特許第6706875号(P6706875)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6706875
(24)【登録日】2020年5月21日
(45)【発行日】2020年6月10日
(54)【発明の名称】パワーモジュール及び半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 1/08 20060101AFI20200601BHJP
   H03K 17/16 20060101ALI20200601BHJP
   H02M 1/00 20070101ALI20200601BHJP
【FI】
   H02M1/08 A
   H03K17/16 F
   H02M1/00 B
【請求項の数】9
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-239208(P2016-239208)
(22)【出願日】2016年12月9日
(65)【公開番号】特開2018-98848(P2018-98848A)
(43)【公開日】2018年6月21日
【審査請求日】2019年6月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002037
【氏名又は名称】新電元工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086807
【弁理士】
【氏名又は名称】柿本 恭成
(74)【代理人】
【識別番号】100076222
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健一
【審査官】 栗栖 正和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−031357(JP,A)
【文献】 特開2009−038517(JP,A)
【文献】 特開2005−253183(JP,A)
【文献】 特開平10−150764(JP,A)
【文献】 実開平07−016208(JP,U)
【文献】 特開2013−017078(JP,A)
【文献】 特開2004−215493(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0006922(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0175650(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 1/08
H03K 17/16
H02M 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極と、第2電極と、制御電圧が印加されると前記第1電極及び前記第2電極間をスイッチングする制御電極と、を有し、前記制御電極に生じる寄生容量からなる入力容量に第1制御駆動電流が注入されと、前記第1電極及び前記第2電極間がターンオンし、前記入力容量の蓄積電荷が放電されて第2制御駆動電流が放出されると、前記第1電極及び前記第2電極間がターンオフするパワー半導体素子と、
第1基準電圧が入力され、前記第1基準電圧に対応した一定の前記第1制御駆動電流を流す第1定電流回路と、
入力される駆動信号によりオン/オフ動作し、オン状態の時に前記第1制御駆動電流を前記入力容量へ注入する第1スイッチと、
第2基準電圧が入力され、前記第2基準電圧に対応した一定の前記第2制御駆動電流を流す第2定電流回路と、
前記駆動信号により、前記第1スイッチがオン状態の時にオフ状態になり、前記第1スイッチがオフ状態の時にオン状態になって、前記第2制御駆動電流を接地側へ放出する第2スイッチと、
を備え、
前記パワー半導体素子のばらつきに応じて前記第1基準電圧及び/又は前記第2基準電圧を調整する構成になっているパワーモジュールであって、
前記パワー半導体素子の前記スイッチング時におけるターンオン時間及び/又はターンオフ時間の検出結果が入力されると、前記検出結果が、予め設定されたターンオン時間設定値及び/又はターンオフ時間設定値と一致するように前記第1基準電圧及び/又は前記第2基準電圧を調整して前記第1定電流回路及び/又は前記第2定電流回路に与える調整部を、
設けたことを特徴とするパワーモジュール。
【請求項2】
前記調整部は、
前記ターンオン時間設定値及び/又は前記ターンオフ時間設定値と、前記調整された第1基準電圧及び/又は第2基準電圧と、を記憶するメモリを有し、前記メモリに記憶された前記ターンオン時間設定値及び/又は前記ターンオフ時間設定値と前記検出結果との誤差を求め、前記誤差が減少するように、前記メモリに記憶された前記第1基準電圧及び/又は前記第2基準電圧を調整して出力する制御部と、
前記制御部から出力される前記第1基準電圧を前記第1定電流回路に与え、及び/又は、前記制御部から出力される前記第2基準電圧を、前記第2定電流回路に与える出力部と、
を有することを特徴とする請求項1記載のパワーモジュール。
【請求項3】
前記制御部は、前記メモリを有するメモリ制御装置で構成され、
前記出力部は、デジタル/アナログ変換回路で構成され、
ていることを特徴とする請求項2記載のパワーモジュール。
【請求項4】
前記第1定電流回路は、
第1駆動電流に比例した前記第1制御駆動電流を流す1段又は複数段の第1カレントミラー回路と、
前記第1駆動電流を検出してこれに対応する第1駆動電圧を生成し、前記第1駆動電圧を前記第1基準電圧に追従させて前記第1駆動電流を変化させる第1誤差増幅回路と、
