(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
エンジンと、前記エンジンを駆動源とする可変容量型の油圧ポンプと、前記油圧ポンプが吐出する圧油により駆動するアクチュエータと、前記アクチュエータの伸縮動作により駆動するフロント部材と、前記油圧ポンプの流量を制御するコントローラと、前記フロント部材を操作する操作装置と、前記操作装置の操作量を検出する操作量検出器と、前記フロント部材の相対位置を検出する位置検出器と、前記アクチュエータのボトム側とロッド側の負荷圧力を検出するシリンダ圧力検出器と、を有する作業機械において、
前記コントローラは、
前記位置検出器の出力値と前記操作量検出器の出力値に基づいて、前記フロント部材の動作開始時における前記フロント部材の動作の方向ベクトルの重力方向成分の大きさを演算する重力方向成分演算部と、
前記操作量検出器の出力値に基づいて前記油圧ポンプから吐出される圧油の最終的な油圧ポンプ流量最大値を演算する油圧ポンプ流量最大値演算部と、
前記重力方向成分演算部の出力値に基づいて前記油圧ポンプから吐出される圧油の油圧ポンプ流量増加率を演算する油圧ポンプ流量増加率演算部と、
前記シリンダ圧力検出器の出力値と前記位置検出器の出力値とに基づいて前記フロント部材の等価質量を演算する等価質量演算部と、
前記重力方向成分演算部の出力値と前記等価質量演算部の出力値とに基づいて、前記油圧ポンプ流量増加率演算部にて演算された前記油圧ポンプ流量増加率を補正する補正係数を演算する補正係数演算部と、
前記補正係数演算部から出力された補正係数と、前記油圧ポンプ流量増加率演算部から出力された前記油圧ポンプ流量増加率とを乗算して補正後油圧ポンプ流量増加率を演算する補正後油圧ポンプ流量増加率演算部と、を含み、
前記コントローラは、前記補正後油圧ポンプ流量増加率に従って前記油圧ポンプ流量最大値まで前記油圧ポンプの流量を増加させるよう制御し、
前記油圧ポンプ流量増加率演算部は、
前記方向ベクトルの重力方向成分が大きいほど前記油圧ポンプ流量増加率が大きくなるよう演算し、前記方向ベクトルの重力方向成分が小さいほど前記油圧ポンプ流量増加率が小さくなるよう演算し、
前記フロント部材が重力方向に動作する場合には、前記フロント部材の等価質量が大きい時の方が小さい時に比べて前記油圧ポンプ流量増加率が高くなるよう前記油圧ポンプ流量増加率を演算し、
前記フロント部材が重力方向と反対方向に動作する場合には、前記フロント部材の等価質量が小さい時の方が大きい時に比べて前記油圧ポンプ流量増加率が高くなるよう前記油圧ポンプ流量増加率を演算することを特徴とする作業機械。
【背景技術】
【0002】
作業機械の代表例としての油圧ショベルは、自走可能な下部走行体と、下部走行体上に旋回可能に搭載された上部旋回体と、上部旋回体の前側に俯仰動可能に取り付けられたフロント作業装置とを備えており、上部旋回体にはエンジンや、エンジンを駆動源とする油圧ポンプ等が搭載されている。
【0003】
フロント作業装置(以下、作業装置と略記)は掘削作業等を行うものであり、上部旋回体に回動可能に取り付けられたブームと、ブームの先端部に回動可能に取り付けられたアームと、アームの先端部に回動可能に取り付けられたバケットと、上部旋回体とブームとの間に設けられたブームシリンダと、ブームとアームとの間に設けられたアームシリンダと、アームとバケットとの間に設けられたバケットシリンダ等によって構成されている。そして、上部旋回体に設けられた操作室に乗り込んだオペレータが各種の操作レバー(操作装置)を操作し、操作レバーに対応した各油圧シリンダ(アクチュエータ)に油圧ポンプから圧油を供給することにより、作業装置の各フロント部材(ブーム、アーム、バケット)を動作させるようになっている。
【0004】
一般的に、油圧シリンダに供給される圧油の最大吐出流量は操作レバーの入力に比例して増加するが、この圧油の最低吐出量から最大吐出流量に至るまでの流量増加率が各フロント部材の姿勢や負荷状態に拘わらず一定の場合、次のような問題が発生する。
【0005】
一つ目の問題としては、各フロント部材を重力方向と反対向きに動作させる場合、フロント部材の自重が動作と反対方向に作用するため、フロント部材を重力方向に動作させる時に比べて油圧シリンダの加速度が遅くなる。そのため、油圧ポンプが吐出する流量の流量増加率が大きいと、圧油の油圧シリンダへの急な押し込みによるショックが発生する。
【0006】
一方、各フロント部材を重力方向に動作させる場合、フロント部材の自重が動作方向に作用するため、フロント部材を重力方向と反対向きに動作させる時に比べて油圧シリンダの加速度が速くなる。そのため、油圧ポンプ流量の流量増加率が小さいと、油圧シリンダ内の圧油が足りないことによる息継ぎが発生し、フロント部材の動作がハンチングしてしまうことがある。
【0007】
