(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
トランスに第1方向の励磁電流を供給する第1サイクルと、前記トランスに第2方向の励磁電流を供給する第2サイクルと、を交互に切り替えるように、前記トランスに接続されたフルブリッジ出力段を駆動するものであり、
前記第1サイクルと前記第2サイクルのうち、一方のサイクルで流れた励磁電流の大きさに応じて、他方のサイクルの動作変化要因となる前記フルブリッジ出力段の同時オフ時間を設定するものであり、
前記励磁電流が大きいほど前記同時オフ時間を短縮し、前記励磁電流が小さいほど前記同時オフ時間を延長することを特徴とするスイッチ駆動回路。
トランスに第1方向の励磁電流を供給する第1サイクルと、前記トランスに第2方向の励磁電流を供給する第2サイクルと、を交互に切り替えるように、前記トランスに接続されたフルブリッジ出力段を駆動するものであり、
前記第1サイクルで流れた励磁電流と前記第2サイクルで流れた励磁電流とを平均化した平均励磁電流の大きさに応じて、前記フルブリッジ出力段の同時オフ時間を設定するものであり、
前記平均励磁電流が大きいほど前記同時オフ時間を短縮し、前記平均励磁電流が小さいほど前記同時オフ時間を延長することを特徴とするスイッチ駆動回路。
トランスに第1方向の励磁電流を供給する第1サイクルと、前記トランスに第2方向の励磁電流を供給する第2サイクルと、を交互に切り替えるように、前記トランスに接続されたフルブリッジ出力段を駆動するものであり、
前記第1サイクルと前記第2サイクルのうち、一方のサイクルで流れた励磁電流の大きさに応じて、他方のサイクル移行時における前記フルブリッジ出力段の同時オフ時間を設定するモードと、前記第1サイクルで流れた励磁電流と前記第2サイクルで流れた励磁電流とを平均化した平均励磁電流の大きさに応じて、前記フルブリッジ出力段の同時オフ時間を設定するモードを備えており、
動作モード切替信号に応じて、上記いずれのモードとするかを切り替えるものであり、
前記励磁電流または前記平均励磁電流が大きいほど前記同時オフ時間を短縮し、前記励磁電流または前記平均励磁電流が小さいほど前記同時オフ時間を延長することを特徴とするスイッチ駆動回路。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のスイッチング電源装置では、フルブリッジ出力段を形成するスイッチ素子の特性ばらつきに起因して、トランスの偏磁を生じるという課題があった。
【0006】
本明細書中に開示されている発明は、本願の発明者により見出された上記課題に鑑み、トランスの偏磁を抑えることのできるスイッチ駆動回路、及び、これを用いたスイッチング電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書中に開示されているスイッチ駆動回路は、トランスに第1方向の励磁電流を供給する第1サイクルと、前記トランスに第2方向の励磁電流を供給する第2サイクルと、を交互に切り替えるように、前記トランスに接続されたフルブリッジ出力段を駆動するものであり、前記第1サイクルと前記第2サイクルのうち、一方のサイクルで流れた励磁電流の大きさに応じて、他方のサイクルの動作変化要因となる前記フルブリッジ出力段の同時オフ時間を設定する構成(第1の構成)とされている。
【0008】
また、本明細書中に開示されているスイッチ駆動回路は、トランスに第1方向の励磁電流を供給する第1サイクルと、前記トランスに第2方向の励磁電流を供給する第2サイクルと、を交互に切り替えるように、前記トランスに接続されたフルブリッジ出力段を駆動するものであり、前記第1サイクルで流れた励磁電流と前記第2サイクルで流れた励磁電流とを平均化した平均励磁電流の大きさに応じて、前記フルブリッジ出力段の同時オフ時間を設定する構成(第2の構成)とされている。
【0009】
