(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を用いて説明する。なお、以下において、編組体の端末を固めてこの端末がほつれることを防ぐほつれ止め剤などの付随的な構成については、その図示および詳細な説明を省略する。
【0024】
〈第1および第2の実施形態〉
始めに、第1の実施形態にかかるひずみ計測用センサー10および第2の実施形態にかかるひずみ計測用センサー20の各構成について、主に
図1ないし
図7を用いて説明する。このひずみ計測用センサー10およびひずみ計測用センサー20は、
図1に示すように、計測対象者となるヒト81の呼吸を、このヒト81に負担をかけることなく(すなわち低侵襲の状態で)計測するための着用型の呼吸計測装置80の一部である。
【0025】
呼吸計測装置80は、計測着80Aにひずみ計測用センサー10およびひずみ計測用センサー20をそれぞれ取り付けて検出手段80Bに接続させた構成となっている。計測着80Aは、ヒト81に着せられた着用状態において、ヒト81の体幹上部を前方および後方から覆うように構成されている。また、検出手段80Bは、上記着用状態において計測着80Aに取り付けられることで、ヒト81により携帯されるようになっている。なお、本実施形態では、計測着80Aは伸縮性に富む(例えば伸び率が50[%]前後の)編み地からなるTシャツであるが、計測着80Aは、伸縮性に乏しい(例えば伸び率が5[%]前後の)布帛からなるシャツ(図示省略)であってもよい。
【0026】
ここで、ひずみ計測用センサー10は、ヒト81の腹部における臍に対応して配置され、ヒト81の腹部における臍を通る周方向の引張変形に応じて静電容量を変化させる。また、ひずみ計測用センサー20は、ヒト81の胸部における剣状突起に対応して配置され、ヒト81の胸部における剣状突起を通る周方向の引張変形に応じて電気抵抗を変化させる。そして、検出手段80Bは、ひずみ計測用センサー10の静電容量の変化およびひずみ計測用センサー20の電気抵抗の変化をそれぞれ電気的に検出し、その検出結果をデータ処理装置80Cに随時所定のサンプリング周波数で送信する。ここで、ひずみ計測用センサー10の静電容量およびひずみ計測用センサー20の電気抵抗は、それぞれ本発明における「電気的パラメータ」に相当する。
【0027】
データ処理装置80Cに検出手段80Bから所定のサンプリング周波数で送信された上記検出結果は、データ処理装置80Cで随時データ処理されてヒト81の肺気量に変換される。この肺気量は、データ処理装置80Cに付設された出力装置80D(本実施形態ではディスプレイ)から随時出力される。
【0028】
ここで、検出手段80Bからデータ処理装置80Cへのデータ送信は、無線送信装置80E、無線受信装置80F、および、電波80Gを用いた無線送信により行われる。これにより、ヒト81の呼吸を、このヒト81の行動範囲および運動状態に制限を設けることなく、外部の計測者(図示省略)が静止した状態で計測することができる。
【0029】
ひずみ計測用センサー10は、
図2および
図3に示すように、糸状の物体を組むことで長尺の筒状に形成された袋ひも11の中に、長尺の線状に形成されたゴム糸10Aを挿通させた構成となっている。ここで、袋ひも11は本発明における「編組体」に、ゴム糸10Aは本発明における「起わい体」に、それぞれ相当する。
【0030】
ゴム糸10Aは、袋ひも11の長手方向(
図2で見て左右方向)に沿って長尺に伸びるように配設されて、この袋ひも11の長手方向に伸び縮みすることができるように構成されている。また、ゴム糸10Aは、その両端が計測着80Aにミシン縫いで縫い付けられることで、上述したヒト81の臍を通る周方向の引張変形に応じて伸縮されるようになっている。ここで、上記ミシン縫いの具体的な縫製方法は、本縫い、千鳥縫い、単環縫い、二重環縫いからなる群から選択することができる。また、ゴム糸10Aは、その両端が点ファスナー、線ファスナー、もしくは、面ファスナー、または、接着剤もしくは粘着剤または鋲により計測着80Aに取り付けられるものであってもよい。なお、本実施形態において、ゴム糸10Aは、20番手(すなわち太さが1/20[インチ]の)天然ゴム糸である。この天然ゴム糸は、パラゴムノキから採取したラテックスによって作られる天然ゴムからなるものであっても、化学合成された天然ゴムからなるものであってもよい。
【0031】
