特許第6707076号(P6707076)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6707076アルギネートオリゴマーの吸入可能粉末製剤
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6707076
(24)【登録日】2020年5月21日
(45)【発行日】2020年6月10日
(54)【発明の名称】アルギネートオリゴマーの吸入可能粉末製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/734 20060101AFI20200601BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20200601BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20200601BHJP
   A61K 47/18 20060101ALI20200601BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20200601BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20200601BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20200601BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20200601BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20200601BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20200601BHJP
   A61P 11/02 20060101ALI20200601BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20200601BHJP
【FI】
   A61K31/734
   A61K9/12
   A61K47/24
   A61K47/18
   A61K47/26
   A61P11/00
   A61P31/04
   A61P31/00
   A61P11/06
   A61P35/00
   A61P11/02
   A61P29/00
【請求項の数】43
【全頁数】50
(21)【出願番号】特願2017-511704(P2017-511704)
(86)(22)【出願日】2015年8月28日
(65)【公表番号】特表2017-530952(P2017-530952A)
(43)【公表日】2017年10月19日
(86)【国際出願番号】EP2015069785
(87)【国際公開番号】WO2016030524
(87)【国際公開日】20160303
【審査請求日】2018年8月23日
(31)【優先権主張番号】1415381.1
(32)【優先日】2014年8月29日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】511292459
【氏名又は名称】アルギファルマ エーエス
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ニャンブラ、ビルダッド
(72)【発明者】
【氏名】ベイクル、アナンド
(72)【発明者】
【氏名】デッセン、アルネ
【審査官】 鳥居 福代
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−528840(JP,A)
【文献】 特表2003−507412(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/33−33/44
A61K 9/00−9/72
A61K 47/00−47/69
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸入用噴霧乾燥粒子であって、前記粒子が、
(i)約70w/w%以上のアルギネートオリゴマーと、
(ii)合計で約10w/w%以上のリン脂質及び抗接着化合物(但し、前記リン脂質は、室温で固体であり、且つ前記リン脂質は0.5w/w%以上であり、前記抗接着化合物は0.5w/w%以上である)と、
(iii)約10w/w%以下の更なる賦形剤と
から成り、
前記アルギネートオリゴマーの平均分子量が、35,000ダルトン未満であり、
前記抗接着化合物が、アミノ酸、単糖、二糖及びそれらの組合せから選択される
吸入用噴霧乾燥粒子。
【請求項2】
前記粒子が、約75w/w%以上のアルギネートオリゴマーを含有する、請求項1に記載の噴霧乾燥粒子。
【請求項3】
前記粒子が、約80w/w%のアルギネートオリゴマーを含有する、請求項1又は請求項2に記載の噴霧乾燥粒子。
【請求項4】
前記粒子が、合計で約15w/w%以上のリン脂質及び抗接着化合物を含有する、請求項1〜3のいずれか1つに記載の噴霧乾燥粒子。
【請求項5】
前記粒子が、合計で約20w/w%のリン脂質及び抗接着化合物を含有する、請求項1〜4のいずれか1つに記載の噴霧乾燥粒子。
【請求項6】
前記粒子が、3w/w%以上のリン脂質を含有する、請求項1〜5のいずれか1つに記載の噴霧乾燥粒子。
【請求項7】
前記粒子が、約5w/w%のリン脂質を含有する、請求項1〜6のいずれか1つに記載の噴霧乾燥粒子。
【請求項8】
前記粒子が、10w/w%以上の抗接着化合物を含有する、請求項1〜7のいずれか1つに記載の噴霧乾燥粒子。
【請求項9】
前記粒子が、約15w/w%の抗接着化合物を含有する、請求項1〜8のいずれか1つに記載の噴霧乾燥粒子。
【請求項10】
粒子に含まれるリン脂質と抗接着化合物の相対量が、1:3の割合である、請求項1〜9のいずれか1つに記載の噴霧乾燥粒子。
【請求項11】
粒子に含まれるアルギネートオリゴマー、リン脂質及び抗接着化合物の相対量が8:0.5:1.5の割合である、請求項1〜10のいずれか1つに記載の噴霧乾燥粒子。
【請求項12】
前記粒子が、更なる賦形剤を本質的に含有しない、請求項1〜11のいずれか1つに記載の噴霧乾燥粒子。
【請求項13】
前記粒子が、約80w/w%のアルギネートオリゴマーと、約15w/w%の抗接着化合物と、約5w/w%のリン脂質とから成る、請求項1〜12のいずれか1つに記載の噴霧乾燥粒子。
【請求項14】
前記粒子が、d50が<5μmであり、d90が<10μmである幾何学的粒径分布を有する、請求項1〜13のいずれか1つに記載の噴霧乾燥粒子。
【請求項15】
前記粒子が、d10が<1.5μmである幾何学的粒径分布を有する、請求項14に記載の噴霧乾燥粒子。
【請求項16】
前記粒子のFPM<4.46μmが、粒子40mgにつき約10mgを上回る、請求項1〜13のいずれか1つに記載の噴霧乾燥粒子。
【請求項17】
前記粒子の放出用量が約65%を上回る、請求項1〜16のいずれか1つに記載の噴霧乾燥粒子。
【請求項18】
前記アルギネートオリゴマーの平均分子量が、30,000ダルトン未満、25,000ダルトン未満又は20,000ダルトン未満である、請求項1〜17のいずれか1つに記載の噴霧乾燥粒子。
【請求項19】
前記アルギネートオリゴマーの重合度(DP)又は数平均重合度(DPn)が、4〜100、4〜75、4〜50、4〜35、4〜30、4〜25、4〜22、4〜20、4〜18、4〜16又は4〜14である、請求項1〜18のいずれか1つに記載の噴霧乾燥粒子。
【請求項20】
前記アルギネートオリゴマーの重合度(DP)又は数平均重合度(DPn)が、
(i)5〜50、5〜35、5〜30、5〜25、5〜22、5〜20、5〜18、5〜16若しくは5〜14、
(ii)6〜50、6〜35、6〜30、6〜25、6〜22、6〜20、6〜18、6〜16若しくは6〜14、又は
(iii) 8〜50、8〜35、8〜30、8〜25、10〜25、10〜22、10〜20、10〜18若しくは10〜15である、
請求項1〜19のいずれか1つに記載の噴霧乾燥粒子。
【請求項21】
前記アルギネートオリゴマーが、70%以上のG残基又は80%以上若しくは85%以上若しくは90%以上若しくは95%以上のG残基を有する、請求項1〜20のいずれか1つに記載の噴霧乾燥粒子。
【請求項22】
前記アルギネートオリゴマーのG残基の80%以上が、Gブロックに配置されている、請求項21に記載の噴霧乾燥粒子。
【請求項23】
前記アルギネートオリゴマーが、5〜20の範囲内の数平均重合度、0.85以上のグルロネート率(FG)及び0.15以下のマンヌロネート率(FM)を有する、請求項1〜22のいずれか1つに記載の噴霧乾燥粒子。
【請求項24】
前記アルギネートオリゴマーが、70%以上のM残基又は80%以上若しくは85%以上若しくは90%以上若しくは95%以上のM残基を有する、請求項1〜20のいずれか1つに記載の噴霧乾燥粒子。
【請求項25】
前記アルギネートオリゴマーのM残基の80%以上が、Mブロックに配置されている、請求項24に記載の噴霧乾燥粒子。
【請求項26】
前記リン脂質が、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール及びそれらの組合せから選択される、請求項1〜25のいずれか1つに記載の噴霧乾燥粒子。
【請求項27】
前記リン脂質が、ホスファチジルコリン(飽和および不飽和)、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ジオレオイルホスファチジルコリン、ジミリストイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC;1,2−ジパルミトイル−snグリセロ−3−ホスホコリン)、ジステアロイルホスファチジルコリン、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DSPC)、ジアラキドイルホスファチジルコリン、ジベノイルホスファチジルコリン、ジトリコサノイルホスファチジルコリン、ジリグノセロイルファチジルコリン、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン、ピパルミトレオイルホスファチジルエタノールアミン、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン、ジミリストイルホスファチジルグリセロール、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール、ジパルミトルコイルホスファチジルグリセロール(dipalmitolcoylphosphatidylglycerol)及び水素化誘導体並びにそれらの組合せから選択される、請求項26に記載の噴霧乾燥粒子。
【請求項28】
前記リン脂質が、DPPC及びDSPC又はそれらの混合物から選択される、請求項27に記載の噴霧乾燥粒子。
【請求項29】
前記アミノ酸が、ロイシン、イソロイシン、アラニン、バリン、フェニルアラニン、リジン、グリシン及びそれらの組合せから選択される、請求項1〜28のいずれか一項に記載の噴霧乾燥粒子。
【請求項30】
前記粒子が、
(i)約80w/w%のアルギネートオリゴマー(但し、前記アルギネートオリゴマーは、5〜20の範囲内の数平均重合度、0.85以上のグルロネート率(FG)及び0.15以下のマンヌロネート率(FM)を有する)と、
(ii)約5w/w%のDPPCと、
(iii)約15w/w%のグリシンと
から成る、請求項1〜23及び26〜29のいずれか1つに記載の噴霧乾燥粒子。
【請求項31】
請求項1〜30のいずれか1つに記載の噴霧乾燥粒子を形成するように噴霧乾燥用水中有機液状エマルジョンを製造する方法であって、前記方法が、
(a)(i) 請求項1〜30のいずれか1つに記載のアルギネートオリゴマーを含む水性液状組成物と、請求項1〜30のいずれか1つに記載の抗接着化合物を含む水性液状組成物、又は
(ii)請求項1〜30のいずれか1つに記載のアルギネートオリゴマーと請求項1〜30のいずれか1つに記載の抗接着化合物とを含む水性液状組成物
を準備すること、
(b)請求項1〜30のいずれか1つに記載のリン脂質を含む有機液状組成物を準備すること、
(c)一定量の前記有機液状組成物を一定量の(i)の水性液状組成物又は(ii)の水性液状組成物と混合すること(但し、有機液状組成物の量は、混合する水性液状組成物の総量より少ない)、及び
(d)工程(c)の間の任意の時点で又は工程(c)の終了時に上記の如く生成された混合物を均質化し、請求項1〜30のいずれか1つに記載の噴霧乾燥粒子を形成するように噴霧乾燥用水中有機液状エマルジョンを生成すること
を含む、方法。
【請求項32】
前記有機液状組成物が、アルコール、ケトン、アセテート、ハロゲン化溶媒および脂肪族溶媒から選択される有機溶媒におけるリン脂質の溶液である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記有機溶媒がメタノール、エタノール、C3アルコール及びC4アルコール、アセトン、酢酸エチル、ジクロロメタン、クロロホルム、ヘプタン、ヘキサン並びにペンタンから選択される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
請求項1〜30のいずれか1つに記載の噴霧乾燥粒子の製造方法であって、前記方法が、請求項3133のいずれか1つに記載の噴霧乾燥用水中有機液状エマルジョンの製造方法を実施することと、工程(d)において生成された水中有機液状エマルジョンを噴霧乾燥することとを含む、方法。
【請求項35】
乾燥粉末吸入器における使用に適したカプセルであって、前記カプセルが、請求項1〜30のいずれか1つに記載の噴霧乾燥粒子を含有する、カプセル。
【請求項36】
乾燥粉末吸入器であって、前記乾燥粉末吸入器が、請求項1〜30のいずれか1つに記載の噴霧乾燥粒子又は請求項35のカプセルを含む、乾燥粉末吸入器。
【請求項37】
治療に使用する、請求項1〜30のいずれか1つに記載の噴霧乾燥粒子。
【請求項38】
呼吸器感染症若しくは呼吸器疾患の治療又は予防用途に使用する、請求項1〜30のいずれか1つに記載の噴霧乾燥粒子を含む薬剤であって、前記治療又は予防が、噴霧乾燥粒子を、それを必要とする被験体の気道、好ましくは肺に吸入投与することを含む、噴霧乾燥粒子を含む薬剤。
【請求項39】
前記呼吸器疾患が、微生物感染症及び/若しくは異常粘液を伴う疾患又は病状である、請求項38の薬剤。
【請求項40】
前記呼吸器疾患が、欠陥のある嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)イオンチャネル機能に関連した又はそれを特徴とする病状、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、慢性閉塞性気道疾患(COAD)、慢性閉塞性気道肺炎(COAP)、気管支炎、肺気腫、肺がん、喘息及び肺炎又はそれらの合併症から選択される、請求項38又は請求項39の薬剤。
【請求項41】
前記欠陥のあるCFTRイオンチャネル機能に関連した又はそれを特徴とする病状が、閉塞性呼吸器疾患、又は気道感染症による慢性炎症状態、気道リモデリングや憎悪を特徴とする呼吸器疾患である、請求項40の薬剤。
【請求項42】
欠陥のあるCFTRイオンチャネル機能に関連した又はそれを特徴とする前記病状が、嚢胞性線維症(CF)若しくはCFに関連した医学的疾患又は病状、非合成CFTR遺伝子変異ヘテロ接合性、慢性的な微粒子の吸入に起因する気道における異常粘液クリアランス及び/若しくは呼吸困難、COPD、慢性気管支炎、肺気腫、気管支拡張症、喘息又は慢性副鼻腔炎或いはそれらの合併症である、請求項41の薬剤。
【請求項43】
請求項3842のいずれか一項において定義した呼吸器感染症若しくは呼吸器疾患の治療又は予防用途に使用する薬剤の製造における、請求項1〜30のいずれか一項において定義した乾燥噴霧粒子の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に吸入投与経路に適した新規アルギネートオリゴマー製剤に関する。特に、本発明は、高含有率アルギネートオリゴマーと、リン脂質と、抗接着化合物とを含有する乾燥粉末形態の吸入用噴霧乾燥粒子を提供する。本発明のシンプルな製剤は、賦形剤に対する副作用のリスクを最小限にして、治療を受ける被験体の肺へのアルギネートオリゴマーの効果的な送達を可能にする微粒子質量(FPM)、幾何学的粒径分布及び放出用量を有する粒子を提供する。本発明は更に、噴霧乾燥粒子を含有する吸入用乾燥粉末組成物、当該粒子を含有するカプセル及び当該粒子を含有する乾燥粉末吸入器を提供する。本発明は更に、アルギネートオリゴマー、リン脂質及び抗接着化合物の水中有機液状エマルジョンを調製し、当該エマルジョンを噴霧乾燥する、本発明の粒子の驚くべき且つ有利な製造方法を提供する。治療、特に、呼吸器感染症及び呼吸器疾患の治療又は予防における本発明の粒子の使用を提供するものであって、呼吸器感染症及び呼吸器疾患としては、とりわけ、微生物感染症(特にバイオフィルム感染症)及び/若しくは異常粘液を伴う疾患又は病状、例えば、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、慢性閉塞性気道疾患(COAD)、慢性閉塞性気道肺炎(COAP)、気管支炎、嚢胞性線維症(CF)、CFに関連した医学的疾患若しくは病状、肺気腫、肺がん、喘息又は肺炎、或いはより広範には、欠陥のある嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)イオンチャネル機能に関連した又はそれを特徴とするあらゆる病状が挙げられる。
【背景技術】
【0002】
