(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のエアバッグ装置のカバー体の第1の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0013】
図5において、10は車両である自動車のハンドルとしてのステアリングホイールで、このステアリングホイール10は、ステアリングホイール本体11と、このステアリングホイール本体11の乗員側に装着されるエアバッグ装置12とを備えている。なお、ステアリングホイール10は、通常傾斜した状態で車両に備えられるステアリングシャフトに装着されるものであるが、以下、車両の直進状態を基準とし、ステアリングシャフト側を背面側、乗員側を正面側とし、フロントガラスに向かう方向(矢印A方向)を上側として説明する。
【0014】
そして、ステアリングホイール本体11は、円環状をなす把持部であるグリップ部であるリム部14と、このリム部14の内側に位置するボス部15と、これらリム部14とボス部15とを連結する複数の、本実施の形態では3本のスポーク部16とから構成されている。そして、本実施の形態では、スポーク部16は、直進状態で、ボス部15の上部両側と下部とに配置されている。
【0015】
また、図示しないが、ボス部15の背面部には、ステアリングシャフトに嵌着される略円筒状のボスが設けられているとともに、このボスに芯体を構成するボスプレートがマグネシウム合金などをダイカストで鋳ぐるむなどして一体的に固着されている。そして、このボスプレートから、スポーク部16の芯金が一体に延設され、あるいは溶接などして固着されている。さらに、このスポーク部16の芯金に、リム部14の芯金が溶接などして固着されている。また、これらリム部14の芯金の外周部と、スポーク部16の芯金のリム部14側の部分の外周部とには、被覆部が形成され、さらに、この被覆部の外周の全部あるいは一部が、天然あるいは人工の皮革などの表皮により覆われている。
【0016】
一方、エアバッグ装置12は、エアバッグモジュールとも呼ばれ、ステアリングホイール本体11のボス部15の正面側を覆うように配置されるもので、金属板などからなる被取付部材としてのベースプレート、袋状のエアバッグ18(
図4(b))、ガスを噴射するインフレータなどを備えるとともに、
図1に示すカバー体20を備えている。そして、ベースプレートは、ホーンプレートあるいはブラケット部などを介してステアリングホイール本体11に取り付けられ、このベースプレートに、エアバッグ18(
図4(b))、インフレータ、及びカバー体20が取り付けられ、小さく折り畳まれたエアバッグ18(
図4(b))がカバー体20により覆われている。
【0017】
そして、カバー体20は、ケース体、パッド、あるいはモジュールカバーなどとも呼ばれるもので、例えばTPOなどの合成樹脂により一体に形成されたカバー本体21(
図3(a))と、このカバー本体21を一体に覆う表皮部22(
図3(b))とを備えている。
【0018】
図3(a)に示すカバー本体21は、ボス部15(
図5)及びスポーク部16(
図5)の一部を覆う対向部としての表板部25と、この表板部25の背面(裏面)から正面視略角筒状などの筒状に突設された周壁である周板部26とを備えている。そして、カバー体20(
図1)の表板部25と周板部26とに囲まれた部分が、折り畳んだエアバッグ18(
図4(b))を収納するエアバッグ収納部となり、このエアバッグ収納部の正面側に臨む部分に装飾部材としてのエンブレム27(
図1)が備えられている。このエンブレム27は、必須の構成ではない。また、表板部25には、エアバッグ収納部にテアライン28が形成されている。
【0019】
表板部25は、意匠上種々の構成を採り得るものであるが、本実施の形態では、表板部25は、ほぼボス部15(
図5)の形状に沿って、正面視で周板部26よりも若干大きく形成された対向部本体としての正面板部31と、この正面板部31の上端部に連続しこの正面板部31の上端部から背面側(反乗員側)に向かって延びる延出部としての延出板部32とを一体に備えている。
【0020】
正面板部31は、エアバッグ収納部に対向する領域が、相対的に窪んだ段差部33となっており、この段差部33の周縁部がこの段差部33に対して相対的にエアバッグ18(
図4(b))の突出方向である正面側に突出する突出部34となっている。すなわち、突出部34は、段差部33の周囲を囲む環状(円環状)に形成されている。例えば、