袋ひも11は、4本の導電糸11A、11B、11C、11Dと合計4本の絶縁糸11Eとをはすかけに交差させた丸組の組みひも組織(具体的には太さが3[mm]のタテワケの組みひも)を呈するものである。また、袋ひも11は、その長手方向の両端末がほつれ止め剤(図示省略)によって固められて、ゴム糸10Aにおいてその長手方向に離れた2箇所と接着されることで、このゴム糸10Aに沿って配設された状態で、このゴム糸10Aの伸縮に応じて伸び縮みされるようになっている。なお、
図2および
図3においては、袋ひも11は2本組みの組織を呈しているが、袋ひも11の組織は1本組み、3本組み、4本組み、または、2本網代組みであってもよい。
【0032】
各導電糸11A、11B、11C、11Dは、繊維状の導体を糸状の芯にし、この芯の表面を絶縁体で覆った構成の絶縁導線とされている。本実施形態において、上記「導体の繊維」は、日本蚕毛染色株式会社製の導電繊維であるサンダーロン(登録商標)を撚りあわせた糸状の芯である。また、本実施形態において、上記「絶縁体」は、ポリエステル繊維を撚りあわせた糸であり、上記糸状の芯の周りに巻きつけられることでこの芯の表面を覆う。
【0033】
ところで、袋ひも11の伸縮は、導電糸11A、11B、11C、11Dと絶縁糸11Eとをはすかけに交差させた組みひも組織により、これらの各糸それ自体の伸縮が抑えられた状態で実現される。この際、上記組みひも組織は、導電糸11A、11B、11C、11Dがはすかけに交差される交差角度をゴム糸10Aの伸縮に応じて変化させることで、導電糸11A、11B、11C、11Dにおける各導体間の距離が変化するように伸び縮みされることで、この各導体間の静電容量を変化させる。
【0034】
ここで、各導電糸11A、11B、11C、11Dにおける各導体は、2セットの二股接続コード80H、80Iを介して検出手段80Bと接続されている。ここで、二股接続コード80Hは、互いに対向される導電糸11A、11Cにおける各導体を等電位とした状態で検出手段80Bに接続する。また、二股接続コード80Iは、導電糸11Aと導電糸11Cとの間で互いに対向される導電糸11B、11Dにおける各導体を等電位とした状態で検出手段80Bに接続する。
【0035】
さらに、検出手段80Bは、二股接続コード80H、80Iに所定の周波数の電圧パルスを印加して導電糸11A、11Cの各導体と導電糸11B、11Dの各導体との間の静電容量を測定し、この静電容量の変化を検出する。そして、ひずみ計測用センサー10は、上述した各構成により、上述したヒト81の臍を通る周方向の引張変形をゴム糸10Aの長手方向における伸縮のひずみとし、この伸縮のひずみを静電容量の変化として電気的に検出することを実現させる。なお、ゴム糸10Aの伸縮のひずみを静電容量の変化として検出する構成には、電力の消費が抑えられた状態でゴム糸10Aの伸縮のひずみを検出することができるというメリットが存在する。
【0036】
ところで、上述した4本の導電糸11A、11B、11C、11Dは、それぞれが袋ひも11の一部として組まれることで、この袋ひも11によって所定の繰り返しパターンで留められている。この構成によれば、ゴム糸10Aの伸縮に応じて各導電糸11A、11B、11C、11Dが変形されて位置ずれされることを、この各導電糸11A、11B、11C、11Dの全長にわたって抑えることができる。これにより、ゴム糸10Aの伸縮に対して、各導電糸11A、11B、11C、11Dの位置ずれによる測定結果のばらつきが抑えられたひずみ計測用センサー10を提供することができる。また、上記構成には、袋ひも11の表面がこすれた際の各導電糸11A、11B、11C、11Dの位置ずれを、この各導電糸11A、11B、11C、11Dの全長にわたって抑えることができる、というメリットもある。
【0037】
なお、本発明者は、上述したひずみ計測用センサー10の性能を検証する第1および第2の実験を行った。この第1の実験においては、ひずみ計測用センサー10のゴム糸10Aの両端をこのゴム糸10Aの縦ひずみ(力をかけた方向に伸縮するひずみ)が26.5[%]になるまで引っ張り、この縦ひずみの変化に応じたひずみ計測用センサー10の静電容量の変化を測定した。なお、本明細書において、「ひずみ計測用センサー10の静電容量」とは、ひずみ計測用センサー10における導電糸11A、11Cの各導体と導電糸11B、11Dの各導体との間の静電容量のことをいう。
【0038】
上記第1の実験では、
図4に示すように、ひずみ計測用センサー10の静電容量はゴム糸10Aの伸びにつれて減少され、その減少量はゴム糸10Aの縦ひずみの大きさとほぼ比例されるという実験結果が得られた。ここから、ひずみ計測用センサー10は、そのゴム糸10Aに生じた縦ひずみを、この縦ひずみの大きさに比例した出力で検出することができるといえる。
【0039】
