特許第6706713号(P6706713)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6706713
(24)【登録日】2020年5月20日
(45)【発行日】2020年6月10日
(54)【発明の名称】熱交換器
(51)【国際特許分類】
   F28F 9/22 20060101AFI20200601BHJP
【FI】
   F28F9/22
【請求項の数】10
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2019-231421(P2019-231421)
(22)【出願日】2019年12月23日
【審査請求日】2019年12月23日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004765
【氏名又は名称】マレリ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荒木 伸二
(72)【発明者】
【氏名】内田 吉宗
(72)【発明者】
【氏名】志賀 卓磨
【審査官】 西山 真二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−303499(JP,A)
【文献】 特開2008−215681(JP,A)
【文献】 特開2017−008913(JP,A)
【文献】 特開2017−008911(JP,A)
【文献】 特開2017−036868(JP,A)
【文献】 特開2008−231929(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 3/00 − 3/14
F28F 9/22
F28D 7/00 − 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1流体と第2流体との間で熱交換が行われる熱交換器であって、
積層して設けられ、第1流体が流通する第1流路が内部に形成される複数のチューブと、
前記チューブを収容し、隣り合う前記チューブの間に第2流体が流通する複数の第2流路を形成するケースと、
前記チューブの積層方向から前記ケース内に第2流体を流入させる入口流路と、
前記ケース内に設けられ、前記入口流路から流入した第2流体を各々の前記第2流路に案内するガイド部材と、を備え、
前記ガイド部材は、前記チューブにおける第1流体の流れ方向に沿って互いに間隔をあけて複数配置されて前記チューブに向かって傾斜し、前記チューブの積層方向における長さが互いに異なる傾斜壁を有する、
ことを特徴とする熱交換器。
【請求項2】
請求項1に記載の熱交換器であって、
前記傾斜壁は、前記チューブの積層方向の長さが長いほど前記チューブとの隙間が小さい先端部を有する、
ことを特徴とする熱交換器。
【請求項3】
請求項2に記載の熱交換器であって、
前記傾斜壁は、前記チューブの積層方向の長さが長いほど前記先端部に向けて曲がる曲率が小さい、
ことを特徴とする熱交換器。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一つに記載の熱交換器であって、
前記傾斜壁は、前記チューブにおける第1流体の流れ方向の下流側に向かって順に長くなるように配置される、
ことを特徴とする熱交換器。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一つに記載の熱交換器であって、
前記チューブにおける第1流体の流れ方向の最下流に配置される前記傾斜壁には、第1流体の流れ方向の下流に向かって第2流体が流れるのを抑制する側壁部が設けられる、
ことを特徴とする熱交換器。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一つに記載の熱交換器であって、
前記ガイド部材は、板状に形成されて前記ケースの内面に取り付けられる、
ことを特徴とする熱交換器。
【請求項7】
請求項6に記載の熱交換器であって、
前記傾斜壁は、
前記入口流路側で互いに連結される連結部と、
前記連結部における第2流体の流れ方向の上流側の端部に形成され、前記ケースの内面に近接する方向に曲げられる切り起こし部を有する、
ことを特徴とする熱交換器。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の熱交換器であって、
