(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6707037
(24)【登録日】2020年5月21日
(45)【発行日】2020年6月10日
(54)【発明の名称】空気力学模型実験装置
(51)【国際特許分類】
G01M 9/06 20060101AFI20200601BHJP
G01M 9/08 20060101ALI20200601BHJP
【FI】
G01M9/06
G01M9/08
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-542(P2017-542)
(22)【出願日】2017年1月5日
(65)【公開番号】特開2018-109573(P2018-109573A)
(43)【公開日】2018年7月12日
【審査請求日】2019年3月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000173784
【氏名又は名称】公益財団法人鉄道総合技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】599032349
【氏名又は名称】株式会社テス
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】特許業務法人 インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100120237
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 良規
(72)【発明者】
【氏名】菊地 勝浩
(72)【発明者】
【氏名】野口 雄平
(72)【発明者】
【氏名】矢野 健児
【審査官】
岡村 典子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−139444(JP,A)
【文献】
特開2013−088297(JP,A)
【文献】
特開平09−273976(JP,A)
【文献】
特開2010−169615(JP,A)
【文献】
特開昭61−251731(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 9/00−10/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発射手段により発射される空力計測列車模型と、
前記空力計測列車模型を貫通することで、前記空力計測列車模型を測定領域内に案内する案内手段と、を備える空気力学模型実験装置において、
前記空力計測列車模型は、前記空力計測列車模型周りの流れ場を測定する流れ場測定手段を備え、
前記流れ場測定手段は、前記空力計測列車模型周りの静圧を測定する静圧測定部と、前記空力計測列車模型周りの静圧及び動圧を測定する総圧測定部を備えることを特徴とする空気力学模型実験装置。
【請求項2】
請求項1に記載の空気力学模型実験装置において、
前記静圧測定部は、前記空力計測列車模型の長手方向に沿って複数箇所に設けられる静圧孔を含むことを特徴とする空気力学模型実験装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の空気力学模型実験装置において、
前記総圧測定部は、前記空力計測列車模型の側面に前記空力計測列車模型の長手方向に沿って延設するように取り付けられた総圧管を備えることを特徴とする空気力学模型実験装置。
【請求項4】
請求項3に記載の空気力学模型実験装置において、
前記静圧孔の少なくとも一つの設置位置と前記総圧管の先端の位置は、前記空力計測列車模型の長手方向に沿った位置において略同一であることを特徴とする空気力学模型実験装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の空気力学模型実験装置において、
前記空力計測列車模型は、前記流れ場測定手段で得られた計測データを収録するデータ収録部を備えることを特徴とする空気力学模型実験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両が走行する際に発生する車両周りの流れ場の測定を行う模型実験に用いる空気力学模型実験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、新幹線などの高速鉄道では、営業最高速度が300km/hを超え、国内では現在320km/hでの運転が実施されているが、乗客からの速達性への要望や、航空機との競争を背景として今後更なる速度向上が期待されている。ここで、鉄道車両の走行速度が向上すると、空力的にさまざまな現象が顕在化してくることが容易に予想される。
