(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記案内部材を前記起立姿勢から前記倒伏姿勢側へ付勢する前記付勢機構の復帰付勢力が、前記係止付勢バネで前記係合側へ付勢された前記係止部材と前記被係止部材との当接による摩擦抵抗よりも強く設定されている請求項1記載のモーア。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示された構造のものでは、刈草排出用の排出口に設けた案内部材を、ねじりバネを用いた付勢機構によって、案内部材の倒伏姿勢側へ揺動付勢している。これは、機体走行に伴う倒伏姿勢の案内部材のガタツキを付勢機構の付勢力によって抑制したり、起立姿勢とした案内部材をストッパーとなる部材に押し付けた状態を維持するためである。
これにより、刈草を横外方へ排出するサイドディスチャージ方式の使用形態では案内部材の倒伏姿勢を維持し、刈草の放出を行わないマルチング方式での使用形態では案内部材が横外方へ延出されない状態を維持するように、案内部材の姿勢変更を行うことができる点では有用である。
しかしながら、機体の作業走行に伴う振動によって倒伏姿勢の案内部材のガタツキを確実に抑制するには、かなり強い付勢力が必要であるが、そのように付勢力を強くすると、案内部材の姿勢変更を行う操作が重くて操作し難くなるという点で改善の余地がある。
【0005】
本発明は、刈草排出用の排出口に設けた案内部材の倒伏姿勢を、付勢機構の付勢力のみに頼らず確実に姿勢維持することができ、かつ軽い操作力で起立姿勢にも操作可能であるモーアを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明におけるモーアの特徴は、モーアデッキの内部に縦軸心周りで回転駆動される複数の回転ブレードが配設され、前記回転ブレードで刈り取った刈草を排出する排出口が前記モーアデッキの横一側部に形成され、前記排出口の横外側に、その排出口から放出された刈草を横外方に案内する案内部材が備えられ、前記案内部材が、起立して前記排出口を開放する起立姿勢と、倒伏して前記排出口からの放出刈草を案内する倒伏姿勢とに
、水平方向に沿う横軸心回りで姿勢変更可能に構成されたモーアにおいて、前記案内部材を
前記横軸心回りで前記倒伏姿勢側へ弾性付勢する付勢機構と、前記案内部材を前記倒伏姿勢で位置固定するロック機構と、が備えら
れ、前記ロック機構に、前記モーアデッキとそのモーアデッキに対して揺動作動可能に支持された前記案内部材とのうちの、いずれか一方に装備された係止部材と、いずれか他方に装備された被係止部材と、前記係止部材を前記被係止部材との係合側へ弾性付勢する係止付勢バネと、が備えられ、前記被係止部材に対する前記係止部材の係脱方向が、前記横軸心に沿う方向に設定され、前記係止付勢バネの付勢方向が、前記係脱方向に沿って前記係止部材を前記被係止部材との係合側へ付勢する方向に設定されているということである。
【0007】
本発明によれば、案内部材を倒伏姿勢側へ弾性付勢する付勢機構が備えられているので、案内部材を常時倒伏姿勢側へ付勢して、排出口が開放されたままになることを避けることができる。そして、倒伏姿勢はロック機構によって確実に維持されるので、案内部材に下方側からの突き上げ外力が作用したとしても、案内部材が起立姿勢に姿勢変更されてしまうことを回避し得る。
また、案内部材の倒伏姿勢はロック機構によって確実に維持されるので、付勢機構による付勢力を、案内部材の起立姿勢側への姿勢変更を阻止し得るほどには大きくする必要はなく、比較的軽い付勢力に設定することが可能である。したがって、案内部材の倒伏姿勢側への常時付勢と、案内部材のガタツキ抑制と、起立姿勢への姿勢変更とを、比較的軽い付勢力の付勢機構を採用しながら的確に行うことができる利点がある。
【0008】
【0009】
さらに、本発明によれば、ロック機構に、係止部材を被係止部材との係合側へ弾性付勢する係止付勢バネが備えられているので、案内部材を所定の倒伏位置へ操作するだけで、係止部材を被係止部材に係合させて自動的にロック状態とすることができる。
【0010】
本発明においては、前記案内部材を前記起立姿勢から前記倒伏姿勢側へ付勢する前記付勢機構の復帰付勢力が、前記係止付勢バネで前記係合側へ付勢された前記係止部材と前記被係止部材との当接による摩擦抵抗よりも強く設定されていると好適である。
【0011】
