【実施例1】
【0031】
(実施例1の構成)
図1は、本発明の実施例1における半導体装置を示す概略の構成図である。
この半導体装置は、パワーモジュール10と、このパワーモジュール10の入力側に接続されたゲートドライブ用電源55と、パワーモジュール10の出力側と入力側との間に接続された波形検出部60と、パワーモジュール10の出力側に接続された負荷回路70と、を備えている。
【0032】
パワーモジュール10は、パワー半導体素子等を収容するパッケージ10aを有している。パッケージ10aは、高耐熱性・高絶縁性の樹脂やセラミックス等により形成されている。このパッケージ10aには、直流の電源電圧VDDを入力する(+)側電源端子11a、接地側の(−)側電源端子11b、駆動信号(例えば、ゲートパルス)Pgを入力する制御端子12、スイッチング時のターンオン時間tr及び/又はターンオフ時間tfの検出結果Svを入力する制御端子13、(+)側出力端子14a、及び接地側の(−)側出力端子14bが設けられている。
【0033】
パッケージ10a内には、第1定電流回路20、第2定電流回路30、第1スイッチ41、第2スイッチ42、パワー半導体素子(例えば、Nチャネル型パワーMOS)43、及び調整部50が収容されている。
【0034】
第1定電流回路20、第1スイッチ41、第2スイッチ42、及び第2定電流回路30は、(+)側電源端子11aと(−)側電源端子11bとの間に直列に接続されている。第1スイッチ41と第2スイッチ42との接続点には、パワーMOS43の制御電極としてのゲートが接続されている。パワーMOS43の第1電極としてのドレインは、(+)側出力端子14aに接続され、パワーMOS43の第2電極としてのソースが、(−)側出力端子14bに接続されている。更に、制御端子13には、調整部50の入力側が接続され、この調整部50の出力側が、第1定電流回路20及び第2定電流回路30に接続されている。
【0035】
第1定電流回路20は、調整部50から入力される第1基準電圧Vtrに対応した一定の第1制御駆動電流I41を第1スイッチ41側へ流す回路である。第2定電流回路30は、調整部50から入力される第2基準電圧Vtfに対応した一定の第2制御駆動電流I42を接地側へ流す回路である。
【0036】
第1スイッチ41は、制御端子12から入力されるゲートパルスPgによりオン/オフ動作し(例えば、ゲートパルスPgのLレベルによりオン状態、Hレベルによりオフ状態になり)、オン状態の時に、第1定電流回路20からの第1制御駆動電流I41をパワーMOS43のゲートを通してその寄生容量からなる入力容量Cissへ注入するものである。第2スイッチ42は、制御端子12から入力されるゲートパルスPgにより、第1スイッチ41がオン状態の時にオフ状態(例えば、ゲートパルスPgのLレベルによりオフ状態)になり、第1スイッチ41がオフ状態の時にオン状態(例えば、ゲートパルスPgのHレベルによりオン状態)になって、パワーMOS43のゲートからの第2制御駆動電流I42を第2定電流回路30側へ放出するものである。
【0037】
パワーMOS43は、ゲートに生じる入力容量Cissに第1制御駆動電流I41が注入され、その入力容量Cissに掛かる制御電圧としてのゲート電圧Vgが上昇して閾値電圧Vthを超えるとターンオンし、その入力容量Cissの蓄積電荷が放電されて第2制御駆動電流I42が放出され、その入力容量Cissに掛かるゲート電圧Vgが低下して閾値電圧Vthを下回るとターンオフするスイッチング素子である。
【0038】
調整部50は、パワーMOS43のスイッチング時におけるターンオン時間tr及び/又はターンオフ時間tfのデジタル信号からなる検出結果Svが入力されると、この検出結果Svが、予め設定されたデジタル信号からなるターンオン時間設定値tr0及び/又はターンオフ時間設定値tf0と一致するように第1基準電圧Vtr及び/又は第2基準電圧Vtfを調整して第1定電流回路20及び/又は第2定電流回路30に与えるものである。この調整部50は、制御部(例えば、メモリ制御部)51と、この出力側に接続された出力部(例えば、デジタル/アナログ変換回路、以下「D/A変換回路」という。)52と、を有している。
【0039】
