特許第6707064号(P6707064)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6707064
(24)【登録日】2020年5月21日
(45)【発行日】2020年6月10日
(54)【発明の名称】油圧式作業機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/22 20060101AFI20200601BHJP
   F15B 11/044 20060101ALI20200601BHJP
   F15B 11/028 20060101ALI20200601BHJP
   F15B 11/16 20060101ALI20200601BHJP
   F15B 11/17 20060101ALI20200601BHJP
   F15B 11/02 20060101ALI20200601BHJP
【FI】
   E02F9/22 Q
   F15B11/044
   F15B11/028 G
   F15B11/16 B
   F15B11/17
   F15B11/02 M
【請求項の数】4
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-161634(P2017-161634)
(22)【出願日】2017年8月24日
(65)【公開番号】特開2019-39208(P2019-39208A)
(43)【公開日】2019年3月14日
【審査請求日】2019年8月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】特許業務法人開知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中野 寿身
(72)【発明者】
【氏名】森木 秀一
【審査官】 松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−330006(JP,A)
【文献】 特開平8−128406(JP,A)
【文献】 特開2000−8423(JP,A)
【文献】 特開平11−30204(JP,A)
【文献】 特開平3−275818(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0047398(US,A1)
【文献】 特開平9−291560(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/22
F15B 11/02
F15B 11/028
F15B 11/044
F15B 11/16
F15B 11/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブームとアームとを有する作業装置と、
前記ブームを駆動するブームシリンダと、
前記アームを駆動するアームシリンダと、
作動油タンクと、
第1油圧ポンプと、
前記第1油圧ポンプから前記ブームシリンダに供給される圧油の流量と方向を制御する第1ブーム方向制御弁と、
前記第1油圧ポンプから前記アームシリンダに供給される圧油の流量と方向を制御する第1アーム方向制御弁と、
前記第1ブーム方向制御弁の操作量を指示するブーム操作装置と、
前記第1アーム方向制御弁の操作量を指示するアーム操作装置と、
前記ブームシリンダの負荷圧を検出するブーム負荷圧検出装置と、
前記アームシリンダの負荷圧を検出するアーム負荷圧検出装置と、
前記ブームシリンダの負荷圧に対する前記アームシリンダの負荷圧の偏差の増大に応じて前記アームシリンダのメータイン開口が拡大するように、前記アーム操作装置によって指示された前記第1アーム方向制御弁の操作量を増加補正する制御装置とを備えた油圧式作業機械において、
前記第1アーム方向制御弁とは独立して前記アームシリンダのメータアウト開口を調節できるアーム調速弁装置を更に備え、
前記制御装置は、前記アーム操作装置によって指示された操作量を増加補正するときに、前記アームシリンダの負荷圧の増大に応じて前記アームシリンダのメータアウト開口が縮小するように前記アーム調速弁装置を制御する
ことを特徴とする油圧式作業機械。
【請求項2】
請求項1に記載の油圧式作業機械において、
第2油圧ポンプと、
前記ブーム操作装置によって指示された操作量に応じて、前記第2油圧ポンプから前記ブームシリンダに供給される圧油の流量と方向を制御する第2ブーム方向制御弁とを更に備え、
前記アーム調速弁装置は、前記アーム操作装置によって指示された操作量に応じて、前記第2油圧ポンプから前記アームシリンダに供給される圧油の流量と方向を制御する第2アーム方向制御弁であり、前記第2アーム方向制御弁は、前記第1アーム方向制御弁のメータアウト開口が開き始めるときの操作量よりも小さい操作量でメータアウト開口が開き始めるように構成されており、
前記制御装置は、前記アーム操作装置によって指示された操作量を増加補正するときに、前記アームシリンダの負荷圧の増大に応じて前記第2アーム方向制御弁の操作量を減少補正する
ことを特徴とする油圧式作業機械。
【請求項3】
請求項1に記載の油圧式作業機械において、
前記アーム調速弁装置は、前記第1アーム方向制御弁と前記作動油タンクとを接続する油路に設けられた開閉弁である
ことを特徴とする油圧式作業機械。
【請求項4】
請求項1に記載の油圧式作業機械において、
