(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
航空機の降着装置の操舵輪を操向可能であり、前記操舵輪の実操舵量を検知する実舵角度検知装置と、操舵部材と前記操舵部材の操作量を検知する操作量検知装置とを含む操舵装置と、前記操舵輪を操向する駆動装置とを備えるステアリング装置を制御するための航空機のステアリング制御装置であって、
前記実操舵量に基づいて、前記操舵輪の実舵角度を決定する実舵角度決定部と、
前記操作量に基づいて、前記操舵装置に応じた操作角度を決定する操作角度決定部と、
前記操舵輪の目標角度を設定する目標角度設定部と、
前記実舵角度が前記目標角度になるよう前記操舵輪を操向する操向制御が実施される有効状態と前記操向制御が実施されない無効状態とを切り替える制御状態切替部とを備え、
前記目標角度設定部は、前記制御状態切替部により前記無効状態から前記有効状態に切り替わるときに、前記目標角度が前記操作角度から前記実舵角度に近づいた角度となっているように前記目標角度を決定し、前記無効状態から前記有効状態に切り替わった後、時間の経過に応じて前記目標角度を前記操作角度に近づける、航空機のステアリング制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本実施形態による航空機のステアリング制御装置は、航空機の降着装置の操舵輪を操向可能であり操舵輪の実操舵量を検知する実舵角度検知装置と、操舵部材と操舵部材の操作量を検知する操作量検知装置とを含む操舵装置と、操舵輪を操向する駆動装置とを備えるステアリング装置を制御する。ステアリング制御装置は、実舵角度決定部と、操作角度決定部と、目標角度設定部と、制御状態切替部とを備える。実舵角度決定部は、実操舵量に基づいて操舵輪の実舵角度を決定する。目標角度設定部は、操作量に基づいて操舵装置に応じた操作角度を決定する。目標角度設定部は、操舵輪の目標角度を設定する。制御状態切替部は、実舵角度が目標角度になるよう操舵輪を操向する操向制御が実施される有効状態と操向制御が実施されない無効状態とを切り替える。目標角度設定部は、制御状態切替部により無効状態から有効状態に切り替わるときに、目標角度が操作角度から実舵角度に近づいた角度となっているように目標角度を決定し、無効状態から有効状態に切り替わった後、時間の経過に応じて目標角度を操作角度に近づける。
【0010】
本実施形態によるステアリング制御装置は、操舵輪が接地してから十分な時間が経過したときに航空機が接地していると判定し、ステアリング制御を有効にする。その際に、操舵装置の操作量に応じた操作角度ではなく、操作角度から実舵角度に近づけた角度を目標角度として、操舵輪を操向する。そして、時間の経過とともに目標角度を操作角度に近づける。このように、本実施形態のステアリング制御装置は、操作角度による操舵輪の操向(以下、通常制御という)の前に、補正された目標角度による操舵輪の操向(以下、過渡制御という)を実行する。これにより、地上走行開始時に実舵角度ASA(Actual Steering Angle)が操作角度TSA(Target Steering Angle)から大きく離れていても、操舵輪が急激に動作するのを抑制できる。その結果、航空機の走行安定性を高めることができる。
【0011】
上記目標角度設定部は、無効状態から有効状態に切り替わった後の目標角度の単位時間当たりの変化量が、駆動装置により実現可能な実舵角度の単位時間当たりの最大変化量よりも小さくなるように、目標角度を操作角度に近づけてもよい。
【0012】
この場合、操舵輪の急激な動きをさらに抑制できる。
【0013】
上記目標角度設定部は、目標角度の単位時間当たりの変化量よりも大きい単位時間当たりの変化量で、目標角度から離れる方向に変化したとき、目標角度の単位時間当たりの変化量が、操作角度の単位時間当たりの変化量以上となるように、目標角度を操作角度に近づけてもよい。
【0014】
過渡制御において、パイロット等の操作により意図的に操舵輪を急激に動作させたい場合がある。このような例外動作が発生した場合、目標角度設定部は、目標角度を、操作角度の単位時間当たりの変化量以上の変化量で変化させる。そのため、駆動装置は操作角度の単位時間当たりの変化量以上で操舵輪を操向する。その結果、例外動作が発生した場合、パイロット等の操作に応じて操舵輪を急激に動作させることができる。
【0015】
上記目標角度設定部は、操作角度と目標角度との角度差が時間の経過に応じて減少するように、目標角度を操作角度に近づけてもよい。
【0016】
この場合、過渡制御を実施中に、パイロット等が操舵部材を操作して操作角度を目標角度から大きく離しても、その操作角度との角度差が従前よりも小さくなるように目標角度が設定される。そのため、過渡制御中に操作角度が大きく変動しても、目標角度の変化量が操作角度の変化に合わせて増減することになり、過渡制御が所定の時間内に終了する。
【0017】
上記目標角度設定部は、制御状態切替部により無効状態から有効状態に切り替わるときに、目標角度を実舵角度と一致させてもよい。
【0018】
この場合、操舵輪が接地して地上走行が開始し、ステアリング制御が有効になったときに、操舵輪が急激に動作するのをさらに抑制できる。
【0019】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態について詳しく説明する。図中同一又は相当部分には、同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0020】
