特許第6707030号(P6707030)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6707030ポリ(トリメチレン−2,5−フランジカルボキシレート)(PTF)の有核結晶化およびそれから製造される物品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6707030
(24)【登録日】2020年5月21日
(45)【発行日】2020年6月10日
(54)【発明の名称】ポリ(トリメチレン−2,5−フランジカルボキシレート)(PTF)の有核結晶化およびそれから製造される物品
(51)【国際特許分類】
   C08L 67/02 20060101AFI20200601BHJP
   C08K 5/098 20060101ALI20200601BHJP
   C08K 3/32 20060101ALI20200601BHJP
   C08L 71/02 20060101ALI20200601BHJP
   C08K 5/06 20060101ALI20200601BHJP
   C08G 63/672 20060101ALI20200601BHJP
【FI】
   C08L67/02
   C08K5/098
   C08K3/32
   C08L71/02
   C08K5/06
   C08G63/672
【請求項の数】10
【全頁数】37
(21)【出願番号】特願2016-541166(P2016-541166)
(86)(22)【出願日】2014年12月18日
(65)【公表番号】特表2017-504684(P2017-504684A)
(43)【公表日】2017年2月9日
(86)【国際出願番号】US2014071060
(87)【国際公開番号】WO2015095466
(87)【国際公開日】20150625
【審査請求日】2017年12月11日
(31)【優先権主張番号】61/918,728
(32)【優先日】2013年12月20日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/055,730
(32)【優先日】2014年9月26日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390023674
【氏名又は名称】イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ゴードン・マーク・コーエン
(72)【発明者】
【氏名】フレドリック・ネダーバーグ
(72)【発明者】
【氏名】ビューマ・ラジャゴパラン
【審査官】 岡部 佐知子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/149222(WO,A1)
【文献】 特表2010−508394(JP,A)
【文献】 特開平09−278991(JP,A)
【文献】 特開昭51−071347(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00 −101/16
C08G 63/00 − 64/42
C08K 3/00 − 13/08
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)ポリ(トリメチレン−2,5−フランジカルボキシレート)(PTF)90〜99.9重量%;
b)核剤としての中和カルボン酸塩0.1〜10重量%;
を含む組成物であって、
前記量が前記組成物の全重量に対するものであ前記中和カルボン酸塩は、C2〜C30の、脂肪族カルボン酸塩または芳香族カルボン酸塩である、組成物。
【請求項2】
前記中和カルボン酸塩が、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、安息香酸ナトリウム、またはモンタン酸ナトリウムである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記中和カルボン酸塩が、モンタン酸ナトリウムである、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
シート、フィルムまたは成形品の形をとる、請求項1に記載の組成物を含む物品。
【請求項5】
a)ポリ(トリメチレン−2,5−フランジカルボキシレート)80〜99重量%;
b)次式:
A−O−[CHX−(CH2k−O]j−B
(式中、kは、1〜3の整数であり、
jは、4〜25の整数であり、
AおよびBはそれぞれ独立して、アルキル基、アシル基、またはアロイル基から選択され、それぞれの基が炭素原子1〜10個を含有し、
Xは、H、CH3またはC25である)の可塑剤1〜20重量%;
を含む組成物であって、
前記量が前記組成物の全重量に対するものである、組成物。
【請求項6】
シート、フィルムまたは成形品の形をとる、請求項3に記載の組成物を含む物品。
【請求項7】
C2〜C30脂肪族カルボン酸塩または芳香族カルボン酸塩である中和カルボン酸塩を
PTFベースのポリマーに添加する、ポリ(トリメチレン−2,5−フランジカルボキシレート)(PTF)ベースのポリマーにおける結晶化方法。
【請求項8】
a)フラン−PAEGソフトセグメントとPTFハードセグメントとを有する、PTFとポリ(アルキレンエーテル)グリコール(PAEG)とのコポリエステル:
b)次式:
A−O−[CHX−(CH2k−O]j−B
(式中、kは、1〜3の整数であり、
jは、4〜25の整数であり、
AおよびBはそれぞれ独立して、それぞれの基が炭素原子1〜10個を含有する、アルキル基、アシル基、またはアロイル基であり、
Xは、H、CH3またはC25である)
の可塑剤;
のうちの1つまたは複数を、さらに添加する、
請求項7に記載の、結晶化方法。
【請求項9】
前記中和カルボン酸塩が、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、安息香酸ナトリウム、またはモンタン酸ナトリウムである、請求項7または8に記載の、結晶化方法。
【請求項10】
前記中和カルボン酸塩が、モンタン酸ナトリウムである、請求項9に記載の、結晶化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、2013年12月20日出願の米国仮特許出願第61/918,728号明細書および2014年9月26日出願の米国仮特許出願第62/055,730号明細書の利益を主張する。
【0002】
本発明は、一般にポリ(トリメチレンフランジカルボキシレート)(PTF)の核形成結晶化に関する。特にPTF、および可塑剤、核剤、およびランジカルボン酸−ポリ(アルキレンエーテル)グリコール(フラン−PAEG)ソフトセグメントとPTFハードセグメントとを含むPTFのコポリエステルの1種または複数種を含む組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
2,5−フランジカルボン酸(FDCA)は、ポリエステル樹脂において使用された場合に、テレフタル酸(TPA)と同様な剛性モノマーモチーフを提供する生物由来モノマーである。得られるフランベースのポリエステルは通常、相当するテレフタル酸対応物を約40〜50℃下回る、DSCにより測定された融点を有し、例えばポリ(トリメチレンテレフタレート)(PTT)の融点は約229℃であり、ポリ(トリメチレン−2,5フランジカルボキシレート)(PTF)の融点は約179℃である。さらに、PTTは、示差走査熱量計(DSC)によって加熱速度10℃/分で測定される、約229℃の融点を示し、PTFは、加熱速度10℃/分でほとんど融解を示さず、この10℃/分の加熱速度にて結晶化する能力が低下していることを表す。しかしながら、10℃/分から5℃/分、さらに1℃/分に加熱/冷却速度を下げると、PTFのDSC走査から、約175〜179℃で融解吸熱(ΔHは、10℃/分で1J/g未満;5℃/分で約6.3J/g;1℃/分で約42J/gである)が発生していることが分かり、その結果、PTFの結晶化する能力が加熱速度に反比例することが示されている。しかしながら、核形成結晶化によるPTFの結晶化率の増加に関してはほとんど知られていない。
【0004】
したがって、結晶化率が向上した、PTFを含む新規な組成物が必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の実施形態において、
a)ポリトリメチレン−2,5−フランジカルボキシレート(PTF)90〜99.9重量%;
b)核剤としての中和カルボン酸塩またはリン酸三ナトリウム0.1〜10重量%;
を含む組成物であって、
その量が組成物の全重量に対するものである、組成物が提供される。
【0006】
第2の実施形態において、上記で開示される組成物を含む物品が提供され、その物品は、シート、フィルム、または成形品の形をとる。
【0007】
第3の実施形態において、
a)ポリ(トリメチレン−2,5−フランジカルボキシレート)80〜99重量%;
b)次式:
A−O−[CHX−(CH−O]−B
(式中、kは、1〜3の整数であり、
jは、4〜25の整数であり、
AおよびBはそれぞれ独立して、アルキル基、アシル基、またはアロイル基から選択され、それぞれの基が炭素原子1〜10個を含有し、
Xは、H、CHまたはCである)の可塑剤1〜20重量%;
を含む組成物であって、
その量が組成物の全重量に対するものである、組成物が提供される。
【0008】
第4の実施形態において、上記で開示される組成物はさらに、核剤としての中和カルボン酸塩またはリン酸三ナトリウム0.1〜10重量%をさらに含み、その量は組成物の全重量に対するものである。
【0009】
第5の実施形態において、上記で開示される組成物を含む物品が提供され、その物品は、シート、フィルム、または成形品の形をとる。
【0010】
第6の実施形態において、
a)i.少なくとも1つのポリ(アルキレンエーテル)グリコール(PAEG)およびフラン2,5−ジカルボン酸またはその機能的等価物から誘導されるフラン−PAEGソフトセグメントであって、そのポリ(アルキレンエーテル)グリコールが、未置換およびメチル置換C2〜C10脂肪族反復単位を含む、フラン−PAEGソフトセグメントと、
ii.1,3−プロパンジオールおよびフラン2,5−ジカルボン酸またはその機能的等価物から誘導されるポリ(トリメチレンフランジカルボキシレート)ハードセグメントと、
を含むコポリエステル5〜99重量%;
b)以下の:
i.ポリ(トリメチレン−2,5−フランジカルボキシレート)20〜99重量%、
ii.核剤としての中和カルボン酸塩またはリン酸三ナトリウム0.1〜10重量%、
iii.次式:
A−O−[CHX−(CH−O]−B
(式中、kは、1〜3の整数であり、
jは、4〜25の整数であり、
AおよびBはそれぞれ独立して、アルキル基、アシル基、またはアロイル基から選択され、それぞれの基が炭素原子1〜10個を含有し、
Xは、H、CHまたはCである)を有する可塑剤0.1〜20重量%、
のうちの1つまたは複数;
を含む組成物であって、その重量%の量が組成物の全重量に対するものである、組成物が提供される。
【0011】
第7の実施形態において、コポリエステルは、フラン−PAEGソフトセグメント1.5〜45重量%を含む。
【0012】
第8の実施形態において、ポリ(アルキレンエーテル)グリコールは、ポリ(エチレンエーテル)グリコール、ポリ(1,2−プロピレンエーテル)グリコール、ポリ(トリメチレンエーテル)グリコール、ポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール(ポリテトラヒドロフラン)、ポリ(ペンタメチレンエーテル)グリコール、ポリ(ヘキサメチレンエーテル)グリコール、ポリ(ヘプタメチレンエーテル)グリコール、およびポリ(エチレングリコール)−ブロック−ポリ(プロピレングリコール)−ブロック−ポリ(エチレングリコール)からなる群から選択される。
【0013】
第9の実施形態において、コポリエステルは、2,5−フランジカルボン酸、1,3−プロパンジオールおよびポリトリメチレンエーテルグリコール(PTMEG)から誘導され、そのコポリエステルは以下の一般構造:
【化1】
を有し、
式中、n=50〜99.5重量%;r=0.5〜50重量%;およびrに対してm=45〜97重量%である。
【0014】
第10の実施形態において、上記で開示される組成物を含む物品が提供され、その物品は、シート、フィルム、または成形品の形をとる。
【0015】
第11の実施形態において、ポリ(トリメチレン−2,5−フランジカルボキシレート)(PTF)ベースのポリマーの結晶化率を増加する方法であって、少なくとも200℃の温度で溶融混合することによって、ポリ(アルキレンエーテル)グリコール(PAEG)をポリ(トリメチレンフランジカルボキシレート)とブレンドし、反応させることを含む、方法が提供され、得られるPTFベースのポリマーは、フラン−PTMEGソフトセグメントおよびPTFハードセグメントを含むコポリエステルである。
【0016】
第12の実施形態において、ポリ(トリメチレン−2,5−フランジカルボキシレート)(PTF)ベースのポリマーの結晶化率を増加する方法であって、PTFベースのポリマーに以下の:
a)PTFとポリ(アルキレンエーテル)グリコールとのコポリエステルであって、そのポリ(アルキレンエーテル)グリコールが未置換およびメチル置換C2〜C10脂肪族反復単位を含むコポリエステル;
b)中和カルボン酸塩またはリン酸三ナトリウム;
c)次式:
A−O−[CHX−(CH−O]−B
(式中、kは、1〜3の整数であり、
jは、4〜25の整数であり、
AおよびBはそれぞれ独立して、アルキル基、アシル基、またはアロイル基から選択され、それぞれの基が炭素原子1〜10個を含有し、
Xは、H、CHまたはCである)の可塑剤;
のうちの1つまたは複数を添加することを含む、方法が提供される。
【0017】
本発明の開示内容は一例として例証されており、添付の図面に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施例1.5における、PTFとフラン−PTMEGソフトセグメント1重量%とのコポリエステルの熱流対温度を示す、示差走査熱量計(DSC)プロット(第2加熱,10℃/分)である。