前記制御装置は、前記作業装置と施工目標面との距離である目標面距離を演算し、前記アーム操作装置によって指示された操作量を増加補正するときに、前記目標面距離の増大に応じて、前記アームシリンダの負荷圧の増大に応じた前記アームシリンダのメータアウト開口の縮小幅が小さくなるように前記アーム調速弁装置を制御する
ことを特徴とする油圧式作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベル等の油圧式作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧式作業機械においては、油圧ポンプから吐出された圧油を方向制御弁を介してアクチュエータに供給され、作業装置が動作する。方向制御弁は、操作装置の操作量に応じた操作圧によって動作し、アクチュエータに供給される圧油の流量と方向を制御する。アクチュエータに供給される圧油の流量と方向によって、作業装置の動作速度と方向が制御される。
【0003】
一般的な油圧式作業機械の油圧回路では、一つの油圧ポンプに対して、複数の方向制御弁が並列に接続されている。これら方向制御弁は、それぞれ別のアクチュエータに接続されており、油圧ポンプから供給される圧油の流れを分流し、各アクチュエータに供給する。このような構成とすることで、一つの油圧ポンプで複数のアクチュエータを動作させ、方向制御弁で各アクチュエータの動作速度を制御することが可能となる。
【0004】
特許文献1には、油圧建設機械の作業装置先端の軌跡を目標軌跡に沿わせることができる建設機械の軌跡制御装置が開示されている。この軌跡制御装置は、作業装置を構成している各部材の位置と姿勢を演算し、作業装置先端が目標軌跡に沿って動作するように、操作装置から出力される操作圧を補正している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−291560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の油圧システムは、一つの油圧ポンプから供給される圧油を、方向制御弁で分流することで複数のアクチュエータを動作させている。各アクチュエータへの分流比率は、方向制御弁の開度の比率とアクチュエータにかかる負荷の比率によって変動する。このため、掘削中に掘削負荷が変動した場合、各アクチュエータへの分流比率が変化し、各アクチュエータの速度バランスが崩れ、作業装置先端の軌跡と目標軌跡とのズレが大きくなってしまう。
【0007】
ブームシリンダとアームシリンダによって作業装置を動作させ、掘削を行う場合を例として説明する。掘削負荷が大きくなると、アームシリンダにかかる負荷が大きくなる。負荷が大きくなると、アームシリンダへの分流比率が低下してアームシリンダの伸長速度が遅くなり、作業装置先端の軌跡と目標軌跡とのズレが拡大する。このとき、特許文献1に記載の油圧システムでは、アームシリンダの負荷が増大したときに、アームシリンダを制御する方向制御弁のメータイン開口が拡大するように操作圧を補正し、アームシリンダへの分流比率を増加させている。これにより、掘削負荷が増大したときも、アームシリンダとブームシリンダの速度バランスが保たれ、バケット先端を目標軌跡に沿って移動させることができる。
【0008】
しかしながら、掘削対象が柔らかくなったり、バケット先端が掘削対象の表面から抜け出るなどして掘削負荷が急激に低下すると、拡大したアーム方向制御弁のメータイン開口を介してアームシリンダに多量の圧油が供給され、アームがクラウド方向に急加速するおそれがある。その結果、バケット先端が目標軌跡から大きく外れたり、バケット先端の進行方向と目標軌跡とが交差していた場合は、目標軌跡よりも深く掘削することになる。
【0009】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、掘削負荷が急激に低下したときのアームの急加速を防止することにより、水平均し作業や法面整形作業等における仕上げ精度を向上できる油圧式作業機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、ブームとアームとを有する作業装置と、前記ブームを駆動するブームシリンダと、前記アームを駆動するアームシリンダと、作動油タンクと、第1油圧ポンプと、前記第1油圧ポンプから前記ブームシリンダに供給される圧油の流量と方向を制御する第1ブーム方向制御弁と、前記第1油圧ポンプから前記アームシリンダに供給される圧油の流量と方向を制御する第1アーム方向制御弁と、前記第1ブーム方向制御弁の操作量を指示するブーム操作装置と、前記第1アーム方向制御弁の操作量を指示するアーム操作装置と、前記ブームシリンダの負荷圧を検出するブーム負荷圧検出装置と、前記アームシリンダの負荷圧を検出するアーム負荷圧検出装置と、前記ブームシリンダの負荷圧に対する前記アームシリンダの負荷圧の偏差の増大に応じて、前記アームシリンダのメータイン開口が拡大するように、前記アーム操作装置によって指示された前記第1アーム方向制御弁の操作量を増加補正する制御装置とを備えた油圧ショベルにおいて、前記第1アーム方向制御弁とは独立して前記アームシリンダのメータアウト開口を調節できるアーム調速弁装置を更に備え、前記制御装置は、前記アーム操作装置によって指示された操作量を増加補正するときに、前記アームシリンダの負荷圧の増大に応じて前記アームシリンダのメータアウト開口が縮小するように前記アーム調速弁装置を制御するものとする。
【0011】