アルギネートオリゴマーに関しては、文献に詳細に記述されている。手短に言えば、アルギネートは、(1-4)結合したβ−D−マンヌロン酸(M)及び/又はそのC-5エピマーα-L-グルロン酸(G)の直鎖ポリマーである。アルギネートの一次構造は、大きく変化し得る。M残基及びG残基は、M残基又はG残基が連続したホモポリマーブロック、M残基及びG残基が交互になったブロックとして構成されることがあり、これらのブロック構造の間に位置する単一のM残基又はG残基が見られる場合もある。アルギネート分子は、これらの構造の幾つか又は全てを含むことがあり、かかる構造は、ポリマー全体に均一に分布しない場合もある。極端な場合、グルロン酸のホモポリマー(ポリグルロネート)又はマンヌロン酸のホモポリマー(ポリマンヌロネート)が存在する。アルギネートオリゴマーは、通常、高分子量の大きなポリマー(例えば、平均分子量が300,000ダルトン〜500,000ダルトンの範囲)として、天然源から単離されるアルギネートポリマーから得られる。かかる大きなアルギネートポリマーは、例えば、化学的加水分解または酵素加水分解により分解(degraded)、すなわち化学変化(broken down)し、低分子量のアルギネート構造を産生する場合もある。
【0003】
アルギネートオリゴマーは、粘液、特に過粘稠の粘液の粘度を低減させ、抗微生物特性及び抗バイオフィルム特性をも有し得ることが明らかになっている。従って、例えば、COPD、COAD、COAP、気管支炎、嚢胞性線維症や、CFに関連した医学的疾患若しくは病状、肺気腫、肺がん、喘息及び肺炎等、微生物感染症(特にバイオフィルム感染症)及び/又は異常粘液を伴う呼吸器感染症並びに呼吸器疾患の治療又は予防において、その使用が提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
活性薬剤、とりわけ、アルギネートオリゴマー等の複合生体分子を肺に効果的に送達することは困難かつ特異的であり得る。当技術分野において、多くの代替手段が利用可能である。従って、活性薬剤の肺への送達に関する提案は、思いのほか簡単ではない場合もある。これまで、文献において、適量のアルギネートオリゴマーの肺への効果的な送達に関する具体的な説明は殆どされておらず、特に、乾燥粉末形態のアルギネートオリゴマーの製造については記述されていない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
アルギネートオリゴマーの肺への効果的な送達を可能とする微粒子質量(FPM)、幾何学的粒径分布及び放出用量を有する純粋な乾燥粉末としてアルギネートオリゴマーを成功裏に製剤化することはできないことが今では分かっている。しかしながら、驚いた事に、アルギネートオリゴマーを、比較的少量のリン脂質及び抗接着化合物と組み合わせると、アルギネートオリゴマーの肺への効果的な送達を可能とする微粒子質量(FPM)、幾何学的粒径分布及び放出用量を有する粒子を噴霧乾燥により製造できることが分かった。理論に拘束されることを望むものではないが、リン脂質の界面活性剤特性が、噴霧乾燥粉末中のアルギネートオリゴマーの部分マスキングを可能にし、粉末の親水性を低下させることにより、吸湿性を低下させるものと考えられる。更に、これにより所望の粒径分布となり、肺以外の口や気管における沈着を低減することにより、肺での生物学的利用率を増加させるものと考えられる。
【0006】
従って、第一の態様において、吸入用噴霧乾燥粒子を提供するものであって、当該粒子は、
(i)約70w/w%以上のアルギネートオリゴマーと、
(ii)合計で約10w/w%以上のリン脂質及び抗接着化合物(但し、当該リン脂質は、室温で固体であり、且つ当該リン脂質は0.5w/w%以上であり、当該抗接着化合物は0.5w/w%以上である)と、
(iii)約10w/w%以下の更なる賦形剤と
から成る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本発明の噴霧乾燥粒子をテクネガスで放射標識するために使用した装置の図を示す。テクネガスは、99m過テクネチウム酸(400Mbq)101を充填したテクネガス発生装置により発生させ、真空ポンプ103を使用し濾紙102上に配置した乾燥粒子(300mg)層上に吸引した。遊離テクネガスは、6%(w/w)EDTA溶液104中に捕捉した。
図2図2は、放射標識粒子及び非放射標識粒子の重量平均分布、並びに実施例7の空気力学的粒径分布分析による放射標識粒子の放射線量のグラフ図を示す。濃灰色の棒(左):放射標識粒子(DPI)の重量(n=4)。中間灰色の棒(中央):放射標識粒子(DPI)の放射線量(n=4)。薄灰色の棒(右):非放射標識粒子(DPI)の重量(n=4)。
図3A図3は、噴霧溶液(3A(前面画像)及び3B(背面画像))又は本発明の噴霧乾燥粒子の形態(3C(前面画像)及び3D(背面画像))での投与後のCF患者の肺内におけるオリゴGの沈着を示す。
図3B図3は、噴霧溶液(3A(前面画像)及び3B(背面画像))又は本発明の噴霧乾燥粒子の形態(3C(前面画像)及び3D(背面画像))での投与後のCF患者の肺内におけるオリゴGの沈着を示す。
図3C図3は、噴霧溶液(3A(前面画像)及び3B(背面画像))又は本発明の噴霧乾燥粒子の形態(3C(前面画像)及び3D(背面画像))での投与後のCF患者の肺内におけるオリゴGの沈着を示す。
図3D図3は、噴霧溶液(3A(前面画像)及び3B(背面画像))又は本発明の噴霧乾燥粒子の形態(3C(前面画像)及び3D(背面画像))での投与後のCF患者の肺内におけるオリゴGの沈着を示す。
図4A図4は、噴霧溶液(4A(左側面)及び4B(右側面))又は本発明の噴霧乾燥粒子の形態(4C(左側面)及び4D(右側面))での投与後のCF患者の中咽頭部におけるオリゴGの沈着を示す。
図4B図4は、噴霧溶液(4A(左側面)及び4B(右側面))又は本発明の噴霧乾燥粒子の形態(4C(左側面)及び4D(右側面))での投与後のCF患者の中咽頭部におけるオリゴGの沈着を示す。
図4C図4は、噴霧溶液(4A(左側面)及び4B(右側面))又は本発明の噴霧乾燥粒子の形態(4C(左側面)及び4D(右側面))での投与後のCF患者の中咽頭部におけるオリゴGの沈着を示す。
図4D図4は、噴霧溶液(4A(左側面)及び4B(右側面))又は本発明の噴霧乾燥粒子の形態(4C(左側面)及び4D(右側面))での投与後のCF患者の中咽頭部におけるオリゴGの沈着を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
好ましい実施形態において、本発明の粒子は、アルギネートオリゴマーを約71w/w%以上、例えば、アルギネートオリゴマーを約72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89または90w/w%以上含有する。他の好ましい実施形態において、本発明の粒子は、アルギネートオリゴマーを約70w/w%〜約90w/w%、例えば、アルギネートオリゴマーを約71、72、73、74、75、76、77、78、79、80w/w%のいずれか〜約81、82、83、84、85、86、87、88、89又は90w/w%のいずれか、例えば、72〜88、74〜86、75〜85、76〜84、77〜83、78〜82、79〜81、74〜90、75〜89、76〜88、77〜87、78〜86、79〜85、80〜84、81〜83、78〜90、79〜89、80〜88、81〜87、82〜86、83〜85、80〜90、81〜89、82〜88、83〜87又は84〜86w/w%含有する。好ましくは、本発明の粒子は、アルギネートオリゴマーを約80w/w%、例えば、78、79、80、81又は82w/w%、好ましくは79、80又は81w/w%、より好ましくは80w/w%含有する。
【0009】
好ましい実施形態において、本発明の粒子は、リン脂質及び抗接着化合物を合計で約11w/w%以上、例えば、リン脂質及び抗接着化合物を合計で約12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29又は30w/w%以上含有する。他の好ましい実施形態において、本発明の粒子は、リン脂質及び抗接着化合物を合計で約10w/w%〜約30w/w%、例えば、リン脂質及び抗接着化合物を合計で約11、12、13、14、15、16、17、18、19、20w/w%のいずれか〜約21、22、23、24、25、26、27、28、29又は30w/w%のいずれか、例えば、12〜28、14〜26、15〜25、16〜24、17〜23、18〜22、19〜21、14〜30、15〜29、16〜28、17〜27、18〜26、19〜25、20〜24、21〜23、18〜30、19〜29、20〜28、21〜27、22〜26、23〜25、20〜30、21〜29、22〜28、23〜27又は24〜26w/w%含有する。好ましくは、本発明の粒子は、リン脂質及び抗接着化合物を合計で約20w/w%、例えば、18、19、20、21又は22w/w%、好ましくは19、20又は21w/w%、より好ましくは20w/w%含有する。
【0010】
前記好ましい実施形態の範囲内で、本発明の粒子は、リン脂質を0.5w/w%以上、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、14、16、18、20、25又は29.5w/w%以上含有する。好ましい実施形態において、本発明の粒子は、リン脂質を0.5〜15w/w%、例えば、1〜9、2〜8、3〜7、4〜6、2〜9、3〜8、4〜7、5〜6、3〜9、4〜8、5〜7、4〜9、5〜8、6〜7、5〜9、6〜8、1〜10、1〜11、1〜12、2〜10、2〜11、2〜12、3〜10、3〜11、3〜12、4〜10、4〜11、5〜12、5〜10、5〜11、5〜12、6〜10、6〜11、6〜12、7〜10、7〜11、7〜12又は8〜10、8〜11、8〜12w/w%含有する。好ましくは、本発明の粒子は、リン脂質を約5w/w%、例えば、3、4、5、6又は7w/w%、好ましくは4、5又は6w/w%、より好ましくは5w/w%含有する。
【0011】
前記好ましい実施形態の範囲内で、本発明の粒子は、抗接着化合物を0.5w/w%以上、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、14、16、18、20、25又は29.5w/w%以上含有する。好ましい実施形態において、本発明の粒子は、抗接着化合物を0.5〜20w/w%、例えば、1〜19、2〜18、3〜17、4〜16、5〜15、6〜14、7〜13、2〜19、3〜18、4〜17、5〜16、6〜15、7〜14、8〜13、3〜19、4〜18、5〜17、6〜16、7〜15、8〜14、9〜13、4〜19、5〜18、6〜17、7〜16、8〜15、9〜13、5〜19、6〜18、7〜17、8〜16、9〜15、1〜14、1〜15、1〜16、2〜14、2〜15、2〜16、3〜14、3〜15、3〜16、4〜14、4〜15、5〜14、6〜14、7〜11、7〜12又は8〜10、8〜11、8〜12w/w%含有する。好ましくは、本発明の粒子は、抗接着化合物を約15w/w%、例えば、13、14、15、16又は17w/w%、好ましくは14、15又は16w/w%、より好ましくは15w/w%含有する。
【0012】
更に好ましい実施形態において、本発明の粒子は、リン脂質を約5w/w%、例えば、3、4、5、6又は7w/w%、好ましくは4、5又は6w/w%、より好ましくは5w/w%、且つ抗接着化合物を約15w/w%、例えば、13、14、15、16又は17w/w%、好ましくは14、15又は16w/w%、より好ましくは15w/w%含有する。より好ましくは、本発明の粒子は、リン脂質を約5w/w%と抗接着化合物を約15w/w%含有する。
【0013】
他の実施形態において、粒子中に含まれるリン脂質と抗接着化合物の相対量は、1:5〜5:1、好ましくは1:4.5〜4.5:1、1:4〜4:1、1:3.5〜3.5:1、1:3〜3:1、1:2.5〜2.5:1、1:2〜2:1、1:1.5〜1.5:1又は1:1、より好ましくは1:3.5、1:3又は1:2.5、最も好ましくは1:3の割合である。
【0014】
他の実施形態において、アルギネートオリゴマーと、粒子中に含まれるリン脂質及び抗接着化合物の合計量との相対量は、7:3、7:2.5、7:2、7.5:2.5、7.5:1.5、8:2、8:1.5、8:1、8.5:1.5、8.5:1又は9:1の割合である。
【0015】
他の実施形態において、アルギネートオリゴマーと、粒子中に含まれるリン脂質と抗接着化合物との相対量は、7:2:1、7:1.5:1.5、7:1:2、7:0.5:2.5、7:0.05:2.95、8:1.5:0.5、8:1:1、8:0.5:1.5、8:0.05:1.95、9:0.75:0.25、9:0.5:0.5、9:0.25:0.75又は9:0.5:0.95の割合であり、8:0.5:1.5が好ましい。これらの実施形態において、好ましくは、これら以外の賦形剤は含まれない。
【0016】
好ましい実施形態において、本発明の粒子は、約9w/w%以下の更なる賦形剤、例えば、約8、7、6、5、4、3、2、1、0.5、0.1、0.05、0.01、0.005又は0.001w/w%以下の更なる賦形剤を含有する。最も好ましい実施形態において、本発明の粒子は、更なる賦形剤を本質的に含有しない。本明細書において、好適な更なる賦形剤を開示する。特定の実施形態において、更なる賦形剤は、リン脂質(例えば、室温で固体である物)又は抗接着化合物ではない。
【0017】
一実施形態において、本発明の粒子は、約80w/w%のアルギネートオリゴマー、約15w/w%の抗接着化合物、及び約5w/w%のリン脂質を含有し、更なる賦形剤を本質的に含有しない。
【0018】
誤解を避けるため、本発明の本態様において、各成分の個々の量のパーセンテージでの合計は、100%となる。製造に際して、本発明の粒子は、アルギネートオリゴマー、リン脂質、抗接着化合物及び/又は更なる賦形剤の分子と密に会合した、溶媒分子、例えば、水分子を保持している場合もある。本発明の目的において、このように会合した残留溶媒は、w/w%の計算において比例して含まれているため、本発明の粒子の成分の相対量に影響はない。
【0019】
「w/w%」(すなわち、「重量/重量パーセント」)は、対象となっている化合物から成る固体組成物の割合を示す、一般的によく使われる用語である。例えば、1w/w%は、固体組成物100グラムにつき化合物1グラムに等しく、2w/w%は、固体組成物100グラムにつき化合物2グラムに等しい。また、1w/w%は、固体組成物1キロにつき化合物10グラムにも等しい。
【0020】
本発明の粒子は、治療を受ける被験体の肺へのアルギネートオリゴマーの効果的な送達を可能にする。
【0021】
上述の如く、本発明の粒子の特定の特性は、吸入するために、すなわち、乾燥粉末吸入器(つまり、粉末の投与に好適な吸入装置)により被験体の肺に送達するために適正な、すなわち好適なサイズであることである。より具体的には、粒子は、空気力学的粒径が5μm未満、例えば、4.9、4.8、4.7、4.6、又は4.5μm以下である。別の表現では、粒子は、空気動力学的中央粒子径(MMAD)が5μm未満、例えば、4.9、4.8、4.7、4.6、又は4.5μm以下である。特に、粒子は、好都合なことに、均一な又は実質的に均一な粒径分布を有し、すなわち、実質的に均質又は単分散である。従って、粒子の空気動力学的粒径分布(APSD)は、比較的狭い。APSDは、以下に更に定義するように、微粒子質量(FPM)を基準にして定義し得る。粒子は、比較的低い空力的分散力で、容易に噴霧化できるのが好ましい。
【0022】
本発明の粒子は、好ましくは、吸入を許容する幾何学的粒径分布を有する、すなわち、実施例のプロトコルに従って測定した、つまり、濃度2g/lで三オレイン酸ソルビタン(SPAN85)を含有する酢酸エチル3ml中15mgの粒子を分散させた後、マルバーン・マスターサイザー・マイクロプラス(Malvern Mastersizer MicroPlus)粒径分布測定装置(マルバーン・インスツルメンツ社(Malvern Instruments)、英国)を用いて測定したd50が<5μmであり、d90が<10μmであり、好ましくは、d10が<1.5μmである。
【0023】
ある一定の実施形態において、本発明の粒子は、d50が<4μm又は<3又は<2.5μmであってもよい。他の実施形態において、本発明の粒子は、d50が約3μm又は略3μm、例えば、d50が2〜4、2.5〜4.0、2.5〜3.8、2.5〜3.5、2.8〜3.8、2.8〜3.5、又は2.8〜3.2μmであってもよい。
【0024】
他の実施形態において、本発明の粒子は、d90が<8μm又は<7又は<6μmであってもよい。
【0025】
他の実施形態において、本発明の粒子は、d10が<2μm又は<1又は<0.5μmであってもよい。
【0026】
ある一定の実施形態において、粒子は、単一のdパラメータ(例えば、d50が<5μmまたはd50が<3μm)のみを用いて説明する場合もあるが、d10、d50及び/又はd90のあらゆる組合せが考えられる。別の実施形態において、本発明の粒子は、d50が3μm以下であってもよい。本発明の粒子は、実施例のプロトコルに従って測定した、つまり、粒子送達手段としての高抵抗(60L)Plastiape単回用量装置及び次世代インパクター(NGI)を用いて定量したFPM(粒径分布<4.46μm)が、好ましくは、粒子40mgにつき約10mgを超える、例えば、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20mgである。これは、パーセントFPM<4.46μmが約25%を超える、例えば、28%、30%、33%、35%、38%、40%、43%、45%、48%又は50%として表し得る。
【0027】
本発明の粒子は、好ましくは、実施例のプロトコルに従って測定した、つまり、粒子送達手段としての高抵抗(60L)Plastiape単回用量装置及び次世代インパクター(NGI)を用いて定量した放出用量が約65%を超える、例えば、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79又は80%である。
【0028】
本発明の粒子は、好ましくは、室温で1時間以上0.1ml以上の生理食塩水に粒子4mgを暴露することにより、アルギネートオリゴマーの約90%以上、例えば、91、92、93、94、95、96、97、98又は99%以上の放出を呈するものである。
【0029】