を有し、
前記第2定電流回路は、
第2駆動電流に比例した前記第2制御駆動電流を流す1段又は複数段の第2カレントミラー回路と、
前記第2駆動電流を検出してこれに対応する第2駆動電圧を生成し、前記第2駆動電圧を前記第2基準電圧に追従させて前記第2駆動電流を変化させる第2誤差増幅回路と、
を有する、
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載のパワーモジュール。
【請求項5】
前記第1スイッチ及び前記第2スイッチは、
前記駆動信号により相補的にオン/オフ動作する相補型トランジスタで構成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載のパワーモジュール。
【請求項6】
前記パワー半導体素子は、
パワーMOSFET、IGBT、GaNパワーデバイス、又は、SiCパワーデバイスを含むパワートランジスタであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載のパワーモジュール。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項記載のパワーモジュールと、
前記ターンオン時間及び/又は前記ターンオフ時間の前記検出結果を求める波形検出部と、
を備えることを特徴とする半導体装置。
【請求項8】
前記波形検出部は、
前記パワー半導体素子の前記スイッチング時における電圧波形を取得する波形取得部と、
前記波形取得部で取得された前記電圧波形から、前記ターンオン時間及び/又は前記ターンオフ時間の前記検出結果を求めて前記調整部に与えると共に、前記駆動信号を出力して前記第1スイッチ及び前記第2スイッチに与える情報処理部と、
を有することを特徴とする請求項7記載の半導体装置。
【請求項9】
前記波形取得部は、オシロスコープを含む波形計測器で構成され、
前記情報処理部は、コンピュータを含む演算制御手段で構成され、
ていることを特徴とする請求項8記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワー素子等が1つのパッケージに収容されたパワーモジュールと、このパワーモジュールを備えた半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
パワーモジュールを構成するパワー半導体素子としては、例えば、パワーMOSFET(以下単に「パワーMOS」という。)、絶縁制御型バイポーラ・トランジスタ(以下「IGBT」という。)、窒化ガリウム(GaN)パワーデバイス、炭化珪素(SiC)パワーデバイス等のパワートランジスタが知られている。
【0003】
特許文献1には、IGBTを用い、交流モータ等の誘導性負荷を駆動制御する半導体装置において、誘導性負荷に流れる電流を正確に検出することができる電流検出機能付き半導体装置の技術が記載されている。
【0004】
特許文献2には、絶縁ゲート型スイッチング素子として例えばIGBTを用いたパワーモジュールとしての駆動回路において、消費電流を低減するために、カレントミラーを用いた定電流源、切替回路、及び電流モード選択回路を有する駆動回路の技術が記載されている。
【0005】
図6は、従来のNチャネル型パワーMOSの概略を示す等価回路図である。
Nチャネル型パワーMOS1は、ゲートG、ドレインD、及びソースSの3つの電極を有している。Nチャネル型パワーMOS1のドレイン・ソースには、例えば、負荷回路2側の負荷抵抗Rlと電源電圧Vddを出力する電源Eと、が直列に接続される。このNチャネル型パワーMOS1では、ゲートGに印加されるゲート電圧Vgが上昇して閾値電圧Vthを超えると、ドレイン・ソース間がターンオンし、ゲート電圧Vgが低下して閾値電圧Vthを下回ると、ドレイン・ソース間がターンオフする。
【0006】
ゲートG、ドレインD及びソースSには、寄生容量や寄生インダクタンス等が存在している。例えば、ゲート・ドレイン間には寄生容量Cgdが、ゲート・ソース間には寄生容量Cgsが、及び、ドレイン・ソース間には寄生容量Cdsが、それぞれ存在している。又、ドレインD側には寄生インダクタンスLdが、ソースS側には寄生インダクタンスLsがそれぞれ存在している。
【0007】
スイッチング特性に大きく影響するのは、ゲート・ドレイン間の寄生容量Cgdである。ゲート・ドレイン間の寄生容量Cgdは、ドレイン・ソース間電圧Vdsがゲート・ソース間電圧Vgs以下になると、例えば、約10倍に急激に上昇する。パワーMOS1の各容量には、次式(1)のような関係式が成り立つ。
入力容量Ciss≒Cgd+Cgs
帰還容量Crss≒Cgd
出力容量Coss≒Cgd+Cds・・・・(1)
【0008】
パワーMOS1は、電圧制御型素子であるため、オン状態又はオフ状態を保持する時は駆動電流を必要としないが、スイッチング動作を行う時は、そのたびに入力容量Cissに対して充放電電流が流れる。
【0009】
図7は、図6の抵抗負荷Rlに対するパワーMOS1のスイッチング動作波形図である。
【0010】
図6のパワーMOS1では、ドレイン・ソース間電圧Vdsが高(以下「H」という。)レベルから低(以下「L」という。)レベルに立ち下がると(即ち、ドレイン電流IdがLレベルからHレベルに立ち上がると)、ターンオンし、ドレイン・ソース間電圧VdsがLレベルからHレベルに立ち上がると(即ち、ドレイン電流IdがHレベルからLレベルに立ち下がると)、ターンオフする。
【0011】
