特許第6706947号(P6706947)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6706947
(24)【登録日】2020年5月21日
(45)【発行日】2020年6月10日
(54)【発明の名称】車両用内装材
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/215 20110101AFI20200601BHJP
   B68G 7/10 20060101ALI20200601BHJP
【FI】
   B60R21/215
   B68G7/10
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-65559(P2016-65559)
(22)【出願日】2016年3月29日
(65)【公開番号】特開2017-177926(P2017-177926A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2018年11月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000229955
【氏名又は名称】日本プラスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 襄
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】漆畑 明人
(72)【発明者】
【氏名】浅野 巌
(72)【発明者】
【氏名】水戸部 貴志
(72)【発明者】
【氏名】大賀 真宏
【審査官】 飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】 実開平04−024333(JP,U)
【文献】 特開2000−153745(JP,A)
【文献】 実開昭63−140300(JP,U)
【文献】 特開2000−142293(JP,A)
【文献】 特開2014−043221(JP,A)
【文献】 米国特許第06079733(US,A)
【文献】 特開2013−065196(JP,A)
【文献】 特開2016−034058(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/215
B68G 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、この基材を覆う表皮体とを具備した車両用内装材であって、
前記基材は、
第1の仮想線に沿って形成された第1の辺縁部と、
前記第1の仮想線に対して交差する方向に沿う第2の仮想線に沿って形成された第2の辺縁部と、
これら第1の辺縁部と第2の辺縁部との間に構成される角部とを備え、
前記表皮体は、
前記基材の表面を覆う表皮体本体と、
この表皮体本体から延出され前記基材の裏面側に折り返された状態で固定された端末部とを備え、
前記端末部は、
前記第1の辺縁部を覆って前記基材の裏面側に前記第1の辺縁部から折り返された状態で固定された第1の辺縁部用端末部と、
前記第2の辺縁部を覆って前記基材の裏面側に前記第2の辺縁部から折り返され前記第1の辺縁部用端末部に重ねられた状態で固定された第2の辺縁部用端末部と、
これら第1の辺縁部用端末部と第2の辺縁部用端末部との間にて前記角部に対応する位置に形成された切欠部とを有し、
前記切欠部は、
前記第1の辺縁部用端末部の端部に位置する第1の端縁部と、
前記第2の辺縁部用端末部の端部に位置する第2の端縁部と、
これら第1の端縁部と第2の端縁部との間に構成された切欠角部とを備え、
前記第1の端縁部は、前記切欠角部に対して反対側に向かって前記第2の仮想線から離間される方向へと前記第1の辺縁部用端末部の内方に傾斜し、
前記第2の端縁部は、前記切欠角部に向かって前記第1の仮想線から離間される方向へと前記第2の辺縁部用端末部の外方に傾斜している
ことを特徴とする車両用内装材。
【請求項2】
第2の端縁部は、切欠角部に向かって第1の仮想線から離間される方向へと基材の厚みに対応する距離ずれるように第2の辺縁部用端末部の外方に傾斜している
ことを特徴とする請求項1記載の車両用内装材。
【請求項3】
基材は、第1の辺縁部が上部に位置し、第2の辺縁部が側部に位置するように配置される