ついで、上述した第2の実験について説明する。この第2の実験においては、ひずみ計測用センサー10のゴム糸10Aの両端を引っ張って伸ばし、その後にこのゴム糸10Aの両端を放してひずみ計測用センサー10を縮めることを8回繰り返す間における、ひずみ計測用センサー10の静電容量の変化を測定した。なお、第2の実験において、ひずみ計測用センサー10のゴム糸10Aは、毎回その縦ひずみが20[%]となるまで引っ張った。
【0040】
上記第2の実験では、
図5に示すように、ゴム糸10Aの伸縮に応じたひずみ計測用センサー10の静電容量の変化は、その特性がゴム糸10Aの伸縮の繰り返しによってはほとんど変わらないという実験結果が得られた。ここから、ひずみ計測用センサー10は、繰り返しの伸縮による測定結果のばらつきが少ないひずみ計測用センサーであるということができる。
【0041】
さて、ひずみ計測用センサー20は、
図6および
図7に示すように、糸状の物体を組むことで長尺の筒状に形成された袋ひも21の中に、長尺の線状に形成されたゴム糸20Aを挿通させた構成となっている。ここで、袋ひも21は本発明における「編組体」に、ゴム糸20Aは本発明における「起わい体」に、それぞれ相当する。
【0042】
ゴム糸20Aは、袋ひも21の長手方向(
図6で見て左右方向)に沿って長尺に伸びるように配設されて、この袋ひも21の長手方向に伸び縮みすることができるように構成されている。また、ゴム糸20Aは、その両端が上述した計測着80Aにミシン縫いで縫い付けられることで、上述したヒト81の剣状突起を通る周方向の引張変形に応じて伸縮されるようになっている。ここで、上記ミシン縫いの具体的な縫製方法は、本縫い、千鳥縫い、単環縫い、二重環縫いからなる群から選択することができる。また、ゴム糸20Aは、その両端が点ファスナー、線ファスナー、もしくは、面ファスナー、または、接着剤もしくは粘着剤または鋲により計測着80Aに取り付けられるものであってもよい。なお、本実施形態において、ゴム糸20Aは天然ゴム糸である。この天然ゴム糸は、パラゴムノキから採取したラテックスによって作られる天然ゴムからなるものであっても、化学合成された天然ゴムからなるものであってもよい。
【0043】
袋ひも21は、合計8本の導電糸21Aをはすかけに交差させた丸組の組みひも組織(具体的には太さが2[mm]の2本組みの組みひも)からなるものである。なお、本実施形態において、導電糸21Aは金属めっきフィラメントである。ここで、上記金属めっきフィラメントにおいてめっきされる金属の種類は、銅、アルミニウム、金、銀からなる群から選択することができる。
【0044】
また、袋ひも21は、その長手方向の両端末がほつれ止め剤(図示省略)によって固められて、ゴム糸20Aにおいてその長手方向に離れた2箇所と接着されることで、このゴム糸20Aに沿って配設された状態で、このゴム糸20Aの伸縮に応じて伸縮されるようになっている。この伸縮は、上記丸組の組みひも組織により、その各導電糸21Aそれ自体の伸縮が抑えられた状態で実現される。
【0045】
ところで、各導電糸21Aは、8本で袋ひも21の全体をなすように組まれることで、互いに所定の繰り返しパターンで留められ、袋ひも21上の複数箇所において互いに接触されて導通されている。これにより、8本の導電糸21Aは、この各導電糸21Aが絡まることなく伸びている場合(図示せず)と比べて、導電糸21A全体としての電気抵抗が低くなるようにされている。
【0046】
上記構成によれば、ゴム糸20Aの伸縮に応じて導電糸21Aが変形されて位置ずれされることを、この各導電糸21Aの全長にわたって抑えることができる。これにより、ゴム糸20Aの伸縮に対して、各導電糸21Aの位置ずれによる測定結果のばらつきが抑えられたひずみ計測用センサー20を提供することができる。また、袋ひも21に組まれた各導電糸21Aは、ゴム糸20Aの伸縮に応じて変形されることで導電糸21A同士の接触面積を増減させ、この増減に応じて導電糸21A全体としての電気抵抗を変化させる。また、上記構成には、袋ひも21の表面がこすれた際の各導電糸21Aの位置ずれを、この各導電糸21Aの全長にわたって抑えることができる、というメリットもある。
【0047】
ここで、袋ひも21は、その長手方向の両端末部分の導電糸21Aが、それぞれ接続コード80J、80Kを介して検出手段80Bと導通されている。これにより、ひずみ計測用センサー20は、ゴム糸20Aの伸縮のひずみを電気抵抗の変化として電気的に検出することを検出手段80Bに実現させる。本実施形態において、検出手段80Bは、
図15に示すように、ひずみ計測用センサー20の袋ひも21を未知の抵抗としたホイートストーンブリッジ回路80Lにより、上記電気抵抗の変化を出力電圧の変動に変換して求める。
