(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明によるスクリュー圧縮機の実施の形態を、図面を用いて例示説明する。本実施の形態は、本発明を給油式でツインロータ型の空気を圧縮するスクリュー圧縮機に適用した例である。
[第1の実施の形態]
第1の実施の形態によるスクリュー圧縮機の構成を
図1及び
図2を用いて説明する。
図1は、第1の実施の形態によるスクリュー圧縮機の縦断面図及びそのスクリュー圧縮機への潤滑油の供給を示す系統図、
図2は、
図1に示すスクリュー圧縮機をII−II矢視から見た横断面図である。
図1中、左側がスクリュー圧縮機の吸込側、右側が吐出側である。
図2中、太線の矢印は、スクリュー圧縮機の回転方向を表している。
【0012】
図1及び
図2において、スクリュー圧縮機1は、互いに噛み合って回転する雄ロータ(雄型のスクリューロータ)2及び雌ロータ(雌型のスクリューロータ)3と、雌雄両ロータ2、3を収容するケーシング4とを備える。雄ロータ2は、吸込側軸受6と吐出側軸受7、8とにより回転自在に支持されており、回転駆動源としてのモータ100に接続されている。雌ロータ3は、雄ロータ2と同様に、吸込側軸受(図示せず)と吐出側軸受(図示せず)とにより回転自在に支持されている。
【0013】
雄ロータ2は、螺旋状のローブ21aを複数(
図2では4つ)有するねじ状のロータ部21と、ロータ部21の軸方向(
図1の左右方向、
図2の紙面垂直方向)の両側端部にそれぞれ配置された吸込側(
図1では左側)のシャフト部22及び吐出側(
図1では右側)のシャフト部23とで構成されている。ロータ部21は、その軸方向の吐出側に、ケーシング4の内壁面に所定の間隙(以下、吐出端面間隙という)G1もって対向する吐出側端面21bを有している。吸込側のシャフト部22は、ケーシング4の外側に延出しており、例えば、モータ100のシャフト部と一体の構成である。吸込側のシャフト部22における吸込側軸受6よりもシャフト部22の先端側には、メカニカルシール9が取り付けられている。吐出側のシャフト部23は、段付きの軸部であり、吐出側軸受7、8が取り付けられる小径軸部25と、小径軸部25とロータ部21との間に位置し、小径軸部25よりも径の大きい大径軸部26とで構成されている。
【0014】
雌ロータ3は、螺旋状のローブ31aを複数(
図2では6つ)有するねじ状のロータ部31と、ロータ部31の軸方向(
図2の紙面垂直方向)の両側端部にそれぞれ配置された吸込側のシャフト部(図示せず)及び吐出側のシャフト部33とで構成されている。ロータ部31は、雄ロータ2のロータ部21と同様に、その軸方向の吐出側に、ケーシング4の内壁面に吐出端面間隙もって対向する吐出側端面31bを有している。吐出側のシャフト部33は、雄ロータ2の吐出側のシャフト部23と同様に、段付きの軸部であり、吐出側軸受(図示せず)が取り付けられる小径軸部35と、小径軸部35とロータ部31との間に位置し、小径軸部35よりも径の大きい大径軸部36とで構成されている。
【0015】
ケーシング4は、主ケーシング41と、主ケーシング41の吐出側(
図1では右側)に取り付けられる吐出側ケーシング42とを有している。
【0016】
主ケーシング41には、ボア46と呼ばれる一部重複する2つの略円筒状の空間が設けられており、ボア46の軸方向一方側(
図1では右側)は開口している。ボア46には、雄ロータ2及び雌ロータ3のロータ部21、31が収容される。主ケーシング41の外周部には、ボア46における開口側とは反対側の領域と主ケーシング41の外部とを連通する吸込口47が設けられている。主ケーシング41の軸方向の吸込側端部には、雄ロータ2及び雌ロータ3用の吸込側軸受6を保持する吸込側軸受室(雌ロータ3側は図示せず)48がそれぞれ設けられており、吸込側軸受室48の一方側(
図1では左側)が開口している。ボア46と吸込側軸受室48は、吸込側隔壁49により隔てられている。吸込側隔壁49には、雄ロータ2及び雌ロータ3の吸込側のシャフト部22が挿通される吸込側軸孔(雌ロータ3側は図示せず)49aがそれぞれ設けられている。各吸込側軸孔49aにはそれぞれ、雄ロータ2及び雌ロータ3の吸込側のシャフト部22が所定の間隙もって配置されている。
【0017】
主ケーシング41には、雄ロータ2及び雌ロータ3の両吸込側軸受室48の開口を閉塞する吸込側カバー43が取り付けられている。吸込側カバー43には、雄ロータ2の吸込側のシャフト部22が挿通されるカバー軸孔43aが設けられている。吸込側カバー43は、カバー軸孔43a側に、メカニカルシール9を配置するシール室43bを有している。
【0018】
吐出側ケーシング42は、主ケーシング41のボア46の開口を閉塞している。吐出側ケーシング42には、吐出側ケーシング42の外部とボア46とを連通させる吐出流路51が設けられている。吐出流路51は、吐出側ケーシング42のボア46側の端面において、所定の形状の吐出ポート51aを有している。吐出側ケーシング42におけるボア46側とは反対側の部分に、雄ロータ2及び雌ロータ3用の吐出側軸受7、8を保持する吐出側軸受室(雌ロータ3側は図示せず)52がそれぞれ設けられており、吐出側軸受室52の一方側(