前記ガイド部材は、前記チューブにおける第1流体の流れ方向の下流に延設されて前記ケースの内面に取り付けられる取付部を有する、
ことを特徴とする熱交換器。
【請求項9】
請求項8に記載の熱交換器であって、
前記ケースは、前記入口流路から流入して前記第2流路に案内される第2流体を前記チューブの積層方向に流すための膨出部を有し、
前記傾斜壁は、前記膨出部内に設けられ、
前記取付部は、前記膨出部の外に設けられる、
ことを特徴とする熱交換器。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一つに記載の熱交換器であって、
前記ケースは、第1ケースと、平面部と前記第1ケースに内嵌接合される接合部とを有する第2ケースと、を有し、
前記ガイド部材は、前記平面部における前記接合部から離間した位置にて前記第2ケースに接合される、
ことを特徴とする熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数のチューブの外部における冷却水の流れを均一化するために、チューブが収容されるシェル内に冷却水を導入するための冷却水入口が二箇所以上設けられる熱交換器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−231929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の熱交換器では、冷却水入口を複数に分岐させている。そのため、冷却水入口の構造が複雑であり、製造コストが上昇するおそれがある。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、簡素な構成で流体の流れを均一化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様によれば、第1流体と第2流体との間で熱交換が行われる熱交換器は、積層して設けられ、第1流体が流通する第1流路が内部に形成される複数のチューブと、前記チューブを収容し、隣り合う前記チューブの間に第2流体が流通する複数の第2流路を形成するケースと、前記チューブの積層方向から前記ケース内に第2流体を流入させる入口流路と、前記ケース内に設けられ、前記入口流路から流入した第2流体を各々の前記第2流路に案内するガイド部材と、を備え、前記ガイド部材は、前記チューブにおける第1流体の流れ方向に沿って互いに間隔をあけて複数配置されて前記チューブに向かって傾斜し、前記チューブの積層方向における長さが互いに異なる傾斜壁を有する。
【発明の効果】
【0008】
上記態様では、ケース内にガイド部材を設けることで、入口流路から流入した第2流体を第2流路に案内できるので、入口流路を複雑な構造にする必要はない。したがって、簡素な構成で第2流体の流れを均一化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の実施形態に係る熱交換器の概略斜視図である。
図2図2は、熱交換器の一部を断面で示した平面図である。
図3図3は、熱交換器におけるチューブの分解斜視図である。
図4図4は、熱交換器におけるガイド部材の斜視図である。
図5図5は、ガイド部材の左側面図である。
図6図6は、入口流路側からチューブの積層方向に見たケースとガイド部材との取り付け状態を説明する断面図である。
図7図7は、図1におけるVII−VII断面図である。
図8図8は、図1におけるVIII−VIII断面図である。
図9図9は、図2におけるIX−IX断面図である。
図10図10は、図2におけるX−X断面図である。
図11図11は、図2におけるXI−XI断面図である。
図12図12は、ガイド部材の周辺における第2流体の流れについて説明する断面図である。
図13図13は、ガイド部材の周辺における第2流体の流れについて説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る熱交換器100について説明する。
【0011】
まず、図1から図3を参照して、熱交換器100の構成について説明する。図1は、熱交換器100の概略斜視図である。図2は、熱交換器100の一部を断面で示した平面図である。図3は、熱交換器100におけるチューブ11の分解斜視図である。
【0012】
