特許第6706937号(P6706937)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6706937
(24)【登録日】2020年5月21日
(45)【発行日】2020年6月10日
(54)【発明の名称】流雪性塗料、流雪性塗膜及び屋根部材
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/00 20060101AFI20200601BHJP
   C09D 201/02 20060101ALI20200601BHJP
   C09D 183/04 20060101ALI20200601BHJP
   C09D 7/40 20180101ALI20200601BHJP
   C09D 133/00 20060101ALI20200601BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20200601BHJP
   B05D 5/00 20060101ALI20200601BHJP
   E04D 13/00 20060101ALI20200601BHJP
【FI】
   C09D201/00
   C09D201/02
   C09D183/04
   C09D7/40
   C09D133/00
   C09D5/00
   B05D5/00 G
   E04D13/00 F
【請求項の数】10
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-48710(P2016-48710)
(22)【出願日】2016年3月11日
(65)【公開番号】特開2016-169384(P2016-169384A)
(43)【公開日】2016年9月23日
【審査請求日】2019年1月17日
(31)【優先権主張番号】特願2015-48018(P2015-48018)
(32)【優先日】2015年3月11日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】593084052
【氏名又は名称】株式会社カンペハピオ
(73)【特許権者】
【識別番号】000001409
【氏名又は名称】関西ペイント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100093665
【弁理士】
【氏名又は名称】蛯谷 厚志
(72)【発明者】
【氏名】平田 文彦
(72)【発明者】
【氏名】八木沢 敬良
(72)【発明者】
【氏名】鍵 政也
【審査官】 井上 能宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−147202(JP,A)
【文献】 特開2004−091678(JP,A)
【文献】 特開2001−271025(JP,A)
【文献】 特開2001−106975(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/171552(WO,A1)
【文献】 国際公開第02/092945(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00−201/10
B05D 1/00− 7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化硬化性を有する樹脂成分(A)、フッ素系界面活性剤(B)及び有機溶剤を含み、樹脂成分(A)固形分質量100質量部を基準とするフッ素系界面活性剤(B)の配合量が、0.1〜5.0質量部の範囲内であって、塗装後初期の乾燥塗膜の動的水接触角が転落角で60°以下である、流雪塗料。
【請求項2】
酸化硬化性を有する樹脂成分(A)が、乾性油脂肪酸及び/又は半乾性油脂肪酸を製造原料として含む樹脂である、請求項1に記載の流雪塗料。
【請求項3】
樹脂成分(A)が、(メタ)アクリロイル基含有化合物を製造原料としてさらに含む樹脂である、請求項2に記載の塗料。
【請求項4】
樹脂成分(A)が、乾性油脂肪酸及び半乾性油脂肪酸以外の酸成分、並びに多価アルコール成分を、製造原料としてさらに含む樹脂である、請求項2又は3に記載の塗料。
【請求項5】
樹脂成分(A)が、シリコーン樹脂を製造原料としてさらに含む樹脂である、請求項2ないし4のいずれか1項に記載の塗料。
【請求項6】
顔料をさらに含む、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の塗料。
【請求項7】
有機金属化合物をさらに含む、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の塗料。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項に記載の塗料を用いて形成された、流雪性塗膜。
【請求項9】
屋根表面に、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の塗料を塗装することを含む、屋根表面に流雪性を付与する方法。
【請求項10】
請求項8に記載の流雪性塗膜を備えた、流雪性を有する屋根部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋根表面等に流雪性の塗膜を形成するのに適する塗料に関する。
