特許第6706664号(P6706664)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シーメンス アクチエンゲゼルシヤフトの特許一覧

特許6706664部品の粉末床式付加製造過程を監視する方法及びシステム
<>
  • 特許6706664-部品の粉末床式付加製造過程を監視する方法及びシステム 図000002
  • 特許6706664-部品の粉末床式付加製造過程を監視する方法及びシステム 図000003
  • 特許6706664-部品の粉末床式付加製造過程を監視する方法及びシステム 図000004
  • 特許6706664-部品の粉末床式付加製造過程を監視する方法及びシステム 図000005
  • 特許6706664-部品の粉末床式付加製造過程を監視する方法及びシステム 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6706664
(24)【登録日】2020年5月20日
(45)【発行日】2020年6月10日
(54)【発明の名称】部品の粉末床式付加製造過程を監視する方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/30 20170101AFI20200601BHJP
   B29C 64/153 20170101ALI20200601BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20200601BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20200601BHJP
   B22F 3/105 20060101ALI20200601BHJP
   B22F 3/16 20060101ALI20200601BHJP
【FI】
   B29C64/30
   B29C64/153
   B33Y10/00
   B33Y30/00
   B22F3/105
   B22F3/16
【請求項の数】14
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-500370(P2018-500370)
(86)(22)【出願日】2016年7月4日
(65)【公表番号】特表2018-521883(P2018-521883A)
(43)【公表日】2018年8月9日
(86)【国際出願番号】EP2016065660
(87)【国際公開番号】WO2017005675
(87)【国際公開日】20170112
【審査請求日】2018年4月12日
(31)【優先権主張番号】102015212837.7
(32)【優先日】2015年7月9日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】517291346
【氏名又は名称】シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 浩
(72)【発明者】
【氏名】クリューガー、ウルスス
(72)【発明者】
【氏名】シュティール、オリファー
【審査官】 一宮 里枝
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/210408(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/020939(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0255666(US,A1)
【文献】 特開2006−053127(JP,A)
【文献】 特開2005−262881(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00−64/40
B22F 3/105
B22F 3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末床(14)で部品(16)を製造する粉末床式付加製造の過程を監視する方法であって、
イメージセンサ(31)を使用し、少なくとも1つの光源(34)によって斜め上方の少なくとも1つの方向から前記粉末床(14)の表面(21)を照明すると共に、光学ユニット(32)を用いて前記イメージセンサ(31)で前記粉末床(14)の表面(21)を撮像し、
前記イメージセンサ(31)により得た画像を評価して前記粉末床(14)の表面(21)を監視する、ことを含み、
前記粉末床(14)を滑らかにするためのドクターブレード(19)の移動方向(25)に対する前記イメージセンサ(31)の画素アレイのアライメントを、前記光学ユニット(32)の光軸を中心として30°〜60°の角度だけ回転させてある、方法。
【請求項2】