図2】対照AにおけるPTFの熱流対温度を示す、DSCプロット(第2加熱,10℃/分)である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本明細書において参照されるすべての特許および非特許文献の開示内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0020】
「フランジカルボン酸」という用語は、フランジカルボン酸;2,5−フランジカルボン酸;2,4−フランジカルボン酸;3,4−フランジカルボン酸;および2,3−フランジカルボン酸と区別なく使用される。本明細書で使用される、2,5−フランジカルボン酸(FDCA)は、デヒドロ粘液酸としても知られており、以下に示すように酸化フラン誘導体である:
【化2】
【0021】
「フラン2,5−ジカルボン酸(FDCA)またはその機能的等価物」という用語は、フランジカルボン酸の適切な異性体またはその誘導体、例えば2,5−フランジカルボン酸;2,4−フランジカルボン酸;3,4−フランジカルボン酸;2,3−フランジカルボン酸またはその誘導体を意味する。「PTF」および「ポリ(トリメチレンフランジカルボキシレート)」という用語は区別なく使用され、ポリ(トリメチレン−2,5フランジカルボキシレート)、ポリ(トリメチレン−2,4フランジカルボキシレート)、ポリ(トリメチレン−2,3フランジカルボキシレート)、およびポリ(トリメチレン−3,4フランジカルボキシレート)を意味する。
【0022】
「コポリエステル」、「PTFのコポリエステル」、「PTFコポリエステル」、「PTFとポリ(アルキレンエーテル)グリコール(PAEG)とのコポリエステル」、「PAEGとのコポリエステル」、「PTFコポリエーテルエステル」は区別なく使用され、PTFハードセグメントおよびフラン−PAEGを含む、本発明の開示内容のコポリエステル組成物を意味する。したがって、「PTFとPTMEGとのコポリエステル」は、「PTMEGとのコポリエステル」と区別なく使用され、フラン−PTMEGソフトセグメントおよびPTFハードセグメントを含むコポリエステルを意味する。
【0023】
「PTFベースのポリマー」、「PTFのコポリエステル」、および「PTFのコポリマー」は、反復単位の少なくとも1つとして「トリメチレンジカルボキシレート」を含むポリマーを意味する。
【0024】
「生物学的に誘導された」という用語は、「生物由来」と区別なく使用され、植物などの再生可能資源から得られ、再生可能な炭素のみ、または実質的に再生可能な炭素を含有し、化石燃料ベースまたは石油ベースの炭素を全く含有しないか、または極めてわずかしか含有しない、モノマーおよびポリマーなどの化学化合物を意味する。一実施形態において、本明細書で使用される1,3−プロパンジオールは生物由来である。
【0025】
「ポリマーの結晶化率の増加」というフレーズは、区別なく使用され、ポリマーの「結晶性の増加」または「結晶化度の増加」を意味し、「ガラスまたは溶融物からポリマーが結晶化する能力の向上」も意味する。
【0026】
PTFおよび核剤および/または可塑剤を含む組成物
ポリ(トリメチレン−2,5−フランジカルボキシレート)(PTF)と、中和カルボン酸塩またはリン酸三ナトリウムなどの核剤またはポリ(アルキレンエーテル)グリコールなどの可塑剤のうちの少なくとも1つと、を含む組成物が本明細書において開示される。
【0027】
中和カルボン酸は、C2〜C30脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸またはポリマー塩であることができる。その中和された塩は、カルボン酸のナトリウム塩もしくはカリウム塩などの金属塩、または有機塩であり得る。少なくとも0.01重量%である、ポリマーにおける金属塩の濃度を提供するのに十分な量で核剤が添加され得る。代替方法として、少なくとも0.1重量%である、ポリマーにおける金属塩の濃度を提供するのに十分な量で核剤が添加され得る。
【0028】
中和カルボン酸塩の適切な例としては、限定されないが、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、モンタン酸ナトリウム、エチレンとメタクリル酸のコポリマーの金属塩が挙げられ、カルボン酸基の一部は、金属、好ましくはナトリウムまたはカリウムで中和される。コポリマーのカルボン酸は好ましくは、金属で少なくとも30%中和され、かつ更なるコモノマー、例えばn−ブチルアクリレートを含み得る。この中和コポリマーは「イオノマー」として知られ、イオノマーのいくつかの種類が、Surlyn(登録商標)の商品名で販売されている。
【0029】
中和カルボン酸塩は、PTFのカルボン酸末端基を金属、好ましくはナトリウムまたはカリウムで中和することによって製造することもでき、これらの塩は核剤として使用することもできる。
【0030】
中和カルボン酸塩は、組成物の全重量に対して0.1〜10重量%、または0.5〜5重量%または0.75〜2重量%の範囲の量で、様々な方法でPTFと混合することができる。ポリエステルの合成中のいかなる時点でもそれを添加することができ、一般に、その合成は、エステル化/エステル交換反応に続いて重縮合プロセスによって行われる。テレフタル酸一ナトリウムを顆粒状PTFポリマーと混合し、続いて押出機で加工することも可能である。中和カルボン酸塩は、それが添加される、同じまたは異なるポリエステル中で純粋な化合物として、またはマスターバッチとして添加してもよい。PTFおよび中和カルボン酸塩またはリン酸三ナトリウムを含む組成物は、結晶化率の増加および結晶性の増加によって、核剤を含まない発生期の(nascent)PTFと比較して物理的性質の向上を示す。
【0031】
一態様において、
a)ポリ(トリメチレン−2,5−フランジカルボキシレート)80〜99重量%または80〜95重量%;
b)次式:
A−O−[CHX−(CH−O]−B
(式中、kは、1〜3の整数であり、
jは、4〜25の整数であり、
AおよびBはそれぞれ独立して、アルキル基、アシル基、またはアロイル基から選択され、それぞれの基が炭素原子1〜10個を含有し、
Xは、H、CHまたはCである)の可塑剤1〜20重量%または1〜10重量%;
を含む組成物であって、その量が組成物の全重量に対するものである、組成物が提供される。
【0032】
一実施形態において、可塑剤は、ポリエーテルのいずれかの末端または両方の末端に任意にCHOまたはCHCHOまたはアシルまたはアロイル末端基を有するポリ(アルキレンエーテル)グリコールである。炭素原子1〜10個を含有する、例示的なアシル末端基としては、限定されないが、2−エチルヘキサノエートが挙げられる。炭素原子1〜10個を含有する例示的なアルキル末端基としては、限定されないが、メチルおよびエチルが挙げられる。例示的なアロイル末端基としては、限定されないが、ベンゾイルおよびノニルベンゾイルが挙げられる。
【0033】
可塑剤は、ポリエーテルのいずれかの末端または両方の末端に任意にCHOまたはCHCHOまたはアシルまたはアロイル末端基を有するポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール(PTMEG)またはポリエチレングリコールであることができる。
【0034】
PTFと可塑剤を含む組成物はさらに、核剤として中和カルボン酸塩またはリン酸三ナトリウム0.1〜10重量%または0.5〜10重量%を含み得る。
【0035】
上述のように、PTFと、核剤および可塑剤のうちの少なくとも1つまたは複数と、を含む組成物は、軟化剤、染料、顔料、酸化防止剤、安定剤、紫外線安定剤、難燃剤、離型剤、充填剤等の他の成分を含み得る。本発明の開示内容の組成物は任意に、強化または充填材料として充填剤10〜60重量%で充填することができる。一実施形態において、組成物は、ガラス繊維、ガラスビーズ、アラミド繊維、ケイ酸アルミニウム、炭素繊維、マイカ、炭酸カルシウム、およびその組み合わせからなる群から選択される1種または複数種の充填剤を含む。
【0036】
上述の組成物は、エチレン、n−ブチルアクリレート、およびグリシジルメタクリレートから製造されるポリマーなど、ゴム状弾性強化材も含有し得る。
【0037】
上記で開示される、PTFと、核剤および可塑剤のうちの1つまたは複数を含む組成物は、85〜140℃、または90〜140℃、または96〜140℃、または100〜140℃、または105〜140℃、または110〜140℃、または115〜140℃、または120〜140℃、または125〜140℃、または130〜140℃、または135〜140℃の範囲のガラスからの再結晶化温度(Tcc)を有し得る。
【0038】
PTFのコポリエステルを含む組成物
PTFと、コポリエステル、核剤としての中和カルボン酸塩またはリン酸三ナトリウムおよび可塑剤のうちの1つまたは複数と、を含む組成物が本明細書に開示され、このコポリエステルは、フラン−ポリ(アルキレンエーテル)グリコール(フラン−PAEG)ソフトセグメントおよびポリ(トリメチレンフランジカルボキシレート)(PTF)ハードセグメントを含む。
【0039】
このコポリエステルは、1,3−プロパンジオール、フラン2,5−ジカルボン酸またはその機能的等価物、および少なくとも1つのポリ(アルキレンエーテル)グリコール(PAEG)を重合することから誘導される。コポリエステルのフラン−PAEGソフトセグメントは、少なくとも1つのポリ(アルキレンエーテル)グリコール(PAEG)およびフラン2,5−ジカルボン酸またはその機能的等価物から誘導され、ポリ(アルキレンエーテル)グリコールは、未置換およびメチル置換C2〜C10脂肪族反復単位を含む。コポリエステル中に存在するフラン−PAEGソフトセグメントの量は、コポリエステル組成物の全重量に対して約0.5〜50重量%または約1.5〜45重量%または約1.50〜30重量%または約1.5〜15重量%の範囲であり得る。コポリエステルのPTFハードセグメントは、1,3−プロパンジオールおよびフラン2,5−ジカルボン酸またはその機能的等価物から誘導される。コポリエステル中に存在するPTFハードセグメントの量は、コポリエステル組成物の全重量に対して約50〜99.5重量%または約45〜98.5重量%または約70.0〜98.5重量%または約85〜98.5重量%の範囲であり得る。モル%に関しては、コポリエステル中に存在するフラン−PAEGソフトセグメントの量は、コポリエステルにおけるフラン−PAEGソフトセグメントとPTFハードセグメントの総モル含有量に対して約0.5〜50モル%または約1.5〜45モル%または約1.5〜30モル%または約1.5〜15モル%の範囲にある。
【0040】
本明細書に開示されるコポリエステルは、サイズ排除クロマトグラフィーによって測定される、10000〜35000または10000〜30000または10000〜25000の範囲の数平均分子量を有し得る。さらに、本明細書に開示されるコポリエステルは、0.5〜1.5または0.5〜1.2または0.5〜1の範囲の固有粘度(IV)を有し得る。
【0041】
本明細書に開示される実施形態において使用されるポリ(アルキレンエーテル)グリコール(PAEG)は、炭素原子2〜10個を含有する未置換およびメチル置換脂肪族反復単位をベースとし、一般に約100〜約4000ダルトンの範囲の分子量を有する。例示的なポリ(アルキレンエーテル)グリコールとしては、限定されないが、ポリ(エチレンエーテル)グリコール、ポリ(1,2−プロピレンエーテル)グリコール、ポリ(トリメチレンエーテル)グリコール、ポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール(ポリテトラヒドロフラン)、ポリ(ペンタメチレンエーテル)グリコール、ポリ(ヘキサメチレンエーテル)グリコール、ポリ(ヘプタメチレンエーテル)グリコール、およびポリ(エチレングリコール)−ブロック−ポリ(プロピレングリコール)−ブロック−ポリ(エチレングリコール)が挙げられる。好ましくは、ポリ(アルキレンエーテル)グリコールは、再生可能な生体源から、特にポリ(トリメチレンエーテル)グリコールおよびポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール(PTMEG)から誘導される。
【0042】
一実施形態において、ポリ(アルキレンエーテル)グリコールはポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール(PTMEG)であり、それによって、コポリエステルはフラン−PTMEGソフトセグメントおよびPTFハードセグメントを含み、かつ以下の一般構造:
【化3】
(式中、n=50〜99.5重量%または45〜98.5重量%または70〜98.5重量%または85〜98.5重量%であり;
r=0.5〜50重量%または1.5〜45重量%または1.50〜30重量%または1.5〜15重量%であり;
m=rに対して45〜97重量%または50〜95重量%または89〜92重量%である)を有する。
【0043】
他の実施形態において、ポリ(アルキレンエーテル)グリコールはポリエチレングリコール(PEG)であり、それによって、コポリエステルはフラン−PEGソフトセグメントおよびPTFハードセグメントを含む。
【0044】
PTFハードセグメントおよびフラン−PAEGソフトセグメントを含む、本明細書で開示されるコポリエステルは、ハードセグメントのみ含有し、ソフトセグメントを含有しないPTFポリマーと比較して、PTFおよびコポリエステルを同じ加熱速度で測定した場合に、結晶化率の向上によって、かつ結晶化度の向上によっても、物理的性質の向上を示す。
【0045】