【0003】
このような鉄道車両の高速化に起因するさまざまな空力現象を把握・解明し、それらに対する評価や対策を検討するためには、縮尺模型を用いた実験が有効である。この縮尺模型を用いた実験では、地上構造物との相対運動を考慮しない場合には、実験手法として風洞実験を行うことが有効であるが、トンネル、線路沿線の側壁及びこ線橋等との相対運動を考慮する場合には列車模型を実際に走行させて実験を行う必要がある。
【0004】
また、列車周りの流れ場を測定する場合、地上側からの測定と車上側からの測定が考えられるところ、風洞実験であれば地上側からの測定も可能であるが、走行模型を用いる場合には車両側からの測定が必要となる。
【0005】
しかしながら、従来の走行模型は、下記特許文献1に示されるように、発射手段によってピアノ線等からなる案内手段に案内された模型体を発射し、該模型体をトンネルを模した測定領域内に突入させることで生じる圧力波を測定するという方法を採用しており、測定領域に取り付けた圧力計や、トンネル坑口に相当する測定領域の出入り口近傍に設置した音圧計によってトンネル圧力波を測定している。
【0006】
また、従来の他の模型体は、特許文献2に記載されているように、様々な周波数での実験を可能にするために、発射手段により発射される模型体と、前記模型体を貫通することで、前記模型体を測定領域内に案内する案内手段と、を備える音測定用模型において、前記模型体は、外周面に音源を備える音源部と、前記音源部の軸方向の一端に着脱自在な電源箱を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−177664号公報
【特許文献2】特開2014−137463号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
列車周りの流れ場の測定を行う場合、実物に近い走行形態を模擬したレール・車輪走行装置を用いる必要があり、このような装置を用いると専用の装置が必要となることに加え、模型のスケールも1/10となり大型となってしまう。さらに、列車模型を走行させる場合、大型の列車模型では列車模型の加速・減速に大きなエネルギーが必要となる。
【0009】
また、特許文献1及び2に記載された列車模型を用いた走行実験では、流れ場を測定する計測器を備えていないために、列車周りの流れ場の測定を行うことができなかった。更に、計測器などを列車模型に搭載するためには、1/10〜1/30程度のスケールの模型が必要となることに加え、列車模型の停止は、通常、列車模型を制動装置に衝突させて停止させており、模型及び車載の計測器に大きな衝撃力が作用することから車載計測器はこのような大きな衝撃力にも耐える必要があるという問題があった。
【0010】
そこで、本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、列車模型を用いた列車周りの流れ場の測定を行う際に、小型の列車模型を用いることができると共に、100km/hを超えるような高速の実験も経済的に実施することができる車載型の空気力学模型実験装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る空気力学模型実験装置は、発射手段により発射される空力計測列車模型と、前記空力計測列車模型を貫通することで、前記空力計測列車模型を測定領域内に案内する案内手段と、を備える空気力学模型実験装置において、前記空力計測列車模型は、前記空力計測列車模型周りの流れ場を測定する流れ場測定手段を備え
、前記流れ場測定手段は、前記空力計測列車模型周りの静圧を測定する静圧測定部と、前記空力計測列車模型周りの静圧及び動圧を測定する総圧測定部を備えることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る空気力学模型実験装置において、前記静圧測定部は、前記空力計測列車模型の長手方向に沿って複数箇所に設けられる静圧孔を含むと好適である。
【0014】
また、本発明に係る空気力学模型実験装置において、前記総圧測定部は、前記空力計測列車模型の側面に前記空力計測列車模型の長手方向に沿って延設するように取り付けられた総圧管を備えると好適である。
【0015】
