特許第6706942号(P6706942)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6706942
(24)【登録日】2020年5月21日
(45)【発行日】2020年6月10日
(54)【発明の名称】部品内蔵型回路基板
(51)【国際特許分類】
   H01C 7/00 20060101AFI20200601BHJP
   H01C 1/142 20060101ALI20200601BHJP
   H05K 3/46 20060101ALI20200601BHJP
【FI】
   H01C7/00 110
   H01C1/142
   H05K3/46 Q
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-60734(P2016-60734)
(22)【出願日】2016年3月24日
(65)【公開番号】特開2017-175014(P2017-175014A)
(43)【公開日】2017年9月28日
【審査請求日】2019年1月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000105350
【氏名又は名称】KOA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】特許業務法人 武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小口 友規
【審査官】 上谷 奈那
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−330801(JP,A)
【文献】 特開2004−140285(JP,A)
【文献】 特開平11−204304(JP,A)
【文献】 特開2000−182801(JP,A)
【文献】 特開2014−057096(JP,A)
【文献】 特開2002−064002(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01C 7/00
H01C 1/142
H05K 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性の樹脂層からなるベース基板の内層にチップ抵抗器が埋め込まれている部品内蔵型回路基板において、
前記チップ抵抗器が、直方体形状の絶縁性基板と、前記絶縁性基板における長手方向両端部に薄膜形成された一対の第1内部電極と、前記一対の第1内部電極に接続するように薄膜形成された抵抗体と、少なくとも前記抵抗体を覆うように厚膜形成された保護層と、前記一対の第1内部電極の対向間隔よりも狭い対向間隔となるように薄膜形成された一対の第2内部電極と、前記第2内部電極を覆うようにメッキ形成された外部電極とを備え、
前記保護層が前記抵抗体と前記第1内部電極とを覆うように形成されていると共に、この第1内部電極における前記絶縁性基板の長手方向両端から内側に離反した位置に前記保護層によって覆われていない露出部が形成されており、
前記第2内部電極が前記露出部を含んで前記保護層を覆うように形成されていることにより、前記露出部と対応する位置に凹部が形成され、
前記凹部を跨いで前記外部電極と接続するビアを前記ベース基板に形成可能であり、
前記凹部の幅は前記ビアの内径よりも狭くなるように形成されていることを特徴とする部品内蔵型回路基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板内蔵用チップ抵抗器が絶縁性の樹脂層に埋め込まれている部品内蔵型回路基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化や高機能化に伴い、チップ抵抗器を回路基板に内蔵することにより、回路基板に対する単位面積当りの回路密度を高める工夫がなされている。このような回路基板では、絶縁性の樹脂層からなるベース基板にチップ抵抗器を埋め込んだ後に、この樹脂層の表面にレーザを照射して穴あけ加工を行い、その穴の内部にメッキ処理を施してビアを形成することにより、チップ抵抗器の外部電極とビアとを接続するようになっている。
【0003】