図2(b)に示すように、この突出部34の段差部33に対する突出寸法Lは、1.6mmに設定されている。また、この正面板部31には、エンブレム27(
図1)を取り付けるための穴部35が設けられている。
【0021】
テアライン28は、テア、テア溝、破断予定部、開裂予定溝、扉予定線部あるいは破断部などとも呼び得る薄肉部で、表板部25の正面板部31の背面(裏面)側を溝状に凹設し、表板部25の他の部分より脆弱で、破断可能及び変形容易な弱部として形成されている。そして、表板部25において、このテアライン28により外縁部が区画された部分が例えば複数の、本実施の形態では3つの扉予定部37となっているとともに、このテアライン28の外方、すなわち扉予定部37の周辺が非展開部である外郭部38となっている。また、このテアライン28は、設定したい扉予定部37の形状及び枚数に応じて任意に設定できるが、例えば本実施の形態では、正面板部31の外縁部に沿って両側部に形成された(一方の)縁部テアライン部である両側の側部テアライン部41,41と、エンブレム27の下部に沿って正面板部31の中央部で側部テアライン部41,41間を連結する(一方の)連結テアライン部である横連結テアライン部42と、この横連結テアライン部42の左右方向の略中央部であるエンブレム27の下方の位置から下方へと直線状に延出する(他方の)連結テアライン部である縦連結テアライン部43と、この縦連結テアライン部43の下端部から正面板部31の下縁部に沿って左右方向に延びる(他方の)縁部テアライン部である下部テアライン部44とを備えている。したがって、側部テアライン部41,41及び下部テアライン部44に対して、横連結テアライン部42及び縦連結テアライン部43が表板部25(正面板部31)の中央部側に位置し、収納状態のエアバッグ18(
図4(b))と対向して配置されている。
【0022】
側部テアライン部41は、主テアライン部とも呼び得るもので、表板部25の正面板部31の位置で両側外方に膨出する略円弧状に形成されている。すなわち、この側部テアライン部41は、表板部25(正面板部31)の外縁部である両側縁部に沿って形成されている。なお、側部テアライン部41のいずれかの端部は、例えば開裂の進行を抑制するために折り返すように湾曲されていてもよい。
【0023】
横連結テアライン部42は、扉予定部37を上下に区画する区画テアライン部とも呼び得るもので、側部テアライン部41,41から両側方向の中央部に向かって直線状に延びる直線部42a,42aと、これら直線部42a,42a間を連結しエンブレム27を下方に湾曲して迂回する迂回部42bとを有している。直線部42a,42aは、それぞれ側部テアライン部41,41の上下方向の中央部と連結されており、これら側部テアライン部41,41に対して交差する左右方向に延びている。したがって、テアライン28は、側部テアライン部41,41と横連結テアライン部42との交差部で屈曲(略直交)している。
【0024】
縦連結テアライン部43は、扉予定部37を左右に分割する分割テアライン部とも呼び得るもので、横連結テアライン部42の迂回部42bから下方に向けて直線状に延出している。また、この縦連結テアライン部43は、例えば側部テアライン部41の下端部よりも下方まで延出して表板部25の正面板部31の下端部近傍まで延び、下部テアライン部44と連結されている。したがって、この縦連結テアライン部43は、横連結テアライン部42と下部テアライン部とを連結している。このため、この縦連結テアライン部43は、横連結テアライン部42とともに、側部テアライン部41と下部テアライン部44とを連結している。換言すれば、テアライン28は、縦連結テアライン部43と下部テアライン部44との交差部で屈曲(略直交)している。
【0025】
下部テアライン部44は、扉予定部37の下部を区画するもので、表板部25の正面板部31の位置で下方に膨出する略円弧状に形成されている。すなわち、この下部テアライン部44は、表板部25(正面板部31)の外縁部である下縁部に沿って形成されている。なお、下部テアライン部44の両端部は、例えば開裂の進行を抑制するために折り返すように湾曲されていてもよい。
【0026】
また、各扉予定部37は、通常時に折り畳んで収納されたエアバッグ18(
図4(b))の膨出側を覆い、エアバッグ18(
図4(b))の膨出時にはテアライン28から破断されて表板部25に扉部45(
図4(c))を構成する部分である。各扉予定部37は、エアバッグ18(