ことを特徴とする請求項1または2記載の車両用内装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材と、この基材を覆う表皮体とを備えた車両用内装材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば自動車のインストルメントパネル部やステアリングホイールなどの被設置部に配置されるエアバッグ装置のカバー体などの車両用内装材として、合成樹脂製などの基材の表面を皮革などの表皮体によって覆うことで、美観の向上を図る構成が知られている。この構成では、基材よりも一回り大きく裁断した表皮体を用い、この表皮体の端末部を基材の裏面側へと折り返して固定することで、基材を表皮体で覆っている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−43221号公報 (第5−8頁、図1−5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の構成では、基材の角部の位置において表皮体に処理を施しておらず、単に表皮体の端末部を基材の裏面側に折り返して重ね合わせて固定するようにしている。この場合、表皮体の端末部のうち、特に基材の角部の先端の箇所で表皮体に裏面側で皺が生じ易く、また、角部の形状が出にくいため、基材の裏面側での寸法管理や見栄えの向上などが求められる。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、基材の裏面側での寸法を精度よく管理できるとともに、見栄えを向上できる車両用内装材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の車両用内装材は、基材と、この基材を覆う表皮体とを具備した車両用内装材であって、前記基材は、第1の仮想線に沿って形成された第1の辺縁部と、前記第1の仮想線に対して交差する方向に沿う第2の仮想線に沿って形成された第2の辺縁部と、これら第1の辺縁部と第2の辺縁部との間に構成される角部とを備え、前記表皮体は、前記基材の表面を覆う表皮体本体と、この表皮体本体から延出され前記基材の裏面側に折り返された状態で固定された端末部とを備え、前記端末部は、前記第1の辺縁部を覆って前記基材の裏面側に前記第1の辺縁部から折り返された状態で固定された第1の辺縁部用端末部と、前記第2の辺縁部を覆って前記基材の裏面側に前記第2の辺縁部から折り返され前記第1の辺縁部用端末部に重ねられた状態で固定された第2の辺縁部用端末部と、これら第1の辺縁部用端末部と第2の辺縁部用端末部との間にて前記角部に対応する位置に形成された切欠部とを有し、前記切欠部は、前記第1の辺縁部用端末部の端部に位置する第1の端縁部と、前記第2の辺縁部用端末部の端部に位置する第2の端縁部と、これら第1の端縁部と第2の端縁部との間に構成された切欠角部とを備え、前記第1の端縁部は、前記切欠角部に対して反対側に向かって前記第2の仮想線から離間される方向へと前記第1の辺縁部用端末部の内方に傾斜し、前記第2の端縁部は、前記切欠角部に向かって前記第1の仮想線から離間される方向へと前記第2の辺縁部用端末部の外方に傾斜しているものである。
【0007】
請求項2記載の車両用内装材は、請求項1記載の車両用内装材において、第2の端縁部は、切欠角部に向かって第1の仮想線から離間される方向へと基材の厚みに対応する距離ずれるように第2の辺縁部用端末部の外方に傾斜しているものである。
【0008】
請求項3記載の車両用内装材は、請求項1または2記載の車両用内装材において、基材は、第1の辺縁部が上部に位置し、第2の辺縁部が側部に位置するように配置されるものである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の車両用内装材によれば、基材の裏面側にて第1の辺縁部用端末部と第2の辺縁部用端末部とを、互いに皺などを生じさることなく重ねて固定でき、基材の裏面側に突出する寸法を容易に管理できるとともに、基材の裏面側に第1の辺縁部用端末部を第1の辺縁部から折り返した状態で、切欠部の第1の端縁部の位置で第2の辺縁部から第1の辺縁部用端末部がはみ出さず、第2の辺縁部用端末部を、基材の第2の辺縁部に精度よく沿わせて裏面側に第2の辺縁部から折り返して第1の辺縁部用端末部に重ねることができ、基材の角部の位置で表皮体が膨らみにくく、表皮体によって基材の角部を鋭利かつ確実に覆うことができ、見栄えが向上する。
