(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6706722
(24)【登録日】2020年5月20日
(45)【発行日】2020年6月10日
(54)【発明の名称】ホーン・アンテナ
(51)【国際特許分類】
H01Q 19/19 20060101AFI20200601BHJP
H01Q 19/17 20060101ALI20200601BHJP
H01Q 15/14 20060101ALI20200601BHJP
H01Q 13/02 20060101ALI20200601BHJP
H01Q 15/22 20060101ALI20200601BHJP
H01Q 19/195 20060101ALI20200601BHJP
【FI】
H01Q19/19
H01Q19/17
H01Q15/14 B
H01Q13/02
H01Q15/22
H01Q19/195
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2019-529307(P2019-529307)
(86)(22)【出願日】2016年10月9日
(65)【公表番号】特表2019-525689(P2019-525689A)
(43)【公表日】2019年9月5日
(86)【国際出願番号】CN2016101595
(87)【国際公開番号】WO2018064835
(87)【国際公開日】20180412
【審査請求日】2019年2月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】503433420
【氏名又は名称】華為技術有限公司
【氏名又は名称原語表記】HUAWEI TECHNOLOGIES CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】ルオ,シン
(72)【発明者】
【氏名】チェン,イ
(72)【発明者】
【氏名】ルゥ,ティンハイ
【審査官】
福田 正悟
(56)【参考文献】
【文献】
特開平07−226623(JP,A)
【文献】
特開2015−179977(JP,A)
【文献】
特開2007−096868(JP,A)
【文献】
特表2014−533026(JP,A)
【文献】
特開2006−166301(JP,A)
【文献】
特表2001−512640(JP,A)
【文献】
特開2013−066152(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/023827(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2003/0234745(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0125705(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0292605(US,A1)
【文献】
中国特許出願公開第104025383(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 19/19
H01Q 13/02
H01Q 15/14
H01Q 15/22
H01Q 19/17
H01Q 19/195
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周波数選択表面(FSS)と、接続構造と、ウェーブガイド・チューブとを有するホーン・アンテナであって、
前記接続構造は第1誘電体スラブと、第2誘電体スラブと、誘電体壁とを有し、前記第1誘電体スラブの第1表面はその表面が突出している双曲面であり、前記第1誘電体スラブの第2表面は前記誘電体壁に接続され、前記第1誘電体スラブの前記2つの表面の間の間隔は前記第1誘電体スラブの厚みであり、前記誘電体壁は管状構造を有し、前記誘電体壁の第1表面は前記第1誘電体スラブによりカバーされ、前記誘電体壁の第2表面は前記第2誘電体スラブによりカバーされ、前記誘電体壁の前記2つの表面の間の間隔は前記誘電体壁の高さであり、前記誘電体壁の前記第1表面の面積は前記誘電体壁の前記第2表面の面積未満ではなく、前記第2誘電体スラブの中央位置にホールが存在し、前記第1誘電体スラブと、前記誘電体壁と、前記第2誘電体スラブとは共に中空構造を形成し;
前記FSSは前記第1誘電体スラブの前記第1表面をカバーし;
前記ウェーブガイド・チューブの一部分は前記第2誘電体スラブの前記ホールに挿入されており、