ここで、ターンオン時間trは、ドレイン・ソース間電圧Vdsの立ち下がり波形において、立ち下がり開始から90%の時刻と、立ち下がり終了前の10%の時刻と、の間の時間である。更に、ターンオフ時間tfは、ドレイン・ソース間電圧Vdsの立ち上がり波形において、立ち上がり開始から10%の時刻と、立ち上がり終了前の90%の時刻と、の間の時間である。
【0012】
ドレイン・ソース間電圧Vdsの立ち下がりとドレイン電流Idの立ち上がりとの交差箇所のハッチング領域と、ドレイン・ソース間電圧Vdsの立ち上がりとドレイン電流Idの立ち下がりとの交差箇所のハッチング領域と、はオン/オフの切り替え時に発生するスイッチング損失Sloss(=Vds×Id)である。ドレイン・ソース間電圧Vdsの立ち上がり時には、寄生インダクタンスLd,Lsの影響により、過電圧のサージ電圧Vdsg[=(Ld+Ls)×di/dt、但し、di/dtはスイッチング時間]が発生することがある。
【0013】
図8は、図6のパワーMOS1の電気的・熱的特性(ケース温度Tc=25℃)の一例を示すデータシートである。
図8において、ドレイン・ソース間オン抵抗Ronは、ドレイン電流Id=25A、及びゲート・ソース間電圧Vgs=10Vの場合、規格値として標準値TYP=6.9mΩ、最大値MAX=8.7mΩである。ゲート閾値電圧Vthは、ドレイン電流Id=1mA、及びドレイン・ソース間電圧Vds=10Vの場合、規格値として最小値MIN=2.0V、標準値TYP=3.0V、最大値MAX=4.0Vである。
【0014】
ドレイン・ソース間電圧Vds=25V、ゲート・ソース間電圧Vgs=0V、及び動作周波数f=1MHzの場合、入力容量Cissは、規格値として標準値TYP=5880pFであり、帰還容量Crssは、規格値として標準値TYP=250pFであり、更に、出力容量Cossは、規格値として標準値TYP=530pFである。
【0015】
又、ドレイン電流Id=25A、負荷抵抗Rl=2Ω、電源電圧Vdd=50V、ゲート抵抗Rg=0Ω、(+)側ゲート・ソース間電圧Vgs(+)=10V、及び(−)側ゲート・ソース間電圧Vgs(−)=0Vの場合、ターンオン時間trは、規格値として標準値TYP=28nsであり、ターンオフ時間tfは、規格値として標準値TYP=49nsである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2003−299363号公報
【特許文献2】国際公開WO2012−153459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
従来のパワーMOS1等のパワー半導体素子を用いたパワーモジュール、及びこのパワーモジュールを備えた半導体装置では、次の(a)、(b)のような課題があった。
【0018】
(a) パワーMOS1の電気的・熱的特性を示す図8のデータシートにおいて、ターンオン時間tr及びターンオフ時間tfの規格値として標準値TYPのみが規定されている場合(例えば、ターンオン時間trの標準値TYPが28ns、ターンオフ時間tfの標準値TYPが49ns)、装置設計上の最大値MAX/最小値MINの規格値が無いため、モジュールの最悪(ワースト)設計ができない。つまり、図7のスイッチング動作波形において、スイッチング損失Sloss(=Vds×Id)とサージ電圧Vdsg[=(Ld+Ls)×di/dt]のワースト値が分からない。
【0019】
仮に、ターンオン時間tr/ターンオフ時間tfの最大値MAX/最小値MINが規格化できたとしても、パワーMOS1の製造ばらつきのため、一般的には、標準値TYP(例えば、tr=28ns、tf=49ns)に対し、最大値MAX/最小値MINが−50%/+100%の範囲となる。パワーモジュールの設計において、その値をそのまま使用すると、スイッチング損失Slossのワースト値が標準値TYPの2倍となり、放熱設計も2倍を想定しなければならない。又、ターンオン時間tr/ターンオフ時間tfの最小値MINについては、寄生インダクタンスLd,Lsによって発生するサージ電圧Vdsgが標準値TYPに対して2倍となるため、パワーMOS1の電圧定格オーバや電磁妨害ノイズ(Electro-Magnetic Interference noise;EMIノイズ)の悪化が懸念される。
【0020】
(b) パワーMOS1には製造ばらつきがあるため、例えば、パワーMOS1を用いてパワーモジュール等の半導体装置を製造する場合、使用者は、そのパワーMOS1のターンオン時間tr及びターンオフ時間tfを調整しなければならず、不利不便である。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明のパワーモジュールは、パワー半導体素子、第1定電流回路、第1スイッチ、第2定電流回路、及び、第2スイッチを備えている。
【0022】
ここで、前記パワー半導体素子は、第1電極と、第2電極と、制御電圧が印加されると前記第1電極及び前記第2電極間をオン/オフ動作する制御電極と、を有し、前記制御電極に生じる寄生容量からなる入力容量に第1制御駆動電流が注入されと、前記第1電極及び前記第2電極間がターンオンし、前記入力容量の蓄積電荷が放電されて第2制御駆動電流が放出されると、前記第1電極及び前記第2電極間がターンオフするスイッチング素子である。前記第1定電流回路は、第1基準電圧が入力され、前記第1基準電圧に対応した一定の前記第1制御駆動電流を流す回路である。
【0023】