二つ目の問題としては、各フロント部材を重力方向と反対向きに動作させる場合において、バケットに土砂等を積んでいる積載状態や、バケットの先端が車両中心から遠くにある状態の時は、バケットに土砂等が積まれていない空状態や、フロント部材の先端が旋回中心に近い状態の時に比べて、等価質量分だけ油圧シリンダの加速度が小さくなる。そのため、油圧ポンプ流量の流量増加率が大きいと、圧油の油圧シリンダへの急な押し込みによるショックが発生する。
【0008】
一方、各フロント部材を重力方向に動作させる場合において、バケットに土砂等を積んでいる積載状態や、バケットの先端が車両中心から遠くにある状態の時は、バケットに土砂等が積まれていない空状態や、フロント部材の先端が旋回中心に近い状態の時に比べて、等価質量分だけ油圧シリンダの加速度が大きくなる。そのため、油圧ポンプ流量の流量増加率が小さいと、油圧シリンダ内の圧油が足りないことによる息継ぎが発生し、フロント部材の動作がハンチングしてしまうことがある。
【0009】
このような問題を解決する従来技術として、特許文献1に記載された油圧ショベルの制御装置では、作業機械の作業種別を判別し、その作業種別に応じて適切な作動形態で油圧ポンプ吸収馬力や、圧油の最大供給流量、圧油の流量変化度、アクチュエータの応答時定数を制御している。こうして、エンジン出力、作業用アクチュエータの最大作動速度、作業用操作レバーの操作量の変化に対する作業用アクチュエータの作動速度の変化、作業用操作レバーの操作に対する作業用アクチュエータの作動の応答性を作業種別に応じて適切に制御している。
【0010】
また、特許文献2に記載された油圧ショベルの制御装置では、油圧ポンプの吐出量が最低吐出量から立ち上がる操作領域でシリンダの負荷圧もしくはこれに相当する圧力が高いほど、操作量に対応するポンプ吐出量を小さく設定するように吐出量制御を行っている。こうして、アクチュエータ負荷圧を考慮しながら、オペレータの感覚に見合った適度なアクチュエータ応答性を実現している。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態に係る作業機械として、作業装置を備えた油圧ショベルに適用した場合を例に挙げ、図面に基づいて詳細に説明する。
【0019】
図1に示すように、作業機械の代表例である油圧ショベル1は、クローラ式の自走可能な下部走行体2と、下部走行体2上に旋回可能に搭載された上部旋回体3と、上部旋回体3の前側に俯仰動可能に取り付けられた作業装置4とを備えている。
【0020】
作業装置4は、上部旋回体3に回動可能に取り付けられたブーム(フロント部材)5と、ブーム5を駆動するためのブームシリンダ(アクチュエータ)6と、ブーム5の先端部近傍に回転自在に軸支されたアーム(フロント部材)7と、アーム7を駆動するためのアームシリンダ(アクチュエータ)8と、アーム7の先端に回転可能に軸支されたバケット(フロント部材)9と、バケット9を駆動するためのバケットシリンダ(アクチュエータ)10等によって構成されており、ブーム5とアーム7およびバケット9(以下、適宜、フロント部材5,7,9と言う)は、対応する油圧シリンダ6,8,10が伸長または縮小することによって動作する。
【0021】
上部旋回体3とブーム5が接続されている関節にはブーム5の回転角を検出するブーム回転角センサ(位置検出器)11が設けられており、ブーム5とアーム7が接続されている関節にはアーム7の回転角を検出するアーム回転角センサ(位置検出器)12が設けられており、アーム7とバケット9が接続されている関節にはバケット9の回転角を検出するバケット回転角センサ(位置検出器)13が設けられている。一方、上部旋回体3には傾斜角度センサ(位置検出器)14が設けられており、この傾斜角度センサ14は水平な地面と上部旋回体3(車体)とのピッチ方向の傾斜角度を検出する。
【0022】
また、上部旋回体3には操作室15が設けられており、この操作室15内にはブーム5とアーム7およびバケット9を駆動するための操作レバー(操作装置)16(
図2,3参照)が設けられている。さらに、上部旋回体3には、ブームシリンダ6、アームシリンダ8、バケットシリンダ10等の油圧シリンダ(アクチュエータ)を駆動するための油圧システムが搭載されている。以下、本発明の第1の実施形態を
図2〜
図5に基づいて説明する。
【0023】
図2に示すように、第1の実施形態に係る油圧システムは、エンジン21と、エンジン21によって回転駆動される可変容量型の2つの油圧ポンプ41a,41bと、各油圧シリンダを駆動制御するためのコントロールバルブ43と、油圧ポンプ41a,41bから油圧シリンダへ供給される圧油の流量を指令するコントローラ80とを含んで構成されている。コントロールバルブ43は操作レバー16を操作することで各フロント部材を駆動制御し、操作圧センサ(操作量検出器)17は操作レバー16の操作量を検出してこれをコントローラ80に出力する。
