(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら各実施例について詳細に説明する。
【0011】
図1は、一実施例による船舶100の内部構造及びデッキ上の構成を概略的に示す側面図である。
図2は、クレーンポスト11の内部等を概略的に示す側面図である。
【0012】
船舶100は、任意であるが、好ましくは、チップ船(木材チップ運搬船)である。これは、チップ船の場合、後述するクレーンポスト11、12、13内の空間の粉塵量がチップダストに起因して比較的大きくなりやすく、以下で説明するインバータ配置方法が有用となるためである。以下では、一例として、船舶100はチップ船であるとする。
【0013】
船舶100は、
図1に示すように、デッキクレーン(アンローダクレーン)1、2、3と、第1、第2、第3インバータ群21、22、23と、主機70と、発電機72とを含む。尚、
図1に示す例では、船舶100は、3つのデッキクレーン1、2、3を備えるが、デッキクレーンの数は任意である。以下では、デッキクレーンが3台ある船舶を一例として取り上げるが、3台であることは必ずしも必要でなく、1台、2台、若しくは4台以上設けられてもよい。
【0014】
デッキクレーン1、2、3は、それぞれ、船体101のデッキに設けられる。デッキクレーン1、2、3は、それぞれ、グラブ50の開/閉動作、ジブ52の上げ/下げ動作(俯仰動作)、ホイスト54の巻き上げ/巻き下げ動作、及びデッキクレーン本体の旋回動作を介して、荷役を実現する。例えば、デッキクレーン1、2、3は、それぞれ、ホールド40内に積まれた貨物(木材チップ)をグラブ50で掴み、掴んだ木材チップをホッパ42へと落下させる。ホッパ42に落下された木材チップは、各種コンベア(図示せず)等を介して船外へと搬送される。
【0015】
主機70及び発電機72は、機関区域90に配置される。本実施例では、一例として、発電機72は、3相の交流電流を発生する発電機である。但し、発電機72は、単相など他の形式であってもよい。
【0016】
ここで、機関区域の定義は、以下のとおりである。機関区域とは、A類機関区域及び主機、推進軸系、ボイラ、燃料油装置、蒸気機関、内燃機関、発電機、主要電気機器、給油装置、冷凍機械、減揺装置、通風機械及び空調機械を収容する場所、その他これらに類する場所並びにこれらの場所に至るトランクをいう。A類機関区域とは、次の(1)から(3)のいずれかに該当する区域をいい、これらの区域に至るトランクを含む。
(1)主機として用いられる内燃機関を据付ける区域
(2)主機以外の用途に使用され、その合計出力が375KW以上の内燃機関を据付ける区域
(3)油だきボイラ、イナートガス発生装置、燃料油装置、又は焼却設備、を据付ける区域
第1、第2、第3インバータ群21、22、23は、それぞれ、デッキクレーン1、2、3内のモータM1〜M4(後述)に対して設けられる。
【0017】
第1、第2、第3インバータ群21、22、23のうちの少なくとも一部は、クレーンポスト11、12、13内の空間よりも粉塵量(例えば単位体積当たりの粉塵量)が有意に少ない所定空間に配置される。本実施例では、一例として、第1、第2、第3インバータ群21、22、23の全ては、所定空間に配置される。
【0018】
所定空間は、貨物区域以外の所定区域に存在する空間、又は、閉囲された船楼に存在する空間である。所定区域は、例えば、居住区域、業務区域、又は機関区域である。閉囲された船楼に存在する空間は、例えば、ボースンストア(Boatswain's store)92(
図1参照)である。尚、所定空間は、例えば、ボースンストア92のように、自然換気ができるレベルの空間であってもよいし、ファンによる強制換気が可能な空間であってもよいし、空調設備を備えて空調が可能な空間であってもよい。
【0019】
ここで、上記の各区域の定義は、以下のとおりである。貨物区域とは、貨物の積載に使用される区域及び貨物タンクを含む区域をいい、これらの区域に至るトランクを含む。居住区域とは、公室(ホール、食堂、ラウンジ及び類似の恒久的に囲まれた場所として使用される居住区域の部分)、通路、洗面所、船室、事務所、病室、娯楽室、理髪室、調理器具のない配ぜん室及び類似の場所をいう。業務区域とは、調理室、調理器具のある配ぜん室、ロッカ室、郵便室、金庫室、貯蔵品室、機関区域の一部を構成するもの以外の作業室及び類似の場所をいい、これらの場所に至るトランクを含む。