図1では右側)が開口している。ボア46と吐出側軸受室52は、吐出側隔壁53により隔てられている。吐出側隔壁53には、雄ロータ2及び雌ロータ3の吐出側のシャフト部23、33が挿通される吐出側軸孔(雌ロータ3側は図示せず)53aがそれぞれ設けられている。各吐出側軸孔53aにはそれぞれ、雄ロータ2及び雌ロータ3の吐出側のシャフト部23、33の大径軸部26、36が所定の間隙(以下、吐出側軸孔間隙という)G2もって配置されている。吐出側ケーシング42には、雄ロータ2及び雌ロータ3の両吐出側軸受室52の開口を閉塞する吐出側カバー44が取り付けられている。
【0019】
吸込側カバー43には、吸込側カバー43の外部とシール室43b及び吸込側軸受室48とを連通させる吸込側軸受給油路61が設けられている。吸込側軸受給油路61は、スクリュー圧縮機1の外部から吸込側軸受6及びメカニカルシール9に潤滑油を供給可能とするものである。主ケーシング41には、吸込側軸受室48とボア46内の吸込圧力の領域とを連通させる吸込側油回収路62が設けられている。吸込側油回収路62は、吸込側軸受6及びメカニカルシール9を潤滑した潤滑油をボア46内に導いて回収するものである。
【0020】
吐出側ケーシング42には、吐出側ケーシング42の外部と吐出側軸孔53aとを連通させる吐出側軸受給油路63が設けられている。吐出側軸受給油路63は、スクリュー圧縮機1の外部から吐出側軸受7、8に潤滑油を供給可能とするものである。吐出側ケーシング42及び吐出側カバー44には、吐出側ケーシング42の吐出側軸受室52と主ケーシング41のボア46内の吸込圧力の領域とを連通させる吐出側油回収路64が設けられている。吐出側油回収路64は、吐出側軸受7、8を潤滑した潤滑油をボア46内に導いて回収するものである。
【0021】
主ケーシング41には、主ケーシング41の外部とボア46とを連通させる圧縮室給油路65が設けられている。圧縮室給油路65は、ボア46内の雌雄両ロータ2、3に潤滑油を供給するものである。
【0022】
吸込側軸受給油路61、吐出側軸受給油路63、及び圧縮室給油路65は、オイルセパレータ102に接続されている。これらの給油路61、63、65には、潤滑油供給源としてのオイルセパレータ102から潤滑油が供給される。
【0023】
上記のように構成されたスクリュー圧縮機1においては、雄ロータ2及び雌ロータ3の複数のローブ21a、31a(ロータ部21、31)とそれを取り囲むケーシング4の内壁面(具体的には、主ケーシング41のボア46の内壁面及び吐出側ケーシング42のボア46側の端面)とで複数の圧縮室Cが画成される。雄ロータ2がモータ100により駆動されて雌ロータ3を回転駆動すると、雌雄両ロータ2、3の回転の進行に伴い圧縮室Cが軸方向に移動しつつ圧縮室Cの容積が減少する。これにより、吸込口47を介して圧縮室C内に吸い込まれた作動流体としての空気が所定の圧力に達するまで圧縮され、その後、吐出流路51を介してオイルセパレータ102に吐出される。オイルセパレータ102では、圧縮空気に含まれる潤滑油と圧縮空気とが分離される。潤滑油が除去された圧縮空気は外部の圧縮空気消費機器(図示せず)に供給され、分離された潤滑油はオイルセパレータ102に貯留される。
【0024】
オイルセパレータ102に貯留された潤滑油は、オイルクーラ103で冷却されオイルフィルタ104で不純物を除去された後に、スクリュー圧縮機1に供給される。スクリュー圧縮機1への潤滑油の供給は、ポンプ等の動力源を用いることなく、オイルセパレータ102内に流入する圧縮空気の圧力により行うことが可能である。
【0025】
スクリュー圧縮機1に供給された潤滑油は、吸込側軸受給油路61を介してメカニカルシール9及び吸込側軸受6に供給され、メカニカルシール9及び吸込側軸受6を潤滑した後に吸込側油回収路62を介して圧縮室C内の吸込過程の領域に回収される。吐出側軸受7、8にも、吸込側軸受6と同様に、吐出側軸受給油路63及び吐出側軸孔53aを介して潤滑油が供給される。吐出側軸受7、8を潤滑した潤滑油は、吐出側油回収路64を介して圧縮室C内の吸込過程の領域に回収される。また、オイルセパレータ102の潤滑油が圧縮室給油路65を介して圧縮室C内に供給され、圧縮過程の領域の空気が冷却されると共に、隣接する圧縮室C間の間隙が封止される。圧縮室C内に回収された潤滑油は、圧縮空気と共に吐出流路51から吐出され、オイルセパレータ102に流入する。
【0026】
ところで、雌雄両ロータ2、3の外表面とケーシング4の内壁面の間には、接触による損傷を防ぐために、少なくとも数十〜数百μmの間隙が設けてられている。例えば上述したように、雌雄両ロータ2、3のロータ部21、31の吐出側端面21b、31bと吐出側ケーシング42のボア46側の端面との間には、吐出端面間隙G1が設けられている。また、雌雄両ロータ2、3の吐出側のシャフト部23、33の大径軸部26、36と吐出側ケーシング42の吐出側軸孔53aとの間には、吐出側軸孔間隙G2が設けられている。このため、圧縮室C内の圧縮された作動流体が圧力差によって、吐出端面間隙G1及び吐出側軸孔間隙G2を介して吐出側軸受室52に流出しようとする。そこで、本実施の形態によるスクリュー圧縮機1は、吐出側軸孔間隙G2から作動流体が漏洩することを封止する吐出側軸封部を更に備える。
【0027】
次に、第1の実施の形態によるスクリュー圧縮機の吐出側軸封部の構成を
図1、
図3及び
図4を用いて説明する。ここでは、雄ロータ側の吐出側軸封部の構成についてのみ説明するが、雌ロータ側の吐出側軸封部も同様な構成である。