前記イメージセンサ(31)を前記粉末床に対し垂直方向の上方に配置し、前記光学ユニット(32)の光軸を前記粉末床(14)の表面(21)と直交させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記イメージセンサ(31)の解像度は、使用する粉末の少なくとも10個の粒子が、該イメージセンサ(31)により得られる粉末床の画像の1画素で描写されるように選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記光源(34)は、前記粉末床(14)の表面(21)に直交する視点方向で見た照明方向(35)が、前記粉末床(14)を滑らかにするためのドクターブレード(19)の移動方向(25)から外れるように配置してある、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記光源(34)の前記照明方向(35)が、前記ドクターブレード(19)の移動方向(25)に対して80°〜100°の角度である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
多数の前記光源(34)によって、前記粉末床(14)の表面(21)に直交する視点方向で見て互いに異なる多数の照明方向(35)から照明を行う、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
1つ又は多数の前記光源(34,34a,34b,34c,34d,34e,34f,34g)が、加熱された前記粉末床(14)及び現在製造されている前記部品(16)の熱放射の波長スペクトルとは異なる波長スペクトルの光を放射する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記1つの光源(34)が単色光を放射するか、又は、前記多数の光源(34a,34b,34c,34d,34e,34f,34g)がそれぞれ異なる波長の単色光を放射する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記イメージセンサ(31)が、加熱された前記粉末床(14)及び現在製造されている前記部品(16)の熱放射のスペクトルに対して鈍感であるか、又は、
前記光学ユニット(32)に、加熱された前記粉末床(14)及び現在製造されている前記部品(16)の熱放射のスペクトルに対するフィルタ(38)を提供してある、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
前記粉末床(14)の表面(21)を前記少なくとも1の光源(34)で照明する前に、当該粉末床(14)の表面(21)を、前記光学ユニット(32)を使用して前記イメージセンサ(31)で撮像し、
この後に、前記少なくとも1の光源(34)によって斜め上方の少なくとも1つの方向から前記粉末床(14)の表面(21)を照明し、当該粉末床(14)の表面(21)を、前記光学ユニット(32)を使用して前記イメージセンサ(31)で撮像し、
そして、評価に際し、照明してない前記表面(21)の画像を照明してある前記表面(21)の画像から差し引く、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項11】
溝(36)が前記粉末床(14)において認識された場合に製造を中断するべく、溝(36)の存在に関して前記粉末床(14)を検査するために実行される、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
現在製造されている前記部品(16)の層がある前記粉末床(14)の領域に、認識された溝(36)がある場合だけ製造を中断する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
現在製造されている前記部品(16)の表面の凹凸も検査するために実行される、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
部品の粉末床式付加製造を行うシステムであって、
処理室(12)に配置された、粉末床(14)用の容器装置(13)と、
前記容器装置(13)に向けられたイメージセンサ(31)及び光学ユニット(32)を含む光学監視ユニット(30)と、
前記処理室(12)の前記容器装置(13)に対し斜め上方に配置され、前記容器装置(13)を直接照明するために使用される、少なくとも1つの光源(34)とを備え、
請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法を実行する、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
部品の粉末床式付加製造過程を監視する方法及び当該方法に適したシステム。
本発明は、粉末床で部品を製造する粉末床式付加製造の過程を監視する方法に関する。さらに、本発明は、処理室内に配置される粉末床用容器装置を備えた粉末床式付加製造システムに関する。