上述の如く、アルギネートは、一般的には、平均分子質量が35,000ダルトン以上、すなわち、モノマー残基が175前後から190前後(一般的には、それよりかなり大きい)のポリマーとして存在し、本発明に係るアルギネートオリゴマーは、アルギネートポリマー(一般に、天然由来のアルギネート)の分画(すなわち、サイズ縮小)により得られる物質と定義し得る。アルギネートオリゴマーは、平均分子量が35,000ダルトン未満(すなわち、モノマー残基が190前後未満又は175前後未満)のアルギネート、特に、平均分子量が30,000ダルトン未満(すなわち、モノマー残基が175前後未満又は150前後未満)、より具体的には、平均分子量が25,000又は20,000ダルトン未満(すなわち、モノマー残基が135前後未満若しくは125前後未満、又はモノマー残基が110前後未満若しくは100前後未満)のアルギネートと考えられる。
【0030】
また、オリゴマーは、通常、2個以上の単位又は残基を有し、本発明に係る用途に使用するアルギネートオリゴマーは、一般的には、2〜100のモノマー残基、より一般的には、3、4、5又は6〜100のモノマー残基を含有し、2、3、4、5若しくは6〜75、2、3、4、5若しくは6〜50、2、3、4、5若しくは6〜40、2、3、4、5若しくは6〜35又は2、3、4、5若しくは6〜30の残基を含有していてもよい。従って、本発明に係る用途に使用するアルギネートオリゴマーは、一般的には、平均分子量が350、550、700、900若しくは1000〜20,000ダルトン、350、550、700、900若しくは1000〜15,000ダルトン、350、550、700、900若しくは1000〜10,000ダルトン、350、550、700、900若しくは1000〜8000ダルトン、350、550、700、900若しくは1000〜7000ダルトン、又は350、550、700、900若しくは1000〜6,000ダルトンである。
【0031】
また、前記アルギネートオリゴマーは、重合度(DP)又は数平均重合度(DPn)が、2〜100、好ましくは2〜75、好ましくは2〜50、より好ましくは2〜40、2〜35、2〜30、2〜28、2〜25、2〜22、2〜20、2〜18、2〜17、2〜15又は2〜12であってもよい。
【0032】
他の代表的な範囲(残基の数、DP又はDPnを問わず)としては、3、4、5、6、7、8、9、10又は11のいずれか1つ〜50、45、40、39、38、37、36、35、34、33、32、31、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13又は12のいずれか1つが挙げられる。
【0033】
他の代表的な範囲(残基の数、DP又はDPnを問わず)としては、8、9、10、11、12、13、14又は15のいずれか1つ〜50、45、40、39、38、37、36、35、34、33、32、31、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17又は16のいずれか1つが挙げられる。
【0034】
他の代表的な範囲(残基の数、DP又はDPnを問わず)としては、11、12、13、14、15、16、17又は18のいずれか1つ〜50、45、40、39、38、37、36、35、34、33、32、31、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20又は19のいずれか1つが挙げられる。
【0035】
アルギネートオリゴマーは、上述の如く、グルロネート若しくはグルロン酸(G)及び/又はマンヌロネート若しくはマンヌロン酸(M)残基或いは単位を含有する(contain)(又は含む(comprise))。本発明に係るアルギネートオリゴマーは、好ましくは、ウロネート/ウロン酸残基のみから又は実質的にそれらのみから成り(すなわち、本質的にそれらから成り)、より具体的には、G残基及び/若しくはM残基のみから又は実質的にそれらのみから成る。或いはまた、本発明において使用するアルギネートオリゴマーは、モノマー残基の80%以上、より具体的には、85、90、95又は99%以上が、ウロネート/ウロン酸残基又は、より具体的には、G残基及び/若しくはM残基であってもよい。つまり、好ましくは、アルギネートオリゴマーは、他の残基又は単位(例えば、他の糖残基又は、より具体的には、他のウロン酸/ウロネート残基)を含まない。
【0036】
アルギネートオリゴマーは、好ましくは直鎖オリゴマーである。
【0037】
より具体的には、好ましい一実施形態において、アルギネートオリゴマーのモノマー残基の30%以上がG残基(すなわち、グルロネート又はグルロン酸)である。つまり、アルギネートオリゴマーは、30%以上のグルロネート(又はグルロン酸)残基を含有する。従って、特定の実施形態は、30%〜70%のG(グルロネート)残基又は70%〜100%のG(グルロネート)残基を有する(例えば、含有する)アルギネートオリゴマーを含む。従って、本発明に係る用途に使用する代表的なアルギネートオリゴマーは、70%以上のG残基を含有していてもよい(すなわち、アルギネートオリゴマーのモノマー残基の70%以上がG残基である)。
【0038】
好ましくはモノマー残基の50%以上又は60%以上、より具体的には、70%以上又は75%以上、更により具体的には、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99%以上が、グルロネートである。一実施形態において、アルギネートオリゴマーは、オリゴグルロネート(すなわち、Gのホモオリゴマー又は100%G)であってもよい。
【0039】
更に好ましい一実施形態において、本発明の前記アルギネートは、G残基の大部分がいわゆるGブロック中に存在する一次構造を有する。好ましくはG残基の50%以上、より好ましくは70又は75%以上、最も好ましくは80、85、90、92又は95%以上が、Gブロック中に存在する。Gブロックは、2個以上のG残基、好ましくは3個以上の連続したG残基、より好ましくは4又は5個以上の連続したG残基、最も好ましくは7個以上の連続したG残基の連続した配列である。
【0040】
特に、G残基の90%以上は、別のG残基と1−4結合している。より具体的には、アルギネートのG残基の95%以上、より好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上が、別のG残基と1−4結合している。
【0041】
本発明において使用するアルギネートオリゴマーは、好ましくは3〜35mer、より好ましくは3〜28mer、特に、4〜25mer、例えば、5〜20mer、とりわけ、6〜22mer、特に、8〜20mer、とりわけ、10〜15merであり、例えば、350〜6400ダルトン又は350〜6000ダルトン、好ましくは550〜5500ダルトン、好ましくは750〜5000ダルトン、特に750〜4500ダルトン又は2000〜3000ダルトン又は900〜3500ダルトンの範囲の分子量を有する。他の代表的なアルギネートオリゴマーとしては、上述の如く、5、6、7、8、9、10、11、12又は13個〜50、45、40、35、28、25、22又は20個の残基を有するオリゴマーが挙げられる。
【0042】
アルギネートオリゴマーは単一化合物であってもよいし、又は、例えば、ある範囲の重合度を有する化合物の混合物であってもよい。上述の如く、アルギネートオリゴマーにおけるモノマー残基は、同一であっても異なっていてもよく、また、その全てが荷電基を保有している必要はないが、その大部分(例えば、60%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上)が荷電基を保有することが好ましい。荷電基の実質的な大部分、例えば、80%以上、より好ましくは90%以上が、同じ極性を有することが好ましい。アルギネートオリゴマーにおいて、ヒドロキシル基の荷電基に対する比率は、好ましくは少なくとも2:1、より具体的には少なくとも3:1である。
【0043】
本発明のアルギネートオリゴマーは、重合度(DP)又は数平均重合度(DPn)が、3〜28、4〜25、6〜22、8〜20若しくは10〜15、又は5〜18若しくは7〜15若しくは8〜12、特に10であってもよい。
【0044】
本発明のアルギネートオリゴマーは、重合度(DP)又は数平均重合度(DPn)が、3〜24、4〜23、5〜22、6〜21、7〜20、8〜19、9〜18、10〜17、11〜16、12〜15又は13〜14(例えば、13又は14)であってもよい。
【0045】
本発明のアルギネートオリゴマーは、重合度(DP)又は数平均重合度(DPn)が、4〜25、5〜24、6〜23、7〜22、8〜21、9〜20、10〜19、11〜18、12〜17、13〜16、14〜15(例えば、14又は15)であってもよい。
【0046】
本発明のアルギネートオリゴマーは、重合度(DP)又は数平均重合度(DPn)が、5〜26、6〜25、7〜24、8〜23、9〜22、10〜21、11〜20、12〜19、13〜18、14〜17又は15〜16(例えば、15又は16)であってもよい。
【0047】
本発明のアルギネートオリゴマーは、重合度(DP)又は数平均重合度(DPn)が、4〜50、4〜40、4〜35、4〜30、4〜28、4〜26、4〜22、4〜20、4〜18、4〜16又は4〜14であってもよい。
【0048】
本発明のアルギネートオリゴマーは、重合度(DP)又は数平均重合度(DPn)が、5〜50、5〜40、5〜25、5〜22、5〜20、5〜18、5〜23、5〜20、5〜18、5〜16又は5〜14であってもよい。
【0049】
本発明のアルギネートオリゴマーは、重合度(DP)又は数平均重合度(DPn)が、6〜50、6〜40、6〜35、6〜30、6〜28、6〜26、6〜24、6〜20、6〜19、6〜18、6〜16又は6〜14であってもよい。
【0050】
本発明のアルギネートオリゴマーは、重合度(DP)又は数平均重合度(DPn)が、8〜50、8〜40、8〜35、8〜30、8〜28、8〜25、8〜22、8〜20、8〜18、8〜16又は8〜14であってもよい。
【0051】
本発明のアルギネートオリゴマーは、重合度(DP)又は数平均重合度(DPn)が、9〜50、9〜40、9〜35、9〜30、9〜28、9〜25、9〜22、9〜20、9〜18、9〜16又は9〜14であってもよい。
【0052】
本発明のアルギネートオリゴマーは、重合度(DP)又は数平均重合度(DPn)が、10〜50、10〜40、10〜35、10〜30、10〜28、10〜25、10〜22、10〜20、10〜18、10〜16又は10〜14であってもよい。
【0053】
本発明のアルギネートオリゴマーは、重合度(DP)又は数平均重合度(DPn)が、11〜50、11〜40、11〜35、11〜30、11〜28、11〜25、11〜22、11〜20、11〜18、11〜16又は11〜14であってもよい。
【0054】
本発明のアルギネートオリゴマーは、重合度(DP)又は数平均重合度(DPn)が、12〜50、12〜40、12〜35、12〜30、12〜28、12〜25、12〜22、12〜20、12〜18、12〜16又は12〜14であってもよい。
【0055】
本発明のアルギネートオリゴマーは、重合度(DP)又は数平均重合度(DPn)が、13〜50、13〜40、13〜35、13〜30、13〜28、13〜25、13〜22、13〜20、13〜18、13〜16又は13〜14であってもよい。
【0056】
本発明のアルギネートオリゴマーは、重合度(DP)又は数平均重合度(DPn)が、14〜50、14〜40、14〜35、14〜30、14〜28、14〜25、14〜22、14〜20、14〜18、14〜16又は14〜15であってもよい。
【0057】
本発明のアルギネートオリゴマーは、重合度(DP)又は数平均重合度(DPn)が、15〜50、15〜40、15〜35、15〜30、15〜28、15〜25、15〜22、15〜20、15〜18又は15〜16であってもよい。
【0058】
本発明のアルギネートオリゴマーは、重合度(DP)又は数平均重合度(DPn)が、18〜50、18〜40、18〜35、18〜30、18〜28、18〜25、18〜22又は18〜20であってもよい。
【0059】
好ましくは、本発明のアルギネートオリゴマーは、本明細書において開示している範囲外の重合度を有するアルギネートオリゴマーを実質的に含まず、好ましくは本質的に含まない。これは、本発明のアルギネートオリゴマーの分子量分布を用いて表すこともでき、例えば、適合範囲外のDPを有する、本発明において使用されるアルギネートオリゴマーの各モルの割合等により表すこともできる。分子量分布は、好ましくは10モル%以下、好ましくは9、8、7、6、5、4、3、2又は1モル%以下が、DPnの適切な上限より3、2又は1高いDPを有するものである。同様に、10モル%以下、好ましくは9、8、7、6、5、4、3、2、又は1モル%以下が、DPnの適切な下限より3、2又は1低い数値未満のDPを有するのが好ましい。
【0060】
好適なアルギネートオリゴマーは、国際公開第2007/039754号、国際公開第2007/039760号、国際公開第2008/125828号及び国際公開第2009/068841号に記載されており、それらの開示の全体を参照により本明細書に明示的に援用する。
【0061】
代表的な好適アルギネートオリゴマーは、DPnが5〜30の範囲内であり、グルロネート率(FG)が0.80以上、マンヌロネート率(FM)が0.20以下、且つ95モル%以上のDPが25以下である。
【0062】
更に好適なアルギネートオリゴマーは、数平均重合度が、7〜15(好ましくは8〜12)の範囲内であり、グルロネート率(FG)が0.85以上(好ましくは0.90以上)、マンヌロネート率(FM)が0.15以下(好ましくは0.10以下)、且つ95モル%以上の重合度が17未満(好ましくは14未満)である。
【0063】
更に好適なアルギネートオリゴマーは、数平均重合度が5〜18(とりわけ7〜15)の範囲内であり、グルロネート率(FG)が0.80以上(好ましくは0.85以上、とりわけ0.92以上)、マンヌロネート率(FM)が0.20以下(好ましくは0.15以下、とりわけ0.08以下)、且つ95モル%以上の重合度が20未満(好ましくは17未満)である。
【0064】
更に好適なアルギネートオリゴマーは、数平均重合度が5〜18の範囲内であり、グルロネート率(FG)が0.92以上、マンヌロネート率(FM)が0.08以下、且つ95モル%以上の重合度が20未満である。
【0065】
更に好適なアルギネートオリゴマーは、数平均重合度が5〜18の範囲内(好ましくは7〜15、より好ましくは8〜12、とりわけ約10)であり、グルロネート率(FG)が0.80以上(好ましくは0.85以上、より好ましくは0.90以上、とりわけ0.92以上、特に0.95以上)、マンヌロネート率(FM)が0.20以下(好ましくは0.15以下、より好ましくは0.10以下、とりわけ0.08以下、特に0.05以下)、且つ95モル%以上の重合度が20未満(好ましくは17未満、より好ましくは14未満)である。
【0066】
更に好適なアルギネートオリゴマーは、数平均重合度が7〜15(好ましくは8〜12)の範囲内であり、グルロネート率(FG)が0.92以上(好ましくは0.95以上)、マンヌロネート率(FM)が0.08以下(好ましくは0.05以下)、且つ95モル%以上の重合度が17未満(好ましくは14未満)である。
【0067】
更に好適なアルギネートオリゴマーは、数平均重合度が5〜18の範囲内であり、グルロネート率(FG)が0.80以上、マンヌロネート率(FM)が0.20以下、且つ95モル%以上の重合度が20未満である。
【0068】
更に好適なアルギネートオリゴマーは、数平均重合度が7〜15の範囲内であり、グルロネート率(FG)が0.85以上、マンヌロネート率(FM)が0.15以下、且つ95モル%以上の重合度が17未満である。
【0069】
更に好適なアルギネートオリゴマーは、数平均重合度が7〜15の範囲内であり、グルロネート率(FG)が0.92以上、マンヌロネート率(FM)が0.08以下、且つ95モル%以上の重合度が17未満である。
【0070】
更に好適なアルギネートオリゴマーは、数平均重合度が5〜20の範囲内であり、グルロネート率(FG)が0.85以上、且つマンヌロネート率(FM)が0.15以下である。
【0071】
更に好適なアルギネートオリゴマーは、数平均重合度が5〜20の範囲内であり、グルロネート率(FG)が0.9〜0.95、且つマンヌロネート率(FM)が0.05〜0.1であり、これは、90〜95%のG残基を有し平均分子量が2600Daであるアルギネートオリゴマーと表現し得る。更に好適なアルギネートオリゴマーは、数平均重合度が約13(例えば、12、13又は14)、グルロネート率(FG)が約0.80、0.85、0.87、0.88、0.90又は0.93以上(例えば、0.92、0.93又は0.94)、且つ対応するマンヌロネート率(FM)が約0.20、0.15、0.13、0.12、0.10又は0.07以下(例えば、0.08、0.07又は0.06)である。
【0072】
更に好適なアルギネートオリゴマーは、数平均重合度が約21(例えば、20、21又は22)、グルロネート率(FG)が約0.80以上(例えば、0.85、0.87、0.88、0.90、0.92、0.94又は0.95)、且つ対応するマンヌロネート率(FM)が約0.20以下(例えば、0.15、0.13、0.12、0.10、0.08、0.06、0.05)である。
【0073】
更に好適なアルギネートオリゴマーは、数平均重合度が約6(例えば、5、6又は7)、グルロネート率(FG)が約0.80以上(例えば、0.85、0.87、0.88、0.90、0.92、0.94又は0.95)、且つ対応するマンヌロネート率(FM)が約0.20以下(例えば、0.15、0.13、0.12、0.10、0.08、0.06、0.05)である。
【0074】