[第1の実施形態]
[ステアリング装置の全体構成]
図1は本実施形態のステアリング装置の全体構成を示す機能ブロック図である。
図1を参照して、ステアリング装置100は、航空機の降着装置の操舵輪6を操向可能である。
【0021】
ステアリング装置100は、ステアリング制御装置1と、操舵装置2と、駆動装置5と、実舵角度検知装置7とを備える。
【0022】
操舵装置2は、パイロットや作業員等のオペレータ(以下、パイロット等という)によって操作され、その操作量に応じた信号を出力する。操舵装置2は、操舵部材21と、操作量検知装置22とを備える。操舵部材21はパイロット等が操舵のために操作する部材であり、たとえば、ラダーペダルである。操作量検知装置22は、パイロット等による操舵部材21の操作量を検知する。操作量検知装置22はさらに、検知された操作量に応じた信号(以下、操作量信号という)SI2をステアリング制御装置1に出力する。
【0023】
ステアリング装置100には、接地検知装置3が接続されている。接地検知装置3は、操舵輪6が接地しているか否かを検知する。接地検知装置3はたとえば、操舵輪6に基準値以上の外力が付与されたとき(つまり、操舵輪6が地上に接地しているとき)、ハイレベル(Hレベル)のWOW(Weight On Wheel)信号SI3をステアリング制御装置1に出力する。一方、操舵輪6に掛る外力が基準値未満であるとき(つまり、航空機が飛行中のとき)、接地検知装置3はローレベル(Lレベル)のWOW信号SI3をステアリング制御装置1に出力する。接地検知装置3は、外力に基づいて直接、WOW信号SI3のレベルを変更するような構成であってもよいし、操舵輪を備える脚構造部材の、外力に応じた機械的な変化に基づいてWOW信号SI3のレベルを変更するような構成であってもよい。
【0024】
ステアリング装置100には、油圧源4が接続されている。油圧源4は、加圧された作動油を駆動装置5に供給する。油圧源4はさらに、駆動装置5から排出された作動油を回収する。要するに、油圧源4は、駆動装置5内に作動油を循環させる。
【0025】
駆動装置5は、ステアリング制御装置1からの指示に応じて操舵輪6を操向する。駆動装置5がステアリング制御装置1からの指示に応じて操舵輪6を操向できれば、駆動装置5の構成は特に制限されない。
図1では駆動装置5は、サーボバルブ51と、アクチュエータ52と、シャットオフバルブ53とを含む。
【0026】
シャットオフバルブ53は、油圧源4とサーボバルブ51との間に配置され、油圧源4及びサーボバルブ51に接続される。シャットオフバルブ53は、ステアリング制御装置1からの制御指令SI53に応じて、油圧源4からの加圧された作動油の駆動装置5内への流入を許可したり、停止したりする。シャットオフバルブ53が開いているとき、加圧された作動油がサーボバルブ51に供給される。したがって、駆動装置5は制御可能状態である。シャットオフバルブ53が閉じているとき、油圧源4からの作動油の流入が停止され、さらにはアクチュエータ52内での作動油の循環が形成される。したがって、駆動装置5は、制御停止状態であり、ステアリング装置100は、操舵輪6に付与される外力によって操舵輪6とともにアクチュエータ52が自由に動かされうるフリーキャスタ状態となる。
【0027】
サーボバルブ51は、シャットオフバルブ53とアクチュエータ52との間に配置され、シャットオフバルブ53及びアクチュエータ52に接続される。サーボバルブ51はシャットオフバルブ53が開いているとき、シャットオフバルブ53を経由した油圧源4からの加圧された作動油を受け、ステアリング制御装置1からの制御指令SI51に応じてアクチュエータ52へ供給する作動油量を調節しながら、アクチュエータ52を連続的に作動させる。
【0028】
アクチュエータ52は、操舵輪6とサーボバルブ51との間に配置され、操舵輪6及びサーボバルブ51に接続される。アクチュエータ52は、サーボバルブ51を介して供給された作動油の圧力によって、機械的に操舵輪6を操向する。
【0029】
実舵角度検知装置7は、操舵輪6の実操舵量を検知する。本例では、実舵角度検知装置7は、駆動装置5のアクチュエータ52のストローク量を実操舵量として検知する。実舵角度検知装置7は、実操舵量信号SI7をステアリング制御装置1に出力する。
【0030】
[ステアリング制御装置1の構成]
本実施形態のステアリング制御装置1は、駆動装置5を制御して操舵輪6の実舵角度ASAを調整する。
図2は、ステアリング制御装置1の機能ブロック図である。
図2を参照して、ステアリング制御装置1は、制御状態切替部11と、操作角度決定部12と、実舵角度決定部13と、目標角度設定部14と、指示部15とを備える。
【0031】
制御状態切替部11は、接地検知装置3から出力されるWOW信号SI3を受け、操舵輪6が接地して安定した地上走行状態であるかを判定する。安定した地上走行状態であると判定した場合に、制御状態切替部11は、ステアリング制御を有効状態に切り替える。安定した地上走行状態でないと判定した場合に、制御状態切替部11は、ステアリング制御を無効状態に切り替える。
【0032】
