(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記熱吸収部は平板状に形成されて、前記熱吸収部の平面部に前記光電変換素子を備え、前記光電変換素子は前記平面部と熱伝導可能に接続されている請求項2に記載の熱光発電装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような熱光発電装置は、熱供給部と、熱輻射光源の吸熱面とが対向して接触して配置されるため、熱輻射光源の面積を任意に増やすことができない。さらに、熱輻射光源の種類(例えば光透過性の材料の場合)によっては、熱供給部から光電変換部の光電変換素子で変換できない波長の輻射光が漏えいして、光電変換部での発電に寄与せず損失となる。そしてこの場合、光電変換部は光電変換部の光電変換素子で変換できない波長の輻射光により加熱され、発電効率をさらに低下させてしまう。
そこで、発電効率を低下させず、発電効率の高い熱光発電装置が望まれる。
【0006】
本発明は、かかる実状に鑑みて為されたものであって、その目的は、発電効率の高い熱光発電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明に係る熱光発電装置の特徴構成は、
熱を輻射光に変換する熱輻射光源を
平板部の平面に備えた平板状の輻射部と、熱源から供給された熱を前記輻射部に供給する熱供給部と、前記輻射光を受光して発電する光電変換素子を
平面部に備えた平板状の光電変換部と、を備えた熱光発電装置において、
前記輻射部は、前記熱供給部に、前記熱供給部から熱伝導可能に立設されて、
前記光電変換部は、前記熱輻射光源に前記光電変換素子を対向させた状態で前記輻射部に併設されている点にある。
【0008】
通常、熱供給部の表面も材質と温度に応じて輻射面として機能し、特定の波長分布には制御されない輻射光を発することになる。熱供給部からの制御されない輻射光は、熱供給部を輻射部が覆う場合にも、輻射部を透過する場合がある。例えば輻射部が赤外透明ガラスなどの赤外透明基板のような、赤外線を透過可能な材料を含む場合、熱供給部からの制御されない輻射光は、容易に輻射部を透過する。
そして、熱供給部がたとえば面光源として輻射光を発する場合、熱供給部の輻射面と並行して設けられる面には、熱供給部からの輻射光が直角に入射して、最大の密度で熱供給部からの輻射光が輻射されることになる。
しかし、上記構成によれば、光電変換部は、熱供給部に立設された輻射部と対向させた状態で併設されるため、熱供給部の表面と平行になる配置を回避することができ、熱供給部からの輻射光が直角に入射することは無い。特に、熱供給部に輻射部を垂直に立設して、光電変換部と、熱供給部からの輻射光が平行になる場合には、当該輻射光が光電変換部に入射することを回避できる。
したがって、光電変換部が受ける熱供給部からの輻射光の密度を低下することができ、光電変換素子の発熱を回避することができる。
【0009】
さらに、輻射部を熱供給部に熱伝導可能に立設することで、輻射部を熱供給部の表面に覆設する場合に比して、熱供給部の表面により多くの輻射部を設けることができるから、熱源から熱供給部に供給される熱の熱エネルギーのうち、より多くのエネルギーを輻射部にて制御された輻射光に変換し、相対的に熱供給部からの制御されない輻射光に変換されてしまうエネルギーを減少させることができる。
【0010】
したがって、上記構成によれば、光電変換素子の発熱を回避して、光電変換素子の変換効率の低下を回避し、さらに、熱エネルギーのより多くの割合を制御された輻射光に変換して光電変換部の光電変換素子に入射させることができるため、発電効率の高い熱光発電装置を提供することができる。
【0011】
上記目的を達成するための本発明に係る熱光発電装置
の特徴構成は、
熱を輻射光に変換する熱輻射光源を平板部の平面に備えた平板状の輻射部と、熱源から供給された熱を前記輻射部に供給する熱供給部と、前記輻射光を受光して発電する光電変換素子を平面部に備えた平板状の光電変換部と、を備えた熱光発電装置において、
前記輻射部は、前記熱供給部に、前記熱供給部から熱伝導可能に立設されて、
前記光電変換部は、前記熱輻射光源に前記光電変換素子を対向させた状態で前記輻射部に併設されており、
