(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6706671
(24)【登録日】2020年5月20日
(45)【発行日】2020年6月10日
(54)【発明の名称】ガス・蒸気・コンバインドサイクル発電所の運転方法
(51)【国際特許分類】
F01K 3/14 20060101AFI20200601BHJP
F01K 23/10 20060101ALI20200601BHJP
F02G 5/02 20060101ALI20200601BHJP
【FI】
F01K3/14
F01K23/10 X
F02G5/02 B
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-517784(P2018-517784)
(86)(22)【出願日】2016年9月26日
(65)【公表番号】特表2018-534463(P2018-534463A)
(43)【公表日】2018年11月22日
(86)【国際出願番号】EP2016072836
(87)【国際公開番号】WO2017060111
(87)【国際公開日】20170413
【審査請求日】2018年7月11日
(31)【優先権主張番号】102015219391.8
(32)【優先日】2015年10月7日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390039413
【氏名又は名称】シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 浩
(72)【発明者】
【氏名】ベッカー、シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】ダノフ、ヴラジミル
(72)【発明者】
【氏名】レンク、ウヴェ
(72)【発明者】
【氏名】ライスナー、フローリアン
(72)【発明者】
【氏名】シュミット、エリッヒ
(72)【発明者】
【氏名】シェーファー、ヨッヘン
【審査官】
中村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭58−107803(JP,A)
【文献】
特開平01−273807(JP,A)
【文献】
特表平08−503060(JP,A)
【文献】
国際公開第2015/043949(WO,A1)
【文献】
特開平08−260907(JP,A)
【文献】
特開昭56−002410(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01K 3/00− 3/26
F01K 13/00−13/02
F01K 23/10
F02G 5/02
F22B 1/18
F28D 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス・蒸気・コンバインドサイクル発電所(10)の運転方法であって、ガスタービン(12)の排ガスにより蒸気発生器(20)に高温の蒸気が発生され、この高温蒸気を用いて少なくとも1つのタービン装置(22)を介して、電気を供給するための少なくとも1台の発電機(30)が駆動される方法において、
・前記発生された蒸気の少なくとも一部を分岐し、この分岐された蒸気を蒸気蓄積器(34)に蓄えるステップと、
・前記蒸気蓄積器(34)に蓄えられた前記蒸気の少なくとも一部を当該蒸気蓄積器(34)から排出し、当該蒸気蓄積器(34)から排出された蒸気を、前記ガス・蒸気・コンバインドサイクル発電所(10)の反応装置(40)に供給するステップと、
・前記蒸気発生器(20)の下流の前記排ガスの少なくとも一部から得られた熱を吸熱化学反応の反応物に伝達し、発熱化学反応の反応物として利用される前記吸熱化学反応の生成物を生成し、前記蒸気蓄積器(34)から排出された前記蒸気を、前記反応装置(40)内で生じる前記発熱化学反応で解放される熱により前記反応装置(40)内で加熱するステップと、
・前記加熱された蒸気を前記タービン装置(22)に導き、このタービン装置を供給された前記加熱された蒸気により駆動するステップと、