【0020】
図1に示す例では、一例として、第1、第2、第3インバータ群21、22、23は、主機70及び発電機72と同様、機関区域90のインバータルーム26内に配置される。インバータルーム26は、機関区域90に閉塞空間を形成する。但し、第1、第2、第3インバータ群21、22、23は、機関区域90に他の態様に設けられてもよい。例えば、第1、第2、第3インバータ群21、22、23は、機関区域90に、周囲が実質的に閉塞されない態様で設けられてもよい。
【0021】
第1、第2、第3インバータ群21、22、23は、それぞれ、空冷式であるが、水冷式であってもよい。第1、第2、第3インバータ群21、22、23は、それぞれ、複数のインバータを備える。本例では、一例として、第1、第2、第3インバータ群21、22、23は、それぞれ、4つのモータM1〜M4に対応して、4つのインバータINV1〜INV4(
図3参照)を備える。尚、
図1には、インバータルーム26内に4つのインバータだけが四角で模式的に示されている。第1、第2、第3インバータ群21、22、23の更なる構成は後述する。
【0022】
船舶100は、
図2に示すように、更に、モータM1〜M4を備える。モータM1〜M4からなる1組のモータ群は、デッキクレーン1、2、3のそれぞれに対して設けられる。尚、
図2には、第1モータ群31が示されているが、他のモータ群(第2モータ群32及び第3モータ群33)についても同様である。
【0023】
以下では、デッキクレーン1に対して設けられるモータ群を、「第1モータ群31」と称し、デッキクレーン2に対して設けられるモータ群を、「第2モータ群32」と称し、デッキクレーン3に対して設けられるモータ群を、「第3モータ群33」と称する。第1、第2、第3モータ群31、32、33は、それぞれ、第1、第2、第3インバータ群21、22、23に電気的に接続される。ここでは、
図2を参照して第1モータ群31について説明するが、第2モータ群32及び第3モータ群33についても同様である。
【0024】
第1モータ群31のモータM1〜M4は、
図2に示すように、デッキクレーン1のクレーンポスト11内の空間11a内に配置される。第1モータ群31のモータM1〜M4は、クレーンポスト11内の配線80、スリップリング82、及び船体101内の配線(電源ケーブル)84を介して、第1インバータ群21(
図3参照)に電気的に接続される。尚、
図2では、配線80、スリップリング82、及び配線84は、非常に概略的に示されており、例えば配線80の各線や配線84の線は、実際の個々の電線を示すのではなく、電線の束として図示されている。例えば、モータM1〜M4がそれぞれ3相モータである場合、配線80の各線は、3本の電線の束を表す。この場合、配線84の線は、12本の電線の束を表す。尚、配線80及び/又は配線84には、ノイズ除去用のフィルタ等が設けられてよい。これにより、第1インバータ群21と第1モータ群31との間の配線距離が長くなってもノイズの問題を低減できる。
【0025】
第1モータ群31のモータM1〜M4は、
図2に示すようなデッキクレーン1の各種動作を実現する駆動力を発生する。具体的には、モータM1は、グラブ50の開/閉動作R1を実現する駆動力を発生する。モータM2は、ジブ52の上げ/下げ動作(俯仰動作)R2を実現する駆動力を発生する。モータM3は、ホイスト54の巻き上げ/巻き下げ動作R3を実現する駆動力を発生する。モータM4は、デッキクレーン本体の旋回動作R4を実現する駆動力を発生する。
【0026】
図3は、第1モータ群31のモータM1〜M4に関する電気回路の一例を概略的に示す図である。
【0027】
第1モータ群31のモータM1〜M4は、第1インバータ群21のインバータINV1〜INV4にそれぞれ電気的に接続される。
図3に示す例では、一例として、モータM1〜M4は、それぞれ、3相モータである。インバータINV1〜INV4は、それぞれ、コンバータ62と、交流電源60にコンバータ62を介して電気的に接続されるインバータ回路部64とを含む。コンバータ62は、例えばダイオードやサイリスタのブリッジ回路により形成され、交流電源60からの3相の交流電流を直流電流に変換する。交流電源60は、例えば発電機72により生成されてよい。
【0028】
