒がホウ素を含有する場合、ホウ素含有率は、好ましくは酸化ホウ素として表される重量で0.1〜10%、好ましくは0.2〜7重量%、非常に好ましくは0.2〜5重量%である。
【0053】
触媒がフッ素を含有する場合、フッ素含有率は、好ましくはフッ素として表される重量で0.1〜10%、好ましくは0.2〜7重量%、非常に好ましくは0.2〜5重量%である。
【0054】
触媒がホウ素およびフッ素を含有する場合、ホウ素およびフッ素の全含有率は、好ましくは酸化ホウ素およびフッ素として表される重量で0.1〜10%、好ましくは0.2〜7重量%、非常に好ましくは0.2〜5重量%である。
【0055】
本発明による触媒は、アルミナまたはシリカまたはシリカ−アルミナをベースとする担体を含む。
【0056】
前記触媒の担体がアルミナをベースとする場合、それは、50%超のアルミナを含有し、一般的には、それは、アルミナのみまたは下記に定義されるようなシリカ−アルミナを含有する。
【0057】
好ましくは、担体は、アルミナを含み、好ましくは押し出されたアルミナである。好ましくは、アルミナは、ガンマアルミナである。
【0058】
アルミナ担体の全細孔容積は、有利には0.1〜1.5cm
3・g
−1、好ましくは0.4〜1.1cm
3・g
−1である。全細孔容積は、水銀ポロシメトリによって、規格ASTM D4284に従って、140°のぬれ角により、Rouquerol F.;Rouquerol J.;Singh Kによる著作「Adsorption by Powders & Porous Solids: Principle, methodology and applications」、Academic Press, 1999に記載されるようにして、例えば、商標Micromeritics(登録商標)を有するモデルAutopore III(登録商標)により測定される。
【0059】
アルミナ担体の比表面積は、有利には5〜400m
2・g
−1、好ましくは10〜350m
2・g
−1、より好ましくは40〜350m
2・g
−1である。比表面積は、本発明では、BET法によって規格ASTM D3663に従って決定される;この方法は、上記と同一の著作に記載されている。
【0060】
別の好ましい場合において、前記触媒の担体は、最低50重量%のアルミナを含有するシリカ−アルミナである。担体のシリカ含有率は、最高50重量%、ほとんどの場合45重量%以下、好ましくは40重量%以下である。
【0061】
ケイ素の源は、当業者に周知である。例として、ケイ酸、粉体の形態またはコロイド形態のシリカ(シリカゾル)、およびテトラエチルオルトシリカート(Si(OEt)
4)が挙げられてよい。
【0062】
前記触媒の担体がシリカをベースとしている場合、それは、50重量%超のシリカを含有し、一般的には、それは、シリカのみを含有する。
【0063】
特に好ましい変形性によると、担体は、アルミナ、シリカまたはシリカ−アルミナからなる。
【0064】
担体は、有利には、0.1〜50重量%のゼオライトをさらに含有してもよい。この場合、当業者に知られる全てのゼオライト源および全ての関連する調製方法が、組み入れられてよい。好ましくは、ゼオライトは、FAU、BEA、ISV、IWR、IWW、MEI、UWYの群から選択され、好ましくは、ゼオライトは、FAUおよびBEAの群から選択され、例えば、ゼオライトYおよび/またはベータである。
【0065】
所定の特定の場合において、担体は、第VIB
族および第VIII族の金属(1種または複数種)の少なくとも一部、および/またはリンを含むドーパント(1種または複数種)の少なくとも一部および/または酸素(γ−バレロラクトン、2−ヒドロキシ吉草酸、2−ペンテン酸、3−ペンテン酸または4ペンテン酸から選択される少なくとも1種の添加物または酸素を含有する別の添加物)および/または窒素および/または硫黄を含有する有機化合物(1種または複数種)の少なくとも一部であって、含浸の操作の外側で導入された(例えば、担体の調製の間に導入された)ものを含有してよい。
【0066】
担体は、有利には、ビーズ状、押出物状、ペレット状、または不規則な非球体凝集体状の形態であり、その特定の形態は、粉砕工程に由来してよい。
【0067】
本発明による触媒は、γ−バレロラクトン、4−ヒドロキシ吉草酸、2−ペンテン酸、3−ペンテン酸または4−ペンテン酸から選択される少なくとも1種の添加物も含む。γ−バレロラクトン、4−ヒドロキシ吉草酸および2−ペンテン酸、3−ペンテン酸および4−ペンテン酸は、それぞれ、以下の式(a)、(b)、(c)、(d)および(e)に対応する。
【0069】
2−ペンテン酸および3−ペンテン酸は、EまたはZの異性体またはこれら2種の異性体の混合物の形態であってよい。
【0070】
触媒上のγ−バレロラクトン、4−ヒドロキシ吉草酸、2−ペンテン酸、3−ペンテン酸または4−ペンテン酸から選択される少なくとも1種の添加物の存在により、添加物を有しない触媒および添加物を有する既知の乾燥済み触媒に対して高められた活性が与えられる。
【0071】
あらゆる理論に結び付けられることなく、4−ヒドロキシ吉草酸または2−ペンテン酸、3−ペンテン酸または4−ペンテン酸は、γ−バレロラクトンの加水分解によって直接的または間接的に得られてよいことが留意されるべきである。実際に、γ−バレロラクトンは、Raghunath V. Chaudhariによる、Top Catal (2012) 55:439-445における著作またはWilliam N. FishbeinおよびSamuel P. Bessmanによる、The Journal of Biological Chemistry, Vol. 241, No. 21, issue of November 10, pp. 4842-4847, 1966における著作において示唆されるような加水分解によって4−ヒドロキシ吉草酸を生じさせ得る。このものは、その後、酸媒体中で脱水されてよく(Langmuir, 2010, 26 (21), pp 16291-16298 by J.Q. Bond, D.M. Alonso, R.M. West, and J.A. Dumesic)、2−ペンテン酸、3−ペンテン酸および/または4−ペンテン酸の混合物がもたらされる。
【0072】
変形例によると、触媒上のγ−バレロラクトン、4−ヒドロキシ吉草酸、2−ペンテン酸、3−ペンテン酸および/または4−ペンテン酸から選択される少なくとも1種の添加物の存在は、単独または混合物での添加物(1種または複数種)の添加に起因してよい。
【0073】
別の変形例によると、触媒上の4−ヒドロキシ吉草酸、2−ペンテン酸、3−ペンテン酸および/または4−ペンテン酸から選択される少なくとも1種の添加物の存在は、前記触媒前駆体または担体に加えられる含浸溶液中に含有されるγ−バレロラクトンの加水分解および場合による次の脱水の工程に起因してよい。
【0074】
本発明による触媒上のγ−バレロラクトン、4−ヒドロキシ吉草酸、2−ペンテン酸、3−ペンテン酸および/または4−ペンテン酸から選択される添加物(1種または複数種)の全含有率は、触媒の全重量に対して1〜35重量%、好ましくは2〜30重量%、より好ましくは3〜25重量%である。触媒の調製の間に、添加物(1種または複数種)の導入に続く乾燥させる1回または複数回の工程が、200℃未満の温度で行われ、触媒上に残留する炭素を基礎にして計算して、導入された添加物(1種または複数種)の量の最低30%、好ましくは最低50%、非常に好ましくは最低70%が保持される。
【0075】
本発明による触媒は、γ−バレロラクトン、4−ヒドロキシ吉草酸、2−ペンテン酸、3−ペンテン酸および/または4−ペンテン酸から選択される添加物(1種または複数種)に加えて、添加物としてのそれらの役割のために知られている一種のまたは一群の他の有機化合物を含んでよい。添加物の機能は、添加物を有しない触媒に対して、触媒活性を高めることにある。
【0076】
本明細書の残りにおいて、「前記添加物」とは、γ−バレロラクトン、4−ヒドロキシ吉草酸、2−ペンテン酸、3−ペンテン酸または4−ペンテン酸から選択される少なくとも1種の添加物を意味する。
【0077】
より特定的には、本発明による触媒は、前記添加物以外の酸素を含有する1種以上の有機化合物および/または窒素を含有する1種以上の有機化合物および/または硫黄を含有する1種以上の有機化合物をさらに含んでよい。好ましくは、本発明による触媒は、前記添加物以外の酸素を含有する1種以上の有機化合物、および/または窒素を含有する1種以上の有機化合物をさらに含んでよい。好ましくは、有機化合物は、少なくとも2個の炭素原子および少なくとも1個の酸素および/または窒素の原子を含有する。
【0078】
一般的に、有機化合物は、カルボキシ、アルコール、チオール、チオエーテル、スルホン、スルホキシド、エーテル、アルデヒド、ケトン、エステル、カルボナート、アミン、ニトリル、イミド、オキシム、ウレアおよびアミドの官能基から選択される1個以上の化学官能基を含む化合物から選択される。好ましくは、有機化合物は、2個のアルコール基および/または2個のカルボキシ基および/または2個のエステル基および/または少なくとも1個のアミド基を含む化合物から選択される。
【0079】