また、本明細書中に開示されているスイッチ駆動回路は、トランスに第1方向の励磁電流を供給する第1サイクルと、前記トランスに第2方向の励磁電流を供給する第2サイクルと、を交互に切り替えるように、前記トランスに接続されたフルブリッジ出力段を駆動するものであり、前記第1サイクルと前記第2サイクルのうち、一方のサイクルで流れた励磁電流の大きさに応じて、他方のサイクル移行時における前記フルブリッジ出力段の同時オフ時間を設定するモードと、前記第1サイクルで流れた励磁電流と前記第2サイクルで流れた励磁電流とを平均化した平均励磁電流の大きさに応じて、前記フルブリッジ出力段の同時オフ時間を設定するモードを備えており、動作モード切替信号に応じて、上記いずれのモードとするかを切り替える構成(第3の構成)とされている。
【0010】
なお、上記第1〜第3いずれかの構成から成るスイッチ駆動回路は、前記励磁電流または前記平均励磁電流が大きいほど前記同時オフ時間を短縮し、前記励磁電流または前記平均励磁電流が小さいほど前記同時オフ時間を延長する構成(第4の構成)にするとよい。
【0011】
また、上記第1〜第4いずれかの構成から成るスイッチ駆動回路は、前記フルブリッジ出力段を位相シフト方式でPWM駆動する構成(第5の構成)にするとよい。
【0012】
また、本明細書中に開示されているスイッチング電源装置は、互いに電磁結合された一次巻線と二次巻線を含むトランスと;入力電圧が印加される電源端と第1接地端との間に接続されたフルブリッジ出力段と;前記トランスに第1方向の励磁電流を供給する第1サイクルと、前記トランスに第2方向の励磁電流を供給する第2サイクルと、を交互に切り替えるように、前記フルブリッジ出力段を駆動する請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載のスイッチ駆動回路と、前記トランスの二次巻線に現れる誘起電圧から出力電圧を生成する整流平滑部と、を有する構成(第6の構成)とされている。
【0013】
なお、上記第6の構成から成るスイッチング電源装置において、前記フルブリッジ出力段は、前記電源端と前記一次巻線の第1端との間に接続された第1上側スイッチと、前記一次巻線の第1端と前記第1接地端との間に接続された第1下側スイッチと、前記電源端と前記一次巻線の第2端との間に接続された第2上側スイッチと、前記一次巻線の第2端と前記第1接地端との間に接続された第2下側スイッチと、を含む構成(第7の構成)にするとよい。
【0014】
また、上記第6または第7の構成から成るスイッチング電源装置において、前記整流平滑部は、前記二次巻線の第1端と第2接地端との間に接続された第1整流素子と、前記二次巻線の第2端と前記第2接地端との間に接続された第2整流素子と、第1端が前記二次巻線の中点タップに接続されて第2端が前記出力電圧の出力端に接続されたチョークコイルと、第1端が前記出力電圧の出力端に接続されて第2端が前記第2接地端に接続された平滑キャパシタと、を含む構成(第8の構成)にするとよい。
【0015】
また、上記第8の構成から成るスイッチング電源装置において、前記第1整流素子及び前記第2整流素子は、いずれも整流ダイオードである構成(第9の構成)にするとよい。
【0016】
また、上記第8の構成から成るスイッチング電源装置において、前記第1整流素子及び前記第2整流素子は、いずれも同期整流トランジスタであり、前記スイッチ駆動回路は、前記フルブリッジ出力段と共に各同期整流トランジスタを駆動する構成(第10の構成)にしてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本明細書中に開示されている発明によれば、トランスの偏磁を抑えることのできるスイッチ駆動回路、及び、これを用いたスイッチング電源装置を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<スイッチング電源装置(第1実施形態)>
図1は、スイッチング電源装置の第1実施形態を示す回路図である。本実施形態のスイッチング電源装置1は、入力電圧Viから所望の出力電圧Voを生成して負荷2に供給する絶縁型DC/DCコンバータであり、スイッチ駆動回路10と、フルブリッジ出力段20と、トランス30と、整流平滑部40と、を有する。