従って、本発明において有利な特定クラスのアルギネートオリゴマーは、いわゆる「高G」又は「Gブロック」オリゴマー、すなわち、G残基又はGブロックの含有量の多い(例えば、モノマー残基の70%以上がGであり、好ましくはGブロックに配列されている)オリゴマーと定義されるアルギネートオリゴマーであることが分かるであろう。しかしながら、特に、更に後述する「高M」又は「Mブロック」オリゴマー又はMGブロックオリゴマーを含む、他のタイプのアルギネートオリゴマーも使用可能である。従って、これは、単一モノマータイプの割合が高いアルギネートオリゴマーであり、このタイプの当該モノマーは主にそのモノマータイプの連続した配列中に存在しており、特に好ましいオリゴマー、例えば、オリゴマー中のモノマー残基の70%以上が別のG残基に1-4結合したG残基であるか、又はオリゴマーのモノマー残基のより好ましくは75%以上、最も好ましくは80、85、90、92、93、94、95、96、97、98、99%以上が別のG残基に1-4結合したG残基であるオリゴマーを示す。この2個のG残基の1-4結合はまた、隣接するグルロン単位と結合したグルロン単位と表すこともできる。
【0075】
更なる実施形態において、アルギネートオリゴマーのモノマー残基の50%以上又はより具体的には50%超が、M残基(すなわち、マンヌロネート又はマンヌロン酸)であってもよい。つまり、アルギネートオリゴマーは、50%以上或いはまた50%を超えるマンヌロネート(若しくはマンヌロン酸)残基を含有する。従って、具体的な実施形態は、50〜70%のM(マンヌロネート)残基又は例えば、70〜100%のM(マンヌロネート)残基を有する(例えば、含有する)アルギネートオリゴマーを含む。更に具体的な実施形態は、71〜85%のM残基又は85〜100%のM残基を含有するオリゴマーも含む。従って、本発明の本実施形態において使用する代表的なアルギネートオリゴマーは、70%を超えるM残基を含有する(すなわち、アルギネートオリゴマーの70%を超えるモノマー残基がM残基である)。
【0076】
他の実施形態において、50%以上又は60%以上、より具体的には、70%以上又は75%以上、更により具体的には、80、85、90、95又は99%以上のモノマー残基が、マンヌロネートである。一実施形態において、アルギネートオリゴマーは、オリゴマンヌロネート(すなわち、Mのホモオリゴマー又は100%M)であってもよい。
【0077】
更なる実施形態において、本発明の上記アルギネートは、M残基の大部分が、いわゆるMブロック中に存在する一次構造を有する。この実施形態において、M残基の好ましくは50%以上、より好ましくは70又は75%以上、最も好ましくは80、85、90又は95%以上が、Mブロック中に存在する。Mブロックは、2個以上のM残基、好ましくは3個以上連続したM残基、より好ましくは4個又は5個以上連続したM残基、最も好ましくは7個以上連続したM残基の連続した配列である。
【0078】
特に、M残基の90%以上は、別のM残基と1−4結合している。より具体的には、アルギネートのM残基の95%以上、より好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上が、別のM残基と1−4結合している。
【0079】
他の好ましいオリゴマーは、オリゴマー中のモノマー残基の70%以上が、別のM残基と1−4結合しているM残基であるか、オリゴマーのモノマー残基のより好ましくは75%以上、最も好ましくは80、85、90、92、93、94、95、96、97、98、99%以上が別のM残基に1−4結合しているM残基であるアルギネートオリゴマーである。この2個のM残基の1−4結合はまた、隣接するマンヌロン単位と結合したマンヌロン単位と表すこともできる。
【0080】
更なる実施形態において、本発明のアルギネートオリゴマーは、交互に配置されたM残基及びG残基の配列を含む。3個以上、好ましくは4個以上の交互に配置されたM残基及びG残基の配列は、MGブロックとなる。好ましくは、本発明のアルギネートオリゴマーは、MGブロックを含む。より具体的に説明すると、MGブロックとは、G残基およびM残基から成る3個以上連続した 残基の配列であり、その連続した配列における各非末端(内部)G残基は、M残基と1−4及び4−1結合しており、連続した配列における各非末端(内部)M残基は、G残基と1−4及び4−1結合している。好ましくは、MGブロックは、5個以上又は6個以上の連続した残基、より好ましくは7個以上又は8個以上の連続した残基である。
【0081】
更なる実施形態において、アルギネートオリゴマー中の少数ウロネート(すなわち、マンヌロネート又はグルロネート)は、主にMGブロック中に見られる。この実施形態において、MGブロックアルギネートオリゴマー中の少数 ウロネートモノマーの好ましくは50%以上、より好ましくは70又は75%以上、最も好ましくは80、85、90又は95%以上が、MGブロック中に存在する。別の実施形態においては、オリゴマー中のG残基及びM残基の50%以上、60以上%、70%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、99%以上、例えば、100%が、MGブロック中に配置されるようアルギネートオリゴマーを調整する。
【0082】
本発明は、その最も広い意味においては、オリゴマーのモノマー残基の1%以上100%未満が、G残基(すなわち、グルロネート又はグルロン酸)である実施形態にまで及ぶが、より具体的には、下記に更に定義するように、モノマー残基の30%以上がG残基である。従って、その最も広い意味においては、アルギネートオリゴマーを含有するMGブロックは、1%以上100%未満のグルロネート(又はグルロン酸)残基を含有していてもよいが、一般に、アルギネートオリゴマーを含有するMGブロックは、30%以上(或いは35、40若しくは45%以上又は50%のG)100%未満のGを含有する。従って、具体的な実施形態は、1〜30%のG(グルロネート)残基、30〜70%のG(グルロネート)残基、又は70〜99%のG(グルロネート)残基を有する(例えば、含有する)アルギネートオリゴマーを含有するMGブロックを含む。従って、本発明において使用するアルギネートオリゴマーを含有する代表的なMGブロックは、30%超70%未満のG残基を含有していてもよい(すなわち、MGブロックアルギネートオリゴマーのモノマー残基の30%超70%未満がG残基である)。
【0083】
アルギネートオリゴマーを含有するMGブロックのモノマー残基の、好ましくは30%超、より具体的には35%超又は40%超、更により具体的には45、50、55、60又は65%超(但し、いずれの場合も70%未満)がグルロネートである。或いは、アルギネートオリゴマーを含有するMGブロックのモノマー残基の70%未満、より好ましくは65%未満又は60%未満、更により好ましくは55、50、45、40又は35%未満(但し、いずれの場合も30%超)がグルロネートである。これらの値の任意の組合せから成るいかなる範囲を選択してもよい。よって、例えば、アルギネートオリゴマーを含有するMGブロックは、例えば、35%〜65%、40%〜60%又は45%〜55%のG残基を有し得る。
【0084】
別の実施形態において、アルギネートオリゴマーを含有するMGブロックは、略等量のG残基とM残基(例えば、65%のG/35%のM〜35%のG/65%のM、例えば、60%のG/40%のM〜40%のG/60%のM;55%のG/45%のM〜45%のG/55%のM;53%のG/47%のM 〜47%のG/53%のM;51%のG/49%のM〜49%のG/51%のM;例えば、約50%のGと約50%のMといった比率)を有していてもよく、これらの残基は、大部分、好ましくは全体的に又は可能な限り全て、交互MGパターンに配置されている(例えば、M残基及びG残基の50%以上又は60、70、80、85、90若しくは95%以上又は100%が、交互MG配列である)。
【0085】
ある一定の実施形態において、本発明のオリゴマーの末端ウロン酸残基は、二重結合、特に、C4原子とC5原子との間に位置する二重結合を有さない。かかるオリゴマーは、飽和末端ウロン酸残基を有すると言ってもよい。当業者は、過度の負担なく飽和末端ウロン酸残基を有するオリゴマーを調製し得るであろう。これは、かかるオリゴマーを得る製造技法を用いることにより、又は不飽和末端ウロン酸残基を有するオリゴマーを得るプロセスにより製造されたオリゴマーを変換する(飽和させる)ことにより行ってもよい。
【0086】
アルギネートオリゴマーは、通常、電荷を有するため、アルギネートオリゴマーに対する対イオンは、任意の生理学的に許容可能なイオン、特に、荷電薬剤物質に一般的に使用されるイオン、例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、塩化物、メシレート、メグルミン等のイオンであってもよい。アルギネートのゲル化を促進するイオン、例えば、2族の金属イオンも使用してもよい。
【0087】
アルギネートオリゴマーは、適切な数のグルロネート残基及びマンヌロネー 残基の重合により生成される合成物質であってもよいが、本発明において使用するアルギネートオリゴマーは、上述したもののような天然源、すなわち、天然アルギネート原料物質から、好都合に入手、製造又は誘導してもよい。
【0088】
本発明により使用可能なアルギネートオリゴマーを製造するための多糖からオリゴ糖への切断は、酵素消化や酸加水分解等の従来の多糖溶解技法を用いて行ってもよい。有利な一実施形態においては、酸加水分解を用いて、本発明のアルギネートオリゴマーを調製する。他の実施形態においては、酵素消化を更なる1つ又は複数の処理工程と共に用いて、オリゴマー中の末端ウロン酸を飽和させる。
【0089】
オリゴマーは、その後、イオン交換樹脂を用いたクロマトグラフィーにより又は分画沈殿(fractionated precipitation)若しくは可溶化若しくは濾過により多糖分解生成物から分離してもよい。米国特許第6,121,441号明細書及び国際公開第2008/125828号(これらの全体を参照により本明細書に明示的に援用する)には、本発明において使用するアルギネートオリゴマーを調製するのに好適なプロセスが記載されている。更なる情報および考察は、例えば、「Handbooks of Hydrocolloids」(Ed. Phillips and Williams、CRC、ボカラトン(Boca Raton)、フロリダ、米国、2000)に見られる(このテキストは、その全体を参照により本明細書に明示的に援用する)。
【0090】
アルギネートオリゴマーはまた、化学的に修飾してもよく、これに限定されるものではないが、荷電基(カルボキシル化又はカルボキシメチル化グリカン等)を付加する修飾や、柔軟性を変化させるよう(例えば、過ヨウ素酸酸化により)修飾したアルギネートオリゴマーが挙げられる。
【0091】
本発明に係る使用に好適なアルギネートオリゴマー(例えば、オリゴグルロン酸)は、ラミナリア・ハイパーボラ(Laminaria hyperbora)及びレッソニア・ニグレッセンス(Lessonia nigrescens)(但し、これらに限定されるものではない)由来のアルギン酸の酸加水分解、中性pHでの溶解、pHを3.4に低下させアルギネートオリゴマー(オリゴグルロン酸)を析出させる鉱酸の添加、弱酸での洗浄、中性pHでの再懸濁、並びに凍結乾燥により、好都合に製造し得る。
【0092】
本発明のアルギネートオリゴマーを製造するためのアルギネートは、好適な細菌源、例えば、シュードモナス・エルギノーサ又はアゾトバクター・ビネランジー等から直接得ることもできる。
【0093】
G残基の大部分が単一残基としてではなくGブロック中に配置される一次構造を有するアルギネートオリゴマーを必要とする実施の形態においては、藻類源が、これらの生物内で産生されるアルギネートがこれらの構造を有する傾向にあることから、最も好適であることが期待される。細菌源は、異なる構造のアルギネートオリゴマーを得るのにより好適である場合もある。
【0094】
シュードモナス・フルオレッセンス及びアゾトバクター・ビネランジーにおけるアルギネート生合成に関与する分子器官は、クローン化され、特性が明らかにされており(国際公開第94/09124号;Ertesvag, H. ら, Metabolic Engineering, 1999, Vol 1, 262-269;国際公開第2004/011628号;Gimmestad, M.ら(上記);Remminghorst and Rehm, Biotechnology Letters, 2006, Vol 28, 1701-1712;Gimmestad, M.ら, Journal of Bacteriology, 2006, Vol 188(15), 5551-5560)、改変された一次構造を有するアルギネートは、これらの系を操作することにより容易に得ることができる。
【0095】
アルギネート(例えば、藻類原料)のG含量は、例えば、アゾトバクター・ビネランジー由来のマンヌロランC-5エピメラーゼ又は他のエピメラーゼ酵素を用いて、エピマー化により増加させることができる。従って、例えば、インビトロでのエピマー化は、シュードモナス又はアゾトバクター由来の単離エピメラーゼ、例えばシュードモナス・フルオレッセンス若しくはアゾトバクター・ビネランジー由来のAlgG又はアゾトバクター・ビネランジー由来のAlgE酵素(AlgE1〜AlgE7)を用いて行ってもよい。アルギネートを産生する能力を有する他の生物、特に藻類由来のエピメラーゼの使用も、具体的に検討されている。アゾトバクター・ビネランジーAlgEエピメラーゼを用いた低Gアルギネートのインビトロでのエピマー化が、Ertesvagら(上記)及びStrugalaら(Gums and Stabilisers for the Food Industry, 2004, 12, The Royal Society of Chemistry, 84-94)に詳細に説明されている。
【0096】
アルギネート又はアルギネートオリゴマーを含有するGブロックを得るためには、AlgE4以外の1つ又は複数のアゾトバクター・ビネランジーAlgEエピメラーゼを用いるエピマー化が、これらの酵素がGブロック構造を産生する能力を有するため、好ましい。一方、AlgE4エピメラーゼは、優先的に個々のM残基をエピマー化して、Gブロックを産生するのではなく、M残基と結合した単一のG残基を産生するようであることが分かっているため、この酵素を使用して、M/G配列の交互のストレッチ又は単一のG残基を含有する一次構造を有するアルギネート又はアルギネートオリゴマーを作り出すことができる。特定の一次構造は、これら酵素の種々の組合せを用いて得ることができる。
【0097】
これらの酵素の突然変異型又は他の生物由来の相同体も、有用であるとして具体的に検討されている。国際公開第94/09124号には、例えば、エピメラーゼの種々のドメイン又はモジュールをコードするDNA配列が、シャッフルされているか又は欠失しており、且つ組み換えられているエピメラーゼ配列によりコードされている組換え又は修飾マンヌロランC−5エピメラーゼ酵素(AlgE酵素)が記載されている。また、例えば、AlgG遺伝子又はAlgE遺伝子の部位特異的突然変異誘発又はランダム突然変異誘発により得られる、天然由来のエピメラーゼ酵素(AlgG又はAlgE)の突然変異体を使用してもよい。
【0098】
別のアプローチは、それらの突然変異体が後のアルギネートオリゴマー産生に必要とされる構造のアルギネート、又は更には必要とされる構造及びサイズ(若しくは分子量)のアルギネートオリゴマーを産生するように、エピメラーゼ遺伝子の幾つか又は全てにおいて突然変異したシュードモナス属生物及びアゾトバクター属生物を生成することである。AlgG遺伝子が突然変異した多数のシュードモナス・フルオレッセンス生物の作製については、国際公開第2004/011628号及びGimmestad, M.ら(2003(上記))に詳細に説明されている。AlgE遺伝子が突然変異した多数のアゾトバクター・ビネランジー生物の作製については、Gimmestad, M.ら(2006(上記))に開示されている。
【0099】
更なるアプローチは、アゾトバクター属生物又はシュードモナス属生物由来の内在性エピメラーゼ遺伝子を欠失又は不活性化させ、その後、突然変異していてもしていなくてもよい(すなわち、野生型であっても修飾されていてもよい)1つ又は複数の外来性エピメラーゼ遺伝子を導入することであり、その発現は、例えば、誘導性の又は他の「制御可能なプロモーター」の使用により制御してもよい。遺伝子の適切な組合せを選択することにより、所定の一次構造を有するアルギネートを生成することができる。
【0100】
また更なるアプローチは、シュードモナス及び/又はアゾトバクターのアルギネート生合成機構のいくつか又は全てを、非アルギネート産生生物(例えば、大腸菌)内に導入すること、並びにこれらの遺伝子組換え生物由来のアルギネートの産生を誘導することであろう。
【0101】
これらの培養に基づくシステムを使用する場合、アルギネート又はアルギネートオリゴマー生成物の一次構造は、培養条件により影響され得る。特定の生物により産生されたアルギネートの一次構造を操作するために、温度、モル浸透圧濃度、栄養水準/栄養源及び大気パラメータ等の培養パラメータを調整することは、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0102】
「G残基/G」及び「M残基/M」、或いはグルロン酸若しくはマンヌロン酸又はグルロネート若しくはマンヌロネートとは、グルロン酸/グルロネート及びマンヌロン酸/マンヌロネート(具体的には、αLグルロン酸/グルロネート及びβDマンヌロン酸/マンヌロネート)と同様の意味であると解釈されるものとし、また更にそれらの誘導体も含み、これら誘導体は、1つ又は複数の利用可能な側鎖又は基が、呼吸器感染症又は呼吸器疾患の治療又は予防能力が、非修飾オリゴマーより実質的に低くなることなく修飾されており、呼吸器感染症又は呼吸器疾患としては、とりわけ、微生物感染症(特にバイオフィルム感染症)及び/若しくは異常粘液を伴う疾患又は病状、例えば、欠陥のあるCFTRイオンチャネル機能に関連した若しくはそれを特徴とする病状、COPD、COAD、COAP、気管支炎、嚢胞性線維症(CF)、CFと関連した医学的疾患若しくは病状、肺気腫、肺がん、喘息又は肺炎が挙げられる。一般的な糖修飾基としては、アセチル基、硫酸基、アミノ基、デオキシ基、アルコール基、アルデヒド基、ケトン基、エステル基及びアンヒドロ基が挙げられる。アルギネートオリゴマーはまた、化学修飾することにより、荷電基(例えば、カルボキシル化又はカルボキシメチル化グリカン)を付加してもよく、また柔軟性を(例えば、過ヨウ素酸酸化により)変化させてもよい。当業者は、オリゴ糖の単糖サブユニットに対して行うことができる更なる化学修飾について認識しており、これらを本発明のアルギネートオリゴマーに適用することができる。