前記第1誘電体スラブの前記厚みは前記第1誘電体スラブにおける第1周波数に対応する波長の半分であり、前記第1周波数は前記FSSの伝送バンド中心周波数である、ホーン・アンテナ。
【請求項2】
前記FSSのアレイ配置方向は入射電磁波の偏向方向に対して45度又は135度である、請求項1に記載のホーン・アンテナ。
【請求項3】
前記ウェーブガイド・チューブの別の部分は前記中空構造に挿入されている、請求項1又は2に記載のホーン・アンテナ。
【請求項4】
前記ホーン・アンテナは、前記中空構造に挿入された前記ウェーブガイド・チューブの周辺に位置するチョーク溝を更に有し、前記チョーク溝の溝深さは空気中における第1周波数に対応する波長の1/4であり、前記第1周波数は前記FSSの伝送バンド中心周波数である、請求項3に記載のホーン・アンテナ。
【請求項5】
1つより多いチョーク溝が存在し、前記溝の間の間隔は空気中における前記第1周波数に対応する前記波長の1/10である、請求項4に記載のホーン・アンテナ。
【請求項6】
高周波給電部と、プライマリ・リフレクタと、請求項1ないし5のうちの何れか一項に記載の前記ホーン・アンテナとを有するデュアル・バンド・パラボラ・アンテナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は無線通信技術の分野に関連し、特にデュアル・バンド・パラボラ・アンテナで使用されることが可能なホーン・アンテナに関連する。
【背景技術】
【0002】
無線通信技術の急速な進歩により、マイクロ波1対1通信の伝送容量は継続的に増加し、Eバンド(71ないし76GHz、81ないし86GHz)周波数バンドマイクロ波デバイスは、基地局バックホール・ネットワークでますます重要な役割を演じている。しかしながらEバンド周波数バンド電磁波における「レイン・フェード」は非常に深刻であるので、Eバンド・マイクロ波シングル・ホップ距離は通常3キロメートル未満である。Eバンド・マイクロ波シングル・ホップ距離を増やし、サイト配備コストを減らすために、Eバンド周波数バンド・マイクロ波デバイスと別の低周波マイクロ波デバイスとが協調して使用される解決手段が提供されている。比較的強い雨が存在する場合、たとえEバンド・マイクロ波デバイスが正常に動作することが可能でなかったとしても、低周波マイクロ波デバイスは依然として正常に動作することが可能である。
【0003】
この解決手段ではデュアル・バンド・パラボラ・アンテナが使用され、
図1に構造が示されている。デュアル・バンド・パラボラ・アンテナは、プライマリ・リフレクタと、セカンダリ・リフレクタと、低周波給電部と、高周波給電部とを含む。低周波給電部及び高周波給電部の双方は、ホーン・アンテナ型であり、別のアンテナ構造に適用される場合にはホーン給電部として通常言及される。2つの給電部はプライマリ・リフレクタを共有する。周波数選択面(Frequency
Selective Surface:FSS)はセカンダリ・リフレクタとして使用される。セカンダリ・リフレクタは双曲面として設計され、双曲面の虚焦点とプライマリ・リフレクタの実焦点とはオーバーラップし、異なる周波数の給電部が双曲面の虚焦点及び実焦点にそれぞれ配置される。セカンダリ・リフレクタは、虚焦点に位置する低周波給電部により伝送される電磁波を伝送し、実焦点に位置する高周波給電部により伝送される電磁波を反射し、デュアル・バンド多重機能を実現する。
【0004】
従来技術では、低周波ホーン給電部及びFSSは2つの独立したコンポーネントである。従って、大きなアセンブリ・エラーが存在し、アンテナ・ゲインが低く、及びビーム方向がボアサイト軸方向から逸脱する問題がある。
【発明の概要】
【0005】
本発明の実施形態は、低周波ホーン給電部及びFSSの機能を統合するホーン・アンテナを提供し、大きなアセンブリ・エラーが低いアンテナ・ゲインを引き起こし且つビーム方向がボアサイト軸方向から逸脱する従来の問題を解決する。
【0006】
第1側面によれば、ホーン・アンテナが提供され、周波数選択表面
(FSS
)と、接続構造と、ウェーブガイド・チューブとを含み、接続構造は第1誘電体スラブと、第2誘電体スラブと、誘電体壁とを含み、第1誘電体スラブの第1表面はその表面が突出している双曲面であり、第1誘電体スラブの第2表面は誘電体壁に接続され、第1誘電体スラブの2つの表面の間の間隔は第1誘電体スラブの厚みであり、誘電体壁は管状構造を有し、誘電体壁の第1表面は第1誘電体スラブによりカバーされ、誘電体壁の第2表面は第2誘電体スラブによりカバーされ、誘電体壁の2つの表面の間の間隔は誘電体壁の高さであり、誘電体壁の第1表面の面積は誘電体壁の第2表面の面積未満ではなく、第2誘電体スラブの中央位置にホールが存在し、及び第1誘電体スラブと、誘電体壁と、第2誘電体スラブとは共に中空構造を形成し;FSSは第1誘電体スラブの第1表面をカバーし;及びウェーブガイド・チューブの一部分は第2誘電体スラブのホールに挿入される。
