【実施例】
【0109】
以下に実施例を挙げて、本発明の内容を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0110】
製造例1:(TC)式
チタン原料として平均粒径45μmの粉末を用いた。カーボン原料として1次粒径が0.1μm以下のカーボン粉末を造粒して2次粒径が1mm程度の顆粒にしたものを用いた。チタン原料とカーボン原料を重量比0.8:0.2で秤量後、十分に攪拌混合したものを出発原料とした。これを直径20mm、高さ20mmの円柱状にプレス成形を行い、相対密度50%の圧粉体を得た。この圧粉体をアルゴン雰囲気中で上面一部にレーザー着火を行ったところ、約4秒で燃焼波が連鎖的に進行して燃焼合成した。自然放冷後に取り出した生成物を粉末X線回折装置で結晶層の同定を行ったところ、主成分は炭化チタン(TiC
1-X)になっていることが分かった。このようにして(TC)式で示される炭化チタンの多孔質セラミック成形体が製造できた。
【0111】
製造例2:(TOC)式
製造例1と同様の圧粉体を空気中で上面一部に放電着火を行ったところ、約3秒で燃焼波が連鎖的に進行して燃焼合成した。自然放冷後に取り出した生成物を粉末X線回折装置で結晶層の同定を行ったところ、内部層は炭化チタンからなり、表面層は炭化チタンが空気中の酸素と反応して熱力学的に安定な酸化チタン(TiO
2-X)からなっていることが分かった。このようにして(TOC)式で示される酸化チタンを含む炭化チタンの多孔質セラミック成形体が製造できた。なお、全体に占める酸化チタンの割合は10重量%以下であった。
【0112】
製造例3:(TCM)式
チタン原料として平均粒径45μmの粉末を用いた。カーボン原料として1次粒径が0.1μm以下のカーボン粉末を造粒して2次粒径が1mm程度の顆粒にしたものを用いた。金属原料として平均粒径45μmの銀粉末を用いた。チタン原料とカーボン原料と金属原料を重量比0.66:0.17:0.17で秤量後、十分に攪拌混合したものを出発原料とした。これを直径20mm、高さ20mmの円柱状にプレス成形を行い、相対密度45%の圧粉体を得た。この圧粉体をアルゴン雰囲気中で表面部にレーザー着火を行ったところ、約4秒で燃焼波が連鎖的に進行して燃焼合成した。自然放冷後に取り出した生成物を粉末X線回折装置で結晶層の同定を行ったところ、主成分は炭化チタン(TiC
1-X)と銀(Ag)からなっていることが分かった。蛍光X線回折で元素分布を調べた結果、炭化チタンの周囲に銀が均一に微細分散しており、塊状に溶融凝固している部分はなかった。このようにして(TCM)式で示される銀を含む炭化チタンの多孔質セラミック成形体が製造できた。
【0113】
製造例4:(TOCM)式
製造例3と同様の圧粉体を空気中で放電着火を行ったところ、約3秒で燃焼波が連鎖的に進行して燃焼合成した。自然放冷後に取り出した生成物を粉末X線回折装置で結晶層の同定を行ったところ、内部層は炭化チタンと銀からなり、表面層は酸化チタン(TiO
2-X)と銀からなっていることが分かった。このようにして(TOCM)式で示される酸化チタンを含む銀が微細分散した炭化チタンの多孔質セラミック成形体が製造できた。
【0114】
製造例5:(TB)式
チタン原料として平均粒径45μmの粉末を用いた。ボロン原料として、粒径10μm以下の粉末を用いた。チタン原料とボロン原料を重量比0.75:0.25で秤量後、十分に攪拌混合したものを出発原料とした。これを直径16mm、高さ30mmの円柱状にプレス成形を行い、相対密度50%の圧粉体を得た。この圧粉体をアルゴン雰囲気中で上面一部にレーザー着火を行ったところ、約1秒で燃焼波が連鎖的に進行して燃焼合成した。自然放冷後に取り出した生成物を粉末X線回折装置で結晶層の同定を行ったところ、主成分は2ホウ化チタン(TiB
2)とホウ化チタン(TiB)との混合層になっていることが分かった。このようにして(TB)式で示されるホウ化チタンの多孔質セラミック成形体が製造できた。
【0115】
製造例6:(TOB)式
製造例5と同様の圧粉体を空気中で上面一部に放電着火を行ったところ、約1秒以下で燃焼波が連鎖的に進行して燃焼合成した。自然放冷後に取り出した生成物を粉末X線回折装置で結晶層の同定を行ったところ、内部層はホウ化チタンからなり、表面層はホウ化チタンが空気中の酸素と反応して熱力学的に安定な酸化チタン(TiO
2-X)からなっていることが分かった。このようにして(TOB)式で示される酸化チタンを含むホウ化チタンの多孔質セラミック成形体が製造できた。なお、全体に占める酸化チタンの割合は10重量%以下であった。
【0116】
製造例7:(TBM)式
チタン原料として平均粒径45μmの粉末を用いた。ボロン原料として、粒径10μm以下の粉末を用いた。金属原料として平均粒径45μmの金粉末を用いた。チタン原料とボロン原料と金属原料を重量比6.75:2.25:1で秤量後、十分に攪拌混合したものを出発原料とした。これを直径16mm、高さ30mmの円柱状にプレス成形を行い、相対密度50%の圧粉体を得た。この圧粉体をアルゴン雰囲気中で上面一部にレーザー着火を行ったところ、約1秒で燃焼波が連鎖的に進行して燃焼合成した。自然放冷後に取り出した生成物を粉末X線回折装置で結晶層の同定を行ったところ、主成分は2ホウ化チタン(TiB
2)とホウ化チタン(TiB)と金(Au)からなっていることが分かった。蛍光X線回折で元素分布を調べた結果、ホウ化チタンの周囲に金が均一に微細分散しており、塊状に溶融凝固している部分はなかった。このようにして(TBM)式で示される金を含むホウ化チタンの多孔質セラミック成形体が製造できた。
【0117】
製造例8:(TOBM)式
製造例7と同様の圧粉体を空気中で放電着火を行ったところ、約1秒で燃焼波が連鎖的に進行して燃焼合成した。自然放冷後に取り出した生成物を粉末X線回折装置で結晶層の同定を行ったところ、内部層は2ホウ化チタン(TiB
2)とホウ化チタン(TiB)と金(Au)からなり、表面層は酸化チタン(TiO
2-X)と金からなっていることが分かった。このようにして(TOBM)式で示される酸化チタンを含む金が微細分散したホウ化チタンの多孔質セラミック成形体が製造できた。
【0118】
製造例9:(TN)式
チタン原料として平均粒径45μmの粉末を用いた。これを直径10mm、高さ20mmの円柱状にプレス成形を行い、相対密度40%の圧粉体を得た。この圧粉体を1.5気圧の窒素雰囲気中で上面一部にヒータ強熱着火を行ったところ、約2秒で燃焼波が連鎖的に進行して燃焼合成した。この時点での窒化率は10%以下と低く、残留チタンが認められる。そこで冷却後に取り出し、45μm以下程度まで粉砕して、再度、同形状にプレス成形を行い、相対密度30%の圧粉体を得た。この圧粉体を60気圧の高圧窒素雰囲気中で上面一部にヒータ強熱着火を行ったところ、約4秒で燃焼波が連鎖的に進行して燃焼合成した。自然放冷後に取り出した生成物を粉末X線回折装置で結晶層の同定を行ったところ、主成分は窒化チタン(TiN
0.9)になっていることが分かった。このようにして(TN)式で示される炭化チタンの多孔質セラミック成形体が製造できた。
【0119】
製造例10:(TON)式
チタン原料として平均粒径45μmの粉末を用いた。これを直径10mm、高さ20mmの円柱状にプレス成形を行い、相対密度40%の圧粉体を得た。この圧粉体を1.5気圧の窒素雰囲気中で上面一部にヒータ強熱着火を行ったところ、約2秒で燃焼波が連鎖的に進行して燃焼合成した。この時点での窒化率は10%以下と低く、残留チタンが認められた。そこで冷却後に取り出し、45μm以下程度まで粉砕して、再度、同形状にプレス成形を行い、相対密度30%の圧粉体を得た。この圧粉体を30気圧の高圧空気雰囲気中で上面一部にヒータ強熱着火を行ったところ、約4秒で燃焼波が連鎖的に進行して燃焼合成した。自然放冷後に取り出した生成物を粉末X線回折装置で結晶層の同定を行ったところ、内部層は窒化チタンからなり、表面層は窒化チタンが空気中の酸素と反応して熱力学的に安定な酸化チタン(TiO
2-X)からなっていることが分かった。このようにして(TON)式で示される酸化チタンを含む窒化チタンの多孔質セラミック成形体が製造できた。なお、全体に占める酸化チタンの割合は20重量%以下であった。
【0120】
製造例11:(TNM)式
チタン原料として平均粒径45μmの粉末を用いた。金属原料として粒径45μm以下の白金粉末を用いた。チタン原料と金属原料を重量比0.9:0.1で秤量後、十分に攪拌混合したものを出発原料とした。この圧粉体を1.5気圧の窒素雰囲気中で上面一部にヒータ強熱着火を行ったところ、約2秒で燃焼波が連鎖的に進行して燃焼合成した。この時点での窒化率は10%以下と低く、残留チタンが認められた。そこで冷却後に取り出し、45μm以下程度まで粉砕して、再度、同形状にプレス成形を行い、相対密度30%の圧粉体を得た。この圧粉体を60気圧の高圧窒素雰囲気中で上面一部にヒータ強熱着火を行ったところ、約4秒で燃焼波が連鎖的に進行して燃焼合成した。自然放冷後に取り出した生成物を粉末X線回折装置で結晶層の同定を行ったところ、主成分は窒化チタン(TiN
0.9)と白金(Pt)からなっていることが分かった。蛍光X線回折で元素分布を調べた結果、窒化チタンの周囲に白金が均一に微細分散しており、塊状に溶融凝固している部分はなかった。このようにして(TNM)式で示される白金を微細分散した窒化チタンの多孔質セラミック成形体が製造できた。
【0121】
製造例12:(TONM)式
チタン原料として平均粒径45μmの粉末を用いた。金属原料として粒径45μm以下の白金粉末を用いた。チタン原料と金属原料を重量比0.9:0.1で秤量後、十分に攪拌混合したものを出発原料とした。この圧粉体を1.5気圧の窒素雰囲気中で上面一部にヒータ強熱着火を行ったところ、約2秒で燃焼波が連鎖的に進行して燃焼合成した。この時点での窒化率は10%以下と低く、残留チタンが認められた。そこで冷却後に取り出し、45μm以下程度まで粉砕して、再度、同形状にプレス成形を行い、相対密度30%の圧粉体を得た。この圧粉体を30気圧の高圧空気雰囲気中で上面一部にヒータ強熱着火を行ったところ、約4秒で燃焼波が連鎖的に進行して燃焼合成した。自然放冷後に取り出した生成物を粉末X線回折装置で結晶層の同定を行ったところ、内部層は窒化チタンと白金からなり、表面層は窒化チタンが空気中の酸素と反応して熱力学的に安定な酸化チタン(TiO
2-X)と白金からなっていることが分かった。このようにして(TONM)式で示される酸化チタンを含む白金が微細分散した窒化チタンの多孔質セラミック成形体が製造できた。なお、全体に占める酸化チタンの割合は20重量%以下であった。
【0122】
製造例13:(TS)式
チタン原料として平均粒径100μmの粉末を用いた。シリコン原料として粒径1μm以下の粉末を用いた。チタン原料とシリコン原料を重量比0.74:0.26で秤量後、十分に攪拌混合したものを出発原料とした。これを一辺15mm、長さ100mmの棒状にプレス成形を行い、相対密度50%の圧粉体を得た。この圧粉体をアルゴン雰囲気中で上面一部にレーザー着火を行ったところ、約6秒で燃焼波が連鎖的に進行して燃焼合成した。自然放冷後に取り出した生成物を粉末X線回折装置で結晶層の同定を行ったところ、主成分はケイ化チタン(Ti
5Si
3)になっていることが分かった。このようにして(TS)式で示されるケイ化チタンの多孔質セラミック成形体が製造できた。
【0123】
製造例14:(TOS)式
製造例13と同様の圧粉体を空気中で放電着火を行ったところ、約4秒で燃焼波が連鎖的に進行して燃焼合成した。自然放冷後に取り出した生成物を粉末X線回折装置で結晶層の同定を行ったところ、内部層はケイ化チタンからなり、表面層は酸化チタン(TiO
2-X)からなっていることが分かった。このようにして(TOS)式で示される酸化チタンを含むケイ化チタンの多孔質セラミック成形体が製造できた。なお、全体に占める酸化チタンの割合は10重量%以下であった。
【0124】
製造例15:(TSM)式
チタン原料として平均粒径100μmの粉末を用いた。シリコン原料として粒径1μm以下の粉末を用いた。金属原料として平均粒径45μmの鉄粉末を用いた。チタン原料とカーボン原料と金属原料を重量比0.67:0.23:0.1で秤量後、十分に攪拌混合したものを出発原料とした。これを一辺15mm、長さ100mmの棒状にプレス成形を行い、相対密度50%の圧粉体を得た。この圧粉体をアルゴン雰囲気中で上面一部にレーザー着火を行ったところ、約6秒で燃焼波が連鎖的に進行して燃焼合成した。自然放冷後に取り出した生成物を粉末X線回折装置で結晶層の同定を行ったところ、主成分はケイ化チタン(Ti
5Si