【0103】
本発明は、単一アルギネートオリゴマー又は(多様/多数の)異なるアルギネートオリゴマーの混合物の使用を包含する。従って、例えば、異なるアルギネートオリゴマー(例えば、2つ以上)を組合せて使用してもよい。
【0104】
本発明において使用するリン脂質は、純粋な形では、室温(約20℃)及び標準大気圧(1atm;略101325Pa)で固体であるものである。代表的な例としては、これらに限定されるものではないが、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、及びそれらの組合せ、例えば、ホスファチジルコリン(飽和および不飽和)、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ジオレオイルホスファチジルコリン、ジミリストイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC;1,2−ジパルミトイル−snグリセロ−3−ホスホコリン)、ジステアロイルホスファチジルコリン、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DSPC)、ジアラキドイルホスファチジルコリン、ジベノイルホスファチジルコリン、ジトリコサノイルホスファチジルコリン、ジリグノセロイルファチジルコリン、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン、ピパルミトレオイルホスファチジルエタノールアミン、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン、ジミリストイルホスファチジルグリセロール、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール、ジパルミトルコイルホスファチジルグリセロール(dipalmitolcoylphosphatidylglycerol)及び水素化誘導体が挙げられる。DPPCおよびDSPCは、肺内に自然に見られるため、これらの化合物が好ましい。DPPCが、とりわけ好ましい。複数の異なるリン脂質を使用してもよい。
【0105】
用語「抗接着化合物」は、本明細書において、DPI製剤の分野におけるその通常の意味で使用され、すなわち、粒子間の接着を低減することにより粒子の凝集を防ぐ化合物である。しかしながら、本明細書に記載されているように、本発明の粒子の抗接着化合物がリン脂質でないことは容易に理解されるであろう。
【0106】
複数の異なる抗接着化合物を使用してもよい。この抗接着化合物は、任意の異性体の形、例えば、L−又はD−の形のアミノ酸、例えば、疎水性アミノ酸等であってもよい。アミノ酸は、本発明による治療を受ける被験体に対して良好な耐容性を示すであろう。代表的な例としては、これらに限定されるものではないが、ヒスチジン、アラニン、イソロイシン、アルギニン、ロイシン、アスパラギン、リジン、アスパラギン酸、メチオニン、システイン、フェニルアラニン、グルタミン酸、スレオニン、グルタミン、トリプトファン、グリシン、バリン、オルニチン、プロリン、セレノシステイン、セリン及びチロシンが挙げられ、例えば、グリシン、リジン、プロリン、アラニン、システイン、メチオニン、バリン、ロイシン、チロシン、イソロイシン、フェニルアラニン、トリプトファン等がある。好ましいアミノ酸は、ロイシン、イソロイシン、アラニン、バリン、フェニルアラニン、リジン及びグリシンであり、例えば、ロイシン、リジン及びグリシン、特に、グリシンである。アミノ酸を組み合わせて使用することもできる(例えば、グリシンとロイシン)。更に、疎水性および親水性(水中で優先的に分離)のアミノ酸を組み合わせ(但し、その組み合せは、全体としては疎水性である)、使用することもできる。
【0107】
疎水性は一般に、非極性溶媒と水との間でのアミノ酸の分離に関して定義される。疎水性アミノ酸は、非極性溶媒を好むそれら酸である。アミノ酸の相対疎水性は、グリシンの値が0.5である疎水性スケールで表すことができる。当該スケールでは、水を好むアミノ酸は、0.5未満の値を有し、非極性溶媒を好むものは、0.5を上回る値を有する。本明細書において、用語「疎水性アミノ酸」とは、疎水性スケールで0.5以上の値を有する、つまり、グリシンの値に少なくとも等しい非極性溶媒において分離する傾向にあるアミノ酸のことを言う。
【0108】
他の抗接着化合物としては、単糖および二糖が挙げられる。単糖又は二糖の一つ若しくは複数の単糖残基は、ピラノース若しくはフラノースの形及び/又は必要に応じてL−若しくはD−の形のトリオース、テトロース、ペントース、ヘキソース、ヘプトース、オクトース、ノノース若しくはデコース及び/又はそれらの糖誘導体であってもよい。ペントース糖/残基又はヘキソース糖/残基が好ましく、例えば、マンノース(例えば、D−マンノース)、ガラクトース(例えば、D−ガラクトース)、グルコース(例えば、D−グルコース)、フルクトース、フコース(例えば、L−フコース)、N−アセチルグルコサミン、N−アセチルガラクトサミン、ラムノース、ガラクトサミン、グルコサミン(例えば、D−グルコサミン)、ガラクツロン酸、グルクロン酸、N‐アセチルノイラミン酸、メチル-D-マンノピラノシド(マンノシド)、α−メチルグルコシド、ガラクトシド、リボース、キシロース、アラビノース、サッカラート、マンニトール、ソルビトール、イノシトール、グリセロール及びこれらモノマーの誘導体がある。二糖の例としては、アカルビオシン、アロラクトース、セロビオース、キトビオース、ガラクトース−α−1,3−ガラクトース、デンチオビオース(dentiobiose)、イソマルト、イソマルトース、イソマルツロース、コージビオース、ラクチトール、ラクトビオン酸、ラクトース、ラクツロース、ラミナリビオース、マルチトール、マルトース、マンノビオース、メリビオース、メリビウロース、ネオヘスペリドース、ニゲロース、ロビノース、ルチノース、サンブビオース、ソホロース、スクラルファート、スクラロース、スクロース、蔗糖酢酸イソ酪酸エステル、オクタアセチルスクロース、トレハロース、ツルラノース(truranose)、キシロビオース又はこれら二糖の誘導体がある。
【0109】
更なる賦形剤は、任意の薬学的に許容される化合物であってもよく、その化合物は、吸入用乾燥粉末、特に、肺に送達するための乾燥粉末に含有または製剤化されていてもよく、本明細書において定義しているアルギネートオリゴマー、リン脂質又は抗接着化合物ではない。多くのかかる化合物が、当技術分野において公知であり、好適な化合物を選択し的確な必要条件を満たすことは、当業者にとっては日常的なことであろう。例として、この更なる賦形剤は、デンプン、アカシアゴム、リン酸カルシウム、トラガント、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、プロピレングリコール、メチルセルロース、ヒドロキシ安息香酸メチル類、ヒドロキシ安息香酸プロピル類、タルク、ステアリン酸マグネシウム又はそれらの好適な混合物から選択してもよい。更に、湿潤剤、乳化剤、懸濁剤、着色剤、保存剤、甘味剤、香味剤等を使用してもよい。前述の如く、本発明の粒子の更なる賦形剤は、粒子の調製後、保持され得るいかなる残留溶媒も包含しないものとする。
【0110】
ある一定の実施形態において、粒子は、本質的に当該粒子から成る乾燥粉末の形態で提供される。他の実施形態において、本発明の粒子は、他の乾燥粉末との乾燥粉末組成物の一部として提供されてもよい。かかる他の粉末は、1つ若しくは複数の活性薬剤、例えば、抗生物質、抗真菌薬、抗ウイルス薬、免疫賦活薬、コルチコステロイド、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、気管支拡張薬若しくは粘液粘度低下剤等を含有していてもよく、又は更なる賦形剤であってもよい。これら活性薬剤及び賦形剤の代表的な例については、本明細書において説明する。
【0111】
「乾燥」とは、実質的に、例えば、本質的に、水を含まない(水分を含まない)ことを意味する。これは、乾燥減量により又はカールフィッシャー法(米国薬局方;ヨーロッパ薬局方)により化学的に測定した含水率が、15w/w%未満と表すこともでき、例えば、12w/w%未満、10w/w%未満、9w/w%未満、8w/w%未満、7w/w%未満、6w/w%未満、5w/w%未満、4.5w/w%未満、4w/w%未満、3.5w/w%未満、3w/w%未満、2.5w/w%未満、2w/w%未満、1.5w/w%未満又は1w/w%未満と表し得る。
【0112】
本発明の粒子又は本発明の粒子を含む組成物は、カプセル又は、例えば、吸入器用等の他の容器で提供し得る。代表的なカプセル形成物質としては、これらに限定されるものではないが、アクリル酸メチル−メタクリル酸共重合体、メタクリル酸メチル−メタクリル酸共重合体、セルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(ヒプロメロースアセテートサクシネート)、ポリビニルアセテートフタレート(PVAP)、セルロースアセテートトリメリテート及びアルギン酸ナトリウムポリマーが挙げられる。
【0113】
本発明は更に、本発明の粒子を含む乾燥粉末吸入器(すなわち、吸入装置)、本発明の粒子を含む乾燥粉末組成物及び/又はこれを含むカプセルを提供する。ある一定の実施形態において、乾燥粉末吸入器は、本発明の粒子又は本発明の粒子を含む乾燥粉末組成物を含有する貯留槽又はチャンバー容器を備えていてもよい。
【0114】
本発明者らはまた、驚くほど効率的でコスト効率の高い噴霧乾燥プロセスも開発しており、このプロセスにより、本発明の有利な粒子が高収量で得られ、これは、理論に拘束されることを望むものではないが、本発明の粒子中の選定リン脂質賦形剤とアルギネートオリゴマーの物理的特性および化学的特性の特定の組合せを利用することにより、可能となるものと考えられる。抗接着化合物は更に、この特性の組合せに寄与するか、又はこの特性の組合せを容易にし得る。
【0115】
具体的には、前記プロセスは、水中有機液状エマルジョンを利用し、噴霧乾燥する混合物中の(限られた水溶性の)アルギネートオリゴマーの有効性を最大限にすることにより、最小限の材料(特に、有機液体)費で、本発明の粒子において高濃度のアルギネートオリゴマーを実現する。限られた水溶性の成分を含む噴霧乾燥粒子の調製において、このような方法で、かかる共溶媒系の使用に取り組むことは一般的ではない。このような場合、噴霧乾燥する混合物中の低水溶性成分の濃度を高めるため、有機中水エマルジョンを調製するのがより普通である。本発明のこの変則的なアプローチは、変則的な水中有機エマルジョンを安定化させるリン脂質の正の電荷を持つ頭部基と負の電荷を持つアルギネートオリゴマーとの間で生じる静電相互作用により実行可能となると考えられる。抗接着化合物は、この安定化効果に更に寄与し得る。
【0116】
従って、本発明は、更なる態様において、本明細中に記載の噴霧乾燥粒子を形成するように噴霧乾燥用水中有機液状エマルジョンを製造する方法を提供するものであって、当該方法は、
(a)(i)本明細書に記載のアルギネートオリゴマーを含む水性液状組成物と、本明細書に記載の抗接着化合物を含む水性液状組成物、又は
(ii)本明細書に記載のアルギネートオリゴマーと本明細書に記載の抗接着化合物とを含む水性液状組成物
を準備すること、
(b)本明細書に記載のリン脂質を含む有機液状組成物を準備すること、
(c)一定量の前記有機液状組成物を一定量の(i)の水性液状組成物又は(ii)の水性液状組成物と混合すること(但し、有機液状組成物の量は、混合する水性液状組成物の総量より少ない)、及び
(d)工程(c)の間の任意の時点で又は工程(c)の終了時に上記の如く生成された混合物を均質化し、本明細書に記載の噴霧乾燥粒子を形成するように噴霧乾燥用水中有機液状エマルジョンを生成すること
を含む。
【0117】
工程(c)の間の任意の時点で又は工程(c)の終了時に上記の如く生成された混合物、ひいては噴霧乾燥用水中有機液状エマルジョンが、噴霧乾燥(このプロセスは、水性液体及び有機液体を除去するが、その中に含まれる種々成分は除去しない)時に本発明の噴霧乾燥粒子、すなわち、
(i)約70w/w%以上のアルギネートオリゴマーと、
(ii)合計で約10w/w%以上のリン脂質及び抗接着化合物(但し、当該リン脂質は、室温で固体であり、且つ当該リン脂質は0.5w/w%以上であり、当該抗接着化合物は0.5w/w%以上である)と、
(iii)約10w/w%以下の更なる賦形剤と
から成る吸入用噴霧乾燥粒子を形成する、一定量のアルギネートオリゴマー、リン脂質及び抗接着化合物並びに随意に更なる賦形剤を含有することが容易に分かるであろう。
【0118】
水性液状組成物(複数も可)及び有機液状組成物は、1つの工程又は複数の工程において混合し得る。有機液状組成物及び水性液状組成物は、どのような順序で混合してもよい。例えば、水性液状組成物(複数も可)を有機液状組成物に添加してもよく、有機液状組成物を水性液状組成物(複数も可)に添加してもよく、又は各成分を同時に混合してもよい。好ましくは、有機液状組成物を、1つ又は複数の水性液状組成物(複数も可)に添加する。
【0119】
更なる態様においては、上記の方法で得た又は得られる噴霧乾燥用水中有機液状エマルジョンを提供する。
【0120】
この水中有機液状エマルジョンは、好ましくは、実質的に安定エマルジョンであり、これは、均質化の終了後10分以上、好ましくは15分以上、30分以上、60分以上、120分以上又は240分以上エマルジョンが存続することを意味する。
【0121】
また更なる態様において、本発明は、本明細書に記載の噴霧乾燥粒子の製造方法を提供するものであって、当該方法は、上述の噴霧乾燥用水中有機液状エマルジョンの製造方法を実施することと、更に、
(e)工程(d)で生成された水中有機液状エマルジョンを噴霧乾燥することと
を含む。
【0122】
更なる態様においては、上記の方法で得た又は得られる噴霧乾燥粒子を提供する。
【0123】
当該アルギネートオリゴマー及び/又は当該抗接着化合物を含む水性液状組成物は、任意の薬学的に許容される水性液体にアルギネートオリゴマー及び/又は抗接着化合物を溶解することで生成してもよい。好都合なことに、この液体は、水、好ましくは実質的に純水、例えば、蒸留水又は濾過水等である。しかしながら、いくつかの追加化合物(例えば、塩、有機酸、バッファー)も含まれていてもよいが、これは、得られる噴霧乾燥粒子が当該化合物を10%を超えて含有することにならない量及び粒子形成を妨げることのない量でかかる化合物が含まれる場合に限る。本発明の方法は、水性液状組成物(複数も可)を調製する更なる工程を含んでいてもよい。これらの工程は、水性液体にアルギネートオリゴマー及び/又は抗接着化合物を同時に又は逐次溶解すること、又はこれら2つの成分のうちの1つを、既に他方を含有している水性液体に添加することを含んでいてもよい。
【0124】
当該リン脂質を含む有機液状組成物は、任意の薬学的に許容される有機液体、つまり有機溶媒におけるリン脂質の溶解により生成されてもよく、有機液体の例としては、アルコール類およびそれらの誘導体(例えば、メタノール、エタノール、C3アルコール類およびC4アルコール類)、ケトン類(例えば、アセトン)、アセテート類(例えば、酢酸エチル)、ハロゲン化溶媒及びそれらの誘導体(例えば、ジクロロメタン、クロロホルム)、脂肪族溶媒及びそれらの誘導体(例えば、ヘプタン、ヘキサン、ペンタン)がある。エタノールが好ましい。選択する有機液体は、標準大気圧(1atm;略101325Pa)での沸点が、約40〜100℃でなければならない。実質的に水混和性有機液体が好ましい場合もある。しかしながら、いくつかの追加化合物(例えば、塩、有機酸、バッファー)も含まれていてもよいが、これは、得られる噴霧乾燥粒子が当該化合物を10%を超えて含有することにならない量及び粒子形成を妨げることのない量でかかる化合物が含まれる場合に限る。本発明の方法は、有機液状組成物を調製する更なる工程を含んでいてもよい。これらの工程は、有機液状組成物にリン脂質を溶解することを含んでいてもよい。
【0125】
本発明の噴霧乾燥粒子の更なる賦形剤は、存在する場合、この更なる賦形剤の疎水性に応じて水性液状組成物(複数も可)若しくは有機液状組成物中に含まれていてもよいし、又は均質化の工程に先立って別の液状組成物中に供給されてもよい。
【0126】
均質化は、任意の便利な手段、例えば、機械的手段及び/又は超音波手段、例えば、高剪断混合によって実施できる。かかる均質化を行うための装置(例えば、ホモジナイザー)は広く知られていると共に、当技術分野において利用可能であり、例えば、シルバーソン(Silverson)ホモジナイザーがあり、これは10,000rpmで操作し得る。均質化は、好ましくは、肉眼で完全なるエマルジョンが生成されるまで実施する。均質化は、2つの液相を混合する時に又は液相全てが混合された後に実施してもよい。他の実施形態において、均質化は、各相の一部が混合された時点で開始してもよい。
【0127】