インバータINV1〜INV4のインバータ回路部64は、それぞれ、各相の上下アームにスイッチング素子(図示せず)を備える。インバータINV1〜INV4のインバータ回路部64の各スイッチング素子は、オン/オフ駆動され、コンバータ62からの直流電流に基づき3相の交流電流を生成(電力変換)する。3相の交流電流がモータM1〜M4のそれぞれに通電されると、モータM1〜M4の駆動力(回転トルク)が生成される。制御装置は、操縦室10b(
図2参照)内の操作部(図示せず)における操作入力に応じてインバータINV1〜INV4のインバータ回路部64の各スイッチング素子を制御する。例えば、制御装置は、グラブ50の開/閉動作に係る操作入力があった場合に、インバータINV1のインバータ回路部64の各スイッチング素子をオン/オフ駆動し、当該操作入力に応じたグラブ50の動作を実現する。
【0029】
尚、
図3では、第1インバータ群21の内部構成について代表して概略的に説明したが、第2インバータ群22及び第3インバータ群23の内部構成についても同様である。尚、
図3に示す例において、交流電源60には、第2インバータ群22及び第3インバータ群23が並列に電気的に接続されてよい。
【0030】
ここで、
図4に示す従来のインバータ配置方法と比較して、本実施例の効果について説明する。
図4に示す従来のインバータ配置方法では、クレーンポスト内にインバータが配置される。
【0031】
船舶100がチップ船の場合、荷役中、クレーンポスト11、12、13内の空間(例えば空間11a)の粉塵量がチップダストに起因して比較的大きくなりやすい。これは、クレーンポスト11、12、13内の空間は、外部に対して密閉されておらず、且つ、チップダストの荷役を行う場所に近接しているため、荷役に伴い発生する粉塵が非常に入りやすいためである。
【0032】
この点、クレーンポスト内にインバータが配置される従来のインバータ配置方法では、インバータの空冷用のフィルタにチップダストが詰まり易い。その結果、従来のインバータ配置方法では、冷却効果が悪くなり、インバータが熱で故障する問題も頻繁に起きている。荷揚げや荷積みの最中にインバータが故障してしまうと、復旧等に長時間を要し大きな問題となる。
【0033】
この点、本実施例によれば、上述のように、第1、第2、第3インバータ群21、22、23は、機関区域90に存在する空間に配置される。機関区域90は、上述のように、クレーンポスト11、12、13内の空間(例えば空間11a)に比べて粉塵量(特にチップダスト)が有意に少ない。従って、本実施例によれば、上述の従来のインバータ配置方法において生じる不都合を低減できる。即ち、機関区域90内の空間は、クレーンポスト11、12、13内の空間よりも粉塵量が有意に少ないので、空冷式の第1、第2、第3インバータ群21、22、23を用いる場合でも、空冷用のフィルタにチップダスト等の粉塵が詰まり難い(又は空冷用のフィルタに詰まる粉塵量が有意に少なくなる)。従って、本実施例によれば、空気中に含まれる粉塵に起因した第1、第2、第3インバータ群21、22、23の各インバータの故障の可能性を低減でき、第1、第2、第3インバータ群21、22、23の各インバータの耐久性を高めることができる。これにより、荷揚げや荷積みの最中に第1、第2、第3インバータ群21、22、23のインバータが故障してしまう可能性を低減できる。
【0034】
また、本実施例によれば、上述のように、第1、第2、第3インバータ群21、22、23は、機関区域90に存在する空間に配置されるので、上述の従来のインバータ配置方法に比べてクレーンポスト11、12、13の小型化(例えばスリム化)が可能となる。かかる小型化は、必要に応じて実現されてよい。かかる小型化は、渡航中の船舶100が受ける空気抵抗を低減する観点から有利となる。
【0035】
また、本実施例によれば、上述のように、第1、第2、第3インバータ群21、22、23は、機関区域90に存在する空間に配置されるので、上述の従来のインバータ配置方法に比べて、第1、第2、第3インバータ群21、22、23の保守及び管理が容易となる。これは、一般的に、機関区域90の方がクレーンポスト11、12、13内よりも作業環境が良好であるためである。
【0036】
尚、本実施例では、第1、第2、第3インバータ群21、22、23は、同一の属性の所定空間に配置されているが、一部が異なる属性の所定空間に配置されてもよい。例えば、第1インバータ群21は、機関区域90に存在する空間に配置され、第2インバータ群22及び第3インバータ群23は、業務区域に存在する空間に配置されてもよい。