操作角度決定部12は、操舵装置2から出力される操作量信号SI2を受け、操作角度TSAを決定する。操作角度決定部12はたとえば、操作量に対応した角度が登録された操作角度テーブルを記憶している。操作角度決定部12は、操作角度テーブルに基づいて、所定時間ごと(後述のステアリング制御処理を実行するごと)に、受けた操作量信号SI2に対応した角度を操作角度TSAに決定し、記憶する。
【0033】
実舵角度決定部13は、実舵角度検知装置7から出力される実操舵量信号SI7を受け、実舵角度ASAを決定する。実舵角度決定部13はたとえば、実操舵量(本例ではアクチュエータ52のストローク量)に対応した角度が登録された実舵角度テーブルを記憶している。実舵角度決定部13は、実舵角度テーブルに基づいて、所定時間ごと(後述のステアリング制御処理を実行するごと)に、受けた実操舵量信号に対応した角度を実舵角度ASAに決定し、記憶する。
【0034】
目標角度設定部14は、操舵輪6の目標角度TA(Target Angle)を設定する。目標角度設定部14は、補正部141と、切替部142とを含む。
【0035】
目標角度設定部14の補正部141は、過渡制御における目標角度TAを決定する。過渡制御は、遅くともステアリング制御が有効状態になるときまでに開始する。補正部141は、ステアリング制御が有効状態になる時点までは、目標角度TAを、操作角度TSAから実舵角度ASAに近づけた値にする。本例では、補正部141は、目標角度TAを実舵角度ASAと一致させる。補正部141はさらに、ステアリング制御が有効になった後、時間の経過に応じて目標角度TAを操作角度TSAに近づける。具体的には、補正部141は、後述の目標角度更新処理S20を実行するごとに、目標角度TAを更新して操作角度TSAに近づける。
【0036】
目標角度設定部14の切替部142は、過渡制御と通常制御とを切り替える。切替部142は、遅くともステアリング制御が有効になる時点までに過渡制御(補正部141による目標角度TAの決定)を開始し、ステアリング制御が有効になった後、目標角度TAが操作角度TSAに到達したときに、過渡制御(補正部141による目標角度TAの決定)を停止して、以降、ステアリング制御が有効となっている間、操作角度TSAの値にて目標角度TAを更新する(通常制御)。本明細書において、目標角度TAが操作角度TSAに到達したとは、操作角度TSAと目標角度TAとの差分が基準値未満になった、又は、目標角度TAが操作角度TSAを追い越したことを意味する。つまり、目標角度TAが操作角度TSAに厳密に一致していない場合であっても、目標角度TAが操作角度TSAに近い値であれば、目標角度TAが操作角度TSAに到達したとみなす。
【0037】
指示部15は、制御状態切替部11がステアリング制御を有効状態に切り替えたとき、シャットオフバルブ53が開くような制御指令SI53と、操舵輪6の実舵角度ASAが目標角度TAになるまで操舵輪6を操向するようにサーボバルブ51を制御するための制御指令SI51とを、駆動装置5に出力する。制御状態切替部11がステアリング制御を無効状態に切り替えたとき、指示部15は、シャットオフバルブ53が閉じるような制御指令SI53と、サーボバルブ51が中立位置となるような制御指令SI51とを、駆動装置5に出力する。
【0038】
[本実施形態のステアリング制御装置1の動作概要]
上述の構成を備えるステアリング制御装置1の動作の概要を説明する。
【0039】
初めに、従来のステアリング制御装置の動作について説明する。
図3は、従来のステアリング制御装置における、時間の経過に応じた操作角度TSA及び実舵角度ASAの動きを示す図である。図中の一点鎖線が操作角度TSAであり、実線が実舵角度ASAである。
図3を参照して、操舵輪6が接地して地上走行が開始されたのち、時刻t1でステアリング制御が有効状態になったと仮定する。
図3では、飛行中及び操舵輪6の接地後ステアリング制御が有効状態になるまでにおいて、操作角度TSAと操舵輪の実舵角度ASAとがほぼ一致している。時刻t1でステアリング制御状態が有効状態になった後、実舵角度ASAが操作角度TSAとなるように、ステアリング制御装置は操舵輪6を操向する。そのため、時刻t1以降も同様に、操作角度TSAが操舵輪の実舵角度ASAとほぼ一致している。時刻t1以降、たとえば、パイロットが操舵部材21を操作することにより、時間の経過とともに操作角度TSAが増加した場合、実舵角度ASAも操作角度TSAに追随して増加する。
【0040】
しかしながら、従来のステアリング制御装置の場合、次の問題が生じる。
図4に示すとおり、時刻t1でステアリング制御が有効状態になったとき、何らかの原因により、実舵角度ASAが操作角度TSAと大きく異なっていると仮定する。例えば、空中で操作角度TSAと実舵角度ASAとがともに中立位置(操舵していない状態)となっている状態で航空機が着陸する際に、横風等の影響で航空機の前後方向が進行方向とずれていると仮定する。このとき、操舵輪6の接地に伴い、操舵輪6の向きが進行方向となり、実舵角度ASAが中立位置からずれて、実舵角度ASAが操作角度TSAと大きく異なる可能性がある。この場合、時刻t1後、実舵角度ASAを操作角度TSAに合わせるように、ステアリング制御装置が操舵輪を操向する。
図4に示すとおり、時刻t1において、実舵角度ASAはA2°であり、操作角度TSAのA1°から大きく離れている。そのため、ステアリング制御装置は、駆動装置が実現可能な単位時間当たりの最大変化量で、操舵輪6を操向するよう駆動装置に指示する。その結果、
