【実施例1】
【0015】
図1は、本発明の第1の実施例に係る油圧ショベルの斜視図である。
【0016】
図1において、油圧ショベル300は下部走行体9と上部旋回体10と作業装置15とを備えている。下部走行体9は左右のクローラ式走行装置を有し、左右の走行油圧モータ3(左側のみ図示)により駆動される。上部旋回体10は下部走行体9上に旋回可能に搭載され、旋回油圧モータ4により旋回駆動される。上部旋回体10に設けられた機械室には、原動機としてのエンジン14と、エンジン14により駆動される油圧ポンプ装置2と、後述するコントロールバルブ20とが配置されている。
【0017】
作業装置15は上部旋回体10の前部に上下方向に回動可能に取り付けられている。上部旋回体10には運転室が設けられ、運転室内には走行用右操作レバー装置1a、走行用左操作レバー装置1b、作業装置15の動作および旋回動作を指示するための右操作レバー装置1cおよび左操作レバー装置1d、後述するモード設定スイッチ32(
図2に示す)等の操作装置が配置されている。
【0018】
作業装置15はブーム11、アーム12、バケット8を有する多関節構造であり、ブーム11はブームシリンダ5の伸縮により上部旋回体10に対して上下方向に回動し、アーム12はアームシリンダ6の伸縮によりブーム11に対して上下および前後方向に回動し、バケット8はバケットシリンダ7の伸縮によりアーム12に対して上下および前後方向に回動する。
【0019】
また、作業装置15の位置を算出するために、上部旋回体10とブーム11との連結部近傍には、ブーム11の角度を検出するブーム角度検出器13aが設けられ、ブーム11とアーム12との連結部近傍には、アーム12の角度を検出するアーム角度検出器13bが設けられ、アーム12とバケット8との近傍には、バケット8の角度を検出するバケット角度検出器13cが設けられている。これらの角度検出器13a,13b,13cから出力された角度信号は、後述するメインコントローラ100に入力される。
【0020】
コントロールバルブ20は、油圧ポンプ装置2から上述したブームシリンダ5、アームシリンダ6、バケットシリンダ7、左右の走行油圧モータ3等の油圧アクチュエータのそれぞれに供給される圧油の流れ(流量と方向)を制御するものである。
【0021】
図2は、油圧ショベル300に搭載された油圧駆動装置の概略構成図である。なお、説明の簡略化のため、
図2では、ブームシリンダ5とアームシリンダ6の駆動に関わる部分のみを図示し、その他の油圧アクチュエータの駆動に関わる部分の説明は省略する。また、本実施例と直接的に関係しないドレン回路、従来の油圧駆動装置と構成および動作が同様のロードチェック弁等の説明も省略する。
【0022】
図2において、油圧駆動装置400は、油圧アクチュエータ5,6と、油圧ポンプ装置2と、コントロールバルブ20と、制御装置としてのメインコントローラ100とを備えている。油圧ポンプ装置2は、第1油圧ポンプ2aと第2油圧ポンプ2bとを有する。第1油圧ポンプ2aと第2油圧ポンプ2bは、エンジン14によって駆動され、それぞれ第1ポンプラインL1と第2ポンプラインL2に圧油を供給する。本実施例では、第1油圧ポンプ2aと第2油圧ポンプ2bを固定容量型の油圧ポンプで構成しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、可変容量型の油圧ポンプで構成しても良い。
【0023】
コントロールバルブ20は、第1ポンプラインL1と第2ポンプラインL2からなる2系統のポンプラインから構成されている。第1ポンプラインL1には、第1ブーム方向制御弁21と、アーム調速弁装置としてのアームクラウド調速方向制御弁22とが設けられており、第1油圧ポンプ2aが吐出する圧油は、第1ブーム方向制御弁21を介してブームシリンダ5に供給され、アームクラウド調速方向制御弁22を介してアームシリンダ6に供給される。同様に、第2ポンプラインL2には、アーム方向制御弁23と、第2ブーム方向制御弁24が設けられており、第2油圧ポンプ2bが吐出する圧油は、アーム方向制御弁23を介してアームシリンダ6に供給され、第2ブーム方向制御弁24を介してブームシリンダ5に供給される。なお、第1ブーム方向制御弁21とアームクラウド調速方向制御弁22はパラレル回路L1aによって分流可能に構成され、アーム方向制御弁23と第2ブーム方向制御弁24はパラレル回路L2aによって、分流可能に構成されている。
【0024】