【背景技術】
【0002】
豪雪地帯での屋根の雪下ろしは非常に過酷であり、特に高齢者にとっては極度な負担を強いられている。また、時には作業中での落下による痛ましい事故や、隣家への落雪によるトラブル等が発生することもある。
【0003】
このため、積もった雪が流れ落ちるという流雪性の表面を有する塗膜を形成する塗料の開発が行われている。
【0004】
従来、このような用途にはシリコーン樹脂やフッ素含有成分などの塗膜表面を撥水性に改質する材料の使用が提案されてきた。
【0005】
例えば特許文献1には、シリコーン樹脂バインダと四フッ化エチレン樹脂粉末を含む塗料が開示されている。
【0006】
この塗料を用いて形成した塗膜は、撥水性や難着雪性・難着氷性が必要とされる多くの物品に塗布して使用することができるものであるが、耐久性や基材との付着性が十分ではないという問題があった。また、降雪時には所期の性能を発揮できるものの、降雪後に気温が上昇し、水分を多く含んだベタ雪の場合では流雪性が低下する場合もあった。
【0007】
一方、流雪性を与える材料として、オルガノシリケートなどの塗膜表層を親水性に改質する材料の使用も、提案されてきている。
【0008】
例えば特許文献2には、オルガノシリケートとパーフルオロアルキル基を有する界面活性剤を含む組成物が開示され、その組成物は、ベタ雪に対しても流雪性に優れた塗膜を与えることができることが記載されている。
【0009】
また、特許文献3には、アクリル樹脂系塗料に、オルガノシリケートとフッ素系シランカップリング剤の組み合わせを配合することで、低温時の着氷防止に効果があり、昇温時の流雪性能に優れた塗膜を形成し得る組成物が得られることが記載されている。
【0010】
ところで、豪雪地帯であっても降雪の時期は冬季に限定されており、春〜秋に関しては屋根は太陽光線や降雨水などの刺激を受け続けている。特許文献1〜3記載の塗料組成物により得られる塗膜は、塗装後初期は種々の状態の雪に対して流雪性を発現することができるが、降雪の時期が過ぎて春〜秋の間に降雨水や太陽光線に曝されると、次の降雪のシーズンには流雪性が著しく低下することがあり、その改善が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2000−44863号公報
【特許文献2】特開2002−206087号公報
【特許文献3】特開2003−147202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、雪は流れ落ちるが、作業者や道具等は簡単には滑り落ちないという、相反する特徴を兼ね備え、かつ、その機能、即ち流雪性を長期に渡って維持することができる、流雪性塗料、流雪性塗膜及び屋根部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記した課題について鋭意検討した結果、塗装後初期の特定組成の塗膜が特定範囲の動的水接触角を有する時に、長期間流雪性を発揮することができることを見出し、本発明に到達した。
【0014】
即ち本発明は、
酸化硬化性を有する樹脂成分(A)、フッ素系界面活性剤(B)及び有機溶剤を含み、樹脂成分(A)固形分質量100質量部を基準とするフッ素系界面活性剤(B)の配合量が、0.1〜5.0質量部の範囲内であって、塗装後初期の乾燥塗膜の動的水接触角が転落角で60°以下にある、流雪塗料、流雪性塗膜、屋根表面に流雪性を付与する方法、流雪性を有する屋根部材、に関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の流雪性塗料によれば、常温でも硬化するため既設の屋根面等に対しても容易に施行することができ、形成される塗膜の表面は仕上がり外観に優れ、雪は流れ落ちやすい性を有しながら作業者や道具に対しては適度な滑り抵抗性を有している。
【0016】
このため、本塗料を施工した屋根部材には雪が積もり難く、豪雪地帯などでは屋根の雪下ろしの回数を低減させることができ、また、作業者や道具が滑り落ちにくいという性質であるので、雪下ろしに伴う危険性にも配慮されているものである。
【0017】
また、本発明の塗料により形成される塗膜は、長期間屋外に暴露された後においても十分な流雪性を発現することができるものである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の流雪性塗料に含まれる各成分について、以下順に説明する。
【0019】
<樹脂成分(A)>
本発明において樹脂成分(A)は、酸化硬化性を有する樹脂であれば製法、材料等特に制限はないが、好適な樹脂としては、例えば、乾性油脂肪酸及び/又は半乾性油脂肪酸を製造原料として含む樹脂を挙げることができる。
【0020】
本発明においては、樹脂成分(A)が、乾性油脂肪酸及び/又は半乾性油脂肪酸を製造原料として含む酸化硬化性を有する樹脂であることによって、後述のフッ素系界面活性剤(B)と共に適度な流雪性を長期に渡って発現する塗膜が得られる効果がある。
【0021】
乾性油脂肪酸と半乾性油脂肪酸とは、厳密に区別することができないが、通常、乾性油脂肪酸はヨウ素価が130以上の不飽和脂肪酸であり、半乾性油脂肪酸はヨウ素価が100以上かつ130未満の不飽和脂肪酸である。他方、不乾性油脂肪酸は、通常、ヨウ素価が100未満の脂肪酸である。