前記光電変換部は、前記熱供給部とは別の支持部に支持された状態で前記輻射部に併設され、さらに、前記光電変換素子を冷却する熱吸収部を備えた点にある。
【0012】
上記構成によれば、光電変換部は、熱供給部に立設された輻射部と対向させた状態で併設されるため、熱供給部の表面と平行になる配置を回避することができ、熱供給部からの輻射光が直角に入射することは無い。特に、熱供給部に輻射部を垂直に立設して、光電変換部と、熱供給部からの輻射光が平行になる場合には、当該輻射光が光電変換部に入射することを回避できる。
したがって、光電変換部が受ける熱供給部からの輻射光の密度を低下することができ、光電変換素子の発熱を回避することができる。
さらに、輻射部を熱供給部に熱伝導可能に立設することで、輻射部を熱供給部の表面に覆設する場合に比して、熱供給部の表面により多くの輻射部を設けることができるから、熱源から熱供給部に供給される熱の熱エネルギーのうち、より多くのエネルギーを輻射部にて制御された輻射光に変換し、相対的に熱供給部からの制御されない輻射光に変換されてしまうエネルギーを減少させることができる。
したがって、上記構成によれば、光電変換素子の発熱を回避して、光電変換素子の変換効率の低下を回避し、さらに、熱エネルギーのより多くの割合を制御された輻射光に変換して光電変換部の光電変換素子に入射させることができるため、発電効率の高い熱光発電装置を提供することができる。
【0013】
更に、上記構成によれば、熱供給部から熱伝導で、光電変換部が加熱されることは無い。そして、熱吸収部により光電変換素子を冷却するため、発電効率の低下を回避し、発電効率の高い熱光発電装置を提供することができる。
また、光電変換素子のバンドギャップエネルギーより短波長の光を光電変換素子が受光する場合は、光電変換素子はバンド内緩和で発熱する。
しかし、熱吸収部により光電変換素子を冷却するため、光電変換部を、発電効率の高い温度で維持した状態で、発電させることができる。したがって、発電効率の低下を回避し、発電効率の高い熱光発電装置を提供することができる。
【0014】
本発明に係る熱光発電装置の更なる特徴構成は、
前記熱吸収部は平板状に形成されて、前記熱吸収部の平面部に前記光電変換素子を備え、前記光電変換素子は前記平面部と熱伝導可能に接続されている点にある。
【0015】
上記構成によれば、平板状に形成された熱吸収部の平面部に熱光変換素子を覆設するなどして、面接続で効率よく熱伝導可能に接続することができる。したがって、熱吸収部により光電変換素子を確実に冷却するため、発電効率の低下を回避し、発電効率の高い熱光発電装置を提供することができる。
【0016】
本発明に係る熱光発電装置の更なる特徴構成は、
前記平面部の表面が鏡面状である点にある。
【0017】
上記構成によれば、光電変換素子を透過した光を熱吸収部の平面部で反射するため当該光が熱吸収部で熱に変換されてしまうことを回避できる。したがって発電効率の低下を回避し、発電効率の高い熱光発電装置を提供することができる。
【0018】
本発明に係る熱光発電装置の更なる特徴構成は、
前記輻射部は、赤外線を透過可能な材料で平板状に形成された赤外透明基板を備え、
前記赤外透明基板は、前記熱輻射光源として所定の波長が増幅された輻射光を輻射する熱光変換素子を平板部
の平面に備え、前記熱供給部に、前記熱供給部から熱伝導可能に接続されている点にある。
【0019】
いわゆる赤外透明基板は、赤外域の光の吸収をほとんど持たないものである。従って、赤外透明基板は赤外域の輻射をほとんど起こさない。
つまり、上記構成によれば、輻射光をほとんど発しない赤外透明基板によって、所定の波長が増幅された輻射光を輻射する熱光変換素子まで、制御されない輻射で熱のエネルギーをロスすることなく、熱供給部から熱を伝熱で供給し、所定の波長が増幅された輻射光を輻射として発することができる。
したがって、発電効率の高い熱光発電装置を提供することができる。
【0020】
本発明に係る熱光発電装置の更なる特徴構成は、
前記輻射部と、前記光電変換部とが、交互に併設されている点にある。
【0021】
上記構成によれば、少ないスペースに、高密度に輻射部と、光電変換部とを配置出来るため、発電効率の高い熱光発電装置をコンパクトに提供することができる。