図1および2は、ソフトセグメントを含有しないPTFフィルムと比較して、本発明の開示内容のフラン−PAEGソフトセグメントを含むPTFベースのポリマー(コポリエステルフィルム)の結晶性の向上を例示する。図1および2は、実施例1.5で以下に開示される、フラン−PTMEGソフトセグメント1重量%を含むコポリエステルフィルムと、対照Aで以下に開示される、ソフトセグメントを含有しないポリ(トリメチレンフランジカルボキシレート)(PTF)フィルムそれぞれに関する、熱対温度を示す示差走査熱量計(DSC)プロットである。図2に示すPTFのDSCスキャンは、約174℃で非常に弱い融解吸熱(ΔH=0.2031J/g)を示すのに対して、図1に示される、フラン−PTMEGソフトセグメント1重量%を含むコポリエステルフィルムのDSCスキャンは、約174℃での融解吸熱(ΔH=44.2J/g)および約123℃でのガラスからの再結晶化(ΔHcc=50.06J/g)を示す。PTF(ΔH=0.2031J/g)と比較して、コポリエステルの融解エンタルピー(ΔH=44.2J/g)がかなり大きいことから、同じ加熱速度で評価した場合に、コポリエステルと比較して結晶化度がかなり小さく、かつ結晶化が難しいことが示されている。したがって、フラン−PTMEGソフトセグメント1重量%など、PTF中の少量のソフトセグメントの存在でさえ、結晶性を向上させ、少量のフラン−PTMEGソフトセグメントと主要量のPTFハードセグメントを含むフィルムの、ガラスから容易に結晶化する能力を高めることが、DSCスキャンによって実証されている。
【0046】
上記で開示されるコポリエステルは、85〜140℃、または90〜140℃、または96〜140℃、または100〜140℃、または105〜140℃、または110〜140℃、または115〜140℃、または120〜140℃、または125〜140℃、または130〜140℃、または135〜140℃の範囲のガラスからの再結晶化温度(Tcc)を有し得る。
【0047】
他の実施形態において、上記で開示されるコポリエステルは、115℃で6時間再結晶化した後に、5〜50J/gまたは10〜45J/g、または10〜40J/gの範囲の融解エンタルピーを有し得る。
【0048】
上記で開示される、製造された状態のままのコポリエステルは、以下に記載のWAXSから測定される、0〜75または10〜60または15〜〜50の範囲の結晶化度を有し得る。115℃で6時間再結晶化された後の、上記で開示されるコポリエステルは、本明細書において以下に記載のWAXSから測定される、10〜75または15〜60または20〜50の範囲の結晶化度を有し得る。
【0049】
いずれの理論によっても束縛されないが、フラン−PTMEGソフトセグメントおよびPTFハードセグメントを含む、本明細書において開示されるコポリエステル組成物は、PTFハードセグメントのみ含有するポリエステル組成物と比較して、脆性、耐熱性、および耐衝撃性の向上も示すと考えられる。
【0050】
一態様において、上記で開示されるコポリエステルと、以下の:
a)ポリ(トリメチレン−2,5−フランジカルボキシレート)約20〜99重量%または約20〜80重量%または約30〜70重量%;
b)核剤としての中和カルボン酸塩またはリン酸三ナトリウム約0.1〜10重量%または約0.5〜10重量%;
c)次式:
A−O−[CHX−(CH−O]−B
(式中、kは、1〜3の整数であり、
jは、4〜25の整数であり、
AおよびBはそれぞれ独立して、アルキル基、アシル基、またはアロイル基から選択され、それぞれの基が炭素原子1〜10個を含有し、
Xは、H、CHまたはCである)
を有する可塑剤約0.1〜20重量%または約0.5〜15重量%または約1〜10重量%;
のうちの1つまたは複数と、を含む組成物であって、その重量%の量が組成物の全重量に対するものである、組成物が提供される。
【0051】
組成物中に存在するコポリエステルの量は、組成物の全重量に対して約5〜99重量%または約20〜80重量%または約30〜70重量%の範囲であることができる。
【0052】
本明細書に開示される組成物は、以下の成分の:
・可塑剤とブレンドされたコポリエステル;
・核剤としての中和カルボン酸塩またはリン酸三ナトリウムとブレンドされたコポリエステル;
・可塑剤と、核剤としての中和カルボン酸塩またはリン酸三ナトリウムとブレンドされたコポリエステル;
・PTFとブレンドされたコポリエステル;
・PTFと、核剤としての中和カルボン酸塩またはリン酸三ナトリウムとブレンドされたコポリエステル;
・PTFおよび可塑剤とブレンドされたコポリエステル;
・PTF、可塑剤および核剤としての中和カルボン酸塩またはリン酸三ナトリウムとブレンドされたコポリエステル;
のうちの1つまたは複数の組み合わせを含み得る。
【0053】
一態様において、ポリ(トリメチレン−2,5−フランジカルボキシレート)(PTF)ベースのポリマーにおける結晶化率を増加し、かつ/またはガラスから結晶化する、PTFベースのポリマーの能力を向上させる方法であって、少なくとも200℃の温度で溶融混合によってポリ(アルキレンエーテル)グリコール(PAEG)をポリ(トリメチレンフランジカルボキシレート)とブレンドし、反応させることを含む方法が提供され、得られるPTFベースのポリマーは、フラン−PTMEGソフトセグメントおよびPTFハードセグメントを含むコポリエステルである。PTFベースのポリマーの結晶化率の向上および/またはPTFベースのポリマーの、ガラスから結晶化する能力の向上を示すのに十分である、適切な量のPAEGが添加され得る。PAEGは、組成物の全重量に対して約0.5〜50重量%または約1.5〜45重量%または約1.50〜30重量%または約1.5〜15重量%の範囲で添加され得る。一実施形態において、この方法はさらに、中和カルボン酸塩またはリン酸三ナトリウムなどの核剤、または本明細書において上記で開示される、ポリ(アルキレンエーテル)グリコールもしくはその誘導体である可塑剤のうちの少なくとも1つを添加することを含む。
【0054】
一態様において、(ポリ(トリメチレン−2,5−フランジカルボキシレート)(PTF)ベースのポリマーの結晶化率を増加し、かつ/またはガラスから結晶化する、PTFベースのポリマーの能力を向上させる方法であって、PTFとPAEGとのコポリエステル、中和カルボン酸塩またはリン酸三ナトリウム、および可塑剤のうちの1種または複数種をPTFベースのポリマーに添加することを含む方法が提供される。
【0055】
以下に記述されるように示差走査熱量測定(DSC)を使用して測定される、ガラスからの再結晶化のエンタルピー(または冷結晶化)(ΔHcc)または融解エンタルピー(ΔH)のうちの少なくとも1つの大きさの増加によって証明されるように、PTFベースのポリマーの結晶化率の増加は、PTFベースのポリマーがガラスから、かつ融解物からも結晶化する能力の向上に反映される。
【0056】
上述のようにコポリエステルと、PTF、核剤および可塑剤のうちの1つまたは複数と、を含む組成物は、軟化剤、染料、顔料、酸化防止剤、安定剤、紫外線安定剤、難燃剤、離型剤、充填剤等の他の成分を含有し得る。この開示内容の組成物は任意に、強化または充填材料としての充填剤10〜60重量%で充填することができる。一実施形態において、この組成物は、ガラス繊維、ガラスビーズ、アラミド繊維、ケイ酸アルミニウム、炭素繊維、マイカ、炭酸カルシウム、およびその組み合わせからなる群から選択される1種または複数種の充填剤を含む。
【0057】
上述の組成物は、エチレン、n−ブチルアクリレート、およびグリシジルメタクリレートから製造されるポリマーなど、ゴム状弾性強化剤も含有し得る。
【0058】
上記で開示される、コポリエステルと、PTF、核剤および可塑剤のうちの1つまたは複数と、を含む組成物は、85〜140℃、または90〜140℃、または96〜140℃、または100〜140℃、または105〜140℃、または110〜140℃、または115〜140℃、または120〜140℃、または125〜140℃、または130〜140℃、または135〜140℃の範囲のガラスからの再結晶化温度(Tcc)を有し得る。
【0059】
物品
上述の組成物は、現在PETおよび同様なポリエステルが使用されているすべての形態の用途において価値がある。
【0060】
一実施形態において、上記で開示される、コポリエステルと、PTF、核剤および可塑剤のうちの1つまたは複数と、を含む熱可塑性成形用組成物が提供される。他の実施形態において、上記で開示される、コポリエステルと、PTF、核剤および可塑剤のうちの1つまたは複数と、を含む上記で開示される組成物を含む物品が提供される。
【0061】
一実施形態において、上記で開示される、PTFと、核剤および可塑剤のうちの1つまたは複数と、含む熱可塑性成形用組成物が提供される。他の実施形態において、PTFと、核剤および可塑剤のうちの1つまたは複数と、含む上記で開示される組成物を含む物品が提供される。
【0062】
一実施形態において、その物品は、繊維、シート、フィルムまたは成形品の形をとる。一実施形態において、物品は、シート、フィルムまたは成形品の形をとる。他の実施形態において、物品は、繊維を除くあらゆる形をとる。物品は、フィルム、シート、コーティング、造形品、容器、ボトル、ハウジング、または多層ラミネート、例えば収縮包装フィルムにおける1つの層の形をとることができる。本明細書におけるフィルムは、延伸しても、しなくてもよく、あるいは一軸または二軸延伸することができる。
【0063】
シートとフィルムの違いは厚さであるが、物品の厚さはその用途の必要性に応じて異なるため、フィルムとシートを区別する標準的な厚さを設定することは難しい。しかしながら、本明細書においてシートは、約0.25mm(10ミル)を超える厚さを有すると定義される。好ましくは、本明細書におけるシートの厚さは、約0.25〜約25mm、さらに好ましくは約2〜約15mm、またさらに好ましくは約3〜約10mmである。好ましい実施形態において、本明細書のシートは、シートを剛性にするのに十分な厚さを有し、それは一般に約0.50mm以上で生じる。しかしながら、25mmより厚く、0.25mmよりも薄いシートが形成され得る。それに対応して、本発明のポリマーから形成されるフィルムは、ほとんどすべての場合において、約0.25mm未満の厚さを有する。
【0064】
フィルムおよびシートは、押出し成形、圧縮、溶液流延、浸し塗り、射出成形、貼合せ、ブロー成形フィルム、押出しコーティング、およびタンデム押出しコーティングなど、当技術分野で公知のプロセスによって形成することができる。フィルムおよびシートは、溶融押出し成形、溶融共有押出し、溶融押出しコーティング、ブロー成形フィルムによって、または直列(tandem)溶融押出しコーティングプロセスによって形成され得る。これらのプロセスそれぞれのパラメーターは、コポリエステル組成物の粘度特性、または物品の組成および所望の厚さによって決定される。容器は、ブロー成形、射出成形、射出延伸ブロー成形、押出しブロー成形を用いて1〜2工程で製造することもできる。
【0065】
本明細書のフィルムまたはシートは、押出し成形および/または仕上げ中に、他のポリマー材料と組み合わせられ、向上した特性を有するラミネートまたは多層シートが形成され得る。特に、本明細書のポリマーフィルムまたはシートは、以下の:例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンフランジカルボキシレート(PEF)、ポリブチレンフランジカルボキシレート(PBF)、アラミド、ポリエチレンスルフィド(PES)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリイミド(PI)、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリスルホン(PS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリオレフィン、ポリエチレン、ポリ(環状オレフィン)およびポリ(シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)のうちの1つまたは複数と組み合わせることができる。本発明の開示内容のポリエステルポリマーと併せて使用され得る他のポリマーは、米国特許出願第09/064,826号明細書および米国特許出願第09/064,720号明細書に記載のポリマーである。多層またはラミネートシートは、当技術分野で公知の方法によって製造することができ、当技術分野で公知のように、熱、接着剤および/または結合(tie)層によって、互いに合わせられた5層以上と多くの別々の層を有し得る。
【0066】
上述の組成物は、重合溶融物から直接、フィルムまたはシートへと形成することができる。代替方法において、組成物は、溶融物から容易に取り扱いできる形状(ペレットなど)へと形成され、次いでそれを使用してフィルムまたはシートを形成することができる。例えば、標識、ガラス工事(glazing)(バス停のシェルター、天窓、またはレクリエーション用自動車など)、ディスプレイ、自動車用ライトの形成のために、かつ物品の熱形成において使用することができる。
【0067】
その代わりに、本明細書に記載の組成物を含む物品は、圧縮成形、射出成形、押出し成形、吹込み成形、射出吹込み成形、射出延伸ブロー成形、押出しブロー成形などの従来の成形プロセスによって製造され得る、成形品である。例えば、圧縮成形によって形成されるコアが射出成形によって重ね成形される場合など、これらのプロセスの2種類以上の組み合わせによって物品を形成することもできる。
【0068】
特に、本明細書において上述の組成物は:
・衣料品またはフローリング用途;
・一軸または二軸延伸フィルム、および他のポリマーと多層にされたフィルム;
・食料品で使用するための粘着または収縮フィルム;
・ミルク、ヨーグルト、肉、飲料等の容器など、単層および多層状の両方の、熱形成された食品包装または容器;
・限定されないが、ステンレス鋼、炭素鋼、アルミニウムなどの金属で構成される基材上に、押出しコーティングまたは粉体コーティング法を用いて得られるコーティングであって、結合剤、流れを制御する試剤、例えばシリカ、アルミナなどを含み得る、コーティング;
・例えば、紙、プラスチック、アルミニウム、または金属フィルムなどの剛性または可撓性基材を有する多層ラミネート;
・焼結によって得られる部品の製造用の発泡ビーズまたは発泡性ビーズ;
・予め発泡された物品を使用して形成された発泡ブロックなど、発泡および半発泡製品;
・発泡シート、熱形成フォームシート、および食品包装で使用される、それらから得られる容器;
の製造に適している。
【0069】
フラン−PTMEGソフトセグメントおよびPTFハードセグメントを含むコポリエステルを製造する方法