図4(b))を所望の展開特性で展開させることができれば任意の形状とすることができるが、本実施の形態では、それぞれテアライン28により区画されて表板部25の上部に1つ、下部の左右両側に1つずつ、それぞれ形成されている。
【0027】
そして、側部テアライン部41,41の上端部間、及び、側部テアライン部41,41の下端部と下部テアライン部44の両端部との間が、それぞれ扉部45(
図4(c))が正面側に展開する際の回動軸となるヒンジ部47,48,49となっている。すなわち、表板部25の外周部のテアライン28が形成されていない部分が、展開した扉部45(
図4(c))を、非展開部である周板部26及び外郭部38に連接するようになっている。
【0028】
図3(b)に示す表皮部22は、表板部25の表面側を覆って外観や触感を向上するもので、複数、本実施の形態では一対の表皮体である一及び他の表皮体51,52により構成されており、これら一及び他の表皮体51,52が重ねられて接合される接合部53が形成され、かつ、いずれかの表皮体51,52、本実施の形態では一の表皮体51の背面側に弱部54が形成されている。
【0029】
一及び他の表皮体51,52は、天然皮革、人工皮革、あるいは軟質の樹脂などによりシート状に形成されている。なお、これら一及び他の表皮体51,52は、同じ材質のものでもよいし、互いに異なる材質のものでもよい。
【0030】
一の表皮体51は、表板部25の主意匠を構成するもので、略円形状に形成されている。すなわち、一の表皮体51は、表板部25において、正面板部31の略中央部に位置する段差部33の表面を面状に覆っている。このため、一の表皮体51は、
図3(a)に示すテアライン28、すなわち側部テアライン部41,41、横連結テアライン部42、縦連結テアライン部43及び下部テアライン部44をそれぞれ覆っている。また、
図3(b)に示すように、一の表皮体51の中央部には、穴部35(
図3(a))と連通しエンブレム27(
図1)が取り付けられる通孔55が開口されている。さらに、
図2(a)及び
図2(b)に示すように、一の表皮体51の外縁部は、他の表皮体52に対して重ねられて接合される一の重ね部56となっている。この一の重ね部56は、段差部33の外縁部に位置し、突出部34の側面に対向して位置している。
【0031】
また、他の表皮体52は、一の表皮体51の周囲を囲むもので、略円環状に形成され、一の表皮体51を露出させる露出開口部57が中央部に開口されている。すなわち、他の表皮体52は、表板部25において、正面板部31の周縁部に位置する突出部34及び延出板部32に亘る部分の表面を覆っている。このため、他の表皮体52は、
図3(a)に示すテアライン28、すなわち側部テアライン部41,41、横連結テアライン部42、及び縦連結テアライン部43の外方に位置している。さらに、
図2(a)及び
図2(b)に示すように、他の表皮体52は、露出開口部57の内縁部が一の表皮体51の一の重ね部56に重ねられて接合される他の重ね部58となっている。他の重ね部58は、他の表皮体52の背面側(裏面側)に折り返されて巻き込まれた巻き込み部であり、突出部34から段差部33側に突出した位置で一の重ね部56の表面に直接重ねられる背面側の巻き込み片部58aと、この巻き込み片部58aの表面側に位置する意匠側片部58bとを備えた二重構造となっている。
【0032】
そして、接合部53は、一の表皮体51の一の重ね部56と他の表皮体52の他の重ね部58とに加えて、一の重ね部56と他の重ね部58の巻き込み片部58aとを一体的に縫製して接合する縫製部である第1の縫製部61と、一の表皮体51の一の重ね部56と他の表皮体52の巻き込み片部58a及び意匠側片部58bとを一体的に縫製して接合する縫製部である第2の縫製部62とを備えている。すなわち、本実施の形態では、接合部53は、一の表皮体51と他の表皮体52とを縫い合わせて接合する縫い部として形成されている。さらに、この接合部53は、一の表皮体51及び他の表皮体52がカバー本体21(表板部25)に対して帯状に貼り付けられて固定されている。したがって、この接合部53は、いわば擬似的な剛体となっている。
【0033】
第1及び第2の縫製部61,62は、それぞれ他の表皮体52の露出開口部57(他の重ね部58)に沿って、すなわち一の表皮体51の一の重ね部56、換言すれば一の表皮体51と他の表皮体52との互いに重ねられる縁部に沿って環状(円環状)に形成されている。そして、これら第1及び第2の縫製部61,62は、
図3(a)に示すテアライン28、すなわち側部テアライン部41,41、横連結テアライン部42、縦連結テアライン部43及び下部テアライン部44の外方を囲んで位置している。
