【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の態様では、本発明は、薬物送達デバイス用使い捨てカートリッジに関する。カートリッジは、薬物送達デバイスに解放可能に取り付けることができ、薬物送達デバイスにより投薬予定の液体薬剤を含む。一般的に、使い捨てカートリッジは、蠕動ポンプなどの注射デバイスに解放可能に連結されるように構成され適用される。カートリッジは、液体薬剤を収容するための可撓性バッグを含む。可撓性バッグは、側壁と、側壁に隣接して位置する開口部とを含む。カートリッジはソケットをさらに含み、ソケットは、カートリッジ流体カップリングと流体連通する流体チャネルを有する。ソケットは、可撓性バッグの開口部内へ延びる。一般的に、ソケットは、可撓性バッグの開口部を閉じて封止する。言い換えると、剛性ソケットは、可撓性バッグのマウントおよびベースを提供して、可撓性バッグをカートリッジに明確に組み付ける、または組み入れることができるようにし、かつカートリッジを使い捨て注射器の注射器流体カップリングまたは薬物送達デバイスの別の流体移送部品に明確かつ正確に連結できるようにする。特に、カートリッジの剛性ハウジングを用いると、カートリッジを薬物送達デバイスに明確かつ容易で直感的に組み付けることができる。
【0013】
さらに、使い捨てカートリッジはハウジングを含み、ハウジングは、可撓性バッグの少なくとも一部を覆い、可撓性バッグを取り付けたソケットを受けるためのレセプタクルを有する。ソケットを受けるハウジングを用いると、可撓性バッグの側壁は、ソケットとレセプタクルとの間に固着される。ハウジングとソケットとの相互係合により、可撓性バッグをソケットおよびハウジングにしっかりと取り付けて固着することができる。一般的に、開口部に隣接する可撓性バッグの側壁は、カートリッジのハウジングとソケットとの間で押し潰され締め付けられる。このようにして、可撓性バッグを封止することができる。加えて、可撓性バッグをソケットおよびハウジングの配置に取り付けて固着することができる。
【0014】
可撓性バッグの側壁をソケットと周囲のレセプタクルとの間に配置して固着することにより、完全に機械的に封止を実行することができる。接着剤またはある種の溶着手順を利用する必要がなく、効果的に封止するために可撓性バッグに熱を加える必要もない。このようにして、熱エネルギーの印加または接着剤もしくは封止剤の使用を避けることができる。熱エネルギー付与または接着剤もしくは封止剤の使用により生じ得る潜在的な悪影響をなくすことができる。実際には、使い捨てカートリッジ内にある薬剤の質、およびしたがって患者の安全性を強化し向上させることができる。さらに、完全に機械的な封止と、可撓性バッグ、ソケット、およびハウジングのそれぞれの機械的な係合とを実行することにより、使い捨てカートリッジの製造および組立プロセスが簡略化され、より費用効率が高くなり得る。
【0015】
実施形態によれば、可撓性バッグは、ソケットの外向き部分とハウジングの内向き部分との間に封止して装着される。一般的に、ソケットは円筒形であってよく、可撓性バッグ内へ延び、かつハウジングの対応形状の内向き部分に少なくとも部分的に係合するための周方向外向き面または外向き部分を有する前面を特色としてもよい。結果として、ハウジングも略円筒形であってよく、一般的に、ソケットの外向き部分に一致し嵌合する内向き側壁部分を特色とする。ソケットの外向き部分およびハウジングの対応形状の内向き部分は、円形横断面であり、したがって厳密な円筒形であってよい。
【0016】
ソケットの外向き部分およびハウジングの内向き部分が、長円形または楕円形横断面を特色とすることも考えられる。正方形もしくは矩形構造または平円形または平長円形横断面などの他の幾何形状も考えられ、本発明の範囲内に含まれる。相互に対応する外向きおよび内向き部分または面をソケットとハウジングとに設けることにより、可撓性バッグがソケットとハウジングとの間で液密に押し潰される。ソケットおよびハウジングは略剛性または硬質の材料であるため、長期にわたる漏れ防止封止と、ソケットおよび/またはハウジングに対する可撓性バッグの明確な取付けとを行うことができる。
【0017】
ソケットおよび/またはレセプタクルまたはハウジングの特定の横断面から独立して、可撓性バッグ、特にバッグの開口部に隣接するバッグの縁を、ソケットの半径方向外向き部分と、ハウジング、特にそのレセプタクルの対応形状の、または協働する半径方向内向き部分との間で液密に押し潰すことができる。この文脈では、半径方向は、可撓性バッグの開口部の横断面の仮想面の法線に垂直に延びる。したがって、半径方向は、バッグの開口部の横断面により画成される面にあるか、またはこの面に平行に延びる。