ここで、穴あけ加工の際には、樹脂層に埋め込まれているチップ抵抗器の外部電極に向けてレーザを照射させて外部電極を露出させる必要があるが、一般的に、樹脂層として不透明材料が使用されているため、樹脂層に埋め込まれているチップ抵抗器の外部電極を目視することができない。このため、穴あけ加工の際に穴の形成位置がずれてしまい、外部電極とビアとの接続信頼性が低下してしまうという課題がある。
【0004】
このような課題を解決するために、特許文献1に記載されたチップ抵抗器では、外部電極を大きくすることによって、ビアとの接続を確実にしている。すなわち、図7に示すように、特許文献1に記載のチップ抵抗器101は、直方体状の絶縁性基板102と、絶縁性基板102の表面に所定間隔を存して対向配置された一対の第1内部電極103と、一対の第1内部電極103に接続するように絶縁性基板102の表面に設けられた抵抗体104と、抵抗体104を覆うように形成された第1保護層105および第2保護層106と、第1内部電極103の露出部および第2保護層106の端部を覆うように形成された一対の第2内部電極107と、第2内部電極107を覆うように形成された外部電極108と、を備えている。
【0005】
第1内部電極103は、銀を主成分とする導電材料からなり、絶縁性基板102の表面にスクリーン印刷にて厚膜形成される。具体的には、絶縁性基板102の表面にスクリーンマスクをセットし、スクリーンマスク上に印刷用のAg−Pdペーストを供給しスキージングを行うことにより、Ag−Pdペーストがスクリーンマスクのパターン孔を通して絶縁性基板102の表面に塗布され、これを乾燥させた後に焼成することで、厚膜焼成体からなる第1内部電極103が得られる。同様に、抵抗体104と両保護層105,106および第2内部電極107もスクリーン印刷にて厚膜形成される。
【0006】
特許文献1に記載のチップ抵抗器101では、一対の第1内部電極103の対向間隔よりも一対の第2内部電極107の対向間隔の方が狭く形成されているため、第2内部電極107を覆う外部電極108の表面積を広く確保することができる。その結果、穴の形成位置が多少ずれたとしても、チップ抵抗器の外部電極とビアとを接続することが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011−91140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、スクリーン印刷による厚膜形成では、スクリーンマスクずれやペーストのダレ等に起因して内部電極の間隔や抵抗体の寸法にばらつきが生じ、抵抗値の精度に影響を与えてしまう虞があるため、内部電極と抵抗体とをスクリーン印刷による厚膜形成に替えてフォトリソ等による薄膜形成することが考えられる。このようにすると内部電極等の間隔を一定の間隔で保つことが可能になり、電極寸法精度や抵抗値精度の高いチップ抵抗器を製造することができる。また、一般的に厚膜形成される内部電極に使用される銀は、温度によって抵抗値が大きく変動するため、内部電極自体の温度変化による抵抗値の変動や、抵抗体の形成時に銀が抵抗体へ拡散することによって、抵抗体の抵抗値の変動が発生するおそれが高くなる。したがって、内部電極をCu等の材料にて薄膜形成することによって、温度変化による内部電極の抵抗値の変動を小さくすることが可能になり、温度変化による抵抗値の変動の少ないチップ抵抗器を製造することができる。
【0009】
そこで、図8に示すように、第1および第2内部電極と抵抗体とを薄膜形成すると共に、保護層を厚膜形成することにより、外部電極の表面積を広く確保しつつ、外部電極とビアとの接続を容易にしたチップ抵抗器が考えられる。すなわち、図8に示すチップ抵抗器111は、直方体状の絶縁性基板112と、絶縁性基板112における長手方向両端部に薄膜形成された一対の第1内部電極113と、これら第1内部電極113に接続するように薄膜形成された抵抗体114と、第1内部電極113の端部と抵抗体114とを連続して覆うように厚膜形成された保護層115と、一対の第1内部電極113の対向間隔よりも狭い対向間隔となるように薄膜形成された一対の第2内部電極116と、第2内部電極116を覆うようにメッキ形成された外部電極117と、を備えている。
【0010】
上述のように構成したチップ抵抗器111では、薄膜の第1内部電極113上に厚膜の保護層115が形成され、これら第1内部電極113と保護層115とを第2内部電極116が連続して覆うように形成されていることから、保護層115の端面から第1内部電極113の表面にかけて段差部が形成されてしまい、その結果、第2内部電極116の表面を覆う外部電極117に大きな段差部118が生じてしまう。