【背景技術】
【0002】
部品を製造するための付加製造法が一般に知られている。粉末床を利用した付加製造法もこれらに含まれる。この方法の場合、部品は、粉末床から1層ずつ製造されていく。各層において一定の厚さの粉末層が粉末床において塗布され、そして、この粉末が、エネルギー源を用いて溶融又は焼結されて、製造される部品の層が粉末床中に造り出される。好ましくはエネルギー源は、このためのレーザビーム又は電子ビームを発生する。例えば、レーザを利用する方法として、選択的レーザ溶融(SLM)と選択的レーザ焼結(SLS)が挙げられる。電子ビームを利用する方法として電子ビーム溶融(EBM)が挙げられる。
【0003】
粉末床の層は、ドクター処理することが好ましい。すなわち、ドクターブレードの刃を粉末床の表面にあててドクターブレードを引き摺ることにより、表面を滑らかにして規定の水準面を設定する。このドクター処理において、大きい粉末塊が線欠陥を発生させることがある。線欠陥は、粉末床の表面に溝として形成される。また、この塊は粉末床内に残る可能性があり、残った場合、粉末床の表面よりも隆起したり、粉末床の表面においてその周りにクレータを作ることがある。粉末床内の塊は、例えば粉末層の溶融中に、溶融した粉末粒子の飛沫がレーザビームから粉末床中に飛ばされることで生じる。
【0004】
上述の欠陥、特に線欠陥は、レーザ又は電子ビームによる部品の製造段階で生じ、部品の形成層内の欠陥となる可能性があり、生じた欠陥は、製造の後続過程でも補償できなくなり、結果的に、製造した部品を廃棄することになる。特に部品が完成に近い場合、コスト高を招く。
【0005】
通常、表面の監視には光学的方法が使用されるが、この方法は、粉末床に散光面があるために、形成した粉末床の検査に関して信頼性が低い。また、セラミック遮熱板を検査する光学的方法(特許文献1に開示)も、よく知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許出願公開:EP2006804A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、粉末床式付加製造の過程を監視する方法を提案することにある。この方法を使用することで、粉末床表面の欠陥を確実に認識できるようにする。さらに、本発明の目的は、粉末床式付加製造で部品を製造するシステムを提案することにある。このシステムを使用することで、粉末床表面の監視を確実に実行できるようにする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的は、本発明によれば、イメージセンサを使用する冒頭に示した方法によって達成される。この方法によると、少なくとも1つの光源によって斜め上方の少なくとも1つの方向から粉末床の表面を照明し、当該粉末床の表面を、光学ユニットを使用して撮像する。イメージセンサを使用して当該表面のデジタル画像を生成すると、光源が粉末床の表面を斜め上方から照明しているので、付影処理(shadowing)によって表面の欠陥をはっきりと認識できる。このために、粉末床の表面に対する照明光の角度は90°ではない。照明傾斜角度は、45°未満が好適であり、より好ましくは30°未満が適している。
【0009】
撮像した画像は、上述の特許文献1に詳述されているような、いわゆるシェイプフロムシェーディング法(shape from shading)による評価を可能にする利点をもつ。この方法はアルゴリズムの一例であり、この方法を使用して、イメージセンサで撮像した画像を評価し、粉末床の表面を監視することができる。評価結果は、製造を進める中で、製造を中断して品質保証対策を開始するかどうかの決定基準を設定する目的に使用され得る。例えば、ドクター処理を繰り返すことによって、粉末床の不完全面を改善することができる。例えば、ドクター処理によって塊を粉末床の縁に移動させることができれば、この塊は、この後には粉末床の表面に影響しない。粉末床の表面において塊による汚染が過度に大きくなった場合は、例えば、当該粉末床を粉末の容器装置から完全に又は部分的に除去することができ、汚染されていない粉末を使って粉末床を再構成することが可能である。いずれの場合でも、粉末床において無傷の表面を製造できれば、製造される部品の品質が後続の製造段階で損なわれることはない。したがって、粉末床の低品質表面に起因した部品の廃棄をほぼ回避できる利点がある。本発明の方法はきわめて信頼性が高く、少なくとも粉末床の表面の欠陥(そのサイズで、製造される部品の品質を損なう)を、確実に認識することができる。粉末床の表面のもっと小さい欠陥(本発明の監視方法によって認識されないような)は、おおよそ重要ではなく、部品の品質に影響を及ぼすことはない。
【0010】