【0022】
本発明に係る熱光発電装置の更なる特徴構成は、
前記熱供給部と、前記光電変換部との間に、前記供給部からの輻射光を遮蔽する遮蔽部を備えた点にある。
【0023】
上記構成によれば、熱供給部からの制御されない輻射光が光電変換部に供給されるのを回避できるため、光電変換部が加熱されず、発電効率の低下を回避できるから、発電効率の高い熱光発電装置を提供することができる。
【0024】
本発明に係る熱光発電装置の更なる特徴構成は、
前記遮蔽部は、断熱材であり、前記断熱材は、前記熱供給部に覆設される点にある。
【0025】
上記構成によれば、熱供給部が断熱材で被覆されて保温される。
したがって、熱供給部からの制御されない輻射光の輻射を抑制し、熱のエネルギーのロスを回避し、また光電変換部は加熱を回避し、発電効率の低下を回避できるから、発電効率の高い熱光発電装置を提供することができる。
【0026】
本発明に係る熱光発電装置の更なる特徴構成は、
前記遮蔽部は、光を反射する光反射体であり、前記光反射体は、前記熱供給部に向けて光を反射するよう設けられている点にある。
【0027】
上記構成によれば、熱供給部からの輻射は光反射体によって再び熱供給部に戻される。
したがって、熱供給部からの制御されない輻射光の輻射を抑制し、熱のエネルギーのロスを回避し、また光電変換部は加熱を回避し、発電効率の低下を回避できるから、発電効率の高い熱光発電装置を提供することができる。
【0028】
本発明に係る熱光発電装置を備えた熱光発電システムの特徴構成は、
熱光発電装置を、真空容器内に備える点にある。
【0029】
上記構成によれば、大気等の雰囲気ガスによる対流で熱供給部がされたり、光電変換部が加熱されたりすることを回避できる。
したがって、発電効率の高い熱光発電システムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1および
図2に基づいて、本発明の実施形態に係る熱光発電装置100および熱光発電システム1について説明する。
【0032】
本実施形態に係る熱光発電装置100は、熱を輻射光に変換する熱輻射光源として、熱光変換素子12を備えた平板状の輻射部10と、熱源から供給された熱を輻射部10に供給する熱供給部20と、輻射光を受光して発電する光電変換素子31を備えた平板状の光電変換部30と、を備えている。
【0033】
本例の場合、熱供給部20に供給される熱の熱源は、例えばガスエンジンの排熱や、太陽光を集光した熱源を用いることができる。もちろんその他の熱源も利用可能であり、特定の熱源に限られない。熱供給部20の外周部は、たとえば鉄や銅、ステンレスなどの熱伝導性の高い金属などで形成される。本例ではステンレスで形成されている。
【0034】
そして、熱光発電装置100は真空容器61を兼ねた冷却部40の真空の空間60に格納されている。
本例では空間60は、0.01mPaから1kPa程度の真空に保たれている。
【0035】
本例では、輻射部10は、熱供給部20に対し、
図1および
図2における熱供給部20の上下方向に、立設して設けられている。本例では、輻射部10は、熱供給部20の表面に対し、直角に設けられている。
また、光電変換部30は、対抗する熱供給部20とは設置方向を逆向きに、冷却部40に立設されている。本例では、光電変換部30は、冷却部40に対し、直角に設けられている。
図2は、
図1に示す熱光発電システム1の断面と直交する別の断面の模式的な断面図である。
図2は、輻射部10と熱供給部20と光電変換部30とおよび冷却部40の関係を模式的に示すための便宜として、輻射部10と光電変換部30とを同一断面上に描いている。
【0036】
したがって、輻射部10と光電変換部30とは、平行に併設されている。また、光電変換部30は、熱供給部20の表面に対して直交する向きに設けられている。
よって、熱供給部20の表面からの制御されない輻射光は、およそ大部分が光電変換部30に対して平行に発せられることになり、光電変換部30が熱供給部20の表面からの制御されない輻射光で加熱されることを回避できる。
【0037】
また、輻射部10と光電変換部30とは、所定の間隔を隔てて設けられている。輻射部10と光電変換部30と、が物理的に接触することは無い。したがって、輻射部10と光電変換部30と、の間は熱的に隔離されている。
