(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。なお、本実施の形態では、建設機械の一例としてハイブリッド式油圧ショベルを例示して説明するが、これに限られず、オートストップ制御におけるエンジン停止中に蓄電器から電気・電子設備に電力の供給を行うものであればハイブリッド式以外の建設機械にも本願発明の適用が可能である。
【0011】
図1は本実施の形態に係る建設機械の一例であるハイブリッド式油圧ショベルの外観を模式的に示す側面図であり、
図2は電動駆動システム及び油圧駆動システムを関連構成とともに抜き出して模式的に示す図である。また、
図3は、メインコントローラの処理機能を概略的に示す機能ブロック図である。
【0012】
図1及び
図2において、ハイブリッド式油圧ショベル1(以下、単に油圧ショベルと称する)は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、下部走行体2上に設けられた旋回軸受装置3と、旋回軸受装置3を介して下部走行体2上に旋回可能に搭載され、下部走行体2と共に車体(基体)を構成する上部旋回体4と、上部旋回体4の前側に俯仰動可能に取付けられ、土砂の掘削作業等を行う作業装置5とを備えている。
【0013】
下部走行体2は、トラックフレーム2Aと、トラックフレーム2Aの左右両側の前後方向の一端側に設けられた駆動輪2Bと、トラックフレーム2Aの左右両側の前後方向の他端側に設けられた遊動輪2Cと、駆動輪2Bと遊動輪2Cに巻回された履帯2D(いずれも左側のみ図示)とにより構成されている。左右の駆動輪2Bは、油圧アクチュエータとしての左右の走行油圧モータ2E,2F(
図2参照)によって回転駆動される。トラックフレーム2Aの中央部の上側には、旋回軸受装置3が取付けられている。
【0014】
上部旋回体4は、支持構造体をなす旋回フレーム6を有している。旋回フレーム6の下面側には、旋回軸受装置3が取付けられており、旋回軸受装置3を介して下部走行体2に対して旋回可能に搭載されている。旋回フレーム6上には、キャブ7、カウンタウエイト8、エンジン9、アシスト発電モータ10、油圧ポンプ11、駆動用バッテリ19、旋回装置20Aなどが設けられている。
【0015】
作業装置5は、旋回フレーム6の前側に基端を俯仰動可能に取付けられたブーム5Aと、ブーム5Aの基端とは反対側の一端に俯仰動可能に取付けられたアーム5Bと、アーム5Bの他端に回動可能に取付けられたバケット5Cと、これらを駆動する油圧シリンダ(油圧アクチュエータ)からなるブームシリンダ5D、アームシリンダ5E、及びバケットシリンダ5Fとにより構成されている。
【0016】
キャブ7は、旋回フレーム6の左前側に設けられており、キャブ7内にはオペレータが着座する運転席(図示せず)が設けられている。運転席の周囲には、操作装置14のほか、後述するメインコントローラ(制御装置)28との間で信号の授受を行うキースイッチ29、表示装置30、再始動スイッチ60などが配設されている。
【0017】
カウンタウエイト8は、旋回フレーム6の後端側に取り付けられており、旋回フレーム6の前側に配置された作業装置5との重量バランスをとるように構成されている。
【0018】
エンジン9は、旋回フレーム6上のキャブ7とカウンタウエイト8との間に配置されている。エンジン9は、例えばディーゼルエンジンを用いて構成され、ハイブリッド式油圧ショベル1の内燃機関として、上部旋回体4に左右方向に延在する横置き状態で搭載されている。エンジン9の出力側には、アシスト発電モータ10および油圧ポンプ11のほか、オルタネータ41とスタータ43とが機械的に接続されている。
【0019】
エンジン9には、エンジン9の動作を制御するエンジンコントロールユニット9A(以下、ECU9Aと称する)が設けられている。キースイッチ29の位置(ON位置、或いは、OFF位置)を示す位置信号がメインコントローラ28に入力されており、メインコントローラ28は、この位置信号に基づいてECU9Aに制御信号を出力する。ECU9Aは、キースイッチ29が稼動位置(つまり、ON位置)にあってエンジン9が稼動中である場合、メインコントローラ28から出力される制御信号に基づいてエンジン9の燃料噴射装置(図示せず)に供給される燃料の供給量を制御することにより、シリンダ(図示せず)内に噴射される燃料の噴射量(燃料噴射量)を可変に制御する。これにより、エンジン9は、オペレータの運転操作や車両の作動状態等に応じた回転数で作動する。また、ECU9Aは、キースイッチ29の停止操作される(つまり、OFF位置に操作される)と、メインコントローラ28の指令により燃料噴射装置の燃料噴射を停止し、エンジン9を停止させる。