【0022】
乾性油脂肪酸および半乾性油脂肪酸としては、例えば、魚油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸、亜麻仁油脂肪酸、大豆油脂肪酸、ゴマ油脂肪酸、ケシ油脂肪酸、エノ油脂肪酸、麻実油脂肪酸、ブドウ核油脂肪酸、トウモロコシ油脂肪酸、トール油脂肪酸、ヒマワリ油脂肪酸、綿実油脂肪酸、クルミ油脂肪酸、ゴム種油脂肪酸、ハイジエン酸脂肪酸等が挙げられる。
【0023】
本発明においては樹脂成分(A)が、乾性油脂肪酸及び/又は半乾性油脂肪酸及び(メタ)アクリロイル基含有化合物を製造原料とする樹脂であることが適している。
【0024】
本明細書において、「(メタ)アクリロイル」基は、アクリロイル基及びメタクリロイル基、あるいはアクリロイル基又はメタクリロイル基を意味し、そして「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸及びメタクリル酸、あるいはアクリル酸又はメタクリル酸を意味する。
【0025】
(メタ)アクリロイル基含有化合物としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート等の直鎖状、分岐状又は環状アルキル基含有(メタ)アクリレート;N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシプロピル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシプロピル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコールモノメトキシ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコールモノアルコキシ(メタ)アクリレート等のアルコキシ基含有(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有(メタ)アクリレート;アクリル酸、メタクリル酸、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートと酸無水物とのハーフエステル化物等のカルボキシル基含有(メタ)アクリレート;2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等のスルホン酸基含有(メタ)アクリレート;アシッドホスホオキシエチル(メタ)アクリレート、リン酸モノ−〔(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリル酸〕エステル等のリン酸基含有(メタ)アクリレート;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N−t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノブチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有(メタ)アクリレート;(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、メタクリル酸ジメチルアミノエチルメチルクロライド等の第4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリレート;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,3−ジヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、上記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートにε−カプロラクトン等のラクトンを開環重合した化合物、及びポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の多価アルコールとアクリル酸又はメタクリル酸とのモノエステル化物等の水酸基含有(メタ)アクリレート等;ヘキサフルオロイソプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルメチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート等のフルオロアルキル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリロキシアルコキシシラン、例えば、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、β−(メタ)アクリロキシエチルトリメトキシシラン、β−(メタ)アクリロキシエチルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジプロポキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシブチルフェニルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルジエチルメトキシシラン等の加水分解性シリル基含有(メタ)アクリレート:並びにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0026】
