特許第6706678号(P6706678)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ バイエリシエ・モトーレンウエルケ・アクチエンゲゼルシヤフトの特許一覧

<>
  • 特許6706678-自動車のためのカバー構造 図000002
  • 特許6706678-自動車のためのカバー構造 図000003
  • 特許6706678-自動車のためのカバー構造 図000004
  • 特許6706678-自動車のためのカバー構造 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6706678
(24)【登録日】2020年5月20日
(45)【発行日】2020年6月10日
(54)【発明の名称】自動車のためのカバー構造
(51)【国際特許分類】
   B62J 23/00 20060101AFI20200601BHJP
   F16B 5/07 20060101ALI20200601BHJP
   F16B 5/10 20060101ALI20200601BHJP
【FI】
   B62J23/00 G
   F16B5/07 L
   F16B5/10 H
   F16B5/10 K
【請求項の数】9
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2018-539856(P2018-539856)
(86)(22)【出願日】2016年11月30日
(65)【公表番号】特表2019-508306(P2019-508306A)
(43)【公表日】2019年3月28日
(86)【国際出願番号】EP2016079234
(87)【国際公開番号】WO2017133807
(87)【国際公開日】20170810
【審査請求日】2018年7月30日
(31)【優先権主張番号】102016201521.4
(32)【優先日】2016年2月2日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】398037767
【氏名又は名称】バイエリシエ・モトーレンウエルケ・アクチエンゲゼルシヤフト
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100173521
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 淳司
(72)【発明者】
【氏名】ヴェーバー・マルク
【審査官】 結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−45346(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第2514635(EP,A1)
【文献】 特開昭62−83277(JP,A)
【文献】 特開平11−59530(JP,A)
【文献】 米国特許第7438350(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62J 23/00,
F16B 5/07, 5/10,
B60R 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のためのカバー構造であって、第一カバー部材(11)および当該第一カバー部材(11)に結合された第二カバー部材(12)を有し、第一カバー部材(11)は、固定突起部(13)を有し、当該固定突起部が、第二カバー部材(12)に形成された収容部(17)に結合手段(16)によって結合されている自動車のためのカバー構造において、
固定突起部(13)が、収容部(17)に形成された第二カバー部材(12)の係止開口部(17b)にスナップ式に係合するためのラッチ部(13b)をさらに有し、
固定突起部(13)および収容部(17)は、それぞれ結合手段(16)を収容するための貫通孔(13a、17a)を有し、
ラッチ部と係止開口部とが係合する面が、前記貫通孔の軸線方向に沿って延びていることを特徴とする自動車のためのカバー構造。
【請求項2】
固定突起部(13)が、外側可視面(14)とは反対側の、第一カバー部材(11)の裏面(15)上に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のカバー構造。
【請求項3】
収容部(17)は、第二カバー部材(12)に凹部(18)を有し、凹部(18)の側方内壁(18a)には収容部(17)の係止開口部(17b)が形成されているとともに、凹部(18)の底部(18b)には収容部(17)の貫通孔(17a)が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のカバー構造。
【請求項4】
