特許第6706661号(P6706661)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社シマノの特許一覧 ▶ イーグル工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6706661-魚釣用スピニングリール 図000002
  • 特許6706661-魚釣用スピニングリール 図000003
  • 特許6706661-魚釣用スピニングリール 図000004
  • 特許6706661-魚釣用スピニングリール 図000005
  • 特許6706661-魚釣用スピニングリール 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6706661
(24)【登録日】2020年5月20日
(45)【発行日】2020年6月10日
(54)【発明の名称】魚釣用スピニングリール
(51)【国際特許分類】
   A01K 89/01 20060101AFI20200601BHJP
   F16C 33/76 20060101ALI20200601BHJP
   F16J 15/43 20060101ALI20200601BHJP
【FI】
   A01K89/01 E
   F16C33/76 Z
   F16J15/43
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-232132(P2018-232132)
(22)【出願日】2018年12月12日
(62)【分割の表示】特願2015-72710(P2015-72710)の分割
【原出願日】2015年3月31日
(65)【公開番号】特開2019-50830(P2019-50830A)
(43)【公開日】2019年4月4日
【審査請求日】2018年12月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
(73)【特許権者】
【識別番号】000101879
【氏名又は名称】イーグル工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】平山 広和
(72)【発明者】
【氏名】平岡 宏一
(72)【発明者】
【氏名】住川 大樹
【審査官】 田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−187566(JP,A)
【文献】 特開2014−161300(JP,A)
【文献】 特開2011−167186(JP,A)
【文献】 特開2012−019752(JP,A)
【文献】 特開昭63−246577(JP,A)
【文献】 特開2011−155944(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 89/00−89/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前方に収容部材が設けられ、前記収容部材から突出するピニオンギアを回転自在に支持するリール本体と、
前記収容部材と前記ピニオンギアとの間に介設された一方向クラッチと、
前記収容部材に組み付けられた磁気シール機構と、を備え、
前記磁気シール機構は、
前記ピニオンギアに嵌合した磁性体と、
前記磁性体の外周側に配置されたリング状の磁石と、
互いにリング状を呈し、前記磁石の軸方向両側に配置された第1の磁性板及び第2の磁性板と、
前記磁性体と前記一対の磁性板との隙間に配置され磁力により保持される磁性流体と、
を備え、
前記第1の磁性板は、前記第2の磁性板よりも前記一方向クラッチ寄りに設けられ、かつ、外径が前記第2の磁性板よりも大径に形成されていることを特徴とする魚釣用スピニングリール。
【請求項2】
前記リール本体は、前記収容部材が形成されたリール本体前部を備え、
前記一方向クラッチは、前記収容部材を介して前記リール本体前部に設けられ、
前記第1の磁性板は、前記収容部材を覆っていることを特徴とする請求項1に記載の魚釣用スピニングリール。
【請求項3】
前記第1の磁性板は、
前記収容部材に固定される環状の外周部と、
前記外周部の内周縁に連続して前記永久磁石を保持する環状の内周部と、
を備えていることを特徴とする請求項2に記載の魚釣用スピニングリール。
【請求項4】