【0020】
スイッチ駆動回路10は、出力電圧Voが目標値と一致するようにゲート信号(GA、GB、GC、及び、GD)をそれぞれパルス駆動することにより、フルブリッジ出力段20を位相シフト方式でPWM[pulse width modulation]駆動する。また、スイッチ駆動回路10は、フルブリッジ出力段20の駆動電流(延いてはトランス30の励磁電流)に応じたセンス信号CSの入力を受け付けており、センス信号CSに応じてフルブリッジ出力段20の同時オフ時間(いわゆるデッドタイム)を設定する機能も備えている。更に、スイッチ駆動回路10は、動作モード切替信号MODEに応じて、同時オフ時間の設定手法を切り替える機能も備えている。なお、スイッチ駆動回路10の具体的な動作については、後ほど詳述する。
【0021】
フルブリッジ出力段20は、電源端(=入力電圧Viの印加端)と第1接地端(=接地電圧GND1の印加端)との間に接続されており、上側スイッチTrA及びTrC、並びに、下側スイッチTrB及びTrDのオン/オフ制御に応じて、入力電圧Viから出力電圧Voを生成する。
【0022】
上側スイッチTrA及び下側スイッチTrBは、フルブリッジ出力段20の第1アーム(=第1ハーフブリッジ)として、電源端と第1接地端との間に直列接続されている。なお、上側スイッチTrAと下側スイッチTrBとの接続ノード(=ノード電圧V1の印加端)は、トランス30の第1入力端(=一次巻線L1の第1端)に接続されている。
【0023】
上側スイッチTrC及び下側スイッチTrDは、フルブリッジ出力段20の第2アーム(=第2ハーフブリッジ)として、電源端と第1接地端との間に直列接続されている。なお、上側スイッチTrCと下側スイッチTrDとの接続ノード(=ノード電圧V2の印加端)は、トランス30の第2入力端(=一次巻線L1の第2端)に接続されている。
【0024】
また、各スイッチTrA〜TrDには、図中の破線で示したように、それぞれの両端間に寄生キャパシタ及び寄生ダイオードが付随している。
【0025】
上側スイッチTrAと下側スイッチTrBは、それぞれ、ゲート信号GA及びGBに応じて相補的にオン/オフされる。また、上側スイッチTrCと下側スイッチTrDは、それぞれ、ゲート信号GC及びGDに応じて相補的にオン/オフされる。ここで、本明細書中の「相補的」という文言は、上側スイッチと下側スイッチのオン/オフ状態が完全に逆転している場合のみを意味するのではなく、上側スイッチと下側スイッチのオン/オフ遷移タイミングに遅延が与えられている場合(すなわち、上側スイッチと下側スイッチの同時オフ時間が設けられている場合)も含むものとして理解することができる。
【0026】
上記の同時オフ時間は、上下両スイッチを介して流れる過大な貫通電流を防止するとともに、ソフトスイッチング動作(ZVS[zero-volt switching]動作)を実現してスイッチング損失及びスイッチングノイズを低減するために設けられる。
【0027】
なお、上側スイッチTrA及びTrC、並びに、下側スイッチTrB及びTrDに高電圧が印加される場合には、それぞれのスイッチ素子として、パワーMOSFET[metal-oxide-semiconductor field effect transistor]、IGBT[insulated gate bipolar transistor]、SiCトランジスタ、若しくは、GaNパワーデバイスなどの高耐圧スイッチ素子を用いることが望ましい。
【0028】
トランス30は、互いに電磁結合された一次巻線L1と二次巻線L2を含み、一次回路系1p(GND1系)と二次回路系1s(GND2系)との間を電気的に絶縁しつつ、一次回路系1pから二次回路系1sに交流電力を伝達する。
【0029】
整流平滑部40は、トランス30の二次巻線L2に現れる誘起電圧から出力電圧Voを生成する機能ブロックであり、整流ダイオードD1及びD2(それぞれ第1整流素子及び第2整流素子に相当)と、チョークコイルL3と、平滑キャパシタC1と、を含む。
【0030】