結合手段(16)は、ネジ又はリベットを有することを特徴とする少なくとも請求項1〜のいずれか1項に記載のカバー構造。
【請求項5】
係止開口部(17b)は、少なくとも差し込み方向(E)においてラッチ部(13b)を固定することを特徴とする少なくとも請求項1〜のいずれか1項に記載のカバー構造。
【請求項6】
係止開口部(17b)は、差し込み方向(E)に垂直な横方向(S)においてラッチ部(13b)の幅(b1)より広い幅(b2)を有していることを特徴とする請求項に記載のカバー構造。
【請求項7】
第一(11)及び/又は 第二カバー部材(12)は、少なくとも一つのストッパを有し、当該ストッパが、差し込み方向(E)に完全に挿入されたラッチ部(13b)の位置を規定することを特徴とする少なくとも請求項1〜のいずれか1項に記載のカバー構造。
【請求項8】
少なくとも一つのストッパの一つのストッパは、ラッチ部(13b)に直付けに設けられている及び/又はラッチ部(13b)から離間して設けられていることを特徴とする請求項に記載のカバー構造。
【請求項9】
自動車は、オートバイ又はオートバイ型の車両、又はスクータ、又は2輪、3輪若しくは4輪スクータ、又はクアッド又はトライクであることを特徴とする少なくとも請求項1〜のいずれか1項に記載のカバー構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求の範囲1の前提部分おいて書きに記載の自動車のためのカバー構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両製造において、カバー部品の車両への固定は特別な課題を意味する。つまり、二つの隣り合うカバー部品間に継ぎ目が設けられることが普通だが、その継ぎ目の幅はクリアランス(Spaltmass)と呼ばれ、構造面にとってだけでなく車両の空気抵抗にとっても重要な因子となる。均一で可能な限り小さなクリアランスは、組立部品に公差が生じるために特に大量生産においては達成するのが難しい。そのため、小さくて一様なクリアランスは、高品位の車両の格別な印しとみなされていて、隣り合う組立部品を手間をかけて調整しなければならないし、確実な工程で再現性があるように製造しなければならない。
【0003】
高い公差要求を満たすことは、特に隣り合うカバー部品においては一つの大きな課題であり、カバー部品は互いに直に結合され、しかもその際に正確に揃えられなければならない。ところが、当初は正確に揃えられて配置された場合でさえ、カバー部品を互いにネジ止めすることで思いがけずカバー部品がズレてしまうことがある。その原因の一つは、モーメントが生じることにあり、このモーメントは、ネジ止めするとき、特にネジを最後に固く締めるときにカバー部品に各点で作用する。
【0004】
カバー部品が互いにズレる結果、これらのカバー部品が互いにこすれ合うことがあり、それによりカバー部品内の応力と耳障りな雑音が発生することに気付かされる。総じて、平行性およびクリアランスにおけるごく僅かな違いでも、望ましくない空気抵抗と空力音響に関する現象に繋がる可能性があり、しかもこの違いは容易に裸眼で分かってしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の課題は、上記の欠点を低減または克服するカバー構造、並びに、出来るだけ簡易で再現性のある取り付け作業を可能とするカバー構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、請求項1の特徴を有するカバー構造によって、解決される。これに従属する請求項により、有利な実施形態が得られる。
【0007】
従って、第一カバー部材および当該第一カバー部材に結合された第二カバー部材を有する自動車のためのカバー構造が提供され、第一カバー部材が固定突起部を有し、この固定突起部は、第二カバー部材に形成された収容部に結合手段によって結合されている。その上、固定突起部は、収容部に形成された第二カバー部材の係止開口部にスナップ式に係止するためのラッチ部を有する。
【0008】
つまり、上述のカバー構造は、二つのカバー部材が設けられ、これらのカバー部材が一方では結合手段によって互いに固定されている。それを行うために、第一カバー部材に固定突起部が設けられていて、この固定突起部が第二カバー部材の収容部に固定される。この結合に加えて、(追加的に)形状結合的な嵌め合い接続を提供する目的で、スナップ式係合部が設けられていて、このスナップ式係合部は、固定突起部のラッチ部および第二カバー部材の係止開口部によって形成される。
ラッチ部は、例えば舌状片部として形成することができ、この舌状片部は、その先端にフックとして機能する隆起部を有する。
【0009】