図4に示すとおり、時刻t1から微小時間Δtの短時間で、ステアリング制御装置は操舵輪を急激に動かし、実舵角度ASAを操作角度TSAに合わせる。この場合、操舵輪が急激に動くため、航空機の走行安定性が低下する。
【0041】
そこで、本実施形態のステアリング制御装置1は、目標角度TAとして操作角度TSAを用いた通常制御を実施する前に、実舵角度ASAに近づけた目標角度TAを用いた過渡制御を実施する。これにより、上述のような、操作角度TSAと実舵角度ASAとの差が大きいことに起因する操舵輪の急激な動きを抑制することができる。以下、この点を説明する。
【0042】
図5は、本実施形態におけるステアリング制御装置1の動作を説明するための図である。
図6は、
図5の動作時における実舵角度ASAと操作角度TSAとの関係を示す図である。
図5及び
図6においても、時刻t1でステアリング制御が有効状態になると仮定する。
【0043】
ステアリング制御装置1は、遅くとも時刻t1までに、目標角度TAを、操作角度TSAから実舵角度ASAに近づけた角度とし、時刻t1になるまで当該処理を繰り返す(
図5中で二点鎖線)。
図5では、ステアリング制御装置1は、目標角度TAを実舵角度ASAと同じ値(A2°)とする。
【0044】
ステアリング制御装置1はさらに、時刻t1後、時間の経過とともに目標角度TAを操作角度TSAに近づける(
図5参照)。その結果、実舵角度ASAは、時間の経過とともに増加する目標角度TAに追随しながら、操作角度TSAに近づく(
図6参照)。
【0045】
時刻t1においてステアリング制御が有効状態になったとき、
図6に示すとおり、実舵角度ASAは操作角度TSAと大きく離れている。しかしながら、ステアリング制御装置1は、
図5及び
図6に示すとおり、操作角度TSAの代わりに実舵角度ASAに近づけた目標角度TAに、実舵角度ASAが追随するように操舵輪6を操向する(過渡制御の実施)。そのため、
図4に示したような、時刻t1直後に操舵輪6の動作が急激に変化するのを抑制できる。
【0046】
図5を参照して、時間の経過とともに目標角度TAを操作角度TSAに近づけた結果、時刻t2で目標角度TAが操作角度TSAに到達する。このとき、ステアリング制御装置1は、目標角度TAとして操作角度TSAを用いる通常制御に切り替え、その後は実舵角度ASAが操作角度TSAに追随するよう操舵輪6を操向する。
【0047】
以上のとおり、本実施形態のステアリング制御装置1は、操作角度TSAから実舵角度ASAに近づけた目標角度TAを設定し、着陸後のステアリング制御開始時はその目標角度TAを用いた過渡制御を実施する。そして、目標角度TAが操作角度TSAに到達したとき、目標角度TAとして操作角度TSAを用いた通常制御を実施する。過渡制御を実施することにより、操舵輪6が急激に動作するのを抑制できる。そのため、着陸後の航空機の地上走行の安定性を高めることができる。以下、ステアリング制御装置1の動作を、フロー図を用いて詳述する。以降の説明では、操舵輪6の操舵において、航空機の前後方向と操舵輪の方向が一致している場合の実舵角度ASAを0°とする。そして、操舵輪6を上方から見たときの時計回りの回転方向をプラス(+)で表現し、反時計回りの回転方向をマイナス(−)で表現する。
【0048】
[ステアリング制御装置1の動作]
図7は、着陸に向けてのアプローチから接地、地上走行を経て、運航終了に至るまでのステアリング制御の概要を示す全体フロー図である。
図7では、本発明に影響しない処理については省略している。ステアリング制御装置1の電源がオンされているとき(S100でYES)、ステアリング制御装置1はステアリング制御処理(S200)を実行する。本実施形態では、運航中はステアリング制御装置1の電源が常にオンされていると想定する。そのため、運航を終了してステアリング制御装置1の電源がオフされるまで、ステアリング制御装置1はステアリング制御処理(S200)を繰り返し実行する。
【0049】
[ステアリング制御処理(S200)]
図8は、ステアリング制御処理(S200)のフロー図である。
【0050】
[ステアリング制御状態が有効状態になるまでの動作(時刻t1までの動作)]
ステアリング制御処理(S200)では初めに、ステアリング制御装置1内の操作角度決定部12が操作角度TSAを決定し(S1及びS2)、実舵角度決定部13が実舵角度ASAを決定する(S3及びS4)。具体的には、操作角度決定部12は、操舵装置2から操作量信号SI2を取得する(S1)。操作角度決定部12は、操作量信号SI2に基づいて、操作角度TSAを決定する(S2)。同様に、実舵角度決定部13は、実舵角度検知装置7から実操舵量信号SI7を取得し(S3)、実操舵量信号SI7に基づいて、実舵角度ASAを決定する(S4)。
【0051】
ステアリング制御装置1はさらに、操舵輪6が地上に接地して安定した地上走行中であるか否かを判断する(S5及びS6)。具体的には、制御状態切替部11がWOW信号SI3を取得し、WOW信号SI3が所定の時間継続してHレベルになっている場合に、操舵輪6が接地して安定した地上走行中であると判断し、ステアリング制御を有効状態へと切り替える。それ以外の場合は、ステアリング制御を無効状態へと切り替える。なお、本実施形態では、WOW信号SI3により地上走行の判断を実施しているが、安定した地上走行の判断に利用する信号は、WOW信号SI3に限らない。たとえば、機体速度信号等の他の信号で地上走行の判断を実施してもよい。また、WOW信号SI3と機体速度信号等の複数の信号を組み合わせて、地上走行の判断を実施してもよい。