【0048】
〈第3の実施形態〉
続いて、第3の実施形態にかかるひずみ計測用センサー30の構成について、
図8ないし
図11を用いて説明する。第3の実施形態にかかるひずみ計測用センサー30は、第2の実施形態にかかるひずみ計測用センサー20を変形した実施形態である。したがって、上記第2の実施形態にかかるひずみ計測用センサー20の説明に登場した構成と共通する構成については、その構成に付した符号に「10」を加算した符号を付すことで対応させ、その詳細な説明を省略する。
【0049】
第3の実施形態にかかるひずみ計測用センサー30は、
図8に示すように、計測対象者となるヒト91の肘関節の角度を、このヒト91に負担をかけることなく(すなわち低侵襲の状態で)計測するための着用型の肘関節角度計測装置90の一部である。この肘関節角度計測装置90は、計測着90A(本実施形態では長袖のブラウス)にひずみ計測用センサー30を取り付けて検出手段90Bに接続させた構成となっている。計測着90Aは、ヒト91に着せられた着用状態において、ヒト91の体幹上部および両腕を覆うように構成されて、その伸び率(破断をともなうことなく許容できる縦ひずみの最大値)が所定の値(例えば15[%])となるようにされている。また、検出手段90Bは、上記着用状態において計測着90Aの右上腕部分に巻き付いた状態に取り付けられることで、ヒト91により携帯されるようになっている。
【0050】
ここで、ひずみ計測用センサー30は、ヒト91の右腕における肘がしらに対応して配置され、ヒト81の右肘の屈曲に応じて電気抵抗を変化させる。そして、検出手段90Bは、ひずみ計測用センサー30の電気抵抗の変化を電気的に検出し、その検出結果をデータ処理装置90Cに随時所定のサンプリング周波数で送信する。ここで、ひずみ計測用センサー30の電気抵抗は、本発明における「電気的パラメータ」に相当する。
【0051】
データ処理装置90Cに検出手段90Bから所定のサンプリング周波数で送信された上記検出結果は、データ処理装置90Cで随時データ処理されてヒト91の右腕における肘関節の角度に変換される。この肘関節の角度は、データ処理装置90Cに付設された出力装置90D(本実施形態ではディスプレイ)から随時出力される。
【0052】
ここで、検出手段90Bからデータ処理装置90Cへのデータ送信は、無線送信装置90E、無線受信装置90F、および、電波90Gを用いた無線送信により行われる。これにより、ヒト91の右腕における肘関節の角度を、このヒト91の行動範囲および運動状態に制限を設けることなく、外部の計測者(図示省略)が静止した状態で計測することができる。
【0053】
ひずみ計測用センサー30は、
図9および
図10に示すように、長尺の帯状に形成された平打ち組みひも31に、長尺の線状に形成された4本のゴム糸30Aを組み込んで留めることで、全体形状が長尺の帯状をなすように形成されている。ここで、平打ち組みひも31は本発明における「編組体」に、各ゴム糸30Aは本発明における「起わい体」および「フィラメント」に、それぞれ相当する。
【0054】
各ゴム糸30Aは、平打ち組みひも31の長手方向(
図9で見て上下方向)に沿って長尺に伸びるように配設されて、この平打ち組みひも31の長手方向に伸び縮みすることができるように構成されている。また、ゴム糸30Aは、その両端が上述した計測着90Aに縫い付けられることで、上述した右肘の屈曲に応じて伸縮されるようになっている。なお、本実施形態において、各ゴム糸30Aは天然ゴム糸である。この天然ゴム糸は、パラゴムノキから採取したラテックスによって作られる天然ゴムからなるものであっても、化学合成された天然ゴムからなるものであってもよい。
【0055】
平打ち組みひも31は、合計9本の導電糸31Aをはすかけに交差させた平組の組みひも組織(具体的には幅が3[mm]の2本組み(高麗組み)の組みひも)を呈するものである。なお、本実施形態において、導電糸31Aは金属めっきフィラメントである。ここで、上記金属めっきフィラメントにおいてめっきされる金属の種類は、銅、アルミニウム、金、銀からなる群から選択することができる。
【0056】
また、平打ち組みひも31は、その長手方向の両端末がほつれ止め剤(図示省略)によって固められて各ゴム糸30Aと接着されることで、これらのゴム糸30Aに沿って配設された状態で、このゴム糸30Aの伸縮に応じて伸縮されるようになっている。この伸縮は、上記平組の組みひも組織により、その各導電糸31Aの伸縮が抑えられた状態で実現される。
【0057】
