(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記仮カウンタ値出力回路は、前記第1遅延パルス信号の遅延時間と前記第2遅延パルス信号の遅延時間の差に相当する長さを有する差分パルス信号を生成し、前記第1クロック信号に基づいて前記差分パルス信号の長さをカウントし、そのカウント値を前記仮カウント値として出力するように構成されている、請求項3に記載の変換回路。
前記仮カウンタ値出力回路は、前記第1クロック信号に基づいて前記第1遅延パルス信号の遅延時間をカウントした第1カウント値と前記第1クロック信号に基づいて前記第2遅延パルス信号の遅延時間をカウントした第2カウント値の差分を前記仮カウント値として出力するように構成されている、請求項3に記載の変換回路。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、遅延回路の遅延時間の長さは、温度依存特性を有しており、環境温度の変動に追随して変動する。このように、遅延回路の遅延時間の長さには対象電圧の大きさに加えて環境温度も反映しており、これにより、対象電圧の大きさを正確に知ることが困難になる。このような問題は、遅延回路に限られない。一般的に、対象電圧の大きさに依存した長さを有する依存時間が反映した信号を生成しようとすると、そのような信号は温度依存性を有することが多い。したがって、この種の変換回路では、このような温度依存特性の影響を抑える技術が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書が開示する変換回路の一実施形態は、対象電圧をデジタル出力値に変換する変換回路であって、仮カウント値出力回路と再生パルス信号生成回路とデジタル信号出力回路を備えることができる。仮カウント値出力回路は、第1クロック信号に基づいて対象電圧の大きさに依存した長さを有する依存時間をカウントし、そのカウント値を仮カウント値として出力する。再生パルス信号生成回路は、第1クロック信号よりも低速な第2クロック信号が仮カウント値と同数をカウントするのに要する時間の長さを有する再生パルス信号を生成する。デジタル信号出力回路は、第3クロック信号に基づいて再生パルス信号の長さをカウントし、そのカウント値をデジタル出力値として出力する。この実施形態の変換回路では、依存時間の長さの温度に対する温度依存特性と第3クロック信号の周期の温度に対する温度依存特性が一致する。ここで、「依存時間の長さの温度に対する温度依存特性と第3クロック信号の周期の温度に対する温度依存特性が一致する」とは、依存時間の温度に対する変化率(基準温度の依存時間を「1」としたときの任意温度における依存時間の比)と第3クロック信号CLK3の周期の温度に対する変化率(基準温度の周期を「1」としたときの任意温度における周期の比)の相違が、±10%の範囲内、より好ましくは±3%の範囲内であることをいう。この実施形態の変換回路は、依存時間に含まれる温度依存特性が第3クロック信号に含まれる温度依存特性で相殺されるので、温度の影響が抑えられたデジタル出力値を出力することができる。さらに、この実施形態の変換回路は、第1クロック信号に高速なクロック信号を採用することができるので、高い時間分解能を有することができる。
【0006】
上記実施形態の変換回路では、仮カウント値出力回路が、基準パルス信号生成回路と遅延回路を有することができる。基準パルス信号生成回路は、基準パルス信号を生成する。遅延回路は、対象電圧に依存して基準パルス信号を遅延させた遅延パルス信号を生成する遅延パルス信号生成回路を有する。ここで、遅延パルス信号の遅延時間が依存時間に相当する。この実施形態の変換回路は、対象電圧に依存した遅延時間を有する遅延パルス信号を利用して、対象電圧をデジタル出力値に変換することができる。
【0007】
上記実施形態の変換回路は、第1電圧と第2電圧の差電圧をデジタル出力値に変換するように構成することができる。この場合、仮カウント値出力回路は、基準パルス信号生成回路と遅延回路を有することができる。基準パルス信号生成回路は、基準パルス信号を生成する。遅延回路は、第1電圧に依存して基準パルス信号を遅延させた第1遅延パルス信号と第2電圧に依存して基準パルス信号を遅延させた第2遅延パルス信号を生成する遅延パルス信号生成回路を有する。ここで、第1遅延パルス信号の遅延時間と第2遅延パルス信号の遅延時間の差分時間が依存時間に相当する。この実施形態の変換回路は、例えば物理量センサの差動電圧をデジタル出力値に変換することができる。