また、第1ポンプラインL1と第2ポンプラインL2には、リリーフ弁26,27がそれぞれ設けられている。リリーフ弁26(27)は、ポンプラインL1(L2)の圧力が予め設定されたリリーフ圧に達した場合に開口し、ポンプラインL1(L2)の圧油を作動油タンク16へ逃がす。
【0025】
第1ブーム方向制御弁21と第2ブーム方向制御弁24は、電磁比例弁21aによって生成される信号圧によってブーム上げ方向(図示右方向)に駆動され、電磁比例弁21bによって生成される信号圧によってブーム下げ方向(図示左方向)に駆動される。アーム方向制御弁23とアームクラウド調速方向制御弁22は、電磁比例弁23bによって生成される信号圧によってアームダンプ方向(図示左方向)に駆動される。アーム方向制御弁23は、電磁比例弁23aによって生成される信号圧によってアームクラウド方向(図示右方向)に駆動される。アームクラウド調速方向制御弁22は、電磁比例弁22aによって生成される信号圧によってアームクラウド方向(図示右方向)に駆動される。
【0026】
電磁比例弁21a,21b,22a,23a,23bは、パイロット油圧源29から供給されるパイロット圧油を一次圧として、メインコントローラ100からの指令電流に応じて減圧して生成した信号圧を、各方向制御弁21〜24へ出力する。
【0027】
右操作レバー装置1cは、操作レバーの操作量と操作方向に応じた電圧信号を、ブーム操作信号としてメインコントローラ100へ出力する。同様に、左操作レバー装置1dは、操作レバーの操作量と操作方向に応じた電圧信号を、アーム操作信号としてメインコントローラ100へ出力する。すなわち、右操作レバー装置1cはブーム操作装置を構成し、左操作レバー装置1dはアーム操作装置を構成している。
【0028】
メインコントローラ100は、モード設定スイッチ32からの半自動制御有効フラグと、情報コントローラ200からの目標面情報と、ブーム角度検出器13aからのブーム角度信号と、アーム角度検出器13bからのアーム角度信号と、ブーム負荷圧検出装置としてのブームボトム圧センサ5bからのブームボトム圧と、アーム負荷圧検出装置としてのアームボトム圧センサ6bからのアームボトム圧とを入力し、これら入力信号に応じて、各電磁比例弁21a〜23bを制御する指令信号をそれぞれへ出力する。なお、アームボトム圧センサ6bは請求項に記載の掘削負荷検出手段である。また、情報コントローラ200で行う演算は、本発明と直接的に関係しないため、その説明は省略する。
【0029】
なお、モード設定スイッチ32は運転室内に配置されており、油圧ショベル300の作業において、半自動制御を有効にするかを選択可能とするものであって、真:半自動制御有効、偽:半自動制御無効を選択する。
【0030】
図3は、メインコントローラ100の概略構成図である。
【0031】
図3において、メインコントローラ100は、目標パイロット圧演算部110と、作業装置位置取得部120と、目標面距離取得部130と、メインスプール制御部140と、アームクラウド調速制御部150とを備えている。
【0032】
目標パイロット圧演算部110は、右操作レバー装置1cからのブーム操作量信号と、左操作レバー装置1dからのアーム操作量信号とを入力し、それらの入力信号に応じてブーム上げ目標パイロット圧と、ブーム下げ目標パイロット圧と、アームクラウド目標パイロット圧と、アームダンプ目標パイロット圧を演算し、メインスプール制御部140へ出力する。なお、ブーム操作量がブーム上げ方向に大きいほど、ブーム上げ目標パイロット圧を大きくし、ブーム操作量がブーム下げ方向に大きいほど、ブーム下げ目標パイロット圧を大きくする。同様に、アーム操作量がアームクラウド方向に大きいほど、アームクラウド目標パイロット圧を大きくし、アーム操作量がアームダンプ方向に大きいほど、アームダンプ目標パイロット圧を大きくする。
【0033】
作業装置位置取得部120は、ブーム角度検出器13aからのブーム角度信号と、アーム角度検出器13bからのアーム角度信号とを入力し、ブーム角度およびアーム角度と、予め設定されたブーム11およびアーム12の幾何的情報とを用いてバケット8の先端位置を演算し、作業装置位置として目標面距離取得部130へ出力する。ここで、作業装置位置は、例えば油圧作業機械に固定された座標系の1点として演算される。ただし、作業装置位置はこれに限らず、作業装置15の形状を考慮した複数の点群として演算してもよい。
【0034】