【0007】
本発明の実施形態で提供されるホーン・アンテナは、FSS及び低周波ホーン給電部の機能を統合し、高周波ホーン給電部とのアライメントの・エラーを大幅に減らし、アセンブリの困難性を減らし、比較的高い放射
効率を更に提供する。
【0008】
第1側面に関し、第1側面の第1の可能な実装において、FSSのアレイ配置方向は入射電磁波の偏向方向に対して45度又は135度である。これは、FSSを介して伝送される電磁波のサイド・ローブ高さを減らすことが可能であり、これにより電磁波のビーム形状の劣化度を減らす。
【0009】
第1側面に関し、第1側面の第2の可能な実装において、第1誘電体スラブの厚みは第1誘電体スラブにおける第1周波数に対応する波長の半分であり、及び第1周波数はFSSの伝送バンド中心周波数である。本発明の実施形態において、伝送される電磁波の第1誘電体スラブのフロント・ファセットからの反射は、第1誘電体スラブのバック・ファセットからのものと相互に相殺し、従って低周波数バンドにおけるFSSの伝送帯域幅が増やされる。
【0010】
第1側面、第1側面の第1又は第2の可能な実装に関し、第1側面の第3の可能な実装において、ウェーブガイド・チューブの別の部分は中空構造に挿入される。
【0011】
第1側面の第3の可能な実装に関し、第1側面の第4の可能な実装において、ホーン・アンテナは、中空構造に挿入されたウェーブガイド・チューブの周辺に位置するチョーク溝を更に有し、チョーク溝の溝深さは空気中における第1周波数に対応する波長の1/4であり、及び第1周波数はFSSの伝送バンド中心周波数である。本発明の実施形態において、電磁波のエネルギは、ホーン・アンテナの放射効率を改善するように、より集中した方式で前方に放射されることが可能である。
【0012】
第1側面の第4の可能な実装に関し、第1側面の第5の可能な実装において、1つより多いチョーク溝が存在し、溝の間の間隔は空気中における第1周波数に対応する波長の1/10である。実施形態において、ホーン・アンテナは、ホーン・アンテナの放射効率を更に改善するように、複数のチョーク溝を含む。
【0013】
本発明の実施形態で提供される解決手段において、ホーン・アンテナは、FSS及び低周波ホーン給電部の機能を統合し、高周波ホーン給電部とのアライメントのエラーを大幅に減らし、アセンブリの困難性を減らす。更に、本発明の実施形態で提供されるホーン・アンテナは、比較的高い放射効率を更に提供する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本発明の実施形態又は従来技術における技術的解決手段をより明確に説明するため、以下、実施形態又は従来技術を説明するために必要とされる添付図面を簡単に説明する。明らかに、以下の説明における添付図面は本発明の一部の実施形態を単に示しており、当業者は創作的労力なしにこれらの添付図面から他の図面を更に導出し得る。
【0015】
【
図1】
図1は既存のデュアル・バンド・パラボラ・アンテナの概略的な構造図である。
【0016】
【
図2】
図2は既存のホーン・アンテナの概略的な構造図である。
【0017】
【
図3】
図3は本発明の実施形態によるホーン・アンテナの概略的な構造図である。
【0018】
【
図4】
図4は本発明の実施形態を適用するデュアル・バンド・パラボラ・アンテナの概略的な構造図である。
【0019】
【
図5】
図5は本発明の実施形態によるホーン・アンテナにおけるFSSアレイ配置方向と入射電磁波の偏向方向との間の関係についての図である。
【0020】
【
図6】
図6は既存のFSS及び本発明で提供されるホーン・アンテナにおけるFSSにより電磁波が別々に送信された後に得られる電磁波パターンの間の比較についての図である。
【0021】
【
図7】
図7は中空接続構造を利用するホーン・アンテナ及び中実接続構造を利用するホーン・アンテナにより低周波数バンド電磁波がそれぞれ送信された後の低周波数バンド電磁波の反射係数の間の比較についての図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態において添付図面に関連して本発明の実施形態の技術的解決手段を明確かつ十分に説明する。明らかに、説明される実施形態は本発明の実施形態の全てではなく一部である。創作的労力なしに本発明の実施形態に基づいて当業者により得られる他の全ての実施形態は、本発明の保護範囲内にある。