【0020】
アシスト発電モータ10は、エンジン9と油圧ポンプ11との間に機械的に接続されている。アシスト発電モータ10は、例えば、永久磁石式の同期電動機であり、エンジン9によって回転駆動されることにより発電を行い、また、電力が供給されることによりエンジン9の駆動を補助(アシスト)する。すなわち、アシスト発電モータ10は、エンジン9によって回転駆動されることにより発電を行う機能(発電機機能)と、供給される電力によりエンジン9の駆動を補助する機能(電動機機能)とを有している。
【0021】
オルタネータ41は、例えば、永久磁石式の発電機であり、エンジン9によって駆動されることにより発電を行い、後述する電気・電子設備70を駆動するための電力を蓄電および放電(給電)する蓄電器40に蓄電する。
【0022】
スタータ43は、キースイッチ29がON位置に操作された状態から、さらに、スタート位置に操作された場合に、エンジン9の出力軸を駆動して始動させる、例えば、永久磁石式の電動機である。スタータ43は、キースイッチ29からの制御信号に基づいて、蓄電器40から供給される電力により駆動される。キースイッチ29は、スタート位置についてはモーメンタリ動作を行うように構成されており、オペレータがスタート位置への操作を止めると自動的にON位置まで戻る。
【0023】
油圧ポンプ11は、アシスト発電モータ10とパイロットポンプ12との間に配置されており、アシスト発電モータ10を介してエンジン9に機械的に接続されている。油圧ポンプ11は、パイロットポンプ12および作動油タンク13と共に油圧源を構成している。油圧ポンプ11は、例えば、斜板式、斜軸式、又はラジアルピストン式のような各種の油圧ポンプであり、エンジン9およびアシスト発電モータ10により駆動されるものである。油圧ポンプ11は、走行油圧モータ2E,2Fやシリンダ5D〜5F、旋回油圧モータ21などを駆動するための動力源として、作動油タンク13内の作動油を昇圧し、コントロールバルブ16に吐出する。
【0024】
パイロットポンプ12は、油圧ポンプ11とともにアシスト発電モータ10を介してエンジン9に機械的に接続されている。パイロットポンプ12から吐出された圧油の油圧(パイロット圧)が操作装置14に供給され、操作装置14の操作によって操作信号が生成されて、コントロールバルブ16に供給される。
【0025】
操作装置14は、キャブ7内に配置された走行用の操作レバーやペダル、作業用の操作レバーなど(いずれも図示せず)により構成されている。また、操作装置14は流量制御弁15を有している。流量制御弁15は、パイロットポンプ12から吐出されるパイロット圧から操作装置14の操作量に応じて操作信号を生成し、コントロールバルブ16に供給する。
【0026】
コントロールバルブ16は、旋回フレーム6上に設けられており、油圧ポンプ11から油圧モータ2E,2F,21、シリンダ5D〜5Fに供給される圧油の流量および方向を制御する複数の方向切換弁を含んで構成されている。コントロールバルブ16の複数の方向切換弁は、それぞれ、操作装置14からの操作信号(パイロット圧)により駆動される。油圧ポンプ11からコントロールバルブ16に供給された圧油は、それぞれの油圧モータ2E,2F,21、シリンダ5D〜5Fに適宜分配され、油圧モータ2E,2F,21、シリンダ5D〜5Fを駆動(回転、伸長、縮小)する。
【0027】
ゲートロックレバー17は、油圧ショベル1の動作の可否を設定するロック装置を構成しており、キャブ7内に配置されている。ゲートロックレバー17は、パイロットカット弁18を有している。パイロットカット弁18は、パイロットポンプ12から流量制御弁15に供給されるパイロット圧の通流と遮断とを切り換えることにより、操作装置14から油圧モータ2E,2F,21、シリンダ5D〜5Fにそれぞれ対応するコントロールバルブ16の方向切換弁に送られる操作信号の無効と無効とを切り換えるものである。例えば、ゲートロックレバー17がロック位置(上げ位置)に移動されると、パイロットカット弁18へのゲートロック信号によりパイロットポンプ12から流量制御弁15に供給される圧油が遮断され、操作装置14による油圧モータ2E,2F,21、シリンダ5D〜5Fの操作が不能となる。