を備えることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記吸熱化学反応を惹き起こすための熱が、前記排ガスにより発生された前記蒸気の少なくとも一部から得られることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記吸熱化学反応を惹き起こすために、前記蒸気の一部から得られた前記熱が前記吸熱化学反応の反応物に伝達されることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ガス・蒸気・コンバインドサイクル発電所(10)を第1の負荷領域からこの第1の負荷領域よりも大きい第2の負荷領域に出力アップすべく前記タービン装置(22)を駆動するために、当該タービン装置(22)に前記加熱された蒸気を供給することを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記吸熱化学反応が前記第2の負荷領域で惹き起こされることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前文に記載のガス・蒸気・コンバインドサイクル発電所の運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガス・蒸気・コンバインドサイクル発電所のこのような運転方法、並びに、このようなガス・蒸気・コンバインドサイクル発電所(GuD-Kraftwerk)は一般的な従来技術から既によく知られている。ガス・蒸気・発電所はコンバインドサイクル発電所とも呼ばれ、少なくとも1つのタービン装置、電気を供給するためにこのタービン装置で駆動される少なくとも1つの発電機、及び、少なくとも1つのガスタービンを含んでいる。発電機がタービン装置で駆動されると、発電機は機械エネルギーを電気エネルギーすなわち電流に変換し、この電気エネルギーすなわち電流を供給する。この電流は次に例えば電力系統に供給される。
【0003】
この場合、ガスタービンは排ガスを供給し、この排ガスにより高温の蒸気が発生される。例えば、ガスタービンには燃料、特に例えば天然ガスのようなガス燃料が供給され、この燃料がガスタービンにより燃焼される。特に、ガスタービンには燃料に加えて酸素ないし空気が供給されるので、空気と燃料から燃料・空気・混合気が生成される。この燃料・空気・混合気が燃焼され、その結果、ガスタービンの排ガスが生じる。この排ガスを用いて例えば液体、特に水が加熱され、蒸発し、その結果、高温蒸気が生成される。このことは、ガスタービンの排ガスを用いて、ガスタービンの高温排ガスにより液体、例えば水が蒸発して高温蒸気が発生される、ことを意味する。
【0004】
この蒸気がタービン装置に供給されるので、このタービン装置はこの蒸気により駆動される。既述したように、タービン装置を介して、すなわち、タービン装置により発電機が駆動される。ガス・蒸気・コンビ発電所とも呼ばれるガス・蒸気・コンバインドサイクル発電所は、ガスタービン発電所と蒸気発電所の原理が組み合わされた発電所である。この場合、ガスタービンないしその排ガスは後置接続された蒸気発生器の熱源として働き、この蒸気発生器によりタービン装置用の、すなわち、タービン装置を駆動するための蒸気が発生される。すなわち、このタービン装置は蒸気タービンとして形成されている。
【0005】
このようなガス・蒸気・コンバインドサイクル発電所(GuD-Kraftwerk)は、特に電力需要に応じて運転を停止しなければならないことが判っており、その結果、発電機は電気を供給せず、例えば駆動されず、さらにその結果、ガス・蒸気・コンバインドサイクル発電所から電力系統へは電気が供給されない。この運転停止の結果、ガス・蒸気・コンバインドサイクル発電所はクールダウンし、その結果、ガス・蒸気・コンバインドサイクル発電所の再運転投入ないし出力アップには特に長い時間と特に大きなエネルギーが必要となる。そこで通常は、ガス・蒸気・コンバインドサイクル発電所が運転停止されている期間は、そのガス・蒸気・コンバインドサイクル発電所を保温するように構成されている。この場合、ガス・蒸気・コンバインドサイクル発電所は蒸気を用いて保温される。保温のための蒸気は通常はボイラーにより、特にガスボイラーにより発生される。ボイラーにより、例えば水のような液体が蒸発され、このために燃料が使用される。このボイラーにより発生された蒸気はガス・蒸気・コンバインドサイクル発電所を保温すべく、ないし、温めるべく、そのガス・蒸気・コンバインドサイクル発電所の少なくとも一部を通って導かれる。次にこのガス・蒸気・コンバインドサイクル発電所は、その運転停止後に、ホットスタート運転で起動することができる。というのは、このガス・蒸気・コンバインドサイクル発電所は既に、スタート可能な十分に高い温度となっているからである。