水性液状組成物(複数も可)と混合される、好ましくは、水性液状組成物(複数も可)に添加する有機液状組成物の量は、水性液状組成物(複数も可)の総量より少なくなければならない。好ましくは、有機液状組成物の量は、水性液状組成物(複数も可)の総量の95%未満、例えば、水性液状組成物(複数も可)の総量の90、85、80、75、70、65、60、55、50、45、40、35、30、25、20、15、10又は5%未満である。より好ましくは、有機液状組成物の量は、水性液状組成物(複数も可)の総量の5〜70、10〜65、15〜60、20〜55、25〜50、30〜45、35〜40、5〜60、10〜55、15〜50、20〜45、25〜40、30〜35、5〜50、10〜45、15〜40、20〜35、25〜30、5〜40、10〜35、15〜30、20〜25%である。より好ましくは、有機液状組成物の量は、水性液状組成物(複数も可)の総量の約1/3、例えば、30〜35%である。他の実施形態において、有機液状組成物の量は、全液量の約15〜40%、例えば、20〜40、20〜35又は20〜30%であり、全液量とは、噴霧乾燥用に調製される液状組成物の量(つまり、有機液状組成物と水性液状組成物(複数も可)とを含む液状組成物又は混合液の量)のことである。別の実施形態において、有機液状組成物と水性液状組成物(複数も可)の比率は、20〜40:60〜80、例えば、20〜35:65〜80、20〜30:70〜80又は25:75である。従って、本発明の方法は、好都合なことに、有機液状組成物(又は使用される有機溶媒)の減量を可能とする。アルギネートオリゴマーの溶解度と最終粒子中におけるアルギネートオリゴマーの所望の割合は、使用される液状組成物の割合に影響を及ぼし得る。同様に、他の成分の溶解度及び最終粒子中におけるそれら成分の所望の割合も、使用される有機液状組成物の量に影響を及ぼし得る。同様に、使用される液状組成物の割合は、粒子成分の存在下、均質化により液体エマルジョンが生成されるのに適切なものでなければならない。
【0128】
噴霧乾燥は、任意の便利な技法を用いて実施できる。当業者は、装置およびその使用法、例えば、供給速度(並びに、必要に応じて、例えば、入口温度、ファン回転速度及びポンプ速度)を調節し、本発明の粒子が確実に形成されるようにすることができる。
【0129】
本発明の方法は、更なる製剤工程及び/又は生物学的汚染物質除去工程、例えば、更なる賦形剤(例えば、粉末)との混合又はカプセルへの充填及び/又は低温殺菌処理若しくは放射線処理を含んでいてもよい。本発明の粉末は、例えば、テクネチウム99mを用いて、例えば、テクネガス(Technegas)を用いて放射標識してもよい。
【0130】
本発明の粒子は、治療用、特に、呼吸器感染症及び呼吸器疾患、とりわけ、微生物感染症(特にバイオフィルム感染症)及び/若しくは異常粘液を伴う疾患又は病状、例えば、欠陥のあるCFTRイオンチャネル機能に関連した若しくはそれらを特徴とする任意の病状、COPD、COAD、COAP、気管支炎、嚢胞性線維症、CFに関連した医学的疾患若しくは病状、肺気腫、肺がん、喘息又は肺炎或いはそれらの合併症等の治療用又は予防用に提供し得る。
【0131】
欠陥のあるCFTRイオンチャネル機能に関連した又はそれを特徴とする病状は、当該欠陥のあるCFTRイオンチャネル機能に起因する病状又はそれらの合併症を含む。「欠陥のあるCFTRイオンチャネル」は、上記より、CFTR機能における任意の欠陥又は欠乏、すなわち、CFTR機能不全を含むことが理解されるであろう。従って、「欠陥のあるCFTRイオンチャネル」は、「欠陥のあるCFTRイオンチャネル機能」を事実上意味し、代わりに「欠陥のあるCFTRイオンチャネル機能」と表現してもよい。よって、前記病状とは、CFTR機能不全に関連した病状又はそれを特徴とする病状又はそれに起因する病状とみなし得る。これは、機能しない又は機能が低減したという意味で欠陥のある、すなわち、一部又は完全にCFTRイオンチャネル活性が欠乏した(つまり、CFTRイオンチャネル活性が低減した又は抑制された)CFTRイオンチャネルを含み得る。
【0132】
欠陥のあるCFTR機能は、遺伝子欠陥又は変異に起因する場合もあれば、何らかのその他の原因により後天的に生じる場合もある。
【0133】
欠陥のあるCFTR機能に関連した最も一般的に知られている疾病は、嚢胞性線維症(CF)である。CFは、CFTRにおける変異に起因するヒトの常染色体性劣性遺伝病であり、前記変異は、粘液が生成されるあらゆる器官における粘液の停滞並びに肝臓及び膵臓の腺からの分泌物の増粘をもたらす。肺、副鼻腔、胃腸(GI)管、膵臓、肝臓並びに女性及び男性の生殖器系にこの停滞粘液が存在することにより、質の低い生活だけでなく、病的状態や死亡にもつながる多くの病態を引き起こす。実際、殆どのCF患者は、この停滞粘液に直接関連した医学的疾患又は病状(CFTR機能不全の合併症又はCFに関連した医学的疾患又は病状とも呼ぶ)に陥る。
【0134】
ある症例では、CFTR機能不全は、非合成(non-compound)ヘテロ接合性突然変異体CFTR対立遺伝子を有する被験体に見られる。かかる被験体において、遺伝的機能不全は軽度であることから、顕性CFとして発現するには不十分であるが、顕性CFに関連した前記の多くの病態や合併症を引き起こすには十分である。
【0135】
後天性CFTR機能不全は、環境暴露及び/又は臨床暴露により、例えば、微粒子状刺激物質(例えば、煙粒子(タバコ、木材等)、汚染、粉塵(アスベスト、綿、石炭、石、動物の糞等)及び胞子)の長期吸入により生じる場合もある。
【0136】
従って、欠陥のあるCFTRイオンチャネルに関連した又はそれを特徴とする病状は、CFのみならず、呼吸器機能不全を伴う他の病状(より一般的には、他の呼吸器疾患)や、とりわけ、特に喘息を含む肺閉塞を伴う疾患、又は気道感染症による悪化や気道リモデリング及び慢性炎症状態を特徴とする呼吸器疾患をも含み得る。かかる病状は、非合成CFTR遺伝子変異ヘテロ接合性、慢性的な微粒子の吸入に起因する気道における異常粘液クリアランス及び/若しくは呼吸困難、COPD、慢性気管支炎、肺気腫、気管支拡張症、喘息又は慢性副鼻腔炎或いはそれらの合併症を含む。
【0137】
他の実施形態において、前記病状は、上記病状の合併症、特に、粘液関連合併症であってもよい。更に具体的な実施形態において、本発明は、タバコの喫煙者や、微粒子状刺激物質(例えば、煙粒子(タバコ、木材等)、汚染、粉塵(アスベスト、綿、石炭、石、動物の糞等)及び胞子)の長期吸入に曝された他の被験体における、粘液滞留及び呼吸困難の治療を提供する。
【0138】
欠陥のあるCFTRイオンチャネル機能に関連した又はそれを特徴とする上述の病状は、PCT特許出願第PCT/EP2015/054207号(この内容を参照により本明細書に援用する)に、より詳細に記載されている。
【0139】
従って、更なる態様において、呼吸器感染症又は呼吸器疾患の治療または予防の方法を提供するものであって、当該方法は、本発明の粒子を、それを必要とする被験体の気道、好ましくは肺に、吸入により投与することを含む。
【0140】
また、別の表現では、本発明は、呼吸器感染症若しくは呼吸器疾患の治療又は予防用の本明細書に記載の噴霧乾燥粒子を提供するものであって、当該治療又は予防には、本発明の粒子を、それを必要とする被験体の気道、好ましくは肺に、吸入により投与することが含まれる。
【0141】
また、別の表現では、本発明は、呼吸器感染症若しくは呼吸器疾患の治療又は予防用の薬剤の製造における本明細書に記載の噴霧乾燥粒子の使用を提供するものであって、当該治療又は予防には、本発明の粒子を、それを必要とする被験体の気道、好ましくは肺に、吸入により投与することが含まれる。
【0142】
本発明の粒子は、これらの態様において、更なる薬剤(すなわち、治療薬又は活性薬剤)又は治療法と共に使用してもよい。例として、本発明の粒子は、抗生物質、抗真菌薬、抗ウイルス薬、免疫賦活薬、コルチコステロイド、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、気管支拡張薬、粘液粘度低下剤(すなわち、粘液の粘度を低減する薬剤であり、この用語は、用語「粘液溶解薬」と同様の意味で使用される)又はCFTR調整剤(「CFTRモディファイヤー」としても公知である)と共に使用してもよい。これらの薬剤は、例えば、本発明の粒子と同じ組成物において、吸入により投与してもよいが、任意の好都合な代替経路により投与してもよい。
【0143】
前記抗生物質は、アミノグリコシド系抗生物質(例えば、アミカシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン);β−ラクタム系抗生物質(例えば、カルバセフェム系抗生物質(carbecephems)(例えば、ロラカルベフ);第一世代セファロスポリン系抗生物質(例えば、セファドロキシル、セファゾリン、セファレキシン);第二世代セファロスポリン系抗生物質(例えば、セファクロル、セファマンドール、セファレキシン、セフォキシチン、セフプロジル、セフロキシム);第三世代セファロスポリン系抗生物質(例えば、セフィキシム、セフジニル、セフジトレン、セフォペラゾン、セフォタキシム、セフポドキシム、セフタジジム、セフチブテン、セフチゾキシム、セフトリアキソン);第四世代セファロスポリン系抗生物質(例えば、セフェピム);モノバクタム系抗生物質(例えば、アズトレオナム);マクロライド系抗生物質(例えば、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、ジリスロマイシン、エリスロマイシン、トロレアンドマイシン);モノバクタム系抗生物質(例えば、アズトレオナム);ペニシリン系抗生物質(例えば、アモキシシリン、アンピシリン、カルベニシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、ナフシリン、オキサシリン、ペニシリンG、ペニシリンV、ピペラシリン、チカルシリン);ポリペプチド系抗生物質(例えば、バシトラシン、コリスチン、ポリミキシンB);キノロン系抗生物質(例えば、シプロフロキサシン、エノキサシン、ガチフロキサシン、レボフロキサシン、ロメフロキサシン、モキシフロキサシン、ノルフロキサシン、オフロキサシン、トロバフロキサシン);スルホンアミド系抗生物質(例えば、マフェニド、スルファセタミド、スルファメチゾール、スルファサラジン、スルフイソキサゾール、トリメトプリム・スルファメトキサゾール合剤);テトラサイクリン系抗生物質(例えば、デメクロサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、オキシテトラサイクリン、テトラサイクリン);グリシルサイクリン系抗生物質(例えば、チゲサイクリン);カルバペネム系抗生物質(例えば、イミペネム、メロペネム、エルタペネム、ドリペネム、パニペネム・ベタミプロン合剤、ビアペネム、PZ−601);クロラムフェニコールを含む他の抗生物質;クリンダマイシン、エタンブトール;ホスホマイシン;イソニアジド;リネゾリド;メトロニダゾール;ニトロフラントイン;ピラジナミド;キヌプリスチン・ダルホプリスチン合剤;リファンピン;スペクチノマイシン;およびバンコマイシンから選択し得る。
【0144】
より好ましくは、前記抗生物質は、アミカシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン、セフィキシム、セフジニル、セフジトレン、セフォペラゾン、セフォタキシム、セフポドキシム、セフタジジム、セフチブテン、セフチゾキシム、セフトリアキソン、セフェピム、アズトレオナム、アモキシシリン、アンピシリン、カルベニシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、ナフシリン、オキサシリン、ペニシリンG、ペニシリンV、ピペラシリン、チカルシリン、シプロフロキサシン、エノキサシン、ガチフロキサシン、レボフロキサシン、ロメフロキサシン、モキシフロキサシン、ノルフロキサシン、オフロキサシン、トロバフロキサシン、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、ジリスロマイシン、エリスロマイシン、ロキシスロマイシン、テリスロマイシン、カルボマイシンA、ジョサマイシン、キタサマイシン、ミデカマイシン、オレアンドマイシン、スピラマイシン、トロレアンドロマイシン(troleandromycin)、チロシン、イミペネム、メロペネム、エルタペネム、ドリペネム、パニペネム・ベタミプロン合剤、ビアペネム、PZ−601、バシトラシン、コリスチン、ポリミキシンB、デメクロサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、オキシテトラサイクリン及びテトラサイクリンから選択される。
【0145】
より好ましくは、前記抗生物質は、アズトレオナム、シプロフロキサシン、ゲンタマイシン、トブラマイシン、アモキシシリン、コリスチン、セフタジジム、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、ジリスロマイシン、エリスロマイシン、ロキシスロマイシン、スピラマイシン、オキシテトラサイクリン及びイミペネムから選択される。
【0146】
特に好ましい実施の形態において、前記抗生物質は、アズトレオナム、シプロフロキサシン、ゲンタマイシン、トブラマイシン、アモキシシリン、コリスチン及びセフタジジムから選択される。
【0147】
代表的な抗真菌薬としては、これらに限定されるものではないが、ポリエン系抗真菌薬(例えば、ナタマイシン、リモシジン、フィリピン、ナイスタチン、アムホテリシンB、カンジシン;イミダゾール系抗真菌薬(例えば、ミコナゾール、ケトコナゾール、クロトリマゾール、エコナゾール、ビフォナゾール、ブトコナゾール、フェンチコナゾール、イソコナゾール、オキシコナゾール、セルタコナゾール、スルコナゾール、チオコナゾール);トリアゾール系抗真菌薬(例えば、フルコナゾール、イトラコナゾール、イサブコナゾール、ラブコナゾール、ポサコナゾール、ボリコナゾール,テルコナゾール);アリルアミン系抗真菌薬(例えば、テルビナフィン、アモロルフィン、ナフチフィン、ブテナフィン);及び、エキノキャンディン系抗真菌薬(例えば、アニデュラファンギン、カスポファンギン、ミカファンギン)が含まれる。
【0148】
代表的な抗ウイルス薬としては、これらに限定されるものではないが、アバカビル、アシクロビル、アデフォビル、アマンタジン、アンプレナビル、アルビドール、アタザナビル、アトリプラ、ボセプレビル、シドフォビル、コンビビル、ダルナビル、デラビルジン、ジダノシン、ドコサノール、エドクスジン、エファビレンツ、エムトリシタビン、エンフビルチド、エンテカビル、ファムシクロビル、ホミビルセン、ホスアンプレナビル、ホスカルネット、ホスホネット、ガンシクロビル、イバシタビン、イムノビル、イドクスウリジン、イミキモド、インジナビル、イノシン、III型インターフェロン、II型インターフェロン、I型インターフェロン、ラミブジン、ロピナビル、ロビリド、マラビロク、モロキシジン、ネルフィナビル、ネビラピン、ネキサビル(nexavir)、オセルタミビル、ペンシクロビル、ペラミビル、プレコナリル、ポドフィロトキシン、ラルテグラビル、リバビリン、リマンタジン、リトナビル、サクイナビル、スタブジン、テノホビル、テノホビルジソプロキシル、チプラナビル、トリフルリジン、トリジビル、トロマンタジン、ツルバダ、バラシクロビル、バルガンシクロビル、ビクリビロク、ビダラビン、ビラミジン、ザルシタビン、ザナミビル及びジドブジンが挙げられる。
【0149】
代表的な免疫賦活薬としては、これらに限定されるものではないが、サイトカイン類、例えば、TNF、IL−1、IL−6、IL−8、並びに例えば、米国特許第5,169,840号明細書、国際公開第91/11205号及び国際公開第03/045402号(これらは、その全体を参照により本明細書に明示的に援用する)に記載されている高M含量アルギネート等で、免疫賦活特性を有する任意のアルギネートを含む免疫賦活性アルギネート類が挙げられる。
【0150】
代表的なNSAID系としては、これらに限定されるものではないが、サリチル酸塩(例えば、アスピリン(アセチルサリチル酸)、コリンマグネシウムトリサリチル酸塩、ジフルニサル、サルサレート、プロピオン酸誘導体(例えば、イブプロフェン、デクスイブプロフェン、デクスケトプロフェン、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、ケトプロフェン、ロキソプロフェン ナプロキセン、オキサプロジン)、酢酸誘導体(例えば、アセクロフェナク、ジクロフェナク、エトドラク.、インドメタシン、ケトロラク、ナブメトン、トルメチン、スリンダク)、エノール酸誘導体(例えば、ドロキシカム、イソキシカム、ロルノキシカム、メロキシカム、ピロキシカム、テノキシカム)、アントラニル酸誘導体(例えば、フルフェナム酸、メクロフェナム酸、メフェナム酸、トルフェナム酸)及び選択的シクロオキシゲナーゼ−2阻害薬(コキシブ系; 例えば、セレコキシブ、エトリコキシブ、ルミラコキシブ、パレコキシブ、ロフェコキシブ、バルデコキシブ)が挙げられる。プロピオン酸誘導体(例えば、イブプロフェン、デクスイブプロフェン、デクスケトプロフェン、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、ケトプロフェン、ロキソプロフェン ナプロキセン、オキサプロジン)が好ましく、イブプロフェンが最も好ましい。
【0151】
本明細書にて使用する、用語「粘液溶解薬」及び「粘液粘度低下剤」は、粘液の固有粘度を低減する薬剤、下層上皮に対する粘液の付着を低減する薬剤、特に、粘液の成分内又は成分間の分子間相互作用を直接的に又は間接的に崩壊する薬剤、粘液の水和に影響を及ぼす薬剤、及び粘膜上皮のイオン微小環境(特に、二価カチオン、例えば、カルシウムの濃度)を調整する薬剤を包含することを意図するものである。好適な粘液粘度低下剤の代表的な例としては、これらに限定されるものではないが、核酸切断酵素(例えば、デオキシリボヌクレアーゼI又はドルナーゼアルファ等のデオキシリボヌクレアーゼ)、高張食塩水、ゲルゾリン、チオール還元剤、アセチルシステイン、非荷電低分子量多糖(例えば、デキストラン、マンニトール)、アルギニン(又は、他の一酸化窒素前駆体若しくは合成促進剤)、プリン受容体のP2Y2サブタイプのアゴニスト(例えば、デヌホソル)又はアニオン性ポリアミノ酸(例えば、ポリASP又はポリGLU)が挙げられる。アンブロキソール、ロムヘキシン(romhexine)、カルボシステイン、ドミオドール、エプラジノン、エルドステイン、レトステイン、メスナ、ネルテネキシン、ソブレロール、ステプロニン、チオプロニンが、注目すべき具体的な粘液溶解薬である。デオキシリボヌクレアーゼI及び高張食塩水が好ましい。
【0152】