【0037】
第1、第2、第3インバータ群21、22、23は、少なくとも2つの群が同一の属性の所定空間に配置される場合には、第1、第2、第3インバータ群21、22、23がそれぞれ別々の属性の所定空間に配置される場合よりも、集中的な管理が可能であるので、有利である。
【0038】
ところで、インバータが故障した際は、(1)故障したものを復旧させる、(2)予備のインバータを持ち運んで利用する、(3)他のクレーンのインバータを持ち運んで利用する、という対処方法が考えられる。しかしながら、(1)の対処方法では復旧に時間をとられることになり、(2)や(3)の対処方法ではインバータの運搬や接続に時間をとられることになり、いずれの対処方法であっても、限られた所定の荷役時間内で作業が完了しない事態もあり得る。その場合、多大な追加の費用が発生することになる。
【0039】
この点、第1、第2、第3インバータ群21、22、23が同一の属性の所定空間に配置される場合には、第1、第2、第3インバータ群21、22、23がそれぞれ別々の属性の所定空間に配置される場合よりも、第1、第2、第3インバータ群21、22、23の合計12個のインバータのうちの任意のインバータが故障したときのインバータ切替処理が容易となる。インバータ切替処理とは、第1、第2、第3インバータ群21、22、23のうちの、正常のインバータを、故障したインバータの代わりに用いるための処理、操作又は作業である。インバータ切替処理が容易となると、限られた所定の荷役時間内でインバータ切替処理が完了しない可能性を低減できる。
【0040】
次に、
図5〜
図8を参照して、上記のようなインバータ切替処理を容易化するための好ましい構成について説明する。
【0041】
図5は、第1、第2、第3インバータ群21、22、23に関連する回路構成の一例を概略的に示す図である。
【0042】
第1、第2インバータ群21、22は、それぞれ、
図5に示すように、第1切替回路部601を介して、第1モータ群31に電気的に接続されると共に、第1切替回路部601を介して、第2モータ群32に電気的に接続される。
【0043】
同様に、第2、第3インバータ群22、23は、それぞれ、
図5に示すように、第2切替回路部602を介して、第2モータ群32に電気的に接続されると共に、第2切替回路部602を介して、第3モータ群33に電気的に接続される。
【0044】
同様に、第1、第3インバータ群21、23は、
図5に示すように、第3切替回路部603を介して、第1モータ群31に電気的に接続されると共に、第3切替回路部603を介して、第3モータ群33に電気的に接続される。
【0045】
以下では、
図6〜
図8を参照して、代表として、第1、第2インバータ群21、22間のインバータ切替処理を容易化する構成(第1切替回路部601)について説明するが、他のインバータ群間(即ち、第2、第3インバータ群22、23間、及び、第1、第3インバータ群21、23間)についても同様であってよい。即ち、第2切替回路部602及び第3切替回路部603についても同様であってよい。
【0046】
図6は、第1、第2インバータ群21、22と第1、第2モータ群31、32との間の電気的な接続に関連する電気回路200の一例を概略的に示す図である。ここでは、第1、第2インバータ群21、22の各インバータINV1と、第1、第2モータ群31、32の各モータM1との間の電気的な接続について代表して説明するが、他も同様である。例えば、第1、第2インバータ群21、22の各インバータINV2と、第1、第2モータ群31、32の各モータM2との間の電気的な接続についても同様である。また、
図6(後述の
図7及び
図8も同様)では、スリップリング82の図示が省略されている。
【0047】
第1切替回路部601は、
図6に示すように、スイッチSW1〜SW6と、切替手段R1〜R6(第1切替手段及び第2切替手段の一例)とを備える。スイッチSW1〜SW6は、例えば遮断器(ブレーカー)の形態であってもよい。スイッチSW1〜SW6のオン/オフ切替は、手動で実現されてもよいし、電子制御により実現されてもよい。切替手段R1〜R6は、手動の切替手段であってもよいし、電子制御される切替手段(例えばリレー)であってもよい。
【0048】