【0011】
このようなチップ抵抗器111が内蔵されたベース基板に穴あけ加工してビアを形成する場合、段差部118付近における外部電極117の表面は階段状に形成されていることから、段差部118の直上付近にある樹脂層にレーザを照射して穴を形成すると、穴の内部に形成されたビアと外部電極117との接続不良になる虞がある。このように、特許文献1に記載の技術を適用させて外部電極を大きく形成したとしても、外部電極117の表面のうち段差部118よりも外側の領域はビアとの接続が困難な領域となり、実質的に、外部電極117とビアとの接続可能な領域は、外部電極117の表面のうち段差部118よりも内側の同図中に示す狭い領域Fに限定されてしまう。
【0012】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、ビア用の穴あけ加工が容易な部品内蔵型回路基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
記の目的を達成するために、本発明の部品内蔵型回路基板は、絶縁性の樹脂層からなるベース基板の内層にチップ抵抗器が埋め込まれている部品内蔵型回路基板において、前記チップ抵抗器が、直方体形状の絶縁性基板と、前記絶縁性基板における長手方向両端部に薄膜形成された一対の第1内部電極と、前記一対の第1内部電極に接続するように薄膜形成された抵抗体と、少なくとも前記抵抗体を覆うように厚膜形成された保護層と、前記一対の第1内部電極の対向間隔よりも狭い対向間隔となるように薄膜形成された一対の第2内部電極と、前記第2内部電極を覆うようにメッキ形成された外部電極とを備え、前記保護層が前記抵抗体と前記第1内部電極とを覆うように形成されていると共に、この第1内部電極における前記絶縁性基板の長手方向両端から内側に離反した位置に前記保護層によって覆われていない露出部が形成されており、前記第2内部電極が前記露出部を含んで前記保護層を覆うように形成されていることにより、前記露出部と対応する位置に凹部が形成され、前記凹部を跨いで前記外部電極と接続するビアを前記ベース基板に形成可能であり、前記凹部の幅は前記ビアの内径よりも狭くなるように形成されていることを特徴とする。
【0018】
本発明によると、外部電極の表面の高さは、凹部を除いて殆ど同じ高さになるため、少なくとも凹部を除いた外部電極の表面をビアと接続可能な領域として利用することができる。さらに、本発明では、第1内部電極の露出部と対応する位置に形成された凹部を跨ぐようにビアをベース基板に形成可能であるため、凹部を含めた外部電極の表面全体がビアと接続可能な領域となり、ビア用の穴あけ加工が容易となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ビア用の穴あけ加工が容易な部品内蔵型回路基板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1実施形態例に係る基板内層用チップ抵抗器の平面図である。
図2図1のA−A線に沿う断面図である。
図3】当該チップ抵抗器の製造工程を示す説明図である。
図4】当該チップ抵抗器が内層された部品内蔵型回路基板の断面図である。
図5】本発明の第2実施形態例に係る基板内層用チップ抵抗器の平面図である。
図6】本発明の第3実施形態例に係る基板内層用チップ抵抗器の平面図である。
図7】従来例に係る基板内層用チップ抵抗器の断面図である。
図8】従来提案に係る部品内蔵型回路基板の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。図1,2に示すように、本発明の第1実施形態例に係る基板内層用チップ抵抗器(以下、チップ抵抗器と言う)1は、直方体形状の絶縁性基板2と、絶縁性基板2における長手方向両端部に薄膜形成された一対の第1内部電極3,4と、一対の第1内部電極3,4に接続するように薄膜形成された抵抗体5と、少なくとも抵抗体5を覆うように厚膜形成された保護層6と、一対の第1内部電極3,4の対向間隔よりも狭い対向間隔となるように薄膜形成された一対の第2内部電極7,8と、第2内部電極7,8を覆うようにメッキ形成された外部電極9,10とによって主として構成されている。