【0024】
コントローラ80は、図示しないが、各種演算を行うCPU、CPUによる演算を実行するためのプログラムを格納するROMやHDD等の記憶装置、CPUがプログラムを実行する際の作業領域となるRAM、および他の機器とデータを送受信する際のインタフェースである通信インタフェース(通信I/F)を含むハードウェアと、記憶装置に記憶され、CPUにより実行されるソフトウェアとから構成される。コントローラ80の各機能は、CPUが、記憶装置に格納された各種プログラムをRAMにロードして実行することにより、実現される。
【0025】
コントローラ80には操作圧センサ17の検出信号の他に、各フロント部材の回転角センサ11,12,13の検出信号と車体の傾斜角度センサ14の検出信号が出力され、コントローラ80は、これら各種信号に基づいて油圧ポンプ41a,41bの容積指令値を演算する。コントローラ80から油圧ポンプ41a,41bへの容積指令は、電気・油圧信号変換デバイス70a,70bを介してレギュレータ42a,42bへ送出され、レギュレータ42a,42bが油圧ポンプ41a,41bの容積を制御する。電気・油圧信号変換デバイス70a,70bは、コントローラ80からの電気信号を油圧パイロッド信号へ変換するものであり、例えば電磁比例バルブに相当する。
【0026】
図3に示すように、コントローラ80は、油圧ポンプ流量最大値演算部81、動作方向重力方向成分演算部(重力方向成分演算部)82、油圧ポンプ流量増加率演算部83、油圧ポンプ流量増加率制御部84を備えており、油圧ポンプ流量最大値演算部81に操作圧センサ17によって検出された操作レバー16の操作量が入力されると、油圧ポンプ流量最大値演算部81は、フロント部材毎に設定されたテーブルを参照して操作レバー16の操作量に比例した油圧ポンプ流量最大値を演算する。
【0027】
一方、動作方向重力方向成分演算部82に、各フロント部材5,7,9の回転角センサ11,12,13によって検出されたフロント部材回転角度と、車体の傾斜角度センサ14によって検出された車体の傾斜角度と、操作圧センサ17によって検出された操作レバー16の操作量が入力されると、動作方向重力方向成分演算部82は、オペレータが稼働しようとしているフロント部材5,7,9の動作の方向ベクトル(単位方向ベクトル)の重力方向成分の大きさを演算する。
【0028】
ここで、
図4に示すように、ブーム稼働中心とアーム稼働中心を結んだ線分をL1、アーム稼働中心とバケット稼働中心を結んだ線分をL2、バケット稼働中心とバケット先端を結んだ線分をL3とし、作業装置4が向いている方向の水平面に対する車体接地面のピッチ方向の傾斜角度をθ、車体接地面Eと線分L1との角度であるブーム角度をα、線分L1と線分L2の角度であるアーム角度をβ、線分L2と線分L3の角度であるバケット角度をγとすると、各フロント部材5,7,9の動作の方向ベクトルの重力方向成分は以下のような式で表せられる。なお、重力方向成分は、方向ベクトルの大きさを1とした場合(単位方向ベクトルを考えた場合)、その重力方向成分は0から±1までの値となる。
【0029】
(1)ブーム5について
・ブーム上げ −cos(α+θ)
・ブーム下げ cos(α+θ)
(2)アーム7について
《α+β+θ≧90°の場合》
・アーム引き −cos(α+β+θ)
・アーム押し cos(α+β+θ)
《α+β十θ<90°の場合》
・アーム引き cos(α+β+θ)
・アーム押し −cos(α+β+θ)
(3)バケット9について
《α+β+γ+θ≧270°の場合》
・バケット引き cos(α+β+θ+γ)
・バケット押し −cos(α+β+θ+γ)
《α+β+γ+θ<270°の場合》
・バケット引き −cos(α+β+θ+γ)
・バケット押し cos(α+β+θ+γ)
【0030】
油圧ポンプ流量増加率演算部83に動作方向重力方向成分演算部82で演算されたフロント部材の動作方向の重力方向成分が入力されると、油圧ポンプ流量増加率演算部83は、
図5に示すようなテーブルを参照して油圧ポンプ流量増加率を演算する。
図5は重力方向成分の大きさと油圧ポンプ流量増加率との関係を示す特性図であり、同図に示すように、動作開始時のフロント部材の動作方向の重力方向成分が大きいほど大きい油圧ポンプ流量増加率を出力し、動作開始時のフロント部材の動作方向の重力方向成分が小さいほど小さい油圧ポンプ流量増加率を出力するようになっている。
【0031】