以上のように構成した本発明によれば、ブームシリンダの負荷圧に対するアームシリンダの負荷圧の偏差(掘削負荷)の増大に応じて、第1アーム方向制御弁のメータイン開口が拡大するように、アーム操作装置によって指示された操作量が増加補正されたときに、アームシリンダの負荷圧の増大に応じて前記アームシリンダのメータアウト開口が縮小する。これにより、掘削負荷が急激に低下したときに、アームシリンダの背圧が上昇し、アームシリンダに供給される圧油の流量が抑制され、アームの急加速が防止されるため、水平均し作業や法面整形作業等における仕上げ精度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、掘削負荷が急激に低下したときのアームの急加速を防止することにより、水平均し作業や法面整形作業等における仕上げ精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1の実施例に係る油圧ショベルの斜視図である。
図2図1に示す油圧ショベルに搭載された油圧駆動装置の概略構成図である。
図3図2に示すメインコントローラの制御ブロック図である。
図4図3に示すメインスプール制御部の演算ブロック図である。
図5図3に示すアームクラウド調速制御部の演算ブロック図である。
図6A図2に示すアーム方向制御弁のアームクラウド側の開口特性を示す図である。
図6B図2に示すアーム調速方向制御弁のアームクラウド側の開口特性を示す図である。
図7A】従来技術に係る油圧ショベルによる掘削動作を示す図である。
図7B図1に示す油圧ショベルによる掘削動作を示す図である。
図8】本発明の第2の実施例に係る油圧ショベルに搭載された油圧駆動装置の概略構成図である。
図9】本発明の第3の実施例に係る油圧ショベルに搭載された油圧駆動装置の概略構成図である。
図10A図9に示すアーム方向制御弁の開口特性の一例を示す図である。
図10B図9に示すアーム調速弁の制御特性の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態に係る油圧式作業機械として油圧ショベルを例に挙げ、図面を参照して説明する。なお、各図中、同等の部材には同一の符号を付し、重複した説明は適宜省略する。
【実施例1】
【0015】
図1は、本発明の第1の実施例に係る油圧ショベルの斜視図である。
【0016】
図1において、油圧ショベル300は下部走行体9と上部旋回体10と作業装置15とを備えている。下部走行体9は左右のクローラ式走行装置を有し、左右の走行油圧モータ3(左側のみ図示)により駆動される。上部旋回体10は下部走行体9上に旋回可能に搭載され、旋回油圧モータ4により旋回駆動される。上部旋回体10に設けられた機械室には、原動機としてのエンジン14と、エンジン14により駆動される油圧ポンプ装置2と、後述するコントロールバルブ20とが配置されている。
【0017】
作業装置15は上部旋回体10の前部に上下方向に回動可能に取り付けられている。上部旋回体10には運転室が設けられ、運転室内には走行用右操作レバー装置1a、走行用左操作レバー装置1b、作業装置15の動作および旋回動作を指示するための右操作レバー装置1cおよび左操作レバー装置1d、後述するモード設定スイッチ32(図2に示す)等の操作装置が配置されている。
【0018】
作業装置15はブーム11、アーム12、バケット8を有する多関節構造であり、ブーム11はブームシリンダ5の伸縮により上部旋回体10に対して上下方向に回動し、アーム12はアームシリンダ6の伸縮によりブーム11に対して上下および前後方向に回動し、バケット8はバケットシリンダ7の伸縮によりアーム12に対して上下および前後方向に回動する。
【0019】
また、作業装置15の位置を算出するために、上部旋回体10とブーム11との連結部近傍には、ブーム11の角度を検出するブーム角度検出器13aが設けられ、ブーム11とアーム12との連結部近傍には、アーム12の角度を検出するアーム角度検出器13bが設けられ、アーム12とバケット8との近傍には、バケット8の角度を検出するバケット角度検出器13cが設けられている。これらの角度検出器13a,13b,13cから出力された角度信号は、後述するメインコントローラ100に入力される。
【0020】
コントロールバルブ20は、油圧ポンプ装置2から上述したブームシリンダ5、アームシリンダ6、バケットシリンダ7、左右の走行油圧モータ3等の油圧アクチュエータのそれぞれに供給される圧油の流れ(流量と方向)を制御するものである。
【0021】
図2は、油圧ショベル300に搭載された油圧駆動装置の概略構成図である。なお、説明の簡略化のため、図2では、ブームシリンダ5とアームシリンダ6の駆動に関わる部分のみを図示し、その他の油圧アクチュエータの駆動に関わる部分の説明は省略する。また、本実施例と直接的に関係しないドレン回路、従来の油圧駆動装置と構成および動作が同様のロードチェック弁等の説明も省略する。
【0022】
図2において、油圧駆動装置400は、油圧アクチュエータ5,6と、油圧ポンプ装置2と、コントロールバルブ20と、制御装置としてのメインコントローラ100とを備えている。油圧ポンプ装置2は、第1油圧ポンプ2aと第2油圧ポンプ2bとを有する。第1油圧ポンプ2aと第2油圧ポンプ2bは、エンジン14によって駆動され、それぞれ第1ポンプラインL1と第2ポンプラインL2に圧油を供給する。本実施例では、第1油圧ポンプ2aと第2油圧ポンプ2bを固定容量型の油圧ポンプで構成しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、可変容量型の油圧ポンプで構成しても良い。