上記で開示されるコポリエステルは、1,3−プロパンジオール(PDO)から;2,5−フランジカルボン酸(FDCA)またはその誘導体から;ポリ(アルキレンエーテル)グリコール(PAEG)、例えばポリ(テトラメチレングリコール)(PTMEG)から製造することができる。2,5−フランジカルボン酸の誘導体において、フラン環の3および/または4位の水素は、所望の場合には、互いに独立して、−CH、−Cで、またはO、N、SiおよびSからなる群から選択されるヘテロ原子1〜3個を任意に含有し、かつ−Cl、−Br、−F、−I、−OH、−NHおよび−SHからなる群から選択される少なくとも1つのメンバーで任意に置換もされている、C〜C25直鎖、分岐状または環状アルカン基で、置き換えることができる。2,5−フランジカルボン酸の誘導体は、酸部位の一方または両方の位置でのエステルまたはハロゲン化物の置換によって製造することもできる。
【0070】
コポリエステルは、2段階プロセスによって製造することができ、最初にプレポリマーがPDO、PAEG、およびFDCAまたはその誘導体から製造され、その結果、主鎖内に2,5−フランジカルボキシレート部位を有するオリゴマーが形成される。この中間体生成物は好ましくは、2つのジオールモノマー(PDOおよびPAEG)と1つの二酸モノマーで構成されるエステルであり、二酸モノマーの少なくとも一部が2,5−FDCAを含み、続いて、適切な重合条件下にてプレポリマーが溶液重合される。かかる条件は通常、余分なジオールモノマーを除去するための減圧を伴う。2,5−フランジカルボン酸のエステルまたは二酸自体またはその両方の混合物を使用してもよい。
【0071】
例えば、工程(I)において、ジメチル−2,5−フランジカルボキシレートを触媒エステル交換反応プロセスで約2当量のジオール(PDOおよびPAEG)と反応させて、プレポリマーが生成され、2当量のメタノールが除去される。このエステル交換反応工程によって、除去が容易なメタノール、揮発性アルコールが生成されるため、ジメチル−2,5−フランジカルボキシレートが好ましい。しかしながら、出発原料として、2,5−フランジカルボン酸と他の揮発性アルコールまたはフェノール(例えば、150℃未満、好ましくは100℃未満、さらに好ましくは80℃未満の気圧での沸点を有する)とのジエステルも使用することができる。したがって、好ましい例としては、エタノール、メタノールおよびエタノールとメタノールの混合物が挙げられる。前述の反応によって、ポリエステルが形成される。さらに、ジオールモノマーは、所望の場合には、グリセロール、ペンタエリトリトールまたは糖アルコールなどの更なるヒドロキシル基を含有し得る。フラン二酸を直接使用してもよいし、ジエステルへと転化してもよいし、あるいはジエステルと共に添加することができる。
【0072】
このプロセスの工程(II)は触媒重合工程であり、減圧下にて高温で、適切な触媒の存在下にてプレポリマーが重縮合される。このプロセスの種々の実施形態において、第1工程は、好ましくは約150〜約260℃の範囲、さらに好ましくは約180〜約240℃の範囲の温度で特定のエステル交換反応触媒によって触媒され、出発エステル含有率が低減されるまで、約3モル%から約1モル%未満の範囲に達するまで行われる、エステル交換反応工程である。したがって、エステル交換反応触媒の選択は、重縮合工程で使用される触媒の選択によって影響される。Tyzor(登録商標)有機チタネートおよびジルコネート触媒、例えばTyzor(登録商標)TPT、Tyzor(登録商標)TBTを使用することができる。スズ(IV)ベースの触媒、好ましくは有機スズ(IV)ベースの触媒、例えばモノアルキルスズ(IV)塩、ジアルキルおよびトリアルキルスズ(IV)塩およびその混合物などのアルキルスズ(IV)塩も、エステル交換反応触媒として使用することができ、オクタン酸スズ(II)などのスズ(II)ベースの触媒よりも優れている。これらのスズ(IV)ベースの触媒は、代替のまたは更なるエステル交換反応触媒と共に使用され得る。アンチモンベースの触媒も使用することができる。
【0073】
工程1で使用され得る、代替のまたは更なるエステル交換反応触媒の例としては、チタン(IV)アルコキシドまたはチタン(IV)キレート、ジルコニウム(IV)キレート、またはジルコニウム(IV)塩(例えば、アルコキシド);ハフニウム(IV)キレートまたはハフニウム(IV)塩(例えば、アルコキシド)のうちの1種または複数種が挙げられる。他の適切なエステル交換反応触媒は、ブチルスズ(IV)トリス(オクトエート)、ジブチルスズ(IV)ジ(オクトエート)、ジブチルスズ(IV)ジアセテート、ジブチルスズ(IV)ラウレート、ビス(ジブチルクロロスズ(IV))オキシド、ジブチルスズジクロリド、トリブチルスズ(IV)ベンゾエートおよびジブチルスズオキシド、アンチモンオキシドである。他の適切な有機エステル交換反応触媒としては、限定されないが、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デク−5−エン(TBD)および1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)が挙げられる。
【0074】
反応中に存在する活性触媒は、反応混合物に添加される触媒とは異なり得る。触媒は、初期ジエステルに対して約0.01〜約0.2モル%、さらに好ましくは初期ジエステルに対して約0.04〜約0.16モル%の量で使用される。
【0075】
その後の重縮合工程において、中間体生成物がそれ自体で使用される。この触媒重縮合工程において、減圧下にて高温で、かつ適切な触媒の存在下にて、プレポリマーを重縮合する。その温度は、好ましくはポリマーのおよその融点〜この融点を約30℃超える温度の範囲であるが、好ましくは約180℃以上である。圧力は好ましくは徐々に下げるべきである。圧力は好ましくは可能な限り低く、さらに好ましくは1ミリバール未満に下げるべきである。
【0076】
この第2工程は好ましくは、以下に挙げる触媒のうちの1つなど、重縮合触媒によって触媒され、この反応は好ましくは、おさやかな溶融条件で行われる。適切な重縮合触媒の例としては、チタン(IV)アルコキシドまたはチタン(IV)キレート、ジルコニウム(IV)キレート、またはジルコニウム(IV)塩(例えば、アルコキシド);ハフニウム(IV)キレートまたはハフニウム(IV)塩(例えば、アルコキシド)スズ(II)塩、例えばスズ(II)オキシド、スズ(II)ジオクテート、ブチルスズ(II)オクトエート、またはスズ(II)オキサレートが挙げられる。他の触媒としては、スズ(IV)触媒の還元によって得られるスズ(II)塩、例えばアルキルスズ(IV)、ジアルキルスズ(IV)、またはトリアルキルスズ(IV)塩、還元性化合物と共にエステル交換反応触媒として使用されるアンチモンベースの塩が挙げられる。反応の有効性を高めるために、縮合反応前に更なる触媒を添加することができる。使用される還元性化合物はよく知られている還元性化合物、好ましくはリン化合物であり得る。種々の適切な還元性化合物は、三価リンの有機リン化合物、特にモノアルキルまたはジアルキルホスフィネート、ホスホナイト、またはホスファイトである。適切なリン化合物の例は、トリフェニルホスファイト、ジフェニルアルキルホスファイト、フェニルジアルキルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジステアリルペンタエリトリトールジホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ジイソデシルペンタエリトリトールジホスファイト、ジ(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリトリトールジホスファイト、トリステアリルソルビトールトリホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)4,4’−ジフェニレンジホスホナイト、4,4’−イソプロピリデンジフェノールアルキル(C12〜15)ホスファイト、ポリ(ジプロピレングリコール)フェニルホスファイト、テトラフェニルジプロピレングリコールホスファイト、テトラフェニルジイソプロピレングリコールホスファイト、トリスイソデシルホスファイト、ジイソデシル−フェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、およびこれらの混合物である。
【0077】
様々な実施形態において、したがって触媒は、チタン(IV)アルコキシドまたはチタン(IV)キレートなどのチタン塩および/または還元剤と共に使用することができるジルコニウム塩が挙げられる。好ましくは、還元性化合物は、プレポリマーの溶融物に添加される。この段階での還元性化合物の添加によって時に、ポリマー生成物の変色が避けられ、ポリマーの分子量が増加される。したがって、特に興味の対象となるエステル交換反応触媒と重縮合触媒の組み合わせは、好ましくはトリフェニルホスファイトおよび/またはトリス(ノニルフェニル)ホスファイトで、重縮合中のスズ(II)型触媒へと還元されるエステル交換反応中のスズ(IV)型触媒をベースとすることが判明している。
【0078】
触媒は、初期のジエステルに対して約0.01〜約0.2モル%、さらに好ましくは初期のジエステルに対して約0.04〜約0.16モル%の量で使用される。
【0079】
固相重合(SSP)プロセスにおいて、ポリマーのペレット、顆粒、チップまたはフレークは、ホッパー、タンブル乾燥機または垂直管型反応器等において一定の時間、高温にさらされる。FDCAベースのポリマーのSSP中のチタンベースの触媒の存在は、ポリマーが20,000以上の数平均分子量に達することを可能にする。再循環されたPETをアップグレードするために通常使用されるSSPと比較して、その温度は高温であるべきであるが、それでも、ポリマーの融点を(はるかに)下回る温度を維持すべきである。
【0080】
反応性ブレンドによって、フラン−PTMEGソフトセグメントとPTFハードセグメントを含むコポリエステルを製造する方法
一実施形態において、フラン−PTMEGソフトセグメントとPTFハードセグメントを含むコポリエステルを製造するプロセスであって、溶融混合によって少なくとも200℃の温度でポリ(トリメチレンフランジカルボキシレート)(PTF)とポリ(アルキレンエーテル)グリコール(PAEG)を含むポリマー組成物をブレンドし、反応させることを含むプロセスが提供される。適切なプロセスは、一軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機における、2本ロールミル上での、スクリュー供給射出成形機における、またはバンバリーミキサーなどの内部混合機における溶融ブレンドを含む。好ましくは、押出機を使用して成分を溶融ブレンドし、反応性ブレンド組成物が形成される。そのプロセスはさらに、好ましい押出し成形プロセスを用いて説明される。
【0081】
PTFとPAEGを含むポリマー組成物は、市販されている液体または固体(顆粒またはフレーク)状態のままで押出機に供給される。一実施形態において、供給すべきPAEGの量は、最終ソフトセグメント含有率1〜50重量%が得られる量である。押出機内での溶融物の混合温度は、押出機を通して加工することができるように、ポリマーを溶融するのに十分な温度であるだろう。用いられる正確な温度は、ブレンドにおいて使用される最も高い融点のポリマーの溶融加工温度に依存する。PTF/PAEGブレンドの溶融加工温度は、ポリマーブレンドの当業者によってよく理解することができるように、少なくとも200℃であるだろう。ポリマー成分は、約5秒〜約5分など、非常に短い時間、押出機内にある。押出機を出た後に反応が続くため、反応を押出機内で終了する必要はない。
【0082】
フラン−PTMEGソフトセグメントとPTFハードセグメントを含む、反応性ブレンドによって形成されるコポリエステルは、多くの用途を有する。シート、フィルム、パイプ、および他の造形物品など、様々なプロファイルおよび形状へと物品を押出し成形することができる。射出成形、トランスファー成形または圧縮成形によって、組成物を成形してもよい。組成物は、従来のカレンダー加工装置を使用して、シートおよびフィルムへとカレンダー加工され得る。
【0083】
上記で開示される組成物の製造方法
上記で開示される組成物は、溶融混合装置において溶融ブレンドすることによって製造することができる。適切な溶融混合装置としては、限定されないが、二軸スクリュー押出機、一軸スクリュー押出機、ファレル(Farrell)ミキサー、ミクロ配合機(micro compounder)(例えば、DSM microcompounder)、ハッケ(Haake)ミキサー、およびBrabender Instruments,Hackensack,N.J.から市販のBrabender PlastiCorder(登録商標)が挙げられる。PlastiCorder(登録商標)は、チャンバを開けるため、かつその中で混合される材料を取り出すために分けられ得る、2または3つの部品で構成される加熱チャンバからなる。このチャンバは、強力モーターによって駆動される2つの回転ブレードを含有する。PlastiCorder(登録商標)内で、成分は通常、加熱チャンバの上部の落し口を通して一度に添加され、固形材料が急速に添加されてすぎてモーターが失速しないように、トルクをモニターする。加熱温度およびブレードの回転は制御することができる。落し口を通して、不活性ガス、例えば窒素を導入して、かなり不活性な雰囲気を維持することができる。
【0084】
プロパンジオール、2,5−フランジカルボン酸ジメチルエステル、ポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール、任意のトリメチルトリメリテート、およびIrganox(登録商標)酸化防止剤を、溶媒の非存在下にてチタンテトラアルコキシド触媒を使用して重合することによって、コポリエステルを製造することができる。重合は室温で開始し、主に230〜250℃で行われる。
【0085】