【0052】
航空機が飛行中の場合、WOW信号SI3はLレベルであるため、制御状態切替部11は操舵輪6が接地して安定した地上走行中ではないと判断し、ステアリング制御を無効状態に切り替える(S6でNO)。この場合、指示部15は、制御指令SI53として、駆動装置5内のシャットオフバルブ53に対して、バルブを閉める指示(SOV閉指令)を出力する(S14)。シャットオフバルブ53は、SOV閉指令を受け、バルブを閉状態にする。その結果、駆動装置5内に加圧された作動油が供給されず、駆動装置5は制御停止状態となる。この場合、操舵輪6は駆動装置5により制御されておらず、外力を受けた場合に操舵方向に自由に回転可能なフリーキャスタ状態である。なお、前回のステップS6での処理で既に無効状態へ切り替えている場合は、制御状態切替部11は、無効状態を維持する。
【0053】
ステップS14の後、目標角度設定部14は、通常制御フラグを「0」に設定する(S15)。ここで、通常制御フラグは、ステアリング制御装置1が通常制御を実施しているか、過渡制御を実施しているかを示すフラグである。通常制御フラグが「0」の場合、ステアリング制御装置1が過渡制御を実施していることを意味する。通常制御フラグが「1」の場合、ステアリング制御装置1が通常制御を実施していることを意味する。
【0054】
通常制御フラグを「0」に設定した後、目標角度設定部14内の補正部141は、目標角度TAを実舵角度ASAと同じ値(
図5ではA2°)にする(S16)。時刻t1になるまで、ステアリング制御処理(S200)では、当該処理を繰り返し実施する。これにより、時刻t1時において、目標角度TAは実舵角度ASAと一致する。
【0055】
[ステアリング制御状態が有効状態になったとき以降の動作(時刻t1以降の動作)]
ステアリング制御処理(S200)を繰り返し実施した結果、時刻t1において、制御状態切替部11が、操舵輪6が接地して安定した地上走行中であると判断し、ステアリング制御を有効状態へと切り替える(S6でYES)。このとき、指示部15は、駆動装置5を制御可能状態にする(S7)。具体的には、指示部15は制御指令SI53として、駆動装置5内のシャットオフバルブ53に対して、バルブを開く指示(SOV開指令)を出力する(S7)。このとき、シャットオフバルブ53は、SOV開指令を受け、バルブを開状態にする。その結果、駆動装置5内に加圧された作動油が供給され、駆動装置5が操舵輪6を操向可能な状態(制御可能状態)となる。
【0056】
続いて、目標角度設定部14は、通常制御フラグを確認する(S8)。時刻t1では、通常制御フラグは0であるため(S8でNO)、目標角度設定部14は、現時点は過渡制御であると認識する。そこで、目標角度設定部14は、目標角度更新処理を実行して、目標角度TAを更新する(S20)。
【0057】
[目標角度更新処理(S20)]
図9は、
図8中の目標角度更新処理(S20)のフロー図である。目標角度更新処理(S20)において、目標角度設定部14の補正部141は、時間の経過に応じて目標角度TAを操作角度TSAに近づける。
【0058】
具体的には、補正部141は初めに、次式に基づいて、操作角度変化量を算出する(S21)。
操作角度変化量=操作角度TSA−前回のステアリング制御処理で決定された操作角度TSA
【0059】
続いて、目標角度TAと操作角度TSAとを比較する(S22)。目標角度TAが操作角度TSAよりも小さく(S22でYES)、かつ、ステップS21で求めた操作角度変化量があらかじめ設定された目標角度TAの単位時間当たり(本実施例では計算周期当たり)の正の変化量「Δ1」以下の場合(S23でNO)、補正部141は、目標角度TAを次の式のとおり更新する(S25)。
目標角度TA=前回のステアリング制御処理で設定された目標角度TA+Δ1
【0060】
一方、ステップS22での比較の結果、目標角度TAが操作角度TSA以上で(S22でNO)、操作角度変化量があらかじめ設定された目標角度の単位時間当たりの負の変化量「−Δ1」以上の場合(S26でNO)、補正部141は、目標角度TAを次の式のとおり更新する(S27)。
目標角度TA=前回のステアリング制御処理で設定された目標角度TA−Δ1
【0061】
要するに、補正部141は、時刻t1からの時間の経過に応じて(目標角度更新処理(S20)を実施するごとに)、目標角度TAを更新して単位時間当たりの変化量Δ1だけ操作角度TSAの方向に変化させる。
【0062】
図8に戻って、目標角度更新処理(S20)により目標角度TAを更新した後、目標角度設定部14の切替部142は、更新された目標角度TAが操作角度TSAに到達したか否かを判断する(S12)。上述のとおり、ステップS12では、目標角度TAと操作角度TSAとの差分が基準値以下である、又は、目標角度TAが操作角度TSAを追い越していれば、目標角度TAが操作角度TSAに到達したとみなす。
【0063】
ステップS12において、目標角度TAが操作角度TSAに到達していない場合(S12でNO)、ステアリング制御装置1は過渡制御を継続する(通常制御フラグは「0」のまま)。
【0064】
指示部15は、実舵角度ASAが目標角度TA(ここではS20で設定された過渡制御中の目標角度TA)となるように操舵輪6を操向するよう、制御指令SI51を算出する(S10)。そして、指示部15は、駆動装置5(のサーボバルブ51)に対して、算出された制御指令SI51を出力する(S11)。