【0018】
さらなる実施形態によれば、ソケットは、対応形状の封止リングを受けるための環状溝を含む。環状溝は、円形または長円形またはさらには矩形であってよく、可撓性バッグの側壁の内向き部分側を向き、さらにハウジングの内向き部分側を向いたソケットの外向き部分の周り全体に延びる。一般的に天然ゴムまたは合成ゴムなどのエラストマー材料で作られる封止リングは、ある種のOリングを含んでもよい。封止リングは、ソケットの環状溝に組み入れられるように構成され適用される。弾性変形可能な封止リングを用いることにより、可撓性バッグ、ソケット、およびハウジングの間に改良された封止を得ることができる。加えて、封止リングは、ソケットとハウジングとの相互連結を支えて強化することもできる。封止リングを用いることにより、ソケットとハウジングとを分解するのに必要な引離し力(pull−off force)を大きくすることができる。
【0019】
一般に、ソケットとハウジングとの機械的連結および相互作用を実行する様々な異なる方法がある。ソケットとハウジングとがねじ係合することが一般に考えられる。さらなる実施形態によれば、ハウジングはソケットに圧入される。したがって、締付けにより、または力閉鎖(force closure)により、ハウジングとソケットとを相互に取り付けることができる。一般的な実施形態では、相互に係合するソケットの外向き部分とハウジングの内向き部分とが、圧入相互係合を強化するようにやや円錐形状を含んでもよい。圧入係合は、特に容易に実行することができ、ソケットとハウジングとの、かなり直感的でわかりやすい解放可能な組立てを支える。
【0020】
さらなる実施形態によれば、可撓性バッグは、ハウジングに係合する封止リングを用いることにより、ハウジングに封止して圧入される。一般的に、ソケットの環状溝に取り付けられた封止リングは、可撓性バッグ内に位置する。ソケットとハウジングとの相互の組付け前の初期構成では、封止リングの外径または外寸が、ハウジングの内向き側壁の内径または内側横断面よりもわずかに大きい。その後、封止リングの圧縮および可撓性変形により、ハウジングをソケット上に嵌めることができ、これにより、ソケット、ハウジング、封止リング、およびこれらの間に位置する可撓性バッグを、漏れを防止し封止して締め付ける。
【0021】
封止リングを有する環状溝がハウジングの内向き部分、したがってハウジングの内壁に位置し、ソケットの外向き部分が略平面または平坦な形状であることが一般に考えられる。したがって、ソケットの外向き部分およびハウジングの内向き部分の一方が、対応形状の封止リングを受けるための環状溝を含むことが一般に考えられる。
【0022】
可撓性バッグの側壁は、封止リングとハウジングの内向き部分との間に締め付けられて配置される。代替実施形態では、可撓性バッグの側壁を、環状溝と、環状溝に組み入れられた封止リングとの間に配置することも考えられる。このようにして、ソケットがハウジングに係合しなくても、可撓性バッグをソケットに予め組み付けることができる。したがって、環状溝に組み入れられた封止リングのみを用いて、可撓性バッグをソケットに予め組み付けることが一般に考えられる。
【0023】
別の実施形態によれば、ソケットは、可撓性バッグ内に位置する前面を含む。カートリッジ流体カップリングと流体連通する流体チャネルは、前面の中心部分内へ延びる。したがって、流体チャネルの入口として機能するか、または流体チャネルに付属する孔が、前面の中心部分に設けられる。したがって、流体チャネルは、前面の中心部分で終わり、終端する。ソケットにより封止された可撓性バッグ内にある液体薬剤を、前面の中心部分内へ延びる流体チャネルを通して引き抜くことができる。流体チャネルを前面の中心部分に設けることにより、薬剤の引抜き中に可撓性バッグの内向きの折畳みによって生じ得る閉塞から、流体チャネルを効果的に保護することができる。流体チャネルを中心部分に配置することにより、流体チャネルは、可撓性バッグの側壁から最大距離のところに位置する。
【0024】
別の実施形態によれば、ソケット、特にその前面は、前面の周囲から流体チャネル内へ延びる少なくとも1つの流体溝を含む。流体溝は、前面の一部が可撓性バッグの内側に折り畳まれた部分によって覆われる、または閉塞される場合に、予備の流体チャネルを提供する。さらに、少なくとも1つの流体溝が中心に位置する流体チャネル内へ延びるため、流体チャネルが、可撓性バッグの内側に折り畳まれた部分によって閉塞されても、可撓性バッグの内部と流体連通したままとなることがさらに考えられる。
【0025】