【0006】
しかし、ガス・蒸気・コンバインドサイクル発電所が運転停止されている時間が長くなるにつれて、この発電所は徐々にクールダウンするので、保温ないし加温のための蒸気量を増やす必要がある。
【0007】
さらに公知のように、このようなガス・蒸気・コンバインドサイクル発電所は、特に電力需要に応じて様々な負荷領域で運転される。例えば、ガス・蒸気・コンバインドサイクル発電所は全負荷領域で、すなわち、全負荷状態で、並びに、これよりも低い部分負荷領域で、すなわち、部分負荷状態で運転することができる。部分付加領域の運転から全負荷領域の運転に切り替えるために、このガス・蒸気・コンバインドサイクル発電所は部分付加領域からこれよりも高い全負荷領域へ出力アップされる。この場合、ガス・蒸気・コンバインドサイクル発電所の急速な出力アップが望まれる。この出力アップ(Hochfahren)はHochlaufen,Hochlauf 又はランプアップ(RampUp)とも呼ばれる。これは、ガス・蒸気・コンバインドサイクル発電所が運転される際の負荷が高められることを意味する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明の課題は、冒頭に述べた様式の方法を改善して、ガス・蒸気・コンバインドサイクル発電所の急速で且つエネルギー効率の良い出力アップを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題は請求項1の特徴を備えた方法により解決される。本発明の合目的的な改善を有する好適な形態は従属請求項に記載されている。
【0010】
請求項1の前文に記載された様式の方法を、ガス・蒸気・コンバインドサイクル発電所を特に急速に且つ効率良く、すなわちエネルギー効率よく、出力アップできるように改善するために、本方法の第1ステップにおいて、ガスタービンにより、すなわち、ガスタービンの排ガスにより、発生された蒸気が分岐される。この分岐された蒸気、すなわち、この蒸気の分岐された部分は蒸気蓄積器、特にルース式アキュムレータ(Ruthsspeicher)に蓄えられる。このルース式アキュムレータは、例えば、特にその大部分が沸騰水で満たされた貯蔵領域を有する蒸気蓄積器である。すなわち、この貯蔵容器の少なくとも第1の部分領域は沸騰水で満たされている。この貯蔵容器の、上述の第1の部分領域とは異なる第2の部分領域、特に貯蔵容器の残りの部分、は沸騰水と同じ温度の水蒸気で満たされている。この貯蔵容器から蒸気が取り出されると、再蒸発が生じ、これに従って沸騰水から新たな蒸気、すなわち、水蒸気が発生する。このために必要な熱は沸騰水から得られる。
【0011】
本方法の第2ステップでは、蒸気蓄積器に蓄積された蒸気の少なくとも一部がその蒸気蓄積器から排出される。本方法の第3ステップでは、蒸気蓄積器から排出された蒸気が、発熱化学反応で解放される熱によって加熱される。換言すれば、本方法の一環として発熱化学反応、すなわち、熱を放出する化学反応、が惹き起こされ、この発熱化学反応の一環として熱が解放される。この発熱化学反応の一環として解放された熱が、蒸気蓄積器から排出された蒸気を加熱するために、特に過熱するために、利用される。この発熱化学反応で解放された熱により加熱された蒸気はタービン装置に案内され、このタービン装置はこの供給された加熱蒸気により駆動される。この発熱化学反応で解放された熱を用いて蒸気を特にエネルギー効率よく加熱し、これによって、特に有利な高温にすることができるので、タービン装置をこの加熱された蒸気で特に効率よく駆動することができる。
【0012】