【0010】
請求項2記載の車両用内装材によれば、請求項1記載の車両用内装材の効果に加えて、第2の端縁部が切欠角部に向かって第1の仮想線から離間される方向に基材の厚みに対応する距離ずれるように第2の辺縁部用端末部の外方に傾斜しているので、第1の辺縁部用端末部を第1の辺縁部を覆って基材の裏面側に折り返した状態で、第2の端縁部の近傍の第2の辺縁部用端末部が基材の厚みに対応して第1の辺縁部の延長上の位置に沿って立ち上がるので、第2の辺縁部用端末部を第1の辺縁部用端末部に重ねるように基材の裏面側に折り返して固定することで、基材の角部を、表皮体の余剰部分を生じさせることなく表皮体で確実に鋭利に覆うことができる。
【0011】
請求項3記載の車両用内装材によれば、請求項1または2記載の車両用内装材の効果に加えて、基材は、第1の辺縁部が上部に位置し、第2の辺縁部が側部に位置するように配置されるため、第1の辺縁部用端末部を基材の裏面側に折り返して固定した後、それに重ねて第2の辺縁部用端末部を基材の裏面側に折り返して固定することで、側方からの見栄えが向上する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施の形態の車両用内装材の一部を拡大して示す平面図である。
図2】同上車両用内装材の基材に表皮体を取り付ける工程を(a)ないし(c)の順に示す斜視図である。
図3図2(c)のI−I断面図である。
図4】同上車両用内装材の斜視図である。
図5】同上車両用内装材を備えたハンドルを示す斜視図である。
図6】(a)は比較例としての従来例の車両用内装材の一部を拡大して示す平面図、(b)は(a)の基材に表皮体を取り付けた状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施の形態の構成を図1ないし図5を参照して説明する。
【0014】
図5において、10は車両である自動車のハンドルとしてのステアリングホイールで、このステアリングホイール10は、ステアリングホイール本体11と、このステアリングホイール本体11の乗員側に装着されるエアバッグ装置12とを備えている。なお、ステアリングホイール10は、通常傾斜した状態で車両に備えられるステアリングシャフトに装着されるものであるが、以下、車両の直進状態を基準とし、ステアリングシャフト側を背面側、乗員側を正面側とし、フロントガラスに向かう方向(矢印A方向)を上側として説明する。
【0015】
そして、ステアリングホイール本体11は、円環状をなす把持部であるグリップ部であるリム部14と、このリム部14の内側に位置するボス部15と、これらリム部14とボス部15とを連結する複数の、本実施の形態では3本のスポーク部16とから構成されている。そして、本実施の形態では、スポーク部16は、直進状態で、ボス部15の上部両側と下部とに配置されている。
【0016】
また、図示しないが、ボス部15の背面部には、ステアリングシャフトに嵌着される略円筒状のボスが設けられているとともに、このボスに芯体を構成するボスプレートがマグネシウム合金などをダイカストで鋳ぐるむなどして一体的に固着されている。そして、このボスプレートから、スポーク部16の芯金が一体に延設され、あるいは溶接などして固着されている。さらに、このスポーク部16の芯金に、リム部14の芯金が溶接などして固着されている。また、これらリム部14の芯金の外周部と、スポーク部16の芯金のリム部14側の部分の外周部とには、被覆部が形成され、さらに、この被覆部の外周の全部あるいは一部が、天然あるいは人工の皮革などの表皮により覆われている。
【0017】
一方、エアバッグ装置12は、エアバッグモジュールとも呼ばれ、ステアリングホイール本体11のボス部15の正面側を覆うように配置されるもので、金属板などからなる被取付部材としてのベースプレート、袋状のエアバッグ、ガスを噴射するインフレータなどを備えるとともに、車両用内装材としてのカバー体20(図4)を備えている。そして、ベースプレートは、ホーンプレートあるいはブラケット部などを介してステアリングホイール本体11に取り付けられ、このベースプレートに、エアバッグ、インフレータ、及びカバー体20が取り付けられ、小さく折り畳まれたエアバッグがカバー体20により覆われている。すなわち、このカバー体20は、本実施の形態において、折り畳まれたエアバッグを覆う、エアバッグ装置のカバー体である。