図3は、
図1の符号Xで示すスクリュー圧縮機の吐出側軸封部の一部を拡大した縦断面図、
図4は
図3に示すスクリュー圧縮機の吐出側軸封部の一部をIV−IV矢視から見た断面図である。
図3中、左側がスクリュー圧縮機の吸込側、右側が吐出側である。なお、
図3及び
図4において、
図1及び
図2に示す符号と同符号のものは、同一部分であるので、その詳細な説明は省略する。
【0028】
図1及び
図3において、吐出側軸封部は、吐出側のシャフト部23の大径軸部26における吐出側軸孔53aの内壁面に対向する外周部に設けられた環状溝部71と、環状溝部71内に配置されたシールリング72と、吐出側ケーシング42の外部と吐出側軸孔53aとを連通させるように吐出側ケーシング42に設けられ、シールリング72の軸方向いずれか一方側(
図1及び
図3では左側又は右側)に流体を供給可能な軸封流体供給路とを備える。本実施の形態においては、軸封流体供給路として吐出側軸受給油路63が用いられている。すなわち、吐出側軸受給油路63は、スクリュー圧縮機1の外部から吐出側軸受7、8に潤滑油を供給する機能に加えて、スクリュー圧縮機1の外部からシールリング72に潤滑油(流体)を供給する機能も有している。
【0029】
環状溝部71は、
図3に示すように、吐出側のシャフト部23の大径軸部26の周方向に延在する底面76と、底面76から径方向に立ち上がるシャフト部基端側(
図3では左側)の第1の側壁面77及びシャフト部先端側(
図3では右側)の第2の側壁面78とで画成されている。環状溝部71は、例えば、断面形状が矩形の円環状である。
【0030】
シールリング72は、
図3及び
図4に示すように、円環状で、例えば、周方向の1箇所が分割された合い口72aを有しており、合い口72aを拡げることで環状溝部71に容易に装着できるように構成されている。シールリング72は、例えば、樹脂材料で成形されており、吐出側軸受給油路63を介して供給される潤滑油(流体)の熱により膨張し、合い口72aが当接して周方向に隙間のない円環状となるように構成されている。シールリング72は、その軸方向幅が環状溝部71の溝幅よりも小さくなるように設定されており、環状溝部71内において吐出側のシャフト部23の軸方向に移動可能となるように構成されている。シールリング72は、その軸方向いずれか一方側及び内周部に潤滑油(流体)の圧力を受けることで、その軸方向の他方側が環状溝部71のいずれか一方の側壁面77、78と摺動接触すると共に、その外周部が吐出側軸孔53aの内壁面と摺動接触して、吐出側軸孔間隙G2を封止するものである。シールリング72は、例えば、その断面形状が矩形となるように形成されており、その外面が内周面91、外周面92、軸方向の吐出側のシャフト部23の基端側(
図3では左側)の第1の側面93、軸方向の吐出側のシャフト部23の先端側(
図3では右側)の第2の側面94で構成されている。
【0031】
軸封流体供給路としての吐出側軸受給油路63は、その吐出側軸孔53a側の開口部63aがシールリング72よりも吐出側のシャフト部23の先端側(
図3では右側)に位置するように設けられており、シールリング72における軸方向のシャフト部23の先端側(第2の側面94側)に流体を供給するものである。本実施の形態においては、軸封流体供給路に供給される流体として、吐出側軸受7、8に供給する潤滑油が用いられている。吐出側軸受給油路63には、オイルセパレータ102から潤滑油(流体)が供給される。つまり、オイルセパレータ102は、吐出側軸受7、8用の潤滑油供給源として機能すると共に、シールリング72用の軸封流体供給源として機能する。吐出側軸受給油路63を介してシールリング72の第2の側面94側に供給される潤滑油(流体)の圧力は、シールリング72における軸方向のシャフト部23の基端側(第1の側面93側)に作用する圧力、すなわち吐出側軸孔間隙G2に流入する空気(作動流体)の圧力、よりも高くなるように設定されている。
【0032】
次に、第1の実施の形態によるスクリュー圧縮機の吐出側軸封部の作用を従来のスクリュー圧縮機の軸封部と比較して
図2、
図3、及び
図5を用いて説明する。
図5は、第1の実施の形態の比較例としての従来のスクリュー圧縮機の軸封部を示す説明図である。なお、
図5において、
図1〜
図4に示す符号と同符号のものは、同
様な部分であるので、その詳細な説明は省略する。
【0033】
上述のように構成したスクリュー圧縮機1では、複数の圧縮室Cが雄ロータ2及び雌ロータ3の回転に伴って軸方向に移動しつつ収縮することで、圧縮室C内の空気(作動流体)を圧縮する。このような圧縮原理のため、雄ロータ2及び雌ロータ3のロータ部21、31の吐出側端面21b、31b近傍における圧縮空気(作動流体)の圧力は、各圧縮室Cの回転方向(周方向)の位置に応じて異なっている。すなわち、ロータ部21、31の吐出側端面21b、31b近傍の圧縮空気には周方向に圧力分布が存在する。
【0034】
具体的な一例を挙げるならば、例えば
図2に示すように、吐出側端面21b、31b近傍における雄ロータ2と雌ロータ3が噛み合わない領域では、吐出ポート51aとは反対側(