ゲートロックレバー17がロック解除位置(下げ位置)に移動されると、パイロットカット弁18へのゲートロック信号によりパイロットポンプ12からの流量制御弁15に供給される圧油を通流され、操作装置14による油圧モータ2E,2F,21、シリンダ5D〜5Fの操作が可能になる。また、ゲートロックレバー17がロック解除位置に移動された場合は、スタータカットリレー(図示せず)が作動し、スタータ43とともにスタータとして機能するアシスト発電モータ10への電力供給が遮断され、エンジン9が始動されないように構成されている。ゲートロックレバー17の位置を示すゲートロック信号は、後述するメインコントローラ28にも入力されている。なお、ロック装置は、ゲートロックレバー17のように上下方向に回動するレバー式に限られず、例えば各種のスイッチやペダルなどによって構成してもよい。
【0028】
旋回装置20Aは、上部旋回体4の旋回フレーム6上に設けられ、減速機20、旋回油圧モータ21、旋回電動モータ22などによって構成されている。旋回装置20Aは、旋回油圧モータ21と旋回電動モータ22とが協働して上部旋回体4を旋回駆動する、いわゆるハイブリッド型の旋回装置であり、旋回油圧モータ21と旋回電動モータ22の回転力を減速機20を介して旋回軸受装置3に伝達することにより、上部旋回体4を下部走行体2に対して旋回させる。
【0029】
旋回電動モータ22は、旋回油圧モータ21とともに減速機20の上部側に取付けられている。旋回電動モータ22は、例えば、永久磁石型同期電動機であり、電力が供給されることにより旋回油圧モータ21による上部旋回体4の旋回駆動を補助(アシスト)する。また、旋回電動モータ22は、上部旋回体4の旋回動作を減速するときに発生するエネルギを電気エネルギに変換(発電)する。すなわち、旋回電動モータ22は、電力が供給されることにより旋回油圧モータ21を補助(アシスト)して上部旋回体4を旋回させる電動機としての機能(旋回アシスト機能)と、上部旋回体4の旋回減速時の運動エネルギ(回転エネルギ)を電気エネルギに変換(回生発電)する発電機としての機能(旋回回生機能)とを有している。
【0030】
以上のように構成した油圧ショベル1の電動システムは、アシスト発電モータ10、駆動用バッテリ19、旋回電動モータ22に加えて、第1のインバータ24、モータジェネレータコントロールユニット24A(以下、MGCU24Aと称する)、第2のインバータ25、旋回電動モータコントロールユニット25A(以下、RMCU25Aと称する)、チョッパ26、チョッパコントロールユニット26A(以下、CCU26Aと称する)、駆動用バッテリ19、及び、バッテリコントロールユニット19A(以下、BCU19Aと称する)などによって構成されている。ここで、第1のインバータ24、MGCU24A、第2のインバータ25、RMCU25A、チョッパ26、CCU26A、駆動用バッテリ19、及びBCU19Aは、電力変換装置(PCU:パワーコントロールユニット)23を構成している。電力変換装置23は上部旋回体4に搭載されている。
【0031】
電力変換装置23は、アシスト発電モータ10及び旋回電動モータ22に供給される電力、及び、アシスト発電モータ10及び旋回電動モータ22により発電される電力を制御するものである。アシスト発電モータ10及び旋回電動モータ22は、電力変換装置23から供給される電力により電動機として機能し、また、発電機として機能して電力変換装置23に電力を供給する。
【0032】
また、電力変換装置23は、メインコントローラ28、エンジン9、ECU9A、電気設備用電源制御装置42、及び、電気的負荷44とともに、電気・電子設備70を構成している。電気・電子設備70において、メインコントローラ28、ECU9A、BCU29A、MGCU24A、RMCU25A、CCU26A、及び、電気的負荷44は、電気設備用電源制御装置42を介して蓄電器40から供給される電力により動作する。電気設備用電源制御装置42は、メインコントローラ28からの制御指令に基づいて、蓄電器40から電気・電子設備70の各構成に供給される電力の供給・停止(遮断)を制御する。なお、電気的負荷44は、蓄電器40から供給される電力により動作する(すなわち、電力を消費する)その他の構成をまとめて示したものであり、例えば、エアコンのコンプレッサや室内灯などが考えられる。
【0033】