このような構造は、両カバー部材が、まず形状結合的に、係止開口部に係合するラッチ部を用いることで互いにクリップ結合され、結合状態のまま一定位置に保持できるという特別な手段を提供する。その後、結合手段を使用することで追加的に固定がなされるが、この結合手段は、最初に施されたスナップ式の係合をサポートするように補う。つまり、初めに用意されたスナップ式係合部のおかげで、そしてそれによって達成されるカバー部材の“事前位置決め(Vorpositionierung)”のおかげで、取り付け作業がかなり簡易化される。何故なら、結合手段を取り付けるのに、組立工がこれらのカバー部材を二つ同時に予定された位置に保持しなくてもよいからである。そのようにせずとも、両方のカバー部材はスナップ式係合によって互いに合わせられた状態で固定され、しかも互いに対して正しく位置決めされる。
【0010】
固定突起部における結合手段とラッチ部との全体構造により、結合手段を取り付ける際に力が作用することによる、特にトルクによる、カバー部材の望ましくない相対的ズレはかなり低減され、それによって正確で再現性のある構造が実現できるという効果がさらに生じる。
【0011】
加えて、結合手段をラッチ部に対して可能な限り近づけて配置することで、邪魔になる力が働くのを減らすことができる。
【0012】
カバー構造は、一つのスナップ式係合部と一つの結合手段だけで記述される。とはいえ、当然のことながらカバー構造は、各々が同じように形成されている複数のスナップ式係合部と複数の結合手段を有することもやはり可能である。
【0013】
好ましくは、第一及び/又は第二カバー部材が、合成樹脂部材として、特に射出成形部材として、又は深絞り部材として、形成されている。それに合わせて固定突起部及び/又は収容部は、それぞれがカバー部材のそれ以外の部分に射出成形で付け足されるか、或いは予めこれらカバー部材と合わせて作製されていてもよい。同様にして、好ましくは固定突起部及び/又は収容部は、各々付属する第一又は第二カバー部材と一体に形成されている。
【0014】
有利な実施形態によれば、固定突起部は、外側の見える面(可視面)とは反対側の第一カバー部材の裏面に設けられている。この可視面は、外に見えるカバー部材の表面である。これに対し、これとは反対側の裏面側に固定突起部が設けられることで、この固定突起部がカバー部材によって、つまりはその可視面によって、外に対しては見えなくされている。例えば、この裏面は車両内部に臨んでいるので、車両を見る者には通常は隠されたままになる。
【0015】
更なる実施形態によれば、固定突起部および収容部は、それぞれ結合手段を収容するための貫通孔を有する。従って、両方の構成要素には各々貫通孔が設けられ、これらの貫通孔は、取り付けられた状態において互いに直線上に並ぶように設けられているので、両方の構成要素を相互に結合するように結合手段を両方の貫通孔内に挿入することができる。好ましくは、固定突起部および収容部は、その際、面で重なりあっていて、結合手段によって互いに圧接し合っている。例えば、結合手段はネジ又はリベットを有することができる。ネジの場合、このネジはナットによって、特にスクリューナットによってネジ止めされていてもよい。代替的には、第一カバー部材の貫通孔、及び/又は第二カバー部材の貫通孔がネジ山を有してもよい。
【0016】
同様に、固定突起部の貫通孔は、ラッチ部そのものに設けられているか、或いはラッチ部の直ぐ近くに隣接させて設けられ、特にラッチ部の根元の部分に設けられている。この場合、スナップ式係合部および結合手段によって形成される二つの固定箇所は、位置的に一緒にされてカバー構造に生じるモーメントをさらに著しく低減する。
【0017】
また、収容部は、第二カバー部材に凹部を有していてもよく、この凹部の側方内壁に係止開口部が形成されているとともに凹部の底部に収容部の貫通孔が形成されていてもよい。さらに、凹部によって形成された空間が固定突起部を収容するように設計されていてもよい。
【0018】
好ましくは、係止開口部は、少なくとも差し込み方向において係止開口部がラッチ部を固定するように形成されている。つまり、ラッチ部は、差し込み方向において係止開口部に挿入されてその場で(例えば係止開口部の縁部の背後に回りこんだところに係合することによって)スナップ式に係合される。差し込み方向と反対向きに戻る動きは、ラッチ部によって効果的に阻止される。
【0019】
加えて、係止開口部は、差し込み方向に垂直な横方向においてラッチ部の幅より広い幅を有してもよい。この様にすることで、ラッチ部のために一定の遊びが設けられるので、最初から横方向にややずれた状態でラッチ部を係止開口部中に挿入することができたり、さらに/または、挿入後にラッチ部を横方向にずらしたりできるようになる。いずれの場合においても、こうすることで公差を補償することが可能となる。最後に両方のカバー部材が結合手段によって固定される。
【0020】