一般的に、少なくとも1つの流体溝のサイズまたは横断面は、可撓性バッグの一般的な曲げまたは折畳み半径よりも小さく、可撓性バッグの側壁が、一般に、少なくとも1つの流体溝の形状に適合できないようになっている。一般的に、流体溝は半円形横断面を含む。一般的な実施形態では、ソケットの前面にいくつかの流体溝がある。流体溝の少なくとも2つまたは複数が合わさって中心部分で交差するため、流体チャネルと重なる。流体溝が、対称軸としての流体チャネルの伸長に対して半径方向外方へ延びることが一般に考えられる。
【0026】
さらなる実施形態では、使い捨てカートリッジのハウジングが略剛性である。一般的に、ハウジングは、大量生産プロセスにおいてかなりコストを節約する方法で容易に製造可能な射出成形プラスチック材料を含む。
【0027】
剛性ハウジングを設けることにより、周囲環境の影響に対して、特に、可撓性バッグを穿孔するか、または可撓性バッグの完全性を妨げるおそれのある尖った物体または鋭利な縁部に対して、可撓性バッグを効果的に保護することができる。
【0028】
別の実施形態によれば、ハウジングは略不透明で、可撓性バッグを完全に覆う。可撓性バッグを完全に覆うことにより、外部の機械的影響だけでなく、赤外線、紫外線、または可視スペクトル域の放射などの電磁放射に対しても、可撓性バッグを効果的に保護することができる。不透明なハウジングを有することにより、可撓性バッグを暗いまたは薄暗い環境で維持することができ、これは薬剤の品質保持期間および長期にわたる安定性に有利である。不透明なハウジングにある窓によって、薬物リザーバの目視検査が可能になり得る。窓は開いていてもよく、または透明プラスチック材料もしくはガラスで塞ぐかまたは覆ってもよい。
【0029】
別の実施形態では、可撓性バッグは少なくとも部分的に透明である。可撓性バッグは、少なくとも一部が透明もしくは部分的に透明であるか、または完全に透明または部分的に透明であって、その内容物の目視検査を可能にする。この文脈では、部分的に透明とは、一般的に可視スペクトルの入射電磁放射の少なくとも一部が可撓性バッグを貫通可能であり、可撓性バッグ内にある薬剤の目視検査を可能にすることを意味する。
【0030】
加えて、一般的に略不透明なカートリッジのハウジングおよび特に剛性ハウジングは、少なくとも1つの透明窓を含み、可撓性バッグの内容物の目視検査を可能にする。窓部分を除いて、したがって窓の外側では、ハウジングは略不透明である。窓は、ハウジングの側壁または前面もしくは後面に貫通口を形成することができる。窓を、透明材料、たとえばガラスもしくは略透明なプラスチック材料で覆うかまたは塞いで、ハウジングの内部を密閉して封止し、その内容物の目視検査を可能にしてもよい。
【0031】
別の実施形態によれば、可撓性バッグは所定の折畳み構造を含む。たとえば、可撓性バッグは、長手方向伸長に沿って、特に可撓性バッグの側壁に沿って延びる折畳みシームを含むことができる。折畳みシームの形の折畳み構造は、可撓性バッグを製造することによって本質的に設けることができる。したがって、溶着されて折畳みシームを形成する2つの対応形状のプラスチックシートまたはプラスチック箔から、可撓性バッグを製造し生産することができる。一般的に、そのような溶着シームまたは折畳みシームは、略円筒形または平円筒形であり得る可撓性バッグの伸長に略沿って延びることができる。
【0032】
他の実施形態では、ある種の折畳み手段を可撓性バッグの外面に取り付けることによって、折畳み構造を実行することもできる。ここでは、構造的に補強された、または剛性の折畳み構造は、可撓性バッグの明確な折畳み動作を生じさせることができる。実際には、所定の折畳み構造を用いることにより、畳み込まれている(collapsing)可撓性バッグの側壁部分が、ソケットの前面、ならびにしたがって、流体チャネルと流体連通する流体チャネルおよび/または少なくとも1つの流体溝を効果的に閉塞することを、効果的に防止することができる。
【0033】
別の実施形態によれば、可撓性バッグは支持構造を含む。支持構造を、可撓性バッグの内側または外側に位置させることができる。支持構造を、可撓性バッグの内側もしくは外側に直接取り付けてもよく、または可撓性バッグ内へ延びるときにソケットに取り付け、組み付けてもよい。特に、支持構造は、バッグの側壁まで所定の距離をおいて、可撓性バッグ内へ延びることができる。支持構造は、ソケットの前面から可撓性バッグ内へ延びる支柱またはスラブを含んでもよい。そのような支持構造を用いることにより、可撓性バッグのかなり不明確な任意の折畳みまたは畳込み動作を防止することができる。代わりに、支持構造は、薬剤を可撓性バッグから引き抜くとき、可撓性バッグの明確な折畳みおよび畳込み動作を支え、生じさせる。
【0034】