第1のインバータ24は、アシスト発電モータ10に電気的に接続され、アシスト発電モータ10の駆動を制御するものである。具体的には、第1のインバータ24は、例えば、トランジスタや絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)などからなる複数(例えば6個)のスイッチング素子を用いて構成されており、一対の直流母線27A,27Bに接続されている。第1のインバータ24のスイッチング素子の開閉動作は、MGCU24Aから出力される三相(U相、V相、W相)PWM信号によって制御される。アシスト発電モータ10の発電時には、第1のインバータ24はアシスト発電モータ10による発電電力を直流電力に変換して直流母線27A,27Bに供給する。一方、アシスト発電モータ10のモータ駆動時には、第1のインバータ24は直流母線27A,27Bの直流電力から三相の交流電力を生成してアシスト発電モータ10に供給する。
【0034】
第2のインバータ25は、旋回電動モータ22に電気的に接続され、旋回電動モータ22の駆動を制御するものである。具体的には、第2のインバータ25は、第1のインバータ24と同様に、複数(例えば6個)のスイッチング素子を用いて構成されており、一対の直流母線27A,27Bに接続されている。第2のインバータ25のスイッチング素子の開閉動作は、RMCU25Aから出力される三相PWM信号によって制御される。旋回電動モータ22の旋回駆動時には、第2のインバータ25は直流母線27A,27Bの直流電力から三相の交流電力を生成して旋回電動モータ22に供給する。一方、旋回電動モータ22の旋回減速時(回生時)には、第2のインバータ25は旋回電動モータ22による回生電力を直流電力に変換して直流母線27A,27Bに供給する。
【0035】
チョッパ26は、駆動用バッテリ19と直流母線27A,27Bとを接続して配置されている。すなわち、チョッパ26と第1および第2のインバータ24,25は、一対の直流母線27A,27Bを介して互いに電気的に接続されている。チョッパ26は、例えば、IGBT等からなる複数(例えば2個)のスイッチング素子とリアクトルとを備えて構成されている。チョッパ26は、CCU26Aによってスイッチング素子の開閉動作が制御される。チョッパ26は、駆動用バッテリ19の充電時には降圧回路(降圧チョッパ)として機能し、直流母線27A,27Bから供給される直流電圧を降圧して駆動用バッテリ19に供給する。一方、チョッパ26は、駆動用バッテリ19の放電時には昇圧回路(昇圧チョッパ)として機能し、駆動用バッテリ19から供給される直流電圧を昇圧して直流母線27A,27Bに供給する。
【0036】
第1及び第2のインバータ24,25とチョッパ26とは、正極側(プラス側)と負極側(マイナス側)で一対の直流母線27A,27Bを通じて相互に接続されている。直流母線27A,27Bには、直流母線27A,27Bの電圧を安定させるための平滑用のコンデンサ(図示せず)が接続されている。直流母線27A,27Bには、例えば、数百V程度の所定の直流電圧が印加される。
【0037】
アシスト発電モータ10が発電機として機能している場合の発電電力は、第1のインバータ24を介して、第2のインバータ25およびチョッパ26に供給され、旋回電動モータ22の駆動や駆動用バッテリ19の充電(蓄電)に用いられる。また、アシスト発電モータ10がエンジン9の駆動を補助する電動機として機能している場合には、駆動用バッテリ19に充電された電力、又は、旋回電動モータ22の回生電力によってアシスト発電モータ10が駆動される。
【0038】
旋回電動モータ22が発電機として機能している場合の発電電力(回生電力)は、第2のインバータ25および直流母線27A,27Bを介して、第1のインバータ24及びチョッパ26に供給され、アシスト発電モータ10の駆動や駆動用バッテリ19の充電(蓄電)に用いられる。また、旋回電動モータ22が旋回油圧モータ21の駆動を補助する電動機として機能している場合には、アシスト発電モータ10で発電される発電電力、又は、駆動用バッテリ19から供給される電力によって旋回電動モータ22が駆動される。
【0039】
駆動用バッテリ19は、旋回フレーム6上に配置されており、チョッパ26及び第1のインバータ24を介してアシスト発電モータ10に電気的に接続されるとともに、チョッパ26及び第2のインバータ25を介して旋回電動モータ22に電気的に接続されている。駆動用バッテリ19は電力を蓄えるものであり、例えば、リチウムイオンバッテリやニッケル水素バッテリなどの二次電池、或いは、電気二重層のキャパシタを用いて構成されている。駆動用バッテリ19は、アシスト発電モータ10による発電電力、及び、旋回電動モータ22による旋回減速時の発電電力(回生電力)によって充電(蓄電)され、また、充電された電力をアシスト発電モータ10、及び、旋回電動モータ22に放電(給電)する。