特に、タービン装置を加熱された蒸気で加速することができるので、このガス・蒸気・コンバインドサイクル発電所を、加熱されタービン装置に供給された蒸気により特に急速に出力アップすることができ、その結果、第1の負荷領域から、この第1の負荷領域よりも大きい第2の負荷領域に持ち込むことができる。こうして、ガス・蒸気・コンバインドサイクル発電所の総合的に特に効率の良い、すなわち、エネルギー的に有利な運転を実現することができる。
【0013】
本発明の好適な一実施形態では、熱により惹き起こされる吸熱化学反応の生成物が、発熱化学反応の反応物として利用されるように構成されている。
【0014】
本発明の好適な一実施形態では、吸熱化学反応を惹き起こすための熱が、排ガスにより発生された蒸気の少なくとも一部から得られるように構成されている。
【0015】
本発明の好適な一実施形態では、吸熱反応を惹き起こすために、前記蒸気の一部から得られた熱が吸熱化学反応の反応物に伝達されるように構成されている。
【0016】
本発明の好適な一実施形態では、ガス・蒸気・コンバインドサイクル発電所を第1の負荷領域からこの第1の負荷領域よりも大きい第2の負荷領域に出力アップすべくタービン装置を駆動するために、このタービン装置に加熱された蒸気を供給するように構成されている。
【0017】
本発明の好適な一実施形態では、前記吸熱化学反応が前記第2の負荷領域で惹き起こされるように構成されている。
【0018】
本発明には、本発明による方法を実施するためのガス・蒸気・コンバインドサイクル発電所も含まれている。本発明による方法の好適な形態は本発明によるガス・蒸気・コンバインドサイクル発電所の好適な形態と見做すことができ、逆に、本発明によるガス・蒸気・コンバインドサイクル発電所の好適な形態は本発明による方法の好適な形態と見做すことができる。
【0019】
本発明のさらなるメリット、特徴及び詳細について、好適な実施例に関する下記明細書の記載並びに図面に基づき説明する。本明細書において上述した諸特徴、及び、特徴の組合わせ、並びに、以下に図面の説明において以下に記載された諸特徴及び特徴の組合わせ、及び/又は、この唯一の図面においてのみ示された、諸特徴及び特徴の組合わせは、その都度記載された組合せにおいてだけでなく、他の組合せにおいても、又は、単独でも、本発明の範囲を逸脱することなく、利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】ガス・蒸気・コンバインドサイクル発電所を模式的に示す唯一の図であり、このガス・蒸気・コンバインドサイクル発電所は、発熱化学反応で解放される熱を用いて特に急速に且つエネルギー効率よく出力アップすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
唯一の図面である
図1は、全体として符号10を付したガス・蒸気・コンバインドサイクル発電所の模式図であり、この発電所はGuD発電所とも、又は、読み易くするために発電所とも記される。この発電所は少なくとも1つのガスタービン12を含み、このガスタービンには例えば、発電所を運転するための一環として燃料が供給される。ガスタービン12への燃料供給は図では方向付き矢印14で示されている。この燃料は特に、例えば天然ガスのようなガス燃料である。さらに、ガスタービン12へは空気が供給され、これは図では方向付き矢印16で示されている。この燃料はガスタービン12により燃焼され、その結果、ガスタービン12の排ガスが発生する。こうしてガスタービン12は排ガスを供給し、このことが図では方向付き矢印18で示されている。ガスタービン12の内部で例えば、燃料と空気とから成る混合気が形成され、この混合気が燃焼される。その結果、ガスタービン12の排ガスが発生する。
【0022】
方向付き矢印18から判るように、この排ガスが発電所の蒸気発生器20に供給される。この蒸気発生器20はボイラー又は蒸発器とも呼ばれる。さらに、蒸気発生器20には特に水の形態の液体が供給される。ここで、ガスタービン12の排ガスから水への熱伝達が行われ、これによりこの水が加熱され蒸発する。こうして、水から蒸気が生成される。このことは、ガスタービン12の排ガスおよび蒸気発生器20を用いて、蒸気発生器20に供給された水(液体)から蒸気が発生されることを示す。排ガスから水へのこの熱伝達の結果、排ガスは冷却されるので、この排ガスは例えば第1の温度T1で蒸気発生器20から排出される。この第1の温度T1は例えば少なくともほゞ90℃(摂氏)である。