【0022】
絶縁性基板2はセラミックス基板からなり、この絶縁性基板2は後述する大判基板を縦横に延びる分割溝に沿って分割して多数個取りされたものである。
【0023】
抵抗体5は絶縁性基板2の表面上に薄膜形成されたNi−Cr系等の抵抗材料からなり、抵抗体5の中央部がミアンダ形状(サーペンタイン形状)に蛇行した抵抗パターンとなっている。この抵抗体5は、絶縁性基板2の表面全体にNi−Cr系等を蒸着またはスパッタした後、これをフォトリソ/エッチングしてミアンダ形状にパターニングされたものである。
【0024】
一対の第1内部電極3,4は抵抗体5の両端部上に薄膜形成されたCu等の電極材料からなり、これら第1内部電極3,4は、パターニング前の抵抗膜(抵抗体5)の表面全体にCu等を蒸着またはスパッタした後、これをフォトリソ/エッチングして矩形状にパターニングされたものである。なお、一対の第1内部電極3,4は保護層6によって覆われない露出部を有している。
【0025】
保護層6は第1内部電極3,4と抵抗体5とを覆うように厚膜形成されたエポキシ樹脂等の絶縁材料からなり、この保護層6は、第1内部電極3,4における絶縁性基板2の長手方向両端から内側に離反した位置にある露出部3a,4aと、図示左側の露出部3aから絶縁性基板2の両長辺まで延びて露出部3aに連続する絶縁性基板2の領域2aと、図示右側の露出部4aから絶縁性基板2の両長辺まで延びて露出部4aに連続する絶縁性基板2の領域2bとを除いて、第1内部電極3,4の表面、第1内部電極3,4から露出する抵抗体5の表面、第1内部電極3,4および抵抗体5から露出する絶縁性基板2の表面のそれぞれにエポキシ樹脂等のペースト状絶縁材料をスクリーン印刷して加熱硬化させたものである。
【0026】
一対の第2内部電極7,8は、第1内部電極3,4の露出部3a,4aを含んで保護層6を覆うように薄膜形成されたCu等の電極材料からなり、これら第2内部電極7,8は、絶縁性基板2の領域2a,2b、第1内部電極3,4の露出部3a,4a、保護層6の表面全体にCu等を蒸着またはスパッタした後に、これをフォトリソ/エッチングしてパターニングされたものである。
【0027】
一対の外部電極9,10は、第2内部電極7,8を覆うように形成されたNiやCu等の電極材料からなり、これら外部電極9,10は、第2内部電極7,8の表面全体にNiメッキやCuメッキ等を施して形成されたものである。
【0028】
第2内部電極7,8が第1内部電極3,4の露出部3a,4aを含んで保護層6を覆うように薄膜形成されることにより、絶縁性基板2の領域2aおよび第1内部電極3の露出部3aに対応する位置に凹部11が形成され、絶縁性基板2の領域2bおよび第1内部電極4の露出部4aに対応する位置に凹部12が形成される。これら凹部11,12は、平面視した形状が長方形状であって、絶縁性基板2の上辺から下辺まで絶縁性基板2の短辺に平行に延びるように絶縁性基板2の長手方向両端よりも内側に形成されている。
【0029】
次に、上述のごとく構成されたチップ抵抗器1の製造方法について、図3を用いて説明する。なお、図3(b1),(b2),(b3),(b4),(b5),(b6)は、それぞれ図3(a1),(a2),(a3),(a4),(a5),(a6)のA−A線に沿う断面図である。
【0030】
まず、図3(a1),(b1)に示すように、絶縁性基板2が多数個取りされる大判基板2Aを準備する。この大判基板2Aには予め分割溝(図示省略)が格子状に設けられており、この分割溝によって区切られたマス目の1つ1つが1個分のチップ形成領域となる。なお、図3では1個分のチップ形成領域が代表的に示されているが、実際は多数個分のチップ形成領域に相当する後述の大判基板2Aに対して以下に説明する各工程が一括して行われる。
【0031】
次に、図示を省略するが、絶縁性基板2が多数個取りされる大判基板2Aの上面全体に、Ni−Cr系等をスパッタ等して抵抗膜を薄膜形成した後に、この抵抗膜の上面全体にCu等をスパッタ等して電極膜を薄膜形成する。
【0032】
次に、図3(a2),(b2)に示すように、抵抗膜の上面全体に薄膜形成された電極膜をフォトリソ/エッチングして、抵抗膜の両端部上に一対の第1内部電極3,4をそれぞれ形成した後に、第1内部電極3,4から露出する抵抗膜の中央部をフォトリソ/エッチングして、ミアンダ形状の抵抗体5を形成する。