前記一方向クラッチは、外輪、内輪、ローラを有するローラ式のワンウェイクラッチであることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の魚釣用スピニングリール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気シール機構を備える魚釣りリールおよび魚釣りリール用磁気シール機構に関する。
【背景技術】
【0002】
魚釣りリールでは、リール本体に形成される収容部内に設けられる駆動部への浸水を防止し、水等が浸入し易い過酷な環境下においても常に安定した駆動性能を得るために、駆動部にシール機構が設けられる。シール機構に磁気シールを用いる魚釣りリールとして、例えば、特許文献1や特許文献2が知られている。
【0003】
特許文献1の魚釣りリールでは、ハンドルの操作で連動回転する駆動部材を収容支持する収容凹部の開口部と駆動部材との間に磁気回路を形成し、この間に磁性流体を保持することにより開口部をシールする。特許文献2の魚釣りリールでは、ロータと一体回転する駆動部と、該駆動部を支持する支持部との間に磁気シール機構が形成される。
【0004】
磁気シール機構は、磁石と、駆動部材または駆動部に嵌合されて磁石との間で磁気回路を形成する筒状の磁性体と、磁石と磁性体との間に保持される磁性流体と、によって構成されている。特許文献1の魚釣りリールでは、磁気シール機構を構成する磁石と、磁性材料で形成されて磁石を挟んで保持する保持部材とを、シールする開口部にカバー部材で支持している。特許文献1の構成では、磁石および保持部材とは別体のカバー部材が必要である。
【0005】
特許文献2の魚釣りリールでは、磁気シール機構を構成する保持部材のうち、回転するロータ側の保持部材の外径を大きくして、その外径を大きくした保持部材が、駆動部を保護する保護カバーのロータ側の端面にボルトで固定されている。磁石と小径の保持部材は、大径の保持部材と保護カバーの段部に挟まれて保持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−187566号公報
【特許文献2】特開2011−167186号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述のとおり、特許文献1の構成では、磁石および保持部材とは別体のカバー部材が必要である。特許文献2の構成では、磁石および保持部材を支持するための別体の部材は不要であるが、磁石および保持部材を取り付ける保護カバーの端面に段部を形成する必要がある。また、保持部材を固定するネジの頭が保持部材とロータの間に突出する。
【0008】
本発明は、これらの問題を解決するためになされたものであって、魚釣りリールにおいて、部品数を増加させることなく、磁気シール機構でシールされる開口部の構造を単純にし、加工を容易にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の観点に係る魚釣りリールは、前方に収容部材が設けられ、収容部材から突出するピニオンギアを回転自在に支持するリール本体と、収容部材とピニオンギアとの間に介設された一方向クラッチと、収容部材に組み付けられた磁気シール機構と、を備え、磁気シール機構は、ピニオンギアに嵌合した磁性体と、磁性体の外周側に配置されたリング状の磁石と、互いにリング状を呈し、磁石の軸方向両側に配置された第1の磁性板及び第2の磁性板と、記磁性体と一対の磁性板との隙間に配置され磁力により保持される磁性流体と、を備え、第1の磁性板は、第2の磁性板よりも一方向クラッチ寄りに設けられ、かつ、外径が第2の磁性板よりも大径に形成されている。
【0010】
好ましくは、リール本体は、収容部材が形成されたリール本体前部を備え、一方向クラッチは、収容部材を介してリール本体前部に設けられ、第1の磁性板は、収容部材を覆っている。
【0011】
好ましくは、第1の磁性板は、収容部材に固定される環状の外周部と、外周部の内周縁に連続して永久磁石を保持する環状の内周部と、を備えている。
【0012】
好ましくは、一方向クラッチは、外輪、内輪、ローラを有するローラ式のワンウェイクラッチである。
【0013】