スイッチSW1〜SW3は、各相に対応してそれぞれ設けられ、第1インバータ群21のインバータINV1と切替手段R1〜R3との間に配置される。スイッチSW1〜SW3のオン状態では、第1インバータ群21のインバータINV1と切替手段R1〜R3との間が電気的に接続される。他方、スイッチSW1〜SW3のオフ状態では、第1インバータ群21のインバータINV1と切替手段R1〜R3との間が電気的に切り離される(即ち電気的に絶縁される)。
【0049】
切替手段R1〜R3は、各相に対応してそれぞれ設けられる。切替手段R1〜R3は、それぞれ、入力端子T10と、第1モータ群31のモータM1用の出力端子T11と、第2モータ群32のモータM1用の出力端子T12とを含む。切替手段R1〜R3は、それぞれ、入力端子T10が出力端子T11に電気的に接続される第1状態と、入力端子T10が出力端子T12に電気的に接続される第2状態とを切り替えることができる。
【0050】
スイッチSW4〜SW6は、各相に対応してそれぞれ設けられ、第2インバータ群22のインバータINV1と切替手段R4〜R6との間に配置される。スイッチSW4〜SW6のオン状態では、第2インバータ群22のインバータINV1と切替手段R4〜R6との間が電気的に接続される。他方、スイッチSW4〜SW6のオフ状態では、第2インバータ群22のインバータINV1と切替手段R4〜R6との間が電気的に切り離される。
【0051】
切替手段R4〜R6は、各相に対応してそれぞれ設けられる。切替手段R4〜R6は、それぞれ、入力端子T20と、第2モータ群32のモータM1用の出力端子T21と、第1モータ群31のモータM1用の出力端子T22とを含む。切替手段R4〜R6は、それぞれ、入力端子T20が出力端子T21に電気的に接続される第1状態と、入力端子T20が出力端子T22に電気的に接続される第2状態とを切り替えることができる。
【0052】
通常時(本例では、第1インバータ群21のインバータINV1〜INV4及び第2インバータ群22のインバータINV1〜INV4が故障しておらず正常であるとき)、
図6に示すように、スイッチSW1〜SW6はオン状態とされ、且つ、切替手段R1〜R6は第1状態とされる。これにより、第1インバータ群21のインバータINV1が第1モータ群31のモータM1に電気的に接続され、且つ、第2インバータ群22のインバータINV1が第2モータ群32のモータM1に電気的に接続される。従って、第1インバータ群21のインバータINV1を用いて第1モータ群31のモータM1を駆動できると共に、第2インバータ群22のインバータINV1を用いて第2モータ群32のモータM1を駆動できる。
【0053】
図7は、第1インバータ群21のインバータINV1が故障したときの電気回路200の状態を示す図である。
【0054】
第1インバータ群21のインバータINV1が故障したとき、デッキクレーン1による荷役を行う際、
図6に示す状態から
図7に示す状態に変更する処理、即ち、スイッチSW1〜SW3をオフし且つ切替手段R4〜R6を第1状態から第2状態に変更する処理(インバータ切替処理)が実行される。この結果、
図7に示すように、スイッチSW1〜SW3はオフ状態となり、切替手段R4〜R6は第2状態となる。尚、このとき、スイッチSW4〜SW6はオン状態であり、切替手段R1〜R3は第1状態又は第2状態のいずれであってもよい(
図7に示す例では、第1状態)。
【0055】
図7に示す状態では、第2インバータ群22のインバータINV1が第1モータ群31のモータM1に電気的に接続される。従って、第2インバータ群22のインバータINV1を用いて第1モータ群31のモータM1を駆動できる。このように、第1インバータ群21のインバータINV1が故障した場合でも、簡易なインバータ切替処理を行うだけで、第2インバータ群22を用いてデッキクレーン1による荷役が可能となる。
【0056】
尚、ここでは、一例として、第1インバータ群21のインバータINV1が故障したときを説明したが、第1インバータ群21の他のインバータINV2〜INV4のいずれかが故障したときも同様である。例えば、第1インバータ群21のインバータINV2が故障したときは、第2インバータ群22のインバータINV2が第1モータ群31のモータM2に電気的に接続されてよい。
【0057】
図8は、第2インバータ群22のインバータINV1が故障したときの電気回路200の状態を示す図である。
【0058】