別の実施形態によれば、可撓性バッグは、ソケットから所定の距離をおいて使い捨てカートリッジのハウジングに取り付けられる。一般的な実施では、可撓性バッグの遠い部分をハウジングに機械的に連結することが考えられる。このようにして、薬剤を引き抜くときの可撓性バッグの不明確な畳込みまたは折畳み動作を、効果的に防止することもできる。可撓性バッグの開口部とは反対側に位置する可撓性バッグの自由端の外側輪郭が、たとえばハウジングの内側に接着によって、または他の方法で取り付けられることが一般に考えられる。このようにして、薬剤の引抜き中に可撓性バッグの特定の自由端がソケットおよびその前面に近付くことを効果的に防止することができる。したがって、ソケットから所定の距離をおいて可撓性バッグをハウジングに取り付けることにより、可撓性バッグの明確な畳込みまたは折畳み動作を強制することができる。
【0035】
別の実施形態によれは、ハウジングおよびソケットの少なくとも一方は、薬物送達デバイスのハウジングおよび使い捨て注射器の少なくとも一方に係合するための直線ガイドを含む。使い捨てカートリッジと同様に、使い捨て注射器も、薬物送達デバイス、特に薬物送達デバイスのハウジングに解放可能に取り付けることができ、または連結することができる。使い捨て注射器は、一般的に、可撓性チューブと、カートリッジ流体カップリングに係合するための注射器流体カップリングとを含む。このようにして、使い捨てカートリッジと使い捨て注射器とが、流体移送するように、相互に解放可能に係合することができる。
【0036】
使い捨て注射器の可撓性チューブが、たとえば、一般的に回転可能なポンプヘッドとして実行される薬物送達デバイス用フィーダ機構と相互作用して協働することができる。注射器の注射針は、可撓性チューブを用いることにより、注射器カップリングと流体連通する。このようにして、最初にカートリッジ内にある薬剤は、カートリッジ流体カップリング、注射器流体カップリングを通って可撓性チューブ内へ、かつしたがって、投薬手順中に注射針を位置させる生体組織に向かって直接移送される。
【0037】
さらなる実施形態では、カートリッジは、薬物送達デバイスのハウジングまたは注射器に展開解除(undeployed)構成で取り付けられるように構成され適用される。この文脈では、展開解除構成は、注射器流体カップリングとカートリッジ流体カップリングとがデカップリングまたは係合解除される流体デカップリング構成を画成する。展開解除構成では、カートリッジと注射器との間に流体連通がない。カートリッジは、注射器に対して、および/または薬物送達デバイスのハウジングに対して、展開解除構成または展開解除位置から展開構成およびしたがって展開位置へ変位するように特に構成される。展開位置では、カートリッジ流体カップリングが注射器流体カップリングと流体連通する。その後、カートリッジおよびしたがってその可撓性バッグが、注射器およびしたがってその注射針と流体連通する。展開構成と展開解除構成との間における、カートリッジと注射器との互いに対する相互変位を、薬物送達デバイスによってのみ確立し、制御することができる。
【0038】
別の態様では、本発明はまた、一般的に注射により液体薬剤を投薬するための薬物送達デバイスに関する。蠕動ポンプまたは他のある種の注射器として実行可能な薬物送達デバイスは、回転可能なポンプヘッドなどの少なくとも1つのフィーダ部材を有するハウジングを含む。薬物送達デバイスは、注射針、可撓性チューブ、および注射器流体カップリングを有する使い捨て注射器をさらに含む。注射針は、可撓性チューブを介して流体カップリングと恒久的に流体連通する。
【0039】
注射器流体カップリングが対応するカートリッジ流体カップリングと係合するとき、使い捨てカートリッジと使い捨て注射器との直接流体連通を確立することができる。可撓性チューブとフィーダ部材との機械的係合および相互作用により、明確な薬剤の流体流をもたらすことができる。
【0040】
さらなる実施形態によれば、使い捨てカートリッジと使い捨て注射器とは、ハウジングに旋回可能に取り付けられた留め具を用いることにより、流体連通を確立するように解放可能に係合することができる。一般的に、留め具は、使い捨てカートリッジおよび使い捨て注射器の少なくとも一方を解放可能に固着し自由にする(liberate)ように動作可能である。加えて、留め具は、使い捨てカートリッジおよび使い捨て注射器の一方のみと選択的に係合可能であり、使い捨てカートリッジおよび使い捨て注射器の一方を使い捨てカートリッジおよび使い捨て注射器の他方に対して変位させるようにする。このようにして、使い捨てカートリッジおよび使い捨て注射器の展開解除構成を展開構成に移行することができ、最終的にその逆も可能であり、薬物送達デバイスの留め具を旋回させることによってのみ、それぞれの移行を排他的に駆動し制御する。
【0041】
本明細書で使用する用語「薬物」または「薬剤」は、少なくとも1つの薬学的に活性な化合物を含む医薬製剤を意味し、