熱交換器100は、エンジン(図示省略)の燃焼室にて燃焼した排気ガスの一部をEGR(Exhaust Gas Recirculation)ガスとして燃焼室に還流するEGR装置に設けられる。熱交換器100は、EGRガス(第1流体)とエンジンを冷却するエンジン冷却水(第2流体)との間で熱交換を行い、EGRガスを冷却するEGRクーラである。
【0013】
以下では、各図面において互いに直交するX,Y,及びZの3軸を設定して、熱交換器100の構成について説明する。なお、チューブ11の内周の第1流路1が延びるX軸方向を「流路方向」、チューブ11の幅方向であるY軸方向を「流路幅方向」、各チューブ11が積層されるZ軸方向を「積層方向」とも称する。
【0014】
熱交換器100は、積層コア10と、ケース20と、ガイド部材30(図2参照)と、を備える。
【0015】
積層コア10は、EGRガスとエンジン冷却水との間で熱交換を行う。積層コア10は、複数(ここでは9個)のチューブ11と、インナーフィン12と、を有する。
【0016】
積層コア10は、複数のチューブ11が積層されて直方体形状になるように形成される。図2に示すように、各々のチューブ11の内部には、EGRガスが流通する第1流路1が形成され、隣り合うチューブ11の間には、エンジン冷却水が流通する第2流路2が形成される。
【0017】
図1に示すように、積層コア10におけるEGRガスの入口には、供給パイプ(図示省略)が取り付けられるフランジ部材13が設けられる。積層コア10におけるEGRガスの出口には、各々のチューブ11から排出されるEGRガスを排出パイプ(図示省略)に導くフランジ部材14が設けられる。
【0018】
図2に示すように、チューブ11は、積層方向に積層して設けられる。図3に示すように、チューブ11は、対向して設けられるチューブインナー11aとチューブアウター11bとを有する。チューブインナー11aとチューブアウター11bとは、共に凹状断面を有する平板状に形成さる。チューブインナー11aとチューブアウター11bとは、凹部どうしを向かい合わせて、チューブアウター11bがチューブインナー11aの外側を覆うように組み立てられる。チューブインナー11aとチューブアウター11bとは、インナーフィン12を収装する空間を形成する。
【0019】
チューブアウター11bには、積層された状態で隣接する他のチューブ11に当接し、当該他のチューブ11との間に所定の間隔をあける複数(ここでは2個)の突起11cと、エンジン冷却水が流通する流路を区画する一対の膨出部11dと、が形成される。
【0020】
突起11cは、チューブ11の積層方向に突出して形成される。突起11cは、チューブ11における膨出部11dが設けられない位置に形成される。隣接する一対のチューブ11の間には、突起11cの高さの分だけ、エンジン冷却水が流通する流路が形成される。
【0021】
膨出部11dは、チューブ11におけるEGRガスの流れ方向の両端部に形成される。膨出部11dは、チューブ11の積層方向に突起11cと同じだけ突出する。膨出部11dは、積層された状態で隣接する他のチューブ11と当接し、ロウ付けによって一体にされる。これにより、隣接する一対のチューブ11の間のエンジン冷却水の流路が、EGRガスの流路に対して閉塞される。
【0022】
インナーフィン12は、チューブ11内に収装される。具体的には、インナーフィン12は、チューブインナー11aとチューブアウター11bとの間に形成される空間に収装される。インナーフィン12は、隣り合う凹凸が互いにオフセットして並ぶオフセットフィンである。インナーフィン12は、チューブ11内におけるEGRガスの流れを撹拌する。また、インナーフィン12が設けられることによって、EGRガスが熱交換を行うための表面積が拡大する。よって、インナーフィン12が設けられることによって、熱交換効率を向上させることができる。
【0023】
なお、インナーフィン12を設けずに、隣接する一対のチューブ11の間にアウターフィンを設けてもよい。この場合、チューブ11に突起11cを形成する必要はない。
【0024】
図1に示すように、ケース20は、積層コア10を収容する。ケース20の内側には、エンジン冷却水が流通する。ケース20は、第1ケース20aと、第2ケース20bと、入口流路23と、出口流路24と、を有する。
【0025】
第1ケース20aは、略U字状の断面形状を有するように流路方向に沿って形成される。第1ケース20aは、平面状に形成される平面部20cを有する。