【0023】
コントロールバルブ20は、第1ポンプラインL1と第2ポンプラインL2からなる2系統のポンプラインから構成されている。第1ポンプラインL1には、第1ブーム方向制御弁21と、アーム調速弁装置としてのアームクラウド調速方向制御弁22とが設けられており、第1油圧ポンプ2aが吐出する圧油は、第1ブーム方向制御弁21を介してブームシリンダ5に供給され、アームクラウド調速方向制御弁22を介してアームシリンダ6に供給される。同様に、第2ポンプラインL2には、アーム方向制御弁23と、第2ブーム方向制御弁24が設けられており、第2油圧ポンプ2bが吐出する圧油は、アーム方向制御弁23を介してアームシリンダ6に供給され、第2ブーム方向制御弁24を介してブームシリンダ5に供給される。なお、第1ブーム方向制御弁21とアームクラウド調速方向制御弁22はパラレル回路L1aによって分流可能に構成され、アーム方向制御弁23と第2ブーム方向制御弁24はパラレル回路L2aによって、分流可能に構成されている。
【0024】
また、第1ポンプラインL1と第2ポンプラインL2には、リリーフ弁26,27がそれぞれ設けられている。リリーフ弁26(27)は、ポンプラインL1(L2)の圧力が予め設定されたリリーフ圧に達した場合に開口し、ポンプラインL1(L2)の圧油を作動油タンク16へ逃がす。
【0025】
第1ブーム方向制御弁21と第2ブーム方向制御弁24は、電磁比例弁21aによって生成される信号圧によってブーム上げ方向(図示右方向)に駆動され、電磁比例弁21bによって生成される信号圧によってブーム下げ方向(図示左方向)に駆動される。アーム方向制御弁23とアームクラウド調速方向制御弁22は、電磁比例弁23bによって生成される信号圧によってアームダンプ方向(図示左方向)に駆動される。アーム方向制御弁23は、電磁比例弁23aによって生成される信号圧によってアームクラウド方向(図示右方向)に駆動される。アームクラウド調速方向制御弁22は、電磁比例弁22aによって生成される信号圧によってアームクラウド方向(図示右方向)に駆動される。
【0026】
電磁比例弁21a,21b,22a,23a,23bは、パイロット油圧源29から供給されるパイロット圧油を一次圧として、メインコントローラ100からの指令電流に応じて減圧して生成した信号圧を、各方向制御弁21〜24へ出力する。
【0027】
右操作レバー装置1cは、操作レバーの操作量と操作方向に応じた電圧信号を、ブーム操作信号としてメインコントローラ100へ出力する。同様に、左操作レバー装置1dは、操作レバーの操作量と操作方向に応じた電圧信号を、アーム操作信号としてメインコントローラ100へ出力する。すなわち、右操作レバー装置1cはブーム操作装置を構成し、左操作レバー装置1dはアーム操作装置を構成している。
【0028】
メインコントローラ100は、モード設定スイッチ32からの半自動制御有効フラグと、情報コントローラ200からの目標面情報と、ブーム角度検出器13aからのブーム角度信号と、アーム角度検出器13bからのアーム角度信号と、ブーム負荷圧検出装置としてのブームボトム圧センサ5bからのブームボトム圧と、アーム負荷圧検出装置としてのアームボトム圧センサ6bからのアームボトム圧とを入力し、これら入力信号に応じて、各電磁比例弁21a〜23bを制御する指令信号をそれぞれへ出力する。なお、アームボトム圧センサ6bは請求項に記載の掘削負荷検出手段である。また、情報コントローラ200で行う演算は、本発明と直接的に関係しないため、その説明は省略する。
【0029】
なお、モード設定スイッチ32は運転室内に配置されており、油圧ショベル300の作業において、半自動制御を有効にするかを選択可能とするものであって、真:半自動制御有効、偽:半自動制御無効を選択する。
【0030】
図3は、メインコントローラ100の概略構成図である。
【0031】
図3において、メインコントローラ100は、目標パイロット圧演算部110と、作業装置位置取得部120と、目標面距離取得部130と、メインスプール制御部140と、アームクラウド調速制御部150とを備えている。
【0032】
目標パイロット圧演算部110は、右操作レバー装置1cからのブーム操作量信号と、左操作レバー装置1dからのアーム操作量信号とを入力し、それらの入力信号に応じてブーム上げ目標パイロット圧と、ブーム下げ目標パイロット圧と、アームクラウド目標パイロット圧と、アームダンプ目標パイロット圧を演算し、メインスプール制御部140へ出力する。なお、ブーム操作量がブーム上げ方向に大きいほど、ブーム上げ目標パイロット圧を大きくし、ブーム操作量がブーム下げ方向に大きいほど、ブーム下げ目標パイロット圧を大きくする。同様に、アーム操作量がアームクラウド方向に大きいほど、アームクラウド目標パイロット圧を大きくし、アーム操作量がアームダンプ方向に大きいほど、アームダンプ目標パイロット圧を大きくする。
【0033】
作業装置位置取得部120は、ブーム角度検出器13aからのブーム角度信号と、アーム角度検出器13bからのアーム角度信号とを入力し、ブーム角度およびアーム角度と、予め設定されたブーム11およびアーム12の幾何的情報とを用いてバケット8の先端位置を演算し、作業装置位置として目標面距離取得部130へ出力する。ここで、作業装置位置は、例えば油圧作業機械に固定された座標系の1点として演算される。ただし、作業装置位置はこれに限らず、作業装置15の形状を考慮した複数の点群として演算してもよい。
