特許第6706916号(P6706916)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6706916
(24)【登録日】2020年5月21日
(45)【発行日】2020年6月10日
(54)【発明の名称】階段の桁部材および桁構造
(51)【国際特許分類】
   E04F 11/025 20060101AFI20200601BHJP
【FI】
   E04F11/025
【請求項の数】3
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-256911(P2015-256911)
(22)【出願日】2015年12月28日
(65)【公開番号】特開2017-119982(P2017-119982A)
(43)【公開日】2017年7月6日
【審査請求日】2018年12月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】390030340
【氏名又は名称】株式会社ノダ
(74)【代理人】
【識別番号】100085589
【弁理士】
【氏名又は名称】▲桑▼原 史生
(72)【発明者】
【氏名】松井 雄一
【審査官】 五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭60−174734(JP,U)
【文献】 国際公開第2004/057130(WO,A1)
【文献】 特開平05−230962(JP,A)
【文献】 特開平02−272155(JP,A)
【文献】 特公昭51−011417(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 11/00−11/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
階段の桁構造を構成する桁部材であって、踏板を支持する踏板支持板を上端に有する踏板支持部材と、上段側の踏板支持部材と下段側の踏板支持部材とを高さ調整可能および前後調整可能に連結する連結部材とを有してなり、
踏板支持部材と連結部材の一方の部材が筒状部を有すると共に他方の部材が該筒状部に高さ方向にスライド可能に嵌合される軸部を有することにより、連結部材と踏板支持部材とが高さ調整可能に連結され、
前記軸部を有する他方部材には横方向に突出し且つ軸方向に延長する突片が設けられると共に、前記筒状部を有する一方部材には軸方向に延長するスリットを挟んでその両側に前記突片を挟持可能な一対の平行突片が設けられ、前記突片と前記平行突片の両方に締結部材挿通穴が形成され、その一方が締結部材の軸径に略等しい内径の丸穴として形成されると共に他方が締結部材の軸径より大きい幅寸法を有する横長穴として形成され、これら丸穴および横長穴に挿通させた締結部材を介して連結部材と踏板支持部材とが前後調整可能に連結されることを特徴とする桁部材。
【請求項2】
さらに、最下段の踏板を支持する踏板支持部材を下階の床面に固定する床面固定部材と、最上段の踏板を支持する踏板支持部材を壁面に固定する壁面固定部材とを有することを特徴とする、請求項1記載の桁部材。
【請求項3】
請求項1または2記載の桁部材を用いて構成される桁構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、階段の桁部材および桁構造に関する。
【背景技術】
【0002】
階段の踏板を幅方向両側に配置した側桁(ささら桁)で支持することに代えて、幅方向中央に一つまたは幅方向に間隔をおいて二つ(またはそれ以上)の支持桁を配置して、その上に踏板を載置固定する階段構造(オープン階段)が、下記特許文献1,2などに開示されている。
【0003】
特許文献1に記載される階段は、踏板6とその支持部材1とからなり、支持部材1は踏板載置部1a、水平部材2、前側連結部3および後側連結部4を有し、前側連結部3は下段の支持部材1の後側連結部4に連結される。
【0004】
特許文献2に記載される階段用踏板支持桁は、踏板取付部1a,2a,3aと第1部材4、第2部材5からなる支持ユニット1,2,3を有し、第1部材4と第2部材5が連結されて一連の桁となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−213866号公報
【特許文献2】特開平5−340049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1,2記載の従来技術による階段構造ないし桁構造では、隣接する踏板間の前後方向および高さ方向の位置調整を行う手段が示されていない。このため、異なる幅の踏板を載置する場合や、各部材の寸法精度が悪い場合などに対応することが困難である。