【0008】
本明細書が開示する変換回路の一実施形態は、対象電圧をデジタル出力値に変換する変換回路であって、仮カウント値出力回路と再生パルス信号生成回路と第3クロック信号生成回路とデジタル信号出力回路を備えることができる。仮カウント値出力回路は、第1クロック信号に基づいて対象電圧の大きさに依存した長さを有する依存時間をカウントし、そのカウント値を仮カウント値として出力する。再生パルス信号生成回路は、第1クロック信号よりも低速な第2クロック信号が仮カウント値と同数をカウントするのに要する時間の長さを有する再生パルス信号を生成する。第3クロック信号生成回路は、第3クロック信号を生成する。デジタル信号出力回路は、第3クロック信号に基づいて再生パルス信号の長さをカウントし、そのカウント値をデジタル出力値として出力する。この実施形態の変換回路では、仮カウント値出力回路が、基準パルス信号生成回路と遅延回路を有することができる。基準パルス信号生成回路は、基準パルス信号を生成する。遅延回路は、対象電圧に依存して基準パルス信号を遅延させた遅延パルス信号を生成する遅延パルス信号生成回路を有する。ここで、遅延パルス信号の遅延時間が依存時間に対応する。遅延パルス信号生成回路は、CMOSインバータの複数個が直列に接続されているインバータチェーンを有する。第3クロック信号生成回路は、CMOSインバータの複数個がリング状に接続されているリングオシレータを有する。この実施形態の変換回路では、遅延パルス信号生成回路と第3クロック信号生成回路の各々のCMOSインバータを構成する電界効果型トランジスタが、共通のチャネル長変調効果を有するように構成されていてもよい。ここで、「共通のチャネル長変調効果を有する」とは、両者のチャネル長変調効果の相違が±10%の範囲内、より好ましくは±3%の範囲内であることをいう。あるいは、遅延パルス信号生成回路と第3クロック信号生成回路の各々のCMOSインバータを構成する電界効果型トランジスタのゲート構造が、共通の形態を有するように構成されていてもよい。ここで、「電界効果型トランジスタのゲート構造が共通の形態を有する」とは、電界効果トランジスタのゲート幅及びゲート長の設計値が一致することをいう。これらの実施形態の変換回路では、遅延パルス信号の遅延時間の長さの温度に対する温度依存特性と第3クロック信号の周期の温度に対する温度依存特性が一致し得る。このため、これらの実施形態の変換回路は、遅延時間に含まれる温度依存特性が第3クロック信号に含まれる温度依存特性で相殺されるので、温度の影響が抑えられたデジタル出力値を出力することができる。さらに、これらの実施形態の変換回路は、第1クロック信号に高速なクロック信号を採用することができるので、高い時間分解能を有することができる。
【0009】
CMOSインバータを構成する電界効果型トランジスタのチャネル長変調効果又はゲート構造の形態を共通にさせた上記実施形態の変換回路は、第1電圧と第2電圧の差電圧をデジタル出力値に変換するように構成することができる。この場合、遅延回路の遅延パルス信号生成回路は、第1電圧に依存して基準パルス信号を遅延させた第1遅延パルス信号と第2電圧に依存して基準パルス信号を遅延させた第2遅延パルス信号を生成するように構成されていてもよい。ここで、第1遅延パルス信号の遅延時間と第2遅延パルス信号の遅延時間の差分時間が依存時間に対応する。この実施形態の変換回路は、例えば物理量センサの差動電圧をデジタル出力値に変換することができる。
【0010】
第1電圧と第2電圧の差電圧をデジタル出力値に変換する変換回路では、仮カウンタ値出力回路が、第1遅延パルス信号の遅延時間と第2遅延パルス信号の遅延時間の差に相当する長さを有する差分パルス信号を生成し、第1クロック信号に基づいて差分パルス信号の長さをカウントし、そのカウント値を仮カウント値として出力するように構成されていてもよい。あるいは、仮カウンタ値出力回路は、第1クロック信号に基づいて第1遅延パルス信号の遅延時間をカウントした第1カウント値と第1クロック信号に基づいて第2遅延パルス信号の遅延時間をカウントした第2カウント値の差分を仮カウント値として出力するように構成されていてもよい。
【0011】