酸素を含有する有機化合物は、カルボキシ、アルコール、エーテル、アルデヒド、ケトン、エステルまたはカルボナートの官能基から選択される1個以上の化学官能基を含む化合物から選択される1種以上であってよい。例として、酸素を含有する有機化合物は、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングルコール(分子量は200〜1500g/molである)、プロピレングルコール、2−ブトキシエタノール、2−(2−ブトキシエトキシ)エタノール、2−(2−メトキシエトキシ)エタノール、トリエチレングリコール ジメチルエーテル、グリセロール、アセトフェノン、2,4−ペンタンジオン、ペンタノン、酢酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、リンゴ酸、シュウ酸、グルコン酸、酒石酸、クエン酸、γ−ケト吉草酸、コハク酸C
1−C
4ジアルキル、アセト酢酸メチル、ラクトン、ジベンゾフラン、クラウンエーテル、オルソフタル酸、グルコースおよび炭酸プロピレンによって構成される群から選択される1種以上であってよい。
【0080】
窒素を含有する有機化合物は、アミンまたはニトリルの官能基から選択される1個以上の化学官能基を含む化合物から選択される1種以上であってよい。例として、窒素を含有する有機化合物は、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、アセトニトリル、オクチルアミン、グアニジンまたはカルバゾールによって構成される群から選択される1種以上であってよい。
【0081】
酸素および窒素を含有する有機化合物は、カルボン酸、アルコール、エーテル、アルデヒド、ケトン、エステル、カルボナート、アミン、ニトリル、イミド、アミド、ウレアまたはオキシムの官能基から選択される1個以上の化学官能基を含む化合物から選択される1種以上であってよい。例として、酸素および窒素を含有する有機化合物は、1,2−シクロヘキサンジアミンテトラ酢酸、モノエタノールアミン(monoethanolamine:MEA)、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、エチレンジアミンテトラ酢酸(ethylenediaminetetraacetic acid:EDTA)、アラニン、グリシン、ニトリロトリ酢酸(nitrilotriacetic acid:NTA)、N−(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン−N,N’,N’−トリ酢酸(N-(2-hydroxyethyl)ethylenediamine-N,N′,N′-triacetic acid:HEDTA)、ジエチレントリアミンペンタ酢酸(diethylenetriaminepentaacetic acid:DTPA)、テトラメチルウレア、グルタミン酸、ジメチルグリオキシム、ビシンまたはトリシン、またはラクタムによって構成される群から選択される1種以上であってよい。
【0082】
硫黄を含有する有機化合物は、チオール、チオエーテル、スルホンまたはスルホキシドの官能基から選択される1個以上の化学官能基を含む化合物から選択される1種以上であってよい。例として、硫黄を含有する有機化合物は、チオグリコール酸、2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタン酸、ベンゾチオフェンのスルホナート化誘導体またはベンゾチオフェンのスルホキシド化誘導体によって構成される群から選択される1種以上であってよい。
【0083】
好ましくは、有機化合物は、酸素を含有し、好ましくは、それは、トリエチレングリコール、ジエチレングリコール、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、マレイン酸、クエン酸、ジメチルホルムアミド、ビシン、またはトリシンから選択される。
【0084】
それ(それら)が存在している場合、本発明による触媒上の酸素および/または窒素および/または硫黄を含有する添加物機能を有する(前記添加物以外の)有機化合物(1種または複数種)の全含有率は、触媒の全重量に対して1〜30重量%、好ましくは1.5〜25重量%、より好ましくは2〜20重量%である。
【0085】
(調製方法)
本発明による触媒は、当業者に知られている、添加物として有機化合物を有する担持型触媒の調製のためのあらゆる方法によって調製されてよい。
【0086】
本発明による触媒は、以下の工程:
a) 第VIB族の元素の少なくとも1種の成分と、第VIII族の元素の少なくとも1種の成分と、γ−バレロラクトン、4−ヒドロキシ吉草酸、2−ペンテン酸、3−ペンテン酸または4−ペンテン酸から選択される少なくとも1種の添加物と、場合によるリンとを、アルミナまたはシリカまたはシリカ−アルミナをベースとする担体と接触させるか、または、アルミナまたはシリカまたはシリカ−アルミナをベースとする担体と、第VIB族の元素の少なくとも1種の成分と、第VIII族の元素の少なくとも1種の成分と、場合によるリンとを含有する再生触媒を、γ−バレロラクトン、4−ヒドロキシ吉草酸、2−ペンテン酸、3−ペンテン酸または4−ペンテン酸から選択される少なくとも1種の添加物と接触させて、触媒前駆体を得る工程、
b) 工程a)を起源とする前記触媒前駆体を、200℃未満の温度で乾燥させるが、続いてのそれの焼成は行わない、工程
を含む調製方法によって調製されてよい。
【0087】
第1に、新鮮な触媒の調製方法が記載されることになり、その後に、再活触媒の調製方法が記載される。
【0088】
(新鮮な触媒の調製方法)
接触工程a)は、複数の実施形態を含み、これらは、γ−バレロラクトン、4−ヒドロキシ吉草酸、2−ペンテン酸、3−ペンテン酸または4−ペンテン酸から選択される添加物の導入の時点によって特に異なっており、金属の含浸と同時(共含浸)、または金属の含浸の後(後含浸)、あるいは最後に、金属の含浸の前(前含浸)のいずれかで行われてよい。さらに、接触工程は、少なくとも2つの実施形態、例えば、共含浸および後含浸を組み合せてよい。これらの種々の実施形態は後に記載されることになる。各実施形態は、単独でまたは組み合わせて、1回以上の工程において行われてよい。
【0089】
その調製方法の間に、本発明による触媒は、γ−バレロラクトン、4−ヒドロキシ吉草酸、2−ペンテン酸、3−ペンテン酸または4−ペンテン酸から選択される1種または複数種の添加物または酸素および/または窒素および/または硫黄を含有する任意の他の有機化合物の導入の後に焼成を経ず、これにより、少なくとも部分的に、触媒中のγ−バレロラクトン、4−ヒドロキシ吉草酸、2−ペンテン酸、3−ペンテン酸または4−ペンテン酸から選択される1種または複数種の添加物または任意の他の有機化合物が保護されることを強調することは重要である。焼成とは、ここでは、空気または酸素を含有するガス下の、200℃以上の温度での熱処理を意味する。
【0090】
しかしながら、γ−バレロラクトン、4−ヒドロキシ吉草酸、2−ペンテン酸、3−ペンテン酸または4−ペンテン酸から選択される少なくとも1種の添加物または酸素および/または窒素および/または硫黄を含有する任意の他の有機化合物の導入の前、特に、第VIB族および第VIII族の元素の含浸の後(後含浸)、場合によってはリンおよび/または他のドーパントの存在下に、または、すでに用いられた触媒の再生の間に、触媒前駆体は、焼成工程を経てよい。本発明による触媒の第VIB族および第VIII族の元素を含む水素化機能基は、活性相とも呼ばれ、これは、酸化物の形態にある。
【0091】
別の変形例によると、触媒前駆体は、第VIB族および第VIII族の元素の含浸の後(後含浸)に焼成工程を経ず、それは、単に乾燥させられる。本発明による触媒の第VIB族および第VIII族の元素を含む水素化機能基は、活性相とも呼ばれるものであり、これは、酸化物の形態ではない。
【0092】
実施形態に拘わらず、接触工程a)は、一般的に、少なくとも1回の含浸工程、好ましくは、乾式含浸の工程を含み、この含浸の工程において、担体は、第VIB族の少なくとも1種の元素と、第VIII族の少なくとも1種の元素と、場合によるリンとを含む含浸溶液を含浸させられる。共含浸の場合、以下に詳細に記載されるように、この含浸溶液は、γ−バレロラクトン、4−ヒドロキシ吉草酸、2−ペンテン酸、3−ペンテン酸または4−ペンテン酸から選択される少なくとも1種の添加物をさらに含む。第VIB族および第VIII族の元素は、一般的に、含浸、好ましくは乾式含浸または過剰な溶液による含浸によって導入される。好ましくは、第VIB族および第VIII族の元素の全ては、実施形態に拘わらず、含浸、好ましくは乾式含浸によって導入される。
【0093】
第VIB族および第VIII族の元素は、一部、前記担体を成形する間、マトリクスとして選択される少なくとも1種のアルミナゲルと混合する時点において導入されてもよく、水素化元素の残りは、含浸に続いて導入される。好ましくは、第VIB族および第VIII族の元素が、一部、混合する時点において導入される場合、この工程の間に導入される第VIB族の元素の割合は、最終触媒上に導入される第VIB族の元素の全量の重量で5%未満である。
【0094】
好ましくは、導入の方法に拘わらず、第VIB族の元素は、第VIII族の元素と同時に導入される。
【0095】
用いられてよいモリブデン前駆体は、当業者に周知である。例えば、モリブデン源の中で、酸化物および水酸化物、モリブデン酸およびその塩が用いられ得、特に、アンモニウム塩、例えば、モリブデン酸アンモニウム、ヘプタモリブデン酸アンモニウム、リンモリブデン酸(H
3PMo
12O
40)およびその塩、場合によっては、ケイモリブデン酸(H
4SiMo
12O