本発明によれば、付勢機構の復帰付勢力が、係止付勢バネで係合側へ付勢された係止部材と被係止部材との当接による摩擦抵抗よりも強く設定されている。
すなわち、係止付勢バネの係合側への付勢力は、付勢機構の倒伏姿勢側への復帰付勢力による案内部材の倒伏方向への移動に対しては、係止部材と被係止部材との当接による摩擦抵抗として作用する。したがって、案内部材を人為的に起立姿勢に操作している状態では、その人為操作力を補助する役割を果たし、案内部材の起立姿勢の維持を比較的軽い操作で行い易い。
そして、手を離して、案内部材を起立姿勢に維持する操作を解除すれば、弱い係止付勢バネの係合側への付勢力による摩擦抵抗だけでは、付勢機構による倒伏姿勢側への復帰付勢力に抗しきれないので、案内部材は自動的に倒伏姿勢側へ復帰操作される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明における実施形態の一例を図面の記載に基づいて説明する。
尚、本実施形態での説明における前後方向及び左右方向は、特段の説明がない限り、次のように記載している。つまり、本発明における乗用型芝刈り機の作業走行時における前進側の進行方向(
図1,2における矢印F参照)が「前」、後進側への進行方向(
図1,2における矢印B参照)が「後」、その前後方向での前向き姿勢を基準としての走行機体の右側に相当する方向(
図2における矢印R参照)が「右」、同様に走行機体の左側に相当する方向(
図2における矢印L参照)が「左」である。
【0014】
〔乗用型芝刈り機の全体構成〕
図1,
図2に基づいて、乗用型芝刈り機の全体構成について説明する。
図1に示すように、乗用型芝刈り機は、操向操作される前輪1Fと操向不能で駆動される後輪1Rとが走行機体1に備えられている。走行機体1の下腹部に、モーア2がリンク機構10を介して平行昇降可能に吊り下げ支持されている。
走行機体1の後部にはエンジン11が搭載されている。このエンジン11の前方に突出された出力軸(図示せず)から取り出された動力が、後輪1Rを装備した伝動ケース(図示せず)に伝達され、その伝動ケース、及び伝動ケースから導出された伝動軸12を経てモーア2にエンジン動力が伝達されている。
【0015】
走行機体1の後部に前記エンジン11を内装した原動部13が配設され、原動部13よりも前方側の機体中央部に運転座席14が設けられている。運転座席14の前方位置に、操縦操作用の左右一対の操縦操作杆15が設けられ、運転座席14と原動部13との中間位置にロプス16が設けられている。
モーア2は、前後方向で運転座席14と重複する位置に相当する箇所で、走行機体1の下方側に配備されている。
【0016】
〔モーアの全体構成〕
図1及び
図2に示すように、モーア2は、モーアデッキ20を上下方向で貫通する3本の回転軸(図示せず)に支持されて上下方向の回転軸心P1,P2,P2(縦軸心に相当する)回りで回転駆動される3枚の回転ブレード21,22を備えている。
この3枚の回転ブレード21,22は左右方向に並設されている。
【0017】
回転軸の下端部に装着された各回転ブレード21,22は、帯板状の鋼板で構成されている。各回転ブレード21,22における両端部の一側に切刃(図示せず)が形成され、両端部の他側に起風羽根(図示せず)が一体に形成されている。
モーアデッキ20の左右両端近くで、かつ前後両側にゲージ輪23が取り付けられている。このゲージ輪23によって各回転ブレード21,22の対地高さを調節可能に構成してある。
【0018】
モーアデッキ20の上面における左右中央部に分岐ボックス24が設けられている。この分岐ボックス24に伝動軸12を介してエンジン11の動力が伝達されている。
分岐ボックス24の内部には、前後向きの伝動軸12側から伝達される回転動力を、図示しない上下方向の作業出力軸の回転に変換する機構が備えられ、その作業出力軸に作業用出力プーリ(図示せず)が備えられている。そして、作業用出力プーリの回転が、伝動ベルト(図示せず)を介して、各回転ブレード21,22の回転軸の上端部に備えた伝動プーリ(図示せず)に伝達される。
【0019】
モーア2は、平面視において機体中央側の回転ブレード21の回転軸心P1が、左右方向での横外方に位置する回転ブレード22の回転軸心P2よりも前方に位置するように配備されている。