上記実施形態の変換回路では、第2クロック信号生成回路が、第1クロック信号を分周して第2クロック信号を生成する分周器を有することができる。例えば第1クロック信号を生成するための駆動電圧が変動して第1クロック信号の周波数が変動した場合でも、その変動に追随して第2クロック信号の周波数も変動する。このため、再生パルス信号生成回路は、分周回路の分周比を正確に反映した増幅率で増幅する再生パルス信号を生成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1実施形態)
図1に、対象電圧V1をデジタル出力値N2に変換する変換回路1の回路構成を示す。変換回路1は、1チップ化された回路であり、仮カウント値出力回路100、分周回路50、再生パルス信号生成回路60、第3クロック信号生成回路70及びデジタル信号出力回路80を備える。仮カウント値出力回路100は、基準パルス信号生成回路10、遅延回路20、第1クロック信号生成回路30及びカウンタ回路40を備える。
【0014】
基準パルス信号生成回路10は、基準パルス信号P0を生成するように構成されている。基準パルス信号生成回路10は、例えばクロック信号を分周して基準パルス信号P0を生成するように構成されていてもよい。
【0015】
遅延回路20は、遅延パルス信号生成回路22とXOR回路24を有する。遅延パルス信号生成回路22は、基準パルス信号P0を遅延させた遅延パルス信号P1を生成するように構成されている。
図2に示されるように、遅延パルス信号生成回路22は、第1インバータINV1の複数個が直列に接続されたインバータチェーンで構成されている。例えば、インバータチェーンは、50段の第1インバータINV1を有する。遅延パルス信号生成回路22は、対象電圧V1が駆動電圧として入力するように構成されている。このため、遅延パルス信号P1の遅延時間は、対象電圧V1の大きさに依存した長さを有することができる。
【0016】
図1に示されるように、XOR回路24は、基準パルス信号P0と遅延パルス信号P1の排他的論理和を演算するように構成されており、基準パルス信号P0の立ち上がりエッジから遅延パルス信号P1の立ち上がりエッジまでの長さを有する差分パルス信号P2を生成するように構成されている。したがって、差分パルス信号P2は、対象電圧V1の大きさに依存した長さを有することができる。
【0017】
第1クロック信号生成回路30は、変換回路1内で最も高速な第1クロック信号CLK1を生成するように構成されている。第1クロック信号CLK1は、例えばデューティー比が50%の矩形波である。第1クロック信号生成回路30には、様々な回路構成を採用することができ、例えばCMOSインバータの複数個がリング状に接続されたリングオシレータを採用することができる。
【0018】
カウンタ回路40は、複数個のD型フリップフロップで構成されるアップカウンタを有しており、第1クロック信号CLK1に基づいて差分パルス信号P2の長さをカウントし、そのカウント値を仮カウント値N1として出力するように構成されている。なお、カウンタ回路40は、基準パルス信号P0の立ち上がりエッジでリセットされ、遅延パルス信号P1の立ち上がりエッジでセットされるように構成されてもよい。この場合、遅延回路20で差分パルス信号P2を生成する必要がなくなり、回路構成を簡素化することができる。
【0019】
分周回路50は、第1クロック信号CLK1の周波数を低周波化し、第2クロック信号CLK2を生成するように構成されている。第2クロック信号CLK2は、例えば第1クロック信号CLK1の周波数が1/4に低周波化されたクロック信号である。
【0020】
再生パルス信号生成回路60は、複数個のD型フリップフロップで構成されるダウンカウンタを有しており、第2クロック信号CLKが仮カウント値N1と同数をカウントするのに要する時間の長さを有する再生パルス信号P3を生成する。この例では、分周回路50の分周比が4分周であることから、再生パルス信号P3は、差分パルス信号P2の4倍の長さを有することができる。
【0021】
第3クロック信号生成回路70は、第3クロック信号CLK3を生成するように構成されている。第3クロック信号CLK3は、例えばデューティー比が50%の矩形波である。
図3に示されるように、第3クロック信号生成回路70は、第2インバータINV2の複数個がリング状に接続されたリングオシレータで構成されている。
【0022】