整流ダイオードD1のカソードは、トランス30の第1出力端(=二次巻線L2の第1端)に接続されている。一方、整流ダイオードD2のカソードは、トランス30の第2出力端(=二次巻線L2の第2端)に接続されている。また、整流ダイオードD1及びD2それぞれのアノードは、いずれも第2接地端(=接地電圧GND2の印加端)に接続されている。チョークコイルL3の第1端は、二次巻線L2の中点タップに接続されている。チョークコイルL3の第2端と平滑キャパシタC1の第1端は、いずれも出力電圧Voの出力端に接続されている。平滑キャパシタC1の第2端は、接地電圧GND2の印加端に接続されている。
【0031】
<基本動作>
図2は、位相シフト方式によるフルブリッジ出力段20のPWM駆動を示すタイミングチャートであり、紙面の上側から順に、ゲート信号GA〜GD、ノード電圧V1、貫通電流IAB(=上側スイッチTrAと下側スイッチTrBを介して流れる貫通電流)、ノード電圧V2、及び、貫通電流ICD(=上側スイッチTrCと下側スイッチTrDを介して流れる貫通電流)が描写されている。
【0032】
位相シフト方式によるフルブリッジ出力段20のPWM駆動では、ゲート信号GA〜GDがそれぞれ一定のデューティ(50%)でパルス駆動される。また、第1アーム側のゲート信号GA及びGBと、第2アーム側のゲート信号GC及びGDとの間には、シフト時間Ts(位相差)が設けられている。このシフト時間Tsを可変制御することにより、一次巻線L1に対する入力電圧Viの印加時間を変化させることができるので、スイッチング周波数を一定値に固定したまま、出力電圧Voの帰還制御を行うことが可能となる。
【0033】
例えば、時刻t1〜t2では、ゲート信号GA及びGDがハイレベルとなり、ゲート信号GB及びGCがローレベルとなっている。従って、上側スイッチTrAと下側スイッチTrDがオンして、下側スイッチTrBと上側スイッチTrCがオフする。その結果、一次回路系1pには、
図3の太い実線矢印で示したように、Vi→TrA→L1→TrD→GND1という電流経路を介して第1方向の励磁電流IADが流れる。また、二次回路系1sには、
図3の太い破線矢印で示したように、GND2→D1→L2→L3という電流経路を介して誘起電流が流れる。以下では、上側スイッチTrAと下側スイッチTrDがオンされることにより、トランス30に対して第1方向の励磁電流IADが供給されている動作状態を「第1サイクル」と呼ぶ。
【0034】
一方、時刻t3〜t4では、ゲート信号GA及びGDがローレベルとなり、ゲート信号GB及びGCがハイレベルとなっている。従って、上側スイッチTrAと下側スイッチTrDがオフして、下側スイッチTrBと上側スイッチTrCがオンする。その結果、一次回路系1pには、
図4の太い実線矢印で示したように、Vi→TrC→L1→TrB→GND1という電流経路を介して第2方向の励磁電流IBCが流れる。また、二次回路系1sには、
図4の太い破線矢印で示したように、GND2→D2→L2→L3という電流経路を介して誘起電流が流れる。以下では、上側スイッチTrCと下側スイッチTrBがオンされることにより、トランス30に対して第2方向の励磁電流IBCが供給されている動作状態を「第2サイクル」と呼ぶ。
【0035】
このように、スイッチ駆動回路10は、上側スイッチTrAと下側スイッチTrDをオンしてトランス30に第1方向の励磁電流IADを供給する第1サイクルと、上側スイッチTrCと下側スイッチTrBをオンしてトランス30に第2方向の励磁電流IBCを供給する第2サイクルとを交互に切り替えるように、フルブリッジ出力段20を駆動する。
【0036】
なお、フルブリッジ出力段20は、上記した第1サイクルと第2サイクル以外にも、種々の動作状態を取り得る。例えば、時刻t2〜t3では、上側スイッチTrA及びTrCがオンして下側スイッチTrB及びTrDがオフした状態となる。また、時刻t4〜t5では、上側スイッチTrA及びTrCがオフして下側スイッチTrB及びTrDがオンした状態となる。これを鑑みると、上記した「交互」という文言は、第1サイクルと第2サイクルとの間に別の動作状態が介在する場合も含むものとして理解することができる。