好適な気管支拡張薬の代表的な例としては、これらに限定されるものではないが、β2アゴニスト(例えば、短時間作用性β2アゴニスト(例えば、ピルブテロール、エピネフリン、サルブタモール、レボサルブタモール、クレンブテロール、テルブタリン、プロカテロール、メタプロテレノール、フェノテロール、メシル酸ビトルテロール、リトドリン、イソプレナリン);長時間作用性β2アゴニスト(例えば、サルメテロール、ホルモテロール、バンブテロール、クレンブテロール);並びに、超長時間作用性β2アゴニスト(例えば、インダカテロール))、抗コリン薬(例えば、イプラトロピウム、オキシトロピウム、チオトロピウム)及びテオフィリンが挙げられる。
【0153】
好適なコルチコステロイドの代表的な例としては、これらに限定されるものではないが、プレドニゾン、フルニソリド、トリアムシノロン、フルチカゾン、ブデソニド、モメタゾン、ベクロメタゾン、アムシノニド、ブデソニド、デソニド、フルオシノニド、フルオシノロン、ハルシノニド、ヒドロコルチゾン、コルチゾン、チキソコルトール、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾン、ベタメタゾン、デキサメタゾン、フルオコルトロン、アクロメタゾン、プレドニカルベート、クロベタゾン、クロベタゾール、およびフルプレドニデンが挙げられる。
【0154】
CFTR調整剤は、CFTR機能不全を、少なくとも部分的に緩和することのできる小分子である。本CFTR調整剤は、3つの主なグループに分類される:CFTR増強剤、CFTR修正剤及びリードスルー薬(Derichs、N., Eur. Respir. Rev., 2013, 22(127), 58-65; Petit, R.S. and Fellner, C., Pharmacy and Therapeutics, 2014, 39(7), 500-511;これらの内容を参照により本明細書に援用する)である。
【0155】
CFTR増強剤は、上皮細胞表面に存在するCFTRイオンチャネルの活性を高めるCFTR調整剤である。CFTR増強剤の典型例は、バーテックス・ファーマシューティカルズ(Vertex Pharmaceuticals)(登録商標)のアイバカフトール(VX−770;N−(2,4−ジ−tert−ブチル−5−ヒドロキシフェニル)−1,4−ジヒドロ−4−オキソキノリン−3−カルボキサミド)及びVRT−532(4−メチル−2−(5−フェニル−1H−ピラゾール−3−イル)−フェノール))である。
【0156】
CFTR修正剤は、上皮細胞表面に送達された又は保持されたCFTRタンパク質の量を増加させるCFTR調整剤である。CFTR修正剤の典型例としては、バーテックス・ファーマシューティカルズ(Vertex Pharmaceuticals)(登録商標)のルマカフトール(VX−809)及びVX−661並びにN6022(3−[1−(4−カルバモイル−2−メチルフェニル)−5−(4−イミダゾール−1−イルフェニル)ピロール−2−イル]プロパン酸)が挙げられる。
【0157】
リードスルー薬(「未成熟終止コドンサプレッサー(premature stop codon suppressors)」(PSCサプレッサー)又は「中途終止コドンサプレッサー(premature termination codon suppressors)」(PTCサプレッサー;これら用語は、本明細書において同様の意味で使用する)としても知られているは、細胞の翻訳機構に、CFTRmRNA内の任意の中途終止コドンを通過させることにより、産生される実質的に全長及び機能的なCFTRの量を増加させるCFTR調整剤である。リードスルー薬の典型例としては、PTCセラピューティクス(PTC Therapeutics)社のアタルレン(PTC124)及びゲンタマイシンが挙げられる。
【0158】
更なるCFTR調整剤が、国際公開第2006002421号、国際公開第2007056341号、国際公開第2007134279号、国際公開第2009038683号、国際公開第2009064959号、国際公開第2009073757号、国際公開第2009076141号、国際公開第2009076142号、国際公開第2010019239号、国際公開第2010037066号、国際公開第2010048526号、国際公開第2010053471号、国際公開第2010054138号、国際公開第2010138484号、国際公開第2011019413号、国際公開第2011050325号、国際公開第2011072241号、国際公開第2011127241号、国際公開第2011127290号、国際公開第2011133751号、国際公開第2011133951号、国際公開第2011133953号、国際公開第2011133956号、国際公開第2011146901号、Pedemonte、N.ら、J Clin Invest. 2005;115(9):2564-2571、Van Goor、F.ら、Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol 2006、290: L1117-L1130、及びPedemonte、N.ら、Molecular Pharmacology、2005 vol. 67 no. 5 1797-1807(その内容を参照により本明細書に援用する)に開示されている。
【0159】
本発明の粒子の適用前、適用と同時又は適用後に、更なる薬剤を好都合に適用してもよい。便宜上、前記更なる薬剤は、本発明の粒子と実質的に同時に又はその後に適用する。他の実施形態において、前記更なる薬剤は、本発明の粒子の前に、好都合に適用又は投与してもよい。前記更なる薬剤はまた、使用する薬剤に適した時点において、繰り返し与える(例えば、投与する又は送達する)こともできる。当業者は、好適な投与計画を考案することができる。長期間治療において、本発明の粒子は、繰り返し使用することも可能である。本発明の粒子は、前記更なる薬剤と同様の頻度又はそれ以上若しくはそれ以下の頻度で、適用することができる。
【0160】
本発明の粒子および前記更なる薬剤は、例えば、共に投与しても、単一の医薬製剤又は組成物において投与しても、又は別々に投与してもよい(すなわち、分離投与、逐次投与又は同時投与)。よって、本発明の粒子及び前記更なる薬剤は、例えば、調剤キットにおいて又は複合(「配合」)製品として組み合せてもよい。
【0161】
よって、本発明はまた、製品(例えば、調剤キット又は複合(「配合」)製品)又は組成物(例えば、医薬組成物)も提供するものであって、前記製品又は組成物は、本明細書に記載している本発明の粒子及び更なる薬剤(例えば、上記薬剤)を含む。本発明の粒子と、抗生物質、抗真菌薬、NSAID、気管支拡張薬、コルチコステロイド及び/又は粘液粘度低下剤とを含む組合せが好ましい。本発明の粒子と、抗生物質、抗真菌薬及び/又は粘液粘度低下剤とを含む組合せがとりわけ好ましい。かかる医薬製品及び医薬組成物は、好ましくは、本発明の医療法における使用に適したものである。
【0162】
本発明の医療法に使用するかかる医薬製品および医薬組成物を製造するための、本明細書に記載している本発明の粒子の使用も検討される。
【0163】
好適な賦形剤の例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アカシアゴム、リン酸カルシウム、不活性アルギネートポリマー、トラガント、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水シロップ、水、水/エタノール、水/グリコール、水/ポリエチレン、高張食塩水、グリコール、プロピレングリコール、メチルセルロース、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、タルク、ステアリン酸マグネシウム、鉱物油若しくは硬い脂肪等の脂肪性物質又はそれらの好適な混合物がある。更に、潤滑剤、湿潤剤、乳化剤、懸濁剤、保存剤、甘味剤、香味剤等を使用してもよい。
【0164】
被験体は、任意のヒト又は動物の被験体であり得るが、より具体的には、ヒト又は非ヒト脊椎動物、例えば、非ヒト哺乳動物、鳥、両生類の魚又は爬虫類であってもよい。動物としては、家畜又は飼育動物又は商品価値のある動物であってもよく、実験動物又は動物園若しくは自然動物保護区の動物を含む。従って、代表的な動物としては、イヌ、ネコ、ウサギ、マウス、モルモット、ハムスター、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ及びウシが挙げられる。従って、本発明の獣医学的使用が包含される。被験体は、患者とみなされる場合もある。好ましくは、被験体はヒトである。
【0165】
「治療」は、本発明において被験体における医学的病状/感染症の治療に関して使用する場合、本明細書においては広範に使用され、任意の治療効果、すなわち、病状若しくは疾患に対する又は感染症/病状/疾患に関する有益な効果を含む。従って、感染症の根絶若しくは排除又は被験体若しくは感染症の治癒のみならず、被験体の感染症又は病状又は疾患の改善をも含む。よって、例えば、感染症若しくは病状若しくは疾患の任意の症状又は徴候における改善或いは感染症/病状/疾患の臨床的に許容される指標の改善が含まれる。従って、治療とは、例えば、既存の又は診断された感染症/病状/疾患の根治療法及び緩和療法の双方、すなわち、対症治療(reactionary treatment)を含む。
【0166】
本明細書で使用する「予防」とは、任意の予防的(prophylactic)又は予防(preventative)効果のことを言う。従って、「予防」には、例えば、予防的治療前の病状又は疾患又は症状又は徴候と比較して、病状若しくは疾患(これには、感染症が含まれる)又は病状若しくは疾患の発症、或いはその1つ若しくは複数の症状又は徴候を、遅延させること、抑制すること、緩和すること或いは予防することが含まれる。従って、予防法は、病状若しくは疾患の発生若しくは発症又はその症状若しくは徴候の絶対的な予防と、病状若しくは疾患若しくは症状若しくは徴候の発生又は発症における任意の遅延或いは病状若しくは疾患若しくは症状若しくは徴候の発症若しくは進行の緩和又は抑制との双方を明確に含む。
【0167】
「治療」は、本発明においてCF又はCFに関連した医学的疾患若しくは病状の治療といった特定の文脈で使用される場合、本明細書においては広範に使用され、任意の治療効果、すなわちCF又はその関連医学的疾患又は病状又は症状又は指標(indicator)に対する有益な効果を含む。ここでは、CF関連疾患又は病状とは、CFの合併症と置き換え可能である。
【0168】
CFは、本発明の治療を受ける時点で患者が呈する独自の一群のCF関連疾患及び病状により患者ごとに特徴付けられる遺伝性疾患であるため、「CFの治療」という用語は、患者の任意の若しくは全ての疾患及び病状の治療又はその部分的(subset)な治療であるとみなし得る。
【0169】
従って、本明細書に記載の本発明の治療は、CFの根本的な遺伝子欠陥を治すことはないが、かかる治療は、この欠陥に起因する体内での影響に対処すること、例えば、その影響(例えば、異常粘液に起因する影響)の緩和を目的とし、且つ、関連疾患又は病状の治療や、疾患若しくは病状の臨床効果又は被験体の健康全般の改善も含む。ここで、CFの「治癒」とは、本発明の治療を受ける時点で患者の呈する種々のCF関連疾患及び病状の完全な緩和を意味する。しかしながら、疾病に関する遺伝的な根拠(CFTR変異)は依然として存在し続ける。しかし、本明細書に記載の本発明の治療は、そのような「治癒」を必要とせず、上述の如く、CFが身体に及ぼす任意の影響の改善を含む。従って、例えば、患者のCF関連疾患若しくは病状の任意の症状又は徴候或いはCF関連疾患若しくは病状の任意の臨床的に許容される指標(例えば、肺での粘液線毛クリアランスの増強、抗生物質に対する肺感染症の反応性の増強、便秘の発生率の低下又は栄養吸収の改善)における改善が含まれる。本願治療において、既存のCF関連疾患若しくは病状が完全に根絶されることはないかもしれないし、又は新たなCF関連疾患若しくは病状の発症が完全に停止されることはないかもしれないが、前記治療は、対象のCF関連疾患若しくは病状が完全に回復するか又は少なくともある程度、好ましくは被験体にとって許容可能な程度回復する程度までこれらのプロセスを阻害するのに十分である。よって、これらの文脈における治療は、例えば、既存の若しくは診断されたCF関連疾患又は病状の根治療法及び緩和療法の双方、すなわち、対症治療(reactionary treatment)を含む。
【0170】
「予防」は、本発明においてCF又はCFに関連した医学的疾患若しくは病状の治療といった特定の文脈で使用される場合、本明細書においては広範に使用され、CF患者における任意の予防的(prophylactic)又は予防(preventative)効果を含む。ここでは、CF関連疾患又は病状とは、CFの合併症と置き換え可能である。従って、「予防」には、CF患者におけるCFの影響又はCF関連病状若しくは疾患、又はそれらの1つ若しくは複数の症状又は徴候、或いはCF又はCF関連疾患若しくは病状の発症、又はそれらの1つ若しくは複数の症状又は徴候を、例えば、予防的治療前のその疾患、病状、症状又は徴候と比較して、遅延させること、抑制すること、緩和すること又は予防することが含まれる。当然のことながら、根本的な遺伝子欠陥という意味では、CFは、本発明の治療により予防することはできず、これは含まれない。従って、これらの文脈において「予防」とは、根本的な遺伝子欠陥により又は異常粘液により生じる体内における影響を予防することに関連する。
【0171】
CFは、本発明の治療を受ける時点で患者が呈する独自の一群のCF関連疾患及び病状により患者ごとに特徴付けられる遺伝性疾患であるため、「CF患者におけるCF又はCF関連疾患若しくは病状の予防」という表現は、患者がまだ罹患していない又は患者は以前罹患したことがあるが本願治療を受ける前に克服した任意のCF関連疾患又は病状の予防であるとみなし得る。
【0172】
予防法には、CFの影響又はCF関連疾患若しくは病状、又はその症状若しくは徴候の発生又は発症の絶対的な予防と、CFの影響又はCF関連疾患若しくは病状、又はその症状若しくは徴候の発生又は発症における任意の遅延、或いはCF又はCF関連疾患若しくは病状、又はその症状若しくは徴候の発症又は進行の緩和又は抑制との双方が明確に含まれる。予防的治療はまた、CF患者が、CF又はCF関連疾患若しくは病状或いはその症状若しくは徴候を患う又は発症するリスクを低減させる治療ともみなし得る。
【0173】
用語「CFの患者」、「CFに罹患した患者」、「CFを有する患者」及び「CF患者」は、同等とみなされ、本明細書において同様の意味で使用される。
【0174】
「効果的な送達」とは、治療上有効量のアルギネートオリゴマー、すなわち、微生物感染症(特にバイオフィルム感染症)及び/若しくは異常粘液を伴う呼吸器感染症又は呼吸器疾患を治療又は予防できる量のアルギネートオリゴマーの肺への送達を意味するものと解される。
【0175】
以下の非限定的な実施例を用いて、本発明を更に説明する。
【0176】
図1は、本発明の噴霧乾燥粒子をテクネガスで放射標識するために使用した装置の図を示す。テクネガスは、99m過テクネチウム酸(400Mbq)101を充填したテクネガス発生装置により発生させ、真空ポンプ103を使用し濾紙102上に配置した乾燥粒子(300mg)層上に吸引した。遊離テクネガスは、6%(w/w)EDTA溶液104中に捕捉した。
【0177】
図2は、放射標識粒子及び非放射標識粒子の重量平均分布、並びに実施例7の空気力学的粒径分布分析による放射標識粒子の放射線量のグラフ図を示す。濃灰色の棒(左):放射標識粒子(DPI)の重量(n=4)。中間灰色の棒(中央):放射標識粒子(DPI)の放射線量(n=4)。薄灰色の棒(右):非放射標識粒子(DPI)の重量(n=4)。
【0178】
図3は、噴霧溶液(3A(前面画像)及び3B(背面画像))又は本発明の噴霧乾燥粒子の形態(3C(前面画像)及び3D(背面画像))での投与後のCF患者の肺内におけるオリゴGの沈着を示す。
【0179】
図4は、噴霧溶液(4A(左側面)及び4B(右側面))又は本発明の噴霧乾燥粒子の形態(4C(左側面)及び4D(右側面))での投与後のCF患者の中咽頭部におけるオリゴGの沈着を示す。
【実施例】
【0180】
<実施例1> 本発明の噴霧乾燥粒子の調製
表1に記載の組成物を用いて製剤サンプルを調製した。この製剤を、スケールアップし、溶質濃度で80w/w%及び水相で濃度94mg/mlのオリゴG(2600Da、G90〜95%)を含有するようにした。オリゴGとグリシンを水に溶解し水相とした。DPPCをエタノールに溶解し有機相とした。シルバーソンホモジナイザーを用いて10,000rpmで均質化しながら、有機相をゆっくりと水相に添加した。全物質の添加後、生成された懸濁液を、更に15分間均質化した。
【0181】
【表1】
【0182】
驚いたことに、安定した乳白色エマルジョンが生成され、これは、噴霧乾燥中に使用したエタノールの量が低減し、溶質濃度が3倍に増加したことを意味した。従って、1kgのオリゴGを噴霧乾燥するためには、10.6Lの水とわずか3.5Lのエタノールを必要とし、これは、理論的には、必要とされる共溶媒の総量が、わずか14.1Lであることを意味する(共溶媒の量を元に戻した場合の40Lと比較)。このエマルジョンを使用し、スケールアップ中の噴霧乾燥パラメータを同定し、所望の幾何学的粒径分布およびAPSDが達成可能であったかどうか評価した。
【0183】
パイロットスケールGMP噴霧乾燥機(アンヒドロ(Anhydro)SPX MS35、米国)を使用し、上記にて調製したエマルジョン1.6kgを噴霧した。生成された粉末は、ガラスバイアルに採取し、一晩放置した。その粉末は、下記方法により、幾何学的粒径分布およびAPSDの分析をした。
【0184】
【表2】
【0185】
噴霧乾燥粉末は、45分毎に回収し、サイクロンの首で詰まらないようにした。その収率は75%であり、完了までに2.5時間を要した。
【0186】
マルバーン・マスターサイザー・マイクロプラス(Malvern Mastersizer MicroPlus)粒径分布測定装置(マルバーン・インスツルメンツ社(Malvern Instruments)、英国)を使用し、レーザー回折法により粒径分布を測定した。1リットルにつきSPAN85を2g含有する酢酸エチルを、本実験用の分散剤として使用した。3mlの分散剤におよそ15mgの粉末を分散させ、サンプルを調製した。前記装置のスイッチを入れ、以下の条件を設定した。