【0023】
以下の説明では、限定ではなく説明のために、特定のシステム構造、インターフェース、及び技術のような具体的な詳細が、本発明の十分な理解をさせるように提供される。しかしながら、当業者は本発明がこれらの具体的な詳細なしに他の実施形態で実施されてもよいことを理解している。他のケースでは、周知の装置、回路、及び方法の詳細な説明は省略され、それにより本発明は不要な詳細によって曖昧にされることなく説明される。
【0024】
「第1」及び「第2」のような序数は、本発明の実施形態で言及される場合には、序数が文脈に応じた順番で明確に表現していない限り、区別するだけのために使用されていることが理解されるべきである。
【0025】
当業者の理解を促すために、以下の実施形態は、本発明で提供される技術的解決手段を説明するように本発明で使用される。
【0026】
全員に知られているように、ホーン・アンテナは広く使用されているアンテナである。
図1における低周波給電部及び高周波給電部の双方はホーン・アンテナである。既存のホーン・アンテナは、一般に、中実誘電体ブロックとウェーブガイド・チューブとを含む。
図2に示されるように、中実誘電体ブロックは湾曲した表面トップを有する円錐形であり、湾曲した表面トップの反対側の先端は、ウェーブガイド・チューブに挿入され、ウェーブガイド・チューブに接続され、ホーン給電部を形成する。しかしながら、既存のデュアル・バンド・パラボラ・アンテナでは、FSS及び低周波ホーン給電部(アンテナ構造で使用されるホーン・アンテナは通常ホーン給電部として言及される)は、2つの独立したコンポーネントである。これは、大きなアセンブリ・エラーの結果となり、更に、アンテナ・ゲインが削減され且つビーム方向がボアサイト軸方向から逸脱する問題を引き起こす。
【0027】
本発明の実施形態はホーン・アンテナ300を提供する。ホーン・アンテナは、FSS及び低周波ホーン給電部の機能を統合する。ホーン・アンテナの構造は
図3に示され、FSS310と、接続構造320と、ウェーブガイド・チューブ330とを含む。
【0028】
接続構造320は、第1誘電体スラブ321と、第2誘電体スラブ322と、誘電体壁323とを含む。第1誘電体スラブ321の第1表面は表面が突出している双曲面であり、第1誘電体スラブ321の第2表面は誘電体壁323に接続され、第1誘電体スラブ321の2つの表面の間の間隔は第1誘電体スラブ321の厚みである。誘電体壁323は管状構造を有し、誘電体壁323の第1表面は第1誘電体スラブ321によりカバーされ、誘電体壁の第2表面は第2誘電体スラブ322によりカバーされ、誘電体壁323の2つの表面の間の間隔は誘電体壁323の高さであり、誘電体壁323の第1表面の面積は、誘電体壁323の第2表面の面積未満ではない。第2誘電体スラブ322の中央位置にホールが存在する。第1誘電体スラブ321と、誘電体壁323と、第2誘電体スラブ322とは共に中空構造を形成する。FSS310は、第1誘電体スラブ321の第1表面をカバーする。ウェーブガイド・チューブ330の一部は、第2誘電体スラブ322のホールに挿入される。
【0029】
第2誘電体スラブ322のホールのエリアは、ウェーブガイド・チューブ330の断面エリアに一致し、第2誘電体スラブ及びウェーブガイド・チューブ330は固く結合され、接続部の役割を果たすことが理解されるべきである。誘電体壁323は、管状構造を有し、円筒、円錐等の形状であってもよい。更に、比較的低い電磁波伝送損失を有する材料が第1誘電体スラブ321に使用される必要があり、既存のホーン・アンテナにおける誘電体材料が使用されてもよい。第1誘電体スラブ及び誘電体壁は主に支持部の役割を果たし、固い材料が使用されてよい。これらは本発明のこの実施形態に限定されない。
【0030】
本発明のこの実施形態におけるFSS310は、低周波数バンド電磁波を伝送し、高周波数バンド電磁波を反射する機能を有する。上記の機能を有する任意の既存のFSSが使用されてもよく、これは本発明のこの実施形態で限定されない。
【0031】
図4は本発明のこの実施形態で提供されるホーン・アンテナ300を適用するデュアル・バンド・パラボラ・アンテナを示す。本発明のこの実施形態で提供されるホーン・アンテナ300は、FSSと低周波給電部との機能を統合しており、ホーン・アンテナ300と高周波ホーン給電部との間のアライメントのみが考慮される必要があることが、図から理解できる。これは、アライメント・エラーを減らす機能を実現し、-0.2mmないし+0.2mmのレンジ内でアライメント・エラーを制御することが可能である。更に、誘電体内の電磁波の伝搬は、中空構造を有する接続構造320を利用することにより、可能な限り多く削減されることが可能である。誘電体内の電磁波の伝送損失は、空気中の電磁波の伝送損失より常に大きいので、誘電体内で電磁波の伝搬を減らすことは、無意味な損失を減らし、送信電力を増やすことになる。本発明のこの実施形態で提供されるホーン・アンテナ300の放射効率は98%に及ぶことが可能である。