【0034】
第1の縫製部61は、仮縫い部とも呼び得るもので、巻き込み片部58aの先端側(自由端側)、すなわち意匠側片部58bと連続する側と反対側の位置、換言すれば第2の縫製部62に対して露出開口部57と反対側(外方)に離間された位置に設けられている。この第1の縫製部61は、一及び他の表皮体51,52(一の重ね部56及び巻き込み片部58a)を厚み方向に貫通する複数の孔部61aと、1つおきに隣接する孔部61a,61a間に連続して通された縫い糸61bとにより構成されている。
【0035】
孔部61aは、一の表皮体51の外縁部(一の重ね部56)、すなわち露出開口部57の周方向に互いに略等間隔に離間されて、図示しない工業用ミシンなどの縫製装置の縫い針によってミシン目状に形成された針孔である。これら孔部61aは、他の表皮体52の巻き込み片部58a及び一の表皮体51の一の重ね部56を貫通して、換言すれば一及び他の表皮体51,52を1枚分ずつ貫通して形成されている。
【0036】
縫い糸61bは、一の重ね部56と他の重ね部58の巻き込み片部58aとに亘って孔部61aに通されてこれら一の重ね部56と他の重ね部58の巻き込み片部58aとを厚み方向に一体的に縫い付けるものである。したがって、この縫い糸61b(第1の縫製部61)は、他の表皮体52の他の重ね部58の意匠側片部58bにより覆われ、他の表皮体52(他の重ね部58の意匠側片部58b)の背面側に隠れて乗員側から見えないようになっている。
【0037】
また、第2の縫製部62は、飾り縫い部、あるいはステッチ部などとも呼び得るもので、巻き込み片部58aの基端側の位置、換言すれば第1の縫製部61に対して露出開口部57側(内方)に離間された位置に設けられている。この第2の縫製部62は、一及び他の表皮体51,52(一及び他の重ね部56,58)を厚み方向に貫通する脆弱部である複数の孔部62aと、これら孔部62a間に連続して通された縫い糸62bとにより構成されている。なお、この第2の縫製部62は、必須の構成ではない。
【0038】
孔部62aは、一の表皮体51の外縁部(一の重ね部56)、すなわち露出開口部57の周方向に互いに略等間隔に離間されて、図示しない工業用ミシンなどの縫製装置の縫い針によってミシン目状に形成された針孔である。これら孔部62aは、他の表皮体52の他の重ね部58(巻き込み片部58a及び意匠側片部58b)及び一の表皮体51の一の重ね部56を貫通して、換言すれば一の表皮体51を1枚分、他の表皮体52を2枚分貫通して形成されている。
【0039】
縫い糸62bは、一の重ね部56と他の重ね部58(巻き込み片部58a及び意匠側片部58b)とに亘って孔部62aに通されてこれら一の重ね部56と他の重ね部58(巻き込み片部58a及び意匠側片部58b)を厚み方向に一体的に縫い付けるものである。したがって、この縫い糸62b(第2の縫製部62)は、他の表皮体52の表面側に露出して意匠性を高めるようになっている。
【0040】
弱部54は、本実施の形態では一の表皮体51の背面側を溝状に凹設した薄肉部であり、一の表皮体51の他の部分より脆弱で破断及び変形可能に形成されている。この弱部54は、
図3(a)に示すテアライン28、すなわち側部テアライン部41,41、横連結テアライン部42、縦連結テアライン部43及び下部テアライン部44と重なる位置、すなわちこのテアライン28と対向する位置に形成されている。したがって、この
図3(b)に示す弱部54は、側部テアライン部41,41(
図3(a))と重なって両側部に形成された(一方の)縁部弱部としての両側の側部弱部65,65と、横連結テアライン部42(
図3(a))と重なって左右方向に形成された(一方の)連結弱部としての横連結弱部66と、縦連結テアライン部43(
図3(a))と重なって上下方向に形成された(他方の)連結弱部としての縦連結弱部67と、下部テアライン部44(
図3(a))と重なって左右方向に形成された(他方の)縁部弱部としての下部弱部68とを備えている。したがって、側部弱部65,65及び下部弱部68に対して、横連結弱部66及び縦連結弱部67が表皮部22(一の表皮体51)の中央部側に位置し、収納状態のエアバッグ18(
図4(b))と重なる位置に配置されている。
【0041】
側部弱部65は、側部テアライン部41(
図3(a))と略等しい形状、すなわち両側外方に膨出する略円弧状に形成されている。したがって、この側部弱部65は、露出開口部57の縁部、すなわち接合部53(第2の縫製部62)に対して所定の距離範囲内にて、この接合部53(第2の縫製部62)に沿ってそれぞれ形成されている。