本発明の第2の観点に係る魚釣りリール用磁気シール機構は、魚釣りリールのリール本体に回転可能に支持される回転軸を開口部から突出させて回転軸を部分的に収容し、リール本体に対して固定される収容部の開口部で収容部と回転軸の間をシールする魚釣りリール用磁気シール機構であって、磁石と、磁石を挟持し該磁石の収容部側に配置される第1の磁性板および磁石の収容部とは反対側に配置される第2の磁性板と、回転軸と第1の磁性板および第2の磁性板の少なくともいずれか一方との隙間に保持される磁性流体と、を備える。
【0014】
そして、第1の磁性板、磁石および第2の磁性板からなる磁石構成体の、収容部の開口部周囲の端面に接する内部側の面の外径は、磁石構成体の外部側の面の外径より大きく、第1の磁性板および第2の磁性板のうち外径が大きい方に、当該魚釣りリール用磁気シール機構を収容部に固定するための固定部材を通す穴が形成されている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、磁石構成体を取り付ける収容部の端面に段部を形成する必要がなく、取り付けるための部材を必要としない。その結果、磁気シール機構でシールされる開口部の構造を単純にし、加工を容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施の形態に係る魚釣りリールの断面図である。
図2】実施の形態に係る磁気シール機構部分の断面図である。
図3図2のA−A線断面図である。
図4】実施の形態に係る磁石構成体の斜視図である。
図5】変形例に係る磁気シール機構部分の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[実施の形態]
図1は、本発明の実施の形態に係る魚釣りリールの断面図である。実施の形態では、魚釣りリールとしてスピニングリール100を対象とする。スピニングリール100は、図1に向かって左方向が釣り竿の先端(前方)に向かうように、釣り竿に取り付けられる。スピニングリール100は、リール本体1、ロータ11、スプール12およびハンドル13を備える。スプール12に巻かれた釣り糸(図示せず)は、前方すなわち図1の左方向に繰り出される。
【0018】
ロータ11は、クランクであるハンドル13を回すことによって、前後方向すなわち図1の左右方向に延びる中心軸の周りに回転する。ハンドル13を回すとロータ11の回転と同期してスプール12が前後方向に往復動する。その動作によって、繰り出されていた釣り糸はロータ11に案内されてスプール12の円筒面に均されて巻き付けられる。
【0019】
ロータ11は、ピニオンギア3の取付部32に嵌合してピニオンギア3に固定され、ピニオンギア3とともに回転する。ピニオンギア3は、リール本体1に回転可能に支持される。ピニオンギア3は中空の筒状で、ピニオンギア3を貫通してスプール軸2が配置される。スプール軸2とピニオンギア3は、相対的に回転および往復動する。スプール軸2の先端側には、ドラグ機構16を介してスプール12が装着されている。スプール軸2の後端側は、オシレーティング機構15に接続されている。
【0020】
ハンドル13はクランクになっており、クランク軸に駆動ギア14が取り付けられている。駆動ギア14は、例えば、かさ歯車で、ピニオンギア3のギア部31と噛み合っている。オシレーティング機構15は、ピニオンギア3と同期して回転する。オシレーティング機構15が回転すると、スプール軸2を前後方向に往復動させる。スプール軸2の後端側、ピニオンギア3のギア部31側、駆動ギア14およびオシレーティング機構15は、リール本体1に収容されている。
【0021】
ピニオンギア3が一方向にのみ回転するように、ピニオンギア3と収容部材4の間に一方向クラッチ5が配置されている。収容部材4は、リール本体1に固定される。一方向クラッチ5の内輪は、ピニオンギア3に嵌合してピニオンギア3とともに回転する。一方向クラッチ5の外輪は、収容部材4に嵌合して固定される。
【0022】
一方向クラッチ5は、例えばローラ式のワンウェイクラッチである。ローラ式のワンウェイクラッチは外輪、内輪、ローラおよびスプリングで構成され、外輪の内周または内輪の外周にカム面が形成されている。カム面に対向してローラが配置され、スプリングによって外輪のカム面と内輪の外周、あるいは内輪のカム面と外輪の内周に接触するように保たれている。外輪に対して内輪がある一方向に回転しようとするとカム面とローラとの接触面圧が高くなり、抵抗となって内輪は外輪に対して回転しない。内輪が逆方向に回転しようとすると、カム面とローラとの接触面圧が低くなり、ローラは遊転して内輪は外輪に対して回転する。その結果、ピニオンギア3は一方向にのみ回転する。