【0065】
駆動装置5は、制御指令SI51を受け、サーボバルブ51を駆動する。その結果、操舵輪6が作動して、実舵角度ASAが過渡制御中の目標角度TAに近づく。
【0066】
ステアリング制御装置1は、ステップS11を実行した後、電源がオンされている限り(
図7中のS100でYES)、ステップS1に戻り、ステアリング制御処理(S200)を繰り返す。これにより、
図5及び
図6に示すとおり、時刻t1後、時間の経過とともに目標角度TAが操作角度TSAに近づく(
図5参照)。その結果、実舵角度ASAが操作角度TSAに近づく(
図6)。
【0067】
[目標角度TAが操作角度TSAに到達したときの動作(
図5の時刻t2以降の動作)]
図5における時刻t1以降、ステアリング制御処理(S200)を繰り返し実行した結果、時刻t2において、過渡制御中の目標角度TAが操作角度TSAに到達したと目標角度設定部14中の切替部142が判断する(
図8中のS12でYES)。このとき、通常制御を実施するため、目標角度設定部14は通常制御フラグを「1」にする(S13)。さらに、切替部142は、目標角度TAを、目標角度設定部14中の補正部141で更新された値に代えて、操作角度TSAと同じ値にする(S9)。
【0068】
上記動作により、過渡制御から通常制御に切り替わる。以降、ステアリング制御処理(S200)が実行されている間は、通常制御フラグが「1」である限り(S8でYES)、ステアリング制御装置1は通常制御を繰り返し実行する。指示部15は、実舵角度ASAが目標角度TA(操作角度TSA)となるまで操舵輪6を操向するよう、制御指令SI51を算出し(S10)、駆動装置5(のサーボバルブ51)に対して、算出された制御指令SI51を出力する(S11)。駆動装置5は、制御指令SI51に基づいて、操舵輪6を操向して、実舵角度ASAを目標角度TA(操作角度TSA)に追従させる。
【0069】
以上の動作により、ステアリング制御装置1は、ステアリング制御が有効状態になるまで(
図5における時刻t1までの期間)、目標角度TAを実舵角度ASAに一致させる。そして、ステアリング制御装置1は、時刻t1から過渡制御を実施して、目標角度TAが操作角度TSAに到達するまで、補正部141により更新された目標角度TAを用いて実舵角度ASAを変化させる。時刻t2にて目標角度TAが操作角度TSAに到達したとき、ステアリング制御装置1は過渡制御に代えて通常制御を実施して、操作角度TSAと同じ値の目標角度TAを用いて実舵角度ASAを変化させる。これにより、操舵輪6の急激な動作を抑制できる。
【0070】
[初期動作中における例外動作]
上記のとおり、ステアリング制御装置1では、過渡制御中に目標角度TAを時間の経過に応じて、時刻t1における実舵角度ASAの値から徐々に操作角度TSAに近づける。これにより、着陸時に実舵角度ASAと操作角度TSAとの差が大きいことに起因した操舵輪6の急速な動作を抑制する。しかしながら、時刻t1以降の過渡制御中において、パイロットが操舵部材21を操作して、少なくとも目標角度TAの単位時間当たりの変化量Δ1よりも大きい変化量で、目標角度TAの変化方向と同じ方向に、操作角度TSAを目標角度TAから意図的に遠ざける場合がある。このような例外動作が発生した場合、過渡制御中に単位時間(計算周期)当たりの変化量を一定のまま目標角度TAを変化させていると、パイロットが意図的に急激な変化を求めたにもかかわらず、操舵輪6の操向がパイロットの操作に応答せず、遅いままとなってしまう。
【0071】
本実施形態のステアリング制御装置1は、このような例外動作にも対応する。具体的には、パイロット等により上記例外動作が発生したとき、すなわち、
図9における目標角度更新処理(S20)において、ステップS21で算出された操作角度変化量があらかじめ設定された目標角度の単位時間当たりの正の変化量「Δ1」又は負の変化量「−Δ1」を超えた場合(S23でYES又はS26でYES)、目標角度設定部14中の切替部142は、目標角度TAを操作角度TSAと同じ値に設定する(S24)。これにより、ステアリング制御装置1は、目標角度TAが操作角度TSAに到達したと判定するため(
図8中のS12でYES)、通常制御となり、通常制御フラグを「1」としたうえで、実舵角度ASAを、操作角度TSAと同じ値の目標角度TAに追従させるように制御指令SI51を出力する(
図8中のS9、S10及びS11)。その結果、パイロット等により上記の例外動作が発生した場合には、操舵輪6がパイロット等の操作に応じて迅速に作動する。
【0072】
ステップS24において、目標角度TAを操作角度TSAとしたが、目標角度TAの単位時間当たりの変化量が、前述の操作角度変化量以上となるように、目標角度TAを操作角度TSAに近づければ足りる。この場合であっても、操舵輪6がパイロット等の操作に応じて迅速に作動することができる。
【0073】
[第2の実施形態]
第1の実施形態では、目標角度更新処理(S20)において、目標角度設定部14中の補正部141は、時間の経過に応じて(処理を実行するごとに)、目標角度TAを一定の単位時間当たりの変化量Δ1だけ操作角度TSAの方向に変化させ、操作角度TSAが目標角度TAから目標角度TAの変化方向と同じ方向に急激に遠ざかる場合は、目標角度TAを即座に操作角度TSAに一致させて通常制御に切り替える。しかしながら、操作角度TSAの変化量の大小にかかわらず、目標角度TAと操作角度TSAとの角度差が、時間の経過とともに(処理を実行するごとに)減少するように、補正部141が目標角度TAを更新してもよい。以下、第2の実施形態について説明する。