【0026】
同様に、第2ケース20bは、略U字状の断面形状を有するように流路方向に沿って形成される。第2ケース20bは、平面状に形成される平面部20dを有する。
【0027】
第2ケース20bは、平面部20dが第1ケース20aの平面部20cと面一となるように第1ケース20aの内周に嵌合する。その状態で、第1ケース20aと第2ケース20bとは、接合部20eにて互いに接合される。即ち、第2ケース20bは、第1ケース20aに内嵌接合される(図8参照)。これにより、ケース20は、積層コア10を覆うような筒状に形成される。
【0028】
ケース20は、入口流路23から流入して第2流路2に案内されるエンジン冷却水をチューブ11の積層方向に流すための膨出部21と、第2流路2から出口流路24を通じて流出するエンジン冷却水をチューブ11の積層方向に流すための膨出部22と、を有する。
【0029】
膨出部21と膨出部22とは、各々ケース20の外側に向かって膨出する。これにより、ケース20内にエンジン冷却水の流路が形成される。
【0030】
ケース20内には、ガイド部材30が設けられる。ガイド部材30は、膨出部21内に配置される。ガイド部材30については、図4から図8を参照しながら、後で詳細に説明する。
【0031】
入口流路23は、第2ケース20bの側面に突出するように設けられる。入口流路23は、膨出部21の積層方向端部に開口する。入口流路23は、チューブ11の積層方向からケース20内にエンジン冷却水を流入させる。入口流路23から供給されたエンジン冷却水は、積層コア10の一端近傍に導かれた後に、ケース20内に供給される。
【0032】
出口流路24は、第2ケース20bの入口流路23が設けられるのと同じ側面に設けられる。出口流路23は、膨出部22の積層方向端部に開口する。出口流路24は、ケース20からチューブ11の積層方向にエンジン冷却水を流出させる。EGRガスを冷却したエンジン冷却水は、積層コア10の他端近傍まで導かれた後に、ケース20から外部に排出される。
【0033】
このように、エンジン冷却水は、入口流路23からケース20内に流入し、第2流路2を略U字状に流通してEGRガスと熱交換を行った後、出口流路24から流出する。これに限らず、入口流路23と出口流路24とを、ケース20における対向する面に設けてもよい。
【0034】
次に、図4から図8を参照して、ガイド部材30について説明する。図4は、ガイド部材30の斜視図である。図5は、ガイド部材30の左側面図である。図6は、入口流路23側からチューブ11の積層方向に見たケース20とガイド部材30との取り付け状態を説明する断面図である。図7は、図1におけるVII−VII断面図である。図8は、図1におけるVIII−VIII断面図である。
【0035】
図4及び図5に示すように、ガイド部材30は、複数の傾斜壁30aと、連結部36と、側壁部37と、取付部38と、を有する。
【0036】
図6に示すように、ガイド部材30は、板状に形成されてケース20の内面に取り付けられる。図7に示すように、ガイド部材30は、入口流路23から流入したエンジン冷却水を各々の第2流路2に案内する。ケース20内にガイド部材30を設けることで、入口流路23から流入したエンジン冷却水を第2流路2に案内できるので、入口流路23を複雑な構造にする必要はない。したがって、簡素な構成で流体の流れを均一化することができる。
【0037】
傾斜壁30aは、チューブ11におけるEGRガスの流れ方向(流路方向)に沿って互いに間隔をあけて複数配置されてチューブ11に向かって傾斜する。ここでは、図4及び図5に示すように、傾斜壁30aは、傾斜壁31と、傾斜壁33と、傾斜壁35と、を有する。図6に示すように、傾斜壁30aは、ケース20の膨出部21内に設けられる。
【0038】
傾斜壁31,33,35は、板材によって爪状に形成される。傾斜壁31,33,35は、先端部31a,33a,35aに向かって円弧を描くように曲げられて傾斜する。即ち、傾斜壁31,33,35は、先端部31a,33a,35aに向かって、チューブ11に近接するように、かつケース20の内面から離間するように傾斜して形成される。先端部エンジン冷却水が傾斜壁31,33,35に沿って流れることで、エンジン冷却水の進行方向がチューブ11の積層方向からチューブ11の流路幅方向に変換される。
【0039】