ところで、各導電糸31Aは、9本で平打ち組みひも31の全体をなすように組まれることで、互いに所定の繰り返しパターンで留められ、平打ち組みひも31上の複数箇所において互いに接触されて導通されている。これにより、9本の導電糸31Aは、この各導電糸31Aが絡まることなく伸びている場合(図示せず)と比べて、導電糸31A全体としての電気抵抗が低くなるようにされている。
【0058】
上記構成によれば、4本のゴム糸30Aの伸縮に応じて導電糸31Aが変形されて位置ずれされることを、この各導電糸31Aの全長にわたって抑えることができる。これにより、ゴム糸30Aの伸縮に対して、各導電糸31Aの位置ずれによる測定結果のばらつきが抑えられたひずみ計測用センサー30を提供することができる。また、平打ち組みひも31に組まれた各導電糸31Aは、ゴム糸30Aの伸縮に応じて変形されることで導電糸31A同士の接触面積を増減させ、この導電糸31A全体としての電気抵抗を変化させる。
【0059】
ここで、平打ち組みひも31は、その長手方向の両端末部分の導電糸31Aが、それぞれ接続コード90H、90Iを介して検出手段90Bと導通されている。これにより、ひずみ計測用センサー30は、ゴム糸30Aの伸縮のひずみを電気抵抗の変化として検出することを検出手段90Bに実現させる。
【0060】
なお、本発明者は、上述したひずみ計測用センサー30の性能を検証する第3の実験を行った。この第3の実験においては、両端がほつれ止め剤(図示省略)によって固められた状態のひずみ計測用センサー30を単体で用意してその両端を引っ張り、この引っ張りによる縦ひずみに応じたひずみ計測用センサー30の両端間における電気抵抗の変化を測定した。
【0061】
上記第3の実験では、
図11に示すように、ひずみ計測用センサー30の両端間における電気抵抗はひずみ計測用センサー30の縦ひずみの増加(すなわち伸び)につれて増加された。また、上記第3の実験では、ひずみ計測用センサー30の縦ひずみが15[%]以下の範囲において、上記電気抵抗の増加量はひずみ計測用センサー30の縦ひずみの大きさとほぼ比例されるという実験結果が得られた。ここから、ひずみ計測用センサー30は、伸び率が15[%]の計測着90A(
図8参照)に取り付けられた場合に、この計測着90Aに生じた伸縮のひずみを、このひずみの大きさに比例した出力で検出することができるといえる。
【0062】
〈第4の実施形態〉
続いて、第4の実施形態にかかるひずみ計測用センサー40の構成について、
図16および
図17を用いて説明する。第4の実施形態にかかるひずみ計測用センサー40は、第3の実施形態にかかるひずみ計測用センサー30を変形した実施形態である。したがって、上記第3の実施形態にかかるひずみ計測用センサー30の説明に登場した構成と共通する構成については、その構成に付した符号における十の位の数字のうち、「9」を「7」に、「3」を「4」にそれぞれ置き換えた符号を付すことで対応させ、その詳細な説明を省略する。
【0063】
第4の実施形態にかかるひずみ計測用センサー40は、
図16および
図17に示すように、平打ち組みひも41をなす9本の導電糸を絶縁導線41Aとしたものである。ここで、各絶縁導線41Aは、繊維状の導体を糸状の芯にし、この芯の表面を絶縁体で覆った構成とされている。本実施形態において、上記「導体の繊維」は、日本蚕毛染色株式会社製の導電繊維であるサンダーロン(登録商標)を撚りあわせた糸状の芯である。また、本実施形態において、上記「絶縁体」は、ポリエステル繊維を撚りあわせた糸であり、上記糸状の芯の周りに巻きつけられることでこの芯の表面を覆う。
【0064】
また、9本の絶縁導線41Aのうち、互いに隣り合う2本の絶縁導線41Aの各導体は、それぞれ接続コード70H、70Iを介して検出手段70Bと接続されている。この検出手段70Bは、接続コード70H、70Iに所定の周波数の電圧パルスを印加して上記各導体間の静電容量を測定し、この静電容量の変化を検出する。なお、接続コード70Hは、上記9本の絶縁導線41Aのうち、5本の絶縁導線41Aの各導体を等電位の状態で検出手段70Bと接続させるものであってもよい。この形態において、接続コード70Iは、上記9本の絶縁導線41Aのうち、接続コード70Hが接続されていない4本の絶縁導線41Aの各導体を等電位の状態で検出手段70Bと接続させる。
【0065】
ところで、平打ち組みひも41の伸縮は、9本の絶縁導線41Aをはすかけに交差させた組みひも組織により、これらの各糸の伸縮が抑えられた状態で実現される。この際、上記組みひも組織は、4本のゴム糸40Aの伸縮に応じて9本の絶縁導線41Aにおける各導体間の距離が変化するように変形されることで、この各導体間の静電容量をそれぞれ変化させる。このため、検出手段70Bが検出する静電容量の変化は、4本のゴム糸40Aの長手方向における伸縮のひずみを電気的に検出したものとなる。なお、ゴム糸40Aの伸縮のひずみを静電容量の変化として検出する構成には、電力の消費が抑えられた状態でゴム糸40Aの伸縮のひずみを検出することができるというメリットが存在する。