図3に戻り、油圧ポンプ流量増加率制御部84に油圧ポンプ流量最大値演算部81で算出された油圧ポンプ流量最大値と油圧ポンプ流量増加率演算部83で決定された油圧ポンプ流量増加率が入力されると、油圧ポンプ流量増加率制御部84は、決定された油圧ポンプ流量増加率に従って操作レバー16のレバー操作開始時から油圧ポンプ流量最大値まで油圧ポンプ流量を増加させるように、電気・油圧信号変換デバイス70a,70bに制御信号を出力する。これにより、電気・油圧信号変換デバイス70a,70bを介してレギュレータ42a,42bが制御され、油圧ポンプ41a,41bから油圧シリンダ6,8,10へ供給される圧油の流量が制御される。
【0032】
前述したように、フロント部材5,7,9を重力方向と反対向きに動作させる場合、フロント部材5,7,9の自重が動作と反対方向に作用し、重力方向に動作させる時に比べてシリンダの加速度が遅くなるため、
図6(a)の破線で示す比較例のように、油圧ポンプが吐出する流量の流量増加率が大きい場合、油圧シリンダ内への急激な圧油の供給によりシリンダ圧が急上昇してショックが発生する。一方、フロント部材5,7,9を重力方向に動作させる場合、フロント部材5,7,9の自重が動作方向に作用し、重力方向と反対向きに動作させる時に比べて油圧シリンダの加速度が速くなるため、
図6(b)の破線で示す比較例のように、油圧ポンプ流量の流量増加率が小さい場合、油圧シリンダ内の圧油が足りないことによる息継ぎが発生し、フロント部材の動作がハンチングしてしまうことがある。
【0033】
これに対して第1の実施形態では、動作開始時のフロント部材5,7,9の動作方向と姿勢を判別し、この動作状態に応じて油圧ポンプの流量増加率をフィードフォワード制御するようにしている。具体的には、フロント部材5,7,9を重力方向と反対向きに動作させる場合、
図6の実線で示す実施例のように、油圧ポンプ41a,41bが吐出する流量の流量増加率を小さくすることにより、シリンダ圧の急上昇を抑えてショックの発生を防止することができる。一方、フロント部材5,7,9を重力方向に動作させる場合、
図6(b)の実線で示す実施例のように、油圧ポンプ流量の流量増加率を大きくすることにより、シリンダ内の圧油不足による息継ぎの発生を防止することができる。
【0034】
以上説明したように、本発明の第1の実施形態では、各フロント部材の動作開始時における動作方向と姿勢を判別し、フロント部材の動作方向の重力方向成分が大きい場合、フロント部材の自重が動作方向と同じ方向に働く分シリンダ速度の加速度は大きくなるが、油圧ポンプ流量の増加率を大きくしているため、シリンダ内の圧油不足による息継ぎの発生を防止することができる。また、フロント部材の動作方向の重力方向成分が小さい場合、フロント部材の自重が動作方向と逆に働く分シリンダ速度の加速度は小さくなるが、油圧ポンプ流量の増加率を小さくしているため、シリンダ圧の急上昇を抑えてショックの発生を防止することができる。
【0035】
次に、本発明の第2の実施形態を
図7〜
図9に基づいて説明すると、第2の実施形態が第1の実施形態と相違する点は、フロント部材の動作開始時における動作方向と姿勢にレバー操作量を加えた判断に基づいて油圧ポンプ流量の増加率を決定することにあり、それ以外の構成は基本的に同様である。
【0036】
すなわち、
図7に示すように、第2の実施形態においても、コントローラ80に備えられる油圧ポンプ流量最大値演算部81は、操作圧センサ17によって検出された操作レバー16の操作量が入力されると、フロント部材毎に設定されたテーブルを参照して操作レバー16の操作量に比例した油圧ポンプ流量最大値を演算する。一方、動作方向重力方向成分演算部82は、各フロント部材5,7,9の回転角センサ11,12,13によって検出されたフロント部材回転角度と、車体の傾斜角度センサ14によって検出された車体の傾斜角度と、操作圧センサ17によって検出された操作レバー16の操作量が入力されると、オペレータが稼働しようとしているフロント部材の動作方向の重力方向成分の大きさを演算する。
【0037】
ここまでは第1の実施形態と同様であるが、第2の実施形態の場合は、油圧ポンプ流量最大値演算部81で算出された油圧ポンプ流量最大値と動作方向重力方向成分演算部82で演算されたフロント部材の動作方向の重力方向成分とが油圧ポンプ流量増加率演算部83に入力される。油圧ポンプ流量増加率演算部83は、油圧ポンプ流量最大値と動かそうとしているフロント部材の動作方向の重力方向成分とが入力されると、
図8に示すような二次元のテーブルを参照して、油圧ポンプ流量増加率を演算する。
【0038】
図8は油圧ポンプ流量最大値(レバー操作量)と油圧ポンプ流量増加率との関係を示す特性図であり、大きさを異にする5種類の重力方向成分について表されている。同図に示すように、動作開始時のフロント部材の動作方向の重力方向成分が大きいほど大きい油圧ポンプ流量増加率を出力し、動作開始時のフロント部材の動作方向の重力方向成分が小さいほど小さい油圧ポンプ流量増加率を出力し、油圧ポンプ流量最大値が大きいほど大きい油圧ポンプ流量増加率を出力し、油圧ポンプ流量最大値が小さいほど小さい油圧ポンプ流量増加率を出力するようになっている。