傾斜壁31,33,35は、チューブ11の積層方向における長さが互いに異なる。具体的には、傾斜壁31,33,35は、チューブ11におけるEGRガスの流れ方向の下流側に向かって順に長くなるように配置される。即ち、EGRガスの流れ方向の最下流の傾斜壁35は、上流側に隣接する傾斜壁33よりも長く、傾斜壁33は、上流側に隣接する傾斜壁31よりも長い。これにより、傾斜壁31,33,35がEGRガスの流れ方向の下流側に向かって段階的に長くなるので、エンジン冷却水の流れを乱さずに第2流路2に導くことができる。
【0040】
各々の隣り合う傾斜壁31,33,35の間には、隙間32,34が形成される。具体的には、傾斜壁31と傾斜壁33との間には、隙間32が形成され、傾斜壁33と傾斜壁35との間には、隙間34が形成される。これにより、例えばガイド部材30をプレス加工によって形成する場合に加工が容易である。なお、隙間32,34を形成しなくてもよい。
【0041】
このように、チューブ11の積層方向における長さが互いに異なる傾斜壁31,33,35が設けられるので、傾斜壁31,33,35の長さに応じた位置の第2流路2に各々エンジン冷却水を案内することができる。
【0042】
図4から図6に示すように、チューブ11におけるEGRガスの流れ方向の最下流に配置される傾斜壁35には、側壁部37が設けられる。
【0043】
図4に示すように、側壁部37は、積層方向の長さが最も長い傾斜壁35の側面全体からEGRガスの流路方向に向けて形成される。図6に示すように、側壁部37は、傾斜壁35から離間するほどチューブ11に近接すように傾斜する。これにより、第2流路2に入らずにEGRガスの流れ方向の下流に向かってエンジン冷却水が流れるバイパス流れが発生することが抑制される。
【0044】
図4に示すように、傾斜壁30aは、入口流路23側で互いに連結される連結部36を有する。また、連結部36におけるエンジン冷却水の流れ方向の上流側の端部には、ケース20の内面に近接する方向に曲げられる切り起こし部36aが形成される。
【0045】
図7に示すように、切り起こし部36aは、エンジン冷却水がガイド部材30とケース20の内面との間を通過してEGRガスの流れ方向の下流に向かって流れるのを防止する。切り起こし部36aは、ケース20の内面に当接してもよい。
【0046】
図6に示すように、取付部38は、側壁部37からEGRガスの流れ方向の下流に延設される。取付部38は、ケース20の内面にロウ付けによって取り付けられる。図8に示すように、取付部38は、ケース20における膨出部21の外の平面部20dに取り付けられる。
【0047】
このように、傾斜壁30aは膨出部21内に設けられるのに対して、取付部38は膨出部21の外に設けられる。そのため、膨出部21を避けた平らな面にガイド部材30を取り付けることができる。また、取付部38と傾斜壁30aとの間を側壁部37によって連結することができる。
【0048】
ガイド部材30は、平面部20dにおける接合部20eから離間した位置にて取付部38が第2ケース20bに接合される。そのため、ロウ付けによってケース20を形成する場合に、ガイド部材30をケース20に接合するためのロウ材が接合部20eに流入することが防止される。したがって、ケース20に対するガイド部材30のロウ付けを確実に行うことができる。
【0049】
傾斜壁30aは、接合部20eよりも第1ケース20a側に延びて形成される。即ち、傾斜壁30aは、第1ケース20a内から接合部20eを越えて、第2ケース20b内にわたって形成される。これにより、傾斜壁30aは、チューブ11の積層方向全体にわたって形成されるので、すべての第2流路2にエンジン冷却水を均等に導くことができる。
【0050】
次に、図9から図11を参照して、傾斜壁31,33,35の形状について説明する。図9は、図2におけるIX−IX断面図である。図10は、図2におけるX−X断面図である。図11は、図2におけるXI−XI断面図である。
【0051】
図9に示すように、傾斜壁31は、他の傾斜壁33,35よりも短く形成される。即ち、傾斜壁31は、最も短く形成される。傾斜壁31の先端部31aは、対向するチューブ11との間にC1[mm]の隙間をあけて形成される。傾斜壁31は、先端部31aに向かって半径R1[mm]の円弧を描くように曲げられて傾斜する。
【0052】