【0023】
この発電所はさらに、全体を符号22で示されたタービン装置を含み、このタービン装置はここでは第1タービン24及び第2タービン26を含んでいる。この第1タービンは例えば高圧タービンとして形成されており、第2タービンは中圧及び低圧タービンとして形成されている。ガスタービン12の排ガスおよび蒸気発生器20を用いて発生された蒸気がタービン装置22に供給され、その結果、タービン装置22、特にタービン24および26が発生された高温蒸気により駆動される。タービン装置22により、この高温蒸気に含まれているエネルギーが機械エネルギーに変換され、この機械エネルギーがシャフト28を介して供給される。タービン装置22は例えば、図面に詳細には示されていないタービンホイールを含み、このタービンホイールに蒸気が供給される。これによってこのタービンホイールが蒸気により駆動される。これらのタービンホイールは例えばシャフト28に回り止めして結合されているので、タービンホイールが蒸気で駆動されると、シャフト28がタービンホイールにより駆動される。
【0024】
この発電所はさらに少なくとも1つの発電機30を含んでおり、この発電機はタービン装置22のシャフト28を介して駆動することができる、ないし、駆動される。こうして、発電機30にシャフト28を介して機械エネルギーが供給され、この発電機30によって、供給された機械エネルギーの少なくとも一部が電気エネルギーすなわち電流に変換される。この発電機30はこの電流を供給することができ、この電流は例えば電力系統に供給することができる。
【0025】
前記蒸気はタービン装置22から排出されて、コンデンサーとして機能する、ないし、形成されている熱交換器32に供給される。この熱交換器32によりこの蒸気が冷却され、それによりこの蒸気は凝縮する。こうして、この蒸気は再び上述した水となり、この水を蒸気発生器20に再び供給することができる。
【0026】
前記蒸気を熱交換器32で冷却するために、熱交換器32には例えば冷媒、特に冷却液が供給される。この場合、蒸気から冷却液への熱伝達が起こり、これによって蒸気が冷却され、その結果、凝縮する。
【0027】
この発電所は、図面に詳細には示されていない多数の配管を有し、これらの配管を通って、ガスタービン12の排ガスにより発生された蒸気がそれぞれ流れる。これらの流れの温度は異っている。図面にはガスタービン12の排ガスにより発生された蒸気の異なる温度T2、T3及びT4が示されており、ここでは、温度T2は例えば595℃、温度T3は360°、そして、温度T4は240℃である。水は例えば40℃の温度T5でコンデンサーから流出する。
【0028】
電力需要に応じて、この発電所は、例えば、第1の負荷領域で、並びに、この第1の負荷領域よりも大きい第2の負荷領域で運転することができる。この第2の負荷領域は例えば、発電所が全負荷で、すなわち、全負荷下で運転される全負荷領域である。これは例えば、電力需要が高い場合である。電力需要が低い場合には、この発電所は、例えば、全負荷領域よりも低い、第1の負荷領域で運転される。電力需要が大きくなると、発電所を第1の負荷領域から第2の負荷領域に切り替える必要がある。このために発電所の出力アップが行われる。この第1の負荷領域は例えば部分負荷領域である。換言すれば、この発電所は、第1の負荷領域では第1の負荷で、第2の負荷領域では第1の負荷よりも大きい第2の負荷で運転される。しかし、この両方の負荷は零よりも大きい。すなわち、この発電所は両方の負荷領域で作動されている、すなわち、運転投入されている。
【0029】
発電所の出力アップに際しては、例えば、タービン装置22、特にシャフト28が加速されるように構成されている。これは、第1の負荷領域ではタービン装置22、特にシャフト28が第1の回転数で回転し、第2の負荷領域ではタービン装置22、特にシャフト28は第1の回転数よりも大きい第2の回転数で回転することを意味する。これによって、タービン装置22が第2の負荷領域においてシャフト28を介してより大きな機械エネルギーを供給するので、発電機30はこの第2の負荷領域において、第1の負荷領域におけるよりも大きい電流を供給する。