・分析モデル:多分散系
・プレゼンテーションコード:Fraunhofer
・撹拌速度:11時(半径150°)方向のダイヤル位置
・オブスキュレーション:15〜20%
【0187】
前記装置をおよそ1時間放置して暖め、分散剤略100mlをサンプル分散ユニットに入れた。その分散剤を用いてまずバックグラウンドを測定した。好適なオブスキュレーション値に達するまで、サンプルをサンプル分散ユニットに滴下した。5分後に粒径測定を行った。各サンプルに関し、最低3回測定を行った。
【0188】
空気力学的粒径は、粒子の幾何学的粒径、形状及び密度から成る。空気力学的粒径分布(APSD)は、吸入製品のインビトロ特性評価における臨界パラメータとして一般に認識されている。というのも、エアロゾルクラウド中の粒子が吸入後にどこに沈着しているかを確定するのが、そのクラウドのAPSDであるためである。空気力学的粒径5μm未満の薬物含有粒子が治療上有効であることは一般に認められており、粉末(すなわち、多数の粒子)中におけるかかる粒子の量は、一般に、微粒子質量(FPM)、微粒子量(FPD)又は細粒分(FPF)として知られている。5μmを超える粒子は一般に、中咽頭に当たり嚥下される。
【0189】
本研究において生成された粉末のAPSDは、次世代インパクター(NGI)及び高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて測定した。NGIは、下記に示すように、異なるカットオフ径の7つのステージを含む。FPMは、NGIの結果を挿入することにより求められる。しかしながら、本研究では、FPMは、ステージ3以降沈着した薬物量をNGIのマイクロオリフィスコレクター(MOC)に加えることにより算出されるFPM<4.46μm(すなわち、空気力学的粒径が4.46μm未満の粒子)として評価する。
【0190】
【表3】
【0191】
エアロゾルクラウドの生成に使用される装置は、製剤のエアロゾル性能に大きな影響を及ぼす。DPIシステムは一般に、所望の粉末デアグロメレーションを達成するために高分散エネルギーを必要とする。微粒子化した粉末製剤を含有するDPIシステムは、粗い担体を含有する二成分粉末製剤と比べ、高分散エネルギーを必要とするだけである。高抵抗装置は、高分散エネルギーを供給し、これを、本実験および後の製品製造に採用した。
【0192】
各実験において、40mgの噴霧乾燥粉末をサイズ3のヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)カプセルに充填し、高抵抗(60L)の Plastiape単回用量装置を使用し、その投与量を送達した。NGI法およびHPLC法を以下説明する。
【0193】
NGI
装置
NGI、HCP5 コプリーポンプ(Copley Pump)、TPK、流量計、ガラス漏斗、メスフラスコ(100ml及び50ml)
材料
脱イオン水、アセトン、ガラスマイクロファイバーフィルター(グレードGF/A、8.1cm)
すすぎ溶媒:脱イオン水
コーティング溶液の調製
・プルロニックF68を100mg秤量し、浄化した100mlメスフラスコに入れる。
・グリセロール3mlを加え、アセトンを用いて内容物の量を満たす。
・内容物を勢いよく振り、確実に完全に混合させる。
コーティング
適切なピペットを使用し、コーティング溶液を、表4に示すNGIカップに移す。
【0194】
【表4】
【0195】
カップトレーを緩やかに傾け、確実に液体が均一にカップを覆うようにし、その後、空気乾燥させる。
【0196】
NGIを設定する
・ユーザーマニュアルに従ってNGIを組み立てる。
・プレセパレーターのカットプレート(cut plate)のカップに希釈液10mLを入れる。
・外部フィルターホルダーに、新しいフィルターを設置する。
・ポンプを始動させ、インパクターを介した流量を60LPM+−3LPMに調節する。
・P2およびP3圧力をチェックし、且つ、P3/P2が0.5以下であることをチェックする。
・クリティカル・フロー・コントローラーを使用し、空気流を止めるが、ポンプのスイッチは切らない。
【0197】
投与量の分散
・Plastiape高抵抗装置をマウスピースアダプター内に挿入し、吸入器の末端部が確実にマウスピースアダプターの内面と同一平面となるようにする。
・装置を直立に保持し、装置を開け、カプセルをチャンバーに装填する。装置を閉じる。
・装置上の2つのボタンを同時に押し、カプセルを穿孔する。装置を作動させ、送達の準備が整う。
・USPインダクションポート上にマウスピースアダプターと装置を設置する。
・クリティカルフローコントローラーを4秒間作動させる。投与量が送達される。
【0198】
NGIサンプル溶液の調製
・装置をマウスピースアダプターから取り外す。
・装置を開け、カプセルをメスフラスコに入れる。装置を洗浄し、その洗浄液をメスフラスコ内に流し込む。
・スロートからマウスピースを取り外し、少量の希釈液で洗浄し、その希釈液をメスフラスコ内に流し込む。
・慎重にプレセパレーターからスロートを取り外し、確実に全内面が完全に濡れ洗浄されるように洗浄し、その洗浄液を100mlのメスフラスコ内に流し込む。
・NGIからプレセパレーターをゆっくりと取り外し、栓を排出口に挿入する。
・希釈液90mlをプレセパレーターに入れ、栓を注入口に挿入する。
・プレセパレーターを揺動回転運動で2分間振盪する。内容物を100mlのフラスコ内に移す。量の調整はしないこと。
・NGIを開け、各カップに希釈液10mlを入れる。
・カップトレーを2分間以上緩やかに揺動させる。カップ内にAPIの残留が見られる場合、溶解するまでカップトレーを引き続き揺動させる。
・サンプル溶液をガラス瓶に入れ(Vial up)し、HPLCにより分析する。
【0199】
【表5】
【0200】
【表6】
【0201】
得られた粉末を分析した。その結果を表7及び表8に示す。その結果から、吸入の条件を満たした、幾何学的粒径分布の狭い粉末含有粒子が得られたことが実証された。この粉末は、許容可能なFPMを特徴とした。
【0202】
【表7】
【0203】
【表8】
【0204】
これらの結果から、前記製剤およびプロセスは、臨床用途に好適であるとみなされた。
【0205】
<実施例2> 本発明の噴霧乾燥粒子の調製における抗接着化合物の役割
種々の抗接着剤の作用を調べた。この目的のために、グリシン及びロイシンを有望な抗接着剤とみなした。懸濁液サンプルは、表9に示す組成物を用いて調製した。オリゴG及び/又はロイシン/グリシンを水に溶解し水相とした。DPPCをエタノールに溶解し有機相とした。シルバーソンホモジナイザーを用いて6,000rpmで均質化しながら、水相をゆっくりと有機相に添加し、下記の如く顕微溶液化した。
【0206】
110psiの空気供給部に接続された実験室レベルのマイクロフルイダイザー(モデルM−110S、マイクロフルイディックス社(Microfluidics Company)、ニュートン、マサチューセッツ州(MA))を、このプロセスで使用した。混合物質をマイクロフルイダイザーのバルク容器に充填し、バルクチャンバの頂部に戻る前に、マイクロフルイダイザーの相互作用チャンバを通過させた。各サイクル/通過の後、装置と懸濁液は、その後の処理の前に冷却させた。この物質を5サイクル処理し、顕微溶液化懸濁液を生成した。
【0207】
入口温度120℃、ファン回転速度50及びポンプ速度10で、サンプルを 噴霧乾燥させた。生成された粉末をガラスバイアルに採取し、一晩放置した。
【0208】
この粉末の幾何学的粒径分布およびAPSDを上記方法により分析した。
【0209】
【表9】
【0210】
実験4、実験5及び実験6で生成された粉末を分析した。その結果を表10および表11に示す。その結果から、抗接着剤の添加は、生成された粉末の幾何学的粒径分布に顕著な影響を及ぼさなかったことが分かる(表10)。またその結果から、抗接着剤の添加により、FPM及び放出用量のいずれもが増加したことも分かる(表11)。表11に示すように、グリシン又はロイシンを用いて調製した製剤間では、わずかな差異しかなかった。
【0211】
【表10】
【0212】
【表11】
【0213】
<実施例3> 本発明の噴霧乾燥粒子の調製に対するDPPCの種々濃度の影響
種々のリン脂質濃度の影響を調べた。表12に示す組成物と、実施例2に記載の手順を用いて懸濁液サンプルを調整した。これらのサンプルを、実施例2に記載したパラメータを用いて噴霧乾燥させた。生成された粉末を、ガラスバイアルに採取し、一晩放置した。これらの粉末の幾何学的粒径分布およびAPSDを、実施例1に記載した方法により分析した。
【0214】
【表12】
【0215】
生成された粉末を分析した。その結果を表13及び表14に示す。その結果から、DPPCを5%まで減らし、グリシンを15%に増やした場合、幾何学的粒径分布において顕著な差異は無かったことが分かる(表13)。しかしながら、FPMはわずかに減少した。これは恐らく静電気によるもので、DPI製品によく見られるように、粉末の熟成後、これは変化するであろうと予想された。
【0216】
【表13】
【0217】
【表14】
【0218】
実験5及び実験9において生成された粉末は、周囲条件下で2週間の生成物緩和後、APSDを分析した。その結果を表15に示す。その結果から、FPMの沈着の向上が見られ、これは、本生成物に関して設定した15mgという目標を達成している。
【0219】
【表15】
【0220】
<実施例4> 生理食塩水への暴露による本発明の噴霧乾燥粒子からのオリゴGの遊離
少量の添加物及び本発明の粉末の持続親水性により、液体への暴露に際し、非常に迅速且つ効率的なオリゴGの遊離が可能となる。これは、実施例1で調製した製剤を生理食塩水に暴露したインビトロ設定で、変動濃度及び種々の期間に対して示された。オリゴGの略60%が1分後に遊離し、少量の流体を乾燥粉末に適用した場合、飽和に近い濃度130mg/mlが得られた。
【0221】
【表16】
【0222】
<実施例5> 共粉砕法による高濃度アルギネートオリゴマー含有噴霧乾燥粒子の調製
タービュラミキサーセット(Turbula mixer set)を使用し、101rpmで10分間、4.9gのオリゴGを0.1gのステアリン酸マグネシウム(2w/w%)と混合した。2インチのエアジェットミルを使用し、その粉末混合物を製粉した。ミルは、接線流で作動させた、すなわち、空気と粉末とが、製粉室内において同一方向に供給される。窒素ガスを使用し、供給物質を製粉室内に吸引するベンチュリ供給システムを用いて、粉末混合物をミルに供給した。ミルの排出口には、生成物フィルターバッグが装着されており、そのフィルターバッグを通して、粉砕空気を排出し、製粉された粉末混合物を採取する。製粉条件は、以下のように設定した:
・粉砕気体:乾燥窒素ガス
・粉砕圧:90psi
・供給圧:85psi
・室内条件:周囲環境
・通過回数:1
【0223】
実施例1に記載のように、レーザー回折法とNGIを使用し、製粉された粉末を評価し、APSDを求めた。結果は、表17及び表18にまとめてある。粒径の結果はまずまずである(表17)が、APSDの結果(表18)は、FPMとして沈着したオリゴGはわずか約4mgであり(目標は15mg)、エアロゾル性能が低いことを示している。
【0224】
【表17】
【0225】
【表18】
【0226】
<実施例6> 油中水型エマルジョン法による高濃度アルギネートオリゴマー含有噴霧乾燥粒子の調製
本実験用有機溶媒として、ジクロロメタン(DCM)を選択した。表19に示すパラメータを用いて、製剤を調整し噴霧乾燥させた。具体的には、DPPCを有機溶媒に溶解し、オリゴGを脱イオン水に溶解した。シルバーソンホモジナイザーを使用し、6000rpmで均質化しながら、水相を有機相に滴下した。供給物質を混合しながら噴霧乾燥を行った。
【0227】
【表19】
【0228】
生成された粉末をガラスバイアルに採取し、一晩放置した。実施例1において記載した方法を用いて、その粉末の幾何学的粒径分布及びAPSDを分析した。下記の生成された粉末は、粘着性があり非常に接着性の高いことが分かった。この粉末の幾何学的粒径分布は、所要吸入範囲(すなわち、d10=1.44μm、d50=6.18μm、d90=15.51μm)より広かった。この粉末は、FPMとして沈着したのは約2.6mgであり、低いエアロゾル性能を特徴とした(表20)。
【0229】
【表20】
【0230】
<実施例7> 本発明の噴霧乾燥粒子の放射標識
実施例1において調製した噴霧乾燥粒子を、図1に示す装置を用いて放射標識した。簡潔に説明すると、99m過テクネチウム酸(400Mbq)101を充填したテクネガス発生装置により発生させたテクネガスを、真空ポンプ103を使用し濾紙102上に配置した乾燥粒子(300mg)層上に引き込んだ。遊離テクネガスは、6w/w%EDTA溶液104中に捕捉した。
【0231】
乾燥放射標識又は非放射標識粒子を各々40mgずつ、サイズ3のHPMCカプセル(各n=3)に充填した。放射標識粒子及び非放射標識粒子の空気力学的粒径分布は、カプセルを充填したミアット・モノドーズ(Miat Monodose)吸入器をマルチステージリキッドインピンジャー(MSLI;(コプリー・サイエンティフィック(Copley Scientific)、英国))に装着して求めた。
【0232】
インダクションポート(ステージ1)、4つの液体ステージ(ステージ2〜5)及びステージ6の濾紙に沈着した粒子は、重量測定により定量化した。MSLIの各ステージにおける放射線量は、キュリーメータを用いて、また、ある時は、感受性増強のためシンチグラフィーイメージングを用いて定量化した。
【0233】
結果は、乾燥粉末形態の本発明の噴霧乾燥粒子は、8.81±2.06MBq/100mg粒子(n=4)のテクネガスを取り込み、成功裏に放射標識できることを示しており、放射線量は、MSLIへの放出時に測定した。図2は、重量及び放射線量により放射標識粒子及び非放射標識粒子の平均パーセント分布を示す(放射標識粒子のみ、キュリーメータを用いて測定した)。ステージ2において、放射標識は、この方法により検出されなかったことから、その線量は、検出レベルを下回っていたものと思われる。ガンマカメライメージングにより求めたこのステージの放射線カウントから、そのパーセント分布は、重量による放射標識粒子及び非放射標識粒子のものと同様である(略6.8%)ことが確認された。測定した3つのパラメータの分布プロファイルは類似しており、(a)放射標識プロセスが、粒子の空気力学的特性に影響を与えなかったこと;及び(b)テクネガスが粒子に均一に付着したことを示した。
【0234】
この研究により、採用した放射標識法により、テクネガスが空気力学的特性に影響することなく本発明の噴霧乾燥粒子に付着可能となったこと、また、そのため、本発明の標識噴霧乾燥粒子は、被験体による吸入後の生体内分布に関する信頼できるシンチグラフィデータを提供することが実証された。
【0235】
<実施例8> 放射標識乾燥粉末形態の本発明の噴霧乾燥粒子の肺沈着
本研究の第1の目的は、シンチグラフィー法を用いて、本発明の噴霧乾燥粒子の噴霧溶液として又は乾燥粉末形態で嚢胞性線維症患者に投与した場合のオリゴGの肺沈着を測定することであった。第2の目的は、中枢気道と周辺部と比較した放射標識の割合(中枢/周辺(C/P)指標)を算出することを含め、罹患肺における2つの製剤の放射標識分布パターンを測定すること;及び、ネブライザ又は乾燥粉末吸入器貯留槽内における滞留と呼気フィルター上の沈着を含む放射標識の肺外沈着(すなわち、中咽頭及び胃)の特性を明らかにすることであった。
【0236】
本研究は、10名の嚢胞性線維症患者における非盲検双方向無作為化クロスオーバー研究であった。被験体は、ミアット・モノドーズ乾燥粉末吸入器により3つのカプセルで送達された、本発明の噴霧乾燥粒子(実施例1の噴霧乾燥粒子)として製剤化されたオリゴG、CF−5/20の単一用量96mg、及び2日〜14日間の休薬期間を隔てて、サイドストリームプラスネブライザにより送達された、エアロゾル化されたオリゴG、CF−5/20、6%溶液の単一用量1.5mL(90mg)の投与を受けた。各処置は、合計10MBqの99mTcで放射標識した。真空ポンプを用いて、テクネガスをDPI層上に引き込み、DPIの空気力学的特性に影響を及ぼすことなくTcをDPIに付着させた(実施例7)。
【0237】
胸部/腹部の連続した前面画像と背面画像及び頭部/頸部の側面画像を取得した。更に、低エネルギー高分解能コリメータを装着した視野53.3cmのシーメンス社製ガンマカメラE−Cam(Siemens E-Cam gamma camera)を使用し、投与前後に、装置ハードウェアの画像を取得した。
【0238】
画像解析は、ウエブリンク(WebLink)ソフトウェアを使用し実施した。
【0239】
装置内における滞留を含め、放射標識の肺沈着及び肺外沈着の特性を明らかにした。沈着パラメータに対する製剤形態(本発明の噴霧乾燥粒子対溶液)の影響を、対応t検定により評価した。
【0240】
結果から以下のことが分かった:
・本発明の噴霧乾燥粒子の単一用量吸入は、良好な耐容性を示した。
・粒子の肺沈着は、噴霧溶液と比較し増加(図3):平均総放射能カウントは、18,766±5,798対3,982±1,277
・6%溶液の肺沈着率は、17.3%と算出された。
・肺に沈着した粒子の割合は、40.0±12.4%(n=10)であった。
・当初投与量の略50±17%及び75±4%が、吸入器およびネブライザにそれぞれ残留した。
・中咽頭沈着(図4)は、噴霧溶液において顕著に高かった(p=0.009)(10.1%対1.6%)。
・うがい液中のパーセント投与量、胃内に沈着したパーセント投与量及び算出したC/P指標は、2つの製剤形態間で顕著な差はなかった。
【0241】
結論として、乾燥粉末形態の本発明の噴霧乾燥粒子の使用により、6%噴霧溶液と比較して、オリゴGの肺沈着の著しい向上(2.3倍)が示された。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図4C
図4D