また、樹脂成分(A)はその他の重合性不飽和化合物を製造原料とするものであってもよい。
【0027】
かかるその他の重合性不飽和化合物としては、スチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニル化合物;シクロヘキシルビニルエーテル、ノニルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル;エチルアリルエーテル、ヘキシルアリルエーテル等のアリルエーテル;「ベオバ−9」、「ベオバ−10」(いずれもシェル化学社製、商品名)等のカルボン酸ビニルエステル;エチレン、プロピレン、イソブチレン等のオレフィン:フルオロアルキルトリフルオロビニルエーテル、パーフルオロアルキルトリフルオロビニルエーテル等のフルオロビニルエーテル等を挙げることができる。
【0028】
また、上記樹脂成分(A)は、乾性油脂肪酸及び/又は半乾性油脂肪酸以外の酸成分、及び多価アルコール成分を製造原料としてさらに含む樹脂であってもよい。
【0029】
かかる乾性油脂肪酸及び/又は半乾性油脂肪酸以外酸成分には、ヤシ油脂肪酸、水添ヤシ油脂肪酸、パーム油脂肪酸等の不乾性油脂肪酸;カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等の飽和脂肪酸;無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、コハク酸、フマル酸、アジピン酸、セバシン酸、無水マレイン酸等の二塩基酸;安息香酸、クロトン酸、p−t−ブチル安息香酸等の一塩基酸;無水トリメリット酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸、無水ピロメリット酸などの3価以上の多塩基酸などを挙げることができ、これらを単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0030】
多価アルコール成分としては、分子中に水酸基を少なくとも2個有する化合物であり、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチルペンタンジオール、1,4−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどの二価アルコールが主に用いられ、さらに必要に応じてグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどの3価以上の多価アルコールを併用することができる。これらの多価アルコールは単独で、あるいは2種以上を混合して使用することができる。
【0031】
樹脂成分(A)としては、上述の成分を製造原料とする公知の方法で得られるものであり、例えば、乾性油脂肪酸及び/又は半乾性油脂肪酸を含む酸成分と多価アルコールを用いて製造したアルキド樹脂を用い、この樹脂のカルボキシル基又は水酸基に、これらの基と反応性を有する基、例えばカルボキシル基、水酸基又はエポキシ基を有する(メタ)アクリロイル基含有化合物を含む成分もしくはその共重合体を反応させてなる変性樹脂や、アルキド樹脂に(メタ)アクリロイル基含有化合物を含む重合性不飽和モノマー成分をパーオキサイド系重合開始剤等を使用してグラフト重合してなる変性樹脂、乾性油脂肪酸及び/又は半乾性油脂肪酸と、カルボキシル基に反応可能な官能基と重合性不飽和基を有する化合物との反応生成物を、(メタ)アクリロイル基含有化合物を含む重合性不飽和モノマー成分と共重合してなる変性樹脂等を挙げることができる。
【0032】
本発明において樹脂成分(A)は、上記した変性樹脂を、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の改質用樹脂でさらに変性したものであることが、流雪性の点から適している。
【0033】
これらのうちシリコーン樹脂としては、例えば、樹脂中に、加水分解性シリル基を含有し且つポリシロキサン骨格を有する樹脂を挙げることができる。
【0034】
加水分解性シリル基としては、例えば、クロロシリル基、ブロモシリル基等のハロゲン化シリル基、メトキシシリル基、エトキシシリル基、プロポキシシリル基、ブトキシシリル基等のアルコキシシリル基等が挙げられる。
【0035】
シリコーン樹脂は、例えば、次の式(1)
SiX4−n 式(1)
(式中、Xは、水酸基又はアルコキシ基を表し、Yは、置換基を有していてもよい1価の炭化水素基を表し、そしてnは、1〜4の整数を表す。)
で表される、同一又は異なる2以上のオルガノシランが化学結合することにより生成した樹脂、例えば、オリゴマーであることができ、式(1)で表されるオルガノシランが、直鎖状、又は分岐鎖状に結合されることができる。また、上記シリコーン樹脂は、ケイ素原子と直接結合する炭化水素基を有することが好ましい。
【0036】