【0074】
第2実施形態のステアリング制御装置1の構成は、第1の実施形態と同じである。
図10は、第2実施形態のステアリング制御装置1におけるステアリング制御処理(S300)のフロー図である。
図10を参照して、ステアリング制御処理(S300)は、
図8のステアリング制御処理(S200)と比較して、ステップS16の後で、ステップS30を実行する。ステアリング制御処理(S300)はさらに、目標角度更新処理(S20)に代えて、目標角度更新処理(S40)を実施する。ステアリング制御処理(S300)のその他の動作は、ステアリング制御処理(S200)と同じである。以下、ステアリング制御処理(S300)の動作について説明する。
【0075】
[ステアリング制御状態が有効状態になるまでの動作(時刻t1までの動作)]
図10を参照して、ステアリング制御装置1は、操作角度TSAを決定し(S1及びS2)、実舵角度ASAを決定する(S3及びS4)。ステアリング制御装置1はさらに、操舵輪6が接地して安定した地上走行中であるか否かを判定する(S5及びS6)。時刻t1よりも前の場合、操舵輪6が接地して安定した地上走行中ではない(S6でNO)。そのため、ステアリング制御は無効状態であり、ステアリング制御装置1は、SOV閉指令を出力し(S14)、通常制御フラグを「0」とする(S15)。さらに、ステアリング制御装置1内の目標角度設定部14が、目標角度TAに実舵角度ASAと同じ角度(
図5ではA2°)を設定する(S16)。
【0076】
以上の工程後、目標角度設定部14は、次式により、操作角度TSAと目標角度TAとの角度差を算出する(S30)。
角度差=|操作角度TSA−目標角度TA|
【0077】
要するに、角度差は、操作角度TSAと目標角度TAの絶対差である。
【0078】
ステップS30で角度差を算出した後、ステップS1に戻って処理を繰り返す。
【0079】
[ステアリング制御状態が有効状態になったとき以降の動作(時刻t1以降の動作)]
時刻t1において、制御状態切替部11により操舵輪6が地上に接地して安定した地上走行が開始されたと判断される(S6でYES)。このとき、
図8と比較して、目標角度設定部14は、
図9の目標角度更新処理(S20)に代えて、
図11に示す目標角度更新処理(S40)を実施する。
【0080】
図11を参照して、目標角度更新処理(S40)では初めに、目標角度設定部14中の補正部141が、次式に基づいて角度差を更新する(S41)。
角度差=前回の角度差−Δ2
【0081】
ここで、Δ2は所定の角度である。要するに、本実施形態の場合、仮角度更新処理(S40)を実施するごとに、目標角度TAと操作角度TSAとの角度差を小さくする。つまり、過渡制御の実施中において、パイロット等が操舵部材21を操作して操作角度TSAを目標角度TAの変化方向と同じ方向に目標角度TAから大きく離しても、その操作角度TSAとの角度差が前回よりも小さくなるように目標角度TAが設定される。つまり、本実施形態では、操作角度TSAの変動に応じて目標角度TAの変化量が自動的に調節されることになる。そのため、操作角度TSAが変動したとしても、過渡制御は、ステアリング制御状態が有効状態に切り替わった時点での角度差によって決まる所定の時間内に終了し、過渡制御から通常制御(操作角度TSAに基づく操向)に切替わる。その結果、パイロット等により上記例外動作が発生した場合には、操舵輪6がパイロット等の操作に応じて迅速に作動する。
【0082】
目標角度設定部14中の補正部141はステップS41で角度差を更新した後、更新された角度差を実現するよう目標角度TAを更新する(S42〜S44)。具体的には、補正部141は目標角度TAと操作角度TSAとを比較する(S42)。目標角度TAが操作角度TSAよりも小さい場合(S42でYES)、補正部141は、次式に基づいて目標角度TAを更新する(S43)。
目標角度TA=操作角度TSA−ステップS41で算出した角度差
【0083】
一方、ステップS42において、目標角度TAが操作角度TSA以上の場合(S42でNO)、補正部141は、次式に基づいて目標角度TAを更新する(S44)。
目標角度TA=操作角度TSA+ステップS41で算出した角度差
【0084】
以上の工程を終了後、
図10中のステップS12に進む。以降の動作は第1の実施形態のステアリング制御処理S200(
図8)と同じである。
【0085】
[第3の実施形態]
上述の実施形態では、航空機が着陸する際、操舵輪6が接地して安定した地上走行になるまで(時刻t1よりも前)において、操舵輪6はフリーキャスタ状態である。したがって、その間に操舵輪6が何らかの外力を受けた場合、意図せず操舵輪6が回転して航空機の直進方向と大きく異なる方向を向く可能性が考えられる。そこで、第3の実施形態では、操舵輪6が接地して安定した地上走行になるまでのステアリング制御の無効状態において、操舵輪6をフリーキャスタ状態とはせずに、操舵輪6の実舵角度ASAを、パイロット等の操作に関係なく、航空機が地上走行において直進する場合の実舵角度(0°)に維持するような制御(以下、中立制御)を実施する。この実施形態において、実舵角度ASAは、ステアリング制御状態が無効状態の間、常に0°を維持するよう制御されるが、ステアリング制御状態が有効状態に切り替わったときに、パイロット等の操作により操作角度TSAが0°からずれている場合に、操作角度TSAと実舵角度ASAが異なることになる。このような場合でも、本実施形態では操舵輪6の急激な動作を抑制できる。以下、第3の実施の形態について説明する。