【0007】
すなわち、特許文献1では、上段側の踏板6を支持する前側連結部3の下方に下段側の踏板6を支持する後側連結部4を外嵌させた状態で後側連結部4の下端からボルト5を挿入して踏板裏面の雌ネジ部6aに螺合させて踏板6を固定する構造である(図3)ので、ボルト5の長さによって上下段の踏板6,6間の高さが固定され、調整することができない。また、前後方向の間隔は、前側連結部3と後側連結部4とを水平方向(前後方向)に連結する水平部材2の長さによって一定となるので、これも調整することができない。
【0008】
特許文献2でも、踏板間の高さ間隔および前後間隔は、支持ユニット1,2,3を構成する各部材の寸法によって一律に定められることになるので、調整不能である。
【0009】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、隣接する踏板間の前後方向および高さ方向の調整を可能にした桁部材および桁構造を提供することにより、異なる幅の踏板を用いる場合であってもこれに対応した施工が容易であり、また、各部材の寸法精度が良くない場合にも容易に対応することができるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題を解決するため、本願の請求項1に係る発明は、階段の桁構造を構成する桁部材であって、踏板を支持する踏板支持板を上端に有する踏板支持部材と、上段側の踏板支持部材と下段側の踏板支持部材とを高さ調整可能および前後調整可能に連結する連結部材とを有してなり、踏板支持部材と連結部材の一方の部材が筒状部を有すると共に他方の部材が該筒状部に高さ方向にスライド可能に嵌合される軸部を有することにより、連結部材と踏板支持部材とが高さ調整可能に連結され、前記軸部を有する他方部材には横方向に突出し且つ軸方向に延長する突片が設けられると共に、前記筒状部を有する一方部材には軸方向に延長するスリットを挟んでその両側に前記突片を挟持可能な一対の平行突片が設けられ、前記突片と前記平行突片の両方に締結部材挿通穴が形成され、その一方が締結部材の軸径に略等しい内径の丸穴として形成されると共に他方が締結部材の軸径より大きい幅寸法を有する横長穴として形成され、これら丸穴および横長穴に挿通させた締結部材を介して連結部材と踏板支持部材とが前後調整可能に連結されることを特徴とする。
【0016】
本願の請求項2に係る発明は、請求項1記載の桁部材において、さらに、最下段の踏板を支持する踏板支持部材を下階の床面に固定する床面固定部材と、最上段の踏板を支持する踏板支持部材を壁面に固定する壁面固定部材とを有することを特徴とする。
【0017】
本願の請求項3に係る発明は、請求項1または2記載の桁部材を用いて構成される桁構造である。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に係る発明によれば、隣接する踏板支持部材同士が連結部材を介して前後方向および高さ方向に位置調整可能であることから、異なる幅の踏板を用いる場合であってもそれに対応した施工が容易であり、また、各部材の寸法精度が良くない場合にも容易に対応することができる。
【0021】
また、連結部材と踏板支持部材とが丸穴と長穴にネジを挿通させて締着することによって連結されるので、前後調整が容易である。
【0022】
また、板状突片が平行突片間に挟持された状態でボルトで締着されることによって連結部材と踏板支持部材とが連結されるので、強固な連結構造が得られる。
【0023】
また、連結部材と踏板支持部材とを連結する際に、ボルトを締め付けていくことにより、筒状部が縮径して踏板支持部材に対する連結強度を高めることができるので、さらに強固な連結構造が得られる。
【0024】
請求項2に係る発明によれば、床面固定部材を用いて最下段の踏板支持部材を下階の床面に固定すると共に、壁面固定部材を用いて最上段の踏板支持部材を壁面に固定することができるので、これら桁部材を用いて桁構造を容易に施工することができる。
【0025】
請求項3に係る発明によれば、これら桁部材を用いて施工される桁構造が得られる。この桁構造によれば、隣接する踏板支持部材同士が連結部材を介して前後方向および高さ方向に位置調整可能であることから、異なる幅の踏板を用いる場合であってもそれに対応した施工が容易であり、また、各部材の寸法精度が良くない場合にも容易に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の一実施形態(実施例1)による桁部材および桁構造を有する階段構造の側面図である。