40)およびその塩である。モリブデン源は、例えば、ケギン型、ラクナケギン型、置換ケギン型、ドーソン型、アンダーソン型、またはストランドベルグ型のヘテロポリ化合物であってもよい。三酸化モリブデンおよびストランドベルグ型、ケギン型、ラクナケギン型または置換ケギン型のヘテロポリアニオンが好適に用いられる。
【0096】
用いられてよいタングステン前駆体も当業者に周知である。例えば、タングステン源の中で、酸化物および水酸化物、タングステン酸およびその塩が用いられ得、特に、アンモニウム塩、例えば、タングステン酸アンモニウム、メタタングステン酸アンモニウム、リンタングステン酸およびその塩、および場合によっては、ケイタングステン酸(H
4SiW
12O
40)およびその塩である。タングステン源は、例えば、ケギン型、ラクナケギン型、置換ケギン型、またはドーソン型のヘテロポリ化合物であってもよい。酸化物およびアンモニウム塩、例えば、メタタングステン酸アンモニウムまたはケギン型、ラクナケギン型または置換ケギン型のヘテロポリアニオンが好適に用いられる。
【0097】
用いられてよい第VIII族の元素の前駆体は、有利には、第VIII族の元素の酸化物、水酸化物、ヒドロキシ炭酸塩、炭酸塩および硝酸塩から選択され、例えば、ヒドロキシ炭酸ニッケル、コバルトの炭酸塩または水酸化物が好適に用いられる。
【0098】
リンが存在する場合、それは、全体的にまたは部分的に、含浸によって導入されてよい。好ましくは、それは、含浸によって、好ましくは乾式含浸によって、第VIB族および第VIII族の元素の前駆体を含有する溶液を用いて導入される。
【0099】
前記リンは、有利には、単独でまたは第VIB族および第VIII族の元素の少なくとも1種との混合物で、これが複数回の実施において導入されるならば水素化機能基の含浸ための工程のいずれかの間に導入されてよい。前記リンは、全体的にまたは部分的に、水素化機能基とは別にこれが導入されるならばγ−バレロラクトン、4−ヒドロキシ吉草酸、2−ペンテン酸、3−ペンテン酸または4−ペンテン酸から選択される少なくとも1種の添加物の含浸の間に(後述の後含浸および前含浸の場合)、前記添加物以外の酸素および/または窒素および/または硫黄を含有する有機化合物の存在下または非存在下に導入されてもよい。それは、担体の合成の間に、その合成のあらゆる工程において導入されてもよい。それは、それ故に、選択されるアルミナゲルマトリクス、例えばおよび好ましくはアルミナ前駆体であるオキシ水酸化アルミニウム(ベーマイト)の混合の前、その間またはその後に導入されてよい。
【0100】
好ましいリン前駆体は、オルトリン酸H
3PO
4であるが、その塩およびエステル、例えば、リン酸アンモニウムも適切である。リンは、第VIB族の元素(1種または複数種)と同時に、ケギン型、ラクナケギン型、置換ケギン型またはストランドベルグ型のヘテロポリアニオンの形態で導入されてもよい。
【0101】
γ−バレロラクトン、4−ヒドロキシ吉草酸、2−ペンテン酸、3−ペンテン酸または4−ペンテン酸から選択される1種または複数種の添加物は、有利には、含浸溶液に導入され、この含浸溶液は、調製方法に応じて、第VIB族および第VIII族の元素を含有するものと同一の溶液または異なる溶液であってよく、全量において、以下に相当する:
− 触媒前駆体のγ−バレロラクトン、4−ヒドロキシ吉草酸、2−ペンテン酸、3−ペンテン酸または4−ペンテン酸から選択される添加物(1種または複数種)対第VIB族の元素(1種または複数種)の全モル比:0.2〜2.0mol/mol、好ましくは0.3〜1.7mol/mol、好ましくは0.5〜1.5mol/mol、非常に好ましくは0.8〜1.2mol/mol;含浸溶液(1種または複数種)に導入された成分を基礎として計算される;
− 触媒前駆体のγ−バレロラクトン、4−ヒドロキシ吉草酸、2−ペンテン酸、3−ペンテン酸または4−ペンテン酸から選択される添加物(1種または複数種)対第VIII族の元素(1種または複数種)の全モル比:0.1〜5.0mol/mol、好ましくは0.5〜4.0mol/mol、好ましくは1.0〜3.0mol/mol、非常に好ましくは1.5〜3.0mol/mol;含浸溶液(1種または複数種)に導入された成分を基礎として計算される。
【0102】
本発明において記載されるあらゆる含浸溶液は、当業者に知られているあらゆる極性溶媒を含んでよい。用いられる前記極性溶媒は、有利には、メタノール、エタノール、水、フェノール、シクロヘキサノールによって形成される群から選択され、これらは、単独でまたは混合物で用いられる。前記極性溶媒は、有利には、炭酸プロピレン、DMSO(dimethylsulphoxide;ジメチルスルホキシド)、N−メチルピロリドン(N-methylpyrrolidone:NMP)またはスルホランによって形成される群から選択されてもよく、これらは、単独でまたは混合物で用いられる。好ましくは、極性プロトン溶媒が用いられる。通常の極性溶媒並びにそれらの比誘電率のリストは、書籍「Solvents and Solvent Effects in Organic Chemistry」、C. Reichardt, Wiley-VCH, 3rd edition, 2003, pages 472-474において見出されてよい。非常に好ましくは、用いられる溶媒は水またはエタノールであり、特に好ましくは、溶媒は水である。考えられる実施形態において、溶媒は、含浸溶液を欠いていてもよい。
【0103】
触媒がホウ素、フッ素、またはホウ素およびフッ素の混合物から選択されるドーパントをさらに含む場合、このドーパントまたはこれらのドーパントの導入は、リンの導入と同様に、調製の種々の工程において種々の方法でなされてよい。前記ドーパントは、有利には、単独でまたは第VIB族および第VIII族の元素の少なくとも1種との混合物で、これが複数回の試行において導入されるならば水素化機能基の含浸の工程のいずれかの間に導入されてよい。前記ドーパントは、全体的にまたは部分的に、水素化機能基とは別にこれが導入されるならば(後述の後含浸および前含浸の場合)、γ−バレロラクトン、4−ヒドロキシ吉草酸、2−ペンテン酸、3−ペンテン酸または4−ペンテン酸から選択される少なくとも1種の添加物の含浸の間に、前記添加物以外の酸素および/または窒素および/または硫黄を含有する有機化合物の存在下または非存在下に導入されてもよい。それは、担体の合成以降から、その合成のあらゆる工程において導入されてもよい。それは、それ故に、選択されるアルミナゲルマトリクス、例えばおよび好ましくはアルミナ前駆体であるオキシ水酸化アルミニウム(ベーマイト)の混合の前、その間またはその後に導入されてよい。
【0104】
前記ドーパントが存在する場合、それは、有利には、第VIB族および第VIII族の元素の前駆体(1種または複数種)との混合物で、全体的にまたは部分的に、成形された担体上に、前記担体の乾式含浸によって導入され、金属の前駆体、リン前駆体およびドーパント(1種または複数種)の前駆体(1種または複数種)を含有する、(共含浸の実施形態ではγ−バレロラクトン、4−ヒドロキシ吉草酸、2−ペンテン酸、3−ペンテン酸または4−ペンテン酸から選択される少なくとも1種の添加物も含有する)溶液、好ましくは水溶液が用いられる。
【0105】
ホウ素前駆体は、ホウ酸、オルトホウ酸H
3BO
3、二ホウ酸アンモニウムまたは五ホウ酸アンモニウム、酸化ホウ素、ホウ酸エステルであってよい。ホウ素は、例えば、水/アルコール混合物中あるいは水/エタノールアミン混合物中のホウ酸の溶液によって導入されてよい。好ましくは、ホウ素前駆体は、ホウ素が導入されるならば、オルトホウ酸である。
【0106】
用いられてよいフッ素前駆体も当業者に周知である。例えば、フッ化物アニオンは、フッ化水素酸またはその塩の形態で導入されてよい。これらの塩は、アルカリ金属、アンモニウムまたは有機化合物により形成される。有機化合物の場合、塩は、有利には、有機化合物とフッ化水素酸との間の反応による反応混合物中に形成される。フッ素は、例えば、フッ化水素酸、またはフッ化アンモニウムまたは一水素二フッ化アンモニウムの水溶液の含浸によって導入されてよい。
【0107】
触媒が(γ−バレロラクトン、4−ヒドロキシ吉草酸、2−ペンテン酸、3−ペンテン酸または4−ペンテン酸から選択される添加物(1種または複数種)に加えて)前記添加物以外の酸素および/または窒素および/または硫黄を含有する有機化合物から選択される1種のまたは一群の追加添加物をさらに含む場合、これは、工程a)において含浸溶液中で導入されてよい。
【0108】
触媒上の前記添加物以外の酸素および/または窒素および/または硫黄を含有する有機化合物(1種または複数種)対第VIB族の元素の全モル比は、含浸溶液(1種または複数種)に導入された成分を基礎に計算されて、0.05〜5mol/mol、好ましくは0.1〜4mol/mol、好ましくは0.2〜3mol/molである。
【0109】
γ−バレロラクトン、4−ヒドロキシ吉草酸、2−ペンテン酸、3−ペンテン酸および/または4−ペンテン酸の合計に対する前記添加物以外の酸素および/または窒素および/または硫黄を含有する有機化合物(1種または複数種)の全モル比は、含浸溶液(1種または複数種)に導入された成分を基礎として計算されて、0.05〜6mol/mol、好ましくは0.1〜5mol/mol、より好ましくは0.2〜4mol/molである。
【0110】
有利には、各含浸工程の後に、含浸済み担体は、放置されて成熟させられる。成熟により、含浸溶液は、担体内に均一に分散することが可能となる。
【0111】