デジタル信号出力回路80は、複数個のD型フリップフロップで構成されるアップカウンタを有しており、第3クロック信号CLK3に基づいて再生パルス信号P3の長さをカウントし、そのカウント値をデジタル出力値N2として出力するように構成されている。
【0023】
上記したように、変換回路1では、遅延パルス信号生成回路22が第1インバータINV1の複数個が直列に接続されたインバータチェーンで構成されており、第3クロック信号生成回路70が第2インバータINV2の複数個がリング状に接続されたリングオシレータで構成されている。
図4に示されるように、インバータチェーンの第1インバータINV1とリングオシレータの第2インバータINV2はいずれも、正電源ラインと負電源ラインの間に直列に接続された第1トランジスタTr1と第2トランジスタTr2を有するCMOSを備える。第1トランジスタTr1は、p型のMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)であり、ソースが正電源ラインに接続されており、ドレインが第2トランジスタTr2のドレインに接続されている。第2トランジスタTr2は、n型のMOSFETであり、ドレインが第1トランジスタTr1のドレインに接続されており、ソースが負電源ラインに接続されている。第1トランジスタTr1と第2トランジスタTr2の接続点が、次段のCMOSインバータを構成するトランジスタのゲートに接続されている。遅延パルス信号生成回路22のインバータチェーンでは、正電源ラインに対象電圧V1が入力するように構成されている。第3クロック信号生成回路70のリングオシレータでは、正電源ラインに電源電圧VDDが入力するように構成されている。
【0024】
変換回路1では、インバータチェーンの第1インバータINV1を構成するトランジスタTr1,Tr2によるチャネル長変調効果とリングオシレータの第2インバータINV2を構成するトランジスタTr1,Tr2によるチャネル長変調効果が一致するように構成されていることを特徴としている。具体的には、第1インバータINV1と第2インバータINV2の各々を構成する第1トランジスタTr1のゲート幅及びゲート長が等しく、第1インバータINV1と第2インバータINV2の各々を構成する第2トランジスタTr2のゲート幅及びゲート長が等しい。
【0025】
通常、トランジスタTr1,Tr2は、低温よりも高温で動作電流が小さくなり、動作速度が低下する。このため、インバータチェーンの第1インバータINV1では、低温よりも高温で動作速度が低下するので、低温よりも高温で遅延パルス信号P1の遅延時間が増加する。すなわち、遅延パルス信号P1の遅延時間の長さは、温度に対して略一次関数で増加する正の温度依存特性を有している。また、リングオシレータの第2インバータINV2でも、低温よりも高温で動作速度が低下するので、低温よりも高温で発振する第3クロック信号CLK3の周期が増加する(周波数が低下する)。すなわち、第3クロック信号CLK3の周期は、温度に対して略一次関数で増加する正の温度依存特性を有している。
【0026】
ここで、チャネル長変調効果とは、IV特性の飽和領域における電流増加量をいう。このため、チャネル長変調効果が一致すると、IV特性の飽和領域における電流増加量が一致する。このため、低温から高温に変化したときに、インバータチェーンとリングオシレータの各々のトランジスタTr1,Tr2での電流変化量は一致する。この結果、低温から高温に変化したときに、インバータチェーンとリングオシレータの各々の動作速度の変化量が一致するので、インバータチェーンで生成される遅延パルス信号P1の長さの温度依存特性とリングオシレータで生成される第3クロック信号CLK3の周期の温度依存特性が一致する。前記したように、遅延パルス信号P1の遅延時間の長さは、温度に対して略一次関数で増加する正の温度依存特性を有している。第3クロック信号CLK3の周期も、温度に対して略一次関数で増加する正の温度依存特性を有している。さらに、第3クロック信号CLK3の周期の温度に対する変化率(基準温度の周期を「1」としたときの任意温度における周期の比)が遅延パルス信号P1の遅延時間の温度に対する変化率(基準温度の遅延時間を「1」としたときの任意温度における遅延時間の比)が一致する関係となっており、双方の温度依存特性が一致する。
【0027】
図4の例に代えて、インバータチェーンの第1インバータINV1とリングオシレータの第2インバータINV2は、