【0042】
横連結弱部66は、横連結テアライン部42(
図3(a))と略等しい形状、すなわち側部弱部65,65から両側方向の中央部に向かって直線状に延びる直線部66a,66aと、これら直線部66a,66a間を連結しエンブレム27(
図1)を下方に湾曲して迂回する迂回部66bとを有している。直線部66a,66aは、それぞれ側部弱部65,65の上下方向の中央部と連結されており、これら側部弱部65,65に対して交差する左右方向に延びている。したがって、弱部54は、側部弱部65,65と横連結弱部66との交差部で屈曲(略直交)している。
【0043】
縦連結弱部67は、縦連結テアライン部43(
図3(a))と略等しい形状、すなわち横連結弱部66の迂回部66bから下方に向けて直線状に延出している。また、この縦連結弱部67は、例えば側部弱部65の下端部よりも下方まで延出し、下部弱部68と連結されている。したがって、この縦連結弱部67は、横連結弱部66と下部弱部68とを連結している。このため、この縦連結弱部67は、横連結弱部66とともに、側部弱部65と下部弱部68とを連結している。換言すれば、弱部54は、縦連結弱部67と下部弱部68との交差部で屈曲(略直交)している。
【0044】
下部弱部68は、下部テアライン部44(
図3(a))と略等しい形状、すなわち下方に膨出する略円弧状に形成されている。したがって、この下部弱部68は、露出開口部57の縁部、すなわち接合部53(第1及び第2の縫製部61,62)に対して所定の距離範囲内にて、この接合部53(第1及び第2の縫製部61,62)に沿ってそれぞれ形成されている。
【0045】
そして、
図2(b)に示すように、弱部54の側部弱部65及び下部弱部68は、接合部53(第1及び第2の縫製部61,62)に対して、所定の距離範囲内の近傍に位置している。具体的に、側部弱部65及び下部弱部68は、他の表皮体52の内縁部、すなわち巻き込み片部58aと意匠側片部58bとの連続部である露出開口部57(
図2(a))の縁部に対して、0.5〜5.5mmの距離範囲内とするとともに、接合部53(第1及び第2の縫製部61,62)に対して3.0mm〜10.5mmの距離範囲内とすることが好ましい。これは、巻き込み片部58aの折り返し長さやテアライン28(側部テアライン部41及び下部テアライン部44)の幅寸法を考慮すると、3.0mmよりも小さくすることが容易でなく、10.5mmよりも長いと、エアバッグ18(
図4(b))の展開時の展開力に対して弱部54の近傍の強度が低下するためである。より具体的に、本実施の形態では、弱部54の側部弱部65及び下部弱部68(テアライン28の側部テアライン部41及び下部テアライン部44)と他の表皮体52の内縁部との距離D1が5.2mmに設定され、他の表皮体52の内縁部と第2の縫製部62との距離D2が3.0mmに設定されている。そのため、弱部54の側部弱部65及び下部弱部68(テアライン28の側部テアライン部41及び下部テアライン部44)と第2の縫製部62との距離D3(=D1+D2)が8.2mmに設定されている。また、第2の縫製部62と第1の縫製部61との距離D4が2.0mmに設定されている。この結果、弱部54の側部弱部65及び下部弱部68(テアライン28の側部テアライン部41及び下部テアライン部44)と第1の縫製部61との距離D5(=D3+D4)が10.2mmに設定されている。なお、一の表皮体51の一の重ね部56の先端部及び他の表皮体52の他の重ね部58の巻き込み片部58aの先端部は、略等しい位置となっており、突出部34からの距離D6が1.0mmに設定されている。また、一の表皮体51の一の重ね部56の先端部及び他の表皮体52の他の重ね部58の巻き込み片部58aの先端部と第1の縫製部61との距離D7は、1.8mmに設定されている。
【0046】
そして、カバー体20の製造の際には、表板部25及び周板部26を備えるカバー本体21を予め合成樹脂により射出成形する。このとき、一及び他の表皮体51,52は、カバー本体21に対して一体的にインサート成形してもよいし、別途成形したカバー本体21に後工程で貼り付けてもよい。そして、一及び他の表皮体51,52により表板部25を覆ったカバー体20に対して、別途成形したエンブレム27を取り付ける。
【0047】
このカバー体20を備えたエアバッグ装置12をステアリングホイール10に備えた自動車が衝突などすると、制御装置がインフレータを作動させ、