式(1)で表されるオルガノシランとしては、例えば、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、β−シアノエチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、ジメチルジクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、4−アミノブチルトリエトキシシラン、p−アミノフェニルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノエチルアミノメチルフェネチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、4−アミノブチルトリエトキシシラン、N−(6−アミノヘキシル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリクロロシラン、(p−クロロメチル)フェニルトリメトキシシラン、4−クロロフェニルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、スチリルエチルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン等、並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0037】
シリコーン樹脂の市販品としては、例えば、「SR2406」、「SR2410」、「SR2420」、「SR2416」、「SR2402」、「SH−6018」「AY42−161」、「DC−3074」及び「DC−3037」(以上、東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製)、「FZ−3704」及び「FZ−3511」(以上、日本ユニカー社製)、「KC−89S」、「KR−500」、「X−40−9225」、「X−40−9246」、「X−40−9250」、「KR−217」、「KR−9218」、「KR−213」、「KR−510」、「X−40−9227」、「X−40−9247」、「X−41−1053」、「X−41−1056」、「X−41−1805」、「X−41−1810」、「X−40−2651」、「X−40−2308」、「X−40−9238」、「X−40−2239」、「X−40−2327」、「KR−400」、「X−40−175」及び「X−40−9740」(以上、信越化学工業株式会社製)
等が挙げられる。
【0038】
樹脂成分(A)がシリコーン樹脂により変性されたシリコーン変性樹脂である場合、シリコーン変性量としては、樹脂成分(A)の製造原料中に占めるシリコーン樹脂の割合が0.5〜20質量%の範囲内にあることが望ましい。
【0039】
本発明における上記樹脂成分(A)は、弱溶剤に溶解性を有することが好ましい。
【0040】
「弱溶剤」は、当技術分野で周知な用語であり、一般的には溶解力の弱い溶剤を意味する。上記弱溶剤には、労働安全衛生法による有機溶剤の分類において、第3種有機溶剤と列挙されるものが含まれる。第3種有機溶剤の例として、ガソリン、灯油、コールタールナフサ(ソルベントナフサを含む)、石油エーテル、石油ナフサ、石油ベンジン、テレピン油、ミネラルスピリット(ミネラルシンナー、ペトロリウムスピリット、ホワイトスピリット及びミネラルターペンを含む)が挙げられる。
【0041】
上記弱溶剤は市販されており、例えば、「スワゾール1000」及び「スワゾール1500」(以上商品名、丸善石油株式会社製)、「ソルベッソ150」、「ソルベッソ200」、「HAWS」及び「LAWS」(以上商品名、シェルジャパン社製)、「エッソナフサNo.6」、「エクソールD30」及び「ペガゾール3040」(以上商品名、エクソンモービル化学社製)、「Aソルベント」、「クレンゾル」及び「イプゾール100」(以上商品名、出光興産株式会社製)、「ミネラルスピリットA」、「ハイアロム2S」及び「ハイアロム2S」(以上商品名、新日本石油化学株式会社製)、「リニアレン10」及び「リニアレン12」(以上、出光石油化学株式会社製)、「リカソルブ900」、「リカソルブ910B」及び「リカソルブ1000」(以上商品名、新日本理化株式会社製)等が挙げられる。
【0042】
樹脂成分(A)は、上記弱溶剤の存在下、又は上記弱溶剤及びそれ以外のその他の有機溶剤の存在下で、上述の成分を反応させることにより製造することができる。
【0043】
樹脂成分(A)の重量平均分子量は、特に制限されるものではないが、塗膜の流雪性、耐候性、並びに弱溶剤への溶解性の観点から、一般的に10,000〜120,000の範囲にあり、そして好ましくは15,000〜80,000の範囲にあることが望ましい。
【0044】
なお、本明細書において、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)を用いて測定した保持時間(保持容量)を、同一条件で測定した分子量既知の標準ポリスチレンの保持時間(保持容量)によりポリスチレンの分子量に換算して求めた値である。
【0045】
ゲルパーミエーションクロマトグラフは、「HLC8120GPC」(東ソー社製)を使用した。カラムとしては、「TSKgel G−4000HXL」、「TSKgel G−3000HXL」、「TSKgel G−2500HXL」、「TSKgel G−2000HXL」(いずれも東ソー(株)社製、商品名)の4本を用い、移動相;テトラヒドロフラン、測定温度;40℃、流速;1cc/分、検出器;RIの条件で行った。
【0046】