図10に示すように、傾斜壁33は、傾斜壁31よりも長く、かつ傾斜壁35よりも短く形成される。傾斜壁33の先端部33aは、対向するチューブ11との間にC2[mm]の隙間をあけて形成される。傾斜壁33は、先端部33aに向かって半径R2[mm]の円弧を描くように曲げられて傾斜する。
【0053】
隙間C2は、隙間C1よりも小さく設定される(C1>C2)。また、半径R2は、半径R1よりも大きく形成される(R1<R2)。よって、傾斜壁33は、傾斜壁31よりも曲率半径が大きい。換言すれば、傾斜壁33は、傾斜壁31よりも曲率が小さい。
【0054】
図11に示すように、傾斜壁35は、他の傾斜壁31,33よりも長く形成される。即ち、傾斜壁35は、最も長く形成される。傾斜壁35の先端部35aは、対向するチューブ11との間にC3[mm]の隙間をあけて形成される。傾斜壁35は、先端部35aに向かって半径R3[mm]の円弧を描くように曲げられて傾斜する。
【0055】
隙間C3は、隙間C2よりも小さく設定される(C2>C3)。また、半径R3は、半径R2よりも大きく形成される(R2<R3)。よって、傾斜壁35は、傾斜壁33よりも曲率半径が大きい。換言すれば、傾斜壁35は、傾斜壁33よりも曲率が小さい。
【0056】
このように、傾斜壁31,33,35の先端部31a,33a,35aは、チューブ11の積層方向の長さが長いほどチューブ11との隙間が小さい。また、傾斜壁31,33,35は、チューブ11の積層方向の長さが長いほど先端部31a,33a,35aに向けて曲がる曲率が小さい。
【0057】
これにより、入口流路23に近い位置では、エンジン冷却水の流速が比較的速いので、傾斜壁31の曲率を大きくし、先端部31aとチューブ11との隙間C1を大きくすることで、流路抵抗が大きくなることを抑制しながら、傾斜壁31と対向するチューブ11の第2流路2にエンジン冷却水を導くことができる。一方、入口流路23から離れた位置では、エンジン冷却水の流速が比較的遅いので、傾斜壁35の曲率を小さくし、先端部35aとチューブ11との隙間C3を小さくすることで、流路抵抗が大きくなることを抑制しながら、傾斜壁35と対向するチューブ11の第2流路2にエンジン冷却水を導くことができる。
【0058】
次に、図12及び図13を参照して、熱交換器100の作用について説明する。図12は、ガイド部材30の周辺におけるエンジン冷却水の流れについて説明する断面図である。図13は、ガイド部材30の周辺におけるエンジン冷却水の流れについて説明する斜視図である。
【0059】
図12に矢印で示すように、入口流路23から流入したエンジン冷却水は、その慣性によって膨出部21内を直進しようとする。
【0060】
図12及び図13に示すように、エンジン冷却水は、傾斜壁31の裏面に当たると、傾斜壁31の形状に沿うように第2流路2に導かれる。このとき、エンジン冷却水の一部は、傾斜壁31の一端側の隙間32及びその反対側の端面から傾斜壁31の表面側に回り込み、傾斜壁31の表面に沿って流れて第2流路2へと進行方向を変える。即ち、エンジン冷却水は、傾斜壁31の裏面だけでなく表面にも沿って進行方向を変える。
【0061】
同様に、エンジン冷却水は、傾斜壁33の裏面に当たると、傾斜壁33の形状に沿うように第2流路2に導かれる。このとき、エンジン冷却水の一部は、傾斜壁33の両側の隙間32,34から傾斜壁33の表面側に回り込み、傾斜壁33の表面に沿って流れて第2流路2へと進行方向を変える。即ち、エンジン冷却水は、傾斜壁33の裏面だけでなく表面にも沿って進行方向を変える。
【0062】
更に、エンジン冷却水は、傾斜壁35の裏面に当たると、傾斜壁35の形状に沿うように第2流路2に導かれる。このとき、エンジン冷却水の一部は、傾斜壁35の一端側の隙間34から傾斜壁35の表面側に回り込み、傾斜壁35の表面に沿って流れて第2流路2へと進行方向を変える。即ち、エンジン冷却水は、傾斜壁35の裏面だけでなく表面にも沿って進行方向を変える。
【0063】
以上のように、エンジン冷却水は、傾斜壁31,33,35の裏面に沿って第2流路2へと進行方向を変えるだけでなく、表面側に回り込み表面に沿って第2流路2へと進行方向を変える。したがって、エンジン冷却水の流れを妨げることがないので、流路抵抗を増加させずに、入口流路23から流入したエンジン冷却水を第2流路2に導くことができる。
【0064】
以上の実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0065】