3)と鉄(Fe)からなっていることが分かった。蛍光X線回折で元素分布を調べた結果、ケイ化チタンの周囲に鉄が均一に微細分散しており、塊状に溶融凝固している部分はなかった。このようにして(TSM)式で示される鉄を含むケイ化チタンの多孔質セラミック成形体が製造できた。
【0125】
製造例16:(TOSM)式
製造例15と同様の圧粉体を空気中で放電着火を行ったところ、約5秒で燃焼波が連鎖的に進行して燃焼合成した。自然放冷後に取り出した生成物を粉末X線回折装置で結晶層の同定を行ったところ、内部層はケイ化チタンと鉄からなり、表面層は酸化チタン(TiO
2-X)と鉄からなっていることが分かった。このようにして(TOSM)式で示される酸化チタンを含む鉄が微細分散したケイ化チタンの多孔質セラミック成形体が製造できた。なお、全体に占める酸化チタンの割合は10重量%以下であった。
【0126】
製造例17:(BN)式
チタン原料として平均粒径45μmの粉末を用いた。窒化ホウ素原料として、平均粒径数μmの粉末を用いた。チタン原料と窒化ホウ素原料を重量比0.74:0.26で秤量後、十分に攪拌混合したものを出発原料とした。これを直径40mm、高さ40mmの円柱状にプレス成形を行い、相対密度50%の圧粉体を得た。この圧粉体をアルゴン雰囲気中で上面一部にレーザー着火を行ったところ、約8秒で燃焼波が連鎖的に進行して燃焼合成した。自然放冷後に取り出した生成物を粉末X線回折装置で結晶層の同定を行ったところ、主成分は2ホウ化チタン(TiB
2)と窒化チタン(TiN)との混合層になっていることが分かった。このようにして(BN)式で示されるホウ化チタンと窒化チタンからなる多孔質セラミック成形体が製造できた。
【0127】
製造例18:(OBN)式
製造例17と同様の圧粉体を空気中で上面一部に放電着火を行ったところ、約7秒で燃焼波が連鎖的に進行して燃焼合成した。自然放冷後に取り出した生成物を粉末X線回折装置で結晶層の同定を行ったところ、内部層はホウ化チタンと窒化チタンからなり、表面層はホウ化チタン及び窒化チタンが空気中の酸素と反応して熱力学的に安定な酸化チタン(TiO
2-X)からなっていることが分かった。このようにして(OBN)式で示される酸化チタンを含むホウ化チタンと窒化チタンからなる多孔質セラミック成形体が製造できた。なお、全体に占める酸化チタンの割合は10重量%以下であった。
【0128】
製造例19:(BNM)式
チタン原料として平均粒径45μmの粉末を用いた。窒化ホウ素原料として、平均粒径数μmの粉末を用いた。金属原料として平均粒径10μmの銅粉末を用いた。チタン原料と窒化ホウ素原料と金属原料を重量比0.59:0.21:0.2で秤量後、十分に攪拌混合したものを出発原料とした。これを直径40mm、高さ40mmの円柱状にプレス成形を行い、相対密度50%の圧粉体を得た。この圧粉体をアルゴン雰囲気中で上面一部にレーザー着火を行ったところ、約8秒で燃焼波が連鎖的に進行して燃焼合成した。自然放冷後に取り出した生成物を粉末X線回折装置で結晶層の同定を行ったところ、主成分は2ホウ化チタン(TiB
2)と窒化チタン(TiN)と銅(Cu)との混合層からなっていることが分かった。蛍光X線回折で元素分布を調べた結果、ホウ化チタン及び窒化チタンの周囲に銅が均一に微細分散しており、塊状に溶融凝固している部分はなかった。このようにして(BNM)式で示される銅を含むホウ化チタンと窒化チタンからなる多孔質セラミック成形体が製造できた。
【0129】
製造例20:(OBNM)式
製造例19と同様の圧粉体を空気中で放電着火を行ったところ、約7秒で燃焼波が連鎖的に進行して燃焼合成した。自然放冷後に取り出した生成物を粉末X線回折装置で結晶層の同定を行ったところ、内部層は2ホウ化チタン(TiB
2)と窒化チタン(TiN)と銅(Cu)からなり、表面層は酸化チタン(TiO
2-X)と銅からなっていることが分かった。このようにして(OBNM)式で示される酸化チタンを含む銅が微細分散したホウ化チタンと窒化チタンからなる多孔質セラミック成形体が製造できた。なお、全体に占める酸化チタンの割合は10重量%以下であった。
【0130】
試験例1:多孔質組織
一例として製造例1で得られた炭化チタン多孔質セラミック成形体の電子顕微鏡写真を
図1に示す。この場合、全体に占める空孔率は60%であった。セラミック同士も3次元的につながり、空間も3次元的につながったスケルトン構造をしており、空孔径は約0.2μmから約15μmまで種々の直径を有する多孔質セラミックとなっていた。全体に占める平均細孔径は
図2に示されるように約0.28μmであった。また
図3には、その多孔質セラミック成形体をオリエントミルにて粗粉砕した後、ジェットミルにて微粉砕した粉末の粒度分布を示している。粉末の平均粒径(D
50)は2.264μmとなっていた。
【0131】
このことにより成形体を粉砕した粉末であっても、平均細孔径はその約1/10まで存在していることから、粉砕物も多孔質セラミックになっていた。以上の結果は、その他の製造例2から製造例20の多孔質セラミックの成形体、又はその粉砕物でもほぼ同様であった。
【0132】
以後の試験例において、多孔質セラミックの成形体(連続的につながった1個の塊)を「セラミック成形体」と記し、それらを粉砕したものを「セラミック粉末体」と記すことにする。また、セラミック成形体を水又は水溶液に投入してできる物は「加工水」と記し、セラミック粉末体を水又は水溶液に投入してできる物は「粉末含有水」と記す。
【0133】
試験例2:ラジカル測定
本発明の多孔質セラミックに液体を接触させることにより得られる液体に含有するラジカル測定を行った。使用したセラミック粉末体は製造例1〜4で得られたものであり、液体は純水を用いた。
【0134】
ラジカル種に関しては電子スピン共鳴装置(ESR)により測定した。スピントラップ剤にDMPO(濃度5%)を用い、Xバンドの測定周波数帯で、最大磁場強度は0.65Tとし、掃引時間を120秒とした。
図4−1の上段は(TC)式で示される非酸化物セラミックの代表例として製造例1のセラミック粉末体、あるいは(TOC)式で示される酸化物セラミックを少量含む非酸化物セラミックの代表例として製造例2のセラミック粉末体を純水と接触させた場合に産生するラジカル種である。この場合、シグナル解析からヒドロキシラジカル(・OH)の存在が確認された。
【0135】
ラジカルのライフタイムは数マイクロ秒〜数秒程度であると言われており、経時的に大きく変化する。今回の測定も純水にセラミック粉末体を投入後、DMPO溶液を添加してラジカルをトラップ後の溶液を採取して電子スピン共鳴装置によりラジカル種を測定していることから、その間にラジカルの絶対量は変化する。これらのことからラジカルの絶対的量は不明ながら、電子スピン共鳴のシグナル強度から相対的なラジカル量が推定できる。ラジカルの相対量は
図4−1の下段(ブランク)に示されるように、両端にあるマンガンイオンの外部標準ピーク強度(濃度は一定)と、ラジカル種の最大ピーク強度との相対比で求めた。その結果、ヒドロキシラジカルの相対比は50%〜500%の範囲に収まった。
【0136】
次に(TCM)式で示される金属を分散した非酸化物セラミックの代表例として製造例3のセラミック粉末体、あるいは(TOCM)式で示される金属と酸化物セラミックとを少量含む非酸化物セラミックの代表例として製造例4のセラミック粉末体を純水と接触させ場合に産生するラジカル種は
図4−1の中段のようになった。この場合、ヒドロキシラジカルに加えてメチルラジカル(・CH
m)の存在が確認された。
【0137】
また、
図4−2は、製造例1あるいは製造例2に示されるセラミック粉末体を純水と接触させた状態で、外部から周波数1MHz〜2MHz程度の超音波を付加した際に発生したラジカル種である。ヒドロキシラジカルに加えて、メチルラジカルの存在が確認された。このように、金属又は合金を含まない多孔質セラミックでも、超音波エネルギーの付加でラジカル種を増やせることが判明した。
【0138】
DNAのメチル化、ヒドロキシメチル化などエピゲノムが遺伝子のスイッチとなりオン/オフするエピジェネティクスはポストゲノムにおける重要なテーマであり、この研究によりこれまでのゲノム研究で明らかにできなかった生命現象及び疾患の原因が明らかになると言われている。DNAのメチル化(5mC)及びヒドロキシメチル化(5hmC)とは、シトシンにメチル基又はヒドロキシメチル基が付加されることをいう。今回、ヒドロキシラジカル及びメチルラジカルの発生が確認されており、これがエピジェネティクスの破綻防止(がん、生活習慣病など通常とは異なる遺伝子発現状態の防止)に関与している可能性が考えられる。
【0139】
試験例3:ナノバブル測定
燃焼合成で得られた多孔質セラミックの代表例として製造例1から製造例12のセラミック成形体12種を超純水と接触させた場合の水中に含まれるナノバブル個数を、ナノ粒子トラッキング解析手法により求めた測定値を表2に示す。その結果、いずれも1mL中に含まれるナノバブルの個数は、ほぼ同数の10
7個が存在した。
【0140】
【表2】
【0141】
次にナノバブル径の測定を行った。製造例1から製造例12のセラミック成形体と接触した水分中に含まれるナノバブル個数とナノバブル径との関係を
図5−1から
図5−4に示す。いずれも約20nmから約400nmのバブル径分布であることが分かる。現在、自動車及び火力発電での排気ガスが問題になっている。PM2.5(2.5μm)程度のサイズでは肺などの呼吸器を通して固体微粒子が血液中に入ることはほぼ無いが、新しくPM0.5(500nm)問題が浮上してきた。タバコの副流煙がこれに相当する。
【0142】
これほどの微粒子になれば、肺胞から血液中に取り込まれる結果、呼吸器系以外に循環器系の疾患など人体に重大な影響を起こすことが疫学的に報告されている。PM0.5という固体微粒子ですら血液中に取り込まれる事実より、今回の多孔質セラミックと水との接触によって生成したナノバブルは、固体でなく気体であると共にバブル径が約20nmから約400nmと更に小さいため容易に体内吸収されると考えられる。
【0143】
試験例4:ナノバブル成分分析
ナノバブル量は、ナノバブルの平均直径から求めた体積に個数を乗じて、全体積を算出した。この結果、単位体積中の水に含まれるナノバブル濃度はおおよそ5ppbであった。そこで、ナノバブルの成分分析を行った。超純水に含まれる溶存ガスを脱気した脱気水に、表3に示される製造例1から製造例4のセラミック成形体を投入して得られた加工水を、水素溶存ガス測定装置(測定限界0.1ppb)を用いて測定した結果、表3に示されるように超純水と加工水の水素濃度に差が無いことから、水溶液での水素は検出されなかった。
【0144】
【表3】
【0145】
このため次に、液体クロマトグラフ/質量分析装置(LC/MS/MS)にて約5ppb含まれるガス成分を測定したが、極微量なガス成分のため検出限界以下であり、ガス成分は分析できなかった。しかし、製造例1から製造例4のセラミック成形体の種別に関わらずナノバブルの存在は確認されていることから、水素ガス以外の可能性として、多孔質セラミック由来若しくは燃焼合成後の微量な未反応原料由来の成分が関与したガス又は水素ラジカルの二次反応として水に溶存した酸素(O)及び/若しくは窒素(N)が関与したガス(C
vB
wH
xN
yO
z (0≦v,w,x,y,z≦1))として安定化していることが考えられる。
【0146】
試験例5:pH測定
水素ラジカルに起因した水素イオンが存在する場合、pHが酸性側に変化する。そこで、対照区は一般的な水道水を用い、検体区は同一の水道水に製造例1から製造例12のセラミック成形体を投入した加工水とした。pH測定の結果、対照区の平均値がpH=7.42に対して、検体区ではpH=7.46となり、両区に有意な差は認められなかった。このことより、検体区において水素ラジカルが存在したとしても水素イオンに変化していないことと、水素イオンの増加が無いことが確認できた。
【0147】
試験例6:毒性試験
化学的安全性の点では、本発明の多孔質セラミックは共有結合性のため体内でも安定である。それらに加えて、本発明で使用される銀、金、白金、鉄、及び銅は既に食品添加物法に定められており、これも安全性の点で問題は無い。そこで細胞レベル、動物レベル、臨床レベルでの毒性試験を行った。
【0148】
1)細胞レベル in vitro試験
(TOB)式で表される一例として製造例6に示されるセラミック成形体を培養液に添加した検体を用いて、Madin-Darby canine kidney (MDCK)細胞に対する細胞毒性を調べた。製造例6のセラミック成形体1個を純水1Lに入れて24時間室温静置した検体原液をリン酸緩衝生理食塩水(PBS : Phosphate Buffered saline)で10倍段階希釈した後、原液又は希釈液50μLと5%胎児血清(FBS : Fetal Bovine serum)を含むDulbecco's Modified Eagle's Medium (DMEM)に懸濁したMDCK細胞50μLとを96ウェルプレートに植え込んだ。MDCK細胞数は5×10