図2では上側)の領域を起点として、二点鎖線の矢印Pの方向に向かうほど高圧の領域となる。また、吐出側端面21b、31b近傍において雄ロータ2と雌ロータ3の噛み合う領域では、雄ロータ2と雌ロータ3が理論上の3点で接触すると、上側の高圧の吐出空間Dsと下側の低圧の吸込空間Ssとが混在した状態となる。ただし、吐出側端面21b、31b近傍における雄ロータ2と雌ロータ3の噛み合い状態(接触状態)は、雄ロータ2及び雌ロータ3の回転位置に応じて変化するので、雄ロータ2と雌ロータ3の噛み合う領域の圧力分布も、雄ロータ2及び雌ロータ3の回転位置に応じて上記の場合とは異なる。
【0035】
このように、ロータ部21、31の吐出側端面21b、31b近傍の圧縮空気には周方向に圧力分布が存在する。このため、この空気の周方向の圧力分布に起因して、複数の圧縮室Cから吐出側軸孔間隙G2に漏洩する圧縮空気にも周方向の圧力分布が生じる。
【0036】
従来のスクリュー圧縮機110の軸封部においては、
図5に示すように、吐出側のシャフト部23に環状溝部111が設けられており、この環状溝部111内にシールリング112が配置されている。この従来の軸封部は、圧縮室Cから吐出側軸孔間隙G2に漏洩する圧縮空気の圧力を、シールリング112の内周面121及びロータ部21側の第1の側面123(
図5では左側面)に作用させることで、シールリング112の外周面122を吐出側軸孔53aに押し付けると共に、シールリング112の吐出側軸受室52側の第2の側面124(
図5では右側面)を環状溝部111の両側壁面117、118のうち吐出側軸受室52側の側壁面118(
図5では右側壁面)に押し付けて吐出側軸孔間隙G2を封止しようとするものである。
【0037】
しかし、吐出側軸孔間隙G2に漏洩する圧縮空気には周方向の圧力分布があるので、シールリング112の第1の側面123に作用する圧縮空気の圧力は、周方向において一様ではなく、最小圧力(P
min)から最大圧力(P
max)までの分布が生じる。例えば
図5に示すように、シールリング112の第1の側面123の下側の領域には最大圧力(P
max)が作用し、その反対側の上側の領域には最小圧力(P
min)が作用する。それに対して、シールリング112の第2の側面124には、吐出側軸受室52と略同じ圧力(P
b)が周方向に一様に作用する。漏洩する圧縮空気の最小圧力(P
min)は、スクリュー圧縮機110の運転条件によっては、吐出側軸受室52の圧力(P
b)よりも低いことがある。
【0038】
このような場合、シールリング112の第1の側面123のうち、最大圧力(P
max)近傍の圧力が作用する部分においては吐出側軸受室52側(
図5では右側)に向かって力を受ける。それに対して、最小圧力(P
min)近傍の圧力が作用する部分においては、ロータ部21側(
図5では左側)に向かって力を受ける。このため、シールリング112が環状溝部111内で傾き、シールリング112の第2の側面124と環状溝部111の側壁面118との接触面積及びシールリング112の外周面122と吐出側軸孔53aとの接触面積が著しく減少する懸念がある。この場合、シールリング112の軸封性能が著しく低下する。
【0039】
それに対して、本実施の形態においては、
図3に示すように、吐出側軸孔間隙G2に漏洩する圧縮空気の最大圧力(P
max)よりも大きな圧力(P
oil)の潤滑油を、吐出側軸受給油路(軸封流体供給路)63を介して吐出側軸孔53a(吐出側軸孔間隙G2)に供給する。これにより、シールリング72の内周面91及び吐出側軸受給油路63に近い側の第2の側面94(
図3の右側面)の周方向全域が相対的に高圧の潤滑油の圧力(P
oil)を受ける。したがって、シールリング72は、圧縮空気の圧力に抗して、シャフト部23の基端方向(
図3では左方向)に力を受け、その第1の側面93(
図3では左側面)が環状溝部71の第1の側壁面77に押し付けられると共に、シールリング72の外周面92が吐出側軸孔53aの内壁面に押し付けられる。また、シールリング72は、潤滑油により加熱されて熱膨張する。これにより、シールリング72の合い口72a(
図4参照)が所定の設定温度(例えば、70℃)において接触する。
【0040】
このように、シールリング72の第2の側面94の周方向全域に圧縮空気の最大圧力(P
max)よりも高い圧力(P
oil)が常に作用するので、シールリング72が環状溝部71内で傾くことを防ぐことができる。このため、シールリング72の第1の側面93と環状溝部71の第1の側壁面77、及び、シールリング72の外周面92と吐出側軸孔53aとが確実に摺動接触する。また、シールリング72は、熱膨張で合い口72aの隙間がなくなる。したがって、吐出側軸孔間隙G2における圧縮空気の漏洩が遮断される。このため、圧縮室Cから吐出側軸受室52(
図1参照)に漏洩する圧縮空気が著しく減少し、スクリュー圧縮機1の省エネルギ化が可能となる。
【0041】
なお、吐出側軸受給油路63を介して吐出側軸孔間隙G2に供給された潤滑油は、シールリング72の第2の側面94に圧力を加えた後、吐出側軸受7、8を潤滑する。その後、潤滑油は、吐出側油回収路64を介して吸込過程にある圧縮室Cに流入し、圧縮空気と共に吐出流路51から外部に吐出される。
【0042】
上述したように、第1の実施の形態によれば、吐出側軸受給油路(軸封流体供給路)63を介してシールリング72の第2の側面94側(軸方向一方側)に、その第1の側面93(軸方向他方側)に作用する圧縮空気(作動流体)の圧力(P
max)よりも高い圧力(P