【0018】
そして、このカバー体20は、ケース体、パッド、あるいはモジュールカバーなどとも呼ばれ、図4に示すように、例えばTPOなどの合成樹脂により一体に形成された基材としてのカバー本体21と、このカバー本体21を一体に覆う表皮体22とを備えている。
【0019】
カバー本体21は、ボス部15(図5)及びスポーク部16(図5)の一部を覆う対向部としての表板部25と、この表板部25の背面(裏面)から正面視略角筒状などの筒状に突設された周壁である周板部26とを備えている。そして、図4に示すカバー体20の表板部25と周板部26とに囲まれた部分が、折り畳んだエアバッグを収納するエアバッグ収納部となり、このエアバッグ収納部の正面側に臨む部分に装飾部材としてのエンブレム27が備えられている。このエンブレム27は、必須の構成ではない。また、表板部25には、エアバッグ収納部に、エアバッグの膨張展開圧力によってカバー本体21を破断させるためのテアラインが形成されていてもよい。このテアラインは、カバー体20が折り畳まれたエアバッグを覆うものでない場合には不要である。
【0020】
表板部25は、意匠上種々の構成を採り得るものであるが、本実施の形態では、表板部25は、ほぼボス部15(図5)の形状に沿って、正面視で周板部26よりも若干大きく形成され乗員に対向する乗員対向部である正面板部31と、この正面板部31の上端部に連続しこの正面板部31の上端部から背面側(反乗員側)に向かって延びる延出部としての延出板部32とを一体に備えている。そして、この表板部25には、単数、または複数の角部33が設定されている。
【0021】
延出板部32は、ステアリングホイール10(図5)の乗員側の上部(12時方向)を構成するものである。この延出板部32の前端部の裏面側は、ステアリングホイール本体11(図5)を覆う相手部材(他の内装材)である図示しないボディカバーに対向する箇所となっている。
【0022】
角部33は、例えば延出板部32の前端部の左右両側などに設定されている。すなわち、この角部33は、カバー体20と相手部材との合わせ部(対向箇所)に位置している。そして、この角部33は、図1に示すように、カバー本体21に形成された第1の辺縁部35と第2の辺縁部36との間に構成されている。すなわち、この角部33は、第1の辺縁部35と第2の辺縁部36との交差(連続)位置となっている。なお、この角部33としては、鋭利に尖った形状でもよいし、例えば円弧状などに面取りがされていてもよい。
【0023】
第1の辺縁部35は、カバー本体21の上部(12時方向)の最前部を構成する部分であり、例えば左右方向すなわち車幅方向に沿う略直線状の第1の仮想線L1に沿って形成されている。
【0024】
第2の辺縁部36は、カバー本体21の側部を構成する部分であり、第1の仮想線L1に対して交差、例えば略直交する方向、例えば前後方向に沿う略直線状の第2の仮想線L2に沿って形成されている。第2の辺縁部36は、本実施の形態では、例えば左右一対設けられている。
【0025】
なお、第1及び第2の仮想線L1,L2は、それぞれ直線である必要はなく、湾曲した曲線などでもよい。
【0026】
一方、表皮体22は、表板部25の表面側を覆って外観や触感を向上するもので、天然皮革、人工皮革、あるいは軟質の樹脂などによりシート状に形成されている。この表皮体22は、カバー本体21よりも一回り大きく形成されている。すなわち、この表皮体22は、表板部25を覆う主体部(一般部)である表皮体本体41と、この表皮体本体41から外方に延出される端末部42とを一体に備えている。そして、この表皮体22は、端末部42がカバー本体21(表板部25)の裏面側へと折り返された状態で固定されることで、表皮体22の破断面が乗員から見えないように、表板部25を包んで覆っている。なお、この表皮体22(表皮体本体41)のカバー本体21に対向する裏面(背面側)には、テアラインと重なる位置に弱部を設けてもよい。
【0027】
表皮体本体41は、図4に示すように、表板部25の正面板部31(図4)及び延出板部32の表面をそれぞれ覆うように形成されている。この表皮体本体41は、表板部25に対して全面的、あるいは部分的に貼り付けられていてもよいし、例えばエンブレム27により表板部25に一体的に固定されてもよい。
【0028】