図5に示すCMOSを備えていてもよい。このCMOSは、第2トランジスタTrと負電源ラインの間に第3トランジスタTrを備えており、その第3トランジスタTr3のゲートに入力電圧Vcが入力するように構成されている。このCMOSが用いられる場合、インバータチェーンの第1インバータINVにおいては入力電圧Vcが対象電圧V1であり、リングオシレータの第2インバータINV2においては入力電圧Vcが電源電圧VDDである。このCMOSにおいても、インバータチェーンの第1インバータINV1を構成するトランジスタTr1,Tr2,Tr3によるチャネル長変調効果とリングオシレータの第2インバータINV2を構成するトランジスタTr1,Tr2,Tr3によるチャネル長変調効果が一致するように構成されており、具体的には、第1インバータINV1と第2インバータINV2の各々を構成する第1トランジスタTr1のゲート幅及びゲート長が等しく、第1インバータINV1と第2インバータINV2の各々を構成する第2トランジスタTr2のゲート幅及びゲート長が等しく、第1インバータINV1と第2インバータINV2の各々を構成する第3トランジスタTr3のゲート幅及びゲート長が等しい。
【0028】
図6に、変換回路1が対象電圧V1をデジタル出力値N2に変換する動作を示す。まず、遅延パルス信号生成回路22が、基準パルス信号P0を遅延させた遅延パルス信号P1を生成する。遅延パルス信号P1の遅延時間の長さτ1は、対象電圧V1の大きさに依存する。XOR回路24は、遅延時間の長さτ1に対応した長さを有する差分パルス信号P2を生成する。なお、上記したように、変換回路1は、差分パルス信号P2を生成しない回路構成を採用することもできる。カウンタ回路40は、第1クロック信号CLK1に基づいて差分パルス信号P2の長さをカウントし、そのカウント値を仮カウント値N1として出力する。
【0029】
再生パルス信号生成回路60は、第2クロック信号CLK2が仮カウント値N1と同数をカウントするのに要する時間の長さを有する再生パルス信号P3を生成する。これにより、再生パルス信号P3は、遅延時間の長さτ1が分周回路50の分周比に基づいて増幅された長さを有することができる。この例では、分周回路50の分周比が4分周であることから、再生パルス信号P3は遅延時間の長さτ1の4倍の長さを有することができる。最後に、デジタル信号出力回路80は、第3クロック信号CLK3に基づいて再生パルス信号P3の長さをカウントし、そのカウント値をデジタル出力値N2として出力する。
【0030】
変換回路1は、遅延パルス信号P1の遅延時間の長さτ1の温度に対する温度依存特性と第3クロック信号CLK3の周期の温度に対する温度依存特性が一致することを特徴とする。これにより、遅延パルス信号P1の遅延時間の長さτ1の温度依存特性が第3クロック信号CLK3の周期の温度依存特性により相殺されるので、変換回路1は、温度に依存しないデジタル出力値N2を出力することができる。
【0031】
さらに、変換回路1は、第1クロック信号CLK1を利用して遅延パルス信号P1の遅延時間を仮カウントすることを特徴とする。例えば、温度依存特性を相殺するためだけなら、第1クロック信号CLK1の周期の温度依存特性を遅延パルス信号P1の遅延時間の長さの温度依存特性と一致させれば、わざわざ再生パルス信号P3を生成した後に第3クロック信号CLK3でカウントすることなく、仮カウント値N1をデジタル出力値として出力することも可能である。しかしながら、第1クロック信号CLK1の周期の温度依存特性を遅延パルス信号P1の遅延時間の長さの温度依存特性と一致させようとすると、遅延パルス信号P1に必要とされる遅延特性を満足させながら、第1クロック信号CLK1の周波数を高速化することが難しいという問題がある。一方、変換回路1では、第3クロック信号CLK3を利用して温度依存特性を相殺させることから、第1クロック信号CLK1に用いるクロック信号の設計自由度が高まる。このため、変換回路1内で最高速のクロック信号を第1クロック信号CLK1に用いることできる。このように、変換回路1は、第1クロック信号CLK1を利用して遅延時間を仮カウントすることで高い時間分解能を有することができる。即ち、変換回路1は、温度依存特性の影響を抑えながら、高い時間分解能を有することができる。
【0032】
(第2実施形態)