それぞれのポリマー片またはペレットを逐次、PlastiCorder(登録商標)に添加することによって、PTFとコポリエステルを含む組成物を製造することができる。代替方法としては、その2種類のポリマーペレットまたは片の混合物をPlastiCorder(登録商標)に導入することができる。成分の総装入量は約40〜50gである。PlastiCorder(登録商標)混合チャンバの温度は約200〜230℃に維持され、ブレードの回転は50〜100rpm、最も好ましくは75rpmに設定される。ポリマーは、約1分でチャンバに導入され、混合は約5〜30分間、一般に5〜20分間行われる。ブレードの回転を逆にすることによって、PlastiCorder(登録商標)の上部落し口から、混合物を排出することができる。チャンバが取り外される際に、ポリマーのより多くがチャンバからこすり取られ、まだ溶解状態である場合には主に壁からこすり取られる。
【0086】
PTFと可塑剤を含む組成物は、PlastiCorder(登録商標)内にPTFを供給し、次いで可塑剤を供給することによって製造することができる。PTFおよびコポリエステルとほぼ同じ条件下にて混合が行われる。成分は合計約40〜50gであり、PTF濃度は、可塑剤の約10〜20倍である。上述と同じ手法でポリマー組成物が取り出される。
【0087】
コポリエステルと可塑剤を含む組成物は、PTFおよび可塑剤と同じ手法および同じ比率で混合することによって製造することができる。
【0088】
PTF、コポリエステル、および可塑剤を含む組成物は、PTFおよび可塑剤と同じ手法で混合し、取り出すことによって製造することができる。PTFおよびコポリエステルは、PlastiCorder(登録商標)に逐次、添加され得る。代替方法としては、PTFおよびコポリエステルの片またはペレットをタンブル混合し、そこ混合物をPlastiCorder(登録商標)に添加することができる。次いで、可塑剤が添加される。
【0089】
PTF、コポリエステル、および核剤を含む組成物は、各ポリマーのペレット片をPlastiCorder(登録商標)に逐次添加することによって製造することができる。代替方法としては、その2種類のポリマーのペレットまたは片の混合物をPlastiCorder(登録商標)に導入することができる。核剤はポリマーの後に、またはポリマーと共に添加することができる。PlastiCorder(登録商標)混合チャンバの温度は約200〜230℃に維持され、ブレードの回転は50〜100rpm、最も好ましくは75rpmに設定される。ポリマーは、約1分でチャンバに導入され、混合は約5〜30分間、一般に5〜20分間行われる。成分の総装入量は約40〜50gであり、PTFとコポリエステルの比は約50:50である。ブレードの回転を逆にすることによって、PlastiCorder(登録商標)の上部落し口から、混合物を排出することができる。チャンバが取り外される際に、ポリマーのより多くがチャンバからこすり取られ、まだ溶解状態である場合には主に壁からこすり取られる。
【0090】
PTF、可塑剤、および核剤を含む組成物は、PlastiCorder(登録商標)内にPTF、次いで可塑剤および核剤を供給することによって製造することができる。可塑剤および核剤はどちらの順序でも添加することができる。核剤はポリマーの後に、またはポリマーと共に添加することができる。PTFおよびコポリエステルとほぼ同じ条件下で混合が行われる。可塑剤は、ポリエチレングリコールまたはポリテトラメチレングリコールまたは誘導体である。ポリマー組成物は、同じ手法で取り出される。
【0091】
コポリエステル、可塑剤、および核剤含む組成物は、PTFをコポリエステルに置き換えて、PTF、可塑剤、および核剤を含有する組成物と同じ手法で製造することができる。
【0092】
PTF、コポリエステル、可塑剤、および核剤を含む組成物は、PTF、可塑剤、および核剤を含む組成物と同じ手法で混合し、取り出すことによって製造することができる。
【0093】
本明細書で使用される、「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「包含する(includes)」、「包含する(including)」、「有する(has)」、「有する(having)」という用語またはその他のいずれかの変形形態は、非排他的な包含を含むことが意図される。例えば、リストの要素を含む、プロセス、方法、物品、または装置は、それらの要素のみに必ずしも限定されず、明示されていない他の要素、またはかかるプロセス、方法、物品、または装置に固有の他の要素を含み得る。さらに、それと反対に明らかに指定されていない限り、「または(or)」は、排他的なorではなく、包含的なorを意味する。例えば条件AまたはBは、以下の:Aは真であり(または存在し)かつBは偽である(または存在しない)、Aは偽であり(または存在しない)かつBは真である(または存在する)、およびAとBのどちらも真である(または存在する);のうちのいずれか1つによって満たされる。
【0094】
本明細書で使用される、「1つまたは複数(1種または複数種)」というフレーズは、非排他的な包含を含むことが意図される。例えば、A、B、およびCのうちの1つまたは複数は、以下の:Aのみ、Bのみ、Cのみ、AとBの組み合わせ、BとCの組み合わせ、AとCの組み合わせ、またはA,B、およびCの組み合わせ;のうちのいずれか1つを意味する。
【0095】
上記の詳述において、具体的な実施形態を参照して、概念が開示されている。しかしながら、以下の特許請求の範囲に記載の本発明の開示内容の範囲から逸脱することなく、様々な修正および変更を加えることができることは、当業者は理解されよう。
【0096】
利益、他の利点、および問題に対する解決策は、特定の実施形態に関して上記で説明されている。しかしながら、利益、利点、問題に対する解決策、およびいずれかの利益、利点、または解決策を生じさせ得る、またはより顕著にする、特徴は、いずれかの、またはすべての実施形態の重要な、必要とされる、または必須の特徴として解釈されるものではない。
【0097】
特定の特徴は、理解しやすいように、別々の実施形態の文脈内で本明細書において説明されており、1つの実施形態において組み合わせて提供もされ得ることを理解されたい。逆に、1つの実施形態の文脈で簡潔に記述される様々な特徴は、別々に、またはサブコンビネーションで提供もされ得る。さらに、範囲内で示される値の言及は、その範囲内のそれぞれの値およびすべての値を含む。
【0098】
本明細書に開示される概念はさらに、以下の実施例で説明されるが、特許請求の範囲に記載の本発明の教示の範囲を制限しない。
【0099】
本明細書に記載の実施例は、コポリエステル、コポリエステルと、核剤、可塑剤またはPTFのうちの1つまたは複数とを含む組成物に関する。
【実施例】
【0100】
試験法
サイズ排除クロマトグラフィーによる分子量
サイズ排除クロマトグラフィーシステム、Alliance2695(商標)(Waters Corporation,Milford,MA)は、Waters414(商標)示差屈折率検出器、多角度光散乱光度計DAWN Heleos II(Wyatt Technologies,Santa Barbara,CA)、およびViscoStar(商標)示差毛管粘度計検出器(Wyatt)を備えた。データ収集およびデータ処理のソフトウェアはWyatt社のAstra−version 5.4であった。使用されたカラムは、2つあり;1つは排除限界2×10および理論段数8,000/30cmを有するShodex GPC HFIP−806M(商標)スチレン−ジビニルベンゼンカラム;もう1つは排除限界2×10および理論段数10,000/30cmを有するShodex GPC HFIP−804M(商標)スチレン−ジビニルベンゼンカラムであった。
【0101】
穏やかに撹拌しながら50℃にて4時間混合することによって、0.01Mトリフルオロ酢酸ナトリウムを含有する1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール(HFIP)に試験片を溶解し、続いて0.45μmPTFEフィルターを通して濾過した。溶液の濃度は約2mg/mLであった。
【0102】
流量0.5ml/分で、35℃で設定されたクロマトグラフでデータを取った。注入容積は100μlであった。実施時間は80分であった。上述の3つすべての検出器からのデータを組み込んで、データ処理を行った。光散乱検出器で8つの散乱角を用いた。カラム較正のための標準は、データ処理に含まれなかった。
【0103】
固有粘度による分子量
Viscotek(登録商標)Forced Flow Viscometer Model Y−501Cで検定標準としてT−3、Selar(登録商標)X250、Sorona(登録商標)64を使用して、Goodyear R−103B Equivalent IV法を用いて、固有粘度(IV)を決定した。塩化メチレン/トリフルオロ酢酸が溶媒担体であった。
【0104】
熱分析
ASTM D3418−08に準拠して行われる示差走査熱量測定(DSC)によって、ガラス転移温度(T)および融点(T)を決定した。
【0105】
H−NMR分光法
5mm PFG13C−31P/{H,19F}AutoXプローブを備えた500MHz Agilent DD2 NMR分光計を使用して、ポリマーの特徴付けを行った。1Hデータ収集の一般的な実験パラメーターは:25℃の試料、8スキャン、リサイクル遅延30秒、スペクトル幅12886Hzおよび収集時間2.5秒であった。1Hデータの一般的な処理パラメーターは:64Kポイントまでのゼロフィリングおよびフーリエ変換スペクトル前の0.3Hzの指数関数的倍増であった。テトラクロロエタン(tce−d2)を溶媒として使用した。
【0106】
広角X線散乱(WAXS)
CuK−α線(波長=1.5418)を生成するCurved Graphite Monochromatorを備えたPANalytical X’Pert MPD回折計でポリマーの特徴付けを行った。測定条件:発散スリット0.5度、散乱防止スリット(anti−scatter slit)0.5度および受信スリット0.3mm、および発生器設定45kV,40mA。反射配置においてデータを収集する。回析スキャン範囲は、2θ 4〜40度であり、ステップサイズ0.05度である。測定中、カウント時間5秒/工程で2秒/回転で試料を回転させる。WAXSによって回折パターンが形成され、それから結晶性が測定され、結晶化度(CI)として表される。CIは、XRDパターンにおける結晶質ピーク領域と非晶質領域の総面積に対する結晶質ピークの総面積のパーセンテージとして定義される。CIは、0(非晶質)〜100(完全な結晶質)の範囲であり得る。かかる手順によって計算される結晶化度によって結晶性の絶対値は得られないが、結晶性に比例する値が得られることに留意されたい。製造された状態のままの試料、または再結晶化された試料のいずれかから、周囲温度にてポリマーを試験した。
【0107】
材料
以下の実施例に使用される、1,3−プロパンジオール(BioPDO(商標))、および厚さ10ミルKapton(登録商標)ポリイミドフィルムが、DuPont Company(Wilmington,DE)から入手され、別段の指定がない限り、入手した状態のままで使用された。チタン(IV)イソプロポキシド(TPT)、チタン(IV)イソブトキシド(TBT)、トリメチルトリメリテート(TMTM)、およびポリ(テトラヒドロフラン)akaポリ(テトラメチレングリコール)aka PTMEG aka Terathane(登録商標)(1000D、または1400D)が、Aldric社から入手され、入手した状態のままで使用された。2,5−フランジメチルエステル(FDME)がAstaTech Inc.(Bristol,PA)から入手され、入手した状態のままで使用された。Irganox(登録商標)1019、およびIrganox(登録商標)1098が入手され、入手した状態のままで使用された。Plasthall(登録商標)809、ポリエチレングリコール(MW400g/モル)ビス(2−エチルヘキサノエート)が、HallStar(Chicago,IL)から入手され、入手した状態のままで使用された。Licomont(登録商標)NaV 101、モンタン酸ナトリウムは、Clariant(Charlotte,NC)から入手された。
【0108】
FDMEおよびBioPDO(商標)からのポリ(トリメチレンフランジカルボキシレート)(PTF)の製造
以下に示すポリ(トリメチレンフランジカルボキシレート)(PTF)のいくつかのバッチを実験室規模および大規模でも合成した。表1に、異なるバッチから得られるPTFの特性をまとめる。
【化4】
【0109】
対照A:FDMEおよびBioPDO(商標)からのPTFの製造(PTF−A)
ポリマー理論収量133gを得るために:Bio−PDO(93g,1.22モル)、FDME(125g,0.678モル)、およびIrganox−1010(0.26g)を予め乾燥させた500mL三つ口丸底フラスコに装入した。オーバーヘッドスターラーおよび蒸留凝縮器を取り付けた。50回転数/分(rpm)の速度で反応物を撹拌し、窒素(N)パージ雰囲気下に反応物を維持し、凝縮器を23℃で維持した。100トルまで排気し、Nガスで再び充填することによって、内容物を3回脱ガスした。最初の排気後に、Tyzor(登録商標)TPT触媒[78mgまたは82μL]を添加した。160℃に設定された、予熱された金属浴内にフラスコを沈め、20分間平衡化して、固体を溶融した。温度を180℃に上げ、60分間維持し、その後、温度を210℃に上げ、さらに60分間維持して、エステル交換およびメタノールの蒸留を完了した。窒素パージを閉じ、真空傾斜を開始し、約60分後に、真空が50〜60ミリトルの値に達した。温度を230℃に上げ、50〜180rpmで撹拌しながら、反応を真空下で3時間維持した。一定間隔をあけて、撹拌速度を180rpmに調節し、次いで撹拌機を止めた。撹拌機を再始動し、始動して約5秒後の適用されたトルクを測定した。真空を止める前に、オーバーヘッド撹拌機を停止し、反応容器の底から持ち上げ、システムをNガスでパージした。ケトル反応器を離し、生成物をデカントし、窒素パージ下にて冷却した。収量約120g。
H−NMR(TCE−d)δ:7.05(s,2H),4.40(m,4H),2.15(m,2H).