図1に示す端末部42は、本実施の形態では表皮体本体41の全体から外方へと延出している。この端末部42には、カバー本体21の第1の辺縁部35を覆う第1の辺縁部用端末部45と、第2の辺縁部36を覆う第2の辺縁部用端末部46とが設定されているとともに、カバー本体21のその他の辺縁部を覆う図示しない他の辺縁部用端末部が設定されている。さらに、この端末部42には、第1の辺縁部用端末部45と、第2の辺縁部用端末部46との間に、カバー本体21の角部33に対応する切欠部48が形成されている。
【0029】
第1の辺縁部用端末部45は、車幅方向である左右方向に延びる、すなわち第1の仮想線L1に沿って延びる短冊状に形成されている。この第1の辺縁部用端末部45は、表皮体22が裁断された状態で、少なくとも第1の辺縁部35におけるカバー本体21の厚みよりも大きい突出量でカバー本体21の外方に延出するように設定されている。そして、この第1の辺縁部用端末部45は、第1の辺縁部35を覆ってカバー本体21の裏面側に折り返された状態で、接着剤などを介してカバー本体21に固定されている。
【0030】
第2の辺縁部用端末部46は、前後方向に延びる、すなわち第2の仮想線L2に沿って延びる短冊状に形成されている。この第2の辺縁部用端末部46は、表皮体22が裁断された状態で、少なくとも第2の辺縁部36におけるカバー本体21の厚みよりも大きい突出量でカバー本体21の外方に延出するように設定されている。そして、この第2の辺縁部用端末部46は、第2の辺縁部36を覆ってカバー本体21の裏面側に折り返された状態で、第1の辺縁部用端末部45に重ねられ、接着剤などを介してカバー本体21及び第1の辺縁部用端末部45に固定されている。なお、第2の辺縁部用端末部46は、本実施の形態では、例えば左右一対設けられている。
【0031】
他の辺縁部用端末部は、第1の辺縁部用端末部45、あるいは第2の辺縁部用端末部46と一体的に設けられていてもよいし、離間されて設けられていてもよい。
【0032】
切欠部48は、第1の辺縁部用端末部45の端部である両側部と、第2の辺縁部用端末部46の端部である前端部との間に四角形状に形成されている。すなわち、この切欠部48は、第1の辺縁部用端末部45の両側部に位置する第1の端縁部51と、第2の辺縁部用端末部46の前端部に位置する第2の端縁部52と、これら第1の端縁部51と第2の端縁部52との間に構成された切欠角部53とを備えている。
【0033】
第1の端縁部51は、前後方向に沿って直線状に延びており、第2の仮想線L2に対して傾斜状に形成されている。具体的に、この第1の端縁部51は、切欠角部53に対して反対側である前側に向かって第2の仮想線L2から表皮体22の左右方向(両側方向)の中心側すなわち内方へと離間される方向に傾斜している。すなわち、この第1の端縁部51は、一端側である切欠角部53の位置で第2の仮想線L2上、すなわち第2の辺縁部36の延長上に位置し、他端側ではこの第2の仮想線L2(第2の辺縁部36)から離間されている。言い換えると、この第1の端縁部51は、切欠角部53に対して反対側に向かって第2の仮想線L2(第2の辺縁部36)に対して内方に傾斜している。したがって、第1の辺縁部用端末部45は、表皮体本体41側である基端側から先端側に向かって徐々に幅狭となる台形状に形成されている。
【0034】
第2の端縁部52は、左右方向に沿って直線状に延びており、第1の仮想線L1に対して傾斜状に形成されている。具体的に、この第2の端縁部52は、切欠角部53に向かって第1の仮想線L1から前側、すなわち表皮体22の前後方向の中心側に対して反対側すなわち外方へと離間される方向に傾斜している。すなわち、この第2の端縁部52は、一端側である切欠角部53の位置で第1の仮想線L1よりも前方に所定距離D離れて位置し、他端側では、第1の仮想線L1上、すなわち第1の辺縁部35の延長上に位置している。言い換えると、この第2の端縁部52は、切欠角部53に向かって第1の仮想線L1(第1の辺縁部35)に対して外方に傾斜している。このため、第1の端縁部51と第2の端縁部52とは、互いに鈍角をなすように交差する方向に沿っている。したがって、第2の辺縁部用端末部46は、表皮体本体41側である基端側から先端側に向かって徐々に幅狭となる台形状に形成されている。
【0035】
この結果、切欠角部53は、第2の仮想線L2上に位置し、かつ、第1及び第2の仮想線L1,L2の仮想的な交点Oから前側に所定距離Dずれた(オフセットした)位置に配置されている。この所定距離Dは、少なくとも第1の辺縁部35の位置でのカバー本体20の厚みに対応する距離である。