前記第1スイッチは、入力される駆動信号によりオン/オフ動作し、オン状態の時に前記第1制御駆動電流を前記入力容量へ注入するスイッチである。前記第2定電流回路は、第2基準電圧が入力され、前記第2基準電圧に対応した一定の前記第2制御駆動電流を流す回路である。前記第2スイッチは、前記駆動信号により、前記第1スイッチがオン状態の時にオフ状態になり、前記第1スイッチがオフ状態の時にオン状態になって、前記第2制御駆動電流を接地側へ放出するスイッチである。そして、前記パワー半導体素子のばらつきに応じて前記第1基準電圧及び/又は前記第2基準電圧を調整する構成になっている。
【0024】
更に、本発明では、前記パワー半導体素子の前記スイッチング時におけるターンオン時間及び/又はターンオフ時間の検出結果が入力されると、前記検出結果が、予め設定されたターンオン時間設定値及び/又はターンオフ時間設定値と一致するように前記第1基準電圧及び/又は前記第2基準電圧を調整して前記第1定電流回路及び/又は前記第2定電流回路に与える調整部を、設けたことを特徴とする。
【0025】
本発明の半導体装置は、前記発明のパワーモジュールと、前記ターンオン時間及び/又は前記ターンオフ時間の前記検出結果を求める波形検出部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明のパワーモジュール及び半導体装置によれば、次の(A)、(B)のような効果がある。
【0027】
(A) 第1定電流回路及び第2定電流回路を有し、パワー半導体素子のばらつきに応じて第1基準電圧及び/又は第2基準電圧を調整する構成になっているので、ターンオン時間及び/又はターンオフ時間の最大値/最小値のばらつきを改善できる。これにより、スイッチング損失とサージ電圧のばらつきの少ないパワーモジュールを実現できる。
【0028】
(B) 調整部を有しているので、パワー半導体素子のばらつきに応じて第1基準電圧及び/又は第2基準電圧を自動的に調整でき、ターンオン時間及び/又はターンオフ時間の最大値/最小値のばらつきを容易に改善できる。しかも、第1基準電圧及び/又は第2基準電圧を自動的に調整できるので、使用者側での調整が不要になり、利便性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の実施例1における半導体装置を示す概略の構成図
図2A図1中の第1定電流回路の構成例を示す回路図
図2B図1中の第2定電流回路の構成例を示す回路図
図2C図1中の第1、第2スイッチの構成例を示す回路図
図3図1中のパワーMOSの動作を示す電圧・電流波形図
図4図1の半導体装置の動作を示すフローチャート
図5】本発明の実施例2におけるパワー半導体素子としてのIGBTの概略を示す等価回路図
図6】従来のNチャネル型パワーMOSの概略を示す等価回路図
図7図6の負荷抵抗Rlに対するパワーMOSのスイッチング動作波形図
図8図6のパワーMOSの電気的・熱的特性(ケース温度Tc=25℃)の一例を示すデータシート
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明を実施するための形態は、以下の好ましい実施例の説明を添付図面と照らし合わせて読むと、明らかになるであろう。但し、図面はもっぱら解説のためのものであって、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例1】
【0031】
(実施例1の構成)
図1は、本発明の実施例1における半導体装置を示す概略の構成図である。
この半導体装置は、パワーモジュール10と、このパワーモジュール10の入力側に接続されたゲートドライブ用電源55と、パワーモジュール10の出力側と入力側との間に接続された波形検出部60と、パワーモジュール10の出力側に接続された負荷回路70と、を備えている。
【0032】
パワーモジュール10は、パワー半導体素子等を収容するパッケージ10aを有している。パッケージ10aは、高耐熱性・高絶縁性の樹脂やセラミックス等により形成されている。このパッケージ10aには、直流の電源電圧VDDを入力する(+)側電源端子11a、接地側の(−)側電源端子11b、駆動信号(例えば、ゲートパルス)Pgを入力する制御端子12、スイッチング時のターンオン時間tr及び/又はターンオフ時間tfの検出結果Svを入力する制御端子13、(+)側出力端子14a、及び接地側の(−)側出力端子14bが設けられている。
【0033】
パッケージ10a内には、第1定電流回路20、第2定電流回路30、第1スイッチ41、第2スイッチ42、パワー半導体素子(例えば、Nチャネル型パワーMOS)43、及び調整部50が収容されている。
【0034】
第1定電流回路20、第1スイッチ41、第2スイッチ42、及び第2定電流回路30は、(+)側電源端子11aと(−)側電源端子11bとの間に直列に接続されている。第1スイッチ41と第2スイッチ42との接続点には、パワーMOS43の制御電極としてのゲートが接続されている。パワーMOS43の第1電極としてのドレインは、(+)側出力端子14aに接続され、パワーMOS43の第2電極としてのソースが、(−)側出力端子14bに接続されている。更に、制御端子13には、調整部50の入力側が接続され、この調整部50の出力側が、第1定電流回路20及び第2定電流回路30に接続されている。
【0035】
第1定電流回路20は、調整部50から入力される第1基準電圧Vtrに対応した一定の第1制御駆動電流I41を第1スイッチ41側へ流す回路である。第2定電流回路30は、調整部50から入力される第2基準電圧Vtfに対応した一定の第2制御駆動電流I42を接地側へ流す回路である。