本発明において記載されるあらゆる成熟工程は、有利には、大気圧で、水飽和雰囲気中、17℃〜50℃の温度、好ましくは周囲温度で行われる。一般的には、10分〜48時間、好ましくは30分〜5時間の成熟時間が十分である。より長い時間は除外されないが、なんらかの改善を提供するものでは必ずしもない。
【0112】
本発明による調製方法の工程b)によると、工程a)において得られた、場合によっては成熟させられた触媒前駆体は、200℃未満の温度での乾燥工程に付されるが、続いての焼成工程は行われない。
【0113】
本発明において記載された前記添加物の導入の後のあらゆる乾燥工程が行われる際の温度は、200℃未満、好ましくは50〜180℃、好ましくは70〜150℃、非常に好ましくは75〜130℃である。
【0114】
乾燥工程は、有利には、当業者に知られているあらゆる技術によって行われる。それは、有利には、大気圧または減圧で行われる。好ましくは、この工程は、大気圧で行われる。それは、有利には、横断床において、空気または任意の他の高温ガスを用いて行われる。好ましくは、乾燥が固定床において行われる場合、用いられるガスは、空気または不活性ガス、例えば、アルゴンまたは窒素のいずれかである。非常に好ましくは、乾燥処理は、横断床において、窒素および/または空気の存在下に行われる。好ましくは、乾燥工程は、短い継続期間の工程であり、5分〜4時間、好ましくは30分〜4時間、非常に好ましくは1時間〜3時間である。乾燥処理は、含浸工程の間に導入されるγ−バレロラクトン、4−ヒドロキシ吉草酸、2−ペンテン酸、3−ペンテン酸または4−ペンテン酸から選択される添加物(1種または複数種)の好ましくは最低30%を保持するように行われ、好ましくは、この量は、触媒上に残る炭素を基礎として計算されて、50%より高く、一層より好ましくは70%より高い。前記添加物以外の酸素および/または窒素および/または硫黄を含有する有機化合物が存在している場合、乾燥工程は、触媒上に残留する炭素を基礎に計算されて、導入された量の好ましくは最低30%、好ましくは最低50%、非常に好ましくは最低70%を保持するように行われる。
【0115】
乾燥工程b)の終わりに、乾燥済み触媒が得られるが、このものは、あらゆるその後の焼成工程に付されない。
【0116】
(共含浸)
(新鮮な)触媒の調製方法の工程a)の第1の実施形態によると、第VIB族の元素の成分と、第VIII族の元素の成分と、γ−バレロラクトン、4−ヒドロキシ吉草酸、2−ペンテン酸、3−ペンテン酸または4−ペンテン酸から選択される少なくとも1種の添加物の成分と、場合によるリンとは、前記担体上に、1回以上の共含浸工程によって沈着させられる。すなわち、第VIB族の元素の成分と、第VIII族の元素の成分と、γ−バレロラクトン、4−ヒドロキシ吉草酸、2−ペンテン酸、3−ペンテン酸または4−ペンテン酸から選択される少なくとも1種の添加物の成分と、場合によるリンとは、前記担体に同時に導入される(「共含浸」)。変形例によると、工程a)は、以下の工程:
a’) アルミナまたはシリカまたはシリカ−アルミナをベースとする担体に、第VIB族の少なくとも1種の元素と、第VIII族の少なくとも1種の元素と、γ−バレロラクトン、4−ヒドロキシ吉草酸、2−ペンテン酸、3−ペンテン酸または4−ペンテン酸から選択される少なくとも1種の添加物と、場合によるリンとを含有する少なくとも1種の溶液を含浸させて、触媒前駆体を得る工程
である。
【0117】
1回または複数回の共含浸工程は、好ましくは、乾式含浸または過剰の溶液による含浸によって行われる。この第1の実施形態が複数回の共含浸工程の利用を含む場合、各共含浸工程の後に、中間乾燥工程が行われ、その際の温度は、好ましくは200℃未満、有利には50〜180℃、好ましくは70〜150℃、非常に好ましくは75〜130℃であり、場合によっては、含浸と乾燥処理との間に成熟の期間が観察される。
【0118】
非常に好ましくは、共含浸による調製の間、第VIB族および第VIII族の元素と、γ−バレロラクトン、4−ヒドロキシ吉草酸、2−ペンテン酸、3−ペンテン酸または4−ペンテン酸から選択される少なくとも1種の添加物と、場合によるリンと、場合による、ホウ素および/またはフッ素から選択される別のドーパントと、場合による、前記添加物以外の酸素および/または窒素および/または硫黄を含有する有機化合物とは、工程a)において全体的に、前記担体の成形処理の後に、第VIB族および第VIII族の元素の前駆体と、γ−バレロラクトン、4−ヒドロキシ吉草酸、2−ペンテン酸、3−ペンテン酸または4−ペンテン酸から選択される少なくとも1種の添加物と、場合によるリン前駆体と、場合による、ホウ素および/またはフッ素から選択されるドーパント前駆体と、場合による、前記添加物以外の酸素および/または窒素および/または硫黄を含有する有機化合物とを含有する水性含浸溶液を用いる前記担体の乾式含浸によって導入される。
【0119】
(後含浸)
本発明による(新鮮な)触媒の調製方法の工程a)の第2の実施形態によると、γ−バレロラクトン、4−ヒドロキシ吉草酸、2−ペンテン酸、3−ペンテン酸または4−ペンテン酸から選択される少なくとも1種の添加物は、乾燥させられかつ場合によっては焼成された含浸済み担体であって、第VIB族の元素の少なくとも1種の成分と、第VIII族の元素の少なくとも1種の成分と、場合によるリンとを含み、アルミナまたはシリカまたはシリカ−アルミナをベースとするものと接触させられて、触媒前駆体が得られる。
【0120】
この第2の実施形態は、γ−バレロラクトン、4−ヒドロキシ吉草酸、2−ペンテン酸、3−ペンテン酸または4−ペンテン酸から選択される少なくとも1種の添加物の「後含浸」による調製である。これは、例えば、乾式含浸によって行われる。
【0121】
この第2の実施形態によると、工程a)による接触処理は、後に詳細に記載されることになる以下の連続する工程:
a1) アルミナまたはシリカまたはシリカ−アルミナをベースとする担体に、第VIB族の少なくとも1種の元素と、第VIII族の少なくとも1種の元素と、場合によるリンとを含有する少なくとも1種の溶液を含浸させて、含浸済み担体を得る工程、
a2) 工程a1)において得られた含浸済み担体を、200℃未満の温度で乾燥させて、乾燥させられた含浸済み担体を得るようにし、場合によっては、乾燥させられた含浸済み担体を焼成して、焼成された含浸済み担体を得るようにする工程、
a3) 工程a2)において得られた乾燥させられかつ場合によっては焼成された含浸済み担体に、γ−バレロラクトン、4−ヒドロキシ吉草酸、2−ペンテン酸、3−ペンテン酸または4−ペンテン酸から選択される少なくとも1種の添加物を含む含浸溶液を含浸させて、触媒前駆体を得る工程、
a4) 場合による、工程a3)において得られた触媒前駆体を放置して成熟させる工程
を含む。
【0122】
後含浸を利用する実施形態の工程a1)において、担体上への第VIB族および第VIII族の元素と、場合によるリンとの導入は、有利には、担体上への過剰溶液による含浸の1回以上の操作によって、または好ましくは前記担体の乾式含浸の1回以上の操作によって、好ましくは、単一回の乾式含浸によって行われてよく、用いられる溶液(1種または複数種)は、好ましくは水溶液であり、1種または複数種の金属前駆体と、好ましくはリン前駆体とを含有する。
【0123】
複数回の含浸工程が行われる場合、各含浸工程の後に、好ましくは、中間乾燥工程が行われ、その際の温度は、200℃未満、有利には50〜180℃、好ましくは70〜150℃、非常に好ましくは75〜130℃であり、場合によっては、含浸と乾燥処理との間に成熟の期間が観察される。各中間乾燥工程は、γ−バレロラクトン、4−ヒドロキシ吉草酸、2−ペンテン酸、3−ペンテン酸または4−ペンテン酸から選択される少なくとも1種の添加物の導入に先行して、下記に工程a2)のために記載される条件下の焼成工程によって続けられてよい。
【0124】
非常に好ましくは、後含浸による調製の間に、第VIB族および第VIII族の元素と、場合によるリンと、場合による、ホウ素および/またはフッ素から選択される別のドーパントと、場合による、前記添加物以外の酸素および/または窒素および/または硫黄を含有する有機化合物とは、工程a1)において全体的に、前記担体の成形処理の後に、第VIB族および第VIII族の元素の前駆体と、リン前駆体と、場合による、ホウ素および/またはフッ素から選択されるドーパント前駆体と、場合による前記添加物以外の酸素および/または窒素および/または硫黄を含有する有機化合物とを含有する含浸水溶液を用いる前記担体の乾式含浸によって導入される。
【0125】
別の変形例によると、第VIB族および第VIII族の元素と、場合によるリンと、場合による、ホウ素および/またはフッ素から選択される別のドーパントと、場合による、前記添加物以外の酸素および/または窒素および/または硫黄を含有する有機化合物とは、工程a1)において連続的に、1種以上の成分を含有する複数種の含浸溶液によって導入されてよい。
【0126】
有利には、工程a1)において得られた含浸済み担体は、成熟のための上記条件下に放置されて成熟させられる。
【0127】
工程a2)によると、工程a1)において得られた含浸済み担体は、200℃未満の温度で乾燥させられて、上記の乾燥条件下に乾燥させられた、含浸済み担体が得られる。
【0128】
場合によっては、乾燥させられた含浸済み担体は、次いで、焼成処理を経てもよい。焼成処理は、一般的には200℃〜900℃、好ましくは250℃〜750℃の温度で行われる。焼成時間は、一般的には0.5時間〜16時間、好ましくは1時間〜5時間である。それは、一般的には空気下に行われる。焼成処理により、第VIB族および第VIII族の金属の前駆体を酸化物に転化させることが可能となる。