【0039】
油圧ポンプ流量増加率制御部84は、油圧ポンプ流量最大値演算部81で算出された油圧ポンプ流量最大値と油圧ポンプ流量増加率演算部83で決定された油圧ポンプ流量増加率が入力されると、操作レバー16のレバー操作開始時から決定された油圧ポンプ流量増加率に従って油圧ポンプ流量最大値まで油圧ポンプ流量を補正する。そして、補正後の油圧ポンプ流量を電気・油圧信号変換デバイス70a,70bに出力してレギュレータ42a,42bを制御することにより、油圧ポンプ41a,41bから油圧シリンダへ供給される圧油の流量が制御される。
【0040】
図9はレバー操作量とポンプ指令流量の関係を場合に分けて示すものであり、
図9(a)は動作開始時のフロント部材の動作方向の重力方向成分が大きく、かつ油圧ポンプ流量最大値が大きい時、
図9(b)は動作開始時のフロント部材の動作方向の重力方向成分が小さく、かつ油圧ポンプ流量最大値が大きい時、
図9(c)は動作開始時のフロント部材の動作方向の重力方向成分が大きく、かつ油圧ポンプ流量最大値が小さい時、
図9(d)は動作開始時のフロント部材の動作方向の重力方向成分が小さく、かつ油圧ポンプ流量最大値が小さい時をそれぞれ示している。また、
図9の下段における実線は、油圧ポンプ流量増加率制御部84から電気・油圧信号変換デバイス70a,70bに出力される制御後の油圧ポンプ流量、
図9の下段における破線は油圧ポンプ流量最大値演算部81から油圧ポンプ流量増加率制御部84に入力される制御前の油圧ポンプ流量をそれぞれ示している。
【0041】
図9(a)に示すように、動作開始時のフロント部材の動作方向の重力方向成分が大きく、かつ油圧ポンプ流量最大値が大きい時は、油圧ポンプ流量の流量増加率を大きくしてシリンダ内の圧油が不足しないようにし、
図9(b)に示すように、動作開始時のフロント部材の動作方向の重力方向成分が小さく、かつ油圧ポンプ流量最大値が大きい時は、
図9(a)の時に比べて油圧ポンプ流量の流量増加率を小さくしてシリンダ圧の急上昇を抑えるようにしている。また、
図9(c)に示すように、動作開始時のフロント部材の動作方向の重力方向成分が大きく、かつ油圧ポンプ流量最大値が小さい時は、油圧ポンプ流量の流量増加率を大きくしてシリンダ内の圧油が不足しないようにし、
図9(d)に示すように、動作開始時のフロント部材の動作方向の重力方向成分が小さく、かつ油圧ポンプ流量最大値が小さい時は、
図9(c)の時に比べて油圧ポンプ流量の流量増加率を小さくしてシリンダ圧の急上昇を抑えるようにしている。
【0042】
以上説明したように、本発明の第2の実施形態では、各フロント部材の動作開始時における動作方向と姿勢およびレバー操作量(油圧ポンプ流量最大値)とを判別し、フロント部材の動作方向の重力方向成分が大きい場合、フロント部材の自重が動作方向と同じ方向に働く分シリンダ速度の加速度は大きくなるが、油圧ポンプ流量の増加率を大きくしているため、シリンダ内の圧油不足による息継ぎの発生を防止することができる。また、フロント部材の動作方向の重力方向成分が小さい場合、フロント部材の自重が動作方向と逆に働く分シリンダ速度の加速度は小さくなるが、油圧ポンプ流量の増加率を小さくしているため、シリンダ圧の急上昇を抑えてショックの発生を防止することができる。
【0043】
また、操作レバー16の操作量が大きく油圧ポンプ流量最大値が大きい場合、シリンダの加速は大きくなるが、油圧ポンプ流量の増加率を大きくしているため、シリンダ内の圧油不足による息継ぎの発生を防止することができる。また、操作レバー16の操作量が小さく油圧ポンプ流量最大値が小さい場合、シリンダの加速度は小さくなるが、油圧ポンプ流量の増加率を小さくしているため、シリンダ圧の急上昇を抑えてショックの発生を防止することができる。
【0044】
次に、本発明の第3の実施形態を
図10〜
図13に基づいて説明する。
【0045】
図10に示すように、第3の実施形態に係る油圧システムは、ブームシリンダ6のボトム側とロッド側の負荷圧力を検出するブームシリンダ圧センサ22と、アームシリンダ8のボトム側とロッド側の負荷圧力を検出するアームシリンダ圧センサ23と、バケットシリンダ10のボトム側とロッド側の負荷圧力を検出するバケットシリンダ圧センサ24とを備えている点と、油圧ポンプ41a,41bの吐出圧力を検出するポンプ圧センサ44a,44bを備えている点と、オペレータが作業装置4のバケット部分に装着するアタッチメントを選択してコントローラ80へ入力することが可能なアタッチメント選択スイッチ25を備えている点と、コントローラ80が後述するシリンダ圧センサ故障判定部とフロント部材重量・寸法記憶部88を備えている点を除くと、全体構成は第1の実施形態と同様である。
【0046】