(SEC)約19500D,PDI1.8.
【0110】
製造した状態のままのポリマーの0にて、115℃で6時間再結晶化されたポリマー試料19にて、WAXSからの結晶化度を測定した。
【0111】
対照B:FDMEおよびBioPDO(商標)からのPTFの製造(PTF−B)
ポリマー理論収量106gを得るために:オーバーヘッドスターラーおよび蒸留凝縮器を備えた、予め乾燥させた500mL三つ口丸底フラスコに、2,5−フランジメチルエステル(100g,0.54モル)およびBioPDO(商標)(74.4g,0.98モル)を装入した。23℃であったフラスコに、窒素パージを適用し、50rpmにて撹拌を開始してスラリーが形成した。撹拌しながら、フラスコを合計3サイクルの間、100トルまで排気し、次いでNガスで再加圧した。最初の排気および再加圧後、DuPont社から市販のTyzor(登録商標)チタン(IV)イソプロポキシド63mgを添加した。
【0112】
排気および再加圧の3サイクル後、160℃に設定された、予熱された液体金属浴内にフラスコを沈めた。液体金属浴内にそれを置いた後20分間、フラスコの内容物を撹拌し、固体成分の溶融が起こり、その後、撹拌速度を180rpmまで上げ、液体金属浴設定ポイントを180℃に上げた。約20分後、浴はその温度に到達した。次いで、フラスコを180rpmで撹拌しながら、さらに120分間180℃に維持し、反応で形成されたメタノールの大部分を蒸留除去した。180℃での維持期間に続いて、窒素パージを停止し、撹拌を続けながら10秒毎に約−10トル刻みで真空を徐々に適用した。約60分後に、真空が50〜60ミリトルに達した。撹拌速度を50rpmに下げ、液体金属浴設定ポイントを230℃に上げた。約20分後、浴はその温度に達し、その条件を約3時間維持した。
【0113】
一定間隔をあけて、撹拌速度を180rpmに下げ、次いで撹拌機を停止した。撹拌機を再始動し、再始動して約5秒後の適用されたトルクを測定した。オーバーヘッドスターラーを反応容器の底から持ち上げ、次いで真空を止め、システムをNガスでパージした。このように形成されたポリマー生成物を周囲温度に冷却し、ハンマーでグラスを注意深く割った後に生成物を回収した。収量約95g。
H−NMR(TCE−d)δ:7.05(s,2H),4.40(m,4H),2.15(m,2H).
(SEC)約10300D,PDI約2.0.IV約0.57dL/g.
【0114】
対照C:FDMEおよびBioPDO(商標)からのPTF(PTF−C)の大規模合成工程1:bioPDO(商標)およびFDMEの重縮合によるPTFプレポリマーの製造
撹拌棒、撹拌機および凝縮塔を備えた100ポンドのステンレス鋼撹拌反応器に、2,5−フランジメチルエステル(27000g)、1,3−プロパンジオール(20094g)、チタン(IV)ブトキシド(40.8g)を装入した。窒素パージを適用し、51rpmにて撹拌を開始してスラリーが形成された。撹拌しながら、反応器を弱い窒素パージにかけて、不活性雰囲気を維持した。オートクレーブを設定ポイント243℃に加熱し、メタノールの発生が、バッチ温度約158℃にて開始した。メタノールの蒸留は265分間続き、その間、バッチ温度は158℃から244℃へと上昇した。メタノールの蒸留が完了した後、真空傾斜を開始し、120分間に圧力が760トルから1トルへと下げられた。1トルの時には、混合物は真空下に置かれ、165分間撹拌され、撹拌速度の定期的な減少に加えて、最低圧力0.56トルに達し、その後に窒素を使用して、容器を760トルへと加圧した。
【0115】
形成されたポリマーは、容器の底の出口バルブを通して、急冷水浴内へと溶融物をポンプ注入することによって回収された。エアジェットを備えたペレタイザーに、このように形成されたストランドを通し、ポリマーを乾燥させて水分を含まないようにし、ポリマーストランドを切断してペレットを形成した。収量は約24710gであった。IV約0.63dL/g。
【0116】
9回を超える回数、この製造を繰り返した。
【0117】
工程2:工程1から得られた残余PTFポリマーの処理
工程1に記載の10通りの製造のそれぞれの結果として、一般に、ペレットへと変換されないか、またはペレットサイズの基準から外れる、残余PTFポリマー約3kgが生じた。この残余ポリマーは、ペレット、未切断ストランド、ペレット化プロセスおよび反応器からのポリマー溶融物の除去中に回収された固形ポリマーを含む。工程1の10通りの製造のそれぞれで回収された残余ポリマーを合わせ、より使用可能な形状の生成物へとさらにアップグレードした。固体部分を液体窒素で凍結し、ハンマーで小片へと破砕した。次いで、残余ポリマー全体をハンマーミルで凍結粉砕して、粉末とポリマー粒子の混合物を製造した。次いで、バレル温度230℃および質量処理量30ポンド/時で操作される30mm二軸スクリュー押出機(Coperion社製ZSK30 Coperion)を使用して、粉砕された残余ポリマーを溶融加工した。単口ダイを通して急冷水浴へと、ポリマー溶融物を押出し成形した。エアジェットを備えたペレタイザーに、このように形成されたストランドを通し、ポリマーを乾燥させて水分を含まないようにし、ポリマーストランドを切断してペレットを形成した。加工された残余ポリマーの収量は、ペレット約27100gであった。IV約0.63dL/g。
【0118】
SEC分析から、ポリエステルはM(SEC)13,120DaおよびPDI2.2を有することが分かった。
【0119】
【表1】
【0120】
実施例1:BioPDO(商標)、FDME、およびPTMEG(フラン−PTMEG)から製造されるコポリエステルからの合成および熱的性質
bioPDO、FDMEおよびPTMEGから、フラン−PTMEGソフトセグメントとPTFを含む、様々な量のフラン−PTMEGソフトセグメント有するコポリエステルを製造した。
【化5】
【0121】
実施例1.1 フラン−PTMEGソフトセグメント50重量%およびPTFハードセグメント50重量%を含むコポリエステル(フラン−PTMEG−1.1)の製造
ポリマー理論収量150gを得るために:BioPDO(59.8g,0.78モル)、FDME(72.5g,0.393モル)、PTMEG(77.3g,55.2ミリモル)、TMTM(115mg,0.45ミリモル)、Irganox(登録商標)1019(225mg)、およびIrganox(登録商標)1098(225mg)を、予め乾燥させた500mL三つ口丸底フラスコに装入した。オーバーヘッドスターラーおよび蒸留凝縮器を取り付けた。50回転数/分(rpm)の速度で反応物を撹拌し、窒素(N)パージ雰囲気下に反応物を維持し、凝縮器を23℃で維持した。100トルまで排気し、Nガスで再び充填することによって、内容物を3回脱ガスした。最初の排気後に、TBT触媒[0.3gまたは0.31mL]を添加した。160℃に設定された、予熱された金属浴内にフラスコを沈め、20分間平衡化して、固体を溶融した。温度を180℃に上げ、60分間維持し、その後、温度を210℃に上げ、さらに60分間維持して、エステル交換およびメタノールの蒸留を完了した。窒素パージを閉じ、真空傾斜を開始し、約60分後に、真空が50〜60ミリトルの値に達した。温度を230℃に上げ、50〜180rpmで撹拌しながら、反応を真空下で3時間維持した。一定間隔をあけて、撹拌速度を180rpmに調節し、次いで撹拌機を止めた。撹拌機を再始動し、始動して約5秒後の適用されたトルクを測定した。真空を止める前に、オーバーヘッド撹拌機を停止し、反応容器の底から持ち上げ、システムをNガスでパージした。ケトル反応器を離し、生成物をデカントし、窒素パージ下にて冷却した。収量約126g。
H−NMR(TCE−d)δ:7.05(s,2H),4.40(m,4H),3.35(m,4H),2.15(m,2H).
(SEC)約12000D,PDI2.4.
【0122】
H−NMR(TCE−d)分析から、フラン−PTMEGソフトセグメント含有量(約3.35ppm)をPTFハードセグメント含有量(約7.15ppm)と比較することによって、フラン−PTMEGソフトセグメント含有量は約54重量%(約56モル%)であると推定された。
【0123】
実施例1.2 フラン−PTMEGソフトセグメント25重量%およびPTFハードセグメント75重量%を含むコポリエステル(フラン−PTMEG−1.2)の製造
これらの量:BioPDO(商標)(87.2g,1.14モル)、FDME(105.6g,0.573モル)、PTMEG(37.6g,37.6ミリモル)、TMTM(162mg,0.63ミリモル)、Irganox(登録商標)1019(225mg)、およびIrganox(登録商標)1098(225mg)を使用したことを除いては、実施例1.1に記載の手順を用いて、コポリエステルを製造した。収量約106g。
H−NMR(TCE−d)δ:7.05(s,2H),4.40(m,4H),3.35(m,4H),2.15(m,2H).
(SEC)約15700D,PDI2.0.
【0124】
H−NMR(TCE−d)分析から、フラン−PTMEGソフトセグメント含有量(約3.35ppm)をPTFハードセグメント含有量(約7.15ppm)を比較することによって、フラン−PTMEGソフトセグメント含有量は約26重量%(約28モル%)であると推定された。
【0125】
実施例1.3 フラン−PTMEGソフトセグメント5重量%およびPTFハードセグメント95重量%を含むコポリエステル(フラン−PTMEG−1.3)の製造
これらの量:BioPDO(商標)(110.6g,1.454モル)、FDME(133.8g,0.727モル)、PTMEG(7.51g,7.51ミリモル)、TMTM(162mg,0.63ミリモル)、Irganox(登録商標)1019(225mg)、およびIrganox(登録商標)1098(225mg)を使用したことを除いては、実施例1.1に記載の手順を用いて、コポリエステルを製造した。収量約110g。
H−NMR(TCE−d)δ:7.05(s,2H),4.40(m,4H),3.35(m,4H),2.15(m,2H).
(SEC)約20600D,PDI2.1.
【0126】
H−NMR(TCE−d)分析から、フラン−PTMEGソフトセグメント含有量(約3.35ppm)をPTFハードセグメント含有量(約7.15ppm)と比較することによって、フラン−PTMEGソフトセグメント含有量は5.5重量%(約6.1モル%)であると推定された。
【0127】
実施例1.4 フラン−PTMEGソフトセグメント2.5重量%およびPTFハードセグメント97.5重量%を含むコポリエステル(フラン−PTMEG−1.4)の製造
これらの量:BioPDO(商標)(110.6g,1.454モル)、FDME(133.8g,0.727モル)、PTMEG(3.75g,3.75ミリモル)、TMTM(162mg,0.63ミリモル)、Irganox(登録商標)1019(225mg)、およびIrganox(登録商標)1098(225mg)を使用したことを除いては、実施例1.1に記載の手順を用いて、コポリエステルを製造した。収量約83g。H−NMR(TCE−d)δ:7.05(s,2H),4.40(m,4H),3.35(m,4H),2.15(m,2H).
(SEC)約18800D,PDI2.2.
【0128】
H−NMR(TCE−d)分析から、フラン−PTMEGソフトセグメント含有量(約3.35ppm)をPTFハードセグメント含有量(約7.15ppm)と比較することによって、フラン−PTMEGソフトセグメント含有量は2.4重量%(約2.7モル%)であると推定された。
【0129】
実施例1.5 フラン−PTMEGソフトセグメント1重量%およびPTFハードセグメント99重量%を含むコポリエステル(フラン−PTMEG−1.5)の製造
これらの量:BioPDO(商標)(110.6g,1.454モル)、FDME(133.8g,0.727モル)、PTMEG(1.5g,1.5ミリモル)、TMTM(162mg,0.63ミリモル)、Irganox(登録商標)1019(225mg)、およびIrganox(登録商標)1098(225mg)を使用したことを除いては、実施例1.1に記載の手順を用いて、コポリエステルを製造した。収量約82g。
H−NMR(TCE−d)δ:7.05(s,2H),4.40(m,4H),3.35(m,4H),2.15(m,2H).
(SEC)約18000D,PDI2.1.
【0130】
H−NMR(TCE−d)分析から、フラン−PTMEGソフトセグメント含有量(約3.35ppm)をPTFハードセグメント含有量(約7.15ppm)と比較することによって、フラン−PTMEGソフトセグメント含有量は0.9重量%(約1.0モル%)であると推定された。
【0131】
WAXSからの結晶化度は、生成された状態のままのポリマーの0にて、かつ115℃で6時間再結晶化されたポリマー試料の31にて測定された。
【0132】
実施例1.6 フラン−PTMEGソフトセグメント0.5重量%およびPTFハードセグメント99.5重量%を含むコポリエステル(フラン−PTMEG−1.6)の製造
これらの量:BioPDO(商標)(110.6g,1.454モル)、FDME(133.8g,0.727モル)、PTMEG(0.6g,0.6ミリモル)を使用したことを除いては、実施例1.1に記載の手順を用いて、コポリエステルを製造した。収量約90g。
H−NMR(TCE−d)δ:7.05(s,2H),4.40(m,4H),3.35(m,4H),2.15(m,2H).
