特許第6706674号(P6706674)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6706674燃料混合物の量を開ループ制御または閉ループ制御する方法および装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6706674
(24)【登録日】2020年5月20日
(45)【発行日】2020年6月10日
(54)【発明の名称】燃料混合物の量を開ループ制御または閉ループ制御する方法および装置
(51)【国際特許分類】
   F02M 43/02 20060101AFI20200601BHJP
   F02M 63/00 20060101ALI20200601BHJP
   F02M 25/025 20060101ALI20200601BHJP
   F02M 55/00 20060101ALI20200601BHJP
   F02D 19/12 20060101ALI20200601BHJP
【FI】
   F02M43/02
   F02M63/00 Q
   F02M25/025 K
   F02M55/00 D
   F02D19/12 A
【請求項の数】9
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2018-534908(P2018-534908)
(86)(22)【出願日】2016年11月28日
(65)【公表番号】特表2019-506558(P2019-506558A)
(43)【公表日】2019年3月7日
(86)【国際出願番号】EP2016078931
(87)【国際公開番号】WO2017125185
(87)【国際公開日】20170727
【審査請求日】2019年5月31日
(31)【優先権主張番号】102016200751.3
(32)【優先日】2016年1月20日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】398037767
【氏名又は名称】バイエリシエ・モトーレンウエルケ・アクチエンゲゼルシヤフト
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100173521
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 淳司
(72)【発明者】
【氏名】バーテルト・ハンス−クリスティアン
【審査官】 二之湯 正俊
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−522523(JP,A)
【文献】 特表2003−520866(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0005177(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 43/02
F02M 25/025
F02D 19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の高圧燃料ポンプ(9)に燃料を供給する前に、燃料に混合させる水量を開ループ制御または閉ループ制御する方法であって、
高圧燃料ポンプ(9)への燃料供給を、負圧ポート(5)を有するベンチュリ管(4)を備えた第一分岐部(2)と、遮断弁(6)を備えた第二分岐部(3)とに分けて行い、
ベンチュリ管(4)の負圧ポート(5)に水供給管(7)を介して水を供給し、
第一分岐部(2)内の水量を増やすために第二分岐部(3)内の燃料流量を遮断弁(6)を閉じることで減少させ、第一分岐部(2)内の水量を減らすために第二分岐部(3)内の燃料流量を遮断弁(6)を開くことで増加させることによって、ベンチュリ管(4)を通して吸引される水量を開ループ制御または閉ループ制御し、
第一分岐部(2)内の燃料水混合物と第二分岐部(3)内の燃料とを高圧燃料ポンプ(9)の流量制御弁(8)に供給することを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、第二分岐部(3)内の燃料通過流量を遮断弁(6)が連続的に減少させることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、絞り弁が一定周期で動作して第二分岐部(3)内の燃料通過流量を減少させることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の方法であって、第一分岐部(2)内の水燃料混合物が、遮断弁(6)の下流で再び燃料供給管の第二分岐部(3)に戻される方法。
【請求項5】
請求項1から3のいずれかに記載の方法であって、第一分岐部(2)の水燃料混合物と第二分岐部(3)の燃料とは、別々の供給管を介して高圧燃料ポンプ(9)に導かれる方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の方法であって、水として水貯留槽(10)からの蒸留水が用いられる方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の方法であって、水量の開ループ制御または閉ループ制御は、プロセッサ(11)が処理データに基づいて遮断弁(6)を開閉することにより行なわれる方法。
【請求項8】
開ループ制御または閉ループ制御された量の水を内燃機関の燃料供給に混合する装置であって、
内燃機関は、高圧燃料ポンプ(9)を有し、
高圧燃料ポンプ(9)または流量制御弁(8)へとつながる燃料供給管(1)であって、第一分岐部(2)と第二分岐部(3)とに分岐する燃料供給管と、