【0034】
目標面距離取得部130は、情報コントローラ200からの目標面情報と、作業装置位置取得部120からの作業装置位置とを入力し、作業装置15と施工目標面との距離(以下、目標面距離という)を演算し、メインスプール制御部140およびアームクラウド調速制御部150へ出力する。ここで、目標面情報は、例えば油圧作業機械に固定された2次元平面座標系の2点として与えられる。ただし、目標面情報はこれに限らず、グローバル3次元座標系に平面を構成する3点として与えられてもよいが、この場合は作業装置位置と同じ座標系へ座標変換を行う必要がある。また、作業装置位置が点群として演算された場合は、目標面情報に最も近い点を用いて目標面距離を演算してもよい。
【0035】
メインスプール制御部140は、モード設定スイッチ32からの半自動制御有効フラグと、目標パイロット圧演算部110からのブーム上げ目標パイロット圧、ブーム下げ目標パイロット圧、アームクラウド目標パイロット圧およびアームダンプ目標パイロット圧と、アームボトム圧センサ6bからのアームボトム圧と、ブームボトム圧センサ5bからのブームボトム圧と、目標面距離取得部130からの目標面距離とを入力する。そして、半自動制御有効フラグが真である場合は、ブームボトム圧に対するアームボトム圧の偏差と目標面距離とに応じて各目標パイロット圧を補正し、補正後の各目標パイロット圧に応じたブーム上げ電磁弁駆動信号、ブーム下げ電磁弁駆動信号、アームクラウド電磁弁駆動信号およびアームダンプ電磁弁駆動信号を電磁比例弁21a,21b,23a,23bへ出力する。メインスプール制御部140で行う演算の詳細は後述する。
【0036】
アームクラウド調速制御部150は、モード設定スイッチ32からの自動制御有効フラグと、メインスプール制御部140からのアームクラウド制御パイロット圧と、目標面距離取得部130からの目標面距離と、ブームボトム圧センサ5bのブームボトム圧と、アームボトム圧センサ6bからのアームボトム圧と、メインスプール制御部140からのアームクラウド目標パイロット圧とを入力し、ブームボトム圧とアームボトム圧とに応じてアームクラウド目標パイロット圧を補正し、補正後のアームクラウド目標パイロット圧に応じたアームクラウド調速電磁弁駆動信号を電磁比例弁22aへ出力する。アームクラウド調速制御部150で行う演算の詳細は後述する。
【0037】
図4は、メインスプール制御部140の演算ブロック図である。
【0038】
図4において、メインスプール制御部140は、電磁弁駆動信号生成器141a,141b,141c,141dと、選択器142a,142cと、ブーム上げ補正パイロット圧演算器143と、最大値選択器144と、アームクラウド補正パイロット圧ゲイン演算器145と、乗算器146と、アームクラウド分流補正パイロット圧ゲイン演算器147と、減算器148とを備えている。
【0039】
電磁弁駆動信号生成器141aは、予め設定したテーブルを参照し、ブーム上げ目標パイロット圧に応じた電磁弁駆動信号を生成し、電磁比例弁21aへ出力する。同様に、電磁弁駆動信号生成器141b,141c,141dは、それぞれブーム下げ目標パイロット圧、アームクラウド目標パイロット圧、アームダンプ目標パイロット圧に応じた電磁弁駆動信号を生成し、電磁比例弁21b,23a,23bへ出力する。
【0040】
選択器142aは、半自動制御有効フラグが偽である場合は、目標パイロット圧演算部110からのブーム上げ目標パイロット圧を選択し、電磁弁駆動信号生成器141aへ出力する。一方、半自動制御有効フラグが真である場合は、最大値選択器144からの補正後ブーム上げ目標パイロット圧を選択し、電磁弁駆動信号生成器141aへ出力する。
【0041】
同様に、選択器142cは、半自動制御有効フラグが偽である場合は、目標パイロット圧演算部110からのアームクラウド目標パイロット圧を選択し、電磁弁駆動信号生成器141cおよびアームクラウド調速制御部150へ出力する。一方、半自動制御有効フラグが真である場合は、乗算器146からの補正後アームクラウド目標パイロット圧を選択し、電磁弁駆動信号生成器141cへ出力すると共に、アームクラウド調速パイロット圧としてアームクラウド調速制御部150へ出力する。
【0042】
ブーム上げ補正パイロット圧演算器143は、予め設定したテーブルを参照し、目標面距離に応じたブーム上げ補正パイロット圧を演算し、最大値選択器144へ出力する。最大値選択器144は、ブーム上げ目標パイロット圧とブーム上げ補正パイロット圧との最大値を選択し、選択器142aへ出力する。ブーム上げ補正パイロット圧演算器143が参照するテーブルは、目標面距離が負の方向に大きくなるほど、すなわち作業装置15が目標面に深く侵入するほど、ブーム上げ補正パイロット圧が大きくなるように設定されている。これにより、目標面距離に応じてブーム上げ動作が行われ、作業装置15の目標面への侵入を制限することができる。
【0043】
アームクラウド補正パイロット圧ゲイン演算器145は、予め設定したテーブルを参照し、目標面距離に応じたアームクラウド補正パイロット圧ゲインを演算し、乗算器146へ出力する。減算器148は、アームボトム圧とブームボトム圧との差を演算し、乗算器146へ出力する。アームクラウド分流補正パイロット圧ゲイン演算器147は、予め設定したテーブルを参照し、ブームボトム圧に対するアームボトム圧の偏差に応じたアームクラウド分流補正パイロット圧ゲインを演算し、乗算器146へ出力する。乗算器146は、アームクラウド目標パイロット圧とアームクラウド補正パイロット圧ゲインとアームクラウド分流補正パイロット圧ゲインとを乗算してアームクラウド目標パイロット圧を補正し、選択器142cへ出力する。