図2】この階段構造を桁構造構成部材(桁部材)ごとに分割して示す側面図である。
図3】この階段構造に用いる踏板支持部材を単独で示す側面図(a),正面図(b),背面図(c),平面図(d)および底面図(e)である。
図4】この階段構造の最下段の踏板を支持する踏板支持部材を単独で示す側面図(a),正面図(b),背面図(c),平面図(d)および底面図(e)である。
図5】この階段構造に用いる連結部材を単独で示す側面図(a),正面図(b),背面図(c),平面図(d)および底面図(e)である。
図6】この階段構造に用いる床面固定部材を単独で示す側面図(a),正面図(b),背面図(c),平面図(d)および底面図(e)である。
図7】この階段構造に用いる壁面固定部材を単独で示す側面図(a),正面図(b),背面図(c),平面図(d)および底面図(e)である。
図8】この階段構造における踏板支持部材と上下桁連結部材の連結状態を示す側面図(a)、平面図(b)および底面図(c)である。
図9】本発明の他実施形態(実施例2)による桁部材および桁構造を有する階段構造の側面図である。
図10】この階段構造を桁構成部材(桁部材)ごとに分割して示す側面図である。
図11】この階段構造に用いる踏板支持部材を単独で示す側面図(a),正面図(b),背面図(c),平面図(d)および底面図(e)である。
図12】この階段構造に用いる上下桁連結部材を単独で示す側面図(a),正面図(b),背面図(c),平面図(d)および底面図(e)である。
図13】この階段構造に用いる床面固定部材を単独で示す側面図(a),正面図(b),背面図(c),平面図(d)および底面図(e)である。
図14】この階段構造に用いる壁面固定部材を単独で示す側面図(a),正面図(b),背面図(c),平面図(d)および底面図(e)である。
図15】この階段構造における踏板支持部材と上下桁連結部材の連結状態を示す側面図(a)、平面図(b)および底面図(c)である。
図16】本発明(実施例1)による階段構造を廻り階段に適用した実施形態を示す平面図である。
図17】この階段構造における踏板支持部材と上下桁連結部材の連結において幅調整可能であることを示す各平面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下に実施例を挙げて本発明について詳述する。
【実施例1】
【0028】
図1は本発明の一実施形態(実施例1)による階段構造10の側面図であり、図2はこの階段構造10を桁構成部材ごとに分割して示す側面図である。この階段構造10は、複数の踏板(簡略化のため3段の踏板11a〜11cが図示されている。特に区別する必要がないときはこれらを符号11で総括する。)を支持する桁構造20を有する。
【0029】
桁構造20は、各踏板を支持する踏板支持部材21a〜21c(特に区別する必要がないときはこれらを符号21で総括する。)と、隣接する踏板支持部材同士を前後方向および上下方向にそれぞれ所定間隔をおいて連結する連結部材22a,22b(特に区別する必要がないときはこれらを符号22で総括する。)と、最下段の踏板11aを支持する踏板支持部材21aを下階の床面1に固定する床面固定部材23と、最上段の踏板11cを支持する踏板支持部材21cを壁面2に固定する壁面固定部材24とを有する。
【0030】
中段の踏板11bおよび最上段の踏板11cを支持する踏板支持部材21b,21cは同一の構成を有する。すなわち、図3に示すように、これらの踏板支持部材21は、上端に踏板固定板25を有し且つ少なくとも下端側の所定長さ領域に亘って刻設形成された雄ネジ26を有する円筒部27と、この円筒部27の上端部から一側方向に向けて突出する垂直板28とを有して一体に形成されている。踏板固定板25には、この上に載置させた踏板11をネジ(図示せず)で固定するためのネジ穴29が形成されている。また、垂直板28には、ボルト挿通長穴30が上下2箇所に平行に形成されている。
【0031】
最下段の踏板11aを支持する踏板支持部材21aも、上述した踏板支持部材21b,21cとほぼ同様の構成を有するが、下段側に踏板支持部材が存在せず、したがって、これと連結する連結部材に対する連結部を必要としないことから、図4に示すように、円筒部27が短くなっている。また、踏板支持部材21aの下端には、床面固定部材23と連結するための雌ネジ31が形成されている。
【0032】