図7〜9を参照して、第2実施形態の変換回路2を説明する。なお、第1実施形態の変換回路1と共通する構成要素については共通の符号を付し、その説明を省略する。
【0033】
図8に示す変換回路2は、
図7に示す物理量センサSE1の差動電圧をデジタル出力値に変換するために用いられる。物理量センサSE1は、正端子T1と負端子T2の間にフルブリッジ接続されている4つの可変抵抗素子R1,R2,R3,R4と、正端子T1と負端子T2の間に直列接続されている2つの固定抵抗素子R5,R6を有する。物理量センサSE1は、例えば圧力に依存して変動する正側出力電圧VP及び負側出力電圧VMを出力するように構成されている。第1可変抵抗素子R1と第3可変抵抗素子R3は、圧力の増加に比例して抵抗値が低下するように構成されている。第2可変抵抗素子R2と第4可変抵抗素子R4は、圧力の増加に比例して抵抗値が増加するように構成されている。これにより、物理量センサSE1は、作用する圧力が増加したときに、正側出力端子T3に出力される正側出力電圧VPが増加するとともに負側出力端子T4に出力される負側出力電圧VMが低下するように動作する。第1固定抵抗素子R5と第2固定抵抗素子R6は、同一の抵抗値を有しており、正端子T1と負端子T2の間に直列に接続されている。
【0034】
物理量センサSE1はさらに、3つのボルテージフォロア回路VF1,VF2,VF3を有する。第1ボルテージフォロア回路VF1は、正側出力端子T3に接続されており、正側出力電圧VPに応じた第1電圧V11を出力する。第2ボルテージフォロア回路VF2は、負側出力端子T4に接続されており、負側出力電圧VMに応じた第2電圧V12を出力する。第3ボルテージフォロア回路VF3は、第1固定抵抗素子R5と第2固定抵抗素子R6の間の中間端子T5に接続されており、センサ駆動電圧VBの中間電圧(VB/2)に相当する第3電圧V13を出力する。この例に代えて、第1固定抵抗素子R5と第2固定抵抗素子R6が第1ボルテージフォロア回路VF1の出力ノードと第2ボルテージフォロア回路VF2の出力ノードの間に接続されており、第3ボルテージフォロア回路VF3がその第1固定抵抗素子R5と第2固定抵抗素子R6の間の中間端子T5に接続されていてもよい。この場合でも、第3ボルテージフォロア回路VF3は、センサ駆動電圧VBの中間電圧(VB/2)に相当する第3電圧V13を出力することができる。なお、この例では、3つのボルテージフォロア回路VF1,VF2,VF3が物理量センサSE1の構成要素として説明したが、後述する変換回路2の構成要素に含まれてもよい。
【0035】
図8に示されるように、変換回路2は、遅延回路20が2つの遅延パルス信号生成回路22A,22Bを有することを1つの特徴とする。なお、2つの遅延パルス信号生成回路22A,22Bはいずれも、遅延パルス信号生成回路22(
図1参照)と共通の形態、即ち、インバータチェーン(
図2参照)を有することができる。第1遅延パルス信号生成回路22Aは、第1電圧V11が駆動電圧として入力するように構成されており、第1電圧V11に依存して基準パルス信号P0を遅延させた第1遅延パルス信号P11を生成するように構成されている。第2遅延パルス信号生成回路22Bは、第2電圧V12が駆動電圧として入力するように構成されており、第2電圧V12に依存して基準パルス信号P0を遅延させた第2遅延パルス信号P12を生成するように構成されている。XOR回路24は、第1遅延パルス信号P11と第2遅延パルス信号P12の排他的論理和を演算するように構成されており、第1遅延パルス信号P11の立ち上がりエッジから第2遅延パルス信号P12の立ち上がりエッジまでの長さを有する差分パルス信号P13を生成するように構成されている。したがって、差分パルス信号P13は、第1電圧V11と第2電圧V12の差動電圧の大きさに依存した長さを有する。
【0036】
カウンタ回路40は、第1クロック信号CLK1に基づいて差分パルス信号P13の長さをカウントし、そのカウント値を仮カウント値N3として出力するように構成されている。なお、カウンタ回路40は、第1遅延パルス信号P11の立ち上がりエッジでリセットされ、第2遅延パルス信号P12の立ち上がりエッジでセットされるように構成されてもよい。この場合、遅延回路20で差分パルス信号P13を生成する必要がなくなり、回路構成を簡素化することができる。
【0037】