本発明の有利な一態様によれば、イメージセンサは、粉末床に対し垂直方向の上方に配置し、光学ユニットの光軸を、粉末床の表面と直交させる。この態様は、表面の画像を、ほぼひずみなしに、画像面全体にわたって高解像度で、生成できるという利点をもち、欠陥の認識に有利に働く。
【0011】
本発明の別の態様によれば、イメージセンサの解像度は、使用される粉末の複数の粒子、好ましくは10個、より好ましくは50個の粒子が、生成画像の1画素で描写されるように選択される。粉末中に生じる粒子サイズが10〜50μmの幅をもつ粉末が通例使用される(この場合は、粒子サイズの質量加重平均値は20〜30μmである)。換言すると、本発明の方法を実行するにあたり、解像度は、イメージセンサで撮像される平均粒子サイズより十分に低くとどめることができるので、比較的コスト効率の良いイメージセンサを使用できる利点がある。これは、粉末床の表面欠陥が粒子より大きいはずであるからである。このようにしてイメージセンサの解像度が選択される場合、当該方法において、無傷の粉末床表面のテクスチャ(質感)を表面の欠陥として誤認する可能性がないので、さらに有利である。すなわち、イメージセンサの解像度を適正に選択してあれば、粉末床のテクスチャを傷として誤検出することをなくす対策は、画像処理に必要ない。
【0012】
本発明の別の態様によれば、粉末床を滑らかにするためのドクターブレードの移動方向に対するイメージセンサの画素アレイのアライメント(整列方向)は、30°〜60°の角度だけ、光学ユニットの光学軸を中心として回転させる。粉末床の表面上を移動するドクターブレードの移動方向が前述した溝の発生要因なので、その傷は、通常、ドクターブレードの移動方向に整合する。画素アレイが、この溝のアライメント(発生方向)に対して回転させてあれば、溝がイメージセンサの画素に捕捉される確率が高くなって有利であり、溝によって光学的に生成され得る細い線をより容易に認識できる。イメージセンサの回転角度は45°を選択すると殊に好ましい。
【0013】
本発明の別の態様によれば、粉末床を滑らかにするためのドクターブレードの移動方向から照明方向が外れるように、光源が配置される。ここで言う照明方向は、粉末床の表面に直交する視点方向において、換言すると、粉末床表面の垂直投影で測定できる照明の方向成分において、という意味である。ドクターブレードの移動方向から光源の照明方向を外してあると、発生した後にドクターブレードの移動方向に沿って拡張する溝に関して、その影がイメージセンサでより明確に出ることから、強い付影処理によって容易に検出できる。光源の照明方向は、ドクターブレードの移動方向に対して好ましくは80°〜100°の角度に合わせ、特に90°の角度を選択するとよい。これにより、前記効果から付影処理が最大化され、有利である。
【0014】
本発明の別の態様によれば、多数の光源によって多数の照明方向から照明が行われる。これら多数の照明方向は、粉末床の表面に直交する視点方向で見て互いに異なる。即ち、各光源が欠陥の異なる影を生み出す。例えば、光源は順番に点灯することができ、この場合は様々な影を個々に評価でき、第2の段階で、このようにして得られた情報の要素を組み合わせることができ、生成された情報要素の共通評価によって、粉末床表面の欠陥の認識の信頼性を向上させられ、有利である。
【0015】
本発明の別の態様によれば、1つの光源又は多数の光源は、加熱された粉末床及び現在製造されている部品の熱放射の波長スペクトルとは異なる波長スペクトルの光を放射する。この態様によると、粉末床内の熱状態によって熱の反射が強い過程であっても、部品及び粉末床の温度放射によって光が強められることがないので、欠陥の付影処理を確実に認識できる。
【0016】
詳細には、光源が単色光を放射する、あるいは、多数の光源がそれぞれ異なる波長の単色光を放射する構成が可能である。これらの波長は、既に述べたように、熱放射のスペクトルの外にある。熱放射は最大1500℃の黒体放射の波長を含んでおり、したがって溶融粉末の光は検査光と確実に区別できる。
【0017】
本発明の別の態様では、イメージセンサが、加熱された粉末床及び現在製造されている部品の熱放射のスペクトルに鈍感である。この対策により、イメージセンサによって検出される熱放射の光を少しでも回避できる。別の態様において、加熱された粉末床及び現在製造されている部品の熱放射のスペクトルに対するフィルタが、光学ユニットに提供される。すなわち、フィルタによって熱放射をフィルタリングし、測定光だけをイメージセンサに到達させる。
【0018】
代替又は追加として、粉末床の熱放射の成分をなくすために、光源による照明の無い状態でイメージセンサを使用して加熱粉末床を記録することができる。この態様では、粉末床の表面を少なくとも1つの光源で照明する前に、当該粉末床の表面を、光学ユニットを使用してイメージセンサで撮像する。この後に、少なくとも1つの光源によって斜め上方の少なくとも1つの方向から粉末床の表面を照明し、当該粉末床の表面を、光学ユニットを使用してイメージセンサで再度撮像する。そして、両方の撮像結果から画像を生成し、評価に際し、照明してない表面の画像を照明してある表面の画像から差し引く。この後、画像は、粉末床の表面にあり得る欠陥の付影処理を判定するべく、光源の照明成分を保有し続ける。