連結部材22(22a,22b)は同一構成である。すなわち、図5に示すように、各連結部材22は、少なくとも上端側の所定長さ領域に亘って刻設形成された雌ネジ32を有する円筒部33と、この円筒部33から一側方向に突出する突片34とを有して一体に形成されている。この実施形態では、円筒部33の一部にスリット45が形成され、このスリット45に臨む両端から一対の片が互いの間に隙間をおいて一側方向に平行に突出する一対の片からなる平行突片34として形成されている。円筒部33は、踏板支持部材21の円筒部27の外径と略同一または若干大きい内径を有して円筒部27を嵌合可能であり、且つ、この嵌合状態において円筒部27の雄ネジ26と円筒部33の雌ネジ32との螺合を介して、上段側の踏板支持部材21に連結される。平行突片34にはボルト挿通穴35が上下2段に形成されており、突片34の隙間に踏板支持部材21の垂直板28を挿入した状態で、ボルト36(図1)を突片34のボルト挿通穴35および垂直板28のボルト挿通長穴30に通して反対側でナット(図示せず)に螺着することにより、下段側の踏板支持部材21に連結される(図8)。
【0033】
連結部材22は、下段側の踏板を支持する踏板支持部材(たとえば踏板11bを支持する踏板支持部材21b)と上段側の踏板を支持する踏板支持部材(たとえば踏板11cを支持する踏板支持部材21c)とを上下方向および前後方向に間隔を調整して連結する。すなわち、既述したように、上段側の踏板支持部材21cの円筒部27をその下方の連結部材22の円筒部33に嵌合させた状態において、円筒部27の雄ネジ26と円筒部33の雌ネジ32との螺合を介して上下方向の間隔調整が可能であり、また、ボルト36を挿通させる穴の一方(この実施形態では突片34のボルト挿通穴35)をボルト36の軸径に略合致する内径を有する丸穴として形成すると共に、他方(この実施形態では垂直板28のボルト挿通長穴30)を横方向に長い長穴として形成することにより、前後方向の間隔調整が可能である。図17(a)はこの実施形態において隣接する踏板支持部材21同士の前後方向の間隔(したがって踏板同士の前後方向の間隔)を最小とした場合、(b)は同間隔を中間にした場合、(c)は同間隔を最大とした場合を示しており、ボルト36の挿通位置を垂直板28のボルト挿通長穴30の範囲内で移動させることにより前後間隔調整を容易に行うことができる。
【0034】
床面固定部材23は、最下段踏板11aを支持する踏板支持部材21a(図4)を高さ調整可能に下階の床面1に固定することができるものであれば特に構成が限定されるものではないが、この実施形態では、床面に固定される床面固定板37と、その上方に垂立する円筒部38とを有して一体に形成されており、円筒部38にはその少なくとも上端側の所定長さ領域に亘って雄ネジ39が形成されている。そして、床面固定板37のネジ穴40から下階の床面1にネジ(図示せず)を打ち込んで床面固定板37を下階の床面1に固定した後に、踏板支持部材21aの円筒部27に床面固定部材23の円筒部38を嵌合させた状態において、円筒部27の雌ネジ31と円筒部38の雄ネジ39とを螺合させることにより、最下段踏板支持部材21a(したがってその上に支持される踏板11a)を下階の床面1に対して所定の高さで固定することができる。なお、この実施例では、最下段踏板支持部材21aの円筒部27に雌ネジ31を形成して、これを床面固定部材23の円筒部38の雄ネジ39に螺合させているが、他の踏板支持部材21b,21cと同様に、最下段踏板支持部材21aの円筒部27に雄ネジを形成し、これを床面固定部材23の円筒部に形成した雌ネジに螺合させる実施形態を採用しても良い。
【0035】
壁面固定部材24は、最上段踏板11cを支持する踏板支持部材21c(図3)を前後調整可能に壁面2に固定することができるものであれば特に構成が限定されるものではないが、この実施形態では、壁面に固定される壁面固定板41と、その一面から突出する平行突片42とを有して一体に形成されている。平行突片42は、連結部材22の平行突片34と略同一構成であり、互いの間に所定の隙間をおいて平行に延長する一対の片からなり、これら片を通じてボルト挿通穴43が上下2段に形成されている。そして、壁面固定板41のネジ穴43から壁面2にネジ(図示せず)を打ち込んで壁面固定板41を壁面2に固定した後に、突片42の隙間に最上段踏板支持部材21cの垂直板28を挿入した状態で、ボルト36(図1)を突片42のボルト挿通穴43および垂直板28のボルト挿通長穴30に通して反対側でナット(図示せず)に螺着することにより、最上段踏板支持部材21cを壁面2に固定することができる。
【0036】