同様に、第2インバータ群22のインバータINV1が故障したとき、デッキクレーン2による荷役を行う際、
図6に示す状態から
図8に示す状態に変更する処理、即ち、スイッチSW4〜SW6をオフし且つ切替手段R1〜R3を第1状態から第2状態に変更する処理(インバータ切替処理)が実行される。この結果、
図8に示すように、スイッチSW4〜SW6はオフ状態となり、切替手段R1〜R3は第2状態となる。尚、このとき、スイッチSW1〜SW3はオン状態であり、切替手段R4〜R6は第1状態又は第2状態のいずれであってもよい(
図8に示す例では、第1状態)。
【0059】
図8に示す状態では、第1インバータ群21のインバータINV1が第2モータ群32のモータM1に電気的に接続される。従って、第1インバータ群21のインバータINV1を用いて第2モータ群32のモータM1を駆動できる。このように、第2インバータ群22のインバータINV1が故障した場合でも、簡易なインバータ切替処理を行うだけで、第1インバータ群21を用いてデッキクレーン2による荷役が可能となる。
【0060】
尚、ここでは、一例として、第2インバータ群22のインバータINV1が故障したときを説明したが、第2インバータ群22の他のインバータINV2〜INV4のいずれかが故障したときも同様である。例えば、第2インバータ群22のインバータINV3が故障したときは、第1インバータ群21のインバータINV3が第2モータ群32のモータM3に電気的に接続されてよい。
【0061】
図6〜
図8に示す例によれば、上述のように、切替手段R1〜R6を備えるので、第1、第2インバータ群21、22と第1、第2モータ群31、32との間の電気的な接続態様を選択的に切り替えることができる。これにより、第1インバータ群21及び第2インバータ群22のいずれかのインバータが故障した場合でも、簡易なインバータ切替処理を行うだけで、正常なインバータを用いて、故障したインバータを含むインバータ群に係るデッキクレーンを駆動して荷役を行うことが可能となる。そして、
図5に示す例によれば、第1切替回路部601と同様の第2切替回路部602及び第3切替回路部603を備えるので、同様に、第2、第3インバータ群22、23間と第2、第3モータ群32、33との間の電気的な接続態様、及び、第1、第3インバータ群21、23間と第1、第3モータ群31、33との間の電気的な接続態様を、選択的に切り替えることができる。従って、第1、第2、第3インバータ群21、22、23の任意のインバータが故障した場合でも、簡易なインバータ切替処理を行うだけで、正常なインバータを用いて、故障したインバータを含むインバータ群に係るデッキクレーンを駆動して荷役を行うことが可能となる。
【0062】
尚、
図6〜
図8に示す例において、上述のスイッチSW1〜SW6及び/又は切替手段R4〜R6の動作がユーザの操作を介して実現される場合、スイッチSW1〜SW6及び/又は切替手段R4〜R6の操作部は、例えば機関区域90のインバータルーム26内に配置される配電盤に設けられてよい。この場合、機関区域90でインバータ切替処理を行うことができるので、上記のような故障時のインバータ切替処理の作業性が良好となる。
【0063】
尚、
図6〜
図8に示す例では、第1インバータ群21のインバータINV1と第2インバータ群22のインバータINV1とが切り替え可能であるが、これに限られない。例えば、第1インバータ群21のインバータINV1と第2インバータ群22のインバータINV2〜INV4の少なくともいずれか1つとが切り替え可能であってもよい。この場合、例えば、第1インバータ群21のインバータINV1が故障したときは、第2インバータ群22のインバータINV2〜INV4のいずれか1つが第1モータ群31のモータM1に電気的に接続されてもよい。
【0064】
また、
図6〜
図8に示す例において、第1インバータ群21のインバータINV1及び第2インバータ群22のインバータINV1のいずれか一方が故障した場合、第1インバータ群21の他のインバータINV2〜INV4と第2インバータ群22の他のインバータINV2〜INV4との間で、同様の切替が実現されてもよいし、されなくてもよい。例えば、第1インバータ群21のインバータINV1が故障したとき、第2インバータ群22のインバータINV1〜INV4が第1モータ群31のモータM1〜M4に電気的にそれぞれ接続されてもよいし、第2インバータ群22のインバータINV1〜INV4のうちの、インバータINV1だけが、第1モータ群31のモータM1に電気的に接続されてもよい。これは、第1インバータ群21のインバータINV2〜INV4のいずれかが故障したときも同様であり、また、第2インバータ群22のインバータINV2〜INV4のいずれかが故障したときも同様である。