【0019】
本発明の特定の態様によれば、画像の評価において、現在製造されている部品の層がある粉末床の領域に、認識された溝があるか否かを検討することもできる。もしあれば、部品の製造結果が損なわれるだけなので、製造を中断するのみである。溝が、現在の層において粉末の溶融が無い区域にある場合、その後のドクターブレードを使用する粉末の塗布段階で、表面の乱れが補償されるどうか、又は、表面の乱れが、部品の製造が損なわれる粉末床の部分に移ったか否かを検査できる。レーザビームで溶融すべき粉末床の領域は、当然分かっているはずなので、部品の製造過程の制御を評価することによって容易に確認できる。
【0020】
本発明の特定の態様によれば、現在製造されている部品の表面の凹凸も調べられる。この態様において、粉末床に使用したアルゴリズムと同じアルゴリズムを適用できる。ただし、粉末の新しい層の塗布前に実行される別の光学検査段階が必要である。この監視の段階を使用することで、部品層の現在製造されている表面の予期せぬ傷を確認することが可能となり、確認された傷が部品の破棄の原因になるかどうかを決定することができ、普通は最終段階でのみ破棄としてはじかれるはずの部品にかかる余計な製造支出を節約できる。
【0021】
本発明の目的は、イメージセンサを備える冒頭に示したシステムによっても達成され、当該センサを使用して上記の方法が実行される。さらに、上記の方法を実行するべく光源が設けられる。本発明によるシステムの動作に関連した利点は、上述の通りである。
【0022】
本発明のさらなる詳細を、図面に基づいて以下に説明する。図面において同一又は対応する要素にはそれぞれ同じ符号を付してあり、個々の図の間で違いが生じる場合だけ重ねて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明に係るシステムの実施形態を例示した概略断面図。
図2】本発明に係る方法を実行中の実施形態を例示した図。
図3】異なる照明方向を備えた図2に係る方法を実行するときの粉末床の表面の平面図。
図4】異なる照明方向を備えた図2に係る方法を実行するときの粉末床の表面の平面図。
図5図2に係る方法における評価で確認された画像を概略的に示した図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、選択的レーザ溶融システム11を示す。このシステムは、処理室12を備え、処理室12の中に粉末床14のための容器装置13が設けられる。容器装置13は、構築プラットホーム15を備え、この構築プラットフォーム15上で部品16を製造する。構築プラットフォーム15は、シリンダ17によって下降させることができ、容器装置13の側壁18が粉末床14の側面の保持を確保する。
【0025】
粉末床14は、ドクターブレード19によって1層ずつ滑らかにされ、このドクターブレード19は、最初に粉末貯蔵部20の上でガイドされ、次に粉末床の表面21の上でガイドされる。構築プラットフォーム15が1段ずつ下降するので、粉末床14の新しい層をドクターブレード19によって形成していくことができ、ドクターブレード19は、ガイドレール22に沿って移動する。ドクターブレード19が粉末貯蔵部20から粉末を運ぶことができるように、本例の場合、底板23がシリンダ24によって上下方向に変位可能に設けられる。本例のガイドレール22は、ドクターブレード19の移動方向25を決定する。
【0026】
処理室12の壁に窓26が設けられ、この窓26をレーザビーム27が通過できる。レーザビーム27は、処理室12の外部に配置されたレーザ28によって発生される。レーザビーム27は、偏向ミラー29によって粉末床の表面21において移動させられ、これにより、部品16が1層ずつ製造される表面21の領域が溶融する。
【0027】
処理室12の外部に監視ユニット30が設けられており、この監視ユニット30は、イメージセンサ31と光学ユニット32とを含む。監視ユニット30は、粉末床の表面21の上方において、光学ユニット32の光軸33が表面21に対して正確に直交するように配置される。イメージセンサ31によって、表面21を撮像した画像を記録できるようにするため、光源34(例えば、LEDヘッドライトの形態)が処理室12に配置され、この光源34が粉末床14の表面21を照明する。
【0028】