【0036】
そして、カバー体20の製造の際には、図1に示す表板部25及び周板部26(図4)を備えるカバー本体21を予め合成樹脂により射出成形する。
【0037】
次いで、別途裁断した表皮体22をカバー本体21に対して貼り付ける。このとき、表皮体22の表皮体本体41とカバー本体21の表板部25とを位置合わせし、カバー本体21の表板部25から外方に突出した表皮体22の端末部42をカバー本体21の表板部25の裏面へと折り返して固定する。具体的に、図2(a)に示すように、端末部42は、まず、第1の辺縁部35に対応する第1の辺縁部用端末部45を、図2(b)に示すように第1の辺縁部35から折り返して表板部25の裏面に重ね、図示しない接着剤などで固定する。このとき、第1の端縁部51が第1の仮想線L1に対して内方に傾斜していることで、第1の辺縁部用端末部45が第1の端縁部51の位置で第2の辺縁部36から外方にはみ出すことなく表板部25の裏面に重ねられるとともに、切欠角部53が第1の仮想線L1に対して、カバー本体21の表板部25の第1の辺縁部35の位置での厚みに対応する所定距離Dずれていることで、表板部25の角部33の位置に対して、表皮体22の端末部42の第2の辺縁部用端末部46の第2の端縁部52の位置が第1の辺縁部35の端面の延長上の位置に沿って三角形状に立ち上がった状態となる。そして、図2(c)に示すように、第2の辺縁部36に対応する第2の辺縁部用端末部46を、第2の辺縁部36から折り返して表板部25の裏面及び第1の辺縁部用端末部45に重ね、図示しない接着剤などで固定する。この結果、カバー本体21の表板部25の角部33の裏面の位置で、第1の辺縁部用端末部45と第2の辺縁部用端末部46とが重なり、安定した厚みを形成する(図3)。
【0038】
そして、一及び他の表皮体51,52により表板部25を覆ったカバー体20に対して、別途成形したエンブレム27を取り付ける。
【0039】
このカバー体20を備えたエアバッグ装置12をステアリングホイール10に備えた自動車が衝突などすると、制御装置がインフレータを作動させ、エアバッグにガスを供給する。すると、エアバッグが急速に膨張展開し、テアライン及び弱部に沿ってカバー体20の表板部25が表皮体22と一体的に破断し、扉部を形成する。そして、この扉部が回動してエアバッグを膨出させる開口である突出口を形成し、この突出口からエアバッグが乗員の前方に展開し、乗員を保護する。
【0040】
上述したように、上記の一実施の形態では、カバー本体21の表面を覆う表皮体本体41から延出された端末部42に設定した第1及び第2の辺縁部用端末部45,46を、第1の辺縁部用端末部45を第1の辺縁部35を覆ってカバー本体21の裏面側に折り返して固定し、第2の辺縁部用端末部46を第2の辺縁部36を覆ってカバー本体21の裏面側に折り返して第1の辺部用端末部45に重ねて固定するとともに、これら第1の辺縁部用端末部45と第2の辺縁部用端末部46との間にてカバー本体21の角部33に対応する位置に切欠部48を形成する。そのため、カバー本体21の裏面側にて第1の辺縁部用端末部45と第2の辺縁部用端末部46とを、互いに皺などを生じさることなく重ねて固定でき、カバー本体21の裏面側に突出する寸法を容易に管理できる。また、切欠部48の第1の辺縁部用端末部45の端部に位置する第1の端縁部51を切欠角部53に対して反対側に向かって第2の仮想線L2から離間される方向へと第1の辺縁部用端末部45の内方に傾斜させることで、カバー本体21の裏面側に第1の辺縁部用端末部45を折り返した状態で、切欠部48の第1の端縁部51の位置で第2の辺縁部36から第1の辺縁部用端末部45がはみ出さず、第2の辺縁部用端末部46を、カバー本体21の第2の辺縁部36に精度よく沿わせて裏面側に折り返して第1の辺縁部用端末部45に重ねることができる。さらに、切欠部48の第2の辺縁部用端末部46の端部に位置する第2の端縁部52を切欠角部53に向かって第1の仮想線L1から離間される方向へと第2の辺縁部用端末部46の外方に傾斜させることで、カバー本体21の角部33の位置で表皮体22が膨らみにくく、表皮体22によってカバー本体21の角部33を鋭利かつ確実に覆うことができ、見栄えが向上する。
【0041】