【0038】
また、輻射部10と冷却部40とは、所定の間隔を隔てて設けられている。輻射部10と冷却部40と、が物理的に接触することは無い。したがって、輻射部10と冷却部40と、の間は熱的に隔離されている。
【0039】
また、光電変換部30と熱供給部20とは、所定の間隔を隔てて設けられている。光電変換部30と熱供給部20と、が物理的に接触することは無い。したがって、光電変換部30と熱供給部20と、の間は熱的に隔離されている。
【0040】
本例では
図1および
図2に示すように、断面が方形の空間60に、方形の平板状の輻射部10や、輻射部10に対応する方形で平板状の光電変換部30の場合を例示しているが、これら例示は説明上の便宜であって、これら形状に限定されるものでは無い。
以下、熱光発電装置100および熱光発電システム1について、さらに詳述する。
【0041】
輻射部10は、熱供給部20からの熱を伝熱して熱光変換素子12へ供給するための赤外透明基板11を備えている。つまり、輻射部10は、赤外透明基板11と、熱光変換素子12とを含む。
【0042】
輻射部10は、熱源からの高さが1〜10cmで形成するとよく、本例では1から10cm角程度の平板状に形成することができる。輻射部10が小さすぎる場合は、経済的に不利益である。輻射部10が大き過ぎる場合は、熱供給部20からの熱の伝熱が十分でなく、やはり経済的に不利益である。
【0043】
赤外透明基板11は、赤外線を透過可能な材料である。本例では、赤外透明基板11は、平板状に形成されている。
赤外透明基板11としてはたとえば、酸化マグネシウム、酸化ケイ素、シリコン炭化ケイ素(SiC)、ダイヤモンド、サファイア、アルミニウムナイトライド、ガリウムナイトライド、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム、ジンクセレン、フッ化バリウム、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化チタン、酸化イットリアなどを用いることができる。
本例では、赤外透明基板11としてサファイアを用いている。
【0044】
この赤外透明基板11は、熱供給部20に立設されている。赤外透明基板11と、熱供給部20とは、熱的に密接して、熱伝導可能に接続されている。
そして、赤外透明基板11は、熱光変換素子12を支持する支持部として機能している。赤外透明基板11と、熱光変換素子12とは、熱的に密接して、熱伝導可能に接続されている。
本例では、赤外透明基板11は、熱供給部20の表面に設けた細溝に赤外透明基板11の一辺を圧入して固定されている。
したがって、熱供給部20と、熱光変換素子12とは、赤外透明基板11を介して熱伝導可能に形成されている。
【0045】
赤外透明基板11は、本例では、熱光変換素子12として所定の波長が増幅された輻射光を輻射する熱光変換素子12を平板部に備えている。
熱光変換素子12として用いるに好適な材料や部材としては、タンタルやタングステンなどの金属やシリコン炭化ケイ素などの半導体、その他の絶縁体、金属もしくは半導体もしくは絶縁体に周期構造等の加工を施し輻射を制御した部材を用いることができる。半導体もしくは絶縁体に周期構造等の加工を施し輻射を制御した部材としては、後述する、フォトニック結晶が特に好適である。
【0046】
本例の熱光変換素子12は、所定の光学構造を備えたいわゆるフォトニック結晶を用いることができる。そして熱光変換素子12は、フォトニック結晶として、供給された熱をその光学構造に対応する波長を含む輻射光に変換する機能を有する。
熱光変換素子12は、たとえば半導体からなる屈折部13と、屈折部13の半導体よりも光屈折率の小さな光学基板14とを含んで備える。本例の熱光変換素子12は、赤外透明基板11から熱エネルギーを伝熱で受け取る。
【0047】
この熱光変換素子12は、平板状に構成された光学基板14の、輻射光を放出させようとする方向の一方の面に、屈折部13を正方格子状に配置した構成を含む。
なお、屈折部13の配置は、正方格子状に限られない。