【0036】
第1スイッチ41は、制御端子12から入力されるゲートパルスPgによりオン/オフ動作し(例えば、ゲートパルスPgのLレベルによりオン状態、Hレベルによりオフ状態になり)、オン状態の時に、第1定電流回路20からの第1制御駆動電流I41をパワーMOS43のゲートを通してその寄生容量からなる入力容量Cissへ注入するものである。第2スイッチ42は、制御端子12から入力されるゲートパルスPgにより、第1スイッチ41がオン状態の時にオフ状態(例えば、ゲートパルスPgのLレベルによりオフ状態)になり、第1スイッチ41がオフ状態の時にオン状態(例えば、ゲートパルスPgのHレベルによりオン状態)になって、パワーMOS43のゲートからの第2制御駆動電流I42を第2定電流回路30側へ放出するものである。
【0037】
パワーMOS43は、ゲートに生じる入力容量Cissに第1制御駆動電流I41が注入され、その入力容量Cissに掛かる制御電圧としてのゲート電圧Vgが上昇して閾値電圧Vthを超えるとターンオンし、その入力容量Cissの蓄積電荷が放電されて第2制御駆動電流I42が放出され、その入力容量Cissに掛かるゲート電圧Vgが低下して閾値電圧Vthを下回るとターンオフするスイッチング素子である。
【0038】
調整部50は、パワーMOS43のスイッチング時におけるターンオン時間tr及び/又はターンオフ時間tfのデジタル信号からなる検出結果Svが入力されると、この検出結果Svが、予め設定されたデジタル信号からなるターンオン時間設定値tr0及び/又はターンオフ時間設定値tf0と一致するように第1基準電圧Vtr及び/又は第2基準電圧Vtfを調整して第1定電流回路20及び/又は第2定電流回路30に与えるものである。この調整部50は、制御部(例えば、メモリ制御部)51と、この出力側に接続された出力部(例えば、デジタル/アナログ変換回路、以下「D/A変換回路」という。)52と、を有している。
【0039】
メモリ制御部51は、メモリ51aを有している。メモリ51aには、デジタル信号からなるターンオン時間設定値tr0及び/又はターンオフ時間設定値tf0と、この調整部50で調整されたデジタル信号からなる第1基準電圧Vtr及び/又は第2基準電圧Vtfと、が記憶される。メモリ制御部51では、メモリ51aに記憶されたデジタル信号からなるターンオン時間設定値tr0及び/又はターンオフ時間設定値tf0と、入力されるターンオン時間tr及び/又はターンオフ時間tfのデジタル信号からなる検出結果Svと、の誤差ERRを求め、この誤差ERRが減少するように、メモリ51aに記憶されたデジタル信号からなる第1基準電圧Vtr及び/又は第2基準電圧Vtfを調整して出力するものであり、例えば、メモリを有するMCU(Memory Control Unit)等で構成されている。
【0040】
D/A変換回路52は、メモリ制御部51から出力されるデジタル信号からなる第1基準電圧Vtr及び/又は第2基準電圧Vtfをアナログ信号に変換し、この変換後の第1基準電圧Vtrを第1定電流回路20に与え、及び/又は、変換後の第2基準電圧Vtfを第2定電流回路30に与える回路である。
【0041】
(+)側電源端子11aと(−)側電源端子11bとの間には、電源電圧VDDを印加するためのゲートドライブ用電源55が接続されている。(+)側出力端子14a及び(−)側出力端子14bと制御端子12,13との間には、波形検出部60が接続されている。又、(+)側出力端子14a及び(−)側出力端子14bには、負荷回路70が接続されている。
【0042】
波形検出部60は、波形取得部61と、この出力側に接続された情報処理部62と、を有している。波形取得部61は、パワーMOS43のスイッチング時における電圧波形を取得するものであり、例えば、オシロスコープを含む波形計測器等で構成されている。情報処理部62は、波形取得部61で取得された電圧波形から、ターンオン時間tr及び/又はターンオフ時間tfのデジタル信号からなる検出結果Svを求め、この検出結果Svを、制御端子13を介して調整部50に与えると共に、駆動信号Pgを出力し、この駆動信号Pgを、制御端子12を介して第1、第2スイッチ41,42に与えるものであり、例えば、パーソナルコンピュータ(PC)等のコンピュータを含む演算制御手段等で構成されている。
【0043】
負荷回路70は、例えば、負荷抵抗71及び直流の駆動電源72等を有し、これらが(+)側出力端子14aと(−)側出力端子14bとの間に直列に接続されている。
【0044】
図2Aは、図1中の第1定電流回路20の構成例を示す回路図である。
この第1定電流回路20は、1段の第1カレントミラー回路21と第1誤差増幅回路22とによって構成されている。第1カレントミラー回路21は、入力側に流れる第1駆動電流I21aに比例した第1制御駆動電流I41を出力側に流す回路である。第1誤差増幅回路22は、第1カレントミラー回路21の入力側に流れる第1駆動電流I21aを検出してこれに対応する第1駆動電圧V22bを生成し、この第1駆動電圧V22bを、調整部50から入力される第1基準電圧Vtrに追従させて、第1カレントミラー回路21の入力側に流れる第1駆動電流I21aを変化させる回路である。
【0045】
第1カレントミラー回路21は、トランジスタサイズが1:x(例えば、1:100)の一対のトランジスタ(例えば、Pチャネル型MOSFET、以下「PMOS」という。)21a,21bにより構成されている。一対のPMOS21a,21bは、ゲートが共通に接続され、それらのソースが(+)側電源端子11aに対して並列に接続されている。PMOS21aのドレインは、PMOS21a,21bのゲートに接続されている。
