(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6707085
(24)【登録日】2020年5月21日
(45)【発行日】2020年6月10日
(54)【発明の名称】現場診断システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/543 20060101AFI20200601BHJP
G01N 33/569 20060101ALI20200601BHJP
G01N 37/00 20060101ALI20200601BHJP
【FI】
G01N33/543 521
G01N33/569 L
G01N37/00 101
【請求項の数】16
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-526735(P2017-526735)
(86)(22)【出願日】2015年8月5日
(65)【公表番号】特表2017-529543(P2017-529543A)
(43)【公表日】2017年10月5日
(86)【国際出願番号】CN2015000567
(87)【国際公開番号】WO2016019701
(87)【国際公開日】20160211
【審査請求日】2018年6月26日
(31)【優先権主張番号】62/033,116
(32)【優先日】2014年8月5日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517037951
【氏名又は名称】サンワ バイオテック リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SANWA BIOTECH LTD
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】デュトリー, イザベル セシール アンジェル
(72)【発明者】
【氏名】イップ, キン サン
(72)【発明者】
【氏名】チウ, ケルビン
(72)【発明者】
【氏名】イム, ワイ ラム ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】ラウ, ヤオ ティーン リチャード
【審査官】
高田 亜希
(56)【参考文献】
【文献】
中国特許出願公開第103403547(CN,A)
【文献】
特開2012−095583(JP,A)
【文献】
特開2007−178428(JP,A)
【文献】
特表2009−525728(JP,A)
【文献】
特表2010−503516(JP,A)
【文献】
特開2013−024818(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00−37/00
G01N 33/48−33/98
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中の分析物を検出するための装置であって、
前記分析物と相互作用または反応するための第1部分と、各々マイクロポンプが配置されている複数のリザーバとを備えたマイクロ流体カートリッジを収容するように構成されたカートリッジ室と、前記マイクロ流体カートリッジと接続するように構成され、前記マイクロ流体カートリッジ内の前記マイクロポンプを所定のタイミング、速度および順序で動作させる電流を供給する電気コネクタとを備えるマイクロ流体カートリッジ駆動部と、
前記マイクロ流体カートリッジの第1部分を収容するように構成された収容トレイと、前記第1部分に光を照射するように構成された照明システムと、前記第1部分に前記分析物が存在する場合に前記第1部分から生成される信号を検出するように構成された光センサとを備える光学検査部と、
定量的および定性的分析、インターフェース、および前記光学検査部から得られた信号の記憶を制御し、かつ、前記装置の動作を制御および監視するように構成された制御部とを有することを特徴とする装置。
【請求項2】
前記光センサは、高解像度カメラと、前記高解像度カメラに組み込まれた対物レンズとを備えることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記高解像度カメラは、デジタルカメラであることを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記照明システムは、波長400〜500nmのダイオードレーザを備えることを特徴とする請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記分析物はインフルエンザウイルス抗原であり、
前記ダイオードレーザの波長は488nmであることを特徴とする請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記マイクロ流体カートリッジ駆動部を制御するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項7】