以上に説明した階段構造10および桁構造20の施工方法について説明する。床面固定板37のネジ穴40から下階の床面1にネジを打ち込んで床面固定部材23を下階の床面1に固定した後、最下段踏板支持部材21aの円筒部27に床面固定部材23の円筒部38を嵌合させた状態において、円筒部27の雌ネジ31と円筒部38の雄ネジ39とを螺合させることにより、最下段踏板支持部材21aを高さ調整して固定する。次いで、踏板11bを支持する中段踏板支持部材21bの円筒部27を連結部材22aの円筒部33に嵌合させて、雄ネジ26と雌ネジ32との螺合を介して、これらを高さ調整して連結させておく。そして、下階の床面1に固定された最下段踏板支持部材21aの垂直板28を連結部材22aの平行突片34の隙間に挿入させた状態で、ボルト36を突片34のボルト挿通穴35および垂直板28のボルト挿通長穴30に通して反対側でナット(図示せず)に螺着することにより、ボルト挿通長穴30の範囲内で前後調整して連結部材22aを最下段踏板支持部材21aに連結する。
【0037】
この実施形態では、連結部材22aの円筒部33にスリット45が形成され、垂直板28を突片34の一対の片の間に挟み込んでボルト止めするので、ボルトを締め付けていくとスリット45が閉じていき、雄ネジ26と雌ネジ32との螺合に加えて円筒部27,33同士の間に強固な嵌合状態が得られ、強度の大きい固定構造が得られる。なお、ボルト締付により円筒部33が縮径していくときや、踏板支持部材21と連結部材22とが連結された後に円筒部33に力が加わったときに、円筒部33に歪みや捻じれなどが生ずることを防止するために、突片34を構成する各片の上下端に所定幅で水平方向に延長するフランジ部34a,34bが形成されている(図5)。壁面固定部材24についても、突片42を構成する片同士の間の隙間に最上段踏板支持部材21cの垂直板28を挟み込んだ状態で最上段踏板支持部材21cを固定する際にボルト締付により円筒部33が縮径していくときや、踏板支持部材21と連結部材22とが連結された後に円筒部33に力が加わったときに、壁面2に固定されている壁面固定板41に歪みや曲りなどが生ずることを防止するために、同様に、突片42を構成する各片の上下端に所定幅で水平方向に延長するフランジ部42a,42bが形成されている(図7)。
【0038】
この作業を階段の段数分繰り返す。そして、最上段踏板支持部材21cを壁面固定部材24により壁面2に固定する。この作業は、既述したように、壁面固定板41のネジ穴44から壁面2にネジ(図示せず)を打ち込んで、上階の床面3との間の高さ調整を行いつつ、壁面固定部材24を壁面2に固定した後、突片42の隙間に最上段踏板支持部材21cの垂直板28を挿入した状態で、ボルト36(図1)を突片42のボルト挿通穴43および垂直板28のボルト挿通長穴30に通して反対側でナット(図示せず)に螺着することにより、前後調整と共に行うことができる。このようにして桁部材20を施工した後、各踏板支持部材21に踏板11を載置固定して、階段構造10が得られる。
【0039】
このような階段構造10および桁構造20は、直階段にも廻り階段にも適用可能である。図16には廻り階段に適用した実施形態が示されている。上段側の踏板支持部材21は、踏板支持部材21の円筒部27の雄ネジ26と連結部材22の円筒部33の雌ネジ32との螺合を介して、連結部材22と連結されるので、上下に隣接する踏板支持部材21同士を任意の回転角度で設置することが可能且つ容易である。なお、踏板固定板25の前端角部が面取りされているのは、図16に示すような廻り階段に適用する際に、廻り部を構成する踏板(図16における踏板11c〜11e)を支持する踏板支持部材21(図16における踏板支持部材21c〜21e)の踏板固定板25が該踏板の段鼻(前端面)を超えることがないようにするためである。
【実施例2】
【0040】
図9は本発明の他実施形態(実施例2)による階段構造50の側面図であり、図10はこの階段構造50を桁構成部材ごとに分割して示す側面図である。この階段構造50は、複数の踏板(簡略化のため3段の踏板51a〜51cが図示されている。特に区別する必要がないときはこれらを符号51で総括する。)を支持する桁構造60を有する。
【0041】
桁構造60は、各踏板を支持する踏板支持部材61a〜61c(特に区別する必要がないときはこれらを符号61で総括する。)と、隣接する踏板支持部材同士を前後方向および上下方向にそれぞれ所定間隔をおいて連結する連結部材62a〜62c(特に区別する必要がないときはこれらを符号62で総括する。)と、最下段の踏板51aを支持する踏板支持部材61aを下階の床面1に固定する床面固定部材63と、最上段の踏板51cを支持する踏板支持部材61cを壁面2に固定する壁面固定部材64とを有する。