目標面距離取得部130は、情報コントローラ200からの目標面情報と、作業装置位置取得部120からの作業装置位置とを入力し、作業装置15と施工目標面との距離(以下、目標面距離という)を演算し、メインスプール制御部140およびアームクラウド調速制御部150へ出力する。ここで、目標面情報は、例えば油圧作業機械に固定された2次元平面座標系の2点として与えられる。ただし、目標面情報はこれに限らず、グローバル3次元座標系に平面を構成する3点として与えられてもよいが、この場合は作業装置位置と同じ座標系へ座標変換を行う必要がある。また、作業装置位置が点群として演算された場合は、目標面情報に最も近い点を用いて目標面距離を演算してもよい。
【0035】
メインスプール制御部140は、モード設定スイッチ32からの半自動制御有効フラグと、目標パイロット圧演算部110からのブーム上げ目標パイロット圧、ブーム下げ目標パイロット圧、アームクラウド目標パイロット圧およびアームダンプ目標パイロット圧と、アームボトム圧センサ6bからのアームボトム圧と、ブームボトム圧センサ5bからのブームボトム圧と、目標面距離取得部130からの目標面距離とを入力する。そして、半自動制御有効フラグが真である場合は、ブームボトム圧に対するアームボトム圧の偏差と目標面距離とに応じて各目標パイロット圧を補正し、補正後の各目標パイロット圧に応じたブーム上げ電磁弁駆動信号、ブーム下げ電磁弁駆動信号、アームクラウド電磁弁駆動信号およびアームダンプ電磁弁駆動信号を電磁比例弁21a,21b,23a,23bへ出力する。メインスプール制御部140で行う演算の詳細は後述する。
【0036】
アームクラウド調速制御部150は、モード設定スイッチ32からの自動制御有効フラグと、メインスプール制御部140からのアームクラウド制御パイロット圧と、目標面距離取得部130からの目標面距離と、ブームボトム圧センサ5bのブームボトム圧と、アームボトム圧センサ6bからのアームボトム圧と、メインスプール制御部140からのアームクラウド目標パイロット圧とを入力し、ブームボトム圧とアームボトム圧とに応じてアームクラウド目標パイロット圧を補正し、補正後のアームクラウド目標パイロット圧に応じたアームクラウド調速電磁弁駆動信号を電磁比例弁22aへ出力する。アームクラウド調速制御部150で行う演算の詳細は後述する。
【0037】
図4は、メインスプール制御部140の演算ブロック図である。
【0038】
図4において、メインスプール制御部140は、電磁弁駆動信号生成器141a,141b,141c,141dと、選択器142a,142cと、ブーム上げ補正パイロット圧演算器143と、最大値選択器144と、アームクラウド補正パイロット圧ゲイン演算器145と、乗算器146と、アームクラウド分流補正パイロット圧ゲイン演算器147と、減算器148とを備えている。
【0039】
電磁弁駆動信号生成器141aは、予め設定したテーブルを参照し、ブーム上げ目標パイロット圧に応じた電磁弁駆動信号を生成し、電磁比例弁21aへ出力する。同様に、電磁弁駆動信号生成器141b,141c,141dは、それぞれブーム下げ目標パイロット圧、アームクラウド目標パイロット圧、アームダンプ目標パイロット圧に応じた電磁弁駆動信号を生成し、電磁比例弁21b,23a,23bへ出力する。
【0040】
選択器142aは、半自動制御有効フラグが偽である場合は、目標パイロット圧演算部110からのブーム上げ目標パイロット圧を選択し、電磁弁駆動信号生成器141aへ出力する。一方、半自動制御有効フラグが真である場合は、最大値選択器144からの補正後ブーム上げ目標パイロット圧を選択し、電磁弁駆動信号生成器141aへ出力する。
【0041】
同様に、選択器142cは、半自動制御有効フラグが偽である場合は、目標パイロット圧演算部110からのアームクラウド目標パイロット圧を選択し、電磁弁駆動信号生成器141cおよびアームクラウド調速制御部150へ出力する。一方、半自動制御有効フラグが真である場合は、乗算器146からの補正後アームクラウド目標パイロット圧を選択し、電磁弁駆動信号生成器141cへ出力すると共に、アームクラウド調速パイロット圧としてアームクラウド調速制御部150へ出力する。
【0042】
ブーム上げ補正パイロット圧演算器143は、予め設定したテーブルを参照し、目標面距離に応じたブーム上げ補正パイロット圧を演算し、最大値選択器144へ出力する。最大値選択器144は、ブーム上げ目標パイロット圧とブーム上げ補正パイロット圧との最大値を選択し、選択器142aへ出力する。ブーム上げ補正パイロット圧演算器143が参照するテーブルは、目標面距離が負の方向に大きくなるほど、すなわち作業装置15が目標面に深く侵入するほど、ブーム上げ補正パイロット圧が大きくなるように設定されている。これにより、目標面距離に応じてブーム上げ動作が行われ、作業装置15の目標面への侵入を制限することができる。