【0023】
一方向クラッチ5は、蓋部材6で収容部材4に保持される。蓋部材6は、ピニオンギア3とロータ11のピニオンギア3に嵌合する部分であるボス部で構成される回転部分を除いて、収容部材4の前面を覆っている。蓋部材6は、回転部分に接触しないように固定される。
【0024】
蓋部材6とロータ11のボス部との間をシールするために、円環状の磁石8および磁性板9a、9bを含む磁気シール機構が配置される。また、ボス部の回転方向外周に一巡して、円環状に磁性体7が形成されている。磁性体7と磁石8および磁性板9a、9bとは対向し、磁性体7と磁石8および磁性板9a、9bの間には隙間がある。磁石8、磁性板9a、9bおよび磁性体7で磁気回路が形成される。磁性体7と磁性板9a、9bの間に磁性流体が保持されて、蓋部材6と磁性体7(ボス部)との間がシールされる。
【0025】
ピニオンギア3、ロータ11のボス部および磁性体7は、リール本体1に回転可能に支持される回転軸である。蓋部材6と収容部材4は、回転軸であるピニオンギア3とボス部および磁性体7を開口部から突出させて、ピニオンギア3を部分的に収容する収容部を構成する。蓋部材6と収容部材4は、リール本体1に対して固定される。シール機構は、収容部の開口部で収容部と回転軸の間をシールするものである。
【0026】
図2は、実施の形態に係る磁気シール機構部分の断面図である。図2では、スプール軸2の中心線に対して片側だけが示されている。
【0027】
ロータ11は、円筒部111、壁部112およびボス部113から構成される。これらは1つの部材によって一体的に形成されている。円筒部111は、円筒状の部材であって、内部に収容空間が形成されている。壁部112は、円形の板状に形成されており、中央に開口部を有する。壁部112の外周は、円筒部111の内周と連結している。ボス部113は、壁部112の内周側端部から一方向クラッチ5側に延びている。ボス部113は、ピニオンギア3の取付部32に嵌合して固定され、ロータ11はピニオンギア3とともに回転する。
【0028】
収容部材4は、リール本体1の前方に、リール本体1に対して回転しないように、例えばネジで固定される。収容部材4の内部に一方向クラッチ5が収容される。蓋部材6は、収容部材4の外周を覆う円筒部と、収容部材4の前面を覆う蓋部とから構成される円環状の部材である。蓋部材6は、蓋部で一方向クラッチ5を収容部材4の内部空間に保持する。蓋部材6は、例えばネジで、リール本体1に固定される。蓋部材6の円筒部の端部とリール本体1との間にOリング17が介在している。蓋部材6の内周面は、磁性体7の外周面と間隔をあけて対向する。
【0029】
磁性体7は、ボス部113の回転方向外周に一巡して円環状に形成され、ボス部113に嵌合している。図2の例では、磁性体7はピニオンギア3の外周に接する円環板状の部分を含む。磁性体7は、内周でピニオンギア3に嵌合しており、磁性体7の外周面は磁性体7および磁性体7とピニオンギア3の嵌め合いで規定される。
【0030】
磁性体7に間隙を有し回転半径方向に対向して、磁石8が配置される。磁石8は円環状に形成されている。また、磁性体7に間隙を有し回転半径方向に対向して、磁性板9a、9bが配置される。磁性板9a、9bはともに、磁性体7の回転半径方向の外周を囲む円環状である。磁性板9aおよび9bは、磁石8を回転軸の方向に挟持している。磁石8の蓋部材6(収容部)側に配置される磁性板9aの外径は、磁石8の蓋部材6とは反対側に配置される磁性板9bの外径より大きい。
【0031】
磁石8、磁性板9aおよび磁性板9bは、例えば接着剤で相互に固定され、磁石構成体を形成する。磁性板9aが、固定部材、例えばネジ91で蓋部材6に締結されて、磁石構成体は蓋部材6に固定される。ネジ91は、蓋部材6に形成されたネジ穴に螺合するネジ部と、磁性板9aを押さえるネジ頭を有する。ネジ91は、ピニオンギア3の中心軸を中心とする円周上に等間隔に2つ以上配置される。蓋部材6のロータ11側の端面は平面である。
【0032】
磁石8および磁性板9a、9bの内周と磁性体7の間には隙間がある。その隙間に磁性流体10が配置される。磁石8、磁性板9a、9bおよび磁性流体10は磁気シール機構を構成する。
【0033】