【0042】
踏板支持部材61(61a〜61c)は略同一の構成を有する。すなわち、図11に示すように、これらの踏板支持部材61は、上端に踏板固定板65を有し且つ少なくとも下端側の所定長さ領域(この実施形態では全軸長)に亘る雄ネジ66を有する円筒部67と、この円筒部67の上端部から一側方向に向けて突出する平行突片68とを有して一体に形成されている。円筒部67には、平行突片68間に挟み込んだ連結部材62の垂直板74の先端部が差し込まれるスリット85が形成されている。スリット85は、少なくとも垂直板74の先端部を収容することができる範囲に亘って形成されるが、円筒部67の上端から下端にまで延長するものとして形成しても良い。踏板固定板65には、この上に載置させた踏板51をネジ(図示せず)で固定するためのネジ穴69が形成されている。平行突片68は、互いの間に隙間をおいて一側方向に平行に突出する一対の片で構成され、これら片を通じて上下2箇所にボルト挿通穴70が形成されている。なお、最下段の踏板51aを支持する踏板支持部材61aについては、下段側に踏板支持部材が存在せず、したがって、これと連結する連結部材に対する連結部を必要としないことから、円筒部67が短く形成されている(図示省略)。
【0043】
連結部材62(62a,62b)は同一構成である。すなわち、図12に示すように、各連結部材62は、少なくとも上端側の所定長さ領域(この実施形態では全軸長)に亘る雌ネジ72を有する円筒部73と、この円筒部73から一側方向に突出する垂直板74とを有して一体に形成されている。円筒部73は、踏板支持部材61の円筒部67の外径と略同一または若干大きい内径を有して円筒部67を嵌合可能であり、且つ、この嵌合状態において円筒部67の雄ネジ66と円筒部73の雌ネジ72との螺合を介して、上段側の踏板支持部材61に連結される。垂直板74は、上下2段に形成したボルト挿通長穴75を有しており、垂直板74を踏板支持部材61の突片68の隙間に挿入した状態で、ボルト76(図9)を突片68のボルト挿通穴70および垂直板74のボルト挿通長穴75に通して反対側でナット(図示せず)に螺着することにより、下段側の踏板支持部材61に連結される(図15)。
【0044】
連結部材62は、下段側の踏板を支持する踏板支持部材(たとえば踏板51bを支持する踏板支持部材61b)と上段側の踏板を支持する踏板支持部材(たとえば踏板51cを支持する踏板支持部材61c)とを上下方向および前後方向に間隔を調整して連結する。すなわち、既述したように、上段側の踏板支持部材61cの円筒部67を連結部材62の円筒部73に嵌合させた状態において、円筒部67の雄ネジ66と円筒部73の雌ネジ72との螺合を介して上下方向の間隔調整が可能であり、また、ボルト76を挿通させる穴の一方(この実施形態では突片68のボルト挿通穴70)をボルト76の軸径に略合致する内径を有する丸穴として形成すると共に、他方(この実施形態では垂直板74のボルト挿通長穴75)を横方向に長い長穴として形成することにより、前後方向の間隔調整が可能である。
【0045】
床面固定部材63は、最下段踏板51aを支持する踏板支持部材61aを高さ調整可能に下階の床面1に固定することができるものであれば特に構成が限定されるものではないが、この実施形態では、床面に固定される円盤状の床面固定板77として形成され、踏板支持部材61aの円筒部67の雄ネジ66と螺合する雌ネジ78を有する。そして、床面固定板77のネジ穴80から下階の床面1にネジ(図示せず)を打ち込んで床面固定板77を下階の床面1に固定した後に、円筒部67の雄ネジ66を床面固定部材63の雌ネジ78に螺合させることにより、最下段踏板支持部材61a(したがってその上に支持される踏板51a)を下階の床面1に対して所定の高さで固定することができる。
【0046】
壁面固定部材64は、最上段踏板51cを支持する踏板支持部材61cを前後調整可能に壁面2に固定することができるものであれば特に構成が限定されるものではないが、この実施形態では、壁面に固定される壁面固定板81と、その一面から突出する垂直板82とを有して一体に形成されている。垂直板82は、連結部材62の垂直板74と略同一構成であり、上下2段に形成したボルト挿通長穴83を有しており、垂直板82を踏板支持部材61cの突片68の隙間に挿入した状態で、ボルト76(図9)を突片68のボルト挿通穴70および垂直板82のボルト挿通長穴83に通して反対側でナット(図示せず)に螺着することにより、最上段踏板支持部材61cに連結される(図15)。そして、壁面固定板81のネジ穴84から壁面2にネジ(図示せず)を打ち込んで壁面固定板81を壁面2に固定した後に、最上段踏板支持部材61cの突片68の隙間に壁面固定部材64の垂直板82を挿入した状態で、ボルト76(図9)を突片68のボルト挿通穴70および垂直板82のボルト挿通長穴83に通して反対側でナット(図示せず)に螺着することにより、最上段踏板支持部材61cを壁面2に固定することができる。