内蔵充電池からなる電源を有することを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記マイクロポンプはハイドロゲルで構成されており、前記マイクロ流体カートリッジ駆動部は、前記ハイドロゲルの伸縮を制御することを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項9】
マイクロ流体カートリッジであって、
各々マイクロポンプが配置された複数のリザーバであって、分析物を含む試料を収容するように構成されたリザーバと、試薬を保持するように構成されたリザーバとからなる複数のリザーバを備えるマイクロ流体チップと、
前記マイクロ流体チップに着脱可能に接合された診断チップとを有し、
前記マイクロ流体チップは、前記試料および前記試薬を前記マイクロポンプにより前記複数のリザーバから前記診断チップに移動させるように構成され、前記診断チップには、分析物と相互作用または反応し、所定条件下で信号を生成するように構成された検出部が配置されていることを特徴とするマイクロ流体カートリッジ。
【請求項10】
前記検出部には、前記分析物と反応または相互作用する分子が含まれることを特徴とする請求項9に記載のマイクロ流体カートリッジ。
【請求項11】
前記マイクロポンプはハイドロゲルで構成されており、前記ハイドロゲルは、信号および電力に応じて伸縮し前記マイクロポンプを作動させることを特徴とする請求項9に記載のマイクロ流体カートリッジ。
【請求項12】
分析物検出方法であって、
分析物を含む試料と試薬を、前記分析物と相互作用または反応するための第1部分と、各々マイクロポンプが配置されている複数のリザーバとを備えたマイクロ流体カートリッジ上に配置する工程と、
前記マイクロ流体カートリッジを収容するように構成されたカートリッジ室に前記マイクロ流体カートリッジを接続する工程と、
電気的接続を介して前記カートリッジ室から前記マイクロ流体カートリッジに電流を供給し、前記試料および前記試薬を前記マイクロ流体カートリッジのマイクロ流体チャネルを通じて、所定のタイミング、速度および順序で前記マイクロ流体カートリッジの前記第1部分に移動させる工程と、
所定条件下で前記マイクロ流体カートリッジの第1部分から信号を生成させる工程と、
光センサにより前記信号を検出してデータを収集する工程と、
マイクロプロセッサにより前記データを解析して定量的または定性的に前記分析物の存在を判定するステップとを含み、
前記マイクロ流体カートリッジの第1部分には、前記分析物と相互作用または反応し、前記所定条件下で信号を生成するように構成された検出部が配置されていることを特徴とする方法。
【請求項13】
前記信号は、蛍光信号であることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記光センサは、高解像度カメラであることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記高解像度カメラは、デジタルカメラであることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記マイクロポンプはハイドロゲルで構成されており、前記ハイドロゲルは、信号および電力に応じて伸縮し前記マイクロポンプを作動させることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
本出願は、2014年8月5日付け米国仮特許出願第62/033,116号に基づく優先権を主張するものであり、その内容はすべて、本明細書中に参照により援用される。
【技術分野】
【0002】
本発明は、分析物を検出するための装置およびその使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
従来の試料(例えば、被検者の血清、体液、鼻腔/咽頭スワブまたは唾液中に存在する病原体)中の分析物を検出するための装置は、比較的多量の試料または分析物を必要とするものであった。また、試料を大型の分析機器等の設備が整った試験室に輸送し、試料調製、バイオアッセイ試験(生物検定)または光学検査などの複数の処理を行う必要があった。したがって、従来の多くの分析物検出装置は、高価で、検出に時間を要するものであった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記の問題を改善した分析物検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、試料中の分析物を検出するための装置であって、(a)分析物と相互作用または反応するための第1部分を備えたマイクロ流体カートリッジを収容するように構成されたカートリッジ室と、マイクロ流体カートリッジと電気的に接続するように構成された電気コネクタとを備えるマイクロ流体カートリッジ駆動部と、(b)マイクロ流体カートリッジの第1部分を収容するように構成された収容トレイと、第1部分に光を照射するように構成された照明システムと、第1部分に分析物が存在する場合に第1部分から生成される信号を検出するように構成された光センサとを備える光学検査部と、(c)定量的および定性的分析、インターフェース、および光学検査部から得られた信号の記憶を制御し、かつ、装置の動作を制御および監視するように構成された制御部とを有することを特徴とする装置である。