【0040】
駆動用バッテリ19は、メインコントローラ28からの指令に基づいて駆動用バッテリ19の充電動作や放電動作を制御するBCU19Aを有している。BCU19Aは、電力残量検出手段を構成しており、駆動用バッテリ19の電力残量としての蓄電率(SOC)を検出してメインコントローラ28に出力する。
【0041】
メインコントローラ28は、例えば、キャブ7内に配置されており、ECU9A、BCU19A、MGCU24A、RMCU25A、CCU26Aに接続されて、それらからの情報を取得するとともに動作を制御することにより、エンジン9、駆動用バッテリ19、チョッパ26、第1のインバータ24、第2のインバータ25の動作を制御する。メインコントローラ28は、例えば、ECU9Aからはエンジン回転数、BCU19Aからは駆動用バッテリ19の蓄電率(SOC)などの情報を取得している。メインコントローラ28は、例えば、マイクロコンピュータ等により構成されている。
【0042】
図3に示すように、メインコントローラ28は、電動制御処理部281と、エンジン制御処理部282と、電気設備用電源制御処理部(電源制御処理部)283とを備えている。
【0043】
電動制御処理部281は、BCU19AやMGCU24A、RMCU25A、CCU26Aなどに対する制御指令を生成してアシスト発電モータ10や旋回電動モータ22の駆動制御を行うものであり、アシスト発電モータ10の駆動制御を行うアシスト発電モータ制御部281aと、旋回電動モータ22の駆動制御を行う旋回電動モータ制御部281bとを有している。
【0044】
図4はアシスト発電モータ制御部によるアシスト発電モータ通常始動制御処理を示すフローチャートであり、
図5はアシスト発電モータエンジン自動停止再始動制御処理を示すフローチャートである。
【0045】
図4において、アシスト発電モータ制御部281aは、キー信号がONになったかどうか、すなわち、キースイッチ29がON位置に設定されたかどうかを判定し(ステップS400)、判定結果がYESの場合には、エンジン回転数がN1以上であるかと、エンジン回転数がN2以下であるかどうかとを判定する(ステップS410,S420)。ステップS400〜S420の判定結果が全てYESの場合には、アシスト発電モータ駆動制御を行って(ステップS430)、処理を終了し、それ以外の場合(すなわち、ステップS400〜S420の判定結果の少なくとも1つがNOの場合)には、アシスト発電モータ停止制御を行って(ステップS431)、処理を終了する。
【0046】
ここで、エンジン回転数N1とは、エンジン9が停止しているかどうかを規定するための基準値であり、エンジン回転数がN1未満の場合には、エンジン9が停止状態であるとする。また、エンジン回転数N2とは、エンジン9が稼働状態であるかどうかを規定するための基準値であり、エンジン回転数がN2よりも大きい場合には、エンジン9が稼働状態であるとする。また、エンジン回転数がN1以上、かつ、N2以下である場合には、エンジン9が停止状態と稼働状態の中間的な状態であるとすることができる。アシスト発電モータ駆動制御(S430)は、アシスト発電モータ10によりエンジン9を始動する(又は、始動を補助する)制御であり、アシスト発電モータ停止制御(S431)は、アシスト発電モータ10によりエンジン9の始動を補助する制御である。すなわち、アシスト発電モータ通常始動制御処理では、エンジン9の初期始動時にスタータ43の動作をアシスト発電モータ10で補助している。
【0047】
図5において、アシスト発電モータ制御部281aは、再始動スイッチ60がON操作(押下)されたかどうかを判定し(ステップS500)、判定結果がYESの場合には、エンジン回転数がN2以下であるかどうか、すなわち、エンジン9が稼働状態ではないかどうかを判定する(ステップS510)。ステップS500,S510の判定結果がともにYESの場合、すなわち、再始動スイッチ60が操作され、かつ、エンジン9が稼働状態ではない場合には、アシスト発電モータ駆動制御を行って(ステップS520)、処理を終了し、それ以外の場合(すなわち、ステップS500,S510の判定結果の少なくとも一方がNOの場合)には、アシスト発電モータ停止制御を行って(ステップS521)、処理を終了する。すなわち、アシスト発電モータエンジン自動停止再始動制御処理では、エンジン9の再始動をアシスト発電モータ10で行っている。
【0048】