メモリ制御部51は、メモリ51aを有している。メモリ51aには、デジタル信号からなるターンオン時間設定値tr0及び/又はターンオフ時間設定値tf0と、この調整部50で調整されたデジタル信号からなる第1基準電圧Vtr及び/又は第2基準電圧Vtfと、が記憶される。メモリ制御部51では、メモリ51aに記憶されたデジタル信号からなるターンオン時間設定値tr0及び/又はターンオフ時間設定値tf0と、入力されるターンオン時間tr及び/又はターンオフ時間tfのデジタル信号からなる検出結果Svと、の誤差ERRを求め、この誤差ERRが減少するように、メモリ51aに記憶されたデジタル信号からなる第1基準電圧Vtr及び/又は第2基準電圧Vtfを調整して出力するものであり、例えば、メモリを有するMCU(Memory Control Unit)等で構成されている。
【0040】
D/A変換回路52は、メモリ制御部51から出力されるデジタル信号からなる第1基準電圧Vtr及び/又は第2基準電圧Vtfをアナログ信号に変換し、この変換後の第1基準電圧Vtrを第1定電流回路20に与え、及び/又は、変換後の第2基準電圧Vtfを第2定電流回路30に与える回路である。
【0041】
(+)側電源端子11aと(−)側電源端子11bとの間には、電源電圧VDDを印加するためのゲートドライブ用電源55が接続されている。(+)側出力端子14a及び(−)側出力端子14bと制御端子12,13との間には、波形検出部60が接続されている。又、(+)側出力端子14a及び(−)側出力端子14bには、負荷回路70が接続されている。
【0042】
波形検出部60は、波形取得部61と、この出力側に接続された情報処理部62と、を有している。波形取得部61は、パワーMOS43のスイッチング時における電圧波形を取得するものであり、例えば、オシロスコープを含む波形計測器等で構成されている。情報処理部62は、波形取得部61で取得された電圧波形から、ターンオン時間tr及び/又はターンオフ時間tfのデジタル信号からなる検出結果Svを求め、この検出結果Svを、制御端子13を介して調整部50に与えると共に、駆動信号Pgを出力し、この駆動信号Pgを、制御端子12を介して第1、第2スイッチ41,42に与えるものであり、例えば、パーソナルコンピュータ(PC)等のコンピュータを含む演算制御手段等で構成されている。
【0043】
負荷回路70は、例えば、負荷抵抗71及び直流の駆動電源72等を有し、これらが(+)側出力端子14aと(−)側出力端子14bとの間に直列に接続されている。
【0044】
図2Aは、
図1中の第1定電流回路20の構成例を示す回路図である。
この第1定電流回路20は、1段の第1カレントミラー回路21と第1誤差増幅回路22とによって構成されている。第1カレントミラー回路21は、入力側に流れる第1駆動電流I21aに比例した第1制御駆動電流I41を出力側に流す回路である。第1誤差増幅回路22は、第1カレントミラー回路21の入力側に流れる第1駆動電流I21aを検出してこれに対応する第1駆動電圧V22bを生成し、この第1駆動電圧V22bを、調整部50から入力される第1基準電圧Vtrに追従させて、第1カレントミラー回路21の入力側に流れる第1駆動電流I21aを変化させる回路である。
【0045】
第1カレントミラー回路21は、トランジスタサイズが1:x(例えば、1:100)の一対のトランジスタ(例えば、Pチャネル型MOSFET、以下「PMOS」という。)21a,21bにより構成されている。一対のPMOS21a,21bは、ゲートが共通に接続され、それらのソースが(+)側電源端子11aに対して並列に接続されている。PMOS21aのドレインは、PMOS21a,21bのゲートに接続されている。
【0046】
第1誤差増幅回路22は、第1駆動電流I21aの電流値を変化させるトランジスタ(例えば、Nチャネル型MOSFET、以下「NMOS」という。)22aと、第1駆動電流I21aを検出してこれに対応する第1駆動電圧V22bを生成する抵抗22bと、演算増幅器(以下「オペアンプ」という。)22cと、により構成されている。PMOS21aのドレイン及びPMOS21a,21bのゲートと接地側との間には、NMOS22aのドレイン・ソースと抵抗22bとが直列に接続されている。NMOS22aのソースは、オペアンプ22cの(−)側入力端子に接続され、そのNMOS22aのゲートがオペアンプ22cの出力端子に接続されている。オペアンプ22cは、(+)側入力端子に第1基準電圧Vtrが入力され、(−)側入力端子に入力される第1駆動電圧V22bを、(+)側入力端子に入力される第1基準電圧Vtrに追従させて、NMOS22aに流れる第1駆動電流I21aを変化させる回路である。
【0047】
図2Bは、
図1中の第2定電流回路30の構成例を示す回路図である。