oil)の流体を供給するので、吐出側軸孔間隙G2に漏洩する圧縮空気(作動流体)に周方向の圧力分布があっても、シールリング72が吐出側軸孔53aの内壁面及び環状溝部71の側壁面77に一様に押し付けられて傾くことはない。したがって、吐出側軸孔間隙G2を確実に封止することができ、高い軸封性能を発揮することができる。
【0043】
また、本実施の形態によれば、軸封流体供給路が吐出側軸受7、8に潤滑油を供給する吐出側軸受給油路63の機能を兼ねているので、軸封流体供給路と吐出側軸受給油路63を個別に設ける構成よりも構造の簡素化を図ることができる。
【0044】
なお、上述の説明では、雄ロータ2の吐出側軸封部の作用及び効果を示したが、雌ロータ3の吐出側軸封部の作用及び効果についても同様である。
【0045】
[第1の実施の形態の第1変形例]
次に、本発明を適用したスクリュー圧縮機の第1の実施の形態の第1変形例を、
図6を用いて例示説明する。
図6は、第1の実施の形態の第1変形例によるスクリュー圧縮機の吐出側軸封部の一部を拡大した縦断面図である。
図6中、左側がスクリュー圧縮機の吸込側、右側が吐出側である。なお、
図6において、
図1〜
図5に示す符号と同符号のものは、同一部分であるので、その詳細な説明は省略する。
【0046】
図6に示す第1の実施の形態の第1変形例によるスクリュー圧縮機1Aは、大略第1の実施の形態と同様の構成であるが、吐出側軸封部の環状溝部71Aの形状及び軸封流体供給路としての吐出側軸受給油路63Aの吐出側軸孔53a側の開口部63bの位置が異なる。
【0047】
具体的には、環状溝部71Aの吐出側軸受給油路63Aに近い側の第2の側壁面78Aは、その溝開口側の部分が底面76側の部分に対して吐出側軸受給油路63A側に傾斜している。換言すると、第2の側壁面78Aは、底面76から径方向に立ち上がる底面側の垂直面80と、垂直面80に対して吐出側軸受給油路63A側に傾斜する溝開口側の傾斜面81とで構成されている。傾斜面81は、吐出側軸孔53aの内壁面と共に潤滑油(流体)を貯留可能な流体貯留部Fsを形成している。垂直面80の最外径又は傾斜面81の最内径(do)は、シールリング72の内径(ds)よりも大きくなるように設定されている。傾斜面81は、第1の実施の形態によるスクリュー圧縮機1の環状溝部71の第2の側壁面78の溝開口部を面取りすることで容易に成形可能である。
【0048】
吐出側軸受給油路63Aは、その開口部63bの軸方向位置が環状溝部71Aの傾斜面81の配置位置となるように設定されている。つまり、吐出側軸受給油路63Aは、流体貯留部Fsに開口し連通している。
【0049】
ところで、第1の実施の形態によるスクリュー圧縮機1(
図1及び
図3参照)においては、スクリュー圧縮機1からオイルセパレータ102に吐出された圧縮空気(作動流体)の圧力により、潤滑油をスクリュー圧縮機1に供給する。この場合、スクリュー圧縮機1の始動時では、先ず、圧縮室C内に吸い込まれた空気(作動流体)が圧縮されてその圧力が上昇する。その後、スクリュー圧縮機1から吐出された圧縮空気がオイルセパレータ102内に流入し、オイルセパレータ102内の圧力が上昇する。したがって、スクリュー圧縮機1の始動時等では、吐出側軸孔間隙G2に供給される潤滑油の圧力(P
oil)よりも吐出側軸孔間隙G2内の空気の最大圧力(P
max)の方が短時間で増加する。つまり、始動時等では、吐出側軸孔間隙G2内の圧縮空気の最大圧力(P
max)が一時的に潤滑油の圧力(P
oil)よりも高い状態となる。
【0050】
このとき、吐出側軸孔間隙G2内の圧縮空気の圧力により、シールリング72が環状溝部71内で吐出側軸受給油路63側に移動し、その第2の側面94が環状溝部71の第2の側壁面78に押し付けられる可能性がある。この場合、吐出側軸孔間隙G2の潤滑油の圧力(P
oil)がその後圧縮空気の最大圧力(P
max)より大きくなっても、シールリング72が環状溝部71の第1の側壁面77側に押し返されない懸念がある。なぜなら、吐出側軸孔間隙G2の大きさは数十〜数百μmとシールリング72の側面93、94の幅(例えば、数mm)に比べて著しく小さく、シールリング72の吐出側軸受給油路63側の軸方向側面の受圧面積が小さくなるからである。この状況においても、吐出側軸孔間隙G2の封止は実現可能である。しかし、環状溝部71と摺動接触するシールリング72の側面93、94が運転条件によって変わるので、シールリング72の摩耗による寿命の予測が困難になるという課題が生じる。
【0051】
また、吸込側が上側に吐出側が下側になるようにスクリュー圧縮機1が縦置きに設置される場合、シールリング72は、スクリュー圧縮機1の始動時、自身の自重により環状溝部71の第2の側壁面78に接触した状態となる。したがって、この場合も、上述した問題点がある。
【0052】
それに対して、
図6に示す本変形例においては、スクリュー圧縮機1Aの始動時等に、シールリング72の第2の側面94が環状溝部71Aの第2の側壁面78Aに接触した場合でも、環状溝部71Aの吐出側軸受給油路63A側の溝開口側の領域に流体貯留部Fsを設けた分、シールリング72の吐出側軸受給油路63A側の第2の側面94の受圧面積が吐出側軸孔間隙G2の断面積に対して十分に大きい。したがって、供給される潤滑油の圧力(P
oil)が吐出側軸孔間隙G2における空気の最大圧力(P