【0030】
タービン装置22ないしシャフト28を加速するためには、例えば、第2の負荷領域において第1の負荷領域におけるよりも多量の蒸気を蒸気発生器20により供給することが必要である。このためにガスタービン12は第2の負荷領域において第1の負荷領域におけるよりも多量の排ガスを提供する。ガスタービン12自身は特に急速且つ容易に出力アップすることができる。しかし、蒸気発生気20ないしこの蒸気発生器20により発生可能な蒸気量はガスタービン12より遅れる。というのは、ガスタービン12は蒸気発生器20により生じる蒸気発生よりも速く出力アップすることができるからである。
【0031】
そして、発電所を特にエネルギー効率よく且つ急速に出力アップするために、この発電所10は、蒸気を蓄えるためにルース式アキュムレータ34の形の蒸気蓄積器を有している。方向付き矢印36から判るように、発電所運転方法の一環として、ガスタービン12の排ガスにより並びに蒸気発生気20により発生された蒸気の少なくとも一部が分岐される。この分岐された蒸気、すなわち、ガスタービン12の排ガスにより発生された蒸気の分岐された部分がルース式アキュムレータ34に供給され、このルース式アキュムレータ34に蓄えられる。このことは、特に第1の負荷領域の期間中に、及び/又は、第2の負荷領域の期間中に行われる。
【0032】
方向付き矢印36から判るように、ルース式アキュムレータ34に蓄えられた蒸気の少なくとも一部がこのルース式アキュムレータ34から排出される。ルース式アキュムレータ34から排出された蒸気は例えば第6番目の温度T6と38バールの圧力を有している。この第6番目の温度T6は例えば250℃(摂氏)である。ルース式アキュムレータ34から排出された蒸気は発電所の反応装置40に供給される。この反応装置40ではルース式アキュムレータ34から排出された蒸気が、発熱化学反応で解放された熱によって加熱され、その結果、反応装置40の下流での蒸気の温度は例えばT7であり、これは第6番目の温度T6よりも高い。この温度T7は好適には450℃であり、反応装置40の下流での蒸気圧力は例えば38バールである。
【0033】
この図面の方向付き矢印42から判るように、反応装置40により加熱された蒸気がタービン装置22に供給される。特に、この蒸気はタービン26、特に中圧タービンに供給されるので、タービン装置22、特にタービン26及び好適には中圧タービンが、反応装置40により加熱された、特に過熱された蒸気によって駆動される。反応装置40内で加熱された蒸気によりタービン装置22が駆動されることによって、タービン装置22、特にシャフト28が加速されるので、この発電所を、既述したように、第1の負荷領域から第2の負荷領域に出力アップすることができる。
【0034】
好適に、吸熱化学反応の生成物が発熱化学反応の反応物として利用されるように構成されており、この場合、この吸熱化学反応は熱により惹き起こされる。これは、この発熱化学反応が化学平衡反応の例えば逆反応である、ことを意味する。吸熱化学反応はこの化学平衡反応の正反応である。この正反応、すなわち、吸熱化学反応は熱を吸収し、この熱が正反応ないし正反応の反応物に供給される。この正反応の反応物から正反応の生成物が生じる。正反応(吸熱化学反応)のこの生成物が逆反応(発熱化学反応)の反応物である。
【0035】
逆反応の一環で、逆反応の反応物から逆反応の生成物が生じる。逆反応のこの生成物を正反応の反応物として利用することができる。こうして、正反応を惹き起こすべく正反応の反応物に供給された熱が正反応の生成物に蓄えられる。これによって、エネルギーを特に有利に蓄えることができ、このエネルギーを後の諸目的のために、ないし、さらに後の時点で特に発電所の出力アップの一環として利用することができる。例えば、第1の負荷領域の期間中に、及び/又は、第2の負荷領域の期間中に、正反応を惹き起こすために正反応の反応物にこの熱を供給することが可能である。
【0036】