【0066】
〈第5の実施形態〉
続いて、第5の実施形態にかかるひずみ計測用センサー50の構成について、
図12ないし
図14を用いて説明する。第5の実施形態にかかるひずみ計測用センサー50は、第2の実施形態にかかるひずみ計測用センサー20を変形した実施形態である。したがって、上記第3の実施形態にかかるひずみ計測用センサー30の説明に登場した構成と共通する構成については、その構成に付した符号における十の位の数字のうち、「8」を「6」に、「2」を「5」にそれぞれ置き換えた符号を付すことで対応させ、その詳細な説明を省略する。
【0067】
第5の実施形態にかかるひずみ計測用センサー50は、
図12に示すように、産業用の垂直関節ロボット61における関節61Aの角度を計測するための関節角度計測装置60の一部である。このひずみ計測用センサー50は、垂直関節ロボット61に対してこの垂直関節ロボット61における関節61Aの屈曲方向の片側(
図12では右側)に張り渡された状態に取り付けられて、この関節61Aの屈曲に応じて伸び縮みされることで電気抵抗を変化させる。ここで、ひずみ計測用センサー50は、その両端部分が、垂直関節ロボット61に対して、点ファスナー、線ファスナー、面ファスナー、接着剤、粘着剤、および、鋲からなる群から選択される取り付け手段により取り付けられる。そして、関節角度計測装置60は、ひずみ計測用センサー50の電気抵抗を検出手段60Bにより電気的に検出し、この電気抵抗からひずみ計測用センサー50のゴム糸50A(
図13参照)の長手方向における伸縮のひずみおよび関節61Aの屈曲角度を求める。ここで、検出手段60Bが検出するひずみ計測用センサー50の電気抵抗は、本発明における「電気的パラメータ」に相当する。なお、検出手段60Bは、垂直関節ロボット61に対して巻き付いた状態に取り付けられる。
【0068】
ひずみ計測用センサー50は、
図13および
図14に示すように、1本の導電糸51Aを長尺の筒状に編み上げてなるリリヤン51の中に、長尺の線状に形成されたゴム糸50Aを挿通させた構成となっている。ここで、リリヤン51は本発明における「編組体」に、ゴム糸50Aは本発明における「起わい体」に、それぞれ相当する。なお、本実施形態において、導電糸51Aは銀めっきフィラメントである。また、本明細書において、「リリヤン」とは、JIS L0213に規定された「数本の編針で作った平編組織のひも」のことをいう。
【0069】
リリヤン51は、1本の導電糸51Aを所定の一方向(
図13では上下方向)にたるませた輪奈51Bを並べた列であるコース51Cを、このコース51Cの各輪奈51Bを絡めて上記一方向に多数段繋げることで、この一方向に長尺な線状に形成される。すなわち、リリヤン51は、本発明における「緯編み組織」に相当する。なお、本実施形態において、リリヤン51は裏メリヤス編みの組織を呈する。
【0070】
ところで、導電糸51Aは、1本でリリヤン51の全体をなすように編まれることで、互いに所定の繰り返しパターンで留められ、リリヤン51上の複数箇所において互いに接触されて導通されている。これにより、導電糸51Aは、この導電糸51Aが絡まることなく伸びている場合(図示せず)と比べて、リリヤン51全体としての電気抵抗を低くする。そして、リリヤン51における各輪奈51Bは、ゴム糸50Aの伸縮に応じた変形および変位により導電糸21A同士が接触する面積を増減させ、リリヤン51全体としての電気抵抗を変化させる。
【0071】
具体的には、輪奈51Bのそれぞれは、ゴム糸50Aの伸縮に応じて上記一方向に伸び縮みされることで、コース51Cが延びる方向(
図13で見て左右方向)に広がった第1の伸縮状態と、上記一方向(
図14でみて上下方向)に引き伸ばされた第2の伸縮状態と、に切り替えられる。ここで、上記第1の伸縮状態においては、
図13に示すように、各輪奈51Bは、そのコース51Cにおいて隣り合う輪奈51Bと互いに接触して導通されることで、リリヤン51全体としての電気抵抗を低減させる。また、上記第2の伸縮状態においては、
図14に示すように、各輪奈51Bは、そのコース51Cにおいて隣り合う輪奈51Bから離間されることで、上記第1の伸縮状態の場合よりもリリヤン51全体の電気抵抗を大きくする。これにより、ひずみ計測用センサー50は、ゴム糸50Aの伸縮に応じたリリヤン51の伸び縮みを、このリリヤン51の各輪奈51Bの変形にともなう電気抵抗の変化として検出することを実現させる。