図11に示すように、コントローラ80は、油圧ポンプ流量最大値演算部81、動作方向重力方向成分演算部82、油圧ポンプ流量増加率演算部83、油圧ポンプ流量増加率制御部84に加えて、等価質量演算部85、油圧ポンプ流量増加率係数演算部86、補正後油圧ポンプ流量増加率演算部87、フロント部材重量・寸法記憶部88、シリンダ圧センサ故障判定部89を備えている。
【0047】
第3の実施形態においても、コントローラ80に備えられる油圧ポンプ流量最大値演算部81は、操作圧センサ17によって検出された操作レバー16の操作量が入力されると、フロント部材毎に設定されたテーブルを参照して操作レバー16の操作量に比例した油圧ポンプ流量最大値を演算する。一方、動作方向重力方向成分演算部82は、各フロント部材5,7,9の回転角センサ11,12,13によって検出されたフロント部材回転角度と、車体の傾斜角度センサ14によって検出された車体の傾斜角度と、操作圧センサ17によって検出された操作レバー16の操作量が入力されると、オペレータが稼働しようとしているフロント部材の動作方向の重力方向成分の大きさを演算する。油圧ポンプ流量増加率演算部83は、油圧ポンプ流量最大値演算部81で算出された油圧ポンプ流量最大値と動作方向重力方向成分演算部82で演算されたフロント部材の動作方向の重力方向成分とが入力されると、
図8に示すような二次元のテーブルを参照して油圧ポンプ流量増加率を演算する。
【0048】
ここまでは第2の実施形態と同様であるが、第3の実施形態の場合は、等価質量演算部85に、各フロント部材の回転角センサ11,12,13によって検出されたフロント部材回転角度と、車体の傾斜角度センサ14によって検出された車体の傾斜角度と、各シリンダ圧センサ22,23,24によって検出されたシリンダ負荷圧力と、アタッチメント選択スイッチ25による入力に基づいてフロント部材重量・寸法記憶部88の記憶部から出力されるフロント部材の重量・寸法と入力されると、等価質量演算部85がオペレータが稼働しようとしているフロント部材の等価質量を演算する。
【0049】
ここで、シリンダ圧センサ故障判定部89は、各シリンダ圧センサ22,23,24によって検出されたシリンダ負荷圧力とポンプ圧センサ44a,44bによって検出された油圧ポンプ41a,41bの吐出圧力とが入力されると、各シリンダ圧センサ22,23,24が故障しているか否かを判断し、各シリンダ圧センサ22,23,24に故障がないと判断した場合に、各シリンダ圧センサ22,23,24によって検出されたシリンダ負荷圧力を等価質量演算部85に入力する。一方、シリンダ圧センサ故障判定部89は、各シリンダ圧センサ22,23,24のいずれかが故障していると判断すると、シリンダ負荷圧力の代わりに、ポンプ圧センサ44a,44bによって検出された油圧ポンプ41a,41bの吐出圧力を等価質量演算部85に入力する。
【0050】
また、フロント部材重量・寸法記憶部88の記憶部には、ブーム5、アーム7、バケット9の長さと重量、アタッチメント(ブレーカやカッター等)の長さと重量が記憶されており、例えば、バケット9の代わりにブレーカを使用する場合、フロント部材重量・寸法記憶部88は、アタッチメント選択スイッチ25からブレーカを指示する信号を受け取ると、ブレーカを含むフロント部材の重量・寸法に関するデータを等価質量演算部85に入力する。
【0051】
油圧ポンプ流量増加率係数演算部86は、等価質量演算部85で演算されたフロント部材の等価質量と動作方向重力方向成分演算部82で演算されたフロント部材の動作方向の重力方向成分が入力されると、
図12に示すような二次元のテーブルを参照して油圧ポンプ流量増加率係数を演算する。
【0052】
図12はフロント部材の等価質量と油圧ポンプ流量増加率計数との関係を示す特性図であり、大きさを異にする5種類の重力方向成分について表されている。同図に示すように、動作開始時のフロント部材の動作方向の重力方向成分が大きいほど、かつフロント部材の等価質量が大きいほど、油圧ポンプの流量増加率が大きくなるような係数を出力し、動作開始時のフロント部材の動作方向の重力方向成分が大きいほど、かつフロント部材の等価質量が小さいほど、油圧ポンプの流量増加率が小さくなるような係数を出力する。また、動作開始時のフロント部材の動作方向の重力方向成分が小さいほど、かつフロント部材の等価質量が大きいほど、油圧ポンプの流量増加率が小さくなるような係数を出力し、動作開始時のフロント部材の動作方向の重力方向成分が小さいほど、かつフロント部材の等価質量が小さいほど、油圧ポンプの流量増加率が大きくなるような係数を出力するようになっている。
【0053】
補正後油圧ポンプ流量増加率演算部87は、油圧ポンプ流量増加率係数演算部86で演算された油圧ポンプ流量増加率係数と油圧ポンプ流量増加率演算部83で演算された油圧ポンプ流量増加率とが入力されると、これら油圧ポンプ流量増加率係数と油圧ポンプ流量増加率を乗算して補正後油圧ポンプ流量増加率を演算する。