【0037】
ところで、
図2の例では、ゲート信号GA及びGBの論理切替タイミングで貫通電流IABが生じており、ゲート信号GC及びGDの論理切替タイミングで貫通電流ICDが生じている。このような貫通電流IAB及びICDを減らすためには、ゲート信号GA及びGBそれぞれの論理切替タイミングを互いにずらして上側スイッチTrAと下側スイッチTrBの同時オフ時間を設けると共に、ゲート信号GC及びGDそれぞれの論理切替タイミングを互いにずらして上側スイッチTrCと下側スイッチTrDの同時オフ時間を設ける必要がある。
【0038】
ここで、スイッチ駆動回路10は、先に述べたように、センス信号CS(延いては、励磁電流IADまたはIBCの大きさ)に応じて、フルブリッジ出力段20の同時オフ時間を設定する機能を備えている。また、スイッチ駆動回路10は、動作モード切替信号MODEに応じて、同時オフ時間の設定手法(動作モード)を切り替える機能も備えている。
【0039】
そこで、以下では、スイッチ駆動回路10のデッドタイム設定処理について、具体例を挙げながら詳細に説明する。
【0040】
<デッドタイム設定処理(第1モード)>
図5は、第1モード(MODE=”01”)のデッドタイム設定処理を示すタイミングチャートであり、紙面の上側から順番に、センス信号CSとゲート信号GA〜GDが描写されている。なお、本図では、説明の便宜上、トランス30の漏れインダクタンス成分を無視した挙動が描写されている。
【0041】
先にも述べたように、スイッチ駆動回路10は、励磁電流IADを出力する第1サイクルと、励磁電流IBCを出力する第2サイクルとを交互に切り替えるように、フルブリッジ出力段20を駆動する。
【0042】
第1モードのスイッチ駆動回路10は、或る周期(例えば時刻t101〜t109)の第1サイクル(例えば時刻t102〜t103)で流れた励磁電流IADの大きさに応じて次周期の第1サイクル(例えば時刻t110〜t111)の動作変化要因となる同時オフ時間dA及びdDを設定する。同時オフ時間dAは、ゲート信号GBをローレベルに立ち下げてからゲート信号GAをハイレベルに立ち上げるまでの遅延時間(例えば時刻t109〜t110)に相当し、同時オフ時間dDは、ゲート信号GCをローレベルに立ち下げてからゲート信号GDをハイレベルに立ち上げるまでの遅延時間(例えば時刻t107〜t108)に相当する。なお、スイッチ駆動回路10は、励磁電流IADが大きいほど同時オフ時間dA及びdDを短縮し(1周期におけるゲート信号GA及びGDの固定デューティを広げる)、励磁電流IADが小さいほど同時オフ時間dA及びdDを延長する(1周期におけるゲート信号GA及びGDの固定デューティを狭める)。
【0043】
また、第1モードのスイッチ駆動回路10は、上記と同じく、或る周期(例えば時刻t101〜t109)の第2サイクル(例えば時刻t106〜t107)で流れた励磁電流IBCの大きさに応じて次周期の第2サイクル(例えば時刻t114〜t115)の動作変化要因となる同時オフ時間dB及びdCを設定する。同時オフ時間dBは、ゲート信号GAをローレベルに立ち下げてからゲート信号GBをハイレベルに立ち上げるまでの遅延時間(例えば時刻t113〜t114)に相当し、同時オフ時間dCは、ゲート信号GDをローレベルに立ち下げてからゲート信号GCをハイレベルに立ち上げるまでの遅延時間(例えば時刻t111〜t112)に相当する。なお、スイッチ駆動回路10は、励磁電流IBCが大きいほど同時オフ時間dB及びdCを短縮し(1周期におけるゲート信号GB及びGCの固定デューティを広げる)、励磁電流IBCが小さいほど同時オフ時間dB及びdCを延長する(1周期におけるゲート信号GB及びGCの固定デューティを狭める)。
【0044】