EGRガスとエンジン冷却水との間で熱交換が行われる熱交換器100は、積層して設けられ、EGRガスが流通する第1流路1が内部に形成される複数のチューブ11と、チューブ11を収容し、隣り合うチューブ11の間にエンジン冷却水が流通する複数の第2流路2を形成するケース20と、チューブ11の積層方向からケース20内にエンジン冷却水を流入させる入口流路23と、ケース20内に設けられ、入口流路23から流入したエンジン冷却水を各々の第2流路2に案内するガイド部材30と、を備え、ガイド部材30は、チューブ11におけるEGRガスの流れ方向に沿って互いに間隔をあけて複数配置されてチューブ11に向かって傾斜し、チューブ11の積層方向における長さが互いに異なる傾斜壁31,33,35を有する。
【0066】
この構成によれば、ケース20内にガイド部材30を設けることで、入口流路23から流入したエンジン冷却水を第2流路2に案内できるので、入口流路23を複雑な構造にする必要はない。また、チューブ11の積層方向における長さが互いに異なる傾斜壁31,33,35が設けられるので、傾斜壁31,33,35の長さに応じた位置の第2流路2
に各々エンジン冷却水を案内することができる。したがって、簡素な構成で流体の流れを均一化することができる。更に、エンジン冷却水は、傾斜壁31,33,35の裏面に沿って第2流路2へと進行方向を変えるだけでなく、表面側に回り込み表面に沿って第2流路2へと進行方向を変える。したがって、エンジン冷却水の流れを妨げることがないので、流路抵抗を増加させずに、入口流路23から流入したエンジン冷却水を第2流路2に導くことができる。
【0067】
また、傾斜壁31,33,35は、チューブ11の積層方向の長さが長いほどチューブ11との隙間C1,C2,C3が小さい先端部31a,33a,35aを有する。
【0068】
また、傾斜壁31,33,35は、チューブ11の積層方向の長さが長いほど先端部31a,33a,35aに向けて曲がる曲率が小さい。
【0069】
これらの構成によれば、入口流路23に近い位置では、エンジン冷却水の流速が比較的速いので、傾斜壁31の曲率を大きくし、先端部31aとチューブ11との隙間C1を大きくすることで、流路抵抗が大きくなることを抑制しながら、傾斜壁31と対向するチューブ11の第2流路2にエンジン冷却水を導くことができる。一方、入口流路23から離れた位置では、エンジン冷却水の流速が比較的遅いので、傾斜壁35の曲率を小さくし、先端部35aとチューブ11との隙間C3を小さくすることで、流路抵抗が大きくなることを抑制しながら、傾斜壁35と対向するチューブ11の第2流路2にエンジン冷却水を導くことができる。
【0070】
また、傾斜壁31,33,35は、チューブ11におけるEGRガスの流れ方向の下流側に向かって順に長くなるように配置される。
【0071】
この構成によれば、傾斜壁31,33,35がEGRガスの流れ方向の下流側に向かって段階的に長くなるので、エンジン冷却水の流れを乱さずに第2流路2に導くことができる。
【0072】
また、チューブ11におけるEGRガスの流れ方向の最下流に配置される傾斜壁35には、EGRガスの流れ方向の下流に向かってエンジン冷却水が流れるのを抑制する側壁部37が設けられる。
【0073】
この構成によれば、側壁部37が設けられることで、第2流路2に入らずにEGRガスの流れ方向の下流に向かってエンジン冷却水が流れるバイパス流れが発生することが抑制される。
【0074】
また、ガイド部材30は、板状に形成されてケース20の内面に取り付けられる。
【0075】
この構成によれば、ケース20の内面に板状のガイド部材30が取り付けられるので、簡素な構成で流体の流れを均一化することができる。
【0076】
また、傾斜壁31,33,35は、入口流路23側で互いに連結される連結部36と、連結部36におけるエンジン冷却水の流れ方向の上流側の端部に形成され、ケース20の内面に近接する方向に曲げられる切り起こし部36aを有する。
【0077】
この構成によれば、切り起こし部36aが設けられることで、エンジン冷却水がガイド部材30とケース20の内面との間を通過してEGRガスの流れ方向の下流に向かって流れるのを防止する。
【0078】
また、ガイド部材30は、チューブ11におけるEGRガスの流れ方向の下流に延設されてケース20の内面に取り付けられる取付部38を有する。
【0079】