【0054】
油圧ポンプ流量増加率制御部84は、補正後油圧ポンプ流量増加率演算部87で演算された補正後油圧ポンプ流量増加率と油圧ポンプ流量最大値演算部81で算出された油圧ポンプ流量最大値とが入力されると、操作レバー16のレバー操作開始時から決定された油圧ポンプ流量増加率に従って油圧ポンプ流量最大値まで油圧ポンプ流量を補正する。
【0055】
図13はレバー操作量とポンプ指令流量の関係を場合に分けて示す説明図であり、
図13(a)は動作開始時のフロント部材の動作方向の重力方向成分が大きく、かつ油圧ポンプ流量最大値が大きい時、
図13(b)は動作開始時のフロント部材の動作方向の重力方向成分が大きく、かつフロント部材の等価質量が小さい時、
図13(c)は動作開始時のフロント部材の動作方向の重力方向成分が小さく、かつフロント部材の等価質量が小さい時、
図13(d)は動作開始時のフロント部材の動作方向の重力方向成分が小さく、かつフロント部材の等価質量が大きい時をそれぞれ示している。また、
図13の下段における実線は、油圧ポンプ流量増加率制御部84から電気・油圧信号変換デバイス70a,70bに出力される制御後の油圧ポンプ流量、
図13の下段における破線は油圧ポンプ流量最大値演算部81から油圧ポンプ流量増加率制御部84に入力される制御前の油圧ポンプ流量をそれぞれ示している。
【0056】
図13から明らかなように、動作開始時のフロント部材の動作方向の重力方向成分が大きい場合、油圧ポンプ流量の流量増加率を大きくしてシリンダ内の圧油が不足しないようし、その際、
図13(a)と
図13(b)に示すように、フロント部材の等価質量が大きいほど油圧ポンプの流量増加率が大きくなるようにする。また、動作開始時のフロント部材の動作方向の重力方向成分が小さい場合、油圧ポンプ流量の流量増加率を小さくしてシリンダ圧の急上昇を抑えるようにし、その際、
図13(c)と
図13(d)に示すように、フロント部材の等価質量が大きいほど油圧ポンプの流量増加率が小さくなるようにする。そして、このような補正後の油圧ポンプ流量を電気・油圧信号変換デバイス70a,70bに出力してレギュレータ42a,42bを制御することにより、油圧ポンプ41a,41bから油圧シリンダへ供給される圧油の流量が制御される。
【0057】
以上説明したように、本発明の第3の実施形態では、各フロント部材の動作開始時における動作方向と姿勢とレバー操作量(油圧ポンプ流量最大値)と等価質量とを判別し、フロント部材の動作方向の重力方向成分が大きい場合、フロント部材の自重が動作方向と同じ方向に働く分シリンダ速度の加速度は大きくなるが、油圧ポンプ流量の増加率を大きくしているため、シリンダ内の圧油不足による息継ぎの発生を防止することができる。また、フロント部材の動作方向の重力方向成分が小さい場合、フロント部材の自重が動作方向と逆に働く分シリンダ速度の加速度は小さくなるが、油圧ポンプ流量の増加率を小さくしているため、シリンダ圧の急上昇を抑えてショックの発生を防止することができる。
【0058】
また、操作レバー16の操作量が大きく油圧ポンプ流量最大値が大きい場合、シリンダの加速は大きくなるが、油圧ポンプ流量の増加率を大きくしているため、シリンダ内の圧油不足による息継ぎの発生を防止することができる。また、操作レバー16の操作量が小さく油圧ポンプ流量最大値が小さい場合、シリンダの加速度は小さくなるが、油圧ポンプ流量の増加率を小さくしているため、シリンダ圧の急上昇を抑えてショックの発生を防止することができる。
【0059】
また、フロント部材の先端が車体の中心から遠い場合、フロント部材の動作方向が重力方向のときは、フロント部材の先端が車体の中心に近い場合に比べてシリンダの加速度は大きくなるが、ポンプ流量の増加率が大きくなるように係数を掛けて補正することによってシリンダの息継ぎの発生を防止できる。一方、フロント部材の動作方向が鉛直上向きのときは、フロント部材の先端が車体の中心に近い場合に比べて、フロント部材の自重が動作方向と逆に働く分シリンダ速度の加速度は小さくなるが、ポンプ流量の増加率を小さくなるように係数を掛けて補正することで、シリンダ圧の急上昇を抑えてショックの発生を防止することができる。
【0060】
また、フロント部材の先端が車体の中心に近い場合、フロント部材の動作方向が重力方向のときは、フロント部材の先端が車体の中心から遠い場合に比べてシリンダの加速度は小さくなるが、ポンプ流量の増加率が小さくなるように係数を掛けて補正することで、シリンダ圧の急上昇を抑えてショックの発生を防止することができる。一方、フロント部材の動作方向が鉛直上向きのときは、フロント部材の先端が車体の中心から遠い場合に比べて、フロント部材の自重が動作方向と逆に働く分シリンダ速度の加速度は大きくなるが、ポンプ流量の増加率が大きくなるように係数を掛けて補正することによってシリンダの息継ぎの発生を防止できる。