4個である。その後、炭酸ガス孵卵器で4日間培養を行った。培養後、4%ホルマリンと0.1%クリスタルバイオレットとを溶解したPBSを各ウェルに100μL加えた後、室温で10分間静置し、細胞を染色した。
【0149】
染色後、水道水で洗浄し乾燥させた後に、エタノールを各ウェルに50μL加えて、クリスタルバイオレットを溶出させ、585nmの吸光度を測定した。細胞にPBSを加えたウェルの吸光度を生細胞率100%として、検体の細胞毒性を確認した。この結果を表4に示す。対照区の多孔質セラミック添加無しの結果を生細胞率100%として、各検体の生細胞率を算出し、生細胞率が50%以下の場合を細胞毒性有りと判断した。
【0150】
検体原液の場合でも生細胞率は104.0±3.0%であり、対照と差は認められなかった。原液を希釈した検体では、当然、生細胞率はほぼ100%となった。したがって、製造例6のセラミック成形体を培養液に投入してもMDCK細胞に対して毒性を示さなかった。
【0151】
【表4】
【0152】
同様の方法で(TOC)式、(TOCM)式で示される多孔質セラミックの一例として製造例2、製造例4のセラミック粉末体を添加した培養液を検体に用いて、Madin-Darby canine kidney (MDCK)細胞に対する細胞毒性を調べた。この結果を表5に示す。検体原液は培養液に対して各セラミック粉末体の添加濃度を1000ppmとし、希釈液は10倍段階希釈で0.001ppmまで7種類とした。対照区のPBSのみの結果を、生細胞率100%として各検体の生細胞率を算出し、生細胞率が50%以下の場合を細胞毒性有りと判断した。
【0153】
【表5】
【0154】
この結果、最も濃度が高い1000ppm添加培養液でも60%以上の生細胞率であり、各セラミック粉末体の細胞毒性は認められなかった。
【0155】
2)動物レベル in vivo試験 慢性毒性
細胞レベルでの毒性が認められなかったので、次に魚類でin vivo試験を実施した。製造例1から製造例20までのセラミック成形体20種を水量に対して20vol%となるように水槽の底部に大量に敷き詰めて、水中で熱帯魚の育成を行ったが、2年以上、何ら問題なく生育していることからも、毒性などは有していないと判断できる。
【0156】
次に、ラットを用いたin vivo慢性毒性試験を実施した。検体区は、(TC)式、(TCM)式で示される多孔質セラミックの一例として、製造例1、製造例3の2種類のセラミック粉末体を水道水に対して濃度100ppm添加した粉末含有水を給水ビンにて自由摂取で毎日、飲水として経口投与した。対照区は通常の水道水とした。n数は各群8匹とした。毎日の飲水摂取平均量は25ccであったことから、各セラミック粉末体の平均摂取量は2.5mg/日となった。その体重変化を
図6に示す。
【0157】
この2種類のセラミック粉末含有水を204日摂取(セラミック粉末体の総摂取量は510mg)したが体重減少は起こらず順調に生育した。この総摂取量は、ラットの平均体重(約280g)の約0.2%に相当する量である。本多孔質セラミックが何らかの毒性を示す場合は、体重減少となって現れるはずであるが、むしろ通常の水道水摂取群より体重は増加した。以上から、いずれの検体区でも食欲減退、行動抑制など発現せず、多孔質セラミックの慢性毒性は認められなかった。なお、単位体重あたりの多孔質セラミック摂取量(体重係数)は、実験開始日においては各群とも約15.8mg/kg日であり、実験終了日時点では5.9〜6.1mg/kg日となった。
【0158】
3)臨床レベル in vivo試験 慢性毒性
動物レベルでの毒性は認められなかったので、複数の自発的披験者の協力を得て、慢性毒性について臨床試験を行った。多孔質セラミックは(TOCM)式で示される代表例として製造例4のセラミック成形体を用いた。これを水道水2Lに対して1個投入して、12時間室温静置した加工水を検体とした。自発的被験者A1(70代男性)は、その検体を1L/日の量で2年間継続して経口摂取したが、体調の悪化、疾患の発現など無かった。また、自発的被験者A2(30代男性)は2L/日で6ヶ月間継続経口摂取した場合も体調悪化、疾患発現など無く、むしろ良好な健康状態を維持している。
【0159】
次に、製造例4のセラミック粉末体を30mg含む錠剤を作製した。自発的被験者A3(60代男性)、A4(60代女性)、A5(50代男性)、A6(30代男性)は、1日当たり1錠(30mg)を延べ2週間継続して飲料水と一緒に経口摂取した結果、体調悪化、疾患発現など見られなかった。体重係数は、0.4〜0.6mg/kg日の範囲である。自発的被験者A7(70代男性)、A8(80代女性)は、1日当たり3錠(90mg)を6ヶ月間にわたり摂取した結果、何ら問題は無かった。体重係数は1.1〜2mg/kg日の範囲であり、セラミック粉末体の総摂取量は16.2gとなる。以上のことから、人体に対しても慢性毒性の無いことが判明した。
【0160】
4)臨床レベル in vivo試験 急性毒性
自発的協力者により急性毒性試験を実施した。自発的被験者B1(40代男性)、B2(20代女性)、B3(30代男性)は、それぞれ製造例2、製造例3、製造例4のセラミック粉末体を飲料水と一緒に、1回6gで延べ5回の経口摂取した結果、何ら急性毒性は認められなかった。体重係数は100〜150mg/kg日の範囲であり、セラミック粉末体の総摂取量は30gとなる。
【0161】
試験例7:クローン病
炎症性腸疾患は、主にクローン病と潰瘍性大腸炎であり、国の特定疾患に指定されている。今回、クローン病と診断された患者C(20代男性)の自発的協力により、本発明の多孔質セラミックの経口摂取によるC反応性タンパク(CRP)を含む変化を測定した。(TOCM)式で示される多孔質セラミックの代表例として製造例4のセラミック成形体1個を2Lの水道水に投入して加工水を作製した。
図7には発症による緊急入院から当該加工水摂取による検査結果を時系列にしている。
【0162】
CRPが0.2となって退院後、クローン病治療に使用されるペンタサ薬剤(5-Aminosalicylic acid)を摂取しているにも関わらず、C反応性タンパク、白血球(WBC)及び血小板(PLT)が上昇すると共に、発熱、腹痛、全身倦怠感、下痢、血便などの副作用が伴い、体重も健康時の70kgから50kgまで減少したため、ペンタサ薬剤の摂取を約5ヶ月間中止した。その後、加工水のみを2L/日の容量で経口摂取したところ、約8ヶ月後にはCRPが0.05mg/dLまで急激に低下すると共に、血液状態の改善が見られ、副作用も全く起こることはなかった。これに伴い体重も順調に増加して65kgまで回復した。
【0163】
このように他の薬剤を摂取せずに本発明の多孔質セラミックを投入した加工水だけを摂取することで、病状が改善されることが判明した。図には記載していないが、2014年10月の定期受診においてもCRPが0.15mg/dLと正常範囲(0.20mg/dL以下)内であったことから、担当医は正常化したと判断した。このように現時点では根本的な治療方法が無い難病指定のクローン病に対して、新規の治療方法を提供できる可能性がある。
【0164】
試験例8:がんin vitro
ヒト由来の6種類のがん細胞に対して、(TOCM)式で示される多孔質セラミックの代表例として製造例4のセラミック粉末体を濃度100ppmで添加した培養液中で、各がん細胞の増殖阻害効果を調べた。
図8−1から
図8−6は、それぞれ脳腫瘍細胞株A172、大腸癌細胞株Colo205、白血病細胞株Jurkat、胃癌細胞株KatoIII、肺癌細胞株PC9、肝臓癌細胞株HepG2を用いたin vitro試験の結果である。6種類のがん細胞に関して、多孔質セラミックを用いない場合は対数的に増殖したが、多孔質セラミックを用いた場合はがんの種別によらず、すべてのがん細胞に対して強い阻害効果を示し、その細胞数は大幅に減少した。なお、図中でがん細胞数が10
3オーダー以下では測定不能なため、カウントを中止した。同様の増殖阻害効果は(TC)式、(TCM)式の代表例として製造例1、製造例3のセラミック粉末体を用いても認められた。以上のように本発明の多孔質セラミックは、がんの種別によらずがん細胞数を減少させることが分かる。
【0165】
次に、(TOCM)式で示される多孔質セラミックの代表例として製造例4のセラミック成形体1個を培養液中に置き、がん細胞が直接、多孔質セラミックと接触しない状態での増殖阻害効果を調べた。
図9は同一条件下で、正常細胞株NHDF (ヒト由来繊維芽細胞)と肺癌細胞株PC9とを用いた場合の増殖阻害結果である。この場合も多孔質セラミックの存在により、肺癌細胞に対しては強い増殖阻害効果を示し、6日目以降減少に転じた。一方、正常細胞は多孔質セラミックが無い場合と比較して、若干、増殖阻害があるものの減少には転じず、順調に増殖した。以上の結果から、本発明の多孔質セラミックは、正常細胞にはほとんど影響を及ぼさず、がん細胞のみ減じるがんの治療剤及び/又は予防剤として利用可能なことが示唆された。
【0166】
一般的に使用される抗がん剤は、正常細胞にも影響を及ぼし少なからず副作用を伴う。一方、本発明の多孔質セラミックはがん細胞に対しては殺がん効果を発揮するのに対して、正常細胞には悪影響を及ぼさないどころか、むしろ正常細胞には良い効果を与える。それは
図20に示されるように、本発明の多孔質セラミックの使用により若年期から老年期の幅広い期間のいずれにおいても生存率が上昇していること、
図18−1、2のように本発明の多孔質セラミックの摂取で食欲増進作用が起こることなどで証明される。
【0167】
従来のがん治療は「化学的療法(抗がん剤など)」「外科的手法(手術)」「放射線治療」及び「免疫治療」を組み合わせて行われることが多かった。本発明の多孔質セラミックは、それら4領域に加えて、「物理的作用療法」という新領域を提供するものである。すなわち、本発明の多孔質セラミックの殺がん効果は、がん細胞のみに対して組織破壊、代謝阻害などにより、がん細胞そのものが物理的に壊されて死滅する機構によるものと強く示唆される。一方、生体に対しては
図6に示されるように毒性は認められず、患者にとって副作用がほとんど無い物理的作用療法といえる。また、この物理的作用療法から示唆されることとして、組織破壊はがん種別によらず起こるため、多種のがん治療に有効である。事実、本発明の多孔質セラミックを用いた細胞レベルでの実験結果より、その正当性が立証された。
【0168】
さらに現在、がんに対する抗がん剤などの治療薬はあるものの、明確な効果が実証された予防剤は無い。本発明の多孔質セラミックで確認されているメチルラジカルは、DNAメチル化などエピジェネティクスの破綻防止(がんなど通常とは異なる遺伝子発現状態の防止)に関与している可能性がある。このことから本発明の多孔質セラミックは、毒性も認められず副作用の無いがんの予防剤としての継続的な使用が期待される。
【0169】
試験例9:神経変性疾患
神経変性疾患の代表例としては、ポリグルタミン病、アルツハイマー病、パーキンソン病といったものがある。ポリグルタミン病は、不随意運動、歩行障害などを引き起こす。アルツハイマー病は、血管から神経細胞への栄養供給阻害、脳神経細胞が出す老廃物であるアミロイドβなどの変性タンパク質の血液中への排出阻害による蓄積などにより記憶障害、認知症などを発症する学績がある。パーキンソン病は、脳内のドーパミン不足とアセチルコリンの相対的増加を病態とする進行性疾患である。
【0170】
図10はパーキンソン病態モデルハエを用いて、本発明の多孔質セラミックの摂取有無による差異を生存率で測定した結果である。(OBNM)式で示される代表例として製造例20のセラミック粉末体を10ppmの濃度で寒天に混餌して与え、その薬理効果をハエの生存率で検討した。本発明の多孔質セラミックを含まない通常の餌を与えた対照区では25日目以降に急激に死亡し、37日目で全滅した。一方、本発明の多孔質セラミックを与えた検体区では、寿命が48日まで伸長した。以上の結果から、本発明の多孔質セラミックは、パーキンソン病の有効な治療薬となり得ることが示唆された。
【0171】
試験例10:インフルエンザウィルス
ウィルス性感染症は、体内でウィルスに対する中和抗体ができることで感染が防止される。しかし、ウィルスは変異しやすいため、予防薬となるワクチンもその都度作製する必要がある。一方、ウィルスは細胞に寄生して増殖するため、それらの増殖を阻害する抗ウィルス薬はあるが、ウィルス自体を直接破壊するものでない。そこで、本発明の多孔質セラミックを用いたウィルス不活化についてin vitro試験を行った。
【0172】