この第2定電流回路30は、2段の第2カレントミラー回路31と第2誤差増幅回路32とによって構成されている。第2カレントミラー回路31は、入力側に流れる第2駆動電流I31aに比例した第2制御駆動電流I42を出力側に流す回路である。第2誤差増幅回路32は、第2カレントミラー回路31の入力側に流れる第2駆動電流I31aを検出してこれに対応する第2駆動電圧V32bを生成し、この第2駆動電圧V32bを、調整部50から入力される第2基準電圧Vtfに追従させて、第2カレントミラー回路31の入力側に流れる第2駆動電流I31aを変化させる回路である。
【0048】
第2カレントミラー回路31は、トランジスタサイズが1:1の一対の前段側のトランジスタ(例えば、PMOS)31a,31bと、トランジスタサイズが1:x(例えば、1:100)の一対の後段側のトランジスタ(例えば、NMOS)31c,31dと、により構成されている。
【0049】
前段側のPMOS31a,31bは、ゲートが共通に接続され、それらのソースが電源電圧VDD端子に対して並列に接続されている。PMOS31aのドレインは、PMOS31a,31bのゲートに接続されている。後段側のNMOS31c,31dは、ゲートが共通に接続され、そのゲートがPMOS31bのドレイン及びNMOS31cのドレインに接続されている。NMOS31c,31dのソースは、(−)側電源端子11bに対して並列に接続されている。
【0050】
第2誤差増幅回路32は、第2駆動電流I31aの電流値を変化させるトランジスタ(例えば、NMOS)32aと、第2駆動電流I31aを検出してこれに対応する第2駆動電圧V32bを生成する抵抗32bと、オペアンプ32cと、により構成されている。PMOS31aのドレイン及びPMOS31a,31bのゲートと(−)側電源端子11bとの間には、NMOS32aのドレイン・ソースと抵抗32bとが直列に接続されている。NMOS32aのソースは、オペアンプ32cの(−)側入力端子に接続され、そのNMOS32aのゲートがオペアンプ32cの出力端子に接続されている。オペアンプ32cは、(+)側入力端子に第2基準電圧Vtfが入力され、(−)側入力端子に入力される第2駆動電圧V32bを、(+)側入力端子に入力される第2基準電圧Vtfに追従させて、NMOS32aに流れる第2駆動電流I31aを変化させる回路である。
【0051】
図2Cは、
図1中の第1、第2スイッチ41,42の構成例を示す回路図である。
この第1スイッチ41及び第2スイッチ42は、相補的にオン/オフ動作する相補型トランジスタ(例えば、直列に接続されたPMOS41a及びNMOS42aからなるCMOSトランジスタ)により構成されている。制御端子12は、バッファ15を介して、PMOS41a及びNMOS42aのゲートに共通に接続されている。PMOS41aのドレイン及びNMOS42aのドレインは、相互に接続され、この接続点が、パワーMOS43のゲートに接続されている。
【0052】
(実施例1の動作)
図3は、
図1中のパワーMOS43の動作を示す電圧・電流波形図である。
図3の横軸は時間t、縦軸はパワーMOS43におけるソース・ドレイン間電圧Vds波形の電圧値、及びそのパワーMOS43におけるドレイン電流Id波形の電流値である。
【0053】
パワーMOS43の電気的・熱的特性には、素子によってはばらつきがあるため、例えば、ターンオン時間trの最低値tr_minは50ns、最大値tr_maxは200ns、及び標準値tr_typは100nsである。同様に、ターンオフ時間tfの最低値tf_minは50ns、最大値tf_maxは200ns、及び標準値tf_typは100nsである。ドレイン・ソース間電圧Vdsの立ち下がりとドレイン電流Idの立ち上がりとの交差箇所のハッチング領域と、ドレイン・ソース間電圧Vdsの立ち上がりとドレイン電流Idの立ち下がりとの交差箇所のハッチング領域と、はオン/オフの切り替え時に発生するスイッチング損失Sloss(=Vds×Id)である。ドレイン・ソース間電圧Vdsの立ち上がり時には、寄生インダクタンスLd,Lsの影響により、過電圧のサージ電圧Vdsg[=(Ld+Ls)×di/dt]が発生することがある。
【0054】
図4は、
図1の半導体装置の動作を示すフローチャートである。
例えば、パワーMOS43の規格値において、ターンオン時間tr及びターンオフ時間tfが標準値tr_typ(=50ns),tf_typ(=50ns)の場合、
図1の半導体装置は、以下のステップS1〜S7のように動作する。
【0055】
図1の半導体装置が動作を開始して