【0043】
アームクラウド補正パイロット圧ゲイン演算器145は、予め設定したテーブルを参照し、目標面距離に応じたアームクラウド補正パイロット圧ゲインを演算し、乗算器146へ出力する。減算器148は、アームボトム圧とブームボトム圧との差を演算し、乗算器146へ出力する。アームクラウド分流補正パイロット圧ゲイン演算器147は、予め設定したテーブルを参照し、ブームボトム圧に対するアームボトム圧の偏差に応じたアームクラウド分流補正パイロット圧ゲインを演算し、乗算器146へ出力する。乗算器146は、アームクラウド目標パイロット圧とアームクラウド補正パイロット圧ゲインとアームクラウド分流補正パイロット圧ゲインとを乗算してアームクラウド目標パイロット圧を補正し、選択器142cへ出力する。
【0044】
アームクラウド補正パイロット圧ゲイン演算器145が参照するテーブルは、目標面距離が負の方向に大きくなるほど、すなわち作業装置15が目標面に深く侵入するほど、アームクラウド補正パイロット圧ゲインが小さくなるように設定されている。これにより、目標面距離の減少に応じてアームクラウド速度が小さくなり、作業装置15の目標面への侵入を制限することができる。
【0045】
アームクラウド分流補正パイロット圧ゲイン演算器147が参照するテーブルは、ブームボトム圧に対するアームボトム圧の偏差が増大するほど、すなわち掘削負荷が大きくなるほど、アームクラウド分流補正パイロット圧ゲインが大きくなるように設定されている。これにより、掘削負荷が大きい場合に、アームシリンダ6のメータイン開口が拡大するため、アームシリンダ6への分流比率が低下するのを防ぎ、アームシリンダ6とブームシリンダ5の速度バランスを保つことができる。
【0046】
図5は、アームクラウド調速制御部150の制御ブロック図である。
【0047】
図5において、アームクラウド調速制御部150は、電磁弁駆動信号生成器151と、選択器152と、パイロット圧上限値演算器154と、パイロット圧下限値演算器156と、最大値選択器157と、最小値選択器158とを備えている。
【0048】
電磁弁駆動信号生成器151は、予め設定したテーブルを参照し、アームクラウド制御パイロット圧に応じたアームクラウド調速電磁弁駆動信号を生成し、電磁比例弁22aへ出力する。
【0049】
選択器152は、半自動制御有効フラグが偽である場合は、アームクラウド調速パイロット圧を選択し、電磁弁駆動信号生成器151へ出力する。一方、半自動制御有効フラグが真である場合は、後述する最小値選択器158からの補正後アームクラウド調速パイロット圧を選択し、電磁弁駆動信号生成器151へ出力する。
【0050】
パイロット圧上限値演算器154は、予め設定したテーブルを参照し、アーム
ボトム圧に応じたパイロット圧上限値を演算し、最大値選択器157へ出力する。パイロット圧下限値演算器156は、予め設定したテーブルを参照し、目標面距離に応じたパイロット圧下限値を演算し、最大値選択器157へ出力する。最大値選択器157は、パイロット圧上限値と後述するパイロット圧下限値演算器156からのパイロット圧下限値との最大値を選択することでパイロット圧上限値を補正し、最小値選択器158へ出力する。最小値選択器158は、アームクラウド制御パイロット圧とパイロット圧上限値との最小値を選択することでアームクラウド調速パイロット圧を補正し、選択器152へ出力する。
【0051】
パイロット圧上限値演算器154が参照するテーブルは、アームボトム圧が大きいほど、パイロット圧上限値が小さくなるように設定されている。すなわち、アームボトム圧が大きくなったこと、すなわち掘削負荷が大きくなったことを検出し、電磁比例弁22aが生成するアームクラウド調速パイロット圧を制限して、アームクラウド調速方向制御弁22のメータアウト開口を制限する。これにより、アームシリンダ6からの戻り流量が制限されるため、掘削負荷が急激に低下した場合のアーム12の急加速が防止される。なお、アームクラウド調速制御部150によるアームクラウド調速方向制御弁22の制御とは独立して、メインスプール制御部140によるアーム方向制御弁23の制御が実行されるため、アームクラウド調速パイロット圧を制限した場合であっても、アームシリンダ6とブームシリンダ5の速度バランスを保つことができる。
【0052】