対象ウィルスとしてA型インフルエンザウィルス(H1N1)を用い、(TOC)式、(TOCM)式で表される多孔質セラミックの代表例として製造例2、製造例4のセラミック粉末体を各1000ppmの濃度で投入した各培養液20mLにウィルス液0.2mLを播種した。この反応液を25℃の恒温槽中で24時間及び48時間保持して接触作用させた。その後、反応液を5mL採取し、フィルターで濾過してセラミック粉末体とウィルス液とを分離した。このウィルス液を感染価測定用原液として感染価を測定した。原液をPBSで10倍段階希釈した後、原液又は希釈ウィルス液50μLと、5%FBS添加DMEMに懸濁したMDCK細胞50μLを、96ウエルマイクロプレートに植え込んだ。その後、37℃の炭酸ガス孵卵器内で4日間培養した。培養後、ウィルスの増殖による細胞変性効果(CPE)を観察してReed-Muench法を用いてウィルス感染価(TCID
50/mL)を求め、ウィルス個数(pfu/mL)に換算した。その結果を
図11に示す。
【0173】
本発明の多孔質セラミックを含まない対照区と比較して、本発明の多孔質セラミックを含む場合はいずれもウィルス個数は減少した。特に(TOCM)式の多孔質セラミックでは、対照区と比較して24時間後で約1/400になり、48時間後では1/1550まで減少した。よって、本発明の多孔質セラミックは、A型インフルエンザウィルス(H1N1)に対して十分な有効性を有している。A型インフルエンザウィルス(H3N2)でも同様の多孔質セラミックを用いて、同様の条件で試験を行ったが、(H1N1)とほぼ同様の結果となった。
【0174】
以上から、本発明の多孔質セラミックは、インフルエンザウィルスでは種別(亜型)を選ばず有効に作用した。このことから、今までのワクチン及び抗ウィルス薬とは作用機構が本質的に異なり、ウィルスを物理的に破壊する作用があると考えられる。また、生物学的阻害でなく物理的な破壊力を有するため、たとえウィルスが変異したとしても対応できることが推測される。パンデミックに対しても、このようなウィルス不活化方法を用いることにより、安全な不活化ワクチンを迅速に大量生産できることが期待される。
【0175】
試験例11:HIV
BSL3レベルの対象ウィルスとしてヒト免疫不全ウィルス(HIV-1)を用い、(TOCM)式で表される多孔質セラミックの代表例として製造例4のセラミック粉末体を1000ppmの濃度で投入した培養液中で24時間及び48時間の接触作用後に、それらを感染価測定用原液として感染価を測定した。不活化過程及び感染価測定実験は、試験例10と同様である。その結果を
図12に示す。本発明の多孔質セラミックを含まない対照区の感染価は、48時間後でも1580(TCID
50/mL)と初期値とほとんど変わらなかった。一方、本発明の多孔質セラミックを用いたウィルス感染価は、初期の1785(TCID
50/mL)から24時間後には158(TCID
50/mL)となり、48時間後には126(TCID
50/mL)まで減少した。
【0176】
以上の結果より、本発明の多孔質セラミックは、ヒト免疫不全ウィルスに対して十分な有効性を有していると考えられる。よって現在、全世界で5千万人に達すると言われるHIV感染者の後天性免疫不全症候群(AIDS)の発症防止への利用が望まれる。
【0177】
試験例12:糖代謝、肝機能、脂質異常、肥満症
血液中のコレステロール及び中性脂肪が増大すると、脂質異常症及び動脈硬化を主な原因とする心疾患及び脳血管疾患での死亡率は極めて高くなる。また、動脈硬化などの血管組織変性により糖が血管外に湿潤しにくくなると、血糖値が上がり糖尿病に至る。日本癌学会と日本糖尿病学会との合同委員会報告では、糖尿病と癌発症との因果関係は高いとされている。
【0178】
図13は糖代謝機能に問題をかかえる被験者D1(60代男性)の血糖値(Glu)とヘモグロビンA1c (HbA1c)の検査結果である。同時に総コレステロール(T-Cho)とγグルタミントランスペプチターゼ(γ-GTP)の検査結果も示した。2014年4月の検査以降から(TOC)式で表される多孔質セラミックの代表例として製造例2のセラミック成形体1個を2Lの水道水に投入し、この加工水2Lを毎日、経口摂取してもらった。摂取2ヶ月後の2014年8月の検査結果では、Gluは正常範囲(75〜105)よりも高いものの240から130へとほぼ半減すると共に、HbA1cも7.7から6.4と、正常範囲(4.6〜6.2)に近づいた。このことより、本発明の多孔質セラミックは、糖代謝機能を改善する薬効があると考えられる。
【0179】
図14は、肝機能低下の被験者D2(40代男性)のアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT/GPT)とγグルタミントランスペプチターゼ(γ-GTP)の検査結果である。2013年4月と6月の検査結果は、いずれの数値も正常範囲より高かった。そこで2013年6月の検査以降から(TOCM)式で表される多孔質セラミックの代表例として製造例4のセラミック成形体1個を2Lの水道水に投入し、この加工水2Lを毎日、経口摂取してもらった。摂取4ヶ月後の2013年10月の検査結果では、ALT/GPTは当初の50から大きく減少して20となり、正常範囲(4〜36)内に収まった。また、γ-GTPも正常範囲(4〜68)よりも高いものの、当初の393から約1/3の112まで大きく改善した。このことより、本発明の多孔質セラミックは肝機能を改善する薬効があると考えられる。
【0180】
脂質異常症の一つのマーカーとなる中性脂肪(TG)に対する本発明の多孔質セラミックの効果を調べた。ラットに4%高コレステロール飼料を1ヶ月間与えた。N=8で、摂餌量は14g/匹・日とすべて同じ量とした。このように同一給餌量で、対照区は水道水を自由摂取させ、検体区は(TOC)式、(TOCM)式で表される多孔質セラミックの代表例として製造例2、製造例4のセラミック粉末体を水道水に投入した各濃度100ppmの粉末含有水を自由摂取させた。
図15−1は、1ヶ月後の体重、血中の中性脂肪、組織解剖により計測した心臓重量の結果である。体重は対照区より検体区の方が重くなり、同一給餌量であることから本発明の多孔質セラミックを摂取した方が、吸収効率が高くなっていることが分かる。一般的には、このように吸収効率が高くなり体重も増えると、血中の中性脂肪も上昇する。しかし、本実験では、中性脂肪は対照区が最も高い値を示し、本発明の多孔質セラミックを摂取した方が低い値となった。このことは、本発明の多孔質セラミックを摂取した場合、基礎代謝が上がって中性脂肪がより多く消費された結果であると判断される。
【0181】
以上より、高コレステロール食を与えて脂質異常状態にしたラットにおいて、本発明の多孔質セラミックを摂取した場合は吸収効率が高く体重も増加するが、それ以上に代謝が活性化する結果、中性脂肪が減ったことになる。これは
図15−2の解剖組織からも裏付けられた。図中の白線囲み部分が、体内脂肪組織を示している。対照区は顕著な脂肪の増加があるのに対して、本発明の多孔質セラミックを摂取した検体区は明らかに脂肪沈着が少なかった。このことより、本発明の多孔質セラミックは、脂質異常症及び肥満症に対する予防並びに治療薬となり得ることが示唆された。また、
図15−1には心臓重量も示しており、検体区に対して対照区は心臓肥大を起こしていた。
【0182】
図15−3は、対照区の代表的な肝臓組織である。脂肪肝を認めると共に、横隔膜接続周囲における肝組織の腫脹(図中の矢印部分)も8例中3匹において発症した。一方、検体区では、(TOC)式と(TOCM)式で示される多孔質セラミックを摂取した時は、各8例中1匹と0匹であり、病変は少なかった。本発明の多孔質セラミックの摂取により吸収効率が高くなることから、肥満症の予防及び治療薬としての利用が考えられる。
【0183】
試験例13:肥満症及び痩身効果
厚生労働省の定義ではボディマス指数(BMI)が25以上であって、健康障害があるか若しくはその可能性がある場合、又は内臓脂肪が多い場合を肥満症としており、これによって引き起こされる合併症は糖尿病、高血圧、脂質異常などその病態は11に及ぶ。
【0184】
日本肥満学会の肥満基準で肥満(2度)に相当するBMIが30の被験者E(60代男性)の自発的協力により、(TOCM)式で表される多孔質セラミックの代表例として製造例4のセラミック成形体1個を2Lの水道水に投入した。この加工水を1L/日と、製造例4のセラミック粉末体を2mg含む錠剤を2錠/日の割合で毎日、飲料水と一緒に経口摂取してもらった。3ヶ月後のBMIは24と、正常範囲とされる18〜25の範囲に入ったことから、本発明の多孔質セラミックは、肥満症の治療に使用できる可能性が示唆された。
【0185】
試験例14:皮膚疾患
心身症性皮膚疾患、足白癬の皮膚疾患、尋常性乾癬、褥瘡などの炎症性皮膚疾患など多くの皮膚疾患がある。心身症性皮膚疾患を呈する被験者F(60代男性)に対し、本発明の多孔質セラミックの投与を行った。製造例19のセラミック粉末体を10mg含む錠剤を毎日1錠の割合で飲料水と一緒に経口摂取してもらった。同時に製造例18のセラミック成形体の一部(5g)を水道水2Lに投入して得た加工水も1L/日の割合で経口摂取してもらった。
図16に患者の治癒経過を示す。投与3日後では効果がわずかしか見られないものの、20日目にはほぼ皮膚疾患が完治した。足白癬の皮膚疾患及び尋常性乾癬患者に対しても同様の効果が認められた。
【0186】
また、老人介護施設で褥瘡などの炎症性皮膚疾患を呈する複数の被験者に対して、製造例18のセラミック成形体の一部(5g)を水道水500ccに投入して得た加工水を患部に2〜3回程度/日の頻度で噴霧してそのまま乾燥させたところ、3日後から治癒効果が認められた。これは炎症を引き起こす原因菌などの殺菌作用によるものと推察される。
【0187】
試験例15:アルコールの分解促進作用
飲酒後のアルコール分解が本発明の多孔質セラミックで促進されるか否かを調べた。(TOC)式で示される多孔質セラミックの一例として製造例2のセラミック粉末体を水に投入した粉末含有水を作製した。飲酒前に、この粉末含有水を経口摂取した場合(検体区)と摂取しない場合(対照区)のアルコール分解速度を、同一被験者G(20代男性)により2週間の間隔を空けて各1回ずつ計2回実施した。検体区では、飲酒前に製造例2のセラミック粉末体3.5mgを含む粉末含有水100ccを経口摂取してもらい、その15分後にアルコール濃度15〜16度の日本酒360mLを15分で飲み終えた。その直後から、両区での体内アルコール濃度の経時変化をBEXアルコール検出キットで測定した。
図17にその結果を示す。
【0188】
飲酒1時間後の体内アルコール濃度は同値であったが、3時間後から検体区の方が対照区より体内アルコール濃度が早く減り、4時間後には検体区の方が0%になるのに対して、対照区ではまだ0.015%が体内に残留した。(TC)式、(TB)式、(TN)式、(TS)式、(TOB)式、(TON)式、(TOS)式で示される各多孔質セラミックの代表例として、製造例1、製造例5、製造例9、製造例13、製造例6、製造例10、製造例14の各セラミック粉末体を含む粉末含有水の摂取においても、同様の分解促進作用が認められた。また、セラミック成形体を投入して得られる加工水の摂取、及びセラミック粉末体を含有する錠剤を飲んだ場合も、同様の効果が認められた。
【0189】
以上のように、飲酒前に本発明の多孔質セラミックを経口摂取した場合は、体内でのアルコール分解が促進される結果となった。これは本発明の多孔質セラミックの摂取により、血流が増大し、肝臓でのアルコール代謝速度が速まったためと考えられる。血流増大は血管内皮由来弛緩因子の1つとして挙げられる一酸化窒素(NO)によるものと推定され、それはセラミック粉末体を含む懸濁水のうち水溶液のみが体内に吸収された後の代謝時に、試験例4で示した二次反応として体内にNOが産生されると考えられる。いずれにしても、本発明の多孔質セラミックの摂取はアルコール分解代謝を促進する効果を有するため、一例として急性アルコール中毒症の治療薬及び二日酔いの予防薬として用いることが考えられる。
【0190】
参考例1
飲酒前に本発明のセラミック粉末体を添加した粉末含有水を経口摂取することにより、飲酒後の体内アルコール濃度が摂取しない場合と比較して、分解促進されることが判明した。生体内での代謝促進によることを裏付けるために、アルコール水溶液に投入した本発明の多孔質セラミックによってアルコールが直接分解されていないことをin vitro試験で確認を行った。多孔質セラミックは、試験例15と同じく製造例2のセラミック粉末体を用いた。
【0191】