粉末床の表面21を監視する方法について、図2に基づき詳しく説明する。様々な照明方法を説明するために、図2には、多数の光源34a〜34gを示してある。図1に係るシステムにおいてこれらの光源を全て同時に収容する必要はないが、複数の光源を収容すると、監視方法実行中に照明を変化させることが可能になる。例えば、光源34a,34e,34f,34gを使用すれば、互いに直角をなす4つの照明方向35から表面21を照明することを可能にできる。このようにすれば、具体的に例えば、溝の形以外にも、クレータや粉末塊の形となった表面21の傷を確認できる。この他に、ドクターブレード19の移動方向25に対して側方から粉末床の表面21を照明する光源34b,34c,34dがある。本例の光源34cは、移動方向25に対して90°の照明方向をもち、この角度は、上から見た方向、つまり光軸33の方向で見た角度である。この角度は、図2中、表面21において角度αとして示されている。また、図2において傾斜角βを見ることもでき、この角度βは、斜め上方から行われる照明の傾斜角度を示し、光源34cの照明方向35に対して示されている。光源34d及び光源34bを例にすると、角度αはそれぞれ105°と75°になる。光源34b,34d(及び場合によっては光源34cも)による交互の照明によって、表面21の傷の付影処理を変化させることができ、こうして撮像された画像の重ね合せによって傷の認識の信頼性を高めることができる。光源34a〜34gを順次に点灯する代わりに、これらの光源又はこれら光源の少なくとも幾つかが、異なる波長の単色光を放射し、同時に点灯するようにしてもよい。これらの光がイメージセンサ31に同時に入射したとしても、波長が異なるので、イメージセンサ31の信号を互いに別個に検査できる。
【0029】
図2に示してあるとおり、イメージセンサ31は、そのアライメントが、粉末床の表面21に対し、光軸33を中心して正確に45°回転させてある。図5に関して後述するように、このアライメントで傷の検出をさらに改善することができる。
【0030】
光源34a〜34gによる照明によって表面21から出る光信号を、熱放射とは別に評価できるようにするために、これも光軸33に位置するフィルタ38が提供される。フィルタ38により、熱放射のスペクトル(製造中に発生する熱で目立つことがあり、そして、光源34a〜34gの照明による測定信号よりも強いことがある)を、測定の際に考慮しないでおくことができる。これにより、測定信号をより確実に評価できる。
【0031】
図3図4は、粉末床の表面21が光源34b,34dによって異なる照明方向35から照明されている様子を示す。
【0032】
図3図4には、粉末塊がドクターブレード19(図2を参照)によって粉末床14に引き込まれるときに発生し得る溝36が示されている。また、粉末塊が粉末床14から取り出されるとき生じ得るクレータ37も示されている。これは、例えば、表面21の点状欠陥を表わす。さらに、やはり点状欠陥である、粉末床の表面21から突出した粉末塊38も示されている。現在製造されている部品16の輪郭も表してあり、この輪郭は、実際には、粉末床14の新しい層を形成する際に部品16がこの新しい層によって覆われてしまうので、見えない。
【0033】
図3図4における陰影は、照明された面の明るさを示すものである。粉末床14は、拡散分布した光強度において表面21として現れ、より密な陰影が、クレータ37、溝36及び粉末塊38の付影処理を示す。対照的に、これら欠陥以外の領域はほぼ垂直に照明されるので、陰影なしで現われる。図3図4を互いに比較すると、照明方向35が異なるので付影処理が異なり、様々な傷の三次元拡張判断に役立つことが分かる。
【0034】
図5は、図2に係るイメージセンサ31を使って記録された画像からどのように評価を行えるかを示し、この評価は、例えばディスプレイをもつ出力装置に表示され得る。欠陥36',37',38'を見ることができ、また、イメージセンサ31の各画素も示されている。これらの欠陥36',37',38'は、効果を説明するために、例として図5に誇張して示してある。イメージセンサ31が、図2に関して説明したとおり、粉末床の表面21に対して45°回転しているので、例えば付影処理及び直接照明のいずれか又は両方によって、より多くの画素が溝36によって占有され、これにより、イメージセンサ31は、傷内の領域の照明と付影処理に対してより敏感に反応する。
【0035】
図5では、部品16の輪郭がオーバーレイ表示されいてる。この輪郭は、当該製造過程で利用可能な部品データ(CADモデル)から計算可能である。これから進めて、粉末塊38(図5で38')が部品製造結果を損なうサイズを有するか否かを決定することができ、その結果、ドクターブレード19を使用して表面21を滑らかにすることを新しく試みることができる。さらに、図5に係る結果の評価から、溝36とクレータ37が部品16の外側にあることが明らかになり、これは、それらの描写36',37'の判定によって直ちに明らかになる。
【符号の説明】
【0036】
12 処理室
13 容器装置
14 粉末床
16 部品
19 ドクターブレード
21 表面(粉末床の)
30 光学監視ユニット
31 イメージセンサ
32 光学ユニット
34 光源
図1
図2
図3
図4
図5