【0061】
しかも、本発明の第3の実施形態では、シリンダ圧センサ22,23,24が故障した場合でも、それをシリンダ圧センサ故障判定部89によって感知して、代わりにポンプ圧センサ44a,44bの測定値を用いるようにしたので、正常時に近い精度でフロント部材の等価質量を演算することができる。
【0062】
さらに、本発明の第3の実施形態では、オペレータがアタッチメント選択スイッチ25を用いてバケット部分に装着されたアタッチメントを選択し、フロント部材重量・寸法記憶部88に記憶されているフロント部材やアタッチメントの寸法と重量に関するデータを等価質量の演算に用いているため、バケット部分を各アタッチメントに交換した際にも正確にフロント部材の等価質量を演算することができる。
【0063】
なお、上記した第3の実施形態では、油圧ポンプ流量増加率係数演算部86に等価質量演算部85で演算されたフロント部材の等価質量と動作方向重力方向成分演算部82で演算されたフロント部材の動作方向の重力方向成分とを入力することにより、油圧ポンプ流量増加率係数演算部86が油圧ポンプ流量増加率係数を演算するようにしているが、
図14に示す第4の実施形態のように、等価質量演算部85の代わりに積荷質量演算部90を用いるようにしても良い。
【0064】
すなわち、
図14に示すように、積荷質量演算部90にはバケットシリンダ圧センサ24によって検出されるバケットシリンダ10の負荷圧力が入力され、その検出値に基づいて積荷質量演算部90はバケット9の積荷質量を演算する。この積荷質量演算部90で演算されたバケットの積荷質量と動作方向重力方向成分演算部82で演算されたフロント部材の動作方向の重力方向成分が油圧ポンプ流量増加率係数演算部86に入力されると、油圧ポンプ流量増加率係数演算部86は補正後油圧ポンプ流量増加率演算部87に入力すべき油圧ポンプ流量増加率係数を演算する。なお、それ以外の構成は第3の実施形態と同様であるため、ここでは重複する説明を省略することとする。
【0065】
このように構成された第4の実施形態では、各フロント部材の動作開始時における動作方向と姿勢とレバー操作量(油圧ポンプ流量最大値)と積荷質量を判別し、フロント部材の動作方向の重力方向成分が大きい場合、フロント部材の自重が動作方向と同じ方向に働く分シリンダ速度の加速度は大きくなるが、油圧ポンプ流量の増加率を大きくしているため、シリンダ内の圧油不足による息継ぎの発生を防止することができる。また、フロント部材の動作方向の重力方向成分が小さい場合、フロント部材の自重が動作方向と逆に働く分シリンダ速度の加速度は小さくなるが、油圧ポンプ流量の増加率を小さくしているため、シリンダ圧の急上昇を抑えてショックの発生を防止することができる。
【0066】
また、操作レバー16の操作量が大きく油圧ポンプ流量最大値が大きい場合、シリンダの加速は大きくなるが、油圧ポンプ流量の増加率を大きくしているため、シリンダ内の圧油不足による息継ぎの発生を防止することができる。また、操作レバー16の操作量が小さく油圧ポンプ流量最大値が小さい場合、シリンダの加速度は小さくなるが、油圧ポンプ流量の増加率を小さくしているため、シリンダ圧の急上昇を抑えてショックの発生を防止することができる。
【0067】
バケット9に土砂等の積荷がある場合、フロント部材の動作方向が重力方向のときは、バケット9が空荷の場合に比べてシリンダの加速度は大きくなるが、ポンプ流量の増加率が大きくなるように係数を掛けて補正することによってシリンダの息継ぎの発生を防止できる。一方、フロント部材の動作方向が鉛直上向きのときは、バケット9が空荷の場合に比べて、フロント部材の自重が動作方向と逆に働く分シリンダ速度の加速度は小さくなるが、ポンプ流量の増加率を小さくなるように係数を掛けて補正することで、シリンダ圧の急上昇を抑えてショックの発生を防止することができる。
【0068】
また、バケット9が空荷の場合、フロント部材の動作方向が重力方向のときは、バケット9に土砂等の積荷がある場合に比べてシリンダの加速度は小さくなるが、ポンプ流量の増加率が小さくなるように係数を掛けて補正することで、シリンダ圧の急上昇を抑えてショックの発生を防止することができる。一方、フロント部材の動作方向が鉛直上向きのときは、バケット9に土砂等の積荷がある場合に比べて、フロント部材の自重が動作方向と逆に働く分シリンダ速度の加速度は大きくなるが、ポンプ流量の増加率が大きくなるように係数を掛けて補正することによってシリンダの息継ぎの発生を防止できる。
【0069】
なお、上述した各実施形態は、本発明の説明のための例示であり、本発明の範囲をそれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。当業者は、本発明の要旨を逸脱することなしに、他の様々な態様で本発明を実施することができる。