また、ケース20は、入口流路23から流入して第2流路2に案内されるエンジン冷却水をチューブ11の積層方向に流すための膨出部21を有し、傾斜壁30aは、膨出部21内に設けられ、取付部38は、膨出部21の外に設けられる。
【0080】
これらの構成によれば、傾斜壁30aは膨出部21内に設けられるが、ケース20の内面にガイド部材30を取り付けるための取付部38は膨出部21の外に設けられる。そのため、膨出部21を避けた平らな面にガイド部材30を取り付けることができる。また、取付部38と傾斜壁30aとの間を側壁部37によって連結することができる。
【0081】
また、EGRガスとエンジン冷却水との間で熱交換が行われる熱交換器100は、積層して設けられ、EGRガスが流通する第1流路1が内部に形成される複数のチューブ11と、チューブ11を収容し、隣り合うチューブ11の間にエンジン冷却水が流通する複数の第2流路2を形成するケース20と、チューブ11の積層方向からケース20内にエンジン冷却水を流入させる入口流路23と、ケース20内に設けられ、入口流路23から流入したエンジン冷却水を各々の第2流路2に案内するガイド部材30と、を備え、ケース20は、第1ケース20aと、平面部20dと第1ケース20aに内嵌接合される接合部20eとを有する第2ケース20bと、を有し、ガイド部材30は、平面部20dにおける接合部20eから離間した位置にて第2ケース20bに接合される。
【0082】
この構成によれば、ケース20内にガイド部材30を設けることで、入口流路23から流入したエンジン冷却水を第2流路2に案内できるので、入口流路23を複雑な構造にする必要はない。したがって、簡素な構成で流体の流れを均一化することができる。また、ガイド部材30は、平面部20dにおける接合部20eから離間した位置にて第2ケース20bに接合される。そのため、ロウ付けによってケース20を形成する場合に、ガイド部材30をケース20に接合するためのロウ材が接合部20eに流入することが防止される。したがって、ケース20に対するガイド部材30のロウ付けを確実に行うことができる。
【0083】
また、ガイド部材30は、接合部20eよりも第1ケース20a側に延びて形成される傾斜壁30aを有する。
【0084】
この構成によれば、傾斜壁30aは、チューブ11の積層方向全体にわたって形成されるので、すべての第2流路2にエンジン冷却水を均等に導くことができる。
【0085】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0086】
例えば、上記実施形態に係る熱交換器100は、EGRクーラに限らず、車両に搭載されるチャージエアクーラなどの熱交換器にも適用できる。また、車両以外に使用される熱交換器にも適用できる。
【0087】
また、上記実施形態では、3個の傾斜壁31,33,35が設けられるが、これに限られるものではない。積層コア10の積層方向の大きさにあわせて、単一又は複数の傾斜壁を設けることが可能である。
【符号の説明】
【0088】
100 熱交換器
1 第1流路
2 第2流路
11 チューブ
11d 膨出部
20 ケース
20a 第1ケース
20b 第2ケース
20c 平面部
20d 平面部
20e 接合部
21 膨出部
22 膨出部
23 入口流路
24 出口流路
30 ガイド部材
30a 傾斜壁
31 傾斜壁
31a 先端部
32 隙間
33 傾斜壁
33a 先端部
34 隙間
35 傾斜壁
35a 先端部
36 連結部
36a 切り起こし部
37 側壁部
38 取付部
【要約】
【課題】簡素な構成でエンジン冷却水の流れを均一化する。
【解決手段】熱交換器100は、積層して設けられ、EGRガスが流通する第1流路1が内部に形成される複数のチューブ11と、チューブ11を収容し、隣り合うチューブ11の間にエンジン冷却水が流通する複数の第2流路2を形成するケース20と、チューブ11の積層方向からケース20内にエンジン冷却水を流入させる入口流路23と、ケース20内に設けられ、入口流路23から流入したエンジン冷却水を各々の第2流路2に案内するガイド部材30と、を備え、ガイド部材30は、チューブ11におけるEGRガスの流れ方向に沿って互いに間隔をあけて複数配置されてチューブ11に向かって傾斜し、チューブ11の積層方向における長さが互いに異なる傾斜壁31,33,35を有する。
【選択図】図7
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13