エンジン制御処理部282は、ECU9Aなどに対する制御指令を生成してエンジン9の駆動制御を行うものであり、予め定めた自動停止条件を満たした場合にエンジン9を停止する、いわゆるオートストップ制御を行う自動停止処理部282bと、エンジン9が始動された場合に初期始動であるのか再始動であるのかを判定する初回稼働判定処理部282aとを有している。ここで、エンジン9の初期始動とは、キースイッチ29がOFF位置に設定された状態(すなわち、エンジン9が停止中、かつ、蓄電器40からの電気・電子設備70への電力の供給が停止されている状態)からのエンジン9の始動である。また、エンジン9の再始動とは、オートストップ制御によるエンジン9の停止状態において、再始動スイッチ60の操作(押下)に基づいてアシスト発電モータ10によりエンジン9を始動することである。
【0049】
図6は初回稼働判定処理部による初回稼働判定処理を示すフローチャートであり、
図7は自動停止処理部によるエンジン自動停止処理を示すフローチャートである。
【0050】
図6において、初回稼働判定処理部282aは、エンジン回転数がN2よりも大きいかどうかを判定し(ステップS600)、判定結果がYESの場合には、初回稼働フラグがOFFであるかどうかを判定する(ステップS610)。ステップS600,S610での判定結果がYESの場合には、エンジン稼働カウンタが予め定めた閾値T1以下であるかどうかを判定し(ステップS620)、それ以外の場合(すなわち、ステップS600,S610の判定結果の少なくとも一方がNOの場合)には、処理を終了する。ステップS620での判定結果がYESの場合には、エンジン稼働カウンタをインクリメント(すなわち、1を加算)して(ステップS630)、処理を終了し、判定結果がNOの場合には、初回稼動フラグをONにして(ステップS631)、処理を終了する。初回稼動判定処理は、エンジン9の初期始動から一定時間(ここでは、エンジン稼動カウンタがT1になるまでの時間)が経過するまでは初回稼動フラグをOFFとし、エンジン稼動カウンタがT1になると初回稼動フラグをONにする処理である。初回稼動判定処理は、例えば、メインコントローラ28で用いられるクロック信号に基づいて繰り返し実行される。
【0051】
図7において、自動停止処理部282bは、エンジン回転数がN2よりも大きいかどうかを判定し(ステップS700)、判定結果がNOの場合、すなわち、エンジン9が稼動状態では無い場合には処理を終了する。また、ステップS700での判定結果がYESの場合、すなわち、エンジン9が稼動状態であると判定した場合には、ゲートロックレバー17がロック状態であるかどうかを判定し(ステップS710)、判定結果がYESの場合には、自動停止カウンタをインクリメント(すなわち、1を加算)し(ステップSS720)、続いて、初回稼動フラグがONであるかどうかと、自動停止カウンタが予め定めた閾値T2以上であるかどうかとを判定する(ステップS730,S740)。ステップS730,S740の判定結果がいずれもYESの場合には、エンジン9における燃料噴射を停止させてエンジン9を停止させるECU9Aへの指令である燃料噴射停止指令を生成して(ステップS750)、処理を終了し、それ以外の場合(すなわち、ステップS730,S740の判定結果の少なくとも一方がNOの場合)には、処理を終了する。また、ステップS710での判定結果がNOの場合、すなわち、ゲートロックレバー17が解除状態であると判定した場合には、自動停止カウンタをクリアし(ステップS721)、処理を終了する。
【0052】
エンジン自動停止処理は、初回稼動フラグがONの場合、すなわち、エンジン9の初期始動からエンジン稼動カウンタがT1になるまでの時間が経過している状態において、エンジン9の始動(初期始動、又は、再始動)から一定時間(ここでは、自動停止カウンタがT2になるまでの時間)が経過するとエンジン9を停止する、いわゆる、オートストップ制御を行う処理である。エンジン自動停止処理は、例えば、メインコントローラ28で用いられるクロック信号に基づいて繰り返し実行される。すなわち、エンジン自動停止処理では、エンジン9の初期始動から閾値T1で設定される十分な時間が経過するまではエンジン9の自動停止を行わない。なお、自動停止条件は、初期始動からエンジン稼動カウンタがT1になるまでの時間(第1の連続稼動時間条件)と、再始動から自動停止カウンタがT2になるまでの時間(第2の連続稼動時間条件)とを含んでおり、第1の連続稼動時間条件は第2の連続稼動時間条件よりも長く設定されている。
【0053】