出力アップ期間中に逆反応が進行するので、熱が解放され、この熱を用いてルース式アキュムレータ34から排出された蒸気が加熱され、特に過熱される。好適には、吸熱化学反応(正反応)を惹き起こすための熱が、ガスタービンの排ガスにより発生された蒸気の少なくとも一部から得られるように構成されている。特に、正反応を惹き起こすために、上記の蒸気の一部から得られた熱を正反応の反応物に伝達することが考えられる。例えば、ガスタービン12により、すなわち、ガスタービン12の排ガスにより発生された蒸気の少なくとも一部から得られた熱が少なくとも1つの熱交換器を介して吸熱化学反応の反応物に伝達される。その結果、吸熱化学反応が惹き起こされるので、この反応物に供給された熱の少なくとも一部が吸熱化学反応の生成物に蓄えられる。
【0037】
逆反応(発熱化学反応)の一環で、正反応の生成物に蓄えられた熱が解放され、この解放される熱はルース式アキュムレータ34から排出された蒸気を過熱するのに利用される。発熱化学反応の一環で解放される、ないし、解放された熱は例えば熱交換器を介して、ルース式アキュムレータ34から排出された蒸気に供給され、その結果、ルース式アキュムレータ34から排出された蒸気を効果的且つ急速に加熱することができる。
【0038】
これに代えて又はこれに加えて、蒸気から正反応の反応物への熱伝達を、及び/又は、逆反応の一環で解放される熱のルース式アキュムレータ34から排出された蒸気への伝達を、直接に、すなわち、熱交換器を介在させずに実現することが考えられる。この時、それぞれの蒸気は正反応の反応物、ないし、逆反応の反応物及び/若しくは生成物と接触し、この場合、蒸気は正反応の反応物、ないし、逆反応の反応物及び/若しくは生成物に衝突して流れる、ないし、その周りを流れる。熱交換器を使用することにより、蒸気を正反応の反応物、ないし、逆反応の反応物及び/若しくは生成物から空間的に分離することができるので、蒸気は正反応の反応物、ないし、逆反応の反応物及び/若しくは生成物と直接には接触しない。
【0039】
ルース式アキュムレータ34に供給される蒸気は例えば、質量流量が21.4kg/s、圧力が38バール、温度が334℃である。ルース式アキュムレータ34では、蓄えられた蒸気の温度は例えば250℃である。
【0040】
タービン装置22を駆動するためにタービン装置22に供給される蒸気は例えば、質量流量が25kg/s(キログラム/秒)である。ルース式アキュムレータ34から排出された蒸気の温度は、最初は、ルース式アキュムレータ34の下流で、及び、反応装置40の上流で、例えば250℃である。逆反応の一環で解放された熱により、この蒸気は反応装置40において例えば450℃に加熱される。
【0041】
これに代えて又はこれに加えて、吸熱化学反応を惹き起こすための熱をガスタービン12の排ガスの少なくとも一部から得ることが考えられる。特に、吸熱化学反応を惹き起こすための熱を蒸気発生器20から流出するガスタービン12の排ガスの少なくとも一部から得ることが考えられる。これにより、吸熱化学反応を惹き起こすために、ガスタービン12の排ガスを、特に蒸気発生器20の下流で利用することができる。ガスタービン12の排ガスから得られた熱の正反応の反応物への伝達は、例えば、ガスタービン12により発生された蒸気に関して説明した上述の方法で行うことができる。
【0042】
逆反応は反応装置40内で生じる。さらに、正反応が反応装置40内で生じうる。さらに、正反応を実施するために吸熱反応装置を使用することが考えられ、この場合には、逆反応を実施するために例えば発熱反応装置が使用される。
【0043】
正反応、ないし、正反応の生成物を用いて、反応装置40と協働して熱化学的な蓄熱器が得られ、この熱化学的な蓄熱器に、いずれにせよ利用可能な熱を上述した方法で蓄えることができる。この熱化学的な蓄熱器は、蒸気蓄積器として機能するルース式アキュムレータ34のための補完であり、これによって、蓄熱器であるこの熱化学的な蓄熱器を用いて、逆反応の助けを借りて、ルース式アキュムレータ34から排出された蒸気を加熱することができる。
【符号の説明】
【0044】
10 発電所
12 ガスタービン
14 燃料
16 空気
18 排ガス
20 蒸気発生器
22 タービン装置
24 第1タービン
26 第2タービン
28 シャフト
30 発電機
34 ルース式アキュムレータ
40 反応装置
T1、T2、T3,T4、T5、T6、T7 温度