差し込み方向における両方のカバー部材の位置関係を確定するために、第一及び/又は第二カバー部材は、少なくとも一つのストッパを有してもよく、このストッパが差し込み方向に完全に挿入されたラッチ部の位置を規定する。こうすることで、差し込み方向に更に挿入することが阻止される。反対方向においては、ラッチ部が相応の逆戻りする動きを防いでいる。
【0021】
更に、少なくとも一つのストッパの一つのストッパは、ラッチ部に設けられている及び/又はラッチ部から離間して設けられていてもよい。ラッチ部から離間した当接部の場合、この当接部は、例えば、第一カバー部材或いは第二カバー部材の、相手側のカバー部材に面した部品縁部の領域に設けることができる。
【0022】
さらに、自動車は、オートバイ又はオートバイ型の車両、特にスクータ、2輪、3輪又は4輪スクータ(Motorroller)、クアッド又はトライクでもよい。
【0023】
以下に、図面を参照しながら実施例に基づいて本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】明細書に記載のカバー構造の側方断面図である。
図2図1に記載のカバー構造のための第一カバー部材の斜視図である。
図3図1に記載のカバー構造のための第二カバー部材の斜視図である。
図4】組み合わされた状態における図1に記載のカバー構造のための第一および第二カバー部材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、自動車のためのカバー構造10を示し、このカバー構造は、第一カバー部材11と、この第一カバー部材11に結合された第二カバー部材12を有している。第一カバー部材11は、さらに固定突起部13を有し、この固定突起部13が、外側可視面14とは反対側の、第一カバー部材11の裏面15上に設けられており、ネジとして形成された結合手段16によって、第二カバー部材12に形成された収容部17と結合されている。この目的で、固定突起部13および収容部17がそれぞれ貫通孔13a、17aを有しており、これら貫通孔が、直線上に並ぶように互いに整列された状態で結合手段16を収容するように設けられている。結合手段は、例えばネジ16を有し、このネジはナット、特にスクリューナットに螺入する。但し、当然ながら、例えばリベットといった他の結合手段も使用可能である。
【0026】
固定突起部13は、ラッチ部13bを有し、このラッチ部は、舌状片部として形成されており、収容部17中に形成された第二カバー部材12の係止開口部17bにスナップ式に係合し、これにより、互いに連係して両カバー部材11、12のスナップ式係合部が作り出されている。第一カバー部材11の貫通孔は、ラッチ部13bの近くに隣接して、つまりはラッチ部の根元の領域に設けられている。
【0027】
図2は、図1に示されたカバー構造10のための第一カバー部材11を個別に斜視図で示している。
【0028】
第二カバー部材12は、図3において同様に個別に斜視図で描かれている。これによれば、収容部17は第二カバー部材12に凹部18を有する。凹部18の側方内壁18aには収容部17の係止開口部17bが、凹部18の底部18bには収容部17の貫通孔17aが形成されている。
【0029】
この構成によれば、ラッチ部13bは、係止開口部17bを画成する縁部17cの背後に回りこんだところに係合し、その結果、ラッチ部13bが差し込み方向Eと反対向きにこの係合から外れないようになるので、係止開口部17bがラッチ部13bを少なくとも差し込み方向Eに固定できるようになる。
【0030】
さらに、係止開口部17bは、差し込み方向Eに垂直な横方向Sにおいてラッチ部より幅広く形成することができる。これは、ラッチ部13bの該当する幅b1が係止開口部13bの幅b2より小さいことを意味する。図1において、この横方向Sは、例えば紙面に垂直に向いているので、公差を補償する為に両方のカバー部材11、12がある一定量で相対的に動くことが(少なくとも結合手段16がこのことを許容して両方のカバー部材11、12が未だ完全に固定されていない限り)できるようになる。
【0031】
代替的に限られるものの、第一カバー部材11及び/又は第二カバー部材12は、少なくとも一つのストッパを有することができ、このストッパが差し込み方向Eに完全に挿入されたラッチ部13bの位置を規定する。図示された実施例において、少なくとも一つのストッパの一つのストッパ20は、ラッチ部13bに直に設けられているか或いはラッチ部の根元の部分に設けられている。
【0032】
図4は、結合手段16が使用される前の、図1に記載されたカバー構造10のための第一カバー部材11および第二カバー部材12の組合わされた状態を斜視図により示している。
【0033】
基本的には、カバー構造10は、自動車のために設けることができ、特にオートバイ又はオートバイ型の車両、特にスクータ、二輪、三輪又は四輪のスクータ、クアッド又はトライクのために設けることができる。
図1
図2
図3
図4