このように、第1モードでは、第1サイクル側のデッドタイム設定処理(IAD→dA及びdD)と第2サイクル側のデッドタイム設定処理(IBC→dB及びdC)がそれぞれ独立に実施されている。そのため、各スイッチTrA〜TrDの特性ばらつき(ゲート遅延差など)により、励磁電流IADと励磁電流IBCとの間に意図しない相対差が生じた場合には、上記のデッドタイム設定処理がその相対差を増幅するように働いてしまい、トランス30の偏磁を助長するおそれがある。
【0045】
例えば、各スイッチTrA〜TrDの特性ばらつきに起因して、第1サイクルの励磁電流IADが第2サイクルの励磁電流IBCよりも相対的に小さくなった場合を考える。この場合、第1モードのデッドタイム設定処理では、第1サイクル移行時の同時オフ時間dA及びdDが第2サイクル移行時の同時オフ時間dB及びdCよりも相対的に長く設定される。従って、第1サイクルのPWMデューティ(=TAD/T)が第2サイクルのPWMデューティ(=TBC/T)よりも相対的に低下する。その結果、励磁電流IADが減少して励磁電流IBCが増大するので、両者の相対差が前周期よりも大きくなる。
【0046】
このような悪循環により、トランス30の偏磁が進むと、スイッチング電源装置1の正常動作が阻害されて、入力電圧Viから所望の出力電圧Voを生成することができなくなる。そのため、第1モード(MODE=”01”)を選択する場合には、各スイッチTrA〜TrDとして特性ばらつきの小さいスイッチ素子を用いたり、トランス30の偏磁防止対策を十分に施しておくことが望ましいと言える。
【0047】
<デッドタイム設定処理(第2モード)>
図6は、第2モード(MODE=”02”)のデッドタイム設定処理を示すタイミングチャートであり、紙面の上側から順番に、センス信号CSとゲート信号GA〜GDが描写されている。なお、本図でも、説明の便宜上、トランス30の漏れインダクタンス成分を無視した挙動が描写されている。
【0048】
第2モードのスイッチ駆動回路10は、或る周期の第1サイクル(例えば時刻t202〜t203)で流れた励磁電流IADの大きさに応じて次周期の第2サイクル(例えば時刻t214〜t215)の動作変化要因となる同時オフ時間dB及びdCを設定する。同時オフ時間dBは、ゲート信号GAをローレベルに立ち下げてからゲート信号GBをハイレベルに立ち上げるまでの遅延時間(例えば時刻t213〜t214)に相当し、同時オフ時間dCは、ゲート信号GDをローレベルに立ち下げてからゲート信号GCをハイレベルに立ち上げるまでの遅延時間(例えば時刻t211〜t212)に相当する。なお、スイッチ駆動回路10は、励磁電流IADが大きいほど同時オフ時間dB及びdCを短縮し(1周期におけるゲート信号GB及びGCの固定デューティを広げる)、励磁電流IADが小さいほど同時オフ時間dB及びdCを延長する(1周期におけるゲート信号GB及びGCの固定デューティを狭める)。
【0049】
また、第2モードのスイッチ駆動回路10は、上記と同じく、或る周期の第2サイクル(例えば時刻t206〜t207)で流れた励磁電流IBCの大きさに応じて次周期の第1サイクル(例えば時刻t218〜t219)の動作変化要因となる同時オフ時間dA及びdDを設定する。同時オフ時間dAは、ゲート信号GBをローレベルに立ち下げてからゲート信号GAをハイレベルに立ち上げるまでの遅延時間(例えば時刻t217〜t218)に相当し、同時オフ時間dDは、ゲート信号GCをローレベルに立ち下げてからゲート信号GDをハイレベルに立ち上げるまでの遅延時間(例えば時刻t215〜t216)に相当する。なお、スイッチ駆動回路10は、励磁電流IBCが大きいほど同時オフ時間dA及びdDを短縮し(1周期におけるゲート信号GA及びGDの固定デューティを広げる)、励磁電流IBCが小さいほど同時オフ時間dA及びdDを延長する(1周期におけるゲート信号GA及びGDの固定デューティを狭める)。
【0050】
このように、第2モードでは、第1サイクルと第2サイクルのうち、一方のサイクルで流れた励磁電流の大きさに応じて、他方のサイクル移行時におけるフルブリッジ出力段20の同時オフ時間が設定される。そのため、スイッチTrA〜TrDの特性ばらつき(ゲート遅延差など)により、励磁電流IADと励磁電流IBCとの間に意図しない相対差が生じた場合でも、上記のデッドタイム設定処理がその相対差を減縮するように働くので、トランス30の偏磁を抑制することが可能となる。