このように、各回転ブレード21,22は、その回転軸心P1,P2の位置が左右方向の一直線上に並ぶ状態で設けられているのではなく、前後方向で少し位置ずれした状態に設けられている。このように各回転ブレード21,22の回転軸心P1,P2の位置を前後方向で少し位置ずれさせることにより、各回転ブレード21,22の先端回動軌跡同士の干渉は避けながら、その先端回動軌跡の通過跡を左右方向で少し重複する状態に配設することができる。
【0020】
つまり、各回転ブレード21,22の回転軸心P1,P2の位置を前後方向で位置ずれさせると、左右方向における各回転ブレード21,22の回転軸心P1,P2同士の間隔を、左右方向の一直線上に並べる場合よりも少し短くしても、各回転ブレード21,22の先端回動軌跡同士が重複しない状態で配設することができる。これにより、各回転ブレード21,22の先端回動軌跡同士の重複は避けながら、先端回動軌跡の通過跡同士は少し重複した状態とすることができる。
このように各回転ブレード21,22の先端回動軌跡の通過跡を少し重複させることで、隣接する回転ブレード21,22同士の間で刈り残しが発生しないように構成されている。
【0021】
図2に示すように、モーアデッキ20の右端部には、各回転ブレード21,22で刈り取られた刈草を排出するための排出口25が設けられている。この排出口25の横外側には、案内部材30が前後向きの軸心P3周りで上下に揺動可能に取り付けられている。
そして、刈り取った刈草をモーアデッキ20内から車外右後方に排出させるサイドディスチャージ形態で、案内部材30を下方へ倒して排出口25の横外側へ向けて延出し、回転ブレード21,22を回転させながら走行すると、モーアデッキ20内で刈り取った刈草をモーアデッキ20の右斜め後方に排出することができるように構成されている。
【0022】
〔案内部材の構造〕
案内部材30の詳細構造について説明する。
図3乃至
図6に示すように、案内部材30は、前後向きの軸心P3周りで上方に揺動した起立姿勢と、前後向きの軸心P3
(水平方向に沿う横軸心に相当する)周りで下方に揺動して走行面に沿って倒伏した倒伏姿勢とに姿勢変更可能に構成されている。
上記の案内部材30を起立させた姿勢では、排出口25周りでのメンテナンス作業等を行い易い。案内部材30を倒伏させた姿勢では、サイドディスチャージ形態における刈草の必要以上の広範囲への拡散を避けながら所定方向へ排出案内することができる。
【0023】
図1及び
図4に示すように、案内部材30は、モーアデッキ20の排出口25の開口形状に合わせて平板を折り曲げ加工することにより、側面視で下方側が開放されたチャンネル状に形成されている。
この案内部材30の平面視での形状は、
図2乃至
図4に示すように、倒伏姿勢における平面視での形状が内方側の接続部30aから外方側の放出部30bに向かって末広がり状に構成されており、刈草を所定範囲内で広角に放出できるように構成されている。
【0024】
案内部材30の上面側には、前後一対の連結アーム31,32が溶接固定されている。
前側の連結アーム31及び後側の連結アーム32には、それぞれ案内部材30の接続部30a側端縁よりも少しモーアデッキ20側へ延出されていて、その延出箇所に連結孔31a,32aが形成されている。
モーアデッキ20側にも前後一対の取付ブラケット26,27が立設されていて、この前後一対の取付ブラケット26,27には取付孔26a,27aが形成されている。そして、前後の取付ブラケット26,27に形成された取付孔26a,27aと、前後の連結アーム31,32に形成された連結孔31a,32aと、にわたって連結ロッド28が挿通され、モーアデッキ20に対して案内部材30が、連結ロッド28の軸心P3回りで上下揺動可能に取り付けられる。つまり、連結ロッド28の軸心P3が、案内部材30を前後向きの軸心P3周りで揺動作動させるための軸心となっている。
【0025】
前後の連結アーム31,32同士の間で、連結ロッド28の外周側にねじりバネ29(付勢機構に相当する)が外嵌され、ねじりバネ29の一端側がモーアデッキ20側に当接し、他端側が案内部材30に当接している。このねじりバネ29の付勢力によって案内部材30は常時下方へ押し付け付勢されている。この付勢作用、及び後述するロック機構のロック作用により、案内部材30が乗用型芝刈り機の走行等によって上下に動き難いように構成されている。
【0026】
モーアデッキ20側に設けられた前後一対の取付ブラケット26,27のうち、前方側の取付ブラケット26(被係止部材に相当する)には、前記取付孔26aとは別の係合孔26bが形成されている。