【0006】
本発明の他の態様は、(1)分析物を含む試料を収容するように構成されたリザーバと、試薬を保持するように構成されたリザーバとからなる複数のリザーバを備えるマイクロ流体チップと、(2)マイクロ流体チップに着脱可能に接合された診断チップとを有し、マイクロ流体チップは、試料および試薬を複数のリザーバから診断チップに移動させるように構成され、診断チップには、分析物と相互作用または反応し、所定条件下で信号を生成するように構成された検出部が配置されていることを特徴とするマイクロ流体カートリッジである。本発明のさらに他の態様は、分析物検出方法であって、(a)分析物を含む試料と試薬をマイクロ流体カートリッジ上に配置する工程と、(b)マイクロ流体カートリッジを収容するように構成されたカートリッジ室にマイクロ流体カートリッジを接続する工程と、(c)電気的接続を介してカートリッジ室からマイクロ流体カートリッジに電流を供給し、試料および試薬をマイクロ流体カートリッジのマイクロ流体チャネルを通じてマイクロ流体カートリッジの第1部分に移動させる工程と、(d)所定条件下でマイクロ流体カートリッジの第1部分から信号を生成させる工程と、(e)光センサにより信号を検出してデータを収集する工程と、(f)マイクロプロセッサによりデータを解析して定量的または定性的に分析物の存在を判定する工程とを含み、マイクロ流体カートリッジの第1部分には、分析物と相互作用または反応し、所定条件下で信号を生成するように構成された検出部が配置されていることを特徴とする方法である。
【0007】
本発明の利点は、反応から検出まで一体的に行う機器/方法を用いて、比較的少量または小容積(例えば、数μl〜数百μl)の試料から分析物を検出できることである。本発明は、複雑な操作や試験室への試料輸送を必要としないため、簡単かつ迅速に分析物の検出を行うことができる。したがって、本発明は、特に現場作業員にとって利便性が高い。また、実験室への試料の輸送中に分析物の品質が低下するリスクを大幅に低減することができる。
【0008】
本発明の別の利点は、試料の調製をほとんどまたは完全に必要としないことである。そのため、本発明では、従来の診断方法またはシステムと比較して処理時間を低減することができる。
【0009】
本発明のさらに別の利点は、様々な分野の診断および食品安全性分析に適用できることである。具体的な適用例として、動物の免疫診断(例えば、豚インフルエンザウイルス(例えば、H1N1)感染、豚繁殖・呼吸障害症候群(PRRS)、ウシ口蹄疫(FMD)、豚コレラ(CSFV)感染、および牛海綿状脳症(BSE)感染症など)、食品安全性試験(例えば、食物アレルゲン(ピーナッツ、シーフードなど)、アフラトキシン、メラミンの検出)およびヒト被検者の臨床診断(例えば、感染症(性感染症(STD)、エボラウイルス、中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS‐CoVの)およびインフルエンザウイルス感染など)、熱帯病(デング熱ウイルス、日本脳炎ウイルス感染など)、および、病理学的経路において抗原/抗体の免疫学的メカニズムを備える新興感染症の診断)などが挙げられる。本発明は、同一の試料および同一の処理により複数の分析物の検出を行うように構成することができる。これにより、複数の疾患/分析物の検査にかかるコストおよび処理時間を大幅に低減することができる。
【0010】
以上のように、本発明によれば、低コスト、省時間、省スペースで、高度なスキルおよび技術者を必要とすることなく、迅速かつ効率的に完全な現場診断(分析物検出)を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
以下では、本発明の具体的な実施形態について、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る診断システムのブロック図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態に係る診断システムの概略図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態に係る診断システムのマイクロ流体カートリッジ駆動部の概略図である。
【
図4】
図4は、本発明の一実施形態に係る診断システムの光学検査部の概略図である。
【
図5】
図5は、本発明の一実施形態に係るマイクロ流体カートリッジの概略上面図である。
【
図6】
図6は、本発明の一実施形態に係るマイクロ流体カートリッジの概略下面図である。
【
図7】
図7は、本発明の一実施形態に係るマイクロ流体カートリッジの概略分解図である。
【
図8】
図8は、本発明の一実施形態に係るマイクロ流体カートリッジの概略側面図である。
【
図9】
図9は、本発明の一実施形態に係る診断チップ表面の被覆処理および検出部形成処理のフローチャートである。
【
図10】
図10は、蛍光標識されたH7N9抗原からなる検出部を示す。
【
図11】
図11は、本発明の一実施形態に係る現場診断方法および診断システムの動作を示すフローチャートである。