【0047】
以上に説明した階段構造50および桁構造60の施工方法について説明する。床面固定板77のネジ穴80から下階の床面1にネジ(図示せず)を打ち込んで床面固定部材63を下階の床面1に固定した後、最下段踏板支持部材61aの円筒部67の雄ネジ66を床面固定部材63の雌ネジ78に螺合させることにより、最下段踏板支持部材61aを高さ調整して固定する。次いで、踏板51bを支持する中段踏板支持部材61bの円筒部67を連結部材62aの円筒部73に嵌合させて、雄ネジ66と雌ネジ72との螺合を介して、これらを高さ調整して連結させておく。そして、その円筒部73から突出している垂直板74を、下階の床面1に固定された最下段踏板支持部材61aの突片68の隙間に挿入させた状態で、ボルト76を突片68のボルト挿通穴70および垂直板74のボルト挿通長穴75に通して反対側でナット(図示せず)に螺着することにより、ボルト挿通長穴75の範囲内で前後調整して連結部材62aを最下段踏板支持部材61aに連結する。この実施形態では、連結部材62の垂直板74を各踏板支持部材61の突片68の一対の片の間に挟み込んでボルト止めするので、ボルトを締め付けていくとこれら片の間の隙間が閉じていき、雄ネジ66と雌ネジ72との螺合に加えて垂直板74と突片68との間に密実な挟持状態が得られ、強度の大きい固定構造が得られる。
【0048】
この作業を階段の段数分繰り返す。そして、最上段踏板支持部材61cを壁面固定部材64により壁面2に固定する。この作業は、既述したように、壁面固定板81のネジ穴84から壁面2にネジ(図示せず)を打ち込んで、上階の床面3との間の高さ調整を行いつつ、壁面固定部材64を壁面2に固定した後、壁面固定部材64の垂直板82を最上段踏板支持部材61cの突片68の隙間に挿入した状態で、ボルト76(図9)を突片68のボルト挿通穴70および垂直板82のボルト挿通長穴83に通して反対側でナット(図示せず)に螺着することにより、前後調整と共に行うことができる。このようにして桁部材60を施工した後、各踏板支持部材61に踏板51を載置固定して、階段構造50が得られる。
【0049】
このような階段構造50および桁構造60は、実施例1と同様、直階段にも廻り階段にも適用可能である。上段側の踏板支持部材61と連結部材62は、踏板支持部材61の円筒部67の雄ネジ66と連結部材62の円筒部73の雌ネジ72との螺合を介して連結されるので、上下に隣接する踏板支持部材61同士を任意の回転角度で設置することが容易且つ可能であり、図16に示すような廻り階段に適用する場合も、廻り部における踏板の廻り角度に応じて、上下に隣接する踏板支持部材61同士を任意の回転角度で設置することが可能且つ容易である。実施例1と同様、廻り階段に適用する際に、廻り部を構成する踏板51を支持する踏板支持部材61の踏板固定板65が該踏板の段鼻(前端面)を超えないようにするために、踏板固定板25の前端角部には面取りが施されている。
【実施例3】
【0050】
実施例1では、連結部材22と上段側の踏板支持部材21との連結をネジ(尾雄ネジ26と雌ネジ32)同士の螺合を介して行っており、既述したように、高さ調整が容易でありながら強固な連結構造が得られ、また、廻り階段への適用も容易であることなどから、一つの好適な連結態様であると考えられるが、必ずしも必須ではなく、雄ネジ26および雌ネジ32を省略して実施することも可能である。この場合であっても、既述したように、あらかじめ上段側の踏板支持部材(たとえば踏板支持部材21b)の円筒部27をその下方の連結部材22aの円筒部33に所定の高さに挿入した状態に保持しておいた上で、連結部材22aから突出する平行突片34間に、下段側の踏板支持部材21aから突出する垂直板28を挿入して、ボルト挿通穴35およびボルト挿通長穴30に通したボルト36で固定することにより、連結部材の円筒部33のスリット45が閉じていって、円筒部27,33同士の間に強固な嵌合状態が得られるので、当初の所定の高さを維持して強固に連結させることができる。
【0051】