磁石8、磁性板9a、磁性体7および磁性板9bで磁気回路が形成される。磁性流体10は、たとえば炭化水素油やフッ素油ベースの溶媒に粒径が数nm〜十数nmの強磁性体微粒子を界面活性剤を用いて安定に分散させた物質である。磁性体7の磁石8と磁性板9a、9bに対向する部分が磁化されるので、磁性流体10は磁石8、磁性板9a、9bおよび磁性体7で囲まれる領域に保持される。磁石8および磁性板9a、9bと磁性体7の間の隙間は磁性流体10でシールされ、異物が円筒部111の収容空間から一方向クラッチ5側に浸入するのを防止する。この磁気シール機構は、磁性体7の周りを液体で取り囲むため、気体に対して高い密封性がある。また、シール部分での固体接触がないので、ダストの発生がない。さらにシール部分に固体摺動がないので、損失トルクが小さく回転性能が低下しにくい。
【0034】
図2では、磁性流体10が磁石8、磁性板9a、9bおよび磁性体7で囲まれる領域全体に満たされているが、磁性流体10は、磁性板9aと磁性体7との間、または、磁性板9bと磁性体7との間にだけ保持されてもよい。また、磁石8の内周を少し大きくして、磁性板9aと磁性体7との間、および、磁性板9bと磁性体7との間の2つの部分に分けて、磁性流体10が保持されてもよい。
【0035】
磁石8の磁力線は、磁性板9a、9bおよび磁性体7に引き寄せられてその中を通るので、一方向クラッチ5側に磁石8の磁束が漏れることはない。そのため、一方向クラッチ5の内輪51は磁化されることがなく、一方向クラッチ5の作動に磁石8の影響が及ぶことはない。その結果、本実施の形態によれば、一方向クラッチ5としての機能を低下させることなく、組み立ても容易で安定した防水性能を維持することができる。
【0036】
磁性板9aの外径は、磁性板9bの外径より大きく、磁性板9aが蓋部材6の端面に取り付けられるので、蓋部材6の端面に段部を形成する必要はなく、端面を平面にすることができる。その結果、蓋部材6の加工を容易にすることができる。また、磁石8と磁性板9bは、磁性板9aの蓋部材6とは反対側に固定されるので、磁性板9aを締結するネジ91のネジ頭の高さを、磁石8と磁性板9bの厚さの範囲に収めれば、磁石構成体よりロータ11の壁部112側に突き出る部分をなくすことができる。
【0037】
図2では、鍋ネジの形状が描かれているが、ネジ91は図2の形状には限らない。例えば、トラスネジ、丸皿ネジ、低頭ネジなどを用いることができる。
【0038】
図3は、図2のA−A線断面図である。図3の例では、3個のネジ91がピニオンギア3の中心軸を中心とする円周上に等間隔に配置されている。そして、磁性板9aの外周に2箇所、蓋部材6の突起61に嵌合する穴92が形成されている。2つの突起61と2つの穴92がそれぞれ嵌合する位置で、磁石構成体と磁性体7の隙間が均等になるように構成されている。図3の例では、穴92は、磁性板9aの外周から切り込まれたU字型に形成されている。突起61と穴92は、ネジ91に干渉しない位置に形成される。
【0039】
図4は、実施の形態に係る磁石構成体の斜視図である。ネジ91は、二点鎖線で描かれている。図4では、煩雑を避けるためにネジ91は1つしか描かれていないが、図3に示されるように、ネジ91は3箇所にある。磁性板9aには、ネジ91を通す穴93が形成されている。穴93の1つは磁性板9bに隠れて見えないが、穴93は3箇所に形成される。ネジ91は、前述のとおり、ネジ部91aとネジ頭91bを有する。磁性板9a(第1の磁性板)の磁石8側の面から磁性板9b(第2の磁性板)の磁石8と反対側の面までの高さは、ネジ頭91bの高さより大きい。
【0040】
図2の磁性板9aと磁性板9bの形状を言い換えれば、磁性板9a(第1の磁性板)、磁石8および磁性板9b(第2の磁性板)からなる磁石構成体の、蓋部材6(収容部)の開口部周囲の端面に接する内部側の面の外径は、磁石構成体の外部側の面の外径より大きい。このように構成すれば、磁性板9aと磁性板9bとの関係は、図2の例に限らない。
【0041】
図5は、変形例に係る磁気シール機構部分の断面図である。図5の変形例では、磁石8は磁性板9cと磁性板9dに挟持される。磁石8の蓋部材6とは反対側に配置される磁性板9d(第2の磁性板)は、中央に凹部が形成された段差のある形状である。磁石8および磁性板9cは、磁性板9dの凹部に嵌まる。磁性板9dの凹部の深さは、磁石8および磁性板9cの厚さとほぼ同じであって、磁性板9dの凹部に磁石8および磁性板9cを嵌めると、磁性板9dと磁性板9cはほぼ平面になる。
【0042】