また、変換回路2では、第3クロック信号生成回路70が、第3電圧V13(センサ駆動電圧VBの中間電圧)が駆動電圧として入力するように構成されていることを特徴とする。これにより、センサ駆動電圧VBの変動に追随して第1電圧V11及び第2電圧V12が変動した場合に、第3電圧V13もセンサ駆動電圧VBの変動に追随して変動することができるので、そのようなセンサ駆動電圧VBの変動の影響が相殺される。
【0038】
図9に、変換回路2が第1電圧V11と第2電圧V12の差動電圧をデジタル出力値N4に変換する動作を示す。まず、第1遅延パルス信号生成回路22Aが、基準パルス信号P0を遅延させた第1遅延パルス信号P11を生成する。第1遅延パルス信号P11の遅延時間の長さτ11は、第1電圧V11の大きさに依存する。第2遅延パルス信号生成回路22Bが、基準パルス信号P0を遅延させた第2遅延パルス信号P12を生成する。第2遅延パルス信号P12の遅延時間の長さτ12は、第2電圧V12の大きさに依存する。XOR回路24は、遅延時間τ11と遅延時間τ12の差分時間Δτに対応した長さを有する差分パルス信号P13を生成する。なお、上記したように、変換回路2は、差分パルス信号P13を生成しない回路構成を採用することもできる。カウンタ回路40は、第1クロック信号CLK1に基づいて差分パルス信号P13の長さをカウントし、そのカウント値を仮カウント値N3として出力する。
【0039】
再生パルス信号生成回路60は、第2クロック信号CLK2が仮カウント値N3と同数をカウントするのに要する時間の長さを有する再生パルス信号P14を生成する。再生パルス信号生成回路60は、第2クロック信号CLK2に基づいて仮カウント値N3と同数をカウントするのに要する時間の長さを有する再生パルス信号P14を生成する。これにより、再生パルス信号P14は、差分時間Δτが分周回路50の分周比に基づいて増幅された長さを有することができる。この例では、分周回路50の分周比が4分周であることから、再生パルス信号P14は差分時間Δτの4倍の長さを有することができる。最後に、デジタル信号出力回路80は、第3クロック信号CLK3に基づいて再生パルス信号P14の長さをカウントし、そのカウント値をデジタル出力値N4として出力する。デジタル出力値N4は、第1電圧V11と第2電圧V12の差動電圧の情報、即ち、物理量センサSE1が測定した圧力情報を含むことができる。
【0040】
変換回路2でも、第1遅延パルス信号P11の遅延時間の長さτ11の温度に対する温度依存特性と第2遅延パルス信号P12の遅延時間の長さτ12の温度に対する温度依存特性と第3クロック信号CLK3の周期の温度に対する温度依存特性が一致することを特徴とする。これにより、第1遅延パルス信号P11及び第2遅延パルス信号P12の遅延時間の長さの温度依存特性が第3クロック信号CLK3の周期の温度依存特性により相殺されるので、変換回路2は、温度に依存しないデジタル出力値N4を出力することができる。
【0041】
さらに、変換回路2でも、第1クロック信号CLK1を利用して差分時間を仮カウントすることから、高い時間分解能を有することができる。即ち、変換回路2も、温度依存特性の影響を抑えながら、高い時間分解能を有することができる。
【0042】
(第3実施形態)
図10及び
図11を参照して、第3実施形態の変換回路3を説明する。なお、第1実施形態の変換回路1及び第2実施形態の変換回路2と共通する構成要素については共通の符号を付し、その説明を省略する。
【0043】
図11に示す変換回路3は、
図10に示す物理量センサSE2の差動電圧をデジタル出力値に変換するために用いられる。物理量センサSE2は、
図7に示す物理量センサSE1と対比すると、スイッチ部SW1を有することを特徴とする。スイッチ部SW1は、第1モードにおいて正側出力端子T3をボルテージフォロア回路VF10に接続し、第2モードにおいて負側出力端子T4をボルテージフォロア回路VF10に接続し、第3モードにおいて正側出力端子T3及び負側出力端子T4の双方をボルテージフォロア回路VF10に接続するように構成されている。これにより、ボルテージフォロア回路VF10は、第1モードにおいて正側出力電圧VPに応じた第1電圧V11を出力し、第2モードにおいて負側出力電圧VMに応じた第2電圧V12を出力し、第3モードにおいてセンサ駆動電圧VBの中間電圧(VB/2)に相当する第3電圧V13を出力する。このように、物理量センサSE2は、スイッチ部SW1を採用することにより、