【0129】
工程a3)によると、工程a2)において得られた乾燥させられた含浸済み担体は、γ−バレロラクトン、4−ヒドロキシ吉草酸、2−ペンテン酸、3−ペンテン酸または4−ペンテン酸から選択される少なくとも1種の添加物を含む含浸溶液を含浸させられて、触媒前駆体が得られる。
【0130】
γ−バレロラクトン、4−ヒドロキシ吉草酸、2−ペンテン酸、3−ペンテン酸または4−ペンテン酸から選択される1種または複数種の添加物は、有利には、1回以上の工程において、過剰での含浸または乾式含浸、または当業者に知られている任意の他の手段のいずれかによって沈着させられてよい。好ましくは、1種または複数種の前記添加物は、乾式含浸によって、上記の溶媒の存在下または非存在下に導入される。
【0131】
好ましくは、工程a3)において用いられる含浸溶液における溶媒は、水であり、これは、工業スケールでの実施を促進する。
【0132】
γ−バレロラクトン、4−ヒドロキシ吉草酸、2−ペンテン酸、3−ペンテン酸または4−ペンテン酸から選択される1種または複数種の添加物は、有利には、工程a3)における含浸溶液に、上記の第VIB族または第VIII族の元素当たりのモル比で導入される。
【0133】
さらに、(γ−バレロラクトン、4−ヒドロキシ吉草酸、2−ペンテン酸、3−ペンテン酸または4−ペンテン酸から選択される添加物(1種または複数種)に加えて)前記添加物以外の酸素および/または窒素および/または硫黄を含有する有機化合物から選択される1種のまたは一群の追加添加物を導入することが望まれる場合、これは、工程a1)における含浸溶液中に、および/または工程a3)における含浸溶液中に、または、工程b)における最終乾燥処理前の調製方法中の任意の時点における追加含浸工程によって導入されてよく、焼成工程は、その導入の後には行われないことが理解される。この化合物は、上記の割合で導入される。
【0134】
工程a4)によると、場合によっては、工程a3)において得られた触媒前駆体は、上記の成熟条件下に放置されて成熟させられる。
【0135】
本発明による調製方法の工程b)によると、触媒前駆体は、場合によっては工程a4)において成熟させられたものであるが、このものは、200℃未満の温度で乾燥させる工程に付されるが、上記のようにその後に焼成工程は行われない。
【0136】
(前含浸)
本発明による(新鮮な)触媒の調製方法の工程a)の第3の実施形態によると、第VIB族の元素の少なくとも1種の成分と、第VIII族の元素の少なくとも1種の成分と、場合によるリンとは、アルミナまたはシリカまたはシリカ−アルミナをベースとし、γ−バレロラクトン、4−ヒドロキシ吉草酸、2−ペンテン酸、3−ペンテン酸または4−ペンテン酸から選択される少なくとも1種の添加物を含有する担体と接触させられて、触媒前駆体が得られる。
【0137】
この第3の実施形態は、γ−バレロラクトン、4−ヒドロキシ吉草酸、2−ペンテン酸、3−ペンテン酸または4−ペンテン酸から選択される少なくとも1種の添加物の「前含浸」による調製である。これは、例えば、乾式含浸によって行われる。
【0138】
この第3の実施形態によると、工程a)による接触処理は、以下に詳細に記載されることになる以下の連続する工程:
a1’) γ−バレロラクトン、4−ヒドロキシ吉草酸、2−ペンテン酸、3−ペンテン酸または4−ペンテン酸から選択される少なくとも1種の添加物と、場合によるリンの少なくとも一部とを含む担体を調製する工程、
a2’) 工程a1’)において得られた担体に、第VIB族の少なくとも1種の元素と、第VIII族の少なくとも1種の元素と、場合によるリンとを含む含浸溶液を含浸させて、触媒前駆体を得る工程、
a3’) 場合による、工程a2’)において得られた触媒前駆体を放置して成熟させる工程
を含む。
【0139】
前含浸を利用する実施形態の工程a1’)において、γ−バレロラクトン、4−ヒドロキシ吉草酸、2−ペンテン酸、3−ペンテン酸または4−ペンテン酸から選択される少なくとも1種の添加物と、場合によるリンの少なくとも一部とを含む担体が調製される。γ−バレロラクトン、4−ヒドロキシ吉草酸、2−ペンテン酸、3−ペンテン酸または4−ペンテン酸から選択される1種または複数種の添加物は、担体の調製におけるあらゆる時点において、好ましくは成形する間に、または、すでに成形されている担体上への含浸によって導入されてよい。
【0140】
予め成形された担体上へのγ−バレロラクトン、4−ヒドロキシ吉草酸、2−ペンテン酸、3−ペンテン酸または4−ペンテン酸から選択される少なくとも1種の添加物の導入が選択されるならば、この導入は、後含浸の工程a3)のために指し示されたように行われてよい。それに続いて、場合によっては、上記のような成熟および乾燥の条件下に、成熟工程および200℃未満の温度での乾燥工程が行われることになる。
【0141】
成形処理の間の導入が選ばれるならば、好ましくは、前記成形処理は、混合−押出、ペレット化、油滴方法、回転板による造粒、または、当業者に周知である任意の他の方法によって行われる。非常に好ましくは、前記成形処理は、混合−押出によって行われ、γ−バレロラクトン、4−ヒドロキシ吉草酸、2−ペンテン酸、3−ペンテン酸および/または4−ペンテン酸は、混合−押出の間のあらゆる時点において導入されてよい。成形工程の終わりに得られた成形済みの物は、次いで、有利には、前記添加物(1種または複数種)の少なくとも一部が存在して残留するような温度での熱処理の工程を経る。
【0142】
同じことは、工程a1’)において前記担体中に場合により存在するリンに適用する。リンは、担体の調製におけるあらゆる時点において、好ましくは、成形処理の間に、または、上記のようにすでに成形されている担体上への含浸によって導入されてよい。リンのみが成形処理の間に導入される、すなわち、γ−バレロラクトン、4−ヒドロキシ吉草酸、2−ペンテン酸、3−ペンテン酸または4−ペンテン酸から選択される添加物自体は含浸により導入されないならば、それの導入の後の焼成温度は、有利には、1,000℃未満の温度で行われてよい。
【0143】
前含浸を利用する実施形態の工程a2’)において、第VIB族および第VIII族の元素と、場合によるリンとの導入は、有利には、担体上の1回以上の過剰溶液での含浸によって、または好ましくは前記担体の1回以上の乾式含浸によって、好ましくは単一回の乾式含浸によって行われてよく、金属の1種または複数種の前駆体と、場合によるリン前駆体とを含有する溶液(1種または複数種)、好ましくは水溶液が用いられる。
【0144】
有利には、工程a2’)において得られた触媒前駆体は、上記の成熟条件下に放置されて成熟させられる。
【0145】
さらに、(γ−バレロラクトン、4−ヒドロキシ吉草酸、2−ペンテン酸、3−ペンテン酸または4−ペンテン酸から選択される添加物(1種または複数種)に加えて)前記添加物以外の酸素および/または窒素および/または硫黄を含有する有機化合物から選択される1種または一群の追加添加物を導入することが望まれる場合、これは、工程a1’)における担体に、成形処理の間に、または、乾式含浸によって、および/または工程a2’)における含浸溶液に、または、工程b)における最終的な乾燥前の調製方法中のあらゆる時点における追加の含浸工程によって導入されてよく、焼成工程は、それの導入の後に行われないことが理解される。
【0146】
上記の3つの実施形態は、上記のように単独で、または、技術的および実際的な制約に応じた他の混成の調製方法を引き起こすように混合して行われてよい。
【0147】
別の代替実施形態によると、工程a)による接触処理は、少なくとも2つの接触させる方法、例えば、1種の有機化合物の共含浸と、共含浸のために用いられたものと同一であっても異なっていてもよい有機化合物の後含浸を組み合わせるが、これは、有機化合物の少なくとも一方は、γ−バレロラクトン、4−ヒドロキシ吉草酸、2−ペンテン酸、3−ペンテン酸または4−ペンテン酸から選択されることが前提である。
【0148】
この代替実施形態によると、工程a)による接触処理は、以下の連続的な工程:
a1”) 共含浸により、第VIB族の少なくとも1種の元素と、第VIII族の少なくとも1種の元素と、酸素および/または窒素および/または硫黄を含有する少なくとも1種の有機化合物と、場合によるリンとを含有する溶液を、アルミナまたはシリカまたはシリカ−アルミナをベースとする担体と接触させて、含浸済み担体を得る工程、
a2”) 工程a1”)を起源とする含浸済み担体を、200℃未満の温度で乾燥させるが、その後のそれの焼成は行わず、乾燥させられた含浸済み担体を得る工程、
a3”) 工程a2”)を起源とする乾燥させられた含浸済み担体を、工程a1”)において用いられたものと同一であるかまたは異なっている酸素および/または窒素および/または硫黄を含有する有機化合物の溶液と接触させて、触媒前駆体を得る工程、
a4”) 場合による、工程a3”)において得られた触媒前駆体を放置して成熟させる工程
を含み、工程a1”)または工程a3”)における有機化合物の少なくとも一方は、γ−バレロラクトン、4−ヒドロキシ吉草酸、2−ペンテン酸、3−ペンテン酸または4−ペンテン酸から選択される。
【0149】
上記の操作条件は、当然、この最後に言及された実施形態の状況において適用可能である。
【0150】
(再活触媒の調製方法)
本発明による触媒は、再活触媒であってよい。この触媒は、以下の工程:
a) アルミナまたはシリカまたはシリカ−アルミナをベースとする担体と、第VIB族の元素の少なくとも1種の成分と、第VIII族の元素の少なくとも1種の成分と、場合によるリンとを含有する再生触媒を、γ−バレロラクトン、4−ヒドロキシ吉草酸、2−ペンテン酸、3−ペンテン酸または4−ペンテン酸から選択される少なくとも1種の添加物と接触させて、触媒前駆体を得る工程、
b) 工程a)を起源とする前記触媒前駆体を、200℃未満の温度で乾燥させるが、その後のそれの焼成は行わない、工程
を含む調製方法によって調製されてよい。
【0151】
工程a)によると、再生触媒は、γ−バレロラクトン、4−ヒドロキシ吉草酸、2−ペンテン酸、3−ペンテン酸または4−ペンテン酸から選択される少なくとも1種の添加物と接触させられて、触媒前駆体が得られる。再生触媒は、触媒装置中で、特に、水素化処理および/または水素化分解において触媒として用いられていた、コークを焼き払うために焼成する少なくとも1回の工程(再生)を経ていた触媒である。再生により、それの工業的使用の間に触媒上に沈着した炭素の燃焼が可能になる。それは、当業者に知られているあらゆる手段によって行われてよい。再生が行われる際の温度は、一般的に350〜550℃、ほとんどの場合400〜520℃、または420〜520℃、または450〜520℃であり、500℃未満の温度がしばしば有利である。
【0152】
再生触媒は、アルミナまたはシリカまたはシリカ−アルミナをベースとする担体と、第VIB族の元素の少なくとも1種の成分と、第VIII族の元素の少なくとも1種の成分と、場合によるリンとを、上記に与えられた各割合で含有する。再生(焼成工程)の後、再生触媒の第VIB族および第VIII族の元素を含む水素化機能基は、酸化物の形態にある。それは、上記に記載されるように、リン以外のドーパントを含有してもよい。
【0153】
この実施形態によると、工程a)による接触処理は、以下の連続的な工程:
a1’’’) アルミナまたはシリカまたはシリカ−アルミナをベースとする担体と、第VIB族の元素の少なくとも1種の成分と、第VIII族の元素の少なくとも1種の成分と、場合によるリンとを含有する再生触媒に、γ−バレロラクトン、4−ヒドロキシ吉草酸、2−ペンテン酸、3−ペンテン酸または4−ペンテン酸から選択される少なくとも1種の添加物を含む含浸溶液を含浸させて、触媒前駆体を得る工程、
a2’’’) 場合による、工程a1’’’)において得られた触媒前駆体を放置して成熟させる工程
を含む。
【0154】
好ましくは、工程a)における接触処理は、再生触媒に、γ−バレロラクトン、4−ヒドロキシ吉草酸、2−ペンテン酸、3−ペンテン酸または4−ペンテン酸から選択される少なくとも1種の添加物を含む含浸溶液を含浸させることによって行われ、触媒前駆体が得られる。
【0155】
γ−バレロラクトン、4−ヒドロキシ吉草酸、2−ペンテン酸、3−ペンテン酸または4−ペンテン酸から選択される1種または複数種の添加物は、有利には、1回以上の工程において、過剰での含浸または乾式含浸または当業者に知られている任意の他の手段のいずれかによって沈着させられてよい。好ましくは、γ−バレロラクトン、4−ヒドロキシ吉草酸、2−ペンテン酸、3−ペンテン酸または4−ペンテン酸から選択される1種または複数種の添加物は、乾式含浸によって、上記の溶媒の存在下または非存在下に導入される。
【0156】
好ましくは、用いられる含浸溶液における溶媒は水であり、これは、工業スケールでの実施を促進する。
【0157】
γ−バレロラクトン、4−ヒドロキシ吉草酸、2−ペンテン酸、3−ペンテン酸または4−ペンテン酸から選択される1種または複数種の添加物は、有利には、含浸溶液に、上記の第VIB族または第VIII族の元素当たりのモル比で導入される。
【0158】
さらに、(γ−バレロラクトン、4−ヒドロキシ吉草酸、2−ペンテン酸、3−ペンテン酸または4−ペンテン酸から選択される添加物(1種または複数種)に加えて)前記添加物以外の酸素および/または窒素および/または硫黄を含有する有機化合物から選択される1種のまたは一群の追加添加物を導入することが望まれる場合、これは、工程a1’’’)における含浸溶液中に、または、工程b)における最終の乾燥工程前の調製方法中のあらゆる時点における追加の含浸工程によって導入されてよく、焼成工程は、それの導入の後に行われないことが理解される。この化合物は、上記の割合で導入される。
【0159】
工程a2’’’)によると、場合によっては、工程a1’’’)において得られた触媒前駆体は、上記の成熟条件下に放置され成熟させられる。
【0160】
本発明による調製方法の工程b)によると、場合によっては工程a2’’’)の間に成熟させられている触媒前駆体は、200℃未満の温度で乾燥させる工程に付されるが、上記のように、続いての焼成工程は行われない。
【0161】
(硫化)
水素化処理および/または水素化分解の反応のためにそれが用いられる前に、本発明において記載された導入の方法のいずれか1つにより得られた乾燥済み触媒を硫化触媒に転化させて、その活性な種を形成することが有利である。この活性化または硫化の工程は、当業者に周知である方法によって、有利には、スルホ還元雰囲気下に、水素および硫化水素が存在する中で行われる。
【0162】
本発明による方法の調製の種々の方法による工程b)の終わりに、得られた前記触媒は、したがって有利には、中間の焼成工程を伴うことなく硫化工程に付される。
【0163】
前記乾燥済み触媒は、有利には、現場外(ex situ)または現場内(in situ)で硫化される。硫化剤は、H
2Sガスまたは触媒の硫化のための炭化水素供給原料の活性化のために使用される硫黄を含有する任意の他の化合物である。硫黄を含有する前記化合物は、有利には、アルキルジスルフィド、例えば、ジメチルジスルフィド(dimethyl disulphide:DMDS)、アルキルスルフィド、例えば、ジメチルスルフィド、チオール、例えば、n−ブチルメルカプタン(または1−ブタンチオール)、tert−ノニルポリスルフィドタイプのポリスルフィド化合物、または触媒の良好な硫化を得るために当業者に知られている任意の他の化合物から選択される。好ましくは、触媒は、現場内で、硫化剤および炭化水素含有供給原料の存在下に硫化される。非常に好ましくは、触媒は、炭化水素含有供給原料にジメチルジスルフィドが加えられたものの存在下に現場内で硫化される。
【0164】
(水素化処理および/または水素化分解の方法)
最後に、本発明は、炭化水素含有留分の水素化処理および/または水素化分解の方法における本発明による触媒または本発明による調製方法によって調製された触媒の使用にも関する。
【0165】
本発明による触媒は、好ましくは、事前に硫化工程を経たものであるが、このものは、有利には、炭化水素含有供給原料、例えば、石油留分、石炭を起源とする留分または場合によっては混合物での天然ガスから生じた炭化水素、または、バイオマスを起源とする炭化水素含有留分から生じた炭化水素の水素化処理および/または水素化分解の反応、より特定的には、炭化水素含有供給原料の水素化、水素化脱窒、水素化脱芳香族、水素化脱硫、水素化脱酸素、水素化脱金属または水素化転化の反応のために用いられる。
【0166】
これらの使用において、本発明による触媒は、好ましくは事前に硫化工程を経たものであるが、このものは、従来技術の触媒に対して改善された活性を有している。この触媒は、有利には、接触分解または水素化分解、または残渣の水素化脱硫またはディーゼルの深度水素化脱硫(deep hydrodesulphurization)(ULSD:Ultra Low Sulphur Diesel(超低硫黄軽油))のための供給原料の前処理の間に用いられてもよい。
【0167】
水素化処理方法において用いられる供給原料は、例えば、ガソリン、ガスオイル、真空ガスオイル、常圧残渣、真空残渣、常圧蒸留液、真空蒸留液、重質燃料オイル、オイル、ワックスおよびパラフィン、使用済みオイル、脱アスファルト残渣または粗製オイル(crude oil)、熱転化方法または触媒転化方法から得られた供給原料、リグノセルロース供給原料、より一般的には、バイオマスを起源とする供給原料であり、これらは、単独でまたは混合物で用いられる。処理される供給原料、特に、上記に言及されたものは、一般的に、ヘテロ原子、例えば、硫黄、酸素および窒素を含有し、重質な供給原料では、ほとんどの場合、それらは、金属も含有する。
【0168】
上記の炭化水素含有供給原料の水素化処理の反応を利用する方法において用いられる操作条件は、一般的には以下の通りである:温度は、有利には180〜450℃、好ましくは250〜440℃であり、圧力は、有利には0.5〜30MPa、好ましくは1〜18MPaであり、毎時空間速度は、有利には0.1〜20h
−1、好ましくは0.2〜5h
−1であり、温度および圧力の標準条件下に測定される水素の容積/液体供給原料の容積として表される水素/供給原料の比は、有利には50L/L〜5,000L/L、好ましくは80〜2,000L/Lである。
【0169】
第1の使用方法によると、本発明による前記水素化処理方法は、ガスオイル留分の水素化処理、特に、水素化脱硫(hydrodesulphurization:HDS)の方法であり、本発明による少なくとも1種の触媒の存在下に行われる。本発明による前記水素化処理方法の目的は、現行の環境規格、すなわち、10ppmまでの許可される硫黄含有率を達成するように前記ガスオイル留分中に存在する硫黄含有化合物を除去することである。それにより、水素化処理されるべきガスオイル留分中の芳香族化合物および窒素の含有率を低下させることも可能になる。