(SEC)約10000D,PDI2.08.
【0133】
H−NMR(TCE−d)分析から、フラン−PTMEGソフトセグメント含有量(約3.35ppm)をPTFハードセグメント含有量(約7.15ppm)と比較することによって、フラン−PTMEGソフトセグメント含有量は0.5重量%(約0.5モル%)であると推定された。
【0134】
熱的性質
実施例1.1〜1.6および対照Aの概要を以下の表2に示す。加熱速度10℃/分を用いて、加熱−冷却−加熱スキャン(−100〜200℃、200〜−100℃、−100〜200℃)からの第2加熱について、すべての転移を記録した。対照A、PTFと比較して、ガラスから再結晶化する(第2加熱スキャン)、フラン−PTMEGソフトセグメントを含むコポリエステルの能力の意外かつ顕著な差がある。
【0135】
【表2】
【0136】
10℃/分での加熱−冷却−加熱スキャン(−100〜200℃,200〜−100℃,−100〜200℃)。Tg,Tg:ガラス転移温度、Tcc:ガラスからの再結晶化、T:融解転移、ΔH:PTFハードセグメント含有率で正規化された融解エンタルピー。
【0137】
表2から、融解エンタルピーの劇的な増加、約175℃で1J/g未満から約38J/gへのΔHによって示されるように、フラン−PTMEGソフトセグメント1重量%(実施例1.6)など少量のフラン−PAEGソフトセグメントを含むコポリエステルに対して、ソフトセグメントを含有しないPTF(対照A)から継続中の結晶化度の増加があることが実証されている。
【0138】
実施例2:フラン−PTMEGソフトセグメント1重量%を含むコポリエステルからのフィルム(フィルム−フラン−PTMEG−1.5)の製造
上記で開示される実施例1.5から得られたフラン−PTMEGソフトセグメント1重量%を含むコポリエステル(フラン−PTMEG−1.5)は、加熱Pasadenaプレス(モデル番号:P−1250,Pasadena company)を使用して、厚さ0.15〜0.20ミリメートルのフィルムへとプレスされた。それぞれの試料で2枚のフィルムを作製した。基本手順に従って、厚さ0.25ミリメートルのKapton(登録商標)ポリイミドフィルムから製造される切断成形品から、正方形ポリマーフィルムを製造した。ポリマー試料およびKapton(登録商標)フィルムを、ガラス繊維強化Teflon(登録商標)の2枚のシートの間に置き、Pasadenaプレス内に置いた。それぞれの試料を275℃で8分間、圧力0にて予熱した。それを圧力5000psigに7分間さらした。指定の時間の後、プレートをプレスから取り出し、フィルムを氷浴内で急冷した。製造されたフィルムをTeflon(登録商標)シートから離し、DSCを用いてその熱的性質を測定した。以下の表3に、製造されたその2枚のコポリエステルフィルム、フィルム−フラン−PTMEG−1.5のDSCスキャン(第2加熱)からの結果をまとめる。
【0139】
対照:PTFフィルム(フィルム−PTF−A)の製造
実施例2に記載の手順と同様な手順を用いて、対照AのPTFポリマー(フィルム−PTF−A)から2枚のフィルムを製造した。表3に、その製造された2枚のPTFフィルムのDSCスキャン(第2加熱)からの結果をまとめる。
【0140】
【表3】
【0141】
10℃/分での加熱−冷却−加熱スキャン(−100〜200℃,200〜−100℃,−100〜200℃)。Tg:ガラス転移温度、Tcc:ガラスからの再結晶化、T:融解転移、ΔH:PTFハードセグメント含有率で正規化された融解エンタルピー。
【0142】
表3に示される結果から、加熱速度10℃/分で、PTFから形成されるフィルム(ΔH=0.2J/g)と比較して、かなり大きな再結晶化エンタルピー(50J/g)および融解エンタルピー(44J/g)によっても示されるように、フラン−PTMEGソフトセグメントを含むコポリエステル(実施例1.5)から形成されたフィルムの、ガラスから容易に結晶化する能力がはっきりと実証されている。
【0143】
実施例3:PTFおよび核剤を含む組成物の製造
対照BのPTFポリマーをサイズ1インチの片に切断し、それを液体窒素中に5〜10分間入れ、続いて6mmスクリーンを備えたWileyミルに装入した。それぞれの試料を約1000rpmにて粉砕し、最大寸法約1/8インチを特徴とする粗い粒子が形成された。このように形成された粒子を真空下で乾燥させ、周囲温度に温めた。
【0144】
このように製造された粒子を一晩、120℃にて真空オーブン内でわずかな窒素パージ下にて乾燥させた。モンタン酸ナトリウムを一晩真空下で乾燥させた。PTFとモンタン酸ナトリウム(1重量%)とのブレンドをDSMミクロ配合機で製造した。DSMシステムは、PC制御された15立方センチメートル(cc)、共回転、かみ合い(セルフワイピング)、2先端、円錐二軸スクリュー機であり、再循環ループ、排出バルブ、窒素パージシステム、および3つの異なる加熱域を有する。3つすべての加熱域に温度210℃を用いた。ポリマー溶融温度は、197〜198℃の範囲であった。窒素下にて、PTFおよび添加剤を装入し、速度100rpmにて、総混合時間5分の間、撹拌した。混合時間後、排出バルブを開け、周囲温度の水道水で急冷した後、押出しされた幅1/4インチのストランドを回収した。ストランドを真空下で乾燥させ、その結果生じた熱転移の概要を以下の表4に示す。
【0145】
【表4】
【0146】
10℃/分での加熱−冷却−加熱スキャン(−100〜200℃,200〜−100℃,−100〜200℃)。冷却速度1℃/分を用いて、PTFとモンタン酸ナトリウムのこのブレンドによって、溶融物からの再結晶化も実証された(Tcm)。測定されたTcmは128℃であった。
【0147】
表4に示す結果から、ガラスおよび溶融物の両方からPTFを結晶化する、モンタン酸ナトリウムの意外な能力が実証されている。これは、ポリ(エチレンフランジカルボキシレート)(PEF)の結晶化抑制剤としてのモンタン酸ナトリウム0.5〜10重量%の使用に関する米国特許第7,906,572号明細書を考慮すると、意外かつ驚くべき結果である。それと対照的に、表4から、ポリ(トリメチレンフランジカルボキシレート)(PTF)に添加した場合に、モンタン酸ナトリウムは、PTFの核剤(結晶化プロモーター)として作用することが分かる。
【0148】
実施例4:PTFおよび核剤を含む組成物の製造
PTFおよび核剤を含む組成物を以下の実施例4.1に記載のように調製した。
【0149】
実施例4.1:PTFとモンタン酸ナトリウム1重量%を含む組成物の製造
対照Cで製造されるPTFポリマーを表5に示す成分と混合した。わずかに窒素を抜き取ることによって加減された水銀約25インチの真空下(約5インチまたは2.5psiの圧力読み取り値)にて、個々のガラス広口瓶内で真空オーブンで120℃にて一晩、予め計量した量のPTFポリマーペレットを乾燥させた。使用するまで、デシケーター内でDrierite(登録商標)上に広口瓶のカバーを保管した。乾燥ポリマーの広口瓶をオーブンから迅速に取り出し、Drierite(登録商標)乾燥剤が入っているフリクショントップ(friction−top)金属缶に保管した。
【0150】
タイプ6の混合ヘッドおよび一対の二重反転ステンレスローラーブレードを備えたBrabender PlastiCorder(登録商標)Model PL2000ミキサー(C.W.Brabender(登録商標)Instruments,Inc.,South Hackensack,NJ07606)を温度200℃に予熱した。モーターのオーバートルクおよび停止を防ぐのに十分に遅い速度で、混合ヘッドの頂上に位置するラムを通じて送達される窒素ブランケット下にて、ミキサーにPTF50.0gを添加した。ラムを通じて送達される窒素ブランケット下にて、予め計量された量のモンタン酸ナトリウム(0.5g)を添加し、材料を200℃にて75rpmで10分間混合し、実施例4.1のPTF組成物を得た。
【0151】
混合時間の最後に、ローラーブレードの回転を逆回転することによって、溶融PTF組成物を混合ヘッドの上部開口部から押出し、回転が停止するとすぐに取り出した。Brabender PlastiCorder(登録商標)ミキサーから除去すると、まだ溶融状態である間にできる限り平らに材料をプレスした。この部分を分析試験にかけた。混合ヘッドが分解されるとすぐに、溶融材料の他の部分を回収した。この部分は分析しなかった。迅速に除去することができなかったポリマーの残りは廃棄した。
【0152】
PTFの少量部分をDSCによって分析し、その結果を表5にまとめる。表5において報告されるすべての転移は、加熱および冷却速度10℃/分を用いて、加熱−冷却−加熱スキャン(−80〜230℃,230〜−80℃,−80〜230℃)からの第1冷却スキャンおよび第2加熱スキャンについて報告された。
【0153】
実施例4.2:PTFおよびモンタン酸ナトリウム2.4重量%を含む組成物の製造
異なる量のモンタン酸ナトリウム(1.25g)を対照CのPTF(50.0g)に添加したことを除いては、実施例4.1に記載の手順と同様な手順を用いて、PTFと核剤(モンタン酸ナトリウム)を含む組成物を製造した。表5に、その組成物とDSC分析からの結果をまとめる。
【0154】
実施例5:PTFおよび可塑剤を含む組成物の製造
モンタン酸ナトリウムの代わりに、ポリエチレングリコールビス(2−エチルヘキサノエート)(5.0g)を対照CのPTF(45.0g)に添加したことを除いては、実施例4.1および4.2に記載の手順と同様な手順を用いて、PTFと可塑剤を含む組成物を製造した。表5に、その組成物とDSC分析からの結果をまとめる。
【0155】
実施例6:PTF、核剤、および可塑剤を含む組成物の製造
モンタン酸ナトリウム(1.25g)に加えて、ポリエチレングリコールビス(2−エチルヘキサノエート)(2.5g)を対照CのPTF(47.5g)に添加したことを除いては、実施例4.1および4.2に記載の手順と同様な手順を用いて、PTF、核剤(モンタン酸ナトリウム)および可塑剤(ポリエチレングリコールビス(2−エチルヘキサノエート)を含む組成物を製造した。表5に、その組成物とDSC分析からの結果をまとめる。
【0156】
対照D:核剤または可塑剤を含まない処理されたPTF
PTF(50.0g)のみを使用し、添加剤(モンタン酸ナトリウムまたはポリエチレングリコールビス(2−エチルヘキサノエート)を添加しないことを除いては、実施例4.1および4.2に記載の手順と同様な手順を用いて、処理されたPTF、対照Dを製造した。表5に、DSC分析からの結果をまとめる。
【0157】
【表5】
【0158】
10℃/分での加熱−冷却−加熱スキャン(−80〜230℃,230〜−80℃,−80〜230℃)。Tg:ガラス転移温度、Tcc:ガラスからの再結晶化、T:融解転移、ΔH:PTFハードセグメント含有量で正規化された融解エンタルピー。
【0159】
表5から、処理されたPTF(対照D)は結晶化するのは難しいが、実施例4.1〜6と同様にPTFに核剤または可塑剤を添加することによって、ガラス転移温度を超える温度に加熱した場合に、第2加熱で意外かつ顕著な、結晶化する能力を示す組成物が得られることが分かる。この結晶化は、冷結晶化温度(Tcc)にて起こり、冷結晶化の大きさは、冷結晶化の熱(ΔHcc)によって得られる。この結晶化によって、材料に結晶性が付与され、その物理的性質が向上する。結晶性の増加は、約165℃でのこれらの材料の融解エンタルピー(ΔH)の増加によって示される。融点が近付くにつれて、融解エンタルピーが高い材料ほど、結晶性が高くなる。実施例は、ΔHccによって測定される、冷結晶化中に生じる結晶化の程度の望ましい増加、およびΔHによって測定される融点での、もしくは融点付近での結晶化度の望ましい増加を示す。実施例4.1および4.2から分かるように、結晶化度は、核剤の量を1重量%から2.4重量%に増加することによって高めることができる。上記で開示されるように、モンタン酸ナトリウムが、ポリ(トリメチレンフランジカルボキシレート)の核剤(結晶化プロモーター)として作用している、上記の表5に示す作用と逆である、ポリ(エチレンフランジカルボキシレート)に対して結晶化抑制剤としてモンタン酸ナトリウム0.5〜10重量%の使用を教示している米国特許第7,906,572号明細書を考慮すると、これらの結果は、意外かつ驚くべき結果である。
【0160】