<フッ素系界面活性剤(B)>
本発明の流雪塗料はフッ素系界面活性剤(B)を含むことを特徴とする。フッ素系界面活性剤(B)としては、フッ素置換された炭化水素鎖以外に親水性基を有する化合物が挙げられる。親水性基としては、例えば、スルホン酸、カルボン酸、リン酸等のアミンまたは金属塩、3級アミンのハロゲン化塩、水酸基、またはポリオキシアルキレン基等が挙げられる。
【0047】
具体的にはパーフルオロアルキルスルホン酸のリチウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、およびアンモニウム塩、パーフルオロアルキルカルボン酸のカリウム塩、ナトリウム塩、およびアンモニウム塩、パーフルオロアルキルジカルボン酸カリウム塩、パーフルオロアルキル燐酸塩等のアニオン性フッ素系界面活性剤;パーフルオロオクタンスルホン酸ジエタノールアミド、N−プロピル−N−(2−ヒドロキシエチル)パーフルオロオクタンスルホン酸アミド、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、パーフルオロアルキルアルコキシレート等のノニオン性のフッ素系界面活性剤等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0048】
上記フッ素系界面活性剤のうち、ある種のものは例えば、「メガファック」シリーズ(商品名、DIC社製)、「サーフロン」シリーズ(商品名、AGCセイミケミカル社製)、「FC」シリーズ(商品名、スリーエム社製)、「フタージェント」シリーズ(商品名、ネオス社製)、「ゾニール」シリーズ(商品名、デュポン社製)として市販されている。
【0049】
本発明において、形成される塗膜に適度な流雪性を発現させるためのフッ素系界面活性剤(B)の使用量としては、酸化硬化型樹脂である樹脂成分(A)の固形分質量100質量部を基準として0.1〜5.0質量部の範囲内にあることを特徴とするものであり、好ましくは0.5〜3.0質量部の範囲内にあることが適している。
【0050】
この範囲より少ないと流雪性が不十分であり、一方、多すぎると乾燥後の塗膜の光沢が低下するとともに色相が暗くなり、所望の外観が得られず、好ましくない。
【0051】
<塗料>
また、本発明の塗料は、顔料;有機金属化合物;シランカップリング剤:樹脂成分(A)以外のアクリル樹脂、フッ素樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂等の改質用樹脂;有機溶剤;反応性希釈剤;付着付与剤、沈降防止剤、消泡剤、分散剤、湿潤剤、脱水剤、紫外線吸収剤、光安定化剤等の塗料用添加剤等を含むことができる。
【0052】
これらのうち顔料としては、特に限定されず、モノアゾ系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料等の有機系着色顔料;黄色酸化鉄、ベンガラ、チタンイエロー、カーボンブラック、二酸化チタン等の無機系着色顔料;グラファイト系顔料;アルミナフレーク顔料等の着色扁平顔料;炭酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、ケイ酸マグネシウム、クレー、タルク、焼成カオリン、シリカ等の体質顔料等が挙げられ、これらは単独で又は目的とする塗色に応じて2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明の塗料は着色塗料、艶消し塗料又はクリヤー塗料のいずれであってもよく、それによって顔料の配合量及び組成を適宜調整することができる。
【0053】
特に本発明では、顔料分の一部として体質顔料を含むことが適している。
【0054】
本発明における体質顔料の好ましい含有量としては、樹脂成分(A)固形分100質量部を基準として5〜90質量部、好ましくは20〜70質量部の範囲内であることができる。
また、本発明では顔料分の一部として、導電性無機顔料を含むことが適している。
かかる導電性無機顔料としては、例えばアンチモン酸亜鉛、ガリウムドープ酸化亜鉛、アンチモンドープ酸化すず、インジウムドープ酸化すず、リンドープ酸化すず、アルミニウムドープ酸化亜鉛、ニオブドープ酸化すず、フッ素ドープ酸化すず、ガリウムドープ酸化すず等が挙げられ、これらの中から単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
かかる導電性無機顔料の好ましい含有量としては、樹脂成分(A)固形分100質量部を基準として、0.05〜20質量部、好ましくは0.1〜10質量部の範囲内であることができる。
【0055】
また、有機金属化合物としては、例えば、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸鉛、ナフテン酸ジルコニウム、ナフテン酸マンガン、ナフテン酸亜鉛などのナフテン酸の多価金属塩等のナフテン酸金属塩;オクチル酸コバルト、オクチル酸マンガン、オクチル酸鉛、オクチル酸ジルコニウム、オクチル酸亜鉛等のオクチル酸金属塩等の脂肪酸金属塩などが挙げられる。これらの有機金属化合物は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。さらに、これらの有機金属化合物は、金属がアミンと錯体を形成していてもよく、異種の金属を含有する有機金属化合物であってもよい。