また、本発明に係る空気力学模型実験装置において、前記静圧孔の少なくとも一つの設置位置と前記総圧管の先端の位置は、前記空力計測列車模型の長手方向に沿った位置において略同一であると好適である。
【0016】
さらに、本発明に係る空気力学模型実験装置は、前記空力計測列車模型は、前記流れ場測定手段で得られた計測データを収録するデータ収録部を備えると好適である。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る空気力学模型実験装置は、空力計測列車模型が空力計測列車模型周りの流れ場を測定する流れ場測定手段を備えているので、小型の列車模型を用いて100km/hを超える高速の実験を経済的に実施することができ、空力計測列車模型に流れ場測定手段を取付けて一体化されているため、空力計測列車模型の停止時の大きな衝撃力にも十分に耐えることができる耐久性を備えることが可能なる。さらに、空力計測列車模型が総圧測定部と静圧測定部を備えているので、列車周りの境界層分布を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態に係る空気力学模型実験装置の構成図。
【
図2】本発明の実施形態に係る空気力学模型実験装置の空力計測列車模型を示す側面図。
【
図3】本発明の実施形態に係る空気力学模型実験装置の空力計測列車模型の分解図。
【
図4】本発明の実施形態に係る空気力学模型実験装置の総圧測定部の構成を説明するための拡大図。
【
図5】本発明の実施形態に係る空気力学模型実験装置の測定した圧力データを示すグラフ。
【
図6】
図5に示す圧力データに移動平均を施した波形データ。
【
図7】
図6に示す圧力データを流速データに変換した波形データ。
【
図8】本発明の実施形態に係る空気力学模型実験装置による測定データから平均速度分布を求めたグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0020】
図1は、本発明の実施形態に係る空気力学模型実験装置の構成図であり、
図2は、本発明の実施形態に係る空気力学模型実験装置の空力計測列車模型を示す側面図であり、
図3は、本発明の実施形態に係る空気力学模型実験装置の空力計測列車模型の分解図であり、
図4は、本発明の実施形態に係る空気力学模型実験装置の総圧測定部の構成を説明するための拡大図であり、
図5は、本発明の実施形態に係る空気力学模型実験装置の測定した圧力データを示すグラフであり、
図6は、
図5に示す圧力データに移動平均を施した波形データであり、
図7は、
図6に示す圧力データを流速データに変換した波形データであり、
図8は、本発明の実施形態に係る空気力学模型実験装置による測定データから平均速度分布を求めたグラフである。
【0021】
図1に示すように、本実施形態に係る空気力学模型実験装置1は、発射手段10により発射される鉄道車両を模した空力計測列車模型20と、この空力計測列車模型20を貫通することでトンネルを模した測定領域40内に空力計測列車模型20を案内するピアノ線などのワイヤからなる案内手段30とを備えている。本実施形態に係る空気力学模型実験装置1は、発射手段10によって発射された空力計測列車模型20が測定領域40内に突入することで空力計測列車模型の周りの境界層分布を測定するという方法を採用しており、後述する空力計測列車模型20に備えられた流れ場測定手段を構成する種々の圧力計によって空力計測列車模型周りの境界層分布を測定している。なお、測定領域40を通過した空力計測列車模型20は、制動装置50に衝突させて停止させている。
【0022】
発射手段10は、案内手段30と線対称に配置された一対のローラ組11が複数設置されており、該ローラ組11の間を基台14が通過することで、基台14の先端に容易に分離できるように結合した空力計測列車模型20とともに複数のローラ組11によって順次加速されて所望の速度で空力計測列車模型20を発射することができる。なお、発射手段10と測定領域40の間には制動手段12が設けられている。制動手段12には、空力計測列車模型20の断面積よりも径が大きく、かつ基台14の断面積よりも径が小さい空力計測列車模型通過孔13が形成されており、測定領域40の手前で基台14を空力計測列車模型20と分離して停止させるように構成されている。このような制動手段12によって、
図1に示すように空力計測列車模型20のみが測定領域40に突入するように構成されている。
【0023】