したがって、この屈折部13を備える面が、主として輻射光を放出させる向きになり、他方側の面は、屈折部13を備える面よりもやや弱い強度の輻射光を放出させる面になる。つまり、光学基板14の屈折部13を備える面側にやや強度が偏って、光学基板14の両面から輻射光が輻射される。
【0048】
本例の場合、赤外透明基板11は、光学基板14の両面から輻射される輻射光を透過する。したがって、輻射部10の両面から、両面から輻射光が発せられる。
なお、屈折部13の配置は、正方格子状に限られない。例えば三角千鳥格子を含む、その他の配置、配列をも含み得る。
また、熱光変換素子12を構成する屈折部13および光学基板14は、二次元的な配置・配列には限定されず、三次元的な配置・配列をも含み得る。
【0049】
屈折部13は、半導体で形成される。半導体には、真性半導体が含まれる。
本例では屈折部13は、Siの結晶で形成されている。
屈折部13として用いることの出来る、半導体としては、Si結晶のほかに、SiCを好適に用いることもできる。なお、SiやSiCは真性半導体である。
【0050】
屈折部13は、本例では、光学基板14上に突起した状態で、円柱状に形成されている。本例では、熱光変換素子12は、一の光学基板14に屈折部13を備えた、一層でなる場合を示している。
一例を挙げると、屈折部13の直径dはおよそ200nmである。また、屈折部13の高さhはおよそ500nmである。屈折部13は正方格子状に配列され、正方格子の周期長a(隣り合う屈折部13の中心間の距離)はおよそ600nmである。
【0051】
光学基板14は、可視光から遠赤外線に含まれる波長の光を透過可能な基板である。言い換えると、可視光から遠赤外線領域において吸収率を持たない基板である。
光学基板14は、可視光から遠赤外線に含まれる波長の光を透過可能な材料で形成されている。
【0052】
本例では、この光学基板14は、本例では、赤外透明基板である。具体的にはサファイアを用いている。また、光学基板14は、本例では赤外透明基板11と一体に構成されている。
光学基板14に用いる可視光から遠赤外線に含まれる波長の光を透過可能な材料としては、たとえば、酸化マグネシウム、酸化ケイ素、SiC、ダイヤモンド、サファイア、アルミニウムナイトライド、ガリウムナイトライド、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム、ジンクセレン、フッ化バリウム、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化チタン、酸化イットリアなども好適に用いることができる。
【0053】
光電変換部30は、冷却部40に支持された状態で輻射部10に併設されている。
そして、光電変換部30は、熱光変換素子12が輻射する輻射光を受光可能に設けられていればよい。例えば平面で構成した熱光変換素子12の輻射面に対向させた状態に光電変換部30の光電変換素子31を設ければよい。
本例では、光電変換部30は、冷却部40に熱伝導可能な状態で接続されており、冷却部40に立設して設けられ、輻射部10に平行に、併設されている。
【0054】
光電変換部30は、受光した光を電気へ変換する光電変換素子31と、光電変換素子を冷却する熱吸収部32とを含む部材である。
本例では、平板状に形成された熱吸収部32の両平面部(両面)に、光電変換素子31をそれぞれ備えている。
つまり、光電変換部30はその両面で輻射部10からの輻射光を受光して発電することができる。
【0055】
輻射部10と、光電変換部30との関係について補足する。
本例では、輻射部10と、光電変換部30とは、熱供給部20の長手方向に交互に繰りかえし、併設されている。
従って、輻射部10の両面から発せられる輻射光を、輻射部10の両面に対応して設けられる光電変換素子31がそれぞれ受光して発電する。
また、輻射部10と、光電変換部30とは、交互に繰りかえすように併設することで、熱供給部20の表面積に対して、より広い面積の輻射部10、すなわち熱光変換素子12とを設けて、熱エネルギーを効率よく輻射光に変換することができる。
【0056】
熱吸収部32は、冷却部40と、光電変換素子31とを熱的に接続する部材である。
熱吸収部32は、光電変換素子31から熱を受け取り、冷却部40にその熱を受け渡す機能を有する部材である。