ここで、一実施形態において、薬学的に活性な化合物は、最大1500Daまでの分子量を有し、および/または、ペプチド、タンパク質、多糖類、ワクチン、DNA、RNA、酵素、抗体もしくはそのフラグメント、ホルモンもしくはオリゴヌクレオチド、または上述の薬学的に活性な化合物の混合物であり、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、糖尿病、または糖尿病性網膜症などの糖尿病関連の合併症、深部静脈血栓塞栓症または肺血栓塞栓症などの血栓塞栓症、急性冠症候群(ACS)、狭心症、心筋梗塞、がん、黄斑変性症、炎症、枯草熱、アテローム性動脈硬化症および/または関節リウマチの処置および/または予防に有用であり、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、糖尿病または糖尿病性網膜症などの糖尿病に関連する合併症の処置および/または予防のための少なくとも1つのペプチドを含み、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、少なくとも1つのヒトインスリンもしくはヒトインスリン類似体もしくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP−1)もしくはその類似体もしくは誘導体、またはエキセンジン−3もしくはエキセンジン−4もしくはエキセンジン−3もしくはエキセンジン−4の類似体もしくは誘導体を含む。
【0042】
インスリン類似体は、たとえば、Gly(A21),Arg(B31),Arg(B32)ヒトインスリン;Lys(B3),Glu(B29)ヒトインスリン;Lys(B28),Pro(B29)ヒトインスリン;Asp(B28)ヒトインスリン;B28位におけるプロリンがAsp、Lys、Leu、Val、またはAlaで置き換えられており、B29位において、LysがProで置き換えられていてもよいヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28−B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリン、およびDes(B30)ヒトインスリンである。
【0043】
インスリン誘導体は、たとえば、B29−N−ミリストイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−パルミトイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−ミリストイルヒトインスリン;B29−N−パルミトイルヒトインスリン;B28−N−ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28−N−パルミトイル−LysB28ProB29ヒトインスリン;B30−N−ミリストイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30−N−パルミトイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29−N−(N−パルミトイル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(N−リトコリル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)−des(B30)ヒトインスリン、およびB29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。
【0044】
エキセンジン−4は、たとえば、H−His−Gly−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Leu−Ser−Lys−Gln−Met−Glu−Glu−Glu−Ala−Val−Arg−Leu−Phe−Ile−Glu−Trp−Leu−Lys−Asn−Gly−Gly−Pro−Ser−Ser−Gly−Ala−Pro−Pro−Pro−Ser−NH2配列のペプチドであるエキセンジン−4(1−39)を意味する。
【0045】
エキセンジン−4誘導体は、たとえば、以下のリストの化合物:
H−(Lys)4−desPro36,desPro37エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)5−desPro36,desPro37エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン−(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39);または
desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン−(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
(ここで、基−Lys6−NH2が、エキセンジン−4誘導体のC−末端に結合していてもよい);
【0046】
または、以下の配列のエキセンジン−4誘導体:
desPro36エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2(AVE0010)、
H−(Lys)6−desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
desAsp28Pro36,Pro37,Pro38エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
H−desAsp28Pro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
desMet(O)14,Asp28Pro36,Pro37,Pro38エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2;
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Lys6−desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
H−desAsp28,Pro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(S1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2;
または前述のいずれか1つのエキセンジン−4誘導体の薬学的に許容される塩もしくは溶媒和化合物
から選択される。
【0047】
ホルモンは、たとえば、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(ソマトロピン)、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、ロイプロレリン、ブセレリン、ナファレリン、ゴセレリンなどの、Rote Liste、2008年版、50章に列挙されている脳下垂体ホルモンまたは視床下部ホルモンまたは調節性活性ペプチドおよびそれらのアンタゴニストである。
【0048】
多糖類としては、たとえば、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリン、もしくは超低分子量ヘパリン、またはそれらの誘導体、または上述の多糖類の硫酸化形態、たとえば、ポリ硫酸化形態、および/または、薬学的に許容されるそれらの塩がある。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容される塩の例としては、エノキサパリンナトリウムがある。
【0049】
抗体は、基本構造を共有する免疫グロブリンとしても知られている球状血漿タンパク質(約150kDa)である。これらは、アミノ酸残基に付加された糖鎖を有するので、糖タンパク質である。各抗体の基本的な機能単位は免疫グロブリン(Ig)単量体(1つのIg単位のみを含む)であり、分泌型抗体はまた、IgAなどの2つのIg単位を有する二量体、硬骨魚のIgMのような4つのIg単位を有する四量体、または哺乳動物のIgMのように5つのIg単位を有する五量体でもあり得る。
【0050】
Ig単量体は、4つのポリペプチド鎖、すなわち、システイン残基間のジスルフィド結合によって結合された2つの同一の重鎖および2本の同一の軽鎖から構成される「Y」字型の分子である。それぞれの重鎖は約440アミノ酸長であり、それぞれの軽鎖は約220アミノ酸長である。重鎖および軽鎖はそれぞれ、これらの折畳み構造を安定化させる鎖内ジスルフィド結合を含む。それぞれの鎖は、Igドメインと呼ばれる構造ドメインから構成される。これらのドメインは約70〜110個のアミノ酸を含み、そのサイズおよび機能に基づいて異なるカテゴリー(たとえば、可変すなわちV、および定常すなわちC)に分類される。これらは、2つのβシートが、保存されたシステインと他の荷電アミノ酸との間の相互作用によって一緒に保持される「サンドイッチ」形状を作り出す特徴的な免疫グロブリン折畳み構造を有する。
【0051】
α、δ、ε、γおよびμで表される5種類の哺乳類Ig重鎖が存在する。存在する重鎖の種類により抗体のアイソタイプが定義され、これらの鎖はそれぞれ、IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgM抗体中に見出される。