max)よりも大きくなれば、シールリング72は環状溝部71A内でロータ部21側に押し返され、その第1の側面93が環状溝部71Aの第1の側壁面77に摺動接触する。したがって、シールリング72の第1の側面93が常に摩耗するので、シールリング72の寿命予測が容易になる。
【0053】
また、本変形例においては、環状溝部71Aの第2の側壁面78Aの傾斜面81の最内径(do)をシールリング72の内径(ds)よりも大きくなるように設定したので、シールリング72が環状溝部71A内で吐出側軸受給油路63A側に移動した場合、シールリング72の第2の側面94が環状溝部71Aの第2の側壁面78Aの垂直面80に確実に接触する。したがって、シールリング72が環状溝部71Aの傾斜面81及び吐出側軸孔53aに挟まれたり噛み込まれたりすることがないので、シールリング72の噛込み等による損傷、シールリング72の噛込み等に起因したシャフト部23の損傷、及び噛込み等によるシールリング72の破損に起因した吐出側軸受7、8(
図1参照)の損傷を防止することができる。
【0054】
上述したように、第1の実施の形態の第1変形例によれば、第1の実施の形態と同様の効果に加えて、更に以下の効果を得ることができる。
本変形例によれば、環状溝部71Aの吐出側軸受給油路63Aに近い側の第2の側壁面78Aの溝開口側の部分(傾斜面81)を、第2の側壁面78Aの底面側の部分(垂直面80)に対して吐出側軸受給油路63Aの側に位置させ、傾斜面81と吐出側軸孔53aとにより流体貯留部Fsを形成させたので、シールリング72が吐出側軸受給油路63A側に移動した場合でも、シールリング72の第2の側面94の受圧面積を吐出側軸孔間隙G2の断面積よりも大きくなる。したがって、シールリング72を環状溝部71Aの第1の側壁面77に押し返して摺動接触させることが可能である。この結果、シールリング72の第1の側面93が常に摩耗するので、シールリング72の寿命予測が容易になる。
【0055】
また、本変形例によれば、軸封流体供給路としての吐出側軸受給油路63Aを流体貯留部Fsに開口するように構成したので、吐出側軸孔間隙G2の狭い空間を介さずにシールリング72の第2の側面94に流体を供給することができ、シールリング72に供給する流体の圧力損失を低減することができる。
【0056】
[第1の実施の形態の第2変形例]
次に、本発明を適用したスクリュー圧縮機の第1の実施の形態の第2変形例を、
図7及び
図8を用いて例示説明する。
図7は、第1の実施の形態の第2変形例によるスクリュー圧縮機の縦断面図、
図8は
図7の符号Yで示すスクリュー圧縮機の吐出側軸封部の一部を拡大した縦断面図である。
図7及び
図8中、左側がスクリュー圧縮機の吸込側、右側が吐出側である。なお、
図7及び
図8において、
図1〜
図6に示す符号と同符号のものは、同一部分であるので、その詳細な説明は省略する。
【0057】
図7及び
図8に示す第1の実施の形態の第2変形例によるスクリュー圧縮機1Bは、大略第1の実施の形態と同様の構成であるが、吐出側軸封部の環状溝部71Bの設置位置が異なる。具体的には、環状溝部71Bは、シャフト部23の大径軸部26の最も基端側の部分に設けられており、ロータ部21側の第1の側壁面がロータ部21の吐出側端面21bにより構成されている。
【0058】
第1の実施の形態(
図1及び
図3参照)においては、吐出側軸孔間隙G2における圧縮空気(作動流体)の圧力がシールリング72の第1の側面93に作用する。それに対して、本変形例においては、
図8に示すように、吐出端面間隙G1に漏洩した圧縮空気の圧力がシールリング72の外周面92に作用する。このような場合でも、第1の実施の形態の場合と同様に、シールリング72の内周面91及び第2の側面94に、圧縮空気の最高圧力(P
max)よりも高圧の潤滑油(流体)の圧力(P
oil)が周方向に一様に作用する。このため、吐出端面間隙G1に漏洩した圧縮空気の圧力に抗して、シールリング72の外周面92及び第1の側面93がそれぞれ吐出側軸孔53a及びロータ部21の吐出側端面21bに押し付けられる。これにより、シールリング72の第1の側面93とロータ部21の吐出側端面21b、及び、シールリング72の外周面92と吐出側軸孔53aとが確実に摺動接触するので、圧縮空気の吐出側軸孔間隙G2からの漏洩が遮断される。
【0059】
また、第1の実施の形態においては、シールリング72の第1の側面93のうち、外周側先端部分を除く領域が環状溝部71の第1の側壁面77に摺動接触する。それに対して、本変形例においては、シールリング72の第1の側面93の全面がロータ部21の吐出側端面21bと摺動接触する。したがって、シールリング72の偏摩耗が防止され、シールリング72の長寿命化の実現が可能となる。
【0060】
上述したように、第1の実施の形態の第2変形例によれば、第1の実施の形態と同様の効果に加えて、更に以下の効果を得ることができる
。本実施の形態によれば、ロータ部21の吐出側端面21bがシールリング72と摺動接触する環状溝部71の側壁面を構成するので、シールリング72の偏摩耗を防ぎ、シールリング72の長寿命化を図ることができる。
【0061】
また、本実施の形態によれば、ロータ部21の吐出側端面21bがシールリング72と摺動接触する環状溝部71の側壁面を構成するので、吐出端面間隙G1の領域が、シールリング72と接触する分、縮小する。したがって、吐出端面間隙G1を介した圧縮室C間の圧縮空気の漏洩を抑制することができる。