電気設備用電源制御処理部(電源制御処理部)283は、電気設備用電源制御装置42を制御して、蓄電器40から電気・電子設備70の各構成に供給される電力の供給と停止(遮断)とを制御するものであり、エンジン9の稼働中におけるオルタネータ(発電機)41から蓄電器40への充電量を推定する充電量推定処理部283aと、オートストップ制御によるエンジン9の停止中において蓄電器40から電気・電子設備70に供給される電力である放電量を推定する放電量推定処理部283bと、オートストップ制御によるエンジン9の停止中において、放電量が充電量以上となった場合(すなわち、放電量が充電量を上回ると判断したとき)に、蓄電器40から電気・電子設備70への電力の供給を停止させる電力供給判定処理部283cとを有している。
【0054】
図8は、電気設備用電源制御処理部における電気設備用電源制御処理を示すフローチャートである。
【0055】
図8において、電気設備用電源制御処理部283は、エンジン9の回転数がN2よりも大きいかどうか、すなわち、エンジン9が稼働中かどうかを判定する(ステップS800)。
【0056】
ステップS800での判定結果がYESの場合には、充電量推定処理部283aは、充放電カウンタが予め定めたカウントMAX(よりも小さいかどうかを判定し(ステップS810)、判定結果がYESの場合には、充電量積算処理として、蓄電器40の蓄電量の推定値である充放電カウンタCNTにCNT+k1を入力し(ステップS820)、処理を終了する。また、ステップS810での判定結果がNOの場合にも処理を終了する。
【0057】
また、ステップS800での判定結果がNOの場合には、エンジン回転数がN1よりも小さいかどうか、すなわち、エンジン9が停止しているかどうかを判定し(ステップS830)、判定結果がYESの場合には、放電量積算処理として、充放電カウンタCNTにCNT−k2を入力する(ステップS840)。続いて、電力供給判定処理部283cは、充放電カウンタが0(ゼロ)以下であるかどうかを判定し(ステップS850)、判定結果がYSEの場合には、蓄電器40から電気・電子設備70への電力の供給を電気設備用電源制御装置42に停止させる電力供給停止指令を生成し(ステップS860)、処理を終了する。また、ステップS830、又は、ステップS850での判定結果がNOの場合には、処理を終了する。
【0058】
ここで、充放電カウンタCNTについて説明する。充放電カウンタCNTは、蓄電器40の蓄電量の推定値であり、カウンタMAXは、蓄電器40の最大蓄電量を示している。また、充放電カウンタCNTは、蓄電器40の蓄電量の最低値として蓄電器40の劣化が十分に少ない蓄電量を基準(すなわち、充放電カウンタ=0)に設定している。また、定数k1は、エンジン9の稼動時におけるオルタネータ41の単位時間(この場合は、電気設備用電源制御処理の1サイクル)における発電量の推定値を示しており、例えば、オルタネータ41の定格発電量や実験的に求めた発電量を設定する。また、定数k2は、オートストップ制御によるエンジン9の停止中における単位時間(この場合も電気設備用電源制御処理の1サイクル)における電気・電子設備70の消費電力量(言い換えると、蓄電器40の放電量)の推定値を示しており、例えば、電気・電子設備70の各構成の仕様から求めた放電量や実験的に求めた放電量を設定する。なお、
図8のフローチャートでは、例えば、ステップS830における判定結果がYESの場合、すなわち、エンジン9が停止している場合は、オートストップ制御によるエンジン9の停止中を示している。例えば、キースイッチ29をOFF位置に設定した場合のエンジン9の停止では、電気・電子設備70への電力供給が行われないため、電気設備用電源制御処理がそもそも実行されない。
【0059】
以上のように構成した本実施の形態の動作を
図9を参照しつつ説明する。
【0060】
図9は、充放電カウンタの時間変化の一例を車体ステータスを含む他の状態の時間変化とともに示す図である。
【0061】
図9においては、説明の簡単のため、エンジン稼動カウンタがT1になるまでの時間、及び、自動停止カウンタがT2になるまでの時間を、それぞれ、時間T1,T2として説明する。