【0046】
第1誤差増幅回路22は、第1駆動電流I21aの電流値を変化させるトランジスタ(例えば、Nチャネル型MOSFET、以下「NMOS」という。)22aと、第1駆動電流I21aを検出してこれに対応する第1駆動電圧V22bを生成する抵抗22bと、演算増幅器(以下「オペアンプ」という。)22cと、により構成されている。PMOS21aのドレイン及びPMOS21a,21bのゲートと接地側との間には、NMOS22aのドレイン・ソースと抵抗22bとが直列に接続されている。NMOS22aのソースは、オペアンプ22cの(−)側入力端子に接続され、そのNMOS22aのゲートがオペアンプ22cの出力端子に接続されている。オペアンプ22cは、(+)側入力端子に第1基準電圧Vtrが入力され、(−)側入力端子に入力される第1駆動電圧V22bを、(+)側入力端子に入力される第1基準電圧Vtrに追従させて、NMOS22aに流れる第1駆動電流I21aを変化させる回路である。
【0047】
図2Bは、図1中の第2定電流回路30の構成例を示す回路図である。
この第2定電流回路30は、2段の第2カレントミラー回路31と第2誤差増幅回路32とによって構成されている。第2カレントミラー回路31は、入力側に流れる第2駆動電流I31aに比例した第2制御駆動電流I42を出力側に流す回路である。第2誤差増幅回路32は、第2カレントミラー回路31の入力側に流れる第2駆動電流I31aを検出してこれに対応する第2駆動電圧V32bを生成し、この第2駆動電圧V32bを、調整部50から入力される第2基準電圧Vtfに追従させて、第2カレントミラー回路31の入力側に流れる第2駆動電流I31aを変化させる回路である。
【0048】
第2カレントミラー回路31は、トランジスタサイズが1:1の一対の前段側のトランジスタ(例えば、PMOS)31a,31bと、トランジスタサイズが1:x(例えば、1:100)の一対の後段側のトランジスタ(例えば、NMOS)31c,31dと、により構成されている。
【0049】
前段側のPMOS31a,31bは、ゲートが共通に接続され、それらのソースが電源電圧VDD端子に対して並列に接続されている。PMOS31aのドレインは、PMOS31a,31bのゲートに接続されている。後段側のNMOS31c,31dは、ゲートが共通に接続され、そのゲートがPMOS31bのドレイン及びNMOS31cのドレインに接続されている。NMOS31c,31dのソースは、(−)側電源端子11bに対して並列に接続されている。
【0050】
第2誤差増幅回路32は、第2駆動電流I31aの電流値を変化させるトランジスタ(例えば、NMOS)32aと、第2駆動電流I31aを検出してこれに対応する第2駆動電圧V32bを生成する抵抗32bと、オペアンプ32cと、により構成されている。PMOS31aのドレイン及びPMOS31a,31bのゲートと(−)側電源端子11bとの間には、NMOS32aのドレイン・ソースと抵抗32bとが直列に接続されている。NMOS32aのソースは、オペアンプ32cの(−)側入力端子に接続され、そのNMOS32aのゲートがオペアンプ32cの出力端子に接続されている。オペアンプ32cは、(+)側入力端子に第2基準電圧Vtfが入力され、(−)側入力端子に入力される第2駆動電圧V32bを、(+)側入力端子に入力される第2基準電圧Vtfに追従させて、NMOS32aに流れる第2駆動電流I31aを変化させる回路である。
【0051】
図2Cは、図1中の第1、第2スイッチ41,42の構成例を示す回路図である。
この第1スイッチ41及び第2スイッチ42は、相補的にオン/オフ動作する相補型トランジスタ(例えば、直列に接続されたPMOS41a及びNMOS42aからなるCMOSトランジスタ)により構成されている。制御端子12は、バッファ15を介して、PMOS41a及びNMOS42aのゲートに共通に接続されている。PMOS41aのドレイン及びNMOS42aのドレインは、相互に接続され、この接続点が、パワーMOS43のゲートに接続されている。
【0052】
(実施例1の動作)
図3は、図1中のパワーMOS43の動作を示す電圧・電流波形図である。
図3の横軸は時間t、縦軸はパワーMOS43におけるソース・ドレイン間電圧Vds波形の電圧値、及びそのパワーMOS43におけるドレイン電流Id波形の電流値である。
【0053】
パワーMOS43の電気的・熱的特性には、素子によってはばらつきがあるため、例えば、ターンオン時間trの最低値tr_minは50ns、最大値tr_maxは200ns、及び標準値tr_typは100nsである。同様に、ターンオフ時間tfの最低値tf_minは50ns、最大値tf_maxは200ns、及び標準値tf_typは100nsである。ドレイン・ソース間電圧Vdsの立ち下がりとドレイン電流Idの立ち上がりとの交差箇所のハッチング領域と、ドレイン・ソース間電圧Vdsの立ち上がりとドレイン電流Idの立ち下がりとの交差箇所のハッチング領域と、はオン/オフの切り替え時に発生するスイッチング損失Sloss(=Vds×Id)である。ドレイン・ソース間電圧Vdsの立ち上がり時には、寄生インダクタンスLd,Lsの影響により、過電圧のサージ電圧Vdsg[=(Ld+Ls)×di/dt]が発生することがある。
【0054】
図4は、図1の半導体装置の動作を示すフローチャートである。