【
図12】
図12は、本発明の一実施形態に係る診断システムの光学検査部の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書中の「有する」という用語は、ある要素を含むがこれに限定されないことを意味する。
【0013】
本明細書中の「分析物」という用語は、人間や動物などの被検体から採取した体液や血清試料中に存在する病原体および生体分子を含む。
【0014】
図1および
図2は、診断装置20と、診断装置20と連動するマイクロ流体カートリッジ22とを有する現場診断システムを示す。マイクロ流体カートリッジ22は、マイクロ流体チップ24および診断チップ26を備え、分析物を含む少なくとも1つの試料を収集および操作するように構成されている。マイクロ流体カートリッジ22はさらに、少なくとも1つの試薬を収容または保持するように構成されている。診断装置20は、制御部28、マイクロ流体カートリッジ駆動部30、光学検査部32および表示部34を備える、小型で携帯および手持ち可能な装置である。制御部28は、マイクロ流体カートリッジ駆動部30、光学検査部32および表示部34に接続され、これらを制御するように構成されている。マイクロ流体カートリッジ駆動部30は、マイクロ流体カートリッジ22を収容および駆動するように構成されている。マイクロ流体カートリッジ駆動部30は、試料および試薬が所定の経路を通ってマイクロ流体チップ24から診断チップ26へ移動するようにマイクロ流体カートリッジ22を駆動する。光学検査部32は、診断チップ26を収容および検査して分析物の存在を判定するように構成されている。表示部34は、上記分析/診断の結果に関連する情報をユーザに表示するように構成されている。
図2に示す診断装置20は、制御部28、マイクロ流体カートリッジ駆動部30、光学検査部32および表示部34を備え、診断装置20のフロントパネル40には、マイクロ流体カートリッジ22および診断チップ26をそれぞれ収容するためのマイクロ流体カートリッジ収容孔36および診断チップ収容孔38が設けられている。
【0015】
図3に示すように、マイクロ流体カートリッジ駆動部30は、マイクロ流体カートリッジ22を収容可能なカートリッジ室42を備える。カートリッジ室42は、マイクロ流体カートリッジ22のインターフェースとして機能する電気コネクタ44を備える。カートリッジ室42は、電気コネクタ44を介してマイクロ流体カートリッジ22の駆動/制御およびマイクロ流体カートリッジ22への電力/電流供給を行い、試料および試薬を所定の経路を通じてマイクロ流体チップ24から診断チップ26へ移動させる。試料および試薬の移動経路については、以下で詳述する。制御信号および電力は、接続ケーブル46を通じて電気コネクタ44に供給される。
【0016】
図4に示すように、光学検査部32は、現場診断に適するように、小型かつ軽量(数kg未満)に構成される。光学検査部32は、光センサ48、照明システム50、および、支持パネル54により支持された診断チップ収容トレイ52を備える。診断チップ収容トレイ52は、診断チップ収容トレイベイ56から離脱可能に配置されており、診断チップホルダ58およびトレイボタン60を備える。診断チップ収容トレイ52の離脱は、トレイボタン60を介して行われる。待機状態では、診断チップ収容トレイ52は、診断チップ収容トレイベイ56内(例えば、ドッキング位置)に収納される。このとき、診断チップ収容トレイ52は、ばねで付勢されながらフックにより診断チップ収容トレイベイ56に固定される。トレイボタン60を押すと、フックが解除され、診断チップ収容トレイ52がばねの復元力によりドッキング位置から診断チップ収容トレイベイ56の外に向かって押し出される。その結果、診断チップ収容トレイ52が収容孔38から装置20の外部に突出するため、診断チップホルダ58に診断チップ26をセットすることが可能となる。診断チップホルダ58に診断チップ26をセットした後、診断チップ収容トレイ52を診断装置20内に押し込むことで、診断チップホルダ58が診断チップ収容トレイベイ56内のドッキング位置に収納される。
【0017】
照明システム50は、診断チップ26に所定波長のレーザビームを照射可能なレーザダイオードを備える。診断チップ26にレーザビームが照射されると、信号が生成される。レーザビームの波長は、診断チップ26から生成される信号が光センサ48により検出可能な値となるように選択される。レーザビームの強度および波長は、検出対象の分析物に応じ、制御部28を介してユーザにより選択/制御される。診断チップ26に対するレーザビームの入射角は、レーザビームの反射を回避し、高品質な信号を生成可能な値に設定される。レーザビームの波長は、例えば、465〜500nm、400〜700nm、430〜465nm、500〜550nm、550〜580nm、580〜620nmまたは620〜700nmの範囲内である。
【0018】