【0051】
例えば、各スイッチTrA〜TrDの特性ばらつきに起因して、第1サイクルの励磁電流IADが第2サイクルの励磁電流IBCよりも相対的に小さくなった場合を考える。この場合、第2モードのデッドタイム設定処理では、第1サイクル移行時の同時オフ時間dA及びdDが第2サイクル移行時の同時オフ時間dB及びdCよりも相対的に短く設定される。従って、第1サイクルのPWMデューティ(=TAD/T)が第2サイクルのPWMデューティ(=TBC/T)よりも相対的に上昇する。その結果、励磁電流IADが増大して励磁電流IBCが減少するので、両者の相対差が前周期よりも小さくなる。
【0052】
このように、第2モード(MODE=”02”)を選択すれば、特性ばらつきの小さいスイッチ素子を用いたり、別途の偏磁防止対策を施したりしなくても、トランス30の偏磁を抑制することが可能となる。
【0053】
なお、本図の例では、励磁電流の取得から同時オフ時間の設定完了までに一定の時間を要することに鑑み、隣り合う第1サイクルと第2サイクルとの間で励磁電流の取得と同時オフ時間の設定を行うことを避けたが、処理が間に合うのであれば、隣り合う第1サイクルと第2サイクルとの間で励磁電流の取得と同時オフ時間の設定を行っても構わない。
【0054】
<デッドタイム設定処理(第3モード)>
図7は、第3モード(MODE=”03”)のデッドタイム設定処理を示すタイミングチャートであり、紙面の上側から順番に、センス信号CSとゲート信号GA〜GDが描写されている。なお、本図でも、説明の便宜上、トランス30の漏れインダクタンス成分を無視した挙動が描写されている。
【0055】
第3モードのスイッチ駆動回路10では、第1サイクルで流れた励磁電流IADと第2サイクルで流れた励磁電流IBCとを平均化した平均励磁電流IAVE(=(IAD+IBC)/2)の大きさに応じて、フルブリッジ出力段20の同時オフ時間が設定される。
【0056】
例えば、或る周期の第1サイクル(例えば時刻t318〜t319)の動作変化要因となる同時オフ時間dA及びdDを設定する際には、1周期前の第1サイクル(例えば時刻t310〜311)で流れた励磁電流IADと、それよりも更に1周期前(=2周期前)の第2サイクル(例えば時刻t306〜t307)で流れた励磁電流IBCとを平均化した平均励磁電流IAVEの大きさが参照される。なお、スイッチ駆動回路10は、平均励磁電流IAVEが大きいほど同時オフ時間dA及びdDを短縮し(1周期におけるゲート信号GA及びGDの固定デューティを広げる)、平均励磁電流IAVEが小さいほど同時オフ時間dA及びdDを延長する(1周期におけるゲート信号GA及びGDの固定デューティを狭める)。
【0057】
従って、第3モード(MODE=”03”)を選択すれば、各スイッチTrA〜TrDに特性ばらつき(ゲート遅延差など)があっても、平均励磁電流IAVEに応じて同時オフ時間dA〜dDが均一化される。従って、先出の第2モードと同様、特性ばらつきの小さいスイッチ素子を用いたり、別途の偏磁防止対策を施したりしなくても、トランス30の偏磁を抑制することが可能となる。
【0058】
<スイッチング電源装置(第2実施形態)>
図8は、スイッチング電源装置の第2実施形態を示す回路図である。本実施形態のスイッチング電源装置1は、第1実施形態(
図1)をベースとしつつ、整流平滑部40の第1整流素子及び第2整流素子として同期整流トランジスタTrE及びTrFを含み、スイッチ駆動回路10は、フルブリッジ出力段20と共に各同期整流トランジスタTrE及びTrFを駆動する構成とされている。そこで、第1実施形態と同様の構成要素については、
図1と同一の符号を付すことで重複した説明を割愛し、以下では、第2実施形態の特徴部分について重点的に説明する。
【0059】