さらに、本例では、熱吸収部32は光電変換素子31を支持する支持部として機能している。
【0057】
熱吸収部32は、たとえば鉄や銅、アルミ、ジュラルミン、ステンレスなどの熱伝導性の高い金属などで形成される。本例ではステンレスの平板で形成されており、このステンレスの平板は、光電変換素子31と冷却部40とを熱的に接続する部材としても機能し、同時に、光電変換素子31を支持する支持部として機能している。
【0058】
熱吸収部32の、光電変換素子31と冷却部40とを熱的に接続する機能は、冷却水や、ヒートパイプなどの利用によっても実現できる。
したがって、熱吸収部32の様態は、本例の様態に限定されず、複数の構成を組み合わせることができ、少なくとも公知の構成を利用しうる。
【0059】
熱吸収部32は、冷却部40に熱伝導可能な状態で接続されており、冷却部40に立設して設けられ、輻射部10に平行に、併設されている。本例では、熱吸収部32は、冷却部40の表面に熱吸収部32の一辺を溶接して固定されている。
熱吸収部32は、平板状に形成されて、その平面部に光電変換素子31を備えている。したがって、光電変換素子31は、熱光変換素子12と平行に、併設されている。
また、熱吸収部32は、光電変換素子31と熱伝導可能に密接して備えている。本例では、光電変換素子31は熱吸収部32に覆設されている。
したがって、冷却部40と、光電変換素子31とは、熱吸収部32を介して熱伝導可能に形成されている。
【0060】
光電変換素子31は、光を電気に変換する部材である。
光電変換素子31としては、例えば一般的な太陽電池を用いることができる。たとえば、シリコン太陽電池、ガリウムアンチモン太陽電池、ゲルマニウム太陽電池、インジウムガリウムヒ素系太陽電池、ガリウムヒ素系太陽電池を用いることができる。もちろん光電変換素子31の具体的な様態は、これら例示に限定されるわけではない。
【0061】
これら太陽電池は、受光して発電する場合に、バンド内緩和で発熱する。したがって、熱吸収部32を介して光電変換素子31として用いる太陽電池を冷却することで、太陽電池が高温になって発電効率が低下することを回避できる。
また、これら太陽電池は、長波長の光を受光すると、その光を吸収して発熱する。したがって、熱吸収部32を介して光電変換素子31として用いる太陽電池を冷却することで、太陽電池が高温になって発電効率が低下すること回避できる。
【0062】
光電変換素子31の発電に適する波長と、熱光変換素子12の輻射の発光スペクトルとは、互いに主要部分が一致して適する組合せにする必要がある。
たとえば熱光変換素子12としてシリコン太陽電池を用いる場合、光電変換素子31の発光スペクトルの波長のピークは1120nm未満とすることが好ましい。これは、シリコン太陽電池は一般に、波長が1120nmを超える光を光電変換することができないためである。その他の太陽電池セルを用いる場合にも、光電変換素子31の発光スペクトルの波長のピークは同様に定めることができる。
【0063】
熱光変換素子12と光電変換素子31との関係について補足する。
熱光変換素子12として用いるに好適な材料として上記に例示列挙した部材は、いわゆる黒体に比べ、輻射光の所定の波長が増幅された分布がシャープな波長スペクトルを有するため、所定の光電変換素子31と組み合わせることで、高い発電効率を得ることができる。
ここで、発電効率とは、入力された熱エネルギーのうち、電気に変換されたエネルギーの割合を言う。
【0064】
図4に、1000℃の場合の黒体(材質はSiC)の輻射の波長スペクトル(
図4中のラインBB)と、1000℃の場合の本例で例示したフォトニック結晶を用いた熱光変換素子12の場合の輻射の波長スペクトル(
図4中のラインEM)とを例示する。
図4中、「SP」は、分光放射輝度を示す。
本例で例示したフォトニック結晶を用いた熱光変換素子12の場合の輻射の波長スペクトルは極めてシャープで、熱輻射光源として特に好ましい特徴を持つことがわかる。
【0065】
図5に、1000℃の場合の本例で例示したフォトニック結晶を用いた熱光変換素子12の輻射光を、シリコン太陽電池で受光して発電した場合の発電効率を示す。
図5中、「Ef」は、効率を示す。