【0044】
アームクラウド補正パイロット圧ゲイン演算器145が参照するテーブルは、目標面距離が負の方向に大きくなるほど、すなわち作業装置15が目標面に深く侵入するほど、アームクラウド補正パイロット圧ゲインが小さくなるように設定されている。これにより、目標面距離の減少に応じてアームクラウド速度が小さくなり、作業装置15の目標面への侵入を制限することができる。
【0045】
アームクラウド分流補正パイロット圧ゲイン演算器147が参照するテーブルは、ブームボトム圧に対するアームボトム圧の偏差が増大するほど、すなわち掘削負荷が大きくなるほど、アームクラウド分流補正パイロット圧ゲインが大きくなるように設定されている。これにより、掘削負荷が大きい場合に、アームシリンダ6のメータイン開口が拡大するため、アームシリンダ6への分流比率が低下するのを防ぎ、アームシリンダ6とブームシリンダ5の速度バランスを保つことができる。
【0046】
図5は、アームクラウド調速制御部150の制御ブロック図である。
【0047】
図5において、アームクラウド調速制御部150は、電磁弁駆動信号生成器151と、選択器152と、パイロット圧上限値演算器154と、パイロット圧下限値演算器156と、最大値選択器157と、最小値選択器158とを備えている。
【0048】
電磁弁駆動信号生成器151は、予め設定したテーブルを参照し、アームクラウド制御パイロット圧に応じたアームクラウド調速電磁弁駆動信号を生成し、電磁比例弁22aへ出力する。
【0049】
選択器152は、半自動制御有効フラグが偽である場合は、アームクラウド調速パイロット圧を選択し、電磁弁駆動信号生成器151へ出力する。一方、半自動制御有効フラグが真である場合は、後述する最小値選択器158からの補正後アームクラウド調速パイロット圧を選択し、電磁弁駆動信号生成器151へ出力する。
【0050】
パイロット圧上限値演算器154は、予め設定したテーブルを参照し、アーム
ボトム圧に応じたパイロット圧上限値を演算し、最大値選択器157へ出力する。パイロット圧下限値演算器156は、予め設定したテーブルを参照し、目標面距離に応じたパイロット圧下限値を演算し、最大値選択器157へ出力する。最大値選択器157は、パイロット圧上限値と後述するパイロット圧下限値演算器156からのパイロット圧下限値との最大値を選択することでパイロット圧上限値を補正し、最小値選択器158へ出力する。最小値選択器158は、アームクラウド制御パイロット圧とパイロット圧上限値との最小値を選択することでアームクラウド調速パイロット圧を補正し、選択器152へ出力する。
【0051】
パイロット圧上限値演算器154が参照するテーブルは、アームボトム圧が大きいほど、パイロット圧上限値が小さくなるように設定されている。すなわち、アームボトム圧が大きくなったこと、すなわち掘削負荷が大きくなったことを検出し、電磁比例弁22aが生成するアームクラウド調速パイロット圧を制限して、アームクラウド調速方向制御弁22のメータアウト開口を制限する。これにより、アームシリンダ6からの戻り流量が制限されるため、掘削負荷が急激に低下した場合のアーム12の急加速が防止される。なお、アームクラウド調速制御部150によるアームクラウド調速方向制御弁22の制御とは独立して、メインスプール制御部140によるアーム方向制御弁23の制御が実行されるため、アームクラウド調速パイロット圧を制限した場合であっても、アームシリンダ6とブームシリンダ5の速度バランスを保つことができる。
【0052】
パイロット圧下限値演算器156が参照するテーブルは、目標面距離が大きいほど、パイロット圧下限値が大きくなるように設定されている。これにより、バケット8先端が目標面から離れるに従って、アームクラウド調速方向制御弁22のメータアウト開口の縮小幅が小さくなるため、アームクラウド調速方向制御弁22のメータアウト絞りによる圧力損失を低減することができる。
【0053】
図6Aは、アーム方向制御弁23のアームクラウド側の開口特性を示す図であり、図6Bは、アームクラウド調速方向制御弁22のアームクラウド側の開口特性を示す図である。
【0054】
図6Aにおいて、アーム方向制御弁23は、アームクラウドパイロット圧の増加に対して、メータイン開口面積がメータアウトの開口面積よりも先に増加し始めるように構成されている。すなわち、メータイン開口が開き始めるときのパイロット圧は、メータアウト開口が開き始めるときのパイロット圧よりも小さく設定されている。一方、アームクラウド調速方向制御弁22は、アームクラウド調速パイロット圧に対して、メータアウトの開口面積がメータインの開口面積よりも先に増加し始めるように構成されている。すなわち、メータアウト開口が開き始めるときのパイロット圧は、メータイン開口が開き始めるときのパイロット圧よりも小さく設定されている。また、アーム方向制御弁23のメータアウト開口面積とアームクラウド調速方向制御弁22のメータアウト開口面積とを比較した場合、アームクラウド調速方向制御弁22のメータアウトの開口面積の方が先に増加し始めるように構成されている。すなわち、アームクラウド調速方向制御弁22のメータイン開口が開き始めるときのパイロット圧は、アーム方向制御弁23のメータアウト開口が開き始めるときのパイロット圧よりも小さく設定されている。このように設定することで、パイロット圧が低い領域、すなわちアーム速度が低い領域では、アームクラウド調速方向制御弁22と並列に接続されているアーム方向制御弁23のメータアウト開口面積がゼロとなるため、アーム方向制御弁23によるメータアウト制御を不能としつつ、アームシリンダ6からの戻り流量をアームクラウド調速方向制御弁22のみによって調節することができる。これにより、掘削負荷の増大に応じてアームクラウド調速パイロット圧を減少補正することにより、掘削負荷が急激に低下したときに、アームシリンダ6の背圧が上昇し、アームシリンダ6に供給される圧油の流量が抑制され、アーム12の急加速が防止される。