さらに実施例5および6から、PTFおよび可塑剤を含む組成物は結晶性を示すが、かかる組成物の結晶性は、実施例6と同様に核剤を添加することによってさらに高めることができることが分かる。添加剤の総量が、実施例5(10重量%)と比較して実施例6では少なく(7.3重量%)、実施例6は実施例5と比較して高いΔHccおよびΔHを有し、それによって、PTF中の核剤および可塑剤の存在の相乗効果が示されることにさらに留意されたい。
【0161】
実施例7:フラン−PTMEGソフトセグメント13.4重量%およびPTFハードセグメント86.6重量%を含むコポリエステルの製造
7A、7B、および7Cと示される3つのバッチで、フラン−PTMEGソフトセグメント13.4重量%およびPTFハードセグメント86.6重量%を含むコポリエステルを製造した。凝縮器およびオーバーヘッド高トルク撹拌機(Eurostar Power Control IKA−WERKE)を備えた300mLケトルフラスコに、表6に示す量のBioPDO(商標)、PTMEG(1000D)、およびFDMEを装入した。フラスコおよび内容物を排気し、窒素で充填した。表4に示す量のTyzor(登録商標)TPT触媒を添加し、フラスコを再び排気し、窒素で3回充填した。内容物を撹拌した。160℃に設定された予熱されたスズ−ビスマス金属にフラスコを沈め、5〜15分間平衡化して、固体を溶融した。
【0162】
温度を180℃に上げ、80〜85分間維持し、その後温度を210℃に上げ、さらに100〜135分間維持して、エステル交換およびメタノールの蒸留を完了した。反応時間の165〜185分後に、真空傾斜を開始した。さらに30〜40分後に、真空が、30トルのバルブに達した。この時点で、温度を235℃に上げ、反応継続中、その温度で維持した。真空傾斜が開始してから約45〜95後に真空が150ミリトルの値に達し、さらに10〜30分で100ミリトルに達した。最高温度235℃で約215〜220分を有する合計425〜445分後に、真空および加熱を停止した。それぞれのバッチの回収コポリエステルの収率が表6に記録される。
【0163】
ポリマーを直径約1インチの小片に破砕し、液体窒素中で冷却し、Wiley Millで粉砕した。回収されたポリマーは表6に記録される。各粉砕バッチから、分析用に1.5g取り出した。溶媒中で溶解することによって、3つのバッチの等量を混合し、SECによって分析した。SEC分析から、混合物がM(SEC)6900DおよびPDI2.4を有することが示された。
【0164】
バッチ7A、7B、および7Cの粉砕片を共に合わせ、混転して混合し、全重量355.0gを得た。3つのバッチのこの混合物は実施例7のコポリエステルと呼ばれ、PTF、核剤および/または可塑剤を有するコポリエステルの組成物の調製に使用された。
【0165】
【表6】
【0166】
実施例8:実施例7のコポリエステルと可塑剤を含む組成物の製造
実施例4にPTFポリマーの乾燥について記述されるように、実施例7のコポリエステルの一部をガラス広口瓶内で一晩乾燥させた。実施例4に記載の手順と同様の手順を用いて、実施例7のコポリエステルの溶融物(47.5g)にポリエチレングリコールビス(2−エチルヘキサノエート)(2.5g)を添加することによって組成物を製造した。
【0167】
少量部分の組成物をDSCによって分析し、その結果を表7にまとめる。報告されるすべての転移は、加熱および冷却速度10℃/分を用いた、加熱−冷却−加熱スキャン(−80〜230℃,230〜−80℃,−80〜230℃)からの第1冷却スキャンおよび第2加熱スキャンで記録された。
【0168】
実施例9:実施例7のコポリエステル、核剤および可塑剤を含む組成物の製造
実施例4および8に記載の手順と同様な手順を用いて、実施例7のコポリエステル(47.5g)を含む溶融物に、ポリエチレングリコールビス(2−エチルヘキサノエート)(2.50g)に加えてモンタン酸ナトリウム(1.25g)を添加することによって組成物を製造した。実施例8に記載の手順を用いて、少量部分の組成物をDSCによって分析し、その結果を表7にまとめる。
【0169】
実施例10:実施例7のコポリエステルおよび対照CのPTFを含む組成物の製造
実施例4〜6においてPTFポリマーの乾燥について記述されるように、実施例7のコポリエステルの一部と対照Cで製造されたPTFポリマーの一部を別々に、ガラス広口瓶内で一晩乾燥させた。実施例4に記載の手順と同様な手順を用いて、予熱ミキサーに最初にPTFをゆっくりと添加し、次いでコポリエステルを添加することによって、対照CのPTF20.0gおよび実施例7のコポリエステル30.0gを含む組成物を製造した。実施例8に記載の手順を用いて、少量部分の組成物をDSCによって分析し、その結果を表7にまとめる。
【0170】
実施例11:実施例7のコポリエステル、PTFおよび核剤を含む組成物の製造
実施例4および8に記載の手順と同様な手順を用いて、対照CのPTF(20.0g)および実施例7のコポリエステル(30.0g)を含む溶融物に、モンタン酸ナトリウム(1.25g)を添加することによって組成物を製造した。実施例8に記載の手順を用いて、少量部分の組成物をDSCによって分析し、その結果を表7にまとめる。
【0171】
実施例12:実施例7のコポリエステル、PTFおよび可塑剤を含む組成物の製造
実施例4および8に記載の手順と同様な手順を用いて、対照CのPTF(19.5g)および実施例7のコポリエステル(27.5g)を含む溶融物に、ポリエチレングリコールビス(2−エチルヘキサノエート)(3.0g)を添加することによって組成物を製造した。実施例8に記載の手順を用いて、少量部分の組成物をDSCによって分析し、その結果を表7にまとめる。
【0172】
実施例13:実施例7のコポリエステル、PTF、核剤および可塑剤を含む組成物の製造
実施例4および8に記載の手順と同様な手順を用いて、対照CのPTF(19.5g)および実施例7のコポリエステル(27.5g)を含む溶融物に、モンタン酸ナトリウム(1.25g)、ポリエチレングリコールビス(2−エチルヘキサノエート)(3.00g)を逐次添加することによって組成物を製造した。実施例8に記載の手順を用いて、少量部分の組成物をDSCによって分析し、その結果を表7にまとめる。
【0173】
【表7】
【0174】
10℃/分での加熱−冷却−加熱スキャン(−80〜230℃,230〜−80℃,−80〜230℃)。Tg:ガラス転移温度、Tcc:ガラスからの再結晶化、T:融解転移、ΔH:PTFハードセグメント含有量で正規化された融解エンタルピー。
【0175】
表7にまとめられた実施例8〜13から、フラン−PTMEGソフトセグメントを含むコポリエステルの組成物は、ガラス転移温度を超える温度に加熱した場合に、第2加熱スキャンで結晶化する能力を示すことが分かる。
【0176】
さらに、実施例9は、冷却スキャン中に溶融物から結晶化する能力を示すことによって、より意外かつ顕著な結果を示す。これは、射出成形中のポリマーに特に価値ある特性である。溶融物からのこの結晶化は、結晶化温度(Tcm)で起こり、結晶化の大きさは結晶化熱(ΔHcm)によって示される。ΔHcm(36J/g)によって測定される、溶融物から結晶化する間に達成される結晶化度は、ΔH(43J/g)によって測定される、融点または融点付近で測定される結晶化度とほぼ同じ大きさであることはさらに注目すべきである。したがって、核剤および可塑剤とブレンドした場合に、フラン−PTMEGソフトセグメントとPTFハードセグメントを含むコポリエステルは、溶融物から冷却された際に、その最大結晶化度に達することができる。
この結果から、ガラスおよび溶融物の両方からPTFを結晶化する、モンタン酸ナトリウムの能力が実証されている。
【0177】
以上、本発明を要約すると下記のとおりである。
1.a)ポリトリメチレン−2,5−フランジカルボキシレート(PTF)90〜99.9重量%;
b)核剤としての中和カルボン酸塩またはリン酸三ナトリウム0.1〜10重量%;
を含む組成物であって、
前記量が前記組成物の全重量に対するものである、組成物。
2.シート、フィルムまたは成形品の形をとる、上記1に記載の組成物を含む物品。
3.a)ポリ(トリメチレン−2,5−フランジカルボキシレート)80〜99重量%;
b)次式:
A−O−[CHX−(CH−O]−B
(式中、kは、1〜3の整数であり、
jは、4〜25の整数であり、
AおよびBはそれぞれ独立して、アルキル基、アシル基、またはアロイル基から選択さ
れ、それぞれの基が炭素原子1〜10個を含有し、
Xは、H、CHまたはCである)の可塑剤1〜20重量%;
を含む組成物であって、
前記量が前記組成物の全重量に対するものである、組成物。
4.核剤として中和カルボン酸塩またはリン酸三ナトリウムを0.1〜10重量%さらに含む組成物であって、前記量が前記組成物の全重量に対するものである、上記3に記載の組成物。
5.シート、フィルムまたは成形品の形をとる、上記3に記載の組成物を含む物品。
6.a)i.少なくとも1つのポリ(アルキレンエーテル)グリコール(PAEG)およびフラン2,5−ジカルボン酸またはその機能的等価物から誘導されるフラン−PAEGソフトセグメントであって、前記ポリ(アルキレンエーテル)グリコールが、未置換およびメチル置換C2〜C10脂肪族反復単位を含む、フラン−PAEGソフトセグメントと、
ii.1,3プロパンジオールおよびフラン2,5−ジカルボン酸またはその機能的等価物から誘導されるポリ(トリメチレンフランジカルボキシレート)ハードセグメントと、
を含むコポリエステル5〜99重量%;
b)以下の:
i.ポリ(トリメチレン−2,5−フランジカルボキシレート)20〜99重量%、
ii.核剤としての中和カルボン酸塩またはリン酸三ナトリウム0.1〜10重量%、
iii.次式:
A−O−[CHX−(CH−O]−B
(式中、kは、1〜3の整数であり、
jは、4〜25の整数であり、
AおよびBはそれぞれ独立して、アルキル基、アシル基、またはアロイル基から選択され、それぞれの基が炭素原子1〜10個を含有し、
Xは、H、CHまたはCである)を有する可塑剤0.1〜20重量%、
のうちの1つまたは複数;
を含む組成物であって、重量%で示される前記量が、前記組成物の全重量に対するものである、組成物。
7.前記コポリエステルが、フラン−PAEGソフトセグメント1.5〜45重量%を含む、上記6に記載の組成物。
8.前記ポリ(アルキレンエーテル)グリコールが、ポリ(エチレンエーテル)グリコール、ポリ(1,2−プロピレンエーテル)グリコール、ポリ(トリメチレンエーテル)グリコール、ポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール(ポリテトラヒドロフラン)、ポリ(ペンタメチレンエーテル)グリコール、ポリ(ヘキサメチレンエーテル)グリコール、ポリ(ヘプタメチレンエーテル)グリコール、およびポリ(エチレングリコール)−ブロック−ポリ(プロピレングリコール)−ブロック−ポリ(エチレングリコール)からなる群から選択される、上記6に記載の組成物。
9.前記コポリエステルが、2,5フランジカルボン酸、1,3プロパンジオールおよびポリトリメチレンエーテルグリコール(PTMEG)から誘導され、前記コポリエステルが、一般構造:
【化6】
(式中、n=50〜99.5重量%であり;r=0.5〜50重量%であり;かつm=rに対して45〜97重量%である)
を有する、上記6に記載の組成物。
10.シート、フィルムまたは成形品の形をとる、上記6に記載の組成物を含む物品。
11.少なくとも200℃の温度で溶融混合することによって、ポリ(アルキレンエーテル)グリコール(PAEG)をポリ(トリメチレンフランジカルボキシレート)とブレンドし、かつ反応させることを含む、ポリ(トリメチレン−2,5−フランジカルボキシレート)(PTF)ベースのポリマーにおける結晶化率を高める方法であって、その結果得られる前記PTFベースのポリマーが、フラン−PTMEGソフトセグメントとPTFハードセグメントを含むコポリエステルである、方法。
12.ポリ(トリメチレン−2,5−フランジカルボキシレート)(PTF)ベースのポリマーにおける結晶化率を高める方法であって、以下の:
a)PTFとポリ(アルキレンエーテル)グリコール(PAEG)とのコポリエステルであって、フラン−PAEGソフトセグメントとPTFハードセグメントを含むコポリエステル;
b)中和カルボン酸塩またはリン酸三ナトリウム;
c)次式:
A−O−[CHX−(CH−O]−B
(式中、kは、1〜3の整数であり、
jは、4〜25の整数であり、
AおよびBはそれぞれ独立して、それぞれの基が炭素原子1〜10個を含有する、アルキル基、アシル基、またはアロイル基であり、
Xは、H、CHまたはCである)
の可塑剤;
のうちの1つまたは複数を前記PTFベースのポリマーに添加することを含む、方法。
図1
図2