【0072】
また、上記一方向に繋げられた輪奈51Bの並びであるウェール51Dにおいて、各輪奈51Bは、ゴム糸50Aの伸縮に応じて上記一方向に変位されることで、
図13に示す第2の変位状態と、
図14に示す第1の変位状態と、に切り替えられる。ここで、上記第2の変位状態においては、各輪奈51Bは、そのウェール51Dにおいて隣り合う輪奈51B、および、同じウェール51Dにおいてコース51Cが2段分だけ離れた輪奈51Bと互いに接触して導通されることで、リリヤン51全体としての電気抵抗を低減させる。また、上記第1の変位状態においては、各輪奈51Bは、そのウェール51Dにおいて隣り合う輪奈51Bのみと互いに接触して導通されることで、上記第2の変位状態の場合よりもリリヤン51全体の電気抵抗を大きくする。これにより、ひずみ計測用センサー50は、ゴム糸50Aの伸縮に応じたリリヤン51の伸び縮みを、このリリヤン51の各輪奈51Bの変位にともなう電気抵抗の変化として検出することを実現させる。
【0073】
本発明にかかるひずみ計測用センサーは、上述した第1から第5の各実施形態で説明した外観、構成に限定されず、その要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。例えば、以下のような各種の形態を実施することができる。
【0074】
(1)上述した第1および第2の実施形態のひずみ計測用センサー10、20(
図1参照)におけるゴム糸10A、20Aの伸縮のひずみを検出する検出手段80Bの構成は、上述したものに限定されない。すなわち、検出手段80Bは、ゴム糸20Aの伸縮のひずみにともなう袋ひも21の電気抵抗の変化を四端子測定法により求めるものであってもよい。また、検出手段80Bは、ひずみ計測用センサー10の静電容量の変化を自動平衡ブリッジ法により求めるものであってもよい。また、ひずみ計測用センサー10の静電容量は、このひずみ計測用センサー10を未知容量のコンデンサー89Aとして組み込んだチャージポンプ回路89(
図18参照)を検出手段として検出するものであってもよい。ここで、チャージポンプ回路89においては、まず、直流定電圧源89Bが未知容量のコンデンサー89Aに一定の電圧を印加して、この未知容量のコンデンサー89Aに電荷を蓄える。この未知容量のコンデンサー89Aに蓄えられた電荷は、配線切り替え装置(例えば4連スイッチ)89Cの切り替えにより既知容量のコンデンサー89Dに移し変えられる。そして、チャージポンプ回路89においては、電荷が移し変えられる既知容量のコンデンサー89Dに並列に接続された電圧計89Eの出力が、未知容量のコンデンサー89Aの静電容量に対応する出力として得られる。
【0075】
(2)上述した第1および第2の各実施形態にかかるひずみ計測用センサー10、20(
図1参照)における袋ひも11、21は、合計8本の糸を組んだ丸組の組みひも組織を呈するものに限定されない。すなわち、袋ひも11、21は、例えば16本など、4以上の任意の偶数本だけ糸を組んだ組みひも組織を呈するものであってもよい。また、袋ひも11、21における糸の組み方は、丸組であっても角組であってもよい。
【0076】
(3)上述した第3および第4の各実施形態にかかるひずみ計測用センサー30、40(
図9、
図16を参照)における平打ち組みひも31、41は、合計9本の糸を組んだ平組の組みひも組織を呈するものに限定されない。すなわち、上記平打ち組みひもは、3以上の任意の奇数本だけ糸を組んだ平組の組みひも組織を呈するものであってもよい。この場合において、上記平打ち組みひもに組み込まれるゴム糸の本数は、上記平組の組みひも組織において組まれる糸の本数に応じて適宜変更することができる。
【0077】
(4)上述した第5の実施形態にかかるひずみ計測用センサー50におけるリリヤン51(
図13参照)の構成は、上述したものに限定されない。すなわち、上記リリヤンは、例えばガーター編みの組織もしくはリブ編みの組織、または、2本の糸を使用した添え糸編みの組織など、適宜選択した緯編み組織を呈するひもとすることができる。ここで、ガーター編みの組織においては、1つのウェール上で隣り合う各輪奈が組織の厚さ方向に位置ずれされ、リブ編みの組織においては、1つのコース上で隣り合う各輪奈が組織の厚さ方向に位置ずれされる。このため、上記リリヤンをガーター編みの組織を呈するひもとした場合には、このひものゴム糸の伸縮に応じた伸び縮みを、その各輪奈の変形にともなう電気抵抗の変化のみから検出するひずみ計測用センサーを提供することができる。また、上記リリヤンをリブ編みの組織を呈するひもとした場合には、このひものゴム糸の伸縮に応じた伸び縮みを、その各輪奈の変位にともなう電気抵抗の変化のみから検出するひずみ計測用センサーを提供することができる。