測定領域40は、内径が100mm程度に形成されており、本実施形態に係る空気力学模型実験装置1は、全体として約1/100の縮尺で形成されている。なお、測定領域40の案内手段30に沿った長さは実験の条件に応じて適宜変更可能に構成されている。
【0024】
次に、本実施形態に係る空気力学模型実験装置1に用いられる空力計測列車模型20について
図2から4を参照して説明を行う。
【0025】
図2に示すように、空力計測列車模型20は鉄道車両を模した形状を有しており、先頭形状が鉄道車両と等価な断面積変化をもつ単純な軸対称形状とし、中間部分は径の一様な円断面に形成されている。また、後端は切妻状に形成されている。また、外周面は、測定時の空力計測列車模型20の近傍の気流の乱れを防止するために軸方向及び周方向に沿って円滑に形成されている。また、空力計測列車模型20の側面には、後述する総圧測定部21が径方向に突出するように配置されている。
【0026】
図3に示すように、空力計測列車模型20は、先頭部61,磁石ホルダ62,第1の中間部64a,64b,第2の中間部66,第3の中間部69及び後尾部70を軸方向に順次組立てて構成されている。磁石ホルダ62は、先頭部61及び第1の中間部64aに形成されたホルダ用凹部63に収納されて先頭部61と第1の中間部64aとを互いに連結しており、第1の中間部64a,64b,第2の中間部66,第3の中間部69及び後尾部70は、それぞれの部材の軸方向端部に形成された連結穴24に連結突起25を係合させた後、締結ビス26で固定されて互いに連結されている。
【0027】
先頭部61及び後尾部70は、それぞれ空力計測列車模型20の端部に取り付けられる部材であり、先頭部61は、鉄道車両と等価な断面積変化をもつ単純な軸対称形状に形成され、後尾部70は、切妻状に形成されている。
【0028】
磁石ホルダ62は、速度照査用の磁石が内蔵されており、該磁石の磁力を用いて空力計測列車模型20の速度を照査している。なお、速度照査用磁石の詳細については、周知の磁石を用いているので詳細な説明は省略する。
【0029】
第1の中間部64a,64bは、外周面に静圧測定用の静圧孔22が形成されている。この静圧孔22は、第1の中間部64a,64bの径方向に沿って穿孔されている。静圧孔22は、第1の中間部64a,64bに取り付けられた圧力計23aに接続されている。また、第1の中間部64a,64bの静圧孔22が形成された側の軸方向の対称側には、ダミーウェイト65が取り付けられており、空力計測列車模型20の重量バランスを整えている。
【0030】
第2の中間部66は、一方の側に電源部67が形成され、電源部67の軸方向の対称側には、データ収録部68が形成されている。電源部67は、リチウム電池などの周知の電源供給手段が好適に用いられ、静圧測定部、総圧測定部及びデータ収録部68などの駆動電源として機能する。
【0031】
データ収録部68は静圧測定部及び総圧測定部で測定した圧力データが収録することができればどのような構成を採用しても構わないが、例えばソリッドステートで作成したデータロガーが好適に用いられる。
【0032】
第3の中間部69の一方の側面には、第1の中間部64a,64bと同様に圧力計23aに接続された静圧孔22が形成されている。また、軸方向の対称側には、総圧測定部21及び圧力計23bが径方向に突出するように取り付けられている。なお、圧力計23a,23bは、MEM技術を活用した半導体圧力センサーを用いると好適である。
【0033】
図4に示すように、総圧測定部21は、空力計測列車模型20の長手方向に沿って延設されると共に径方向に複数本配置された総圧管72と第3の中間部69に総圧測定部21を取り付けると共に総圧管72を保持するホルダ部材71とを備えた所謂櫛形総圧管を構成している。また、
図3に示すように、第3の中間部69に形成された静圧孔22の長手方向に沿った設置位置は、総圧管72の先端位置と略同一の位置に形成されている。
【0034】
次に、本実施形態に係る静圧測定部及び総圧測定部について説明を行う。圧力計23bは、総圧測定部21の総圧管72に接続されている。このように、第1の中間部64a,64b及び第3の中間部69にそれぞれ形成された静圧孔22と圧力計23aとが共働して静圧測定部を構成している。このように静圧測定部が構成されているので、本実施形態に係る空気力学模型実験装置1において、空力計測列車模型20を発射した状態での静圧孔22の位置の空力計測列車模型20近傍の静圧を測定することができる。なお、空力計測列車模型20は、長手方向に沿って複数の静圧孔22が形成されているので、空力計測列車模型20近傍の車両表面静圧を測定することが可能となる。