図4(b)に示すエアバッグ18にガスを供給する。すると、エアバッグ18が急速に膨張展開し、この膨張展開する圧力が各扉予定部37を押し上げ、テアライン28及び弱部54にエアバッグ18の膨張圧力が作用して、このテアライン28及び弱部54に沿ってカバー本体21の表板部25が一及び他の表皮体51,52と一体的に破断する。
【0048】
ここで、テアライン28及び弱部54は、その中央部から周辺部へと破断が進行していく。すなわち、テアライン28は、横連結テアライン部42の迂回部42bから直線部42a,42aへと左右方向に破断が進行していくとともに、縦連結テアライン部43が横連結テアライン部42の迂回部42bと連続する位置から下方に向かって破断が進行していく。同様に、弱部54では、テアライン28の横連結テアライン部42の迂回部42bから直線部42a,42aへの破断の進行に伴い、横連結弱部66の迂回部66bから直線部66aへと左右方向に破断が進行していくとともに、テアライン28の縦連結テアライン部43の破断の進行に伴い、縦連結弱部67が横連結弱部66の迂回部66bと連続する位置から下方に向かって破断が進行していく。この結果、
図4(a)から
図4(b)に示すように、扉部45が形成されてエアバッグ18が膨出する。
【0049】
この後、テアライン28は、さらに、直線部42a,42aの端部から側部テアライン部41,41が上下に破断していくとともに、縦連結テアライン部43の下端部から下部テアライン部44が左右に破断していく。一方、弱部54は、テアライン28の直線部42a,42aの端部から側部テアライン部41,41への破断、及び、縦連結テアライン部43の下端部から下部テアライン部44への破断の進行に伴い、直線部66a,66aの端部及び縦連結弱部67の下端部から側部弱部65,65及び下部弱部68へと破断する際に、これら側部弱部65,65及び下部弱部68が一の表皮体51と他の表皮体52との接合部53に対して所定の距離範囲内でこの接合部53に沿っているため、カバー本体21に対して貼り付けられて固定されている接合部53と比較して相対的に弱い側部弱部65,65及び下部弱部68へと確実に展開力が作用し、直線部66a,66aの端部から側部弱部65,65が上下に破断していくとともに、縦連結弱部67の下端部から下部弱部68が左右に破断していく。
【0050】
この結果、
図4(b)から
図4(c)に示すように、形成された扉部45が、ヒンジ部47,48,49を軸として回動してエアバッグを膨出させる開口である突出口69を形成し、この突出口69からエアバッグ18が乗員の前方に展開し、乗員を保護する。
【0051】
このように、本実施の形態によれば、一及び他の表皮体51,52の一部同士が重ね合わせられて接合され表板部25に固定された接合部53に対して所定の距離範囲内でこの接合部53に沿って、テアライン28の少なくとも一部(側部テアライン部41,41及び下部テアライン部44)と重なる位置で一の表皮体51に弱部54(側部弱部65,65及び下部弱部68)を設けることで、エアバッグ18(
図4(b))の膨張時の展開圧力を弱部54に確実に作用させてこの弱部54の位置で破断させることができ、エアバッグ18(
図4(b))の膨張展開時に所定形状に破断可能となる。
【0052】
特に、接合部53は、第1及び第2の縫製部61,62を備えていることにより、縫い針によって孔部61a,62aが形成されているので、いわばミシン目状の脆弱部を構成することとなり、エアバッグ18(
図4(b))の膨張展開圧力によって切れが生じることが懸念される。この点、孔部61a,61aの間隔、及び、孔部62a,62aの間隔を大きくするなどの構成も考えられるものの、カバー体20全体の意匠から、部分的に間隔を変えることが好ましくない場合がある。そこで、第1及び第2の縫製部61,62の周辺の接合部53を、一及び他の表皮体51,52を重ねて構成しカバー本体21に貼り付けて擬似的な剛体とし、この接合部53から離間する所定の距離範囲内にテアライン28の側部テアライン部41,41及び下部テアライン部44と表皮部22の弱部54の側部弱部65,65及び下部弱部68とを重ねることで、エアバッグ18(
図4(b))の膨張展開圧力に対して側部テアライン部41,41及び下部テアライン部44と、側部弱部65,65及び下部弱部68との近傍の位置を強化し、相対的に弱い弱部54に展開圧力を確実に作用させることができ、設計狙いと異なる位置からの表皮部22の破断を防止できる。