図7に示す物理量センサSE1に比して簡素な回路構成とすることができる。なお、この例では、スイッチ部SW1及びボルテージフォロア回路VF10が物理量センサSE2の構成要素として説明したが、後述する変換回路3の構成要素に含まれてもよい。
【0044】
図11に示すように、変換回路3では、遅延パルス信号生成回路22が、第1モードにおいて第1電圧V11が駆動電圧として入力し、さらに、第2モードにおいて第2電圧V12が駆動電圧として入力するように構成されている。これにより、遅延パルス信号生成回路22は、第1モードにおいて第1電圧V11に依存して基準パルス信号P0を遅延させた第1遅延パルス信号P11を生成し、さらに、第2モードにおいて第2電圧V12に依存して基準パルス信号P0を遅延させた第2遅延パルス信号P12を生成するように構成されている。
【0045】
XOR回路24は、第1モードにおいて基準パルス信号P0と第1遅延パルス信号P11の排他的論理和を演算するように構成されており、基準パルス信号P0の立ち上がりエッジから第1遅延パルス信号P11の立ち上がりエッジまでの長さを有する差分パルス信号を生成するように構成されている。したがって、第1モードで生成される差分パルス信号は、第1電圧V11の大きさに依存した長さを有する。XOR回路24はさらに、第2モードにおいて基準パルス信号P0と第2遅延パルス信号P12の排他的論理和を演算するように構成されており、基準パルス信号P0の立ち上がりエッジから第2遅延パルス信号P12の立ち上がりエッジまでの長さを有する差分パルス信号を生成するように構成されている。したがって、第2モードで生成される差分パルス信号は、第2電圧V12の大きさに依存した長さを有する。
【0046】
カウンタ回路40は、第1モードにおいて第1クロック信号CLK1に基づいて第1遅延パルス信号P11の遅延時間の長さτ11(
図9参照)をカウントし、そのカウント値を第1カウント値N11として出力し、さらに、第2モードにおいて第1クロック信号CLK1に基づいて第2遅延パルス信号P12の遅延時間の長さτ12(
図9参照)をカウントし、そのカウント値を第2カウント値N12として出力するように構成されている。なお、カウンタ回路40は、第1モードにおいて基準パルス信号P0の立ち上がりエッジでリセットされ第1遅延パルス信号P11の立ち上がりエッジでセットされるとともに、第2モードにおいて基準パルス信号P0の立ち上がりエッジでリセットされ第2遅延パルス信号P12の立ち上がりエッジでセットされるように構成されてもよい。この場合、遅延回路20で差分パルス信号を生成する必要がなくなり、回路構成を簡素化することができる。
【0047】
変換回路3は、減算回路90を備えていることを特徴とする。減算回路90は、第2カウント値N12から第1カウント値N11を減算したカウント値を演算し、そのカウント値を仮カウント値N3として出力するように構成されている。減算回路90が出力する仮カウント値N3は、
図8のカウンタ回路40が出力する仮カウント値N3と同様に、第1遅延パルス信号P11の遅延時間と第2遅延パルス信号P12の遅延時間の差分時間Δτの長さに対応する。
【0048】
このように、変換回路3でも、第1遅延パルス信号P11の遅延時間の長さτ11の温度に対する温度依存特性と第2遅延パルス信号P12の遅延時間の長さτ12の温度に対する温度依存特性と第3クロック信号CLK3の周期の温度に対する温度依存特性が一致することを特徴とする。これにより、第1遅延パルス信号P11及び第2遅延パルス信号P12の遅延時間の温度依存特性が第3クロック信号CLK3の周期の温度依存特性により相殺されるので、変換回路3は、温度に依存しないデジタル出力値N4を出力することができる。
【0049】
さらに、変換回路3でも、第1クロック信号CLK1を利用して差分時間を仮カウントすることから、高い時間分解能を有することができる。即ち、変換回路3も、温度依存特性の影響を抑えながら、高い時間分解能を有することができる。
【0050】
さらに、変換回路3は、
図8の変換回路2と対比すると分かるように、1つの遅延パルス信号生成回路22で第1電圧V11と第2電圧V12の差動電圧をデジタル出力値N4に変換することができる。このため、変換回路3は、回路面積の消費を抑えることができる。
【0051】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。