純度99.5%のエタノール7mLにイオン交換水493mLを混合したアルコール水溶液を作製し、製造例2のセラミック粉末体添加の有無によるアルコール度数の経時変化を酒精計(0〜10度、精度0.1度)で測定した。初期のアルコール水溶液の度数は1.7度であった。検体区には、製造例2のセラミック粉末体を100ppmの濃度で投入した。4日後の対照区(セラミック粉末体添加無し)のアルコール度数は1.2度に対し、検体区でも1.2度と同値であった。
【0192】
このことより、本発明の多孔質セラミックによるアルコールの直接分解は起こらないことが分かった。よって、本発明の多孔質セラミックの摂取は、アルコールの直接分解でなく生体内での血流増大及び/又はアルコール代謝促進に効果を発揮していることが判明した。
【0193】
試験例16:食欲増進作用
病気による食欲減退は、体力の低減につながり、それが病気を悪化させるという悪循環におちる場合がある。そこで、本発明の多孔質セラミックの摂取による食欲増進作用について調べた。フィッシャーラットを用いて自由摂餌条件で、対照区として水道水摂取群、検体区として(TON)式、(TONM)式で示される多孔質セラミックの代表例である製造例10、製造例12のセラミック粉末体を100ppmの濃度となるように水道水に添加した粉末含有水摂取群の計3群で試験を実施した。
図18−1は45日間における各群の総摂餌量であり、
図18−2は一固体における1日当たりに換算した摂餌量を示している。
【0194】
総摂餌量でも一個体の1日当たりの摂餌量でも、対照区と比較して検体区の方が摂餌量は多くなった。特に(TON)式で示される多孔質セラミックの一例である製造例10のセラミック粉末含有水を摂取している群において最も食欲増進効果が認められ、対照区より約4%増加した。以上より、本発明の多孔質セラミックの摂取は食欲増進作用を有することが分かった。
【0195】
試験例17:ピロリ菌
ヘリコバクター・ピロリ菌が関与する疾患として慢性胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃がんなどが挙げられる。特にピロリ菌は胃癌との相関関係があり、世界保健機構(WHO)は疫学的調査からピロリ菌を確実な発がん物質の一つと認定している。今までピロリ菌の駆除は主に抗生物質が用いられてきたが、耐性菌の出現及び副作用の問題もあった。
【0196】
そこで、ピロリ菌(JCM12093)に対する本発明の多孔質セラミックの抗菌力についてin vitro試験した。ピロリ菌を5%馬脱繊維血液加で37℃±1℃、6〜8日間微好気培養した後、生理食塩水に浮遊させ、菌数が10
3個/mLから10
4個/mLとなるように調整したものを試験菌液とした。
【0197】
培地として5%馬脱繊維血液加寒天平板培地を用いた。検体区では、そこに(TC)式、(TCM)式で示される多孔質セラミックの代表例として製造例1、製造例3のセラミック粉末体をそれぞれ100ppm添加した培地を用い、対照区として多孔質セラミックを含まない培地を用いた。それら3種類の培地に各同量の試験菌液0.1mLを塗抹し、37℃±1℃で所定日数間(5日間〜7日間)微好気培養した後、寒天平板培地上の生育集落数を計測した。その結果が表6である。
【0198】
【表6】
【0199】
多孔質セラミックを含まない対照区と比較して、検体区ではいずれの多孔質セラミックでも生育集落数は減少した。特に製造例3の(TCM)式に示される多孔質セラミックを用いた場合、ピロリ菌は培養5日目では既に死滅していた。
【0200】
この結果と生体毒性が無いことを受けて、事前の呼気検査(ユービット使用)でピロリ菌陽性反応となった2名の自発的協力による被験者H1(30代男性)、H2(50代男性)により、製造例4の(T0CM)式で示される多孔質セラミックを用いてin vivo試験を実施した。事前の呼気検査からΔ値が6.9%(正常値は2.5%未満)であった自発的協力者H1は、製造例4のセラミック粉末体を5mg/日の割合で飲料水と一緒に2週間経口摂取したところ、Δ値が1.1%まで減少しピロリ菌駆除に成功した。また、自発的協力者H2は事前のΔ値が28.6%あったが、同様のセラミック粉末体を30mg/日の割合で飲料水と一緒に1週間と、60mg/日を飲料水と一緒に2週間連続して経口摂取した後は1.9%となり、これもピロリ菌駆除に成功した。このように、本発明の多孔質セラミックを経口摂取することで、抗生物質などを使用しなくてもピロリ菌の除菌が可能となり得ることが分かった。
【0201】
試験例18:歯周病菌
歯槽膿漏、虫歯など歯周病菌及び虫歯菌が原因となる疾患は多い。また、それ以外にも厚労省が発表した2012年度人口動態統計では、死亡原因として「がん」「心疾患」についで「肺炎」が上位3番目に浮上した。肺炎の中でも、特に誤嚥性肺炎は歯周病菌及び虫歯菌が原因の一つとして挙げられ、その有効な除菌剤の開発が必要となっている。その他、潰瘍性大腸炎と虫歯菌との因果関係が論文に報告されている。
【0202】
歯周病菌について多孔質セラミックを用いたin vitro試験を行った。(TOBM)式に示される多孔質セラミックの代表例として製造例8のセラミック成形体1個を純水1Lに入れた培養液を作製した。その培養液中に濃度が3.49×10
6個になるようにポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)(PG)菌を添加して、37℃で培養し24時間後の菌数を測定した。結果を表7−1に示す。多孔質セラミックを含まない純水培養液では菌数が約10
3CFU/mL残存するのと比較して、多孔質セラミックを含む培養液では菌数が0CFU/mLとなった。
【0203】
【表7-1】
【0204】
同様に(TONM)式に示される多孔質セラミックの代表例として製造例12のセラミック成形体1個を純水1Lに入れた培養液を作製した。その培養液中に濃度が2.22×10
6個になるようにPG菌を添加して、37℃で培養し24時間後の菌数を測定した。結果を表7−2に示す。多孔質セラミックを含む培養液を用いた場合、菌数が0CFU/mLとなった。
【0205】
【表7-2】
【0206】
以上のことより、本発明の多孔質セラミックが歯周病菌の除菌剤として有効なことから、歯周病などの予防剤及び/又は治療剤としての利用が考えられる。
【0207】
試験例19:虫歯菌
毒性は弱いが虫歯を発生させるストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans) MT8148菌に対する本発明の多孔質セラミックの効果についてin vitro試験を行った。検体区として(OBNM)式に示される多孔質セラミックの代表例として製造例20のセラミック粉末体を濃度100ppmで純水に添加した粉末懸濁水とリン酸バッファーに添加した粉末懸濁水の2種類を、対照区として多孔質セラミックを含まない純水とリン酸バッファーを培地として用いた。それぞれの培地に濃度が10
8個になるようにMT8148菌を添加して、37℃で24時間培養した後の菌数を測定した。結果を表8−1に示す。多孔質セラミックの有無によって、24時間後の菌数は10
5以上の差異が認められた。
【0208】
【表8-1】
【0209】
同様の試験条件で、(OBN)式に示される多孔質セラミックの代表例として製造例18のセラミック粉末体を濃度100ppmで用いた場合の結果を表8−2に示す。24時間後の検体区の菌数は、共に0CFU/mLと完全に死滅するに至った。
【0210】
【表8-2】
【0211】
虫歯菌が関与する疾患の一つに心内膜炎がある。毒性の強いSA31菌は心内膜炎を重症化させるなどの要因として報告されており、その除菌剤として今まで主に抗生物質などが用いられてきた。しかし、抗生物質の副作用、多用による耐性菌の発現など課題も多く、これに変わる除菌剤が求められてきた。そこで、SA31菌に対する多孔質セラミックの効果についてin vitro試験を行った。検体区として(TOCM)式に示される多孔質セラミックの代表例として製造例4のセラミック粉末体を濃度100ppmで、純水に添加した粉末懸濁水とリン酸バッファーに添加した粉末懸濁水の2種類を、対照区として多孔質セラミックを含まない純水とリン酸バッファーを培地として用いた。それぞれの培地に濃度が10
8個になるようにSA31菌を添加して、37℃で24時間培養した後の菌数を表9−1に示す。24時間後の検体区の菌数は、共に0CFU/mLと完全に死滅した。
【0212】
【表9-1】
【0213】
同様の試験条件で(TOC)式に示される多孔質セラミックの代表例として製造例2のセラミック粉末体を濃度100ppmで用いた場合、表9−2に示すように24時間後の検体区の菌数は、共に0CFU/mLと完全に死滅するに至った。
【0214】
【表9-2】
【0215】
以上の結果より、本発明の多孔質セラミックは、MT8148菌及びSA31菌に代表される虫歯菌の除菌剤として有効なことから、虫歯などの予防剤及び/又は治療剤としての利用が考えられる。
【0216】
次に、正常なモデルラットを用いてin vivo試験を行った。ラットの血中に10
8個のSA31菌を入れた生理食塩水、同数のSA31菌と製造例4の(TOCM)式に示されるセラミック成形体とを入れて得た生理食塩水溶液、同数のSA31菌と抗生物質とを入れた生理食塩水、同数のSA31菌と抗生物質及び製造例4の(TOCM)式に示されるセラミック成形体とを入れて得た生理食塩水溶液の4区でin vivo試験を行い、所定時間毎に血液採取して培養しSA31菌コロニー数を測定した。その結果を
図19−1に示す。なお、
図19−2は部分拡大した図である。正常ラットでは血中のSA31菌は白血球などに捕食される結果、増殖せずに減少する。しかし、多孔質セラミック又は抗生物質を用いた場合は、30分後ではその1/20以下まで減数させる薬効があった。この中でも多孔質セラミックを投入して得た生理食塩水溶液を用いた場合は2時間後に0CFU/mLとなり、抗生物質を用いた場合の3時間よりも除菌効果が短時間で現れる結果となった。
【0217】
以上のことより、本発明の多孔質セラミックはSA31菌自体の除菌に加えて、SA31菌による心内膜炎の重症化予防剤及び/又は治療剤としての利用が考えられる。さらに、抗生物質より薬理効果が高いことから、抗生物質を置換できると共に、多剤耐性菌化も防止できることが期待される。
【0218】
試験例20:生存率向上
羽化したキイロショウジョウバエの野生型標準系統(Canton S)を用いた生存率測定実験は、統計学的処理ができるようn=100(雄雌それぞれ50匹ずつ)とした。このショウジョウバエの給餌と給水とは寒天で行った。寒天の組成は、対照区でドライイースト、コーンミル、グルコース、アガロース、プロピオン酸、ボーキニン(防腐剤)、寒天、水分であった。一方、検体区はそれらに加えて、(OBNM)式で示される多孔質セラミックの代表例として製造例20のセラミック粉末体を10ppm、100ppm、1000ppmの濃度で添加した各寒天を飼料として与えた。得られた結果をKaplan-Meier法を用いて生存分析を行い、Log rank検定により対照区と検定区の2群の生存率に有意差が有るか否かを確認した。検定を行う期間としては供試飼料を十分に摂食し効果が有ったと思われる生存率50%に至るまでの期間で行った。
【0219】
なお、Kaplan-Meier法は死亡発生ごとに生存率を計算して生存分析を行う方法である。Log rank検定は、Kaplan-Meier法で求めた2群の生存率の差を検定する。具体的には、帰無仮説(2群の生存率に差はない)を検定する。検定の結果、帰無仮説のもとでは起こりうる確率が極めて小さいとき、この帰無仮説は棄却されることになる。帰無仮説を棄却する確率の基準値を設定する必要があり、この基準値は帰無仮説が真にもかかわらず、それを誤って棄却してしまう確率であるので、危険率(α)という。帰無仮説のもとで、検定統計量χが生じる確率をΡで表し、Ρ値という。Ρ値は、仮にこの値をαに設定したとすれば、帰無仮説が棄却されるであろう値である。よって、一般的にΡ≦0.05の場合には統計学的に有意、Ρ≦0.01の場合には統計学的に極めて有意である。その結果を表10に示す。
【0220】
【表10】
【0221】
表から、対照区と3種類の検体区(10ppm、100ppm、1000ppm)において、対照区よりも生存率が統計学的に有意であるといえる検体区は、雄に本発明の多孔質セラミックを100ppm及び1000ppm含む供試飼料を与えたときである。
【0222】
今回の実験結果より、雄のキイロショウジョウバエに関して、対象区より検体区の生存率が向上することは統計学的処理結果からも明らかになった。その生存率変化を