この例では、シリコン太陽電池に適した約0.8vの解放電圧の場合に、68%もの高い変換効率を発揮することが分かる。
【0066】
冷却部40は、光電変換部30から供給される熱を受け取り、熱を蓄積せず、系外へ放出する部材である。つまり光電変換部30を冷却する部材である。
冷却部40は、公知の冷却方法で冷却するなどしてその機能を発揮させることができる。本例では、冷却部40は、ステンレス製の外壁(容器)中に、冷却水が通流する態様で構成されている。冷却部40は、この例示の態様に限定されず、その他同様の機能を有する方式や態様を含み得る。
【0067】
以下、熱光発電装置100および熱光発電システム1のさらに好ましい様態を説明する。
熱供給部20と、光電変換部30との間に、熱供給部20からの輻射光を遮蔽する遮蔽部50を備えるとよい。
本例では、遮蔽部50として、光を反射する光反射体51を、光電変換部30の熱供給部20に対向させた側の端部に設け、光反射体51で、熱供給部20に向けて熱供給部20が発する制御されない輻射光を反射して、再度、熱供給部20で熱に変換するよう設けられている
【0068】
光反射体51は、光を反射するものであればよい。特に好適なものとしては、反射面の材質が金、銀、アルミニウム製であって、表面にその材質が露出したものであるとよい。
本例では、ステンレス製の平板を300番でバフ研磨した後、さらに電解研磨して、金蒸着した光反射体51を用いている。
【0069】
図1の熱光発電装置100および熱光発電システム1の図示には、上述の熱源からの熱供給に用いる供給路や、冷却に用いる冷却水、発電した電力を取り出す電気配線などのユーティリティーは、その記載を省略しているが、これらは公知の部材・方法等を用いることができる。
【0070】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、熱光発電装置100は真空容器61を兼ねた冷却部40の真空の空間60に格納する例を説明した。
しかし、
図6に示すように、冷却部40とは別に、真空容器61を設けて、その空間60内に熱光発電装置100を設けて、熱光発電システム1を構成してもよい。
【0071】
(2)上記実施形態では、輻射部10は、熱供給部20に対し、
図1における熱供給部20の上下方向に、立設して設け、光電変換部30は、対向する熱供給部20とは逆向きに、冷却部40に立設する例を示した。
しかし、
図6に示すように、輻射部10は、熱供給部20に対し一方向にのみ立設する様態でもよい。
【0072】
(3)上記実施形態では、輻射部10と、光電変換部30とは、熱供給部20の長手方向に交互に繰りかえし、併設されている例を示した。
しかし、輻射部10と、光電変換部30とは、熱供給部20の周方向に交互に繰りかえし、併設してもよい。具体的にはたとえば、熱供給部20が円筒状に形成され、熱供給部20の円筒状の表面に輻射部10を立設し、その輻射部10に光電変換部30を対向して併設してもよい。
【0073】
(4)上記実施形態では、遮蔽部50として、光を反射する光反射体51を、光電変換部30の熱供給部20に対向させた側の端部に設け、光反射体51で、熱供給部20に向けて熱供給部20が発する制御されない輻射光を反射して、再度、熱供給部20で熱に変換するよう設ける場合を例示した。
しかし、
図6に示すように、遮蔽部50として、断熱材52を用い、断熱材52を、熱供給部20に覆設して、熱供給部20からの制御されない輻射光を抑制するように構成してもよい。
【0074】
(5)上記実施形態において、各部材の表面を鏡面状の光反射体にすることができる。
たとえば、平板状に形成された熱吸収部32の平面部を、鏡面状の光反射体とすることで、光電変換素子31を透過した輻射光は鏡面状の光反射体で反射して、再度、光電変換素子31や熱光変換素子12や、熱供給部20に戻されるため、エネルギーの効率が向上する。
同様に、熱供給部20や、冷却部40の表面をそれぞれ鏡面状の光反射体にすると好適である。この場合も、上記同様に、鏡面状の光反射体で輻射光が反射して、再度、光電変換素子31や熱光変換素子12や、熱供給部20に戻されるため、エネルギーの効率が向上する。
【0075】
なお、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。