同期整流トランジスタTrEは、先出の整流ダイオードD2に代えて、トランス30の第2出力端(=二次巻線L2の第2端)と第2接地端との間に接続されている。一方、同期整流トランジスタTrFは、先出の整流ダイオードD1に代えて、トランス30の第1出力端(=二次巻線L2の第1端)と第2接地端との間に接続されている。これらの同期整流トランジスタTrE及びTrFは、それぞれ、スイッチ駆動回路10から入力されるゲート信号GE及びGFに応じてオン/オフ駆動される。なお、ゲート信号GE及びGFは、フォトカプラなどのアイソレータ(不図示)を介して、一次回路系1pから二次回路系1sに伝達するとよい。
【0060】
図9は、デッドタイム設定処理の一例を示すタイミングチャートであり、紙面の上側から順に、センス信号CSとゲート信号GA〜GFが描写されている。なお、本図でも、説明の便宜上、トランス30の漏れインダクタンス成分を無視した挙動が描写されている。
【0061】
同期整流トランジスタTrEは、励磁電流IBCに応じた誘起電流が二次巻線L2に流れている間、そのオン状態を維持しておく必要がある。これを鑑みると、ゲート信号GEは、ゲート信号GB及びGCの一方がハイレベルに立ち上がった時点で遅滞なくハイレベルに立ち上げ、ゲート信号GB及びGCの双方がローレベルに立ち下がってから所定の遅延時間dEが経過した時点でローレベルに立ち下げるとよい。
【0062】
同様に、同期整流トランジスタTrFは、励磁電流IADに応じた誘起電流が二次巻線L2に流れている間、そのオン状態を維持しておく必要がある。これを鑑みると、ゲート信号GFは、ゲート信号GA及びGDの一方がハイレベルに立ち上がった時点で遅滞なくハイレベルに立ち上げ、ゲート信号GA及びGDの双方がローレベルに立ち下がってから所定の遅延時間dFが経過した時点でローレベルに立ち下げるとよい。
【0063】
なお、上記の遅延時間dE及びdFについては、同時オフ時間dA〜dDと同じく、動作モード切替信号MODEに応じた設定手法(動作モード)で、それぞれの長さを調整することが望ましい。
【0064】
本図の例に即して述べると、第1モード(MODE=”01”)では、或る周期の第1サイクルの動作変化要因となる同時オフ時間dA及びdDと遅延時間dEを設定するに際して、1周期前の第1サイクルで流れた励磁電流IADが参照される。
【0065】
また、第2モード(MODE=”02”)では、或る周期の第1サイクルの動作変化要因となる同時オフ時間dA及びdDと遅延時間dEを設定するに際して、2周期前の第2サイクルで流れた励磁電流IBCが参照される。
【0066】
また、第3モード(MODE=”03”)では、或る周期の第1サイクルの動作変化要因となる同時オフ時間dA及びdDと遅延時間dEを設定するに際して、1周期前の第1サイクルで流れた励磁電流IADと、それよりも更に1周期前(=2周期前)の第2サイクルで流れた励磁電流IBCを平均化した平均励磁電流IAVEの大きさが参照される。
【0067】
<その他の変形例>
なお、本明細書中に開示されている種々の技術的特徴は、上記実施形態のほか、その技術的創作の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。
【0068】
例えば、上記実施形態では、フルブリッジ出力段20を位相シフト方式でPWM駆動するスイッチ駆動回路10を例に挙げたが、スイッチ駆動回路10における位相シフト方式の採否は任意である。
【0069】
また、上記実施形態では、動作モード切替信号MODEに応じて3つの動作モード(第1モード(
図5)、第2モード(
図6)、及び、第3モード(
図7))を任意に切り替えることのできる構成を例示したが、第1モードは必須ではなく、第2モードと第3モードを切り替えることのできる構成としてもよい。また、動作モード切替機能自体を省略し、第2または第3モードのデッドタイム設定処理を単独で実施する構成としてもよい。
【0070】
このように、上記実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきであり、本発明の技術的範囲は、上記実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。