【0053】
また、テアライン28は、エアバッグ18(
図4(b))の膨張展開圧力が、収納状態のエアバッグ18(
図4(b))に対向する横連結テアライン部42及び縦連結テアライン部43に初期段階から加わり、続いてこれら横連結テアライン部42及び縦連結テアライン部43と側部テアライン部41,41及び下部テアライン部44との交差部となるため、表皮部22の破断が、側部テアライン部41,41及び下部テアライン部44に重なる位置をオーバーして破断する傾向にある。そこで、本実施の形態では、側部テアライン部41,41と横連結テアライン部42との交差部、及び、下部テアライン部44と縦連結テアライン部43との交差部とのそれぞれと重なる位置にて一の表皮体51に弱部54(側部弱部65,65及び下部弱部68)を設けることで、表皮部22が横連結テアライン部42及び縦連結テアライン部43に対応する位置から側部テアライン部41,41及び下部テアライン部44をオーバーした位置へと破断することなく、側部テアライン部41,41及び下部テアライン部44に重なる側部弱部65,65及び下部弱部68の位置でより確実に表皮部22を破断させることができる。
【0054】
すなわち、テアライン28及びこのテアライン28の形状と略同形状となる弱部54が屈曲している場合に、本実施の形態のように、この屈曲している箇所を接合部53の近傍の所定の距離範囲内とすることで、弱部54を安定して開裂させることができる。
【0055】
具体的に、側部弱部65及び下部弱部68に対して0.5mm〜5.5mmの範囲の位置に接合部53の他の表皮体52の曲げ部、すなわち巻き込み片部58aと意匠側片部58bとの連続部である露出開口部57の縁部を位置させる、または、側部弱部65及び下部弱部68に対して接合部53(第1及び第2の縫製部61,62)を3.0mm〜10.5mmの範囲の位置とすることで、弱部54の開裂を確実に安定させることができる。
【0056】
さらに、エアバッグ18(
図4(b))の突出方向に沿って対向部に突設された突出部34を接合部53の外方に沿わせることで、一及び他の表皮体51,52の一部の重ね合わせによる表皮部22の嵩高を突出部34によって吸収し、見栄えを向上できる。さらに、表板部25は、突出部34の位置で他の一般部よりも厚みが大きくなっているので、この突出部34の位置での表板部25の厚みによってエアバッグ18の膨張時の展開圧力に対して強度を確保するとともに接合部53の外方を確実に押さえてエアバッグ18(
図4(b))の膨張時の展開圧力をテアライン28及び弱部54に確実に作用させ、テアライン28及び弱部54から表板部25及び表皮部22を確実に破断させることができる。
【0057】
この結果、デザイン性が良好で、かつ、設計狙い通りテアライン28及び弱部54が開裂するカバー体20の仕様を安価に提供できる。
【0058】
次に、第2の実施の形態を
図6及び
図7を参照して説明する。なお、上記の第1の実施の形態と同様の構成及び作用については、同一符号を付して説明を省略する。
【0059】
この第2の実施の形態は、上記の第1の実施の形態において、カバー本体21の段差部33と突出部34との位置が入れ替わっているものである。すなわち、
図7(a)に示すように、カバー本体21は、正面板部31のエアバッグ収納部に対向する領域が、エアバッグ18の突出方向である正面側に相対的に突出した突出部71となっており、この突出部71の周縁部がこの突出部71に対して相対的に窪んだ段差部72となっている。すなわち、突出部71は、略円形状に形成され、段差部72は、この突出部71の周囲を囲む環状(円環状)に形成されている。さらに、突出部71には、エンブレム27を取り付けるための穴部35が設けられている。そして、
図6(a)に示すように、突出部71が他の表皮体52により覆われ、段差部72が主として一の表皮体51により覆われて、接合部53が突出部71の周縁部に沿って位置している。したがって、この接合部53は、段差部72に貼り付けられて、突出部71の周縁部に対向する位置に固定されている。
【0060】
さらに、
図7(b)に示すように、一の表皮体51は、他の表皮体52の周囲を囲むもので、略円環状に形成されている。すなわち、一の表皮体51は、
図7(a)に示す表板部25において、正面板部31の周縁部に位置する段差部72及び延出板部32に亘る部分の表面を面状に覆っている。このため、一の表皮体51(
図7(b))は、テアライン28、すなわち側部テアライン部41,41、横連結テアライン部42、及び縦連結テアライン部43の外方に位置している。