【0055】
以上のように構成した本実施例において得られる効果を従来技術と比較して説明する。
【0056】
図7Aは、従来技術に係る油圧ショベルによる掘削動作を示す図であり、図7Bは、本実施例に係る油圧ショベル300による掘削動作を示す図である。
【0057】
図7Aにおいて、バケット8先端を目標軌跡に沿って移動している最中に目標軌跡よりも大きく突出した隆起部Pに突き当たると、ブームボトム圧に対するアームボトム圧の偏差(掘削負荷)の増大に応じて、アーム方向制御弁23のメータイン開口が拡大するようにアーム方向制御弁23の操作量が増加補正される。これにより、掘削負荷が増大した状態でもアームシリンダ6とブームシリンダ5の速度バランスが保たれ、バケット8先端を目標軌跡に沿って移動させることができる。しかし、バケット8先端が隆起部Pを通過した直後に掘削負荷が急激に低下し、アーム方向制御弁23のメータイン開口を介してアームシリンダ6のボトム側に多量の圧油が供給され、アーム12(図1に示す)がクラウド方向に急加速するおそれがある。その結果、バケット8先端が目標軌跡から大きく外れ、バケット8先端の進行方向と目標軌跡とが交差していた場合は、目標軌跡よりも深く掘削することになる。
【0058】
一方、本実施例に係る油圧ショベル300によれば、ブームボトム圧に対するアームボトム圧の偏差(掘削負荷)の増大に応じてアーム方向制御弁23の操作量が増加補正されたときに、アームクラウド調速方向制御弁33のメータアウト開口が絞られる。これにより、掘削負荷が増大した状態でのアームシリンダ6とブームシリンダ5の速度バランスが保たれると共に、掘削負荷が急激に低下したときに、アームシリンダ6の背圧が上昇し、アームシリンダ6に供給される圧油の流量が抑制される。その結果、図7Bに示すように、バケット8先端が隆起部Pを通過した直後にアーム12の急加速が防止されるため、バケット8先端が目標軌跡から大きく外れることを防止することができる。
【0059】
以上のように構成した本実施例によれば、2ポンプ式の油圧ショベル300において、掘削負荷が急激に低下したときのアーム12の急加速を防止することにより、水平均し作業や法面整形作業等における仕上げ精度を向上させることができる。
【実施例2】
【0060】
図8は、本発明の第2の実施例に係る油圧ショベルに搭載された油圧駆動装置の概略構成図である。以下、第1の実施例との相違点を中心に説明する。
【0061】
図8において、本実施例に係る油圧駆動装置400Aは、ブームボトム圧センサ5b(図2に示す)に代えて、第1ブーム方向制御弁21が配置されている第1ポンプラインL1に取り付けられた第1ポンプ吐出圧センサ2cを備え、アームボトム圧センサ6b(図2に示す)に代えて、アーム方向制御弁23が配置されている第2ポンプラインL2に取り付けられた第2ポンプ吐出圧センサ2dを備えている。
【0062】
ポンプ吐出圧センサ2c,2dの圧力信号は、メインコントローラ100に入力される。第1油圧ポンプ2aの吐出圧はブームボトム圧に連動して変化し、第2油圧ポンプ2bの吐出圧はアームボトム圧に連動して変化する。そのため、メインコントローラ100は、ブームボトム圧を第1油圧ポンプ2aの吐出圧で代用し、アームボトム圧を第2油圧ポンプ2bの吐出圧で代用することができる。すなわち、第1ポンプ吐出圧センサ2cはブーム負荷圧検出装置を構成し、第2ポンプ吐出圧センサ2dはアーム負荷圧検出装置を構成している。
【0063】
以上のように構成した本実施例においても、第1の実施例と同様の効果が得られる。
【0064】
また、本実施例におけるブーム負荷圧検出装置2cおよびアーム負荷圧検出装置2dは、油圧ポンプ2a,2bと同じく上部旋回体10の機械室に配置されるため、第1の実施例におけるブーム負荷圧検出装置5bおよびアーム負荷圧検出装置6b(図2に示す)よりも容易に取り付けることができる。
【0065】
また、本実施例におけるブーム負荷圧検出装置2cおよびアーム負荷圧検出装置2dの設置環境は、第1の実施例におけるブーム負荷圧検出装置5bおよびアーム負荷圧検出装置6b(図2に示す)ほど過酷ではないため、ブーム負荷圧検出装置2cおよびアーム負荷圧検出装置2dの使用寿命を第1の実施例よりも伸ばすことができる。
【実施例3】
【0066】
図9は、本発明の第3の実施例に係る油圧ショベルに搭載された油圧駆動装置の概略構成図である。以下、第1の実施例との相違点を中心に説明する。
【0067】
図9において、油圧駆動装置400Bは1ポンプ式の油圧駆動装置であり、第1の実施例における油圧駆動装置400から、第2油圧ポンプ2b、第2ブーム方向制御弁24、アームクラウド調速方向制御弁22および、それらに付随する第2ポンプラインL2、パラレル回路L2a、リリーフ弁27を取り除き、アーム方向制御弁23のメータアウト側と作動油16とを接続する油路にアーム調速弁装置としてのアームクラウド調速開閉弁25を設けた構成となっている。