図20に示した。訓化した8日目以降の生存率を見ると、明らかに検体区の方が対照区よりも生存率が高くなっていることが分かる。特に10日目から88日目にかけては多孔質セラミックを含む寒天摂取の効果により高い生存率を示した。なお、88日目以降の生存率は、対照区と検体区とがほぼ同様になっているが、これは老化が進んだ結果、動き回らず寒天を食べなくなったため、多孔質セラミックも摂取できなくなったからである。ただし、それ以後に関しても対照区が101日目に全数死亡するのに対して、検体区では濃度の低い方から順に全数死亡日が104日目、108日目、114日目と伸長している。このことから摂取しなくなった88日目以降でも、効果は最大2週間弱まで発揮することが判明した。
【0223】
以上の結果を見る限りでは、多孔質セラミック摂取で寿命が延びるのではなく、対照区と比較してさまざまな生体機能が良好に保持されるため、健康に生きられる期間(健康寿命)が長くなり死亡率が低くなったと判断される。すなわち、生存中は高齢化しても良好なQOLを維持できることになる。特に多孔質セラミックを10ppm含む寒天を餌とした検体区と対照区の71日目から81日目にかけては明確な差があり、検体区では生存率が58%一定で推移するのに対し、対照区では42%から32%まで減少する。人間に換算した場合、約80才まで健康に生きる人口が26%増加したことになる。日本人男性の平均寿命は約80歳で、健康寿命は約70歳であると言われている。70歳以降の10年間は何らかの問題を抱えて健康に生きることが難しい現状に対して、多孔質セラミック摂取は健康寿命の伸長に寄与するものと思われる。
【0224】
このように、本発明の多孔質セラミックの摂取により、健全な生体機能が維持され健康に生きられる確率が増加するという効果が得られる。生体内での正確な反応機構は確定できないものの、本発明の多孔質セラミックの摂取により生存率向上が判明した。特に本発明の多孔質セラミックの摂取により、加齢による老年期の死亡率低減効果だけでなく、若年から老年に至るいずれの期間においても生存率が向上する結果となった。
【0225】
試験例21:血流依存性血管拡張
高血圧、糖尿病などによって血管に負担がかかると、血管内皮細胞が損傷して動脈硬化を防ぐ働きが失われ、内膜にコレステロール及び脂肪が蓄積する結果、プラークが発生して血流障害を起こす。また、プラークの破裂により血栓が発生し、心筋梗塞、脳梗塞などの循環器系疾患につながる。これらの予防薬として、血栓溶解剤などがあるが本質的な治療ではなく、血管内皮状態の改善が重要である。
【0226】
血流依存性血管拡張(FMD)検査は、動脈硬化、高血圧などの指標となるものであり血管の拡張率を計るものである。血管内皮細胞の機能が低下すると血管拡張因子のNO産生が減り、FMD値が低下する。正常値の目安は6%以上であり、5%未満では血管内皮障害が疑われる。被験者I(30代男性)に対して、多孔質セラミック摂取前後のFMD値を測定した。(TCM)式に示される多孔質セラミックの代表例として製造例3のセラミック成形体1個を水道水2Lに投入した加工水を1L/日で毎日摂取してもらった。摂取前の数値は5.5%と低い値であったが、6ヶ月間の摂取後の数値は11.5%と大幅な改善が見られた。本発明の他の多孔質セラミックも同様のFMD値の改善効果を有していた。以上の結果より、本発明の多孔質セラミックは、血管内皮状態の改善に優れた効果が有った。
【0227】
試験例22:整腸作用
脊髄神経損傷により下半身が麻痺した被験者J1(60代男性)は、歩行不能と共に神経損傷が原因と考えられる便秘となり、10日に一度の座薬により強制排便を行っていた。そこで、多孔質セラミックとして製造例16のセラミック多孔質体の一部(質量5g)を2Lの水道水に投入した加工水を2L/日の割合で摂取してもらったところ、3日目以降はほぼ毎日の排便となり、神経損傷に起因する便秘が改善された。このことから、本発明の多孔質セラミックは、整腸作用と同時に神経系にも良い作用を発揮するものである。また、同時に排便臭気も大幅に減少した。
【0228】
一方、子供時代から今まで毎朝の排便が下痢状態である被験者J2(60代男性)も同様の加工水を1L/日の割合で摂取したところ、3日目以降に下痢状態から正常便となる整腸作用が認められた。上記加工水の摂取を中止したところ、1週間後以降に再び以前と同様の下痢状態に戻ったことから、下痢状態の改善は本発明の多孔質セラミックによるものであることが確認された。
【0229】
試験例23:痙攣
痙攣の本質的な要因は未だに不明な点が多い。高速道路を長距離運転する運転手の中で、常にアクセルを一定に踏み続けるために右足が痙攣を起こし、それが起こると長時間にわたると訴える被験者K(60代男性)を選び出し、同様の痙攣が起こった際に、多孔質セラミックの代表例として製造例15のセラミック多孔質体の一部(5g)を水道水2Lに投入して得た加工水を200cc程度摂取してもらうことにした。その結果、加工水の経口摂取により、5分〜10分後には痙攣が治まった。これは、試験例21に記載のように血流増大効果が寄与しているものと思われる。
【0230】
試験例24:筋肉疲労
自発的協力者20名の被験者を性別、年齢別、毎日の運動量を加味して、ほぼ均等になるように群分けを行った。対照群の被験者には市販の1Lペットボトル入り飲料水を飲んでもらい、検体群の被験者には市販の1Lペットボトル入り飲料水に、平均粒径2μmにした製造例12のセラミック粉末体を10ppmの濃度で添加した粉末含有水を飲んでもらった。行程は坂道を含む片道5kmを徒歩で往復してもらい、その間に適宜少量ずつ飲用してもらった。この直後、翌日、翌々日の3日間の筋肉疲労及び筋肉痛に関するアンケートを採った。運動直後での筋肉疲労を示した人数は対照群が10名、検体群では9名とほとんど差は出なかった。しかし、翌日及び翌々日の筋肉痛を示した人数は対照群が8名に対して、検体群は0名と大きな差異が表れた。以上の結果より、セラミック粉末体を添加した粉末含有水の摂取により、疲労が短時間で回復して翌日以後の筋肉痛がなくなる疲労回復効果が認められた。
【0231】
また、週1回3時間程度のゴルフ練習を行う被験者L(60代男性)は、今まで練習日の翌日以降に筋肉痛を伴う筋肉疲労が起こった。しかし、多孔質セラミックとして製造例12のセラミック成形体1個を水道水2Lに投入して得た加工水を2L/日の割合で摂取して同様のゴルフ練習を行ってもらったが、今までと異なり、翌日以降の筋肉痛が無くなると共に筋肉疲労の自覚症状も無くなった。
【0232】
試験例25:ペースト状歯磨剤、ガム剤
基本成分の研磨剤及び発泡剤に加えて、薬用成分となる多孔質セラミックの一例として製造例8のセラミック粉末体(平均粒径2μm)を重量比で5%添加したペースト状の歯磨剤を作製した。本歯磨剤を使用し、被験者M(20代男性)が1日2回の割合で歯磨きを行った。この結果、本歯磨剤を使用することにより、試験例18及び試験例19で明らかにしている歯周病菌及び虫歯菌の減少に加えて、それら原因菌による炎症の予防効果、ラジカル分解によるものと思われる歯石除去促進効果、及びバイオフィルムなど歯垢の産生防止効果が認められた。また、歯に付着した喫煙ヤニもラジカルなどで分解が促進され、一般的な歯磨剤と比較して高い除去効果が認められた。薬用成分となる多孔質セラミックとして製造例8のセラミック粉末体(平均粒径2μm)を重量比で1%添加したガムを1日2回の割合で噛んでもらうことでも同様の効果が認められた。
【0233】
試験例26:液体歯磨剤、うがい剤、トローチ剤、飴剤
一般的な液体歯磨剤及びうがい剤の類は、使用後に吐き出すのが通常である。また、その使用後に水などでうがいをすることがあり、いずれも殺菌効果が減少する。一方、本発明の加工水は液体歯磨剤及びうがい剤として用いることができ、試験例6に記載の通り毒性が無いことから、口腔中に含んでうがいをした後に飲み込んでも問題は無い。さらに、使用後の洗浄なども不要なことから、殺菌効果が減ずることもなく、通常の液体歯磨剤及びうがい剤よりも効果が持続する優位性がある。また、歯ブラシでの歯磨きは磨き残しが多いが、本加工水は歯周ポケットにも浸透するため、虫歯及び歯槽膿漏の進行抑制並びに予防効果が高いと考えられる。
【0234】
これらを検証するため、比較的口内細菌数が多かった被験者Nを選び出し、多孔質セラミックの一例として製造例4のセラミック成形体1個を水道水2Lに投入して得た加工水をうがい剤として用い、非刺激唾液を採取してMSB培地にてストレプトコッカス・ミュータンス菌数の経時変化を調べた結果が
図21である。1日につき9時過ぎ、12時過ぎ、15時過ぎ、18時過ぎ、21時過ぎに各10秒間うがいを行い(図中の△)、唾液は1日に12時間毎の2回摂取して菌数を測定した。なお、唾液はうがい直前に摂取しており、うがい直後の菌数ではない。うがいを3時間毎に行う日中においては明確に減少することがわかる。一方、通常は就寝中に菌増殖するが、上記加工水を用いてうがいを行った場合、夜間にも顕著な増殖抑制が認められる結果、実験開始後の3日目21時での菌数はゼロとなった。うがい剤に替えて、製造例4のセラミック粉末体を1錠あたり0.1mgから1mg程度含有するトローチ剤及び飴剤を作製して、これらでも同様の試験を行ったところ、うがいよりも口腔内での滞留時間が増加することで、より顕著な殺菌効果が認められた。
【0235】
以上より、本発明の多孔質セラミックを含む液体歯磨剤、うがい剤、トローチ剤、飴剤などを継続的に使用することで、虫歯菌をほぼゼロに保つことが可能になり得る。口腔内を清浄に保持することにより、試験例19のように虫歯菌に起因した他の疾患の予防も期待できる。
【0236】
試験例27:口内炎
本発明の多孔質セラミックは、試験例18及び試験例19で明らかにしているように歯周病菌及び虫歯菌の除菌効果が認められ、多孔質セラミックを含有するペースト状歯磨剤、ガム剤、液体歯磨剤、うがい剤、トローチ剤、飴剤などは試験例25及び試験例26の結果から分かるように強い殺菌効果が認められた。
【0237】
これらの結果を受けて、口内炎になっている被験者3名にそれぞれ試験例25と試験例26と同じガム剤(1錠/回)、うがい剤(100cc/回)、トローチ剤(1錠/回)を1日3回の割合で摂取してもらったところ、全員が2日で完治した。よって、本発明の多孔質セラミックは、口内炎の治療薬となり得ることが分かった。また、その後も6ヶ月にわたって服用してもらった結果、その期間中に口内炎が発症することが無かった。よって、本発明の多孔質セラミックは、口内炎の予防薬となり得ることが分かった。
【0238】
試験例28:角質層
かかとの角質層が硬い被験者P1(60代女性)、P2(60代男性)が、(TOCD)式で示される多孔質セラミックとして製造例4のセラミック成形体1個を水道水1Lに入れて得た加工水をコットンに含侵させて1日に複数回患部に塗布することにより、約1ヶ月後には角質層が減少して柔らかな正常皮膚状態まで回復した。
【0239】
試験例29:口臭
加工水摂取前後の息をブレスチェッカー(0レベルから5レベルまでの6段階表示)で測定した。加工水摂取前が4レベル以上の被験者5名を選び出し、試験例28の加工水を用いて10秒/回のうがいを1日に5回の割合で1週間実施し、その後に測定した結果、2名は0レベル、3名は1レベルまで口臭が減少した。したがって、試験例28の加工水を経口摂取することにより試験例26に示すような口腔内殺菌ができる結果、細菌及び細菌代謝物を主な原因とする口臭の防止並びに予防が可能となった。
【0240】
試験例30:保湿効果
(TOCM)式で示される多孔質セラミックの代表例として製造例4のセラミック成形体1個を水道水1Lに入れて得た加工水は、詳細な機構は不明ながら細胞吸収に優れた化粧料として使用可能である。特に加工水に含まれるナノバブルは、容易に体内吸収される。そこで、本加工水をパック又は化粧水として複数の女性に使用してもらった結果、保水性に優れ乾燥皮膚が正常化すると共に、顔のしわも大きく改善された。これらの結果、本発明の多孔質セラミックは、肌の老化を防止又は改善できることが分かった。
【0241】
製造例21:飲食品の製造方法
(サプリメント)
(TCM)式で示される多孔質セラミックの代表例として製造例3のセラミック粉末体2mgに加えて、一般的に使用されるデキストリン、結晶セルロースなどの賦形剤(増量剤)、シリカなどの結合剤、及びステアリン酸カルシウムなどの付着防止剤を198mg配合した混合粉末を打錠して、直径8mmで重量200mgの丸型錠を製剤した。この錠剤をサプリメントとして摂取する場合、セラミック粉末体の1日あたり摂取量は、体重係数を0.2mg/kg〜0.5mg/kgの範囲として、それに近い錠数となる。一例として体重係数を0.2mg/kgとして、体重60kgの人が摂取するセラミック粉末体量は12mg/日であり、錠数は6錠となる。また、場合によっては、フィルムコーティング錠及び糖衣錠も適宜選択できる。この錠剤を飲料水と共に飲むことにより、多孔質セラミックが水と接触して、ラジカル及びナノバブル含有水となる。
