(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6706934
(24)【登録日】2020年5月21日
(45)【発行日】2020年6月10日
(54)【発明の名称】コンクリート表面の処理工法と滑り止め処理治具
(51)【国際特許分類】
E04F 15/12 20060101AFI20200601BHJP
E04F 21/24 20060101ALI20200601BHJP
E01C 7/35 20060101ALI20200601BHJP
E01C 7/14 20060101ALI20200601BHJP
【FI】
E04F15/12 H
E04F21/24 Z
E01C7/35
E01C7/14
【請求項の数】5
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2016-41988(P2016-41988)
(22)【出願日】2016年3月4日
(65)【公開番号】特開2017-155543(P2017-155543A)
(43)【公開日】2017年9月7日
【審査請求日】2018年11月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000166432
【氏名又は名称】戸田建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】597078341
【氏名又は名称】株式会社イスルギ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】特許業務法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上田 靖男
(72)【発明者】
【氏名】今堀 賢一
(72)【発明者】
【氏名】谷内 彰
【審査官】
五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−087517(JP,A)
【文献】
特開平03−081107(JP,A)
【文献】
特公昭56−020075(JP,B1)
【文献】
実開昭60−031443(JP,U)
【文献】
欧州特許出願公開第02589727(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 15/00−15/22
E01C 7/00− 7/36
E04F 21/00−21/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートを打設した後、該コンクリート打設現場においてコンクリート天端仕上げ面の精度を確保して,コンクリート表面を金鏝で仕上げ、更に、回転自在なローラー軸の表面に針状の硬質毛を半径方向外側に植毛したローラーを柄で支持してなる滑り止め処理治具を、前記コンクリート表面上に前記ローラーを転動させて所望方向に移動させ、前記コンクリート表面を仕上げ調整すること、
を特徴とするコンクリート表面の処理工法。
【請求項2】
滑り止め処理治具のローラーを、一定の方向に転動させて、パターン付けすること、
を特徴とする請求項1に記載のコンクリート表面の処理工法。
【請求項3】
柄の先端部に取り付けられローラーを回転自在に支持するコ字形の支持枠体は、当該支持枠体のコ字形における長い本体部分が補強手段によって曲げ強度に関して補強されていること、
を特徴とする請求項1または2に記載のコンクリート表面の処理工法。
【請求項4】
コンクリート打設現場において使用される治具であって、
操作用の細長い棒状の柄と、
前記柄の先端部に取り付けられる、全体コ字形で該コ字形の対向する両先端部に架設された軸でローラーを回転自在に支持する支持枠体と、
前記支持枠体によって回転自在に支持される筒状のローラー軸の表面に針状の硬質毛を半径方向外側に植毛してなるローラーと、
前記支持枠体のコ字形における長い本体部分と、当該本体部分と平行な棒状体とが、固定手段で一体に固定されることで、当該支持枠体の本体部分における曲げ強度を補強する補強手段とが設けられてなること、
を特徴とする滑り止め処理治具。
【請求項5】
補強手段は、棒状体の金属棒と、固定手段としてのクランプとでなり、前記金属棒がクランプによって支持枠体の本体部分に固定されていること、
を特徴とする請求項4に記載の滑り止め処理治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、倉庫、工場、駐車場などのコンクリート床等を構築する場合、コンクリートの舗装面に、滑り止め対策を施すためのコンクリート表面の処理工法と、その工法に使用する滑り止め処理治具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンクリート床の表面仕上げには、コンクリート打設後に、金鏝による仕上げ工法が知られている。例えば、従来例1として、特許文献1に記載されているように、コンクリート床地の耐摩耗性の増加と滑止め用のコンクリート床表面を形成することが目的で、コンクリートの表面が生乾きの状態で、コンクリート表面に粉砕した硬質骨材を散布し、表面を擦って前記硬質骨材を表層部に埋設させる工法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平09−72077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記の従来例1では、滑り止めとして硬質骨材が必要で、更にこれを埋設させるためには重量のあるローラー装置などが必要となって、コストが嵩むことになる。そのほか、従来のコンクリート表面の滑り止め工法においては、以下のような課題がある。金鏝仕上げでは、耐久性が高いものの雨天時に滑りやすい、;ブラスト仕上げでは、コストが高く、タイヤが摩耗しやすい、;刷毛引き仕上げでは、舗装面・タイヤ共に摩耗しやすく、舗装面の摩耗によって防滑性能が低下し易く、更に、コンクリート粉塵の埃が発生し易い、;真空仕上げでは、耐久性、防滑効果は高いが、パターンが深く、泥やゴミが溜まりやすい、水はけも悪いので、台車の仕様には適さない。更に、アスファルト舗装では、滑り難いが、夏季には轍が発生し易く、耐久性能が劣るものである。
【0005】
本発明に係るコンクリート表面の処理工法と滑り止め処理治具は、このような課題を解決するために提案されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るコンクリート表面の処理工法の上記課題を解決して目的を達成するための要旨は、コンクリートを打設した後、