【0033】
なお、図示は省略するが、抵抗膜と電極膜の形成順序を逆にすることも可能であり、絶縁性基板の長手方向両端部に一対の第1内部電極を薄膜形成した後に、この一対の第1内部電極に接続するように抵抗体を薄膜形成する製造方法であっても良い。
【0034】
次に、図3(a3),(b3)に示すように、第1内部電極3,4と抵抗体5とを覆うようにエポキシ樹脂等の絶縁材料をスクリーン印刷や感光性樹脂を用いてフォトリソ形成することにより、絶縁性基板2の領域2a,2bと第1内部電極3,4の露出部3a,4aとを除いて、絶縁性基板2、第1内部電極3,4および抵抗体5の各表面に絶縁材料がそれぞれ形成されることで、厚膜からなる保護層6が得られる。この保護層形成工程により、絶縁性基板2の長手方向両端から内側に離反した位置に第1内部電極3,4の露出する露出部3a,4aが形成される。
【0035】
次に、図3(a4),(b4),(a5),(b5)に示すように、絶縁性基板2の領域2a,2b、第1内部電極3,4の露出部3a,4aおよび保護層6を覆うようにCu等をスパッタして電極膜を薄膜形成した後に、これをフォトリソ/エッチングして一対の第2内部電極7,8を形成する。この第2内部電極形成工程により、薄膜の第2内部電極7,8が薄膜の第1内部電極3,4の露出部3a,4aを含んで厚膜の保護層6を覆うため、第1内部電極3の露出部3aと対応する位置に凹部11が形成され、第1内部電極4の露出部4aと対応する位置に凹部12が形成される。
【0036】
次に、第2内部電極形成工程の後に大判基板2Aを分割溝に沿ってダイシングを行い(図示省略)、図3(a6),(b6)に示すように、第2内部電極7,8をNiメッキやCuメッキ等で覆うことにより一対の外部電極9,10を形成する。これにより、図1,2に示すチップ抵抗器1が完成する。
【0037】
図4は上記のごとく構成されたチップ抵抗器1を内層した部品内臓型回路基板の断面図であり、図1に対応する部分には同一の符号を付してある。
【0038】
図4に示すように、チップ抵抗器1は積層回路基板等のベース基板の樹脂層20の内部に埋め込まれており、この樹脂層20の上面に配線パターン(図示省略)が設けられている。樹脂層20には2つの穴21,22が形成されており、図示左側の穴21は、第2内部電極7を覆う外部電極9の上面に達し、図示右側の穴22は第2内部電極8を覆う外部電極10の上面に達している。
【0039】
これら穴21,22は樹脂層20の表面にレーザを照射することによって形成され、その内部にCu等の導電材料をメッキ処理してビア(図示省略)を形成することにより、樹脂層20の上面側の配線パターンとチップ抵抗器1の外部電極9,10とを穴21,22内のビアを介して接続させることが可能となる。
【0040】
以上のように、第1実施形態例の基板内層用チップ抵抗器1では、一対の第1内部電極3,4、抵抗体5および第2内部電極7,8が薄膜形成され、抵抗体5を覆う保護層6が厚膜形成されているため、抵抗値精度が高く、温度変化による抵抗値の変動の少ないチップ抵抗器を製造することができる。また、チップ抵抗器1では、一対の第2内部電極7,8の対向間隔は一対の第1内部電極3,4の対向間隔よりも狭く形成され、第2内部電極7,8が第1内部電極3,4の露出部3a,4aを含めて保護層6を覆うように形成されているため、第2内部電極7,8を覆う外部電極9,10の表面領域を広くすることができる。
【0041】
そして、第1実施形態例では、保護層6によって覆われていない第1内部電極3,4の露出部3a,4aが絶縁性基板2の長手方向両端から内側に離反した位置に形成されているため、第2内部電極7,8が第1内部電極3,4の露出部3a,4aを含めて保護層6を覆うように薄膜形成されると、第1内部電極の露出部3a,4aと対応する位置に凹部11,12が形成される。このとき、第2内部電極7,8を覆う外部電極9,10の表面は凹部11,12を除いて殆ど同じ高さとなるため、少なくとも凹部11,12を除く外部電極9,10の表面をビアとの接続可能な領域として利用することができる。このように、第1実施形態例の基板内層用チップ抵抗器1では、高精度なチップ抵抗器を得るために第1,第2内部電極と抵抗体とを薄膜形成したとしても、ビアと接続可能な外部電極の領域を広く確保することができる。
【0042】