以上に本発明について幾つかの実施形態を挙げて詳細に説明したが、本発明はこれら実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に規定される発明の範囲内において多種多様に変更ないし変更して実施可能である。たとえば、実施例1では、踏板支持部材21の円筒部27の下端に至る所定高さ範囲に雄ネジ26を形成すると共に、連結部材22の円筒部33の全高さ範囲に雌ネジ32を形成してこれらを螺合させるものとして示されているが、これに限定されるものではない。たとえば、円筒部27の下端近辺には雄ネジ26が形成されない領域が残されるようにして該領域をネジ切りされた領域の外径より小さく形成すると共に、円筒部33の上端近辺には雌ネジ32が形成されない領域が残されるようにして該領域をネジ切りされた領域の内径より大きく形成することができる。このようにすると、踏板支持部材21の円筒部27の下端を連結部材22の円筒部材33の上端に差し込んで仮固定した後に、ずれなくなった状態でネジ同士を螺合させて固定することができるので、高さ調整しながらこれらを連結固定する作業を行いやすくなり、一つの好適な実施形態である。
【0052】
また、踏板支持部材21の円筒部27における雄ネジ26の形成領域は、連結部材22の円筒部33における雌ネジ32の形成領域より短くすると良い。このようにして、雄ネジ26が雌ネジ32および円筒部33で隠蔽される範囲内で、踏板支持部材21の高さ調整を行うようにすれば、雄ネジ26が露出することがなく、見栄えを良好に維持することができる。
【0053】
また、雄ネジ26と雌ネジ32の螺合長さは30〜120mmの範囲とすることが好ましい。30mm未満であると、踏板支持部材21と連結部材22の接合強度が不足して階段を支持することが困難になり、120mmを超えると、施工性が悪くなる。この観点から、より好ましい範囲は50〜100mmである。
【0054】
なお、以上に説明したネジ形成領域および螺合長さは、実施例1において床面固定部材23の円筒部38に形成される雄ネジ39と最下段踏板支持部材21aの円筒部27に形成される雌ネジ31についても同様に適用可能である。また、実施例2において踏板支持部材61の円筒部67に形成される雄ネジ66と連結部材62の円筒部73に形成される雌ネジ72について、また、最下段踏板支持部材61aの円筒部67に形成される雄ネジ66と床面固定部材63の床面固定板77に形成される雌ネジ78についても、同様に適用可能である。
【0055】
また、実施例1,2では、踏板支持部材21,61の円筒部27,67に雄ネジ26,66を形成すると共に、連結部材22,62の円筒部33,73に雌ネジ32,72を形成してこれらを螺合させているが、反対に、踏板支持部材21,61の円筒部27,67に雌ネジを形成すると共に、連結部材22,62の円筒部33,73に雄ネジ32,72を形成してこれらを螺合させる実施形態を採用しても良いことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0056】
1 下階の床面
2 壁面
3 上階の床面
10 階段構造
11(11a〜11c,11a〜11h) 踏板
20 桁構造
21(21a〜21c,21a〜21h) 踏板支持部材
22(22a〜22c) 連結部材
23 床面固定部材
24 壁面固定部材
25 踏板固定板
26 雄ネジ
27 円筒部
28 垂直板(板状突片)
29 ネジ穴
30 ボルト挿通長穴(横長穴として形成される締結部材挿通穴)
31 雌ネジ
32 雌ネジ
33 円筒部
34 突片(平行突片)
35 ボルト挿通穴(丸穴として形成される締結部材挿通穴)
36 ボルト(締結部材)
37 床面固定板
38 円筒部
39 雄ネジ
40 ネジ穴
41 壁面固定板
42 突片
43 ボルト挿通穴
44 ネジ穴
45 スリット
50 階段構造
51(51a〜51c) 踏板
60 桁構造
61(61a〜61c) 踏板支持部材
62(62a〜62c) 連結部材
63 床面固定部材
64 壁面固定部材
65 踏板固定板
66 雄ネジ
67 円筒部
68 突片(平行突片)
69 ネジ穴
70 ボルト挿通穴(丸穴として形成される締結部材挿通穴)
72 雌ネジ
73 円筒部
74 垂直板(板状突片)
75 ボルト挿通長穴(横長穴として形成される締結部材挿通穴)
76 ボルト(締結部材)
77 床面固定板
78 雄ネジ
80 ネジ穴
81 壁面固定板
82 垂直板
83 ボルト挿通長穴
84 ネジ穴
85 スリット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12
図13
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図16
図17