そして、その前方側の取付ブラケット26に連結される前方側の連結アーム31には、前記係合孔26bに対して挿抜可能なストッパーピン33(係止部材に相当する)が取り付けられている。
【0027】
つまり、
図3乃至
図6に示すように、倒伏姿勢にある案内部材30の前方側の連結アーム31の後面側には、平面視で前方側の連結アーム31に対向する側が開放されたチャンネル状のガイド枠34が設けられている。
このガイド枠34に、案内部材30の上面側に沿う水平方向のスライド軸部33aと、そのスライド軸部33aに交差する方向に屈曲した起立軸部33bとを備えるL字状のストッパーピン33が後方側から差し込まれている。
ストッパーピン33のうち、ガイド枠34内に挿入された部位のスライド軸部33aに、ガイド枠34の内部に装填されたコイル状の係止付勢バネ35が外嵌されている。ストッパーピン33には、スライド軸部33aを貫通するバネ受けピン36が設けられていて、このバネ受けピン36とガイド枠34の内面との間に挟持される状態で前記係止付勢バネ35が装着されている。
【0028】
前方側の連結アーム31には、ストッパーピン33のスライド軸部33aの軸端が嵌入する貫通孔31bが形成されている。この貫通孔31bは、
図6に示すように案内部材30が起立姿勢に操作されていると、取付ブラケット26の係合孔26bとは外れた位置にあり、案内部材30が倒伏姿勢に操作されると、
図5に示すように係合孔26bと合致する位置に設けられている。
したがって、案内部材30が倒伏姿勢に操作されると、係止付勢バネ35の作用により、スライド軸部33aが連結アーム31の貫通孔31b及び取付ブラケット26の係合孔26bを貫通して、
図5に示す倒伏姿勢でロックされる。
つまり、上記のストッパーピン33、係合孔26bを備えた取付ブラケット26、及び係止付勢バネ35が、案内部材30を倒伏姿勢で固定するためのロック機構を構成している。
【0029】
案内部材30のロックを解除するには、ストッパーピン33の起立軸部33bを把持して、スライド軸部33aの端部を取付ブラケット26の係合孔26bから抜き出せばよい。スライド軸部33aの端部が係合孔26bから抜き出された状態で、案内部材30を
図6に示すように起立姿勢に姿勢変更すると、ストッパーピン33のスライド軸部33aの端部は、係合孔26bから外れた位置で係止付勢バネ35の作用により取付ブラケット26に押し付けられた状態となる。
【0030】
しかし、この係止付勢バネ35で係合側へ付勢されたストッパーピン33と取付ブラケット26との当接による摩擦抵抗よりも、案内部材30を起立姿勢から倒伏姿勢側へ付勢するねじりバネ29の復帰付勢力が強く設定されている。このため、案内部材30から手を離して起立姿勢で支持している状態を解除すると、案内部材30は、案内部材30の自重とねじりバネ29の復帰付勢力によって倒伏姿勢側へ自動的に復帰する。そして、倒伏姿勢に達すると、係止付勢バネ35の作用により、スライド軸部33aが連結アーム31の貫通孔31b及び取付ブラケット26の係合孔26bを貫通して、倒伏姿勢でロックされた状態となる。
【0031】
[他の実施形態の1]
実施の形態では、案内部材30を前記倒伏姿勢側へ弾性付勢する付勢機構としてねじりバネ29を備えた構造のものを例示したが、この構造に限られるものではない。
例えば、モーアデッキ20と案内部材30とを、図示はしないが、引っ張りバネや押圧バネで、案内部材30を倒伏姿勢とする側へ付勢するなどの、適宜の構造を採用してもよい。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。
【0032】
[他の実施形態の2]
実施の形態では、ロック機構として、被係止部材に相当する係合孔26bを備えた取付ブラケット26,27がモーアデッキ20に設けられ、係止部材に相当するストッパーピン33が案内部材30側に設けられた構造のものを例示したが、この構造に限られるものではない。
例えば、被係止部材に相当する係合孔26bを備えた取付ブラケット26が案内部材30側に設けられ、係止部材に相当するストッパーピン33がモーアデッキ20に設けられた構造のものであっても差し支えない。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。