【0056】
本発明の塗料が有機金属化合物、特にナフテン酸金属塩及びオクチル酸金属塩を共に含むことによって、常温乾燥の条件における塗膜の硬化速度を調整することができ、塗膜に適度な流雪性を発現させるのに役立つ。
【0057】
また、上記シランカップリング剤としては、例えば、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノ基含有シランカップリング剤;γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン等のグリシジル基含有シランカップリング剤;γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト基含有シランカップリング剤;ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリス(メトキシエトキシ)シラン等のビニル基含有シランカップリング剤;γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン等の(メタ)アクリロイル基含有シランカップリング剤等が挙げられる。
【0058】
本発明の塗料がシランカップリング剤を含む場合、シランカップリング剤の含有量としては、酸化硬化型樹脂である樹脂成分(A)固形分質量100質量部に基づいて、0.01〜3.0質量部、好ましくは0.05〜1.0質量部の範囲内で含むことが適している。基材との付着性が良好で、雪は流れ落ち、人や物が落下しない程度の適度な流雪性を塗膜に発現させるためである。
【0059】
本発明の塗料は常温硬化型であり、形成した硬化塗膜が優れた性能を発揮することができるが乾燥硬化型又は加熱硬化型であってもよい。
【0060】
乾燥膜厚としては、屋根等の被塗物の状態や周囲環境によって異なるが、一般には25〜70μm、好ましくは35〜50μmの範囲内とすることができる。
【0061】
上記のようにして得られる本発明の塗料は塗装後初期の塗膜の動的接触角が転落角で60°以下であることを特徴とするものであり、特に55°以下にあることができる。
【0062】
塗装後初期の塗膜の動的接触角が転落角で60°を超える場合は、本発明塗料が塗装された屋根等から雪が流れ落ち難くなり、好ましくない。
【0063】
また、本発明の流雪性塗料は、塗装後初期の塗膜の摩擦係数が0.35以上、特に0.4以上、静的接触角が85°以下、特に2〜50°の範囲内にあることができる。かかる範囲内にあることによって、雪は流れやすく、人は滑りにくいという性質を有する適度な流雪性を発現することができる。
【0064】
尚、本明細書において、塗装後初期の塗膜とは、例えば、軟鋼板に、塗料を乾燥膜厚が50μmとなるようにアプリケーターで塗装し、20℃、7日間乾燥させた状態が挙げられる。
【0065】
本明細書において、動的接触角における転落角とは、水平な状態で塗膜表面に水滴を載せ、徐々に傾斜させていくと、水滴が滑り始める傾斜角度のことである。
【0066】
また、摩擦係数は、JIS K 7125 プラスチック−フィルム及びシート−摩擦係数試験方法に準拠して測定することにより得られる値であり、静的接触角は、塗膜表面上に水滴を載せ、水滴の縁の表面に引いた接線と塗膜表面とがなす角度をいい、この角度が小さいほど、塗膜表面が親水性であることを意味する。
【0067】
<塗装>
本発明の塗料が適用される被塗物としては、電線、橋桁、車両、航空機、電気通信施設、道路交通標識、ガードレール、遮音壁、建築物の屋根、側壁、信号機等の着氷防止が求められる物品を挙げることができる。
これらのうち、屋根面としては、新設でも既存の屋根のいずれでもよく、また、素材の種類、旧塗膜の種類や有無など特に制限されるものではない。
【0068】
具体例としては、所望により下地処理された金属素材、例えば、鋼板、亜鉛めっき、ステンレス、アルミニウム等;アルカリ性を有する基材、例えば、コンクリート、モルタル、スレート、スレート瓦等、窯業系建材等、並びにそれらの上に古い塗膜が形成されているものが挙げられる。
【0069】
上記塗料は、例えば、スプレー塗り、ローラー塗り、刷毛塗り、流し塗り等の公知の手段で塗装することができる。
【0070】
また、本発明塗料を塗装する前に、素地調整や下塗り塗料を塗装してもよい。
【実施例】
【0071】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、下記例中の「部」及び「%」はそれぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。
【0072】
<アルキド変性アクリル樹脂溶液の製造>
製造例1
反応容器に、下記アルキド樹脂溶液(*)36.5部(固形分23.7部)及び「スワゾール1000」(商品名、丸善石油化学社製、芳香族炭化水素系溶剤)23部を配合し、攪拌しながら120℃まで昇温した。
【0073】
次いで、反応容器内液を同温度で保持、攪拌しながら、下記モノマー組成物及び開始剤溶液をそれぞれ3時間かけて滴下し、反応させた。その後冷却させ、スワゾール1000で固形分が55%になるまで希釈し、アルキド変性アクリル樹脂溶液(A−1)を得た。樹脂の重量平均分子量は50000であった。