【0078】
(5)本発明は、起わい体として天然ゴム糸を用いたひずみ計測用センサーに限定されない。すなわち、本発明にかかるひずみ計測用センサーにおいては、起わい体となるゴム糸を、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)からなる群より選択されるジエン系合成ゴムを原料としたゴム糸とすることができる。また、本発明にかかるひずみ計測用センサーにおいては、起わい体となるゴム糸を、ブチルゴム、イソブチエン・イソプレンゴム(IIR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR)、エチレン・プロピレンゴム(EPM)、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)、ウレタンゴム(U)、シリコーンゴム(Q)フッ素ゴム(FKM)からなる群より選択される非ジエン系合成ゴムを原料としたゴム糸とすることができる。また、本発明にかかるひずみ計測用センサーにおいては、起わい体となるゴム糸を、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、エステル系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、アミド系熱可塑性エラストマー、ポリ塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、フッ素系熱可塑性エラストマーからなる群より選択される熱可塑性エラストマーを原料としたゴム糸とすることができる。また、本発明にかかるひずみ計測用センサーにおいては、例えばナイロン製のニット用の縫い糸など、任意の伸縮糸あるいは弾性糸をゴム糸の代わりに起わい体として用いることができる。また、本発明にかかるひずみ計測用センサーは、伸び縮み可能なリリヤンあるいは組みひもを起わい体として機能させたひずみ計測用センサーであってもよい。
【0079】
(6)本発明において、導電糸の構成は、上述した各実施形態の構成に限定されない。すなわち、本発明にかかるひずみ計測用センサーにおいては、例えば炭素繊維もしくは金属線などの導電繊維を線状に形成して導電糸として機能させることができる。ここで、上記炭素繊維は、ポリアクリロニトリル繊維またはピッチ繊維などの有機繊維を炭化したものとすることができる。また、上記金属線をなす金属の種類は、銅、アルミニウム、鉄、ステンレス鋼、ニクロムなどのニッケル合金、金、銀、チタンからなる群から選択することができる。また、本発明にかかるひずみ計測用センサーにおいては、ポリエステル、ナイロン、レーヨンなどの絶縁性のプラスチックに、カーボン、グラファイト、カーボナノチューブなどの導電剤を添加して線状の導体に成形したものを導電糸として機能させることができる。また、本発明にかかるひずみ計測用センサーにおいては、上述した導電繊維と非導電繊維とを混紡した混紡繊維を線状に形成して導電糸として機能させることができる。ここで、上記混紡繊維からなる導電糸は、引き伸ばされると内部の各導電繊維が互いに近接して電気抵抗が小さくなるという性質を有する。このため、導電糸が上記混紡繊維からなるものである場合、導電糸を組みひもに組みこんでこの導電糸の伸縮を抑える構成は、導電糸の伸縮によるひずみ計測用センサーの特性の変化をより小さくするという作用効果を追加で発揮する。なお、上述した第1の実施形態のひずみ計測用センサー10(
図2参照)において、導電糸11A、11B、11C、11Dは絶縁導線であるが、この絶縁導線の構成は、例えば金属線にプラスチックまたはエナメルの皮膜を施した構成など、適宜選択した構成に変更することができる。また、上記絶縁導線の本数は、2本以上であれば何本であってもよい。
【0080】
(7)本発明にかかるひずみ計測用センサーは、着用型の呼吸計測装置あるいは肘関節角度計測装置の一部をなすものに限定されず、伸縮のひずみを電気的に検出する任意の装置に用いることができるものである。例えば、本発明にかかるひずみ計測用センサーは、計測対象者のズボンにおけるひざがしらの部分に取り付けられて、計測対象者の屈伸にともなう伸縮のひずみを検出するセンサーに用いることができる。また、本発明にかかるひずみ計測用センサーは、計測対象者の指にその腱に沿った状態で貼り付けられて、計測対象者の指の動きにともなう伸縮のひずみを検出するセンサーに用いることもできる。