図9において、まず、エンジン9の初期始動を行うと、車体ステータスが停車状態(a区間)からエンジン稼働状態(b区間)へ遷移する。エンジン稼働状態において、ゲートロックレバー17を操作してゲートロック信号を解除状態からロック状態に切り換え(c区間)、T2時間が経過するとエンジン停止条件が成立するが、初回起動であるため、エンジン9は自動停止しない。また、初回起動からT1時間が経過して(d区間)、初めてエンジン9がオートストップ制御による停止状態となる。エンジン9が稼働中であるb区間、c区間、および、d区間においては、充放電カウンタCNTは充電量積算処理により傾きk1で増加する。e区間においてはエンジン9が自動停止して待機状態となり、充放電カウンタCNTは放電量積算処理により傾きk2で減少する。エンジン9のオートストップ制御における自動停止中において、再始動スイッチ60をON操作(押下)すると、エンジン9が再始動し、車体ステータスがエンジン稼働状態(f区間)へ遷移する。エンジン再始動後、ゲートロックレバー17を操作してゲートロック信号を解除状態からロック状態に切り換えると、T2時間経過(g区間)すると、再びエンジン9がオートストップ制御による自動停止状態に遷移する(h区間)。その後、再度エンジンを再始動し、ゲートロック信号をロック状態としたままT2時間経過(i区間)すると、オートストップ制御による自動停止状態に遷移する(j区間)。このj区間において、充放電カウンタが0に達するまで再始動スイッチ60が操作(押下)が押されない場合には、蓄電器40から電気・電子設備70への電力供給が停止(遮断)され、車体ステータスは電源OFFとなる。
【0062】
次に上記の各実施の形態の特徴について説明する。
【0063】
(1)上記の実施の形態では、エンジン9と、前記エンジンにより駆動される発電機(例えば、オルタネータ41)と、前記発電機により発電された電力を蓄える蓄電器40と、前記蓄電器から供給される電力により駆動又は制御される電気・電子設備70と、予め定めた自動停止条件を満たした場合に前記エンジンを停止するオートストップ制御を行う制御装置(例えば、メインコントローラ28)とを備えた建設機械において、前記制御装置は、前記蓄電器から前記電気・電子設備に供給される電力を制御する電源制御処理部283を有し、前記電源制御処理部は、前記エンジンの稼働中における前記発電機から前記蓄電器への充電量を推定する充電量推定処理部283aと、前記オートストップ制御による前記エンジンの停止中において前記蓄電器から前記電気・電子設備に供給される電力である放電量を推定する放電量推定処理部283bと、前記オートストップ制御による前記エンジンの停止中において、前記放電量が前記充電量を上回ると判断したときに、前記蓄電器から前記電気・電子設備への電力の供給を停止させる電力供給判定処理部283cとを有するものとした。
【0064】
これにより、エンジンのオートストップ制御における蓄電器の劣化をより確実に抑制することができる。
【0065】
(2)また、上記の実施の形態では、(1)の建設機械において、前記充電量推定処理部は、前記エンジンの稼働時間と前記蓄電器の充電量との関係を予め定めた定数k1に基づいて前記発電機から前記蓄電器への充電量を推定し、前記放電量推定処理部は、前記オートストップ制御による前記エンジンの停止時間と前記電気・電子設備の放電量の関係を予め定めた定数k2に基づいて前記蓄電器から前記電気・電子設備に供給される電力である放電量を推定するものとした。
【0066】
これにより、結果として、エンジン9が自動停止されてから再始動スイッチ60による操作が行われない場合の電源がOFFされるまでの時間は、蓄電器40から電気・電子設備70に供給される電力、すなわち、推定される放電量に応じて変動することになる。
【0067】
(3)また、上記の実施の形態では、(1)の建設機械において、前記オートストップ制御の前記自動停止条件は、少なくとも、前記エンジンの始動から稼動した時間である第1及び第2の連続稼働時間条件を含み、前記エンジンが停止中、かつ、前記蓄電器から前記電気・電子設備への電力の供給が停止されている状態からの前記エンジンの始動である初期始動における前記第1の連続稼働時間条件は、前記オートストップ制御による前記エンジンの停止状態からの始動である再始動における前記第2の連続稼働時間条件よりも長く設定されたものとした。
【0068】
<付記>
なお、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内の様々な変形例や組み合わせが含まれる。また、本発明は、上記の実施の形態で説明した全ての構成を備えるものに限定されず、その構成の一部を削除したものも含まれる。また、上記の各構成、機能等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等により実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。