例えば、パワーMOS43の規格値において、ターンオン時間tr及びターンオフ時間tfが標準値tr_typ(=50ns),tf_typ(=50ns)の場合、図1の半導体装置は、以下のステップS1〜S7のように動作する。
【0055】
図1の半導体装置が動作を開始して図4のステップS1へ進むと、メモリ制御部51は、メモリ51aに記憶されたデジタル信号からなる第1基準電圧Vtr及び/又は第2基準電圧Vtfを読み出し、D/A変換回路52へ与える。D/A変換回路52は、読み出されたデジタル信号からなる第1基準電圧Vtr及び/又は第2基準電圧Vtfをアナログ信号に変換し、この変換後の第1基準電圧Vtrを初期値として第1定電流回路20へ出力し、及び/又は、変換後の第2基準電圧Vtfを初期値として第2定電流回路30へ出力し、ステップS2へ進む。
【0056】
ステップS2において、情報処理部62は、ゲートパルスPgを制御端子12へ出力する。ゲートパルスPgがLレベルの場合、これが図2Cのバッファ15で駆動されて、第1スイッチ41に相当する図2CのPMOS41aがオンすると共に、第2スイッチ42に相当する図2CのNMOS42aがオフする。すると、図2Aの第1定電流回路20において、オペアンプ22cは、初期値として入力された第1基準電圧Vtrと、抵抗22bで検出された第1駆動電圧V22bと、の誤差を求め、この誤差が減少するように(つまり、第1駆動電圧V22bが第1基準電圧Vtrに追従するように)、NMOS22aをゲート制御して、(+)側電源端子11a→PMOS21a→NMOS22a→抵抗22b→接地側、へ流れる第1駆動電流I21aを変化させる。変化した第1駆動電流I21aは、一対のPMOS21a,21bからなる第1カレントミラー回路21により、例えば、100倍に増幅され、この増幅された第1制御駆動電流I41が、(+)側電源端子11a→PMOS21bのソース・ドレイン→PMOS41aのソース・ドレイン→パワーMOS43のゲート、へ流れる。
【0057】
第1制御駆動電流I41がパワーMOS43のゲートに流れると、その第1制御駆動電流I41がパワーMOS43の入力容量Cissに注入され、そのパワーMOS43のゲート電圧Vgが上昇する。ゲート電圧Vgが上昇してパワーMOS43の閾値電圧Vthを超えると、このパワーMOS43が、所定のターンオン時間(標準値のターンオン時間tr_typ=100ns)をおいてターンオンする。パワーMOS43がターンオンすると、負荷回路70内の駆動電源72→負荷抵抗71→パワーMOS43、へ駆動電流が流れて負荷回路70が動作する。
【0058】
制御端子12に入力されるゲートパルスPgがHレベルになると、これが図2Cのバッファ15で駆動されて、第1スイッチ42に相当する図2CのPMOS41aがオフする共に、第2スイッチ42に相当する図2CのNMOS42aがオンする。すると、図2Bの第2定電流回路30において、オペアンプ32cは、初期値として入力された第2基準電圧Vtfと、抵抗32bで検出された第2駆動電圧V32bと、の誤差を求め、この誤差が減少するように(つまり、第2駆動電圧V32bが第2基準電圧Vtfに追従するように)、NMOS32aをゲート制御して、電源電圧VDD端子→PMOS31a→NMOS32a→抵抗32b→(−)側電源端子11b、へ流れる第2駆動電流I31aを変化させる。
【0059】
変化した第2駆動電流I31aは、第2カレントミラー回路31における前段のPMOS31a,31b対によって1:1に変換された後、後段のNMOS31c,31d対により、例えば、100倍に増幅され、この増幅された第2制御駆動電流I42が、パワーMOS43のゲート→NMOS42aのドレイン・ソース→NMOS31dのドレイン・ソース→(−)側電源端子11b、へ流れてパワーMOS43の入力容量Cissに蓄積された電荷が、(−)側電源端子11bへ放電される。
【0060】
パワーMOS43の入力容量Cissに蓄積された電荷が放電され、ゲート電圧Vgが低下して閾値電圧Vthを下回ると、このパワーMOS43が、所定のターンオフ時間(標準値のターンオフ時間tf_typ=100ns)をおいてターンオフする。パワーMOS43がターンオフすると、負荷回路70内の駆動電流が遮断されて動作が停止する。
【0061】
このような図4のステップS2の動作後に、ステップS3へ進む。ステップS3において、波形取得部61は、パワーMOS43のスイッチング時におけるドレイン・ソース間電圧Vdsの波形を取得し、ステップS4へ進む。ステップS4において、情報処理部62は、取得されたドレイン・ソース間電圧Vdsの波形から、この立ち下がり時と立ち上がり時の電圧変化量(dv/dt)を取り込んで、ターンオン時間tr及び/又はターンオフ時間tfを検出し、デジタル信号からなる検出結果Svを、制御端子13を介してメモリ制御部51へ与え、ステップS5へ進む。
【0062】
ステップS5において、メモリ制御部51は、入力されたターンオン時間tr及び/又はターンオフ時間tfのデジタル信号からなる検出結果Svと、メモリ51aに記憶されたデジタル信号からなるターンオン時間設定値tr0及び/又はターンオフ時間設定値tf0と、を比較し、ターンオン時間tr及び/又はターンオフ時間tfが、ターンオン時間設定値tr0及び/又はターンオフ時間設定値tf0に達しなかった場合(即ち、ターンオン時間設定値tr0及び/又はターンオフ時間設定値tf0とターンオン時間tr及び/又はターンオフ時間tfとの間に誤差ERRがある場合)、ステップS6へ進む。これに対して、ターンオン時間tr及び/又はターンオフ時間tfが、ターンオン時間設定値tr0及び/又はターンオフ時間設定値tf0に達した場合(即ち、ターンオン時間設定値tr0及び/又はターンオフ時間設定値tf0とターンオン時間tr及び/又はターンオフ時間tfとの間に誤差ERRがない場合)、ステップS7へ進む。