【0065】
また、
図6〜
図8に示す例において、第1インバータ群21のインバータINV1〜INV4のうちのいずれか2つ以上が故障した場合、第2インバータ群22のインバータINV1〜INV4が第1モータ群31のモータM1〜M4に電気的にそれぞれ接続されてもよいし、第2インバータ群22のインバータINV1〜INV4のうちの、第1インバータ群21における故障した2つ以上のインバータに対応するインバータだけが、第1モータ群31における故障した2つ以上のインバータに係るモータに電気的に接続されてもよい。
【0066】
図9は、第1、第2、第3インバータ群21、22、23に関連する回路構成の他の一例を概略的に示す図である。
【0067】
図9に示す例では、切替手段R11〜R13(第1切替手段及び第2切替手段の一例)は、それぞれ、
図6に示した切替手段R1〜R3に対して、出力端子T13が追加された点が異なる。出力端子T13は、第3モータ群33のモータM1用の出力端子である。切替手段R11〜R13は、それぞれ、入力端子T10が出力端子T11に電気的に接続される第1状態と、入力端子T10が出力端子T12に電気的に接続される第2状態と、入力端子T10が出力端子T13に電気的に接続される第3状態とを含む3状態間を切り替えることができる。
【0068】
同様に、切替手段R14〜R16(第1切替手段及び第2切替手段の一例)は、それぞれ、
図6に示した切替手段R4〜R6に対して、出力端子T23が追加された点が異なる。切替手段R17〜R19(第1切替手段及び第2切替手段の一例)についても、切替手段R11〜R13と同様、入力端子T30と、3つの出力端子T31〜T33とを含み、入力端子T30が出力端子T31に電気的に接続される第1状態と、入力端子T30が出力端子T32に電気的に接続される第2状態と、入力端子T30が出力端子T33に電気的に接続される第3状態とを含む3状態間を切り替えることができる。
【0069】
図9に示す例によっても、切替手段R14〜R16を備えるので、
図5に示した例と同様、第1、第2、第3インバータ群21、22、23と第1、第2、第3モータ群31、32、33との間の電気的な接続態様を選択的に切り替えることができる。即ち、
図9に示す例によっても、
図5乃至
図8を参照して上述した各種のインバータ切替処理を実現できる。これにより、
図5に示した例と同様、第1、第2、第3インバータ群21、22、23のいずれかのインバータが故障した場合でも、簡易なインバータ切替処理を行うだけで、正常なインバータを用いて、故障したインバータを含むインバータ群に係るデッキクレーンを駆動して荷役を行うことが可能となる。
【0070】
例えば、第2インバータ群22のインバータINV1が故障したとき、デッキクレーン2による荷役を行う際、切替手段R11〜R13が第2状態とされ、又は、切替手段R31〜R33が第2状態とされる。これにより、第1インバータ群21又は第3インバータ群23のインバータINV1を用いて第2モータ群32のモータM1を駆動して、デッキクレーン2による荷役を実現できる。
【0071】
以上、各実施例について詳述したが、特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。また、前述した実施例の構成要素を全部又は複数を組み合わせることも可能である。
【0072】
例えば、上述した実施例では、第1、第2、第3インバータ群21、22、23のそれぞれにおいて、各インバータINV1〜INV4は、コンバータ62をそれぞれ内蔵しているが、これに限れない。例えば、第1、第2、第3インバータ群21、22、23に対して共通の1つのコンバータが、第1、第2、第3インバータ群21、22、23と交流電源60との間に設けられてもよい。或いは、コンバータ62は省略されてもよく、この場合、第1、第2、第3インバータ群21、22、23のそれぞれにおいて、各インバータINV1〜INV4のインバータ回路部64は、交流電源60からの3相交流電流から3相交流電流を直接的に生成する。