【0062】
さらに、本実施の形態によれば、シールリング72をロータ部21の吐出側端面21bに摺動接触させるので、シールリング72の外周面92に吐出端面間隙G1の圧縮空気(作動流体)の圧力が作用する一方、内周面91に吐出端面間隙G1の圧縮空気の最高圧力(P
max)よりも高圧の潤滑油(流体)の圧力(P
oil)が作用する。このため、相対的に高圧の潤滑油がロータ部21の吐出側端面21bに沿って吐出端面間隙G1側に漏出しやすく、シールリング72の摩耗粉が高圧の潤滑油と共に吐出端面間隙G1を介して圧縮室C側に流入する。したがって、シールリング72の摩耗粉の吐出側軸受7、8への混入を防止でき、吐出側軸受7、8の短寿命化を引き起こす懸念がない。
【0063】
[第2の実施の形態]
次に、本発明を適用したスクリュー圧縮機の第2の実施の形態を、
図9及び
図10を用いて例示説明する。
図9は、第2の実施の形態によるスクリュー圧縮機の縦断面図、
図10は
図9の符号Zで示すスクリュー圧縮機の吐出側軸封部の一部を拡大した縦断面図である。
図9及び
図10中、左側がスクリュー圧縮機の吸込側、右側が吐出側である。なお、
図9及び
図10において、
図1〜
図8に示す符号と同符号のものは、同一部分であるので、その詳細な説明は省略する。
【0064】
図9及び
図10に示す第2の実施の形態によるスクリュー圧縮機1Cが第1の実施の形態と異なる点は、吐出側軸受給油路63とは別に軸封流体供給路73を新たに設けたこと、及び、シールリング72に供給した流体を回収する軸封流体回収路74を新たに設けたことである。
【0065】
具体的には、軸封流体供給路73は、吐出側ケーシング42の外部と吐出側軸孔53aとを連通させるように吐出側ケーシング42に設けられている。軸封流体供給路73の吐出側軸孔53a側の開口部73aは、シールリング72よりも吐出側のシャフト部23の基端側(
図9及び
図10では左側)に位置するように設けられている。軸封流体供給路73は、シールリング72における軸方向のシャフト部23の基端側(第1の側面93側)に流体を供給するものである。軸封流体供給路73を介してシールリング72の第1の側面93側に供給される流体の圧力(P
oil2)は、シールリング72における軸方向のシャフト部23の
先端側(第2の側面94側)に作用する圧力、すなわち吐出側軸受給油路63を介して吐出側軸孔間隙G2に供給される吐出側軸受7、8用の潤滑油の圧力(P
oil1)、よりも高くなるように設定されている。
【0066】
軸封流体供給路73には、例えば、軸封流体供給源としてのオイルセパレータ102から、流体としての潤滑油が供給される。この場合、例えば、吐出側軸受給油路63又は吐出側軸受給油路63に接続される潤滑油系統に絞りや減圧弁を設けることで、軸封流体供給路73を介して供給される潤滑油と吐出側軸受給油路63を介して供給される潤滑油との圧力差を確保する。
【0067】
軸封流体回収路74は、吐出側軸孔53aに連通するように吐出側ケーシング42に設けられている。軸封流体回収路74の吐出側軸孔53a側の開口部74aは、軸封流体供給路73の開口部73aよりもシャフト部23の基端側(
図9及び
図10では左側)に位置するように設けられている。
【0068】
本実施の形態においては、吐出側軸受給油路63を介して供給した潤滑油の圧力(P
oil1)よりも大きな圧力(P
oil2)の潤滑油を、軸封流体供給路73を介して吐出側軸孔間隙G2に供給する。これにより、シールリング72の内周面91及び軸封流体供給路73に近い側の第1の側面93(
図9及び
図10では左側面)の周方向全域が相対的に高圧の潤滑油の圧力(P
oil2)を受ける。したがって、シールリング72は、吐出側軸受7、8用の潤滑油の圧力(P
oil1)に抗して、シャフト部23の先端方向(
図9及び
図10では右方向)に力を受け、その第2の側面94(
図9及び
図10では右側面)が環状溝部71の第2の側壁面78に押し付けられると共に、その外周面92が吐出側軸孔53aの内壁面に押し付けられる。
【0069】
このように、シールリング72の軸封流体供給路73側の第1の側面93の周方向全域に常に吐出側軸受7、8用の潤滑油の圧力(P
oil1)よりも高い圧力(P
oil2)が作用するので、吐出側軸孔間隙G2に流入する圧縮空気に周方向の圧力分布があっても、シールリング72が環状溝部71内で傾くことを防止することができる。このため、シールリング72の第2の側面94と環状溝部71の第2の側壁面78、及び、シールリング72の外周面92と吐出側軸孔53aとが確実に摺動接触する。また、シールリング72は、第1の実施の形態の場合と同様に、熱膨張により合い口72aの隙間がなくなる。したがって、吐出側軸孔間隙G2における作動流体(圧縮空気)の漏洩が遮断されるので、圧縮室Cから吐出側軸受室52に漏洩する圧縮空気が著しく減少し、スクリュー圧縮機1Cの省エネルギ化が可能となる。
【0070】
軸封流体供給路73を介して吐出側軸孔間隙G2に供給された潤滑油は、シールリング72の軸封流体供給路73側の第1の側面93に圧力を加えた後、軸封流体回収路74に吸い込まれる。その後、軸封流体回収路74の潤滑油は、吐出側油回収路64を介して吸込過程の圧縮室Cに流入し、圧縮空気と共に吐出流路51から外部に吐出される。
【0071】