(モノマー組成物)
スチレン 23部
メチルメタクリレート 17.7部
2−エチルヘキシルアクリレート 10部
i−ブチルメタクリレート 22.5部
ヒドロキシエチルメタクリレート 2.3部
アクリル酸 0.8部
(開始剤溶液)
ターシャリーブチルパーオキサイド 5部
「スワゾール1000」 10部
(*)アルキド樹脂溶液:大豆油脂肪酸/無水フタル酸/ペンタエリスリトール/グリセリン=477部/147部/133部/4部の縮合体、希釈溶剤「スワゾール1000」、固形分65%。
【0074】
製造例2
フラスコ中にミネラルスピリット72部を仕込み、窒素ガスを通気しながら、115℃まで撹拌を行いながら昇温した。次いで、温度を115℃に保ちながら下記のモノマーなどの混合物を4時間かけて滴下した。
スチレン 25部
メタクリル酸n−ブチル 15部
メタクリル酸i−ブチル 20部
アクリル酸2−エチルヘキシル 20部
メタクリル酸グリシジル 20部
2,2′−アゾビスイソブチロニトリル 1部
次いで115℃で2時間熟成した後、140℃に昇温してからアマニ油脂肪酸30部及び反応触媒としてN,N−ジメチルアミノエタノール0.4部を加え、160℃で5時間保持して脂肪酸の付加反応を行った。反応終了後、ミネラルスピリット31部を加えて希釈して不揮発分50%の褐色透明で粘調な脂肪酸変性共重合体溶液を得た。
次に100℃まで冷却し、フラスコに水分離器を装備し、シリコーン樹脂「SH−6018」(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製)20部、ミネラルスピリット20部及びテトラ−n−ブチルチタネート0.20部を加え、165℃まで昇温し、還流系中で水分離器で水を分離しながら5時間反応させて不揮発分約55%の褐色透明で粘調な乾性油脂肪酸変性アクリル樹脂溶液(A−2)を得た。樹脂の重量平均分子量は6万であった。
【0075】
製造例3
反応容器に、「スワゾール1000」(商品名、丸善石油化学社製、芳香族炭化水素系溶剤)23部を配合し、攪拌しながら120℃まで昇温した。
次いで、反応容器内液を同温度で保持、攪拌しながら、下記モノマー組成物及び開始剤溶液をそれぞれ3時間かけて滴下し、反応させた。
その後冷却させ、「スワゾール1000」(商品名、丸善石油化学社製、芳香族炭化水素系溶剤)で固形分が55%になるまで希釈し、酸化硬化性のないアクリル樹脂溶液(A−3)を得た。重量平均分子量は50000であった。
(モノマー組成物)
スチレン 23部
メチルメタクリレート 17.7部
2−エチルヘキシルアクリレート 10部
i−ブチルメタクリレート 22.5部
ヒドロキシエチルメタクリレート 2.3部
アクリル酸 0.8部
(開始剤溶液)
ターシャリーブチルパーオキサイド 4部
「スワゾール1000」 10部。
【0076】
<塗料の製造>
実施例1〜12及び比較例1〜5
下記配合組成にて塗料(X−1)〜(X−17)を製造し、下記評価試験に供した。結果を表1に併せて示す。
尚、塗料(X−7)は艶消しタイプであり、塗料(X−8)はクリヤータイプであり、(X−9)〜(X−12)は、導電性顔料含有タイプである。
【0077】
【表1】
【0078】
(注1)フッ素系界面活性剤:パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物
(注2)シリコン系添加剤:テトラエトキシシラン縮合物。
【0079】
<試験塗板の作成>
軟鋼板に、各塗料を乾燥膜厚が50μmとなるようにアプリケーターで塗装し、20℃、7日間乾燥させたものを試験塗板とした。
(*1)光沢
各試験塗板を、BYK社製のグロスメータ「micro-TRI-gloss」(商品名、光沢計)を使用し、測定角度60度にて測定した。
(*2)L*値
各試験塗板のL*値を「MA−68II」(商品名、多角度分光光度計、X−Rite社製)を使用し、測定した。
(*3)摩擦係数
各試験塗板の摩擦係数を滑り抵抗性試験機「HEIDON」(商品名、ポータブル摩擦計)を用いて測定した。
(*4)静的接触角(°)
各試験塗板に、純水10μlを滴下し、測定温度20℃にて滴下後1分の接触角を型式CA−X(協和界面科学株式会社)のモニターを見て測定した。表中の値は3回測定したときの平均値である。
(*5)転落角(°)
各試験塗板の上に純水20μlを滴下し、測定温度20℃にて塗板を傾けた際に水滴が動き出した時の塗板の角度を転落角とした。測定は動的水接触角測定装置「DSA−100 micro」(商品名、KRUSS社製)を用いた。
(*6)凍結融解試験後の転落角
各試験塗板を、−20℃、16時間で曝した後、45℃、8時間で曝すサイクルを1サイクルとして10サイクル試験をした後に、転落角を測定した。
(*7)流雪性
冬季直前に、北海道札幌市の倉庫のトタン屋根(傾斜角度20度程度)に各塗料を乾燥膜厚が50μmとなるように、2m幅で分割塗装し、常温で乾燥させ、流雪性評価用屋根塗装を行った後、積雪時における屋根からの流雪状態を観察し、下記基準にて目視評価した。
5:雪が全く残っていない。
4:屋根表面のうち雪で覆われている部分が半分より少ない。
3:屋根表面のうち雪で覆われている部分が半分程度。
2:屋根表面のうち、雪で覆われている部分が半分を超えるが、雪で覆われていない部分も認められる。
1:屋根表面が全面雪で覆われている。