【0035】
また、総圧測定部21と圧力計23bとが共働して総圧測定部を構成しているので、空力計測列車模型20が発射された際の動圧と静圧を含む総圧を測定することができる。また、総圧測定部は、径方向に複数本の総圧管72が配置された櫛側総圧管を備えているので、径方向の圧力分布を測定することで空力計測列車模型20周りの境界層分布を測定することが可能となる。なお、静圧測定部及び総圧測定部によって測定された各種圧力データは、データ収録部68に蓄積される。
【0036】
なお、上述したように第3の中間部69に形成された静圧孔22と総圧管72の先端位置が長手方向に沿って略同一の位置に形成されているので、第3の中間部69に形成された静圧孔22によって測定された静圧の圧力データと総圧管72によって測定された総圧の圧力データの差分を計算することで、当該位置での動圧を測定することが可能となる。
【0037】
したがって、空力計測列車模型20周りの静圧及び動圧の分布を計測することができるので、静圧測定部及び総圧測定部が流れ場測定手段として機能する。このように、本実施形態に係る空気力学模型実験装置1は、流れ場測定手段で測定された圧力データからベルヌーイの定理を用いて流速を求めることで、空力計測列車模型20周りの境界層分布を測定することが可能となる。
【0038】
以上説明した本実施形態に係る空気力学模型実験装置1は、空力計測列車模型20が径方向に穿孔された静圧孔22と、径方向に突出した総圧測定部21とを備えているので、空力計測列車模型20周りの境界層分布を測定することができると共に、制動装置50に衝突させて停止させた場合でも十分に該衝撃に耐え得る耐久性を備えることができる。
【0039】
[実施例]
次に、本発明を更に具体的に説明するために、本実施形態に係る空気力学模型実験装置1を用いて空力計測列車模型20周りの境界層分布を測定した実施例について説明を行う。この測定試験では、以下の空力計測列車模型を用いて測定を行った。
全長:1000mm
外形:Φ60mm
先頭形状:回転放物(長径/短径=4)
後尾形状:切妻
材質:MCナイロン
重量:2.62kg
測定領域:明かり区間
【0040】
実験条件としては、打込み速度は140km/hで発射手段10から空力計測列車模型20を発射して静圧測定部及び総圧測定部による圧力の測定を行った。その結果、
図5に示すような波形データが得られた。
【0041】
この波形データに2/U×5000点(140km/hでは約260点)の移動平均を施して
図6に示す圧力波形のデータを得た。
【0042】
さらに、
図5に示した波形データについて、以下の数式を用いて圧力pから流速uへ変換して
図6と同様の移動平均を施して、
図7に示すような流速波形のデータが得られた。
【数1】
ρは密度(=1.13kg/m
3)、pは圧力計で得られた圧力(瞬時値)である。
【0043】
次に
図7で得られた流速波形のデータから
図8に示すような平均速度分布を求めた。
図8には、以下の数式に示す1/7乗法則も併せて記載した。
【数2】
【0044】
この結果から明らかなように、今回得られた平均速度分布は、乱流境界層の平均速度分布として用いられる1/7乗法則と概ね一致していることが確認でき、本実施形態に係る空気力学模型実験装置の測定値が有効であることが確認できた。なお、
図8のグラフから、空力計測列車模型周りの境界層の厚さはおよそ12mmであることが確認できる。
【0045】
また、上述した本実施形態に係る空気力学模型実験装置1は、総圧管72を6本取り付け,静圧孔22を3カ所穿孔した場合について説明したが、これらの数はこれに限られず、必要に応じて適宜増減させても構わない。また、本実施形態に係る空気力学模型実験装置1は、トンネルを模した測定領域40を備えた場合について説明を行ったが、測定領域の形状はトンネルに限らず、所謂明かり区間を模した領域を形成しても構わない。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれうることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0046】
1 空気力学模型実験装置, 10 発射手段, 20 空力計測列車模型, 21 総圧測定部, 22 静圧孔, 23 圧力計, 30 案内手段, 40 測定領域, 50 制動装置, 61 先頭部, 62 磁石ホルダ, 64a,64b 第1の中間部, 66 第2の中間部, 67 電源部, 68 データ収録部, 69 第3の中間部, 72 総圧管。