図4のステップS1へ進むと、メモリ制御部51は、メモリ51aに記憶されたデジタル信号からなる第1基準電圧Vtr及び/又は第2基準電圧Vtfを読み出し、D/A変換回路52へ与える。D/A変換回路52は、読み出されたデジタル信号からなる第1基準電圧Vtr及び/又は第2基準電圧Vtfをアナログ信号に変換し、この変換後の第1基準電圧Vtrを初期値として第1定電流回路20へ出力し、及び/又は、変換後の第2基準電圧Vtfを初期値として第2定電流回路30へ出力し、ステップS2へ進む。
【0056】
ステップS2において、情報処理部62は、ゲートパルスPgを制御端子12へ出力する。ゲートパルスPgがLレベルの場合、これが
図2Cのバッファ15で駆動されて、第1スイッチ41に相当する
図2CのPMOS41aがオンすると共に、第2スイッチ42に相当する
図2CのNMOS42aがオフする。すると、
図2Aの第1定電流回路20において、オペアンプ22cは、初期値として入力された第1基準電圧Vtrと、抵抗22bで検出された第1駆動電圧V22bと、の誤差を求め、この誤差が減少するように(つまり、第1駆動電圧V22bが第1基準電圧Vtrに追従するように)、NMOS22aをゲート制御して、(+)側電源端子11a→PMOS21a→NMOS22a→抵抗22b→接地側、へ流れる第1駆動電流I21aを変化させる。変化した第1駆動電流I21aは、一対のPMOS21a,21bからなる第1カレントミラー回路21により、例えば、100倍に増幅され、この増幅された第1制御駆動電流I41が、(+)側電源端子11a→PMOS21bのソース・ドレイン→PMOS41aのソース・ドレイン→パワーMOS43のゲート、へ流れる。
【0057】
第1制御駆動電流I41がパワーMOS43のゲートに流れると、その第1制御駆動電流I41がパワーMOS43の入力容量Cissに注入され、そのパワーMOS43のゲート電圧Vgが上昇する。ゲート電圧Vgが上昇してパワーMOS43の閾値電圧Vthを超えると、このパワーMOS43が、所定のターンオン時間(標準値のターンオン時間tr_typ=100ns)をおいてターンオンする。パワーMOS43がターンオンすると、負荷回路70内の駆動電源72→負荷抵抗71→パワーMOS43、へ駆動電流が流れて負荷回路70が動作する。
【0058】
制御端子12に入力されるゲートパルスPgがHレベルになると、これが
図2Cのバッファ15で駆動されて、第1スイッチ42に相当する
図2CのPMOS41aがオフする共に、第2スイッチ42に相当する
図2CのNMOS42aがオンする。すると、
図2Bの第2定電流回路30において、オペアンプ32cは、初期値として入力された第2基準電圧Vtfと、抵抗32bで検出された第2駆動電圧V32bと、の誤差を求め、この誤差が減少するように(つまり、第2駆動電圧V32bが第2基準電圧Vtfに追従するように)、NMOS32aをゲート制御して、電源電圧VDD端子→PMOS31a→NMOS32a→抵抗32b→(−)側電源端子11b、へ流れる第2駆動電流I31aを変化させる。
【0059】
変化した第2駆動電流I31aは、第2カレントミラー回路31における前段のPMOS31a,31b対によって1:1に変換された後、後段のNMOS31c,31d対により、例えば、100倍に増幅され、この増幅された第2制御駆動電流I42が、パワーMOS43のゲート→NMOS42aのドレイン・ソース→NMOS31dのドレイン・ソース→(−)側電源端子11b、へ流れてパワーMOS43の入力容量Cissに蓄積された電荷が、(−)側電源端子11bへ放電される。
【0060】
パワーMOS43の入力容量Cissに蓄積された電荷が放電され、ゲート電圧Vgが低下して閾値電圧Vthを下回ると、このパワーMOS43が、所定のターンオフ時間(標準値のターンオフ時間tf_typ=100ns)をおいてターンオフする。パワーMOS43がターンオフすると、負荷回路70内の駆動電流が遮断されて動作が停止する。
【0061】
このような
図4のステップS2の動作後に、ステップS3へ進む。ステップS3において、波形取得部61は、パワーMOS43のスイッチング時におけるドレイン・ソース間電圧Vdsの波形を取得し、ステップS4へ進む。ステップS4において、情報処理部62は、取得されたドレイン・ソース間電圧Vdsの波形から、この立ち下がり時と立ち上がり時の電圧変化量(dv/dt)を取り込んで、ターンオン時間tr及び/又はターンオフ時間tfを検出し、デジタル信号からなる検出結果Svを、制御端子13を介してメモリ制御部51へ与え、ステップS5へ進む。