【0063】
ステップS6へ進んだ場合、メモリ制御部51は、誤差ERRが減少するように、メモリ51aに記憶された第1基準電圧Vtr及び/又は第2基準電圧Vtfを、下げるか又は上げるかして調整する。D/A変換回路52は、調整された第1基準電圧Vtr及び/又は第2基準電圧Vtfをアナログ信号に変換し、その第1基準電圧Vtrを第1定電流回路20へ出力し、及び/又は、その第2基準電圧Vtfを第2定電流回路30へ出力し、ステップS2に戻る。すると、上記と同様のステップS2〜S5の動作が行われ、ステップS5において、ターンオン時間tr及び/又はターンオフ時間tfが、ターンオン時間設定値tr0及び/又はターンオフ時間設定値tf0の設定値に達した場合、ステップS7へ進む。
【0064】
ステップS7において、メモリ制御部51は、調整後の第1基準電圧Vtr及び/又は第2基準電圧Vtfをメモリ51aに書き込んだ後、動作を終了する。
【0065】
次に、パワーMOS43のばらつきについて説明する。
パワーMOS43のばらつきにより、パワーモジュール10毎に、スイッチング損失Sloss(=Vds×Id)とサージ電圧Vdsg[=(Ld+Ls)×di/dt)]がばらつく。そこで、調整後の第1基準電圧Vtrによって第1制御駆動電流I41を変更し、図3に示すように、パワーMOS43のターンオン時間tr(つまり、ドレイン・ソース間電圧Vdsの立ち下がり時間)が大きい場合には、小さくし、そのターンオン時間trが小さい場合には、大きくする。
【0066】
又、調整後の第2基準電圧Vtfによって第2制御駆動電流I42を変更し、パワーMOS43のターンオフ時間tf(つまり、ドレイン・ソース間電圧Vdsの立ち上がり時間)が大きい場合には、小さくし、そのターンオン時間tfが小さい場合には、大きくする。このように、パワーモジュール10毎に最適な第1制御駆動電流I41及び/又は第2制御駆動電流I42を自動的に設定することにより、スイッチング損失Slossとサージ電圧Vdsgのばらつきを少なくすることが可能になる。
【0067】
(実施例1の効果)
本実施例1の半導体装置によれば、次の(1)〜(3)のような効果がある。
【0068】
(1) 第1定電流回路20及び第2定電流回路30を有し、パワーMOS43のばらつきに応じて第1基準電圧Vtr及び/又は第2基準電圧Vtf1を調整する構成になっているので、ターンオン時間tr及び/又はターンオフ時間tfの最大値MAX/最小値MINのばらつきを改善できる。これにより、スイッチング損失Slossとサージ電圧Vdsgのばらつきの少ないパワーモジュール10を実現できる。
【0069】
(2) 調整部50を有しているので、パワーMOS43のばらつきに応じて第1基準電圧Vtr及び/又は第2基準電圧Vtfを自動的に調整でき、ターンオン時間tr及び/又はターンオフ時間tfの最大値MAX/最小値MINのばらつきを容易に改善できる。しかも、第1基準電圧Vtr及び/又は第2基準電圧Vtfを自動的に調整できるので、使用者側での調整が不要になり、利便性が向上する。
【0070】
(3) 第1定電流回路20及び第2定電流回路30を、例えば、第1、第2カレントミラー回路21,31及び第1、第2誤差増幅回路22,32でそれぞれ構成した場合、その第2カレントミラー回路31を1段で構成しても良い。又、第1カレントミラー回路21や第2カレントミラー回路31を多段(例えば、2段)にすれば、電流増幅率の増加と特性の安定性を実現できる。
【実施例2】
【0071】
図5は、本発明の実施例2におけるパワー半導体素子としてのIGBTの概略を示す等価回路図である。
本実施例2のIGBT80は、エミッタE、コレクタC、及びゲートGの3つの電極を有し、実施例1のパワーMOS43と略同様の作用効果を奏するものである。
【0072】
なお、パワー半導体素子としては、窒化ガリウム(GaN)パワーデバイス、炭化珪素(SiC)パワーデバイス等の他のパワートランジスタを使用しても良い。
【0073】
(実施例1、2の他の変形例)
本発明は、上記実施例1、2に限定されず、その他の利用形態や変形が可能である。この利用形態や変形例としては、例えば、次の(i)〜(iii)のようなものがある。
【0074】
(i) 第1、第2定電流回路20,30は、第1、第2カレントミラー回路21,31及び第1、第2誤差増幅回路22,32以外の他の回路で構成しても良い。
【0075】
(ii) 調整部50や波形検出部60は、図示以外の構成に変更しても良い。
【0076】
(iii) 第1、第2スイッチ41,42は、PMOS41a及びNMOS42aからなるCMOSトランジスタ以外の他の半導体素子を用いて構成しても良い。
【符号の説明】
【0077】
10 パワーモジュール
10a パッケージ
20,30 第1、第2定電流回路
21,31 第1、第2カレントミラー回路
22,32 第1、第2誤差増幅回路
41,42 第1、第2スイッチ
41a PMOS
42a NMOS
43 パワーMOS
50 調整部
51 メモリ制御部
51a メモリ
52 D/A変換回路
60 波形検出部
61 波形取得部
62 情報処理部
70 負荷回路
80 IGBT
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5
図6
図7
図8