【0242】
(トローチ、飴、ガム)
トローチ、飴又はガムの原材料に製造例7のセラミック粉末体0.1mg〜2mg程度を添加することによりトローチ、飴又はガムを製造できた。
【0243】
(パン)
ボウルに粉類(強力粉、砂糖、塩、ドライイースト及び100ppm濃度の製造例11のセラミック粉末体)とぬるま湯とを入れて混ぜ合わせた後、15分間ほど十分にこねた。それらの生地を丸く成形後、ぬれ布巾をかけて35℃程度に保持し、約2倍の大きさになるまで一次発酵させた。このふくらんだ生地を押さえてガスを抜き、更に膨らむ二次発酵させた。これを型に入れて200℃程度に温めたオーブンで10分ほど焼くことにより、食パンとなった。多孔質セラミックが発酵過程を阻害することもなく、通常の食パンとなった。
【0244】
(ホットケーキ)
市販のホットケーキ粉末に卵と適量の水及び製造例15のセラミック粉末体を100ppmの濃度で添加して、混合することにより生地を作製した。それを180℃程度に設定したホットプレートで焼いた結果、ホットケーキが得られた。100ppm程度の添加では外観上の変化は無く、食感も変わらなかった。
【0245】
(チョコレート)
市販のチョコレート原料を湯煎で一端溶かした後に、平均粒径2μmにした製造例19のセラミック粉末体を10ppmから5000ppmの濃度で添加して、よく攪拌した後に、型に入れて冷やすことによりチョコレートを製造できた。通常のチョコレートと全く違和感のない味覚と食感のチョコレートとなった。
【0246】
(寒天ゼリー)
水300ccを加熱しながら市販の寒天粉末2gを入れて十分に溶かした後に、適度の砂糖と平均粒径2μmにした製造例19のセラミック粉末体を20ppmの濃度で添加した。型に入れて冷蔵庫で冷やすことにより、多孔質セラミックを含有する寒天ゼリーを作製することができた。
【0247】
(豆腐)
市販の豆腐用豆乳(濃度13%)に平均粒径2μmにした製造例19のセラミック粉末体を10ppmの濃度で添加して、混合した後に70〜75℃にしてニガリを加えた。静かに混合した後、固まるまで10分ほど放置して豆腐を作製することができた。
【0248】
(飲料)
市販の500ccペットボトル入り飲料水に、平均粒径2μmにした製造例4のセラミック粉末体を1ppmから5000ppmまで濃度を変化させて添加した。濃度が10ppm以下は目視でほぼ透明な飲料水を製造できた。しかし、100ppmを超えると濃度が増すにつれて、灰色から黒色に色が変化した。
【0249】
炭酸水、緑茶、紅茶、コーヒーなどの飲料に、平均粒径2μmにした製造例4のセラミック粉末体を1ppmから5000ppmまで濃度を変化させて添加し多孔質セラミック含有飲料を製造することができた。
【0250】
試験例31:飲食品の摂取効果
製造例21で製造した飲食品を摂取することにより、生存率向上効果、それを可能とするために必要な生体自己修復効果に加えて、老化及び肥満の予防並びに抑制効果、疲労回復効果、血流増大によるアルコールなどの代謝促進効果、食欲増進効果などが期待できる。歯周病菌及び虫歯菌も、この飲食品の摂取により自然と減らすことが可能であり、それらの菌に由来する種々の疾病の予防効果も併せて得られると考えられる。
【0251】
製造例22:チュアブル錠
口腔内でなめて溶かす崩壊錠の一種であるチュアブル錠を製造した。(TOCM)式で示される多孔質セラミックの代表例として製造例4のセラミック粉末体100mgに食品原料となる増量剤などを加えて打錠し、直径15mm、重さ1gのチュアブル錠を製造した。
【0252】
試験例32:呼気中アセトアルデヒド測定
発がん性を有する有害なアセトアルデヒドは飲酒及び喫煙により血液中並びに呼気中に含まれるが、更に舌苔などからも慢性的に産生されていることが近年、明らかになった。そこで、健常人10名を被験者として、製造例22のチュアブルを1錠、約5分間かけて経口摂取してもらい、その前後での呼気中のアセトアルデヒド濃度をセンサガスクロマトグラフィ(FiS社製、SGEA-P2)で測定した。その結果が、
図22である。
【0253】
アセトアルデヒド濃度はチュアブル摂取前が190±30ppbであったのに対して、摂取後は65±15ppbと約1/3まで減少した。よって、本発明の多孔質セラミックを日常的に摂取することにより、アセトアルデヒドの生理的濃度(低濃度)での長期間暴露によるがん発症リスクを低減させることが期待できる。
【0254】
同様のアセトアルデヒド濃度低下は、(TOCM)式で示される多孔質セラミックの代表例として製造例4のセラミック成形体を水道水に投入して得られる加工水の摂取でも認められ、摂取後は1/2以下まで減少した。
【0255】
試験例33:プラーク臨床試験及び口腔内菌数変化(抗菌効果)
(TOCM)式で示される多孔質セラミックの代表例として製造例4のセラミック成形体を水道水に投入して得られる加工水、及び比較検討のために水道水の2種類のうがい液を用いた。1日に3回、各10秒以上のうがいを行って、加工水と水道水とによる差異を求めるため、プラークスコア(PS)及び唾液からの口腔内菌数測定による2重盲検法で試験を実施した。なお、歯磨きは普段通りに行ってよいこととした。被験者数n=30として、
図23に示されるような臨床プロトコルに従い、被験者を2グループに分け、1グループは「加工水うがいを1週間(図中の開始(1)から終了(2)まで)〜1週間の休み〜水道水うがいを1週間(図中の開始(3)から終了(4)まで)」のスケジュールで行い、他方のグループは、その順序を反対にしたスケジュールで行った。プラークスコア(PS)及び唾液採取は(1)(2)(3)(4)の各時点で行った。
【0256】
図24は臨床プロトコルに示した開始(1)から終了(2)までの加工水うがいと、開始(3)から終了(4)までの水道水うがいでのプラークインデックス(PI)を示している。縦軸のPIは各人のPSより求められ、最大値が3(最も汚れている)で最小値は0(歯垢無し)である。水道水では歯垢付着率傾向が定まらなかったのに対して、加工水のうがいでは摂取前と比較して摂取後の歯垢付着率は明確に減少した。この結果、統計学的に求めたP値も加工水のうがいではP<0.0001と有意差を示した。
【0257】
次に、口腔内菌数の変化を
図25に示す。加工水及び水道水のうがいにおける菌数変化を、「終了後の菌数(それぞれ(2)及び(4))÷開始前の菌数(それぞれ(1)及び(3))」の指標で表している。よって、菌数変化の無い場合の指標は1であり、それ以下では減少、それ以上では増加していることを示す。加工水による1週間のうがいでは約60%まで口腔内菌数が減少したのに対して、水道水うがいでは逆に170%まで増加した。以上より、加工水うがいによる抗菌効果が認められた。
【0258】
試験例34:アトピー性皮膚炎の悪化抑制
アトピー性皮膚炎は皮膚で黄色ブドウ球菌を含む複数の細菌が異常増殖して常在菌のバランスが崩れる結果、炎症が起こることがマウス実験で確かめられた。そこで、本発明の多孔質セラミックによる黄色ブドウ球菌の抗菌効果を調べた。
【0259】
菌体である黄色ブドウ球菌を4%NaCl含有LB液体培地の中で、37℃、24時間培養した。その培養菌体を寒天培地に播種し、シャーレの中央に置いたペーパーディスクに、陽性対象及び検体を各濃度で20μLずつ塗布した。陽性対象としてペニシリン系抗生物質であるアンピシリンを用い、検体は(TOCM)式で示される多孔質セラミックの代表例として製造例4のセラミック粉末体を投入した懸濁水を用いた。37℃で36時間培養した後に、抗菌効果を「ハロー直径÷ペーパーディスク直径」の比率で表した。この比率が大きいほど、黄色ブドウ球菌に対して抗菌効果が大きいことを意味する。
【0260】
実験結果を
図26に示す。セラミック粉末懸濁水が1μg/mL〜10μg/mLの濃度ではわずかに抗菌作用が認められたが、濃度上昇とともに抗菌作用が大きくなり、10000μg/mLでは抗生物質アンピシリンには及ばないものの抗菌率が4以上となり黄色ブドウ球菌に対する抗菌効果が認められた。
【0261】
そこで、アトピー性皮膚炎を呈する被験者の患部に1日に6回の懸濁水スプレーを行ったところ、かゆみも少なくなり患部の改善が認められた。以上より、本発明の多孔質セラミックが、アトピー性皮膚炎の症状改善に効果のあることが判明した。
【0262】
試験例35:ポリグルタミン病
神経変性疾患の1種であるポリグルタミン病は、不随意運動、歩行障害などを引き起こす。
図27はポリグルタミン病態モデルハエを用いて、本発明の多孔質セラミックの摂取有無による差異を生存率で測定した結果である。(TOCM)式で示される代表例として製造例4のセラミック粉末体を100ppmの濃度で寒天に混餌して与え、その薬理効果をハエの生存率で検討した。検体群のn数は22であり、対照群のn数は47であった。
【0263】
本発明の多孔質セラミックを含まない通常の餌を与えた対照群では死亡率50%が14日目、死亡率100%が26日目であるのに対して、本発明の多孔質セラミックを与えた検体群では死亡率50%が18日目、死亡率100%が27日目と寿命伸長が認められた。得られた結果をKaplan-Meier法を用いて生存分析を行い、Log rank検定により対照群と検定群の2群の生存率に有意差が有るか否かを確認した。検定を行う期間は全個体死亡までの期間である。この結果、P値は0.005となり検定群は対照群と比べて統計学的に有意差があった。なお、P値<0.05の時に有意差があると判定される。
【0264】
以上の結果から、本発明の多孔質セラミックは、ポリグルタミン病の有効な治療薬あるいは予防薬となり得ることが示唆された。
【0265】
試験例36:子牛の死亡率低下
飲料水として(TOCM)式で示される多孔質セラミックの代表例として製造例4のセラミック成形体を水道水に投入して得られる加工水を50頭の子牛に自由飲水で与えたところ、下痢症状が発現せず生後1年までの子牛の死亡率がほぼゼロ%となった。このように、加工水を畜産用飲料水として与えることで生存率の改善が見られた。
【0266】
試験例37:カンピロバクター菌
食中毒を引き起こすカンピロバクター菌に対する抗菌効果を調べた。(TOCM)式で示される多孔質セラミックの代表例として製造例4のセラミック粉末体を濃度100μg/mLとなるように添加した5%馬脱繊維血液加Blood Ager Base No.2をプラスチックシャーレ(直径90mm)に15mL入れて固化させた後に、カンピロバクターの菌液(菌数10
3/mL)を0.1mL塗布し、5及び7日間培養後、試験平板上の生育集落数を計測した。培養条件は35℃、微好気培養であった。なお、対照として、セラミック粉末体未添加の条件でも同様に試験した。
【0267】
その結果を表11に示す。製造例4の(TOCM)式に示される多孔質セラミックを用いた場合、カンピロバクター菌は培養5日目では既に死滅していた。製造例3の多孔質セラミックの場合でも同様の結果となった。
【0268】
【表11】
【0269】
試験例38:病原性大腸菌
腸管出血性大腸菌感染症の原因菌は、ベロ毒素を産生する病原性大腸菌である。その一種であるO157に対する抗菌効果を調べた。(TOCM)式で示される多孔質セラミックの代表例として製造例4のセラミック粉末体を濃度100μg/mLとなるように添加した普通寒天培地をプラスチックシャーレ(直径90mm)に20mL入れて固化させた後に、大腸菌(血清型O157:H7、ベロ毒素I及びII型産生株)の菌液(菌数10
3/mL)を0.1mL塗布し、1及び2日間培養後、試験平板上の生育集落数を計測した。培養温度は35℃であった。なお、対照として、セラミック粉末体未添加の条件でも同様に試験した。
【0270】
結果を表12に示す。製造例4の(TOCM)式に示される多孔質セラミックを用いた場合、病原性大腸菌は培養1日目で半減したが、2日目でも生存した。
【0271】
そこで、セラミック粉末体の濃度を10倍の1000μg/mLとした場合の結果を表13に示す。その他の培養条件などは、すべて同じであった。この結果、病原性大腸菌は培養2日目ではすでに死滅していた。製造例7及び製造例8の多孔質セラミックの場合でも同様の結果となった。
【0272】
【表12】
【0273】
【表13】
【0274】
試験例39:赤痢菌
赤痢菌に対する抗菌効果を調べた。(TOCM)式で示される多孔質セラミックの代表例として製造例4のセラミック粉末体を濃度1000μg/mLとなるように添加した普通寒天培地をプラスチックシャーレ(直径90mm)に20mL入れて固化させた後に、赤痢菌の菌液(菌数10
3/mL)を0.1mL塗布し、2及び5日間培養後、試験平板上の生育集落数を計測した。培養温度は35℃である。なお、対照として、セラミック粉末体未添加の条件でも同様に試験した。
【0275】