該コンクリート打設現場においてコンクリート天端仕上げ面の精度を確保して,コンクリート表面を金鏝で仕上げ、更に、回転自在なローラー軸の表面に針状の硬質毛を半径方向外側に植毛したローラーを柄で支持してなる滑り止め処理治具を、前記コンクリート表面上に前記ローラーを転動させて所望方向に移動させ、前記コンクリート表面を仕上げ調整することである。
【0007】
前記滑り止め処理治具のローラーを、一定の方向に転動させて、パターン付けすることである。また、前記柄の先端部に取り付けられローラーを回転自在に支持するコ字形の支持枠体は、当該支持枠体のコ字形における長い本体部分が補強手段によって曲げ強度に関して補強されていることを含むものである。
【0008】
本発明に係る滑り止め処理治具の上記課題を解決して目的を達成するための要旨は、
コンクリート打設現場において使用される治具であって、操作用の細長い棒状の柄と、前記柄の先端部に取り付けられる、全体コ字形で該コ字形の対向する両先端部に架設された軸でローラーを回転自在に支持する支持枠体と、前記支持枠体によって回転自在に支持される筒状のローラー軸の表面に針状の硬質毛を半径方向外側に植毛してなるローラーと、前記支持枠体のコ字形における長い本体部分と、固定手段で当該本体部分と平行な棒状体とが一体に固定されることで、当該支持枠体の本体部分における曲げ強度を補強する補強手段とが設けられてなることである。
【0009】
前記補強手段は、棒状体の金属棒であって、該金属棒がクランプによって柄の本体部分に固定されていることを含むものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明のコンクリート表面の処理工法と処理治具によれば、コンクリート表面の耐久性、耐摩耗性(耐タイヤ摩耗性を含む)、防塵性、轍の発生防止、耐汚染性、に優れているとともに、最も求められる防滑性能が確保されて、総合的に優れた舗装仕上げとなる。また、施工性がよく、コストアップにもならないと言う優れた効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係る滑り止め処理治具1の側面図(A)、正面図(B)である。
【
図2】同他の実施例に係る滑り止め処理治具1aの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係るコンクリート表面の処理工法は、
図1に示すように、針状の硬質毛を有するローラー4でコンクリート表面10を仕上げるものである。
【実施例1】
【0013】
本発明に係る滑り止め処理治具1は、
図1(A),(B)に示すように、操作用の細長い棒状の柄5と、前記柄5の先端部5aに取り付けられる、全体コ字形で該コ字形の対向する両先端部6a,6bに架設された軸2でローラー4を回転自在に支持する支持枠体6とがある。
【0014】
前記柄5は、例えば金属製、若しくは軽量のアルミニウム製などであり、長さが一例として1500mm程度である。
【0015】
前記支持枠体6によって回転自在に支持される筒状のローラー軸2の表面に、針状の硬質毛3を半径方向外側に植毛してなるローラー4がある。前記硬質毛3は、プラスチック製、若しくは、金属製である。その太さや長さの程度は、適宜に設定されるものである。また、前記ローラー4の大きさの一例として、直径は約100mm、幅が約750mm〜1000mmであるが、特に限定されること無く適宜に設定されるものである。
【0016】
図2に示すように、他の実施例に係る滑り止め処理治具1aは、前記支持枠体6のコ字形における長い本体部分6cと、固定手段8である金属製のクランプと、当該本体部分6cと平行な棒状体7とが一体に固定される。前記クランプ8、棒状体7とでなる補強手段9によって、支持枠体6の本体部分6cにおける曲げ強度が補強されるものである。
【0017】
前記補強手段9における棒状体7は、例えば金属棒である。該金属棒7が、足場の固定などに使用されるクランプ8によって、支持枠体6の本体部分6cに固定される。なお、前記本体部分6cの略中央部は、
図2に示すように、柄5の先端部5aの外周面に当接している。この本体部分6cの中央部と、柄5の先端部5aとを、番線、ビニールタイなどの紐部材相当品で縛って固定しても良いが、固定しなくても良い。
【0018】
次に、前記本発明に係る滑り止め処理治具1,1aを使用して、本発明に係るコンクリート表面の処理工法を説明する。
【0019】
工場、倉庫、駐車場などにおける床面の構築において、所定の型枠内に、コンクリートを打設した後、アルミニウム定規にて、表面定規擦りを行って、コンクリート天端仕上げ面の精度を確保する。更に、コンクリート表面10を金鏝で仕上げて、ムラ取りを行う。
【0020】
更に、前記本発明に係る滑り止め処理治具1,1aを、作業者が柄5を手に持って、前記コンクリート表面10上に前記ローラー4を転動させ、所望方向に移動させる。
【0021】
前記滑り止め処理治具1のローラー4を、一定の方向(立て方向、横方向、斜め方向)に転動させて、パターン付けするものである。
【0022】
前記滑り止め処理治具1,1aにより、コンクリート表面10に小さな凹凸が付いて、滑りにくくなり防滑効果が発揮される。また、前記ローラー4を押さえつけて不陸を発生させるので、コンクリート表面10がなだらかに仕上がり、突起が発生しなくなり耐摩耗性が向上する。
【0023】
更に、刷毛引き仕上げのようにコンクリート表面10に砂分を浮かせないため、耐摩耗性が良い。コンクリートの打設後に、即時仕上げが行えて工期短縮となる。そのほか、滑り止め処理治具1の製造コストは安価であって、コスト的にも嵩張ることが無い。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明に係るコンクリート表面の処理工法とその滑り止め処理治具によれば、簡易な構成により滑り止め処理治具1を形成できて、多様なコンクリート構造物における床のコンクリート表面の仕上げに広く適用できるものとなる。
【符号の説明】
【0025】
1 滑り止め処理治具、 1a 他の実施例の滑り止め処理治具、
2 ローラー軸、
3 硬質毛、
4 ローラー、
5 柄、 5a 先端部、
6 支持枠体、 6a,6b 先端部、
6c 本体部分、
7 棒状体(金属棒)、
8 固定手段(クランプ)、
9 補強手段、
10 コンクリート表面。