第一分岐部(2)内のベンチュリ管(4)とを備え、
当該ベンチュリ管が負圧ポート(5)を有し、
第二分岐部(3)内の制御可能な遮断弁(6)と、
ベンチュリ管(4)の負圧ポート(5)に接続されている水供給管(7)とを備えている装置。
【請求項9】
請求項8に記載の装置であって、第一分岐部内のシャットオフバルブ(12)をベンチュリ管(4)の上流側に備えている装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の高圧燃料ポンプに燃料を供給する前に、燃料に混合される水の量を開ループ制御または閉ループ制御する方法を対象とし、さらに本発明は、この方法を実施するのに適した装置も含む。
【背景技術】
【0002】
内燃機関では、恒常的かつ多大の技術的進歩が追及される。これに関して典型的なのは、燃費を良くしながら常にリッター馬力の向上を図り、さらには排出される有害物質の量を少なくすることである。現在、特にオットーエンジンは、最も経済的で且つ最も環境に負荷をかけない熱的動力機械とみなされている。
【0003】
その場合、最新の燃料噴射システムは、例えば、エアフローメータのデータを用い、かかっている過給圧、さらに排気ガス温度とその他の測定値を考慮しながら、燃料噴射時期と燃料噴射量を制御する。そのために、エンジン制御部は、シリンダごと(シリンダ別)に一つのバルブを電気的に作動、つまり、旧来のガソリンエンジンに普通に用いられる燃料噴射装置に代わる燃料噴射装置を電気的に作動させる。
【0004】
水を含有した燃料を使用するというのは、とりわけオットーエンジンを将来的な要求に対しても(例えば、排気ガス規制の強化の観点で)備えさせることができるということである。というのも、燃料内に水を注入することは、馬力を向上したり燃費を良くしたりする目的を達成するのに寄与できるとともに有害物質の排出を減らすのにも寄与できる方法だからである。
【0005】
水を注入すると、ガソリンに比べて蒸発エンタルピが高いために、燃焼前の新ガスの温度を下げることができ、その結果、ノック限界をより早期の重心位置にシフトさせることができ、全負荷の燃料消費を低減できるか或いは部分負荷の燃料消費を最適化するように圧縮比を増加させることができる。
【0006】
ガソリン燃料と水との混和性が低いため、自動車エンジン用のエマルションを製造するための従来技術には様々な方法がある:一つには、予め燃料・水エマルションを用意する方法がある。そのために、水は少量の燃料と混合することができ、この混合物が同時に主燃料量ともに噴射ノズルに送られ、燃焼室内に噴射される。これに代わって、界面活性剤を添加することにより、安定的なマイクロエマルションを調製してもよい。また、燃料中にメタノールを混合することが有利であることもある。
【0007】
その一方で、エマルションは、必要になったときにはじめて −つまり車両内においてオン・ボード(車中)で− 作製してもよく、本願は、このような“オン・ボード(On−Board)”で混合されたエマルションに基づくものである。オン・ボードでの混合は、予め混合されたエマルションに比べると、燃料の水分含有量をエンジン作動中に必要に合せて調整することができ、その後、高圧燃料ポンプ、つまりコモンレール式の噴射システムに実際に必要な量と組成の水・燃料エマルションを供給することができるという利点がある。
【0008】
ちなみに、燃料と水との混合は、燃料噴射装置で直接行なうことができる。というのも、混合する位置が燃焼室に近ければ近いほど、エマルションの作製と供給との期間が短くなり、その結果“デッドタイム(無駄時間)”が少なくなるからである。
【0009】
水を注入するために、従来技術では、燃料に混合すべき水量が必要に応じて輸送可能な水ポンプが用いられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、燃料に混合させる水量の開ループ制御または閉ループ制御を容易に実現する方法および容易に構成された装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、第一の観点において、内燃機関の高圧燃料ポンプの流量制御弁に供給される前に、燃料に混合させる水量を開ループ制御または閉ループ制御する方法によって課題を解決する。この方法は、高圧燃料ポンプへの燃料供給を、燃料供給ポンプ(電動燃料ポンプ)下流側における燃料路内のベンチュリ管で負圧ポートを有したものを備えた第一分岐部と、遮断弁を備えた第二分岐部とに分けて行うことを含む。水供給管を介してベンチュリ管の負圧ポートに水が供給される。ベンチュリ管を通して吸引される水量の開ループ制御または閉ループ制御は、第一分岐部内の水量を増やすために第二分岐部内の燃料流量を遮断弁(不完全な閉鎖も含む)を閉じることで減少させ、第一分岐部内の水量を減らすために第二分岐部内の燃料流量を遮断弁(部分的な開放またはより広い開放も含む)を開くことで増加させることによって操作される。その後、第一分岐部内の燃料水混合物と第二分岐部内の燃料とを高圧燃料ポンプの流量制御弁に輸送する。
【0012】
本発明の第二の観点は、開ループ制御または閉ループ制御された量の水を内燃機関の燃料供給に混合する装置であって、その内燃機関が、流量制御弁を備えた高圧燃料ポンプを有する装置である。この装置は、流量制御弁へとつながる燃料供給管であって、第一分岐部と第二分岐部とに分岐する燃料供給管を有する。第一分岐部内には、負圧ポートを有したベンチュリ管が設けられ、第二分岐部内には制御可能な遮断弁がある。さらに、ベンチュリ管の負圧ポートに接続されている水供給管が設けられているとともに、高圧燃料ポンプの流量制御弁への燃料供給管の第一分岐部と第二分岐部の接続部が設けられている。