変形例でも磁石8、磁性板9cおよび磁性板9dは、例えば接着剤で相互に固定され、磁石構成体を形成する。変形例では、磁性板9dが例えばネジ91で蓋部材6に締結されて、磁石構成体は蓋部材6に固定される。ネジ91は、ピニオンギア3の中心軸を中心とする円周上に等間隔に2つ以上配置される。蓋部材6のロータ11側の端面は平面である。
【0043】
変形例でも、磁性板9c(第1の磁性板)、磁石8および磁性板9d(第2の磁性板)からなる磁石構成体の、蓋部材6(収容部)の開口部周囲の端面に接する内部側の面の外径は、磁石構成体の外部側の面の外径より大きい。そして、蓋部材6の端面に段部を形成する必要はなく、端面を平面にすることができる。その結果、蓋部材6の加工を容易にすることができる。
【0044】
変形例では、磁性板9dにネジ91を通す穴93が形成される。すなわち、第1の磁性板と第2の磁性板のうち外形が大きい方に、固定部材を通す穴93が形成される。磁性板9c(第1の磁性板)の磁石8側の面から磁性板9d(第2の磁性板)の磁石8と反対側の面までの高さは、ネジ頭91bの高さより大きい。磁石8と磁性板9dは、磁性板9cの蓋部材6とは反対側に固定されるので、磁性板9dを締結するネジ91のネジ頭の高さを、磁石8と磁性板9dの厚さの範囲に収めれば、磁石構成体よりロータ11の壁部112側に突き出る部分をなくすことができる。
【0045】
変形例では、磁性板9dに凹部を形成する必要があるが、磁性板9dと磁石8の界面および磁石8と磁性板9cの界面は、磁性板9dに覆われて保護される。なお、磁性板9dの凹部は、例えばプレス絞り加工で形成することができる。
【0046】
変形例においても、図3に示すように、蓋部材6の開口部周囲の端面に接する磁石構成体の内部側の面に、蓋部材6の突起61とそれに嵌合する穴92を形成することができる。突起が外周に近ければ、穴92は、磁性板9dに形成される。
【0047】
変形例では、ロータ11のボス部と磁性体7の構成が異なっている。ボス部113は磁性材料から形成され、磁性体7はボス部113と一体に形成されている。ロータ11は、円筒部111と壁部112が一体に形成され、ボス部113は別部材で形成される。壁部112の内周部分がボス部113に固定されてロータ11を構成する。壁部112はボス部113に、例えば、強圧入、カシメ、接着またはネジ止めなどで固定される。その他の構成は、図2と同様である。
【0048】
変形例においても、磁石8の磁力線は、磁性板9c、9dおよびボス部113に引き寄せられてその中を通るので、一方向クラッチ5側に磁石8の磁束が漏れることはない。そのため、一方向クラッチ5の内輪51は磁化されることがなく、一方向クラッチ5の作動に磁石8の影響が及ぶことはない。その結果、変形例でも、一方向クラッチ5としての機能を低下させることなく、組み立ても容易で安定した防水性能を維持することができる。
【0049】
変形例では、磁石8および磁性板9c、9dに対向する磁性体7(ボス部113)の外周面は、ボス部113とピニオンギア3の嵌め合い精度で規定されるので、磁性板9c、9dとの隙間の精度が向上する。その結果、磁気シール機構のシール性能が向上する。
【0050】
実施の形態では、スピニングリール100のロータ11を駆動するピニオンギア3に嵌合する一方向クラッチ5を磁気シール機構でシールする構成を説明したが、魚釣りリールの磁気シール機構は、この例に限らない。回転軸を開口から突出させて回転軸を部分的に収容する収容部の開口部をシールする磁気シール機構を、回転軸の突出した側から収容部に取り付ける場合に適用することができる。
【0051】
また、磁石および磁性板に対向して磁気回路を形成するのは、図2の磁性体7または図5のボス部113に限らない。例えばピニオンギア3が磁性体で形成される場合は、ピニオンギア3と磁性板の間に磁性流体を配置することができる。
【符号の説明】
【0052】
1 リール本体
2 スプール軸
3 ピニオンギア
4 収容部材
5 一方向クラッチ
6 蓋部材
7 磁性体
8 磁石
9a、9c 磁性板(第1の磁性板)
9b、9d 磁性板(第2の磁性板)
10 磁性流体
11 ロータ
12 スプール
13 ハンドル
14 駆動ギア
15 オシレーティング機構
61 突起
91 ネジ
91a ネジ部
91b ネジ頭
92 穴
93 穴
100 スピニングリール
111 円筒部
112 壁部
113 ボス部
図1
図2
図3
図4
図5