上述したように、第2の実施の形態によれば、軸封流体供給路73を介してシールリング72の第1の側面93側(軸方向一方側)に、その第2の側面94(軸方向他方側)に作用する吐出側軸受7、8用の潤滑油の圧力(P
oil1)よりも高い圧力(P
oil2)の潤滑油(流体)を供給するので、吐出側軸孔間隙G2に漏洩する圧縮空気(作動流体)に周方向の圧力分布があっても、シールリング72が吐出側軸孔53aの内壁面及び環状溝部71の第2の側壁面78に一様に押し付けられて傾くことはない。したがって、吐出側軸孔間隙G2を確実に封止することができ、高い軸封性能を発揮することができる。
【0072】
また、本実施の形態によれば、軸封流体供給路73の開口部73aをシールリング72よりも吐出側のシャフト部23の基端側に設けたので、シールリング72の第1の側面93側(ロータ部21側)が、軸封流体供給路73を介して供給された相対的に高圧の潤滑油(流体)の圧力及び吐出側軸孔間隙G2に漏洩する空気(作動流体)の圧力を受ける。このため、スクリュー圧縮機1の始動時や定格時においても、シールリング72の第2の側面94が常に環状溝部71に摺動接触する。つまり、環状溝部71と摺動接触するシールリング72の側
面94がスクリュー圧縮機1Cの運転条件によって変わらないので、シールリング72の摩耗による寿命の予測が容易である。
【0073】
さらに、本実施の形態によれば、軸封流体供給路73を介して吐出側軸孔間隙G2に供給した相対的に高圧の潤滑油(流体)を軸封流体回収路74により回収するので、吐出側軸孔間隙G2から吐出端面間隙G1に潤滑油(流体)が漏出することを抑制することができる。このため、吐出端面間隙G1に漏出した潤滑油(流体)に起因する攪拌動力を低減することができる。
【0074】
また、本実施の形態によれば、吐出側軸受給油路63を介して供給された潤滑油の圧力(P
oil1)よりも大きな圧力(P
oil2)の潤滑油を吐出側軸孔間隙G2に供給することにより、吐出側軸孔間隙G2を封止することができるので、吐出側軸孔間隙G2に漏洩する圧縮空気(作動流体)の最高圧力よりも低い圧力の潤滑油(流体)を供給しても、軸封が可能である。したがって、軸封流体供給路73への流体の供給圧を、第1の実施の形態及びその変形例の場合よりも低くすることも可能である。
【0075】
[その他の実施の形態]
なお、本発明は、上述した実施の形態に限られるものではなく、様々な変形例が含まれる。上記した実施形態は本発明をわかり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。すなわち、ある実施形態の構成の一部を他の実施の形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施の形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることも可能である。
【0076】
例えば、上述した実施の形態においては、空気を圧縮するスクリュー圧縮機1、1A、1B、1Cを例に説明したが、アンモニアやCO2等の冷媒を圧縮するスクリュー圧縮機に本発明を適用することができる。また、給油式のスクリュー圧縮機1、1A、1B、1Cを例に説明したが、水が供給される水潤滑式のスクリュー圧縮機にも本発明を適用することができる。また、ツインロータ型のスクリュー圧縮機1、1A、1B、1Cを例に説明したが、シングルロータ型やトリプルロータ型等のツインロータ型以外のスクリュー圧縮機にも本発明を適用することができる。なお、シングルロータ型のスクリュー圧縮機では、スクリューロータのロータ部は、ゲートロータの歯と噛み合う螺旋状の溝を複数有しており、ねじ状である。
【0077】
また、上述した実施の形態においては、シールリング72の断面形状が矩形である例を示したが、シールリングの外周部及び軸方向いずれか一方側が吐出側軸孔53a及び環状溝部71、71Aの側壁面に摺動接触して吐出側軸孔間隙G2を封止する形状であれば任意である。例えば、シールリング72の側面や外周面がある曲率を有する面で構成したり、窪みや溝等を設けた凹凸状で構成したりすることも可能である。
【0078】
なお、上述した実施の形態においては、軸封流体供給路を介してシールリング72に供給する流体として吐出側軸受7、8に供給する潤滑油を用いた例を示したが、スクリュー圧縮機の形式や条件に応じて、水等の液体や計装空気等の気体の使用も可能である。ただし、この場合、吐出側軸受7、8の潤滑油を供給する潤滑油供給路と別に軸封流体供給路を設ける必要がある。
【0079】
また、上述した実施の形態においては、軸封流体供給源としてオイルセパレータ102を用いる例を示したが、軸封流体供給源として、オイルセパレータ102以外の任意の供給源を用いることが可能である。
【0080】
また、上述した第1の実施の形態の第1の変形例においては、環状溝部71Aの吐出側軸受給油路63Aに近い側の第2の側壁面78Aを、底面側の垂直面80と溝開口側の傾斜面81とで構成した例を示した。しかし、第2の側壁面78Aの溝開口側の部分は、垂直面80に対して吐出側軸受給油路(軸封流体供給路)63A側に位置し、吐出側軸孔53aの内壁面と共に流体貯留部Fsを形成する貯留部形成面であれば良い。たとえば、
図6の二点鎖線で示す第2の側壁面の溝開口側の部分は、傾斜面ではなく、階段状の貯留部形成面81Dである。