結果を表14に示す。製造例4の(TOCM)式に示される多孔質セラミックを用いた場合、赤痢菌は培養2日目ではすでに死滅していた。製造例11及び製造例12の多孔質セラミックの場合でも同様の結果となった。
【0276】
【表14】
【0277】
参考例2:枯草菌
枯草菌に対する抗菌活性の評価を行った。枯草菌はLB液体培地で37℃、1日間の培養を行って菌液を作製した。次に(TOCM)式で示される多孔質セラミックの代表例として製造例4のセラミック粉末体を濃度0、1、10、100、1000μg/mLとなるように添加した普通寒天培地をプラスチックシャーレ(直径90mm)に20mL入れて固化させた寒天平板培地を作製した。その寒天培地に、菌液(菌数10
3/mL)を0.3mL塗布し、1日間培養後、試験平板上の生育集落数を計測した。その結果、セラミック粉末体の濃度にかかわらず、いずれの場合も増殖し、枯草菌に対する抗菌効果は濃度1000μg/mLでも認められなかった。
【0278】
試験例17のピロリ菌、試験例34の黄色ブドウ球菌、試験例37のカンピロバクター菌、試験例38の病原性大腸菌、試験例39の赤痢菌など、いわゆる体に悪い毒性菌には有効な抗菌効果が出ている一方で、枯草菌などの体に良いとされる菌に対しては阻害効果が認められなかった。本実験結果は、本発明の多孔質セラミックを経口摂取しても腸内細菌叢に対して悪影響がないという判断結果を担保する事例である。
【0279】
試験例40:ノロウィルス
(TOCM)式で示される多孔質セラミックの代表例として製造例4のセラミック粉末体を用いて、ヒトノロウィルスの代替ウィルスとして汎用されるネコカリシウィルス(FCV:F9株)に対する不活化試験を行った。試験系の概要を以下に記す。
【0280】
セラミック粉末体を濃度2000ppmで添加した無血清MEM培養液と、5.0×10
6TCID
50/mlに調整したネコカリシウィルス液(溶媒:5%血清含有MEM)を等量で混合し、4℃下で反応させた。反応開始から24時間経過した時点で、反応液を回収し、孔径0.2μmのメンブレンフィルターを用いてろ過することで、セラミック粉末体を反応液から分離した。回収したろ液は直ちにネコ腎臓由来細胞株(CRFK細胞)を使用したTCID
50アッセイに処しウィルス力価の算定をおこなった。
【0281】
各試験より算定されたウィルス力価を被験物質非存在下での力価と比較することにより、被験物質のFCV不活化作用について評価した。試験はN数=2(duplicate)で実施した。表15にウィルス力価測定結果を示す。次に24時間後における対照群の平均値を100%として算定した相対値を表16に示す。
【0282】
【表15】
【0283】
【表16】
【0284】
以上の結果、ネコカリシウィルスを2000ppmに調整した被験物質と4℃下で24時間反応させた時、ウィルス力価を統計学上有意に低減させ、不活化に顕著な効果のあることが分かった。
【0285】
ノロウィルスは2次感染力が強く、保菌者との接触あるいは保菌者が接触した調理品を摂取するなどの感染経路で下痢及び発熱を伴って発症する。十分な手洗いなどの感染防止は重要であるが、加熱処理しない刺身、生野菜など食品に付いた場合は見分ける方法が無い。このため、できるだけ食品と接触しないことが望ましいが、更に望ましいのは食品の価値を毀損することなく食べても無害で安全な材料で食品自体を殺菌処理又は抗菌処理することである。一般的に用いられる次亜塩素酸などを食品に噴霧して殺菌処理することは原理的に可能であっても抗菌効果も低く、また有臭であることから現実的な解決方法にはならない。一方、本発明の多孔質セラミックは無味無臭で毒性を示さず食品原料となる上に、それ自体が殺菌効果及び抗菌効果を発揮することから、生食品に噴霧又は添加することができる優位性がある。
【0286】
試験例41−1:遺伝子毒性試験(AMES試験)
(TOCM)式で示される多孔質セラミックの代表例として製造例4で得たセラミック粉末体の遺伝子突然変異誘発性について、細菌を用いる復帰突然変異試験により検討した。遵守したGLPは「医薬品の安全性に関する非臨床試験の実施の基準に関する省令」(平成9年3月26日厚生省令第21号)であり、経済協力開発機構が定めるOECD Guideline for the Testing of Chemicals 471 (21st July 1997: Bacterial Reverse Mutation Test)を参照した。
【0287】
セラミック粉末体の遺伝子突然変異誘発性を検討するため、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium) TA100、TA98、TA1535及びTA1537株、並びに大腸菌(Escherichia coli) WP2uvrA株を用いて復帰突然変異試験を行った。試験は、ラット肝S9による代謝活性化系存在下(+S9処理)及び代謝活性化系非存在下(-S9処理)の両処理のプレインキュベーション法により行った。セラミック粉末体処理群では、ガイドラインに規定されている最高用量を含む用量(プレ試験:0.500〜5000μg/プレート、用量設定試験:0.762〜5000μg/プレート、本試験:19.5〜5000μg/プレート)で試験を実施した。
【0288】
その結果、セラミック粉末体処理群では、代謝活性化系の有無にかかわらず、陰性対照群の2倍以上の復帰変異コロニー数の増加は認められなかった。また、用量設定試験における陰性結果は、本試験において再現された。陽性対照物質は、各試験菌株に対し、明確な突然変異誘発作用を示した。以上の結果から、当該試験条件下において、セラミック粉末体は細菌に対して遺伝子突然変異誘発性を示さないもの(陰性)と判定した。
【0289】
試験例41−2:遺伝子毒性試験(小核−コメットコンビネーション試験)
(TOCM)式で示される多孔質セラミックの代表例として製造例4で得たセラミック粉末体のin vivoにおけるDNA損傷性及び小核赤血球誘発性について、ラットを用いるコメット-小核コンビネーション試験により検討した。遵守したGLPは「医薬品の安全性に関する非臨床試験の実施の基準に関する省令」(平成9年3月26日厚生省令第21号)であり、経済協力開発機構が定めるOECD Guideline for the Testing of Chemicals 489 (26 September 2014: IN VIVO MAMMALIAN ALKALINE COMET ASSAY)及びOECD Guideline for the Testing of Chemicals 474 (21st July 1997: Mammalian Erythrocyte Micronucleus Test)を参照した。また、当該試験は、「動物の愛護及び管理に関する法律」(昭和48年10月1日法律第105号、最終改正:平成25年6月12日法律第38号)及び「実験動物の飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準」(平成18年4月28日環境省告示第88号、最終改正:平成25年8月30日環境省告示第84号)を遵守して実施された。当該試験は実施機関の動物実験委員会により試験開始前に審査、承認されており、実施機関において定める「動物実験に関する指針」(2014年6月2日)に記載された動物倫理評価基準に従って実施された。
【0290】
セラミック粉末体の用量は、ガイドラインの上限である2000mg/kgを最高用量とし、1000及び500mg/kgの計3用量を設定し、Crl: CD(SD)系雄ラットに1日1回、3日間連続して経口投与した。最終投与3時間後に、コメットアッセイ用に肝臓及び胃を、小核試験用に大腿骨を摘出し、標本を作製した。コメットアッセイでは、DNA損傷性の指標である% tail DNA (%TD)を計測した。小核試験では、小核を有する幼若赤血球(MNIE)の出現頻度及び観察赤血球数に対する幼若赤血球数(IE)の割合を計測した。
【0291】
その結果、被験物質処理群での%TD及びMNIEは、統計学的に有意な増加は認められなかった。なお、IEの割合については、1000及び2000mg/kgで統計学的に有意な増加が認められたが、試験施設の背景データから求めた基準値(平均±3SD)内であった。以上の結果より、当該試験条件下において、セラミック粉末体は、ラット骨髄細胞に対する小核誘発性並びに肝臓及び胃に対するDNA損傷性を示さない(陰性)と判断した。
【0292】
試験例42:急性経口毒性試験(単回投与)
(TOCM)式で示される多孔質セラミックの代表例として製造例4で得たセラミック粉末体を用いてラットの急性経口投与毒性試験を実施した。遵守したGLPは「医薬品の安全性に関する非臨床試験の実施の基準に関する省令」(平成9年3月26日厚生省令第21号)であり、経済協力開発機構が定めるOECD Guideline for Testing of Chemicals 420 (17th December 2001: Acute Oral Toxicity - Fixed Dose Procedure)を参照した。また、当該試験は、「動物の愛護及び管理に関する法律」(昭和48年10月1日法律第105号、最終改正:平成25年6月12日法律第38号)及び「実験動物の飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準」(平成18年4月28日環境省告示第88号、最終改正:平成25年8月30日環境省告示第84号)を遵守して実施された。当該試験は実施機関の動物実験委員会により試験開始前に審査、承認されており、実施機関において定める「動物実験に関する指針」(2014年6月2日)に記載された動物倫理評価基準に従って実施された。
【0293】
セラミック粉末体の急性経口毒性を検討するため、一晩絶食させた7〜8週齢のCrl:CD(SD)系雌性ラット5匹に、被験物質を2000mg/kgの用量で単回強制経口投与した。投与後14日間を観察期間とし、動物の一般状態及び体重推移を観察した。観察期間終了後、全身の諸器官及び組織を肉眼的に観察(剖検)した。その結果、観察期間を通じて死亡例はなく、一般状態及び体重推移にも毒性影響は認められなかった。また、剖検においても、被験物質投与の影響と考えられる異常は認められなかった。以上より、本試験条件下において、セラミック粉末体の毒性影響は、いずれの観察、測定及び検査にも認められず、ラット単回経口投与時のLD
50は2000mg/kgを超える用量と考えられた。
【0294】
試験例43:慢性経口毒性試験(複数回投与)
(TOCM)式で示される多孔質セラミックの代表例として製造例4で得たセラミック粉末体を用いて、ラットによる慢性経口投与毒性試験を実施した。経済協力開発機構が定めるOECD Guideline for the Testing of Chemicals 408 (21st September, 1998: Repeated Dose 90-day Oral Toxicity Study in Rodents)を参照して、セラミック粉末体をラットに14日間反復経口投与し、当該被験物質の反復暴露時の毒性を調べた。また、当該試験は、「動物の愛護及び管理に関する法律」(昭和48年10月1日法律第105号、最終改正:平成25年6月12日法律第38号)及び「実験動物の飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準」(平成18年4月28日環境省告示第88号、最終改正:平成25年8月30日環境省告示第84号)を遵守して実施された。当該試験は実施機関の動物実験委員会により試験開始前に審査、承認されており、実施機関において定める「動物実験に関する指針」(2014年6月2日)に記載された動物倫理評価基準に従って実施された。
【0295】
製造例4で得たセラミック粉末体を被験物質として、0、100、300及び1000mg/kg/dayの用量で雌雄各5匹/群のCrl:CD(SD)ラットに14日間反復経口投与した。投与期間を通じて一般状態観察、体重及び摂餌量の測定を行い、投与期間終了時に血液学的検査、器官重量測定及び全身諸器官の肉眼的観察(剖検)を行った。その結果、試験期間を通じて、いずれの試験群においても死亡動物は認められず、一般状態観察、体重及び摂餌量の測定、血液学的検査、器官重量測定並びに剖検においても、被験物質投与による毒性変化は認められなかった。以上のとおり、本試験条件下では、1000mg/kg/day群においても、いずれの観察、測定及び検査に対して、被験物質投与による毒性変化は認められなかった。
【0296】
当業者は、本発明の範囲を逸脱することなく、開示の医薬組成物、化粧料、飲食品、及びそれらの使用方法に様々な変更を施すことができる。このように、類似の代用物及び改変は本発明の範囲に属するものとみなされる。