【0032】
選択的に、別の実施形態において、FSS310のアレイ配置方向は、入射電磁波の偏向方向に対して45度又は135度である。
図5に示されるように、実線矢印は入射電磁波の偏向方向を表現し、破線矢印はFSS310のアレイ配置方向を表現する。電磁波は、通常、正弦波であるので、図
5の実線の双方の両端における矢印で示されるように、180度の角度差を有する2つの電磁波偏向方向が存在する。従って、FSS310のアレイ配置方向は或る時点で入射電磁波の偏向方向に対して45度であり、次の時点では偏向方向に対して135度であるかもしれない。本発明のこの実施形態で提案される配置方式は、伝送される電磁波のサイド・ローブ高さを減らすことが可能である。
【0033】
具体的に、ホーン・アンテナ300により送信される低周波電磁波がFSS310に入射される例では、この入射電磁波がFSS310を介して送信される場合、誘発される電流がFSS310の表面上で生成され、誘発される電流により生成される散乱電磁波が入射電磁波と相互作用し、送信さえる電磁波を形成する。FSS310のアレイ配置方向が入射電磁波の偏向方向に一致している(0度)又は垂直である場合(90度)、偏向方向に一致するギャップの両側におけるメタル上で、誘発される電流は生成されず、偏向方向に垂直なギャップの両側におけるメタル上で、誘発される電流が生成され、この場合に生成される散乱電磁波は入射電磁波の偏向方向に対して非対称である。このケースにおいて、送信された電磁波がFSS310を通過した後に取得されるパターン変化の結果が
図6に示されており、欧州電気通信標準化機構(European
Telecommunications Standards Institute:ETSI)により指定される放射パターン包絡線(Radiation
Pattern Envelope:RPE)テンプレートを満足することができない。しかしながら、FSS310のアレイ配置方向が入射電磁波の偏向方向に対して45度又は135度である場合、誘発される電流が、上記2つの方向におけるギャップの両側におけるメタル上で生成され、このケースで形成される散乱電磁波は、入射電磁波の偏向方向に対して対称的である。このケースにおいて、送信された電磁波がFSSを通過した後に取得されるパターン変化の結果が
図6に示されている。これは、送信された電磁波のビーム形状の逸脱度を減らし、送信される電磁波のサイド・ローブ高さを減らし、ETSIにより指定されるRPEテンプレートを満足する。更に、既存の配置方向(0度又は90度)との比較において、エネルギがより集中し、ホーン・アンテナ300の指向性が改善され、周辺サイトに対する干渉が削減される。
【0034】
選択的に、ウェーブガイド・チューブ330の別の部分が接続構造320に挿入される。ウェーブガイド・チューブ330から第1誘電体スラブ321までの距離は、第1誘電体スラブ321の第1表面の曲率とホーン・アンテナ300の位相中心との双方に従って決定される必要がある。FSS310は、デュアル・バンド・パラボラ・アンテナのセカンダリ・リフレクタとして使用される必要があるので、ホーン・アンテナ300の位相中心とFSS310の虚焦点とはオーバーラップしている必要がある。FSS310は第1誘電体スラブ321の第1表面をカバーし、FSS310の曲率は第1誘電体スラブ321の第1表面のものに一致している。従って、FSS310の虚焦点の位置は、第1誘電体スラブ321の第1表面の曲率に応じて決定されてよい。位相中心は理論的な点であり、アンテナにより放射される信号の中心は、アンテナの位相中心として考察される。しかしながら、実際のアンテナが完璧に準備されることは不可能なので、実際のアンテナの位相中心は、通常、領域である。本発明のこの実施形態では、ホーン・アンテナ300の位相中心は、誘電体壁323の具体的な形状、又はウェーブガイド・チューブ330から第1誘電体スラブまでの距離を調整することにより変化させられ、FSS310の虚焦点とアンテナの位相中心とをオーバーラップさせる。
【0035】