すなわち、例えば図6(a)に示す比較例としての従来例のように、表皮体22の端末部42のうち、カバー本体21の角部33を構成する一の辺縁部35側の部分42aと、カバー本体21の角部33を構成する他の辺縁部36側の部分42bとの互いに対向する端部の位置を、角部33の先端を通る傾斜状の直線に沿って切り落とし、図6(b)に示すようにそれぞれの辺縁部35,36の位置で表皮体22をカバー本体21の裏面側に折り返す場合には、カバー本体21に対する表皮体22のセット位置のずれや、表皮体22の伸びなどにより、各辺縁部35,36に沿って折り返した部分42a,42bの端部同士が重なってカバー本体21に対して裏面側に大きく突出する皺Wが生じたり、表皮体22の形状がカバー本体21の角部33の形状に対して大きく膨らんで鋭利さが出なくなったりするなどの場合が生じる。また、皺Wを生じさせないために一の辺縁部35側の部分42aと他の辺縁部36側の部分42bとをより大きく切り欠くと、角部33を充分に覆うことができなくなるおそれがある。これに対して、本実施の形態では、角部33を確実に覆いつつ、カバー本体21の裏面側の突出寸法が第1の辺縁部用端末部45と第2の辺縁部用端末部46との重なり厚さに略一定に制限でき、このような不具合が生じにくい。
【0042】
このため、カバー体20と、このカバー体20の表板部25の裏面側に合わせられる相手部材との建て付けの管理が厳しい場合であっても、カバー体20と相手部材との隙間を精度よく管理でき、容易に確保できる。
【0043】
さらに、第2の端縁部52が、切欠角部53に向かって第1の仮想線L1から離間される方向にカバー本体21の厚みに対応する所定距離Dずれるように第2の辺縁部用端末部46の外方に傾斜しているので、第1の辺縁部用端末部45を第1の辺縁部35を覆ってカバー本体21の裏面側に折り返した状態で、第2の端縁部52の近傍の第2の辺縁部用端末部45がカバー本体21(第1の辺縁部35)の厚みに対応して第1の辺縁部35の端面の延長上の位置に沿って立ち上がるので、第2の辺縁部用端末部46を第1の辺縁部用端末部45に重ねるようにカバー本体21の裏面側に折り返して固定することで、第2の辺縁部36の端面を第2の辺縁部用端末部46によって確実に覆い、カバー本体21の角部33を、表皮体22の余剰部分(皺)を生じさせることなく表皮体22で確実に鋭利に覆うことができる。
【0044】
そして、第1の辺縁部35がカバー本体21の上部に位置し、第2の辺縁部36がカバー本体21の側部に位置しているため、第1の辺縁部用端末部45をカバー本体21の裏面側に折り返して固定した後、それに重ねて第2の辺縁部用端末部46をカバー本体21の裏面側に折り返して固定することで、側方からの見栄えが向上する。特に、ステアリングホイール10に備えられる運転席用のエアバッグ装置12の場合、前方にはインストルメントパネルが位置していることから前方からよりも側方から見られることが多いため、このようなエアバッグ装置12のカバー体20として用いる際に好適である。
【0045】
なお、上記の一実施の形態において、端末部42は、裏面を漉いて、表皮体本体41よりも厚みが薄くなるように形成されていてもよい。この場合には、第1の辺縁部用端末部45と第2の辺縁部用端末部46とが重なっている位置での厚みを抑制でき、相手部材に対する隙間をより確実に管理できる。
【0046】
さらに、ステアリングホイール10に備えられる運転席用のエアバッグ装置12のカバー体20としたが、例えばインストルメントパネルと一体的に設けられる助手席用のエアバッグ装置12のカバー体などとしても用いることができる。
【0047】
そして、エアバッグ装置12のカバー体20としたが、基材を表皮体で覆うその他の任意の車両用内装材として適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、例えば運転席用のエアバッグ装置のカバー体などの車両用内装材として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0049】
20 車両用内装材としてのカバー体
21 基材としてのカバー本体
22 表皮体
33 角部
35 第1の辺縁部
36 第2の辺縁部
41 表皮体本体
42 端末部
45 第1の辺縁部用端末部
46 第2の辺縁部用端末部
48 切欠部
51 第1の端縁部
52 第2の端縁部
53 切欠角部
L1 第1の仮想線
L2 第2の仮想線
図1
図2
図3
図4
図5
図6