【0170】
本発明の方法により水素化処理されるべき前記ガスオイル留分は、0.02〜5.0重量%の硫黄を含有する。それは、有利には、直接蒸留(または直留ガスオイル)、コーキング装置、ビスブレーキング装置、水蒸気分解装置、より重質な供給原料の水素化処理および/または水素化分解のための装置および/または接触分解装置(Fluid Catalytic Cracking:流動接触分解)を起源とする。前記ガスオイル留分の最低90%は、好ましくは大気圧で沸点が250℃〜400℃である化合物である。
【0171】
本発明による前記ガスオイル留分の水素化処理のための方法は、以下の操作条件下に行われる:温度:200〜400℃、好ましくは300〜380℃、全圧:2MPa〜10MPa、より好ましくは3MPa〜8MPa、水素の容積対炭化水素含有供給原料の容積の比(温度および圧力の標準条件下に測定される水素の容積/液体供給原料の容積として表される):100〜600リットル/リットル、より好ましくは200〜400リットル/リットル、毎時空間速度(hourly space velocity:HSV):1〜10h
−1、好ましくは2〜8h
−1。HSVは、時間で表される接触時間の逆関数に対応し、液体炭化水素含有供給原料の容積流量対本発明による水素化処理方法を利用する反応装置中に充填された触媒の容積の比によって定義される。本発明による前記ガスオイル留分の水素化処理方法を行う反応装置は、好ましくは、固定床、移動床または沸騰床において、好ましくは固定床において操作される。
【0172】
第2の使用方法によると、本発明による前記水素化処理および/または水素化分解の方法は、本発明による少なくとも1種の触媒の存在下に行われる真空蒸留液留分の水素化処理(特に、水素化脱硫、水素化脱窒、芳香族化合物の水素化)および/または水素化分解のための方法である。前記水素化処理および/または水素化分解の方法は、本発明による水素化分解前処理または水素化分解の方法とも呼ばれ、この方法の目的は、場合に応じて、接触分解における転化または水素化転化の方法に先行する前処理を行うために、または、場合によっては、要求されるならば前もって前処理されたものであるだろう蒸留液留分を水素化分解するために、前記蒸留液留分中に存在する硫黄含有化合物、窒素含有化合物または芳香族性の化合物を除去することである。
【0173】
非常に多種にわたる供給原料が、上記の真空蒸留液の水素化処理および/または水素化分解の方法によって処理され得る。一般的に、それらは、最低20容積%、しばしば、最低80容積%の、大気圧において340℃超で沸騰する化合物を含有する。供給原料は、例えば、真空蒸留液並びに、潤滑油ベースから芳香族化合物を抽出するための装置を起源とする供給原料、または潤滑油ベースおよび/または脱アスファルト油の溶媒脱ろうを起源とする供給原料であるか、または、供給原料は、フィッシャー・トロプシュ法を起源とする脱アスファルト油またはパラフィンまたは上記の供給原料の任意の混合物であってよい。一般に、供給原料は、大気圧で340℃超、より良好には、大気圧で370℃超のT5沸点を有し、すなわち、供給原料中に存在する化合物の95%は、340℃超、よりさらに良好には370℃超の沸点を有する。本発明による方法において処理される供給原料の窒素含有率は、通常には200重量ppm超、好ましくは500〜10,000重量ppmである。本発明による方法において処理される供給原料の硫黄含有率は、通常には0.01〜5.0重量%である。供給原料は、場合によっては、金属を含有し得る(例えば、ニッケルおよびバナジウム)。アスファルテン含有率は、一般的には3,000重量ppm未満である。
【0174】
水素化処理および/または水素化分解の触媒は、一般的に、水素の存在下に、上記の供給原料と接触させられ、その際の温度は、200℃超、しばしば250℃〜480℃、有利には320℃〜450℃、好ましくは330℃〜435℃であり、その際の圧力は、1MPa超、しばしば2〜25MPa、好ましくは3〜20MPaであり、空間速度は、0.1〜20.0h
−1、好ましくは0.1〜6.0h
−1、好ましくは0.2〜3.0h
−1であり、導入される水素の量は、水素の容積(リットル)/炭化水素の容積(リットル)の容積比が温度および圧力の標準条件下に測定される水素の容積/液体供給原料の容積として表されて80〜5,000L/L、ほとんどの場合100〜2,000L/Lになるようにされる。本発明による方法において用いられるこれらの操作条件により、一般的に、大気圧で340℃未満、よりさらに良好には大気圧で370℃未満の沸点を有する生成物中の通過当たりの転化率:15%超、一層より好ましくは20〜95%を達成することが可能になる。
【0175】
本発明による触媒を利用する真空蒸留液の水素化処理および/または水素化分解のための方法は、マイルド水素化分解から高圧水素化分解にわたる圧力および転化の範囲をカバーする。マイルド水素化分解(mild hydrocracking)とは、一般的には40%未満の穏やかな転化に至り、一般的には2MPa〜6MPaの低圧で操作する水素化分解を意味する。
【0176】
本発明による触媒は、単独で、1基以上の反応器における固定床様式の単一のまたは複数の触媒床において、いわゆる1工程水素化分解システムで、未転化部分の液体再循環を伴ってまたは伴わずに、または、いわゆる2工程水素化分解システムで、場合によっては、本発明の触媒の上流に配置された水素化精製触媒と組み合わされて、用いられてよい。
【0177】
第3の使用方法によると、本発明による前記水素化処理および/または水素化分解の方法は、有利には、流動床接触分解方法(または流動接触分解(Fluid Catalytic Cracking)のためのFCC方法)における前処理として用いられる。温度範囲、圧力範囲、水素再循環比、および毎時空間速度に関する前処理の操作条件は、一般的に、真空蒸留液の水素化処理および/または水素化分解のための方法のための上記に記載されたものと同一である。FCC方法は、当業者に知られているように従来通りに、適切な分解条件下に行われてよく、より低い分子量の炭化水素含有生成物が生じる。接触分解の簡単な説明は、例えば、ULLMANS ENCYCLOPEDIA OF INDUSTRIAL CHEMISTRY VOLUME A 18, 1991, pages 61 to 64において見出されることになる。
【0178】
第4の使用方法によると、本発明による前記水素化処理および/または水素化分解の方法は、本発明による少なくとも1種の触媒の存在下でのガソリン留分の水素化処理(特に水素化脱硫)のための方法である。
【0179】
他の水素化処理方法とは対照的に、ガソリンの水素化処理(特に水素化脱硫)は、2つの相反する要件:ガソリンの深度脱硫を保証することおよび存在する不飽和化合物の水素化を制限してオクタン価の喪失を制限することを満たすことを可能にしなければならない。
【0180】
供給原料は、一般的に、30〜260℃の蒸留範囲を有する炭化水素留分である。好ましくは、この炭化水素留分は、ガソリンタイプの留分である。非常に好ましくは、ガソリン留分は、例えば、接触分解装置(Fluid Catalytic Cracking:流動接触分解)を起源とするオレフィンガソリン留分である。
【0181】
水素化処理方法は、炭化水素留分を、本発明による触媒および水素と、以下の条件下で接触させることからなる:その際の温度は、200〜400℃、好ましくは230〜330℃であり、その際の全圧は、1〜3MPa、好ましくは1.5〜2.5MPaであり、その際の毎時空間速度(hourly space velocity:HSV)は、触媒の容積に対する供給原料の容積流量として定義されて、1〜10h
−1、好ましくは2〜6h
−1であり、その際の水素/ガソリン供給原料の容積比は、100〜600NL/L、好ましくは200〜400NL/Lである。
【0182】
ガソリンの水素化処理のための方法は、固
定床タイプのまたは沸騰床タイプの1基以上の直列の反応器において行われてよい。少なくとも2基の直列の反応器によって方法が行われるならば、第1の水素化脱硫は反応器を起源とする流出物からH
2Sを除去した後に前記流出物を第2の水素化脱硫反応器において処理するデバイスを提供することが可能である。
【0183】
下記に与えられる実施例により、従来技術の触媒に対して本発明による方法によって調製された触媒についての有意に高まった活性が実証され、本発明が説明されるが、しかしながら、本発明の範囲を制限するものではない。
【0184】
(実施例)
(実施例1:有機化合物を有しないアルミナ上CoMoP触媒C1およびC2(本発明に合致しない)の調製)
コバルト、モリブデンおよびリンがアルミナ担体に加えられる。このアルミナ担体のBET表面積は230m
2/gであり、水銀ポロシメトリによって得られる細孔容積は0.78mL/gであり、細孔の平均径は、水銀ポロシメトリによる容積による中位径として定義されて11.5nmであり、「押出物」の形態にある。含浸溶液は、酸化モリブデン(24.34g)および水酸化コバルト(5.34g)を90℃で、85%リン酸水溶液7.47g中に溶解させることによって調製される。乾式含浸の後、押出物は、水飽和雰囲気中12時間にわたって周囲温度で放置されて成熟させられ、次いで、それらは、90℃で16時間にわたって乾燥させられる。こうして得られた乾燥済み触媒前駆体は、C1で表記される。触媒前駆体C1を450℃で2時間にわたって焼成することにより、焼成済み触媒C2が得られる。触媒C1およびC2の最終組成は、酸化物の形態で表されかつ乾燥触媒の質量に対して言及されて、以下の通りである:MoO