更に、ホーン・アンテナ300は、中空構造に挿入されるウェーブガイド・チューブ330周辺に位置するチョーク溝340を更に含む。チョーク溝340の溝深さは、空気中での第1周波数に対応する波長の1/4である。第1周波数はFSS310の伝送バンド中心周波数である。チョーク溝340は、中空構造に挿入されたウェーブガイド・チューブ330周辺の表面電流の横方向伝搬を抑制することが可能であり、それにより、送信される電磁波のエネルギは、ホーン・アンテナ300の放射効率を改善するように、より集中した方式で前方に放射されることが可能である。更に、1つより多いチョーク溝340が存在し、複数のチョーク溝340の間の溝間隔は、空気中の第1周波数に対応する波長の1/10である。この実施形態では、ホーン・アンテナ300が複数のチョーク溝340を含む場合に、ホーン・アンテナ300の放射効率を改善するように、送信される電磁波のエネルギは更に集中させられ且つ前方に放射されることが可能である。
【0036】
多数のチョーク溝340は良い効果を示さないかもしれないことに留意すべきである。ウェーブガイド・チューブ330に最も近い第1チョーク溝340は最も明確な効果を有する。第2から第Nチョーク溝340に関し、ウェーブガイド・チューブ330までの距離は徐々に増え、効果は徐々に減少する。チョーク溝340の量は、実際のケースに応じて決定される必要があり、本発明のこの実施形態で限定されない。
【0037】
周波数(f)及び波長(λ)の間の関係は、v=f×λであることに留意すべきであり、vは誘電体における光速を表現する。真空中でvは光速、即ち3×10
8m/sに等しい。誘電体において、vは誘電体の屈折率に関連する。誘電体の屈折率がnである場合、v=光速/nである。
【0038】
選択的に、別の実施形態において、第1誘電体スラブ321の厚みは、第1誘電体スラブ321における第1周波数に対応する波長の半分である。第1周波数は、FSSの伝送バンド中心周波数である。このケースにおいて、第1誘電体スラブ321の厚みが不変である場合、第1誘電体スラブ321についての第1表面及び第2表面の曲率は確かに一致する。
【0039】
FSS310の低周波伝送帯域幅は第1誘電体スラブ321の厚みに関連するので、第1誘電体スラブ321の厚みが第1周波数に対応する誘電体波長の半分である場合、低周波電磁波が空中から誘電体へそして空中へ伝播するプロセスにおいて、第1誘電体スラブ321の第1表面で生成される反射は、第1誘電体スラブ321の第2表面で生成されるものと互いに相殺する(第1表面で生成される反射及び第2表面で生成されるものは同一振幅及び逆位相を有する)。これは、FSS310の低周波伝送帯域幅を増やすことが可能である。従って、本発明のこの実施形態における第1誘電体スラブ321の厚みは、第1周波数に対応する誘電体波長の半分である。別の厚みと比較して、低周波数バンド伝送帯域幅は増やされることが可能である。
【0040】
更に、中空構造を有する接続構造320は電磁波損失を減らし、ホーン・アンテナ300の放射効率を改善することが可能であることを除いて、接続構造320が、本発明のこの実施形態で中実構造の代わりに中空構造を使用する理由は、低周波数バンド伝送帯域幅に更に関連する。
図7は低周波数バンド電磁波に対するFSSの反射係数を示す。中実誘電体が使用される場合、FSS伝送帯域幅は近似的に1GHzであることが、図から理解できる(反射係数は、-15dBm未満である)。本発明のこの実施形態における中空構造が使用される場合、FSS伝送帯域幅は近似的に1.85GHzに達することが可能である。低周波数バンド伝送帯域幅は顕著に増加させることが可能である。
【0041】
要するに、低周波ホーン給電部が本発明のこの実施形態におけるFSSとともに統合され、高周波ホーン給電部とのアライメントのエラーを大幅に減らす。中空構造を有する接続構造320は、誘電体における電磁波の伝搬を可能な限り多く減らすために使用され、無意味な損失を減らし、ホーン・アンテナ300の放射効率を改善する。更に、中実誘電体との比較において、中空構造を利用することにより、多くの低周波数バンド伝送帯域幅が取得されることが可能である。本発明のこの実施形態において、FSS310のアレイ配置方向は、入射電磁波の偏向方向に対して45度又は135度である。これは、送信される電磁波のビーム形状の劣化を軽減し、送信される電磁波のサイド・ローブ高さを減らし、ホーン・アンテナ300の指向性を改善し、周辺サイトとの干渉を減らす。
【0042】
上記の説明は本発明の単なる具体的な実装であり、本発明の保護範囲を限定するようには意図されていない。本発明で開示される技術的範囲の中で当業者により容易に理解される任意の変形又は置換は、本発明の保護範囲内にある。従って、本発明の保護範囲は特許請求の範囲の保護範囲次第である。