【0052】
異なる重鎖はサイズおよび組成が異なり、αおよびγは約450個のアミノ酸を含み、δは約500個のアミノ酸を含み、μおよびεは約550個のアミノ酸を有する。各重鎖は、2つの領域、すなわち定常領域(CH)と可変領域(VH)を有する。1つの種において、定常領域は、同じアイソタイプのすべての抗体で本質的に同一であるが、異なるアイソタイプの抗体では異なる。重鎖γ、α、およびδは、3つのタンデム型のIgドメインと、可撓性を加えるためのヒンジ領域とから構成される定常領域を有し、重鎖μおよびεは、4つの免疫グロブリン・ドメインから構成される定常領域を有する。重鎖の可変領域は、異なるB細胞によって産生された抗体では異なるが、単一B細胞またはB細胞クローンによって産生された抗体すべてについては同じである。各重鎖の可変領域は、約110アミノ酸長であり、単一のIgドメインから構成される。
【0053】
哺乳類では、λおよびκで表される2種類の免疫グロブリン軽鎖がある。軽鎖は2つの連続するドメイン、すなわち1つの定常ドメイン(CL)および1つの可変ドメイン(VL)を有する。軽鎖のおおよその長さは、211〜217個のアミノ酸である。各抗体は、常に同一である2本の軽鎖を有し、哺乳類の各抗体につき、軽鎖κまたはλの1つのタイプのみが存在する。
【0054】
すべての抗体の一般的な構造は非常に類似しているが、所与の抗体の固有の特性は、上記で詳述したように、可変(V)領域によって決定される。より具体的には、各軽鎖(VL)について3つおよび重鎖(HV)に3つの可変ループが、抗原との結合、すなわちその抗原特異性に関与する。これらのループは、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる。VHドメインおよびVLドメインの両方からのCDRが抗原結合部位に寄与するので、最終的な抗原特異性を決定するのは重鎖と軽鎖の組合せであり、どちらか単独ではない。
【0055】
「抗体フラグメント」は、上記で定義した少なくとも1つの抗原結合フラグメントを含み、そのフラグメントが由来する完全抗体と本質的に同じ機能および特異性を示す。パパインによる限定的なタンパク質消化は、Igプロトタイプを3つのフラグメントに切断する。1つの完全なL鎖および約半分のH鎖をそれぞれが含む2つの同一のアミノ末端フラグメントが、抗原結合フラグメント(Fab)である。サイズが同等であるが、鎖間ジスルフィド結合を有する両方の重鎖の半分の位置でカルボキシル末端を含む第3のフラグメントは、結晶可能なフラグメント(Fc)である。Fcは、炭水化物、相補結合部位、およびFcR結合部位を含む。限定的なペプシン消化により、Fab片とH−H鎖間ジスルフィド結合を含むヒンジ領域の両方を含む単一のF(ab’)2フラグメントが得られる。F(ab’)2は、抗原結合に対して二価である。F(ab’)2のジスルフィド結合は、Fab’を得るために切断することができる。さらに、重鎖および軽鎖の可変領域は、縮合して単鎖可変フラグメント(scFv)を形成することもできる。
【0056】
薬学的に許容される塩は、たとえば、酸付加塩および塩基性塩である。酸付加塩としては、たとえば、HClまたはHBr塩がある。塩基性塩は、たとえば、アルカリまたはアルカリ土類、たとえば、Na+、またはK+、またはCa2+から選択されるカチオン、または、アンモニウムイオンN+(R1)(R2)(R3)(R4)(式中、R1〜R4は互いに独立に:水素、場合により置換されたC1〜C6アルキル基、場合により置換されたC2〜C6アルケニル基、場合により置換されたC6〜C10アリール基、または場合により置換されたC6〜C10ヘテロアリール基を意味する)を有する塩である。薬学的に許容される塩のさらなる例は、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」17版、Alfonso R.Gennaro(編)、Mark Publishing Company、Easton、Pa.、U.S.A.、1985およびEncyclopedia of Pharmaceutical Technologyに記載されている。
【0057】
薬学的に許容される溶媒和物は、たとえば、水和物である。
【0058】
本発明の精神および範囲から逸脱することなく、様々な修正および変更を本発明に行ってもよいことが、当業者にさらに明らかになろう。さらに、添付の特許請求の範囲で使用される参照符号は、本発明の範囲を限定するものと解釈すべきではないことに留意されたい。
【0059】
以下で、薬物送達デバイスに連結される使い捨て送達アセンブリの実施形態について、図面を参照しながらより詳細に説明する。