また、第1実施形態例に係る基板内層用チップ抵抗器1の製造方法によると、保護層形成工程は、第1内部電極3,4における絶縁性基板2の長手方向両端から内側に離反した位置にある露出部3a,4aを除いて薄膜の抵抗体5と第1内部電極3,4とを厚膜の保護層6で覆うように形成する工程であるため、第1内部電極3,4には保護層6によって覆われていない露出部3a,4aが形成される。そして、この露出部3a,4aと保護層6とが第2内部電極7,8で覆われる第2内部電極形成工程によって、第1内部電極の露出部3a,4aと対応する位置に凹部11,12が形成される。そうすると、外部電極9,10の表面の高さは凹部11,12を除いて殆ど同じ高さになるため、少なくとも凹部11,12を除いた外部電極9,10の表面をビアと接続可能な領域として利用することが可能になる。このように、第1実施形態例の基板内層用チップ抵抗器1の製造方法では、高精度なチップ抵抗器を得るために第1,第2内部電極と抵抗体とを薄膜形成したとしても、ビアと接続可能な外部電極の領域を広く確保することができる。
【0043】
特に、第1実施形態例では、穴21,22が凹部11,12をそれぞれ跨いで形成可能なように、凹部11,12の幅11a,12aは穴21,22の内径21a,22aよりも狭くなるように形成されている。このため、チップ抵抗器1をベース基板の内層に埋め込んで、チップ抵抗器1の凹部11,12の直上付近にある樹脂層20にレーザを照射して穴21,22を形成したとしても、穴21,22が凹部11,12をそれぞれ跨いで形成されることになるため、外部電極とビアとの接続を確実に行うことができる。したがって、ビア用の穴を形成可能な領域(外部電極とビアとの接続可能な領域)は図4に示す広い領域E、すなわち、凹部11,12を含めた外部電極9,10の表面全体となる。このように、第1実施形態例の部品内蔵型回路基板では、高精度なチップ抵抗器を得るために第1,第2内部電極と抵抗体とを薄膜形成したとしても、凹部を含めた外部電極の表面全体をビアとの接続可能な領域とすることができるため、ビア用の穴あけ加工を容易に行うことができる。
【0044】
なお、第1実施形態例では、第1内部電極3,4の露出部3a,4aに対応する位置に形成された凹部11,12は、絶縁性基板2の短辺に略平行に沿って絶縁性基板2の両長辺まで延びるように形成されているが(図1参照)、この構成に限られなくとも良い。以下に、本発明の第2、第3実施形態例について図5、6を参照しながら説明する。
【0045】
図5に示すように、第2実施形態例に係るチップ抵抗器31の凹部は、第1実施形態例の凹部と比較すると、絶縁性基板2の上辺または下辺の一方に向かって延びるように形成されている点で異なる。すなわち、第2実施形態例の凹部32,34は絶縁性基板2の上辺に向かって当該上辺まで延びるように形成され、凹部33,35は絶縁性基板2の下辺に向かって当該下辺まで延びるように形成されている。
【0046】
また、図6に示すように、第3実施形態例に係るチップ抵抗器41の凹部は、第1実施形態例の凹部と比較すると、絶縁性基板2の両長辺の手前まで延びるように形成されている点で異なる。なお、第3実施形態例では、凹部42,43が第1内部電極3,4の露出部に対応する位置にのみ形成される構成になっているが、これに限られず、凹部42,43が第1内部電極3,4の露出部および絶縁性基板2の領域に対応する位置まで形成される構成であっても良い。
【0047】
このように、第2,第3実施形態例のように凹部を形成した場合であっても、第1実施形態例の奏する効果、すなわち、電極や抵抗体を薄膜形成しても外部電極とビアとの接続が容易なチップ抵抗器を提供すること、このようなチップ抵抗器の製造方法を提供すること、および、ビア用の穴あけ加工が容易な部品内蔵型回路基板を提供することができる。
【0048】
なお、図示は省略するが、第1〜第3実施形態例の凹部は平面視長方形状に形成されているが、この構成に限られず、平面視円状や楕円状に形成されている構成であっても良い。
【符号の説明】
【0049】
1,31,41 基板内層用チップ抵抗器
2 絶縁性基板
2A 大判基板
3,4 第1内部電極
5 抵抗体
6 保護層
7,8 第2内部電極
9,10 外部電極
11,12,32〜35,42,43 凹部
20 樹脂層
21,22 穴
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8