【0086】
第3の実施形態のステアリング制御装置1の構成は、第1の実施形態と同じである。
図12は、第3の実施形態のステアリング制御装置1におけるステアリング制御処理(S400)のフロー図である。
図12を参照して、ステアリング制御処理(S400)では、ステアリング制御装置1が操作角度TSA及び実舵角度ASAを決定した後(S1〜S4)、SOV開指令を出力する(S7)。つまり、ステアリング制御処理(S400)では、シャットオフバルブ53は常時開いており、駆動装置5は常時制御可能状態である。
【0087】
図12では、ステップS7を実施した後、制御状態切替部11による地上走行判断が実行される(S5及びS6)。判断の結果、操舵輪6が接地して安定した地上走行中ではない場合(S6でNO)、目標角度設定部14は、通常制御フラグを0として(S15)、目標角度TAを0°(つまり、航空機が地上走行時に直進する場合の操舵輪6の実舵角度であり、中立位置)に設定する(S31)。
【0088】
目標角度TAを設定した後、ステアリング制御装置1の指示部15が操舵輪6を操向するための制御指令を算出及び出力する(S10及びS11)。これにより、操舵輪6の実舵角度ASAは、操舵輪6が接地して安定した地上走行を開始するまで(S6でYESとなるまで)、0°を維持するよう制御される。その他の動作は第1の実施形態と同じである。
【0089】
以上の動作により、本実施形態では、ステアリング制御状態が有効状態になるまで、操舵輪6の実舵角度ASAが常時0°となるように制御されるため、操舵輪6の接地時に、確実に操舵輪6の方向を航空機の前後方向と一致させておくことができる。一方で、ステアリング制御状態が有効状態になったときにパイロット等の操作により操作角度TSAが0°から大きくずれていた場合でも、第1の実施形態と同様に、操舵輪6の急激な動作を抑制できる。
【0090】
以上、本発明の実施の形態を説明した。しかしながら、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。したがって、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変更して実施することができる。
【0091】
上述の実施の形態では、ステアリング制御状態が有効状態になる前(時刻t1よりも前)において、目標角度TAを実舵角度ASAと同じ角度A2°とした(
図5参照)。しかしながら、
図13に示すとおり、目標角度TAが実舵角度ASAと一致していなくても、目標角度TAは操作角度TSAから実舵角度ASAに近づけた角度であれば足りる。この場合、ステアリング制御状態が有効状態になったとき、実舵角度ASAが目標角度TAになるまで操舵輪6が動作するものの、従前と比較して、操舵輪6が急激に動作する角度範囲を狭く押さえることができる。そのため、地上走行時の安定性が従前よりも高まる。
【0092】
上述の実施の形態では、時刻t1よりも前のステアリング制御状態が無効状態である期間において、目標角度TAを実舵角度ASAに近づけている。しかしながら、
図14に示すとおり、時刻t1時において、目標角度TAを実舵角度ASAに近づけてもよい。要するに、ステアリング制御状態が有効状態になる時刻t1のときに、目標角度TAが操作角度TSAから実舵角度ASAに近づいていればよい。
【0093】
上述の実施の形態では、時刻t2にて目標角度TAが操作角度TSAに到達したとき、ステアリング制御装置1は、過渡制御から通常制御へと切替えて、操作角度TSAに基づく操向を実施する。しかしながら、ステアリング制御装置1は、通常制御を実施せずに、過渡制御を継続してもよい。この場合であっても、目標角度TAは時間の経過に応じて操作角度TSAに近づける。そのため、実舵角度ASAがステアリング制御が無効状態から有効状態に切り替わったときに急激に変化するのを抑制しつつ、実舵角度ASAを操作角度TSAに近づけることができる。
【0094】
上述の実施の形態では、操舵部材21はラダーペダルである。しかしながら、操舵部材21はラダーペダルに限定されない。操舵部材21はたとえば、操縦桿等であってもよい。操作量検知装置22が操作量を検知可能であれば、操舵部材21は特に限定されない。
【0095】
上述の実施形態では、駆動装置5は、サーボバルブ51と、アクチュエータ52と、シャットオフバルブ53とを備え、油圧源4から加圧された作動油の供給を受ける。しかしながら、駆動装置5及び油圧源4はこれに限定されない。駆動装置5は電動により操舵輪6を操向し、油圧源4の代わりに電源から電力の供給を受けてもよい。駆動装置5は、操舵輪6を操向可能であれば、その構成は特に限定されない。
【0096】
上述の実施形態では、操作角度決定部12は、操作量と角度とが登録されたテーブルを用いて操作角度TSAを決定する。しかしながら、操作角度決定部12は他の方法により操作角度TSAを決定してもよい。たとえば、操作角度決定部12は、操作量信号SI2に基づいて、操作角度TSAを算出してもよい。実舵角度決定部13も同様に、実操舵量信号SI7に基づいて、実舵角度ASAを算出してもよい。