【0061】
また、他の表皮体52は、表板部25の主意匠を構成するもので、略円形状に形成されている。すなわち、他の表皮体52は、表板部25において、正面板部31の略中央部に位置する突出部71の表面を面状に覆っている。このため、他の表皮体52は、
図7(a)に示すテアライン28、すなわち側部テアライン部41,41、横連結テアライン部42、縦連結テアライン部43及び下部テアライン部44をそれぞれ覆っている。また、
図7(b)に示すように、他の表皮体52の中央部には、穴部35と連通しエンブレム27が取り付けられる通孔55が開口されている。
【0062】
さらに、弱部54は、本実施の形態では他の表皮体52の背面側を溝状に凹設した薄肉部であり、他の表皮体52の他の部分より脆弱で破断及び変形可能に形成されている。また、
図6(b)に示すように、弱部54の側部弱部65及び下部弱部68は、接合部53(第1及び第2の縫製部61,62)に対して、所定の距離範囲内の近傍に位置している。具体的に、側部弱部65及び下部弱部68は、一の表皮体51の内縁部、すなわち一の重ね部56の先端部に対して、0.5〜5.5mmの距離範囲内とするとともに、接合部53(第1及び第2の縫製部61,62)に対して3.0mm〜8.0mmの距離範囲内とすることが好ましい。これは、テアライン28(側部テアライン部41及び下部テアライン部44)の幅寸法を考慮すると、3.0mmよりも小さくすることが容易でなく、8.0mmよりも長いと、エアバッグ18の展開時の展開力に対して弱部54の近傍を抑える力が低下するためである。より具体的に、本実施の形態では、弱部54の側部弱部65及び下部弱部68(テアライン28の側部テアライン部41及び下部テアライン部44)と突出部71の縁部との距離D8が4.0mmに設定され、突出部71の外縁部と一の表皮体51の一の重ね部56の先端部及び他の表皮体52の他の重ね部58の巻き込み片部58aの先端部との距離D9が1.0mmに設定され、一の表皮体51の一の重ね部56の先端部及び他の表皮体52の他の重ね部58の巻き込み片部58aの先端部と第1の縫製部61との距離D10が1.0mmに設定され、第1の縫製部61と第2の縫製部62との距離D11が2.0mmに設定されている。そのため、弱部54の側部弱部65及び下部弱部68(テアライン28の側部テアライン部41及び下部テアライン部44)と第2の縫製部62との距離D12(=D8+D9+D10+D11)が8.0mmに設定されている。また、第2の縫製部62と他の表皮体52の外縁部(巻き込み片部58aと意匠側片部58bとの連続部)との距離D13が3.0mmに設定されている。
【0063】
そして、上記のカバー体20を備えたエアバッグ装置12をステアリングホイール10に備えた自動車が衝突などすると、制御装置により作動されたインフレータからガスが供給されたエアバッグ18が急速に膨張展開し、この膨張展開する圧力が各扉予定部37を押し上げ、テアライン28及び弱部54にエアバッグ18の膨張圧力が作用して、このテアライン28及び弱部54に沿ってカバー本体21の表板部25が、上記の第1の実施の形態と同様に、一及び他の表皮体51,52と一体的に破断し、扉部45を形成する。
【0064】
このとき、一及び他の表皮体51,52の一部同士が重ね合わせられて接合され表板部25に固定された接合部53に対して所定の距離範囲内でこの接合部53に沿って、テアライン28の少なくとも一部(側部テアライン部41,41及び下部テアライン部44)と重なる位置で他の表皮体52に弱部54(側部弱部65,65及び下部弱部68)を設けるなど、上記の第1の実施の形態と同様の構成を有することにより、上記の第1の実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。すなわち、一の表皮体51と他の表皮体52との位置が入れ替わっても、あるいは、段差部72と突出部71との領域が入れ替わっても、同様の構成を適用することで、同様の作用効果を奏することができる。
【0065】
なお、上記の各実施の形態において、表皮部22を構成する表皮体は2つに限らず、3つ以上用いることもできる。
【0066】
また、カバー体20は、運転席用のエアバッグ装置だけでなく、例えばインストルメントパネル部に設置されて助手席の乗員の前方にエアバッグを展開する助手席用のエアバッグ装置、あるいは助手席の乗員に対向する縦壁面部と乗員の下肢部との間にエアバッグを展開するニーエアバッグ装置などにも適用できる。