【0068】
コントロールバルブ20Aにおいて、第1ポンプラインL1にはブーム方向制御弁21とアーム方向制御弁23が接続されており、第1油圧ポンプ2aが吐出する圧油は、ブームシリンダ5とアームシリンダ6に供給される。第1ブーム方向制御弁21とアーム方向制御弁23は、第1油圧ポンプ2aに対してパラレルに接続されており、分流可能に構成されている。
【0069】
図10Aは、アーム方向制御弁23Aのアームクラウド側の開口特性を示す図であり、図10Bは、アームクラウド調速開閉弁25の開口特性を示す図である。
【0070】
図10Aにおいて、アーム方向制御弁23は、アームクラウドパイロット圧の増加に対して、メータアウト開口面積がメータインの開口面積よりも先に増加し始めるように構成されている。すなわち、メータアウト開口が開き始めるときのパイロット圧は、メータイン開口が開き始めるときのパイロット圧よりも小さく設定されている。また、アーム方向制御弁23のメータアウト開口面積とアームクラウド調速開閉弁25の開口面積とを比較した場合、アームクラウド調速開閉弁25の開口面積の方が遅れて増加し始めるように構成されている。すなわち、アームクラウド調速開閉弁25が開き始めるときのパイロット圧は、アーム方向制御弁23のメータイン開口が開き始めるときのパイロット圧よりも大きく設定されている。このように設定することで、パイロット圧が低い領域、すなわちアーム速度が低い領域では、アーム方向制御弁23と直列に接続されているアームクラウド調速開閉弁25の開口面積がアーム方向制御弁23のメータアウト開口面積よりも小さくなるため、アーム方向制御弁23によるメータアウト制御を不能としつつ、アームシリンダ6からの戻り流量をアームクラウド調速開閉弁25のみによって調節することができる。これにより、掘削負荷の増大に応じてアームクラウド調速パイロット圧を減少補正することにより、掘削負荷が急激に低下したときに、アームシリンダ6の背圧が上昇し、アームシリンダ6に供給される圧油の流量が抑制され、アーム12の急加速が防止される。
【0071】
以上のように構成した本実施例によれば、1ポンプ式の油圧ショベルにおいて、掘削負荷が急激に低下したときのアーム12の急加速を防止することにより、水平均し作業や法面整形作業等における仕上げ精度を向上させることができる。
【0072】
また、バケット8先端が目標面から離れるに従って、アームクラウド調速開閉弁25の開口の縮小幅が小さくなるため、アームクラウド調速開閉弁25の絞りによる圧力損失を低減することができる。
【0073】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は、上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成の一部を加えることも可能であり、ある実施例の構成の一部を削除し、あるいは、他の実施例の一部と置き換えることも可能である。
【符号の説明】
【0074】
1a…走行用右操作レバー装置、1b…走行用左操作レバー装置、1c…右操作レバー装置(ブーム操作装置)、1d…左操作レバー装置(アーム操作装置)、2…油圧ポンプ装置、2a…第1油圧ポンプ、2b…第2油圧ポンプ、2c…第1ポンプ吐出圧センサ(ブーム負荷圧検出装置)、2d…第2ポンプ吐出圧センサ(アーム負荷圧検出装置)、3…走行油圧モータ、4…旋回油圧モータ、5…ブームシリンダ、5b…ブームボトム圧センサ(ブーム負荷圧検出装置)、6…アームシリンダ、6b…アームボトム圧センサ(アーム負荷圧検出装置)、7…バケットシリンダ、8…バケット、9…下部走行体、10…上部旋回体、11…ブーム、12…アーム、13a…ブーム角度検出器、13b…アーム角度検出器、13c…バケット角度検出器、14…エンジン、15…作業装置、16…作動油タンク、20…コントロールバルブ、21…第1ブーム方向制御弁、21a,21b…電磁比例弁、22…アームクラウド調速方向制御弁(第2アーム方向制御弁、アーム調速弁装置)、22a…電磁比例弁、23,23A…アーム方向制御弁(第1アーム方向制御弁)、23a,23b…電磁比例弁、24…第2ブーム方向制御弁、25…アームクラウド調速開閉弁(アーム調速弁装置)、26…リリーフ弁、27…リリーフ弁、29…パイロット油圧源、32…モード設定スイッチ、100…メインコントローラ(制御装置)、110…目標パイロット圧演算部、120…作業装置位置取得部、130…目標面距離取得部、140…メインスプール制御部、141a〜141d…電磁弁駆動信号生成器、142a,142c…選択器、143…ブーム上げ補正パイロット圧演算器、144…最大値選択器、145…アームクラウド補正パイロット圧ゲイン演算器、146…乗算器、147…アームクラウド分流補正パイロット圧ゲイン演算器、148…減算器、150…アームクラウド調速制御部、151…電磁弁駆動信号生成器、152…選択器、154…パイロット圧上限値演算器、156…パイロット圧下限値演算器、157…最大値選択器、158…最小値選択器、200…情報コントローラ、300…油圧ショベル、400,400A,400B…油圧駆動装置、L1…第1ポンプライン、L1a…パラレル回路、L2…第2ポンプライン、L2a…パラレル回路、P…隆起部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8
図9
図10A
図10B