【0062】
ステップS5において、メモリ制御部51は、入力されたターンオン時間tr及び/又はターンオフ時間tfのデジタル信号からなる検出結果Svと、メモリ51aに記憶されたデジタル信号からなるターンオン時間設定値tr0及び/又はターンオフ時間設定値tf0と、を比較し、ターンオン時間tr及び/又はターンオフ時間tfが、ターンオン時間設定値tr0及び/又はターンオフ時間設定値tf0に達しなかった場合(即ち、ターンオン時間設定値tr0及び/又はターンオフ時間設定値tf0とターンオン時間tr及び/又はターンオフ時間tfとの間に誤差ERRがある場合)、ステップS6へ進む。これに対して、ターンオン時間tr及び/又はターンオフ時間tfが、ターンオン時間設定値tr0及び/又はターンオフ時間設定値tf0に達した場合(即ち、ターンオン時間設定値tr0及び/又はターンオフ時間設定値tf0とターンオン時間tr及び/又はターンオフ時間tfとの間に誤差ERRがない場合)、ステップS7へ進む。
【0063】
ステップS6へ進んだ場合、メモリ制御部51は、誤差ERRが減少するように、メモリ51aに記憶された第1基準電圧Vtr及び/又は第2基準電圧Vtfを、下げるか又は上げるかして調整する。D/A変換回路52は、調整された第1基準電圧Vtr及び/又は第2基準電圧Vtfをアナログ信号に変換し、その第1基準電圧Vtrを第1定電流回路20へ出力し、及び/又は、その第2基準電圧Vtfを第2定電流回路30へ出力し、ステップS2に戻る。すると、上記と同様のステップS2〜S5の動作が行われ、ステップS5において、ターンオン時間tr及び/又はターンオフ時間tfが、ターンオン時間設定値tr0及び/又はターンオフ時間設定値tf0の設定値に達した場合、ステップS7へ進む。
【0064】
ステップS7において、メモリ制御部51は、調整後の第1基準電圧Vtr及び/又は第2基準電圧Vtfをメモリ51aに書き込んだ後、動作を終了する。
【0065】
次に、パワーMOS43のばらつきについて説明する。
パワーMOS43のばらつきにより、パワーモジュール10毎に、スイッチング損失Sloss(=Vds×Id)とサージ電圧Vdsg[=(Ld+Ls)×di/dt)]がばらつく。そこで、調整後の第1基準電圧Vtrによって第1制御駆動電流I41を変更し、
図3に示すように、パワーMOS43のターンオン時間tr(つまり、ドレイン・ソース間電圧Vdsの立ち下がり時間)が大きい場合には、小さくし、そのターンオン時間trが小さい場合には、大きくする。
【0066】
又、調整後の第2基準電圧Vtfによって第2制御駆動電流I42を変更し、パワーMOS43のターンオフ時間tf(つまり、ドレイン・ソース間電圧Vdsの立ち上がり時間)が大きい場合には、小さくし、そのターンオン時間tfが小さい場合には、大きくする。このように、パワーモジュール10毎に最適な第1制御駆動電流I41及び/又は第2制御駆動電流I42を自動的に設定することにより、スイッチング損失Slossとサージ電圧Vdsgのばらつきを少なくすることが可能になる。
【0067】
(実施例1の効果)
本実施例1の半導体装置によれば、次の(1)〜(3)のような効果がある。
【0068】
(1) 第1定電流回路20及び第2定電流回路30を
有し、パワーMOS43のばらつきに応じて第1基準電圧Vtr及び/又は第2基準電圧Vtf1
を調整する構成になっているので、ターンオン時間tr及び/又はターンオフ時間tfの最大値MAX/最小値MINのばらつきを改善できる。これにより、スイッチング損失Slossとサージ電圧Vdsgのばらつきの少ないパワーモジュール10を実現できる。
【0069】
(2) 調整部50を有しているので、パワーMOS43のばらつきに応じて第1基準電圧Vtr及び/又は第2基準電圧Vtfを自動的に調整でき、ターンオン時間tr及び/又はターンオフ時間tfの最大値MAX/最小値MINのばらつきを容易に改善できる。しかも、第1基準電圧Vtr及び/又は第2基準電圧Vtfを自動的に調整できるので、使用者側での調整が不要になり、利便性が向上する。
【0070】
(3) 第1定電流回路20及び第2定電流回路30を、例えば、第1、第2カレントミラー回路21,31及び第1、第2誤差増幅回路22,32でそれぞれ構成した場合、その第2カレントミラー回路31を1段で構成しても良い。又、第1カレントミラー回路21や第2カレントミラー回路31を多段(例えば、2段)にすれば、電流増幅率の増加と特性の安定性を実現できる。