【0013】
本発明により、従来技術において燃料供給管に設けられていた水ポンプは省略される。このポンプが、機械的に動く部材を持たないベンチュリ管と、遮断弁(遮断弁には、使い勝手が良く特に頑丈なものが従来技術にある。)とによって置き換えられる。これにより、水注入システムの複雑さが大幅に低減される。
【0014】
その他の利点は、特許請求された方法または特許請求された装置の実施態様が提供する。
【0015】
遮断弁の連続的な制御に対して、十分に高い周波数による一定周期の制御は、特に簡易かつ丈夫である。
【0016】
第一分岐部内の水燃料混合物と第二分岐部内の燃料とが、別々の供給管を介して高圧燃料ポンプの流量制御弁に導かれると、死容積が小さくなるため、求められる条件が変化したときのシステムの応答性が特に速くなる。
【0017】
ベンチュリ管を備えた第一分岐部を完全に(または部分的に)遮断するシャットオフバルブによって、水を注入する運転と注入しない運転との間の素早い切替が可能になる。
【0018】
本発明による方法および本発明による装置は、特にガソリン燃料に使用される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の方法を実施する本発明の装置の一実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1には、車両の内燃機関、好ましくはオットーエンジンの燃料供給システムが模式的かつ概略的に示されている。
【0021】
燃料供給管1は、図示しない燃料タンク、好ましくはガソリンタンクに接続されている。
【0022】
燃料供給管1は、二つの分岐部、すなわち第一分岐部2と第二分岐部3とに分かれている。第一分岐部2には負圧ポート5を持つベンチュリ管4が、第二分岐部3には遮断弁6がある。
【0023】
負圧ポート5に水供給管7が接続され、この水供給管を介して純度の高い或いは蒸留された水が水貯留槽10から吸引され、ベンチュリ管4においてそこに流れる燃料に混合される。
【0024】
第一分岐部2ないし第二分岐部3は、破線の配管で示されているように、ベンチュリ管4の下流側で再び一つになってもよいし、別々に高圧ポンプ9の流量制御弁8に至るのでもよい。
【0025】
この遮断弁6は、エンジン制御部の一部とすることもできるプロセッサ11によって制御される。
【0026】
任意選択的に、ベンチュリ管4の上流側ないし下流側に、第一分岐部2を完全ないし部分的に段階式ないし無段階式に遮断できるシャットオフバルブ12があり、さらに、場合により水を供給する領域に燃料が逆流することを防ぐチェックバルブ13がある。チェックバルブは、水供給管7に配置されていてもよい。
【0027】
第一分岐部2内の燃料の流量が多いほど、水供給管7内のベンチュリ管4が生成する負圧が大きくなり、吸引される水の量が多くなる。この効果が、供給される水量を開ループ制御または閉ループ制御するのに用いられる。
【0028】
燃料供給管1に流入する燃料の総量は、内燃機関が実際に必要としている燃料の量によって予め定められており、以下の考察では一定とみなすことにする。この流量は、分岐部2と分岐部3の流れ抵抗の逆比に分割される。第一分岐部2を通る流量が多いほど、吸引される水量は多くなる。逆に、燃料の大半が第二分岐部3を流れる場合、吸引される水の量は減少する。
【0029】
遮断弁6は、流量比、ひいては燃料中の水の割合を電子的に操作する役割を担う。そのために、遮断弁6は、連続的または一定周期でも動作することができ、後者の場合、デューティ比が第二分岐部3内の流れ、ひいては第一分岐部2内の流れとそれに伴う水量を決める。
【0030】
必要な燃料量が変わり、それに伴い二つの分岐部2および分岐部3を通る流れが変わると、遮断弁6の設定は、一般には、必要に合わせた水分割合が設定されるように調整しなければならない。プロセッサ11では、これは、表に基づいて、さらに場合によってはプロセスからの測定値により補いながら可能となる。これに見合った測定値には様々なものが考えられる。一つ考えられるのは、水供給管7を通る水の供給を直接的に測定することであるが、それ以外にも、例えばエンジンにおける直接測定や標準的に既にあるエンジン測定量といった間接的な測定もこの目的に相応しいといえる。
【0031】
最終的には、第二分岐部3からの燃料と、第一分岐部2からの燃料水混合物とが、高圧燃料ポンプ9の流量制御弁8に、ひいてはエンジンの噴射ノズルに導かれる。このために、二つの分岐部が、後から再び一緒に導かれて一体の供給管として高圧燃料ポンプ9に達するのでもよい。或いは、図1に示されている実施形態におけるように、流量制御弁8が、二つの分岐部2および分岐部3のための二つの接続部を有し、先ずそこで二つの分岐部2,3を通して導かれた液体が混合する。
【0032】
燃料中に混合された水は、−とりわけエンジンの出力が増えるために−摩耗し易くなったり、その他の悪影響をもたらす。また、エンジンの部分負荷領域では、汚染物質の発生が非常に少ないこともあり得るので、燃料に水を混合させることでそれをさらに少なくすることは必要ではない。そのため、水の混合を完全に停止することができ、一時的に特に高いエンジン出力が必要になる場合にのみ、自動車内で、例えば追い越し動作中に行うことが有利である。また、水貯留槽がほぼ空の場合には、水の混合はもはや行なわれないことになる。
【0033】
水の混合を完全に停止するために、図1の実施形態は、シャットオフバルブ12が設けられており、このバルブが第一分岐部2を完全に閉鎖する。
図1