3=22.5±0.2重量%、CoO=4.1±0.1重量%およびP
2O
5=4.0±0.1重量%。
【0185】
(実施例2:アルミナ上CoMoP触媒C3およびC4(本発明に合致しない)、C5およびC6(本発明に合致する)の共含浸による調製)
コバルト、モリブデンおよびリンが、上記の実施例1において記載された、「押出物」の形態にあるアルミナ担体に加えられる。含浸溶液は、酸化モリブデン(28.13g)および水酸化コバルト(6.62g)を90℃で85%リン酸水溶液7.88g中に溶解させることによって調製される。上記の混合物を均一にした後、クエン酸37.79gが加えられ、その後、水を加えることによって溶液の容積を担体の細孔容積に調節した。(クエン酸)/Moのモル比は、1mol/molに等しく、(クエン酸)/Coのモル比は、2.8mol/molに等しい。乾式含浸の後、押出物は、水飽和雰囲気中12時間にわたって周囲温度で放置されて成熟させられ、次いで、それらは、120℃で16時間にわたって乾燥させられる。こうして得られた乾燥済み触媒前駆体は、C3で表記される。触媒C3の最終組成は、酸化物の形態で表されかつ乾燥触媒の質量に対して言及されて、以下の通りである:MoO
3=22.7±0.2重量%、CoO=4.2±0.1重量%およびP
2O
5=3.8±0.1重量%。
【0186】
触媒C4は、触媒C3と同様にして調製されるが、コバルト、モリブデンおよびリンを含有する金属溶液を均一にした後に、トリエチレングリコール(triethylene glycol:TEG)が加えられ、再度、モリブデンのモル当たり1モルまたはコバルトのモル当たり2.8モルの割合とされる。触媒C4は、水飽和雰囲気中12時間にわたって周囲温度で放置されて成熟させられ、次いで、120℃で16時間にわたって乾燥させられた。触媒C4の最終組成は、酸化物の形態で表されかつ乾燥触媒の質量に対して言及されて、以下の通りである:MoO
3=22.6±0.2重量%、CoO=4.1±0.1重量%およびP
2O
5=3.9±0.1重量%。
【0187】
本発明による触媒C5およびC6は、以下の通りに調製される。コバルト、モリブデンおよびリンが、実施例1に記載された、「押出物」の形態にあるアルミナ担体に加えられる。含浸溶液は、酸化モリブデン(78.75g)および水酸化コバルト(18.54g)を90℃で85%リン酸水溶液22.08g中に溶解させることによって調製された。上記混合物を均一にした後、γ−バレロラクトンが、溶液に、モリブデンに対して等モル割合で、すなわち、コバルトのモル当たり2.8モルで加えられ、これにより、触媒C5が得られた。同様にして、4−ヒドロキシ吉草酸が、溶液に、モリブデンに対して等モル割合で、すなわち、コバルトのモル当たり2.8モル加えられ、これにより、触媒C6が得られた。溶液の容積は、各含浸の前に水を加えることによって担体の細孔容積に調節された。乾式含浸の後、2種の触媒の押出物は、水飽和雰囲気中12時間にわたって周囲温度で放置されて成熟させられ、次いで、120℃で16時間にわたって乾燥させられた。触媒C5の最終組成は、酸化物の形態で表されかつ乾燥触媒の質量に対して言及されて、以下の通りである:MoO
3=22.4±0.2重量%、CoO=4.0±0.1重量%およびP
2O
5=4.0±0.1重量%。触媒C6の最終組成は、酸化物の形態で表されかつ乾燥触媒の質量に対して言及されて、以下の通りである:MoO
3=22.3±0.2重量%、CoO=3.8±0.1重量%およびP
2O
5=4.2±0.1重量%。
【0188】
(実施例3:アルミナ上CoMoP触媒C7(本発明に合致する)の前含浸による調製)
γ−バレロラクトン24.7gが、水に希釈されて担体の細孔容積に等しい全容積を有する溶液を得るようにし、これが、上記の実施例1において記載された、「押出物」の形態にあるアルミナ担体に加えられる。こうして形成された溶液は、次いで、担体上に乾式含浸させられ、その後、3時間の成熟時間が、水飽和雰囲気中周囲温度で観察され、その後、120℃で2時間にわたって乾燥がなされる。改変された担体は、次いで、酸化モリブデン(27.00g)および水酸化コバルト(6.36g)の85%リン酸水溶液7.57g中の高温分解によって調製された新鮮な含浸溶液を含浸させられ、この際、水を加えることによって、この最後に言及された溶液の容積を従前に改変された担体の細孔容積に調節するように注意がなされる。乾式含浸の後、押出物は、水飽和雰囲気中3時間にわたって周囲温度で放置されて成熟させられ、次いで、120℃で16時間にわたって乾燥させられ、これにより、触媒C7が得られた。触媒C7の最終組成は、酸化物の形態で表されかつ乾燥触媒の質量に対して言及されて、以下の通りである:MoO
3=22.5±0.2重量%、CoO=4.1±0.1重量%およびP
2O
5=4.0±0.1重量%。用いられた量は、γ−バレロラクトンの量が、モリブデンのモル当たり1モル、コバルトのモル当たり2.8モルになるようにされる。
【0189】
(実施例4:アルミナ上CoMoP触媒C8(本発明に合致しない)およびC9(本発明に合致する)の共含浸(低い有機化合物/Moの比)による調製)
コバルト、モリブデンおよびリンが、触媒C3の調製
の場合と同様に上記の実施例1において記載された、「押出物」の形態にあるアルミナ担体に加えられる。しかしながら、含浸溶液の調製の間、クエン酸/モリブデンのモル比は、この場合において、0.25mol/mol、または、コバルトのモル当たりクエン酸0.70モルに等しい。乾式含浸の後、押出物は、水飽和雰囲気中12時間にわたって周囲温度で放置されて成熟させられ、次いで、それらは、120℃で16時間にわたって乾燥させられる。こうして得られた乾燥済み触媒前駆体は、C8で表記される。触媒C8の最終組成は、酸化物の形態で表されかつ乾燥触媒の質量に対して言及されて、以下の通りである:MoO
3=22.5±0.2重量%、CoO=4.0±0.1重量%およびP
2O
5=3.9±0.1重量%。
【0190】
コバルト、モリブデンおよびリンが、触媒C5の調製の場合と同様に、上記の実施例1において記載された、「押出物」の形態にあるアルミナ担体に加えられる。しかしながら、含浸溶液の調製の間、γ−バレロラクトン対モリブデンのモル比は、0.25mol/mol、すなわち、コバルトのモル当たりγ−バレロラクトン0.70モルに固定された。乾式含浸の後、押出物は、水飽和雰囲気中12時間にわたって周囲温度で放置されて成熟させられ、次いで、120℃で16時間にわたって乾燥させられた。こうして得られた乾燥済み触媒前駆体は、C9で表記される。触媒C9の最終組成は、酸化物の形態で表されかつ乾燥触媒の質量に対して言及されて、以下の通りである:MoO
3=22.3±0.2重量%、CoO=4.1±0.1重量%およびP
2O
5=4.3±0.1重量%。
【0191】
(実施例5:ガスオイルのHDSにおける触媒C1、C2、C3、C4およびC8(本発明に合致しない)およびC5、C6、C7およびC9(本発明に合致する)の評価)
触媒C1、C2、C3、C4およびC8(本発明に合致しない)およびC5、C6、C7およびC9(本発明に合致する)が、ガスオイルのHDSにおいて試験された。
【0192】
用いられるガスオイル供給原料の特徴:15℃における密度:0.8522g/cm
3、硫黄:1.44重量%。
【0194】
試験は、等温試験反応器において行われる。この等温試験反応器は、横断固定床を有し、流体は、底部から頂部に流通する。試験用のガスオイルに2重量%のジメチルジスルフィドを加えたものによる圧力下の装置内の350℃での現場内硫化の後、水素化脱硫試験が以下の操作条件下に行われた:全圧:7MPa、触媒容積:30cm
3、温度:330〜360℃、水素流量:24L/hおよび供給原料流量:60cm
3/h。
【0195】
試験された触媒の触媒性能は、表1に示される。それらは、基準として選択される比較触媒(C2)をベースとするセ氏温度で表される:それらは、流出物中の硫黄50ppmを達成するのに適用されるべき温度差に相当する。負の値は、目標の硫黄含有率は、より低い温度により達成されること、したがって、活性の利得があることを指し示す。正の値は、目標の硫黄含有率は、より高い温度により達成されること、したがって、活性の損失があることを意味する。得られた結果は、表1に提示される。
【0196】
表1により、γ−バレロラクトンばかりでなく、4−ヒドロキシ吉草酸によっても提供される触媒効果における利得が明らかに示される。実際に、触媒C5、C6およびC7(本発明に合致する)の活性は、有機化合物の同一のモル割合(1mol/mol
Mo)について評価されて全ての他の触媒について得られる活性より高い。
【0197】
同一の量の添加物で、利得も最大にされる;触媒C5およびC6は、より活性の乏しいクエン酸またはTEGによりそれぞれ得られる触媒C3およびC4より活性である。
【0198】
触媒C7の活性は、基準触媒C2の活性または乾燥済みでγ−バレロラクトンまたは4−ヒドロキシバレアシン酸を有しない触媒C1の活性よりはるかに高い。
【0199】
本発明による触媒の利点は、触媒C9によって示されるように、有機化合物のより低い割合においてはるかに有意であり、それ故に、γ−バレロラクトンの固有の有効性は、他の化合物の有効性より高く、そのために、有意な触媒効果を観察するためにより高い割合の化合物を導入することが必要である。