パイロット圧下限値演算器156が参照するテーブルは、目標面距離が大きいほど、パイロット圧下限値が大きくなるように設定されている。これにより、バケット8先端が目標面から離れるに従って、アームクラウド調速方向制御弁22のメータアウト開口の縮小幅が小さくなるため、アームクラウド調速方向制御弁22のメータアウト絞りによる圧力損失を低減することができる。
【0053】
図6Aは、アーム方向制御弁23のアームクラウド側の開口特性を示す図であり、
図6Bは、アームクラウド調速方向制御弁22のアームクラウド側の開口特性を示す図である。
【0054】
図6Aにおいて、アーム方向制御弁23は、アームクラウドパイロット圧の増加に対して、メータイン開口面積がメータアウトの開口面積よりも先に増加し始めるように構成されている。すなわち、メータイン開口が開き始めるときのパイロット圧は、メータアウト開口が開き始めるときのパイロット圧よりも小さく設定されている。一方、アームクラウド調速方向制御弁22は、アームクラウド調速パイロット圧に対して、メータアウトの開口面積がメータインの開口面積よりも先に増加し始めるように構成されている。すなわち、メータアウト開口が開き始めるときのパイロット圧は、メータイン開口が開き始めるときのパイロット圧よりも小さく設定されている。また、アーム方向制御弁23のメータアウト開口面積とアームクラウド調速方向制御弁22のメータアウト開口面積とを比較した場合、アームクラウド調速方向制御弁22のメータアウトの開口面積の方が先に増加し始めるように構成されている。すなわち、アームクラウド調速方向制御弁22のメータイン開口が開き始めるときのパイロット圧は、アーム方向制御弁23のメータアウト開口が開き始めるときのパイロット圧よりも小さく設定されている。このように設定することで、パイロット圧が低い領域、すなわちアーム速度が低い領域では、アームクラウド調速方向制御弁22と並列に接続されているアーム方向制御弁23のメータアウト開口面積がゼロとなるため、アーム方向制御弁23によるメータアウト制御を不能としつつ、アームシリンダ6からの戻り流量をアームクラウド調速方向制御弁22のみによって調節することができる。これにより、掘削負荷の増大に応じてアームクラウド調速パイロット圧を減少補正することにより、掘削負荷が急激に低下したときに、アームシリンダ6の背圧が上昇し、アームシリンダ6に供給される圧油の流量が抑制され、アーム12の急加速が防止される。
【0055】
以上のように構成した本実施例において得られる効果を従来技術と比較して説明する。
【0056】
図7Aは、従来技術に係る油圧ショベルによる掘削動作を示す図であり、
図7Bは、本実施例に係る油圧ショベル300による掘削動作を示す図である。
【0057】
図7Aにおいて、バケット8先端を目標軌跡に沿って移動している最中に目標軌跡よりも大きく突出した隆起部Pに突き当たると、ブームボトム圧に対するアームボトム圧の偏差(掘削負荷)の増大に応じて、アーム方向制御弁23のメータイン開口が拡大するようにアーム方向制御弁23の操作量が増加補正される。これにより、掘削負荷が増大した状態でもアームシリンダ6とブームシリンダ5の速度バランスが保たれ、バケット8先端を目標軌跡に沿って移動させることができる。しかし、バケット8先端が隆起部Pを通過した直後に掘削負荷が急激に低下し、アーム方向制御弁23のメータイン開口を介してアームシリンダ6のボトム側に多量の圧油が供給され、アーム12(
図1に示す)がクラウド方向に急加速するおそれがある。その結果、バケット8先端が目標軌跡から大きく外れ、バケット8先端の進行方向と目標軌跡とが交差していた場合は、目標軌跡よりも深く掘削することになる。
【0058】
一方、本実施例に係る油圧ショベル300によれば、ブームボトム圧に対するアームボトム圧の偏差(掘削負荷)の増大に応じてアーム方向制御弁23の操作量が増加補正されたときに、アームクラウド調速方向制御弁33のメータアウト開口が絞られる。これにより、掘削負荷が増大した状態でのアームシリンダ6とブームシリンダ5の速度バランスが保たれると共に、掘削負荷が急激に低下したときに、アームシリンダ6の背圧が上昇し、アームシリンダ6に供給される圧油の流量が抑制される。その結果、
図7Bに示すように、バケット8先端が隆起部Pを通過した直後にアーム12の急加速が防止されるため、バケット8先端が目標軌跡から大きく外れることを防止することができる。
【0059】
以上のように構成した本実施例によれば、2ポンプ式の油圧ショベル300において、掘削負荷が急激に低下したときのアーム12の急加速を防止することにより、水平均し作業や法面整形作業等における仕上げ精度を向上させることができる。