診断チップ収容トレイ52がドッキング位置にあるとき、診断チップホルダ58は光センサ48および照明システム50の下方に配置される。光センサ48は、照明システム50により診断チップホルダ58に固定された診断チップ26にレーザ光を照射することで生成された信号を受信するためのカメラ62および対物レンズ64を備える。カメラ62および対物レンズ64により受信された信号は、制御部28に送られる。制御部28は、マイクロプロセッサ(CPU)、メモリおよび入力/出力(I/O)インターフェースを備える。制御部28は、定量的および定性的分析、インターフェース、および、光学検査部32により得られた信号の記憶を制御する。また、制御部28は、診断装置20のすべての動作を制御および監視する。
【0019】
図5および
図6に示すように、マイクロ流体カートリッジ22は、マイクロ流体チップ24と、マイクロ流体チップ24に接合された診断チップ26を備える。図示された実施例では、厚さ1〜10mmのクレジットカードよりも小さな寸法を有する。マイクロ流体チップ24は、カートリッジ室42の電気コネクタ44を介して制御信号および電力を受け取るための電気接続インターフェース78、上部68、および、上部68に接合された下部70を備える。本実施例では、上部68および下部70は、接着剤または溶接により接合される。下部70は、プラスチックや樹脂材料等の電気絶縁材料により構成される。
図5に示すように、上部68は、複数のマイクロ溝66、診断チップ26に流体接続されたチャネル開口72、および、チャネル開口72上に診断チップ26を接合するための接着剤74を備える。
図6に示すように マイクロ流体チップ24の下部70には、微多孔膜76を配置するための溝が設けられる。
【0020】
図7および
図8を参照すると、上部68は、アクリル、ポリカーボネート、またはこれらと同種のプラスチック材料で構成される。ユーザがマイクロ流体チップ24内の流体の状態を観察することができるように、上部68は透明に構成される。上部68は、例えば、プラスチック射出成形により得られた成形体に熱エンボス加工、微細加工などの処理を施すことにより製造される。上部68は、複数のリザーバ80と、リザーバ80内に設けられた複数のマイクロ溝66を備える。複数のリザーバ80は、マイクロ溝66を通じて上部68の上面から試料を受け取るリザーバ80と、分析物に対する相互作用分子と分析物間の反応または相互作用を補助するための試薬を保持するリザーバ80を含む。リザーバ80内に保持される試薬は、洗浄緩衝液またはブロッキング緩衝液である。本発明の一実施形態において、洗浄緩衝液はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)であり、ブロッキング緩衝液はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)とウシ血清アルブミン(BSA)の混合液である。試料は、マイクロ流体チップ24から診断チップ26に移動し、診断チップ26において分析物と反応/相互作用する。
図8に示すように、各リザーバ80のマイクロ溝66の下方に位置する上部68と下部70との境界部には、少なくとも1つのマイクロ流体チャネル86が設けられる。試料および試薬は、マイクロ流体チャネル86を通じてマイクロ流体チップ24から診断チップ26に向かって移動し、チャネル開口72に到達する。各リザーバ80には、少量のハイドロゲル82で構成されたマイクロポンプが配置されている。ハイドロゲル82は、下部70に形成された導電性回路トレース84に接触して配置されている。マイクロポンプは、導電性回路トレース84から供給された電流により動作する。マイクロポンプは、ハイドロゲル82を伸縮させることで、マイクロ流体チャネル86を通じて、試料と試薬を混合しつつチャネル開口72まで移動させる。ハイドロゲル82の伸縮は、導電性回路トレース84に接続された電気接続インターフェース78と電気コネクタ44間の接続を通じて診断装置20のマイクロ流体カートリッジ駆動部30から供給される信号および電力により制御される。マイクロポンプは、汚染および相互汚染を防止するため、カプセル化されている。各リザーバ80の容積は、1〜80μlの範囲である。
【0021】
診断チップ26は、ガラス、シリコンまたはプラスチックで構成され、接着剤74によりマイクロ流体チップ24に着脱可能に接合される。診断チップ26の下面(すなわち、チャネル開口72に対向する面)は、チャネル開口72と流体連通しており、試料中の分析物と反応/相互作用して所定条件下で信号を生成する(例えば、特定の波長のレーザ光を照射した場合に蛍光信号を生成する)複数の検出部を備える。各検出部には、分析物と反応/相互作用する少なくとも1つの相互作用分子が配置されている。相互作用分子は、検出が可能な特定のウイルス/細菌(例えば、抗原)と結合するタンパク質やペプチドである。チャネル開口72から吸い上げられた試料と試薬の混合液により検出部が覆われるように、検出部はチャネル開口72の周囲1〜15mmの範囲内に配置される。診断チップ26の下面には、後工程で形成される検出部が変形することなく診断チップ26表面に固定されるようにするための被覆が形成される(すなわち、相互作用分子と分析物の反応が起こる検出部の位置を固定する)。また、被覆により、分析物の反応/相互作用を生成するための親水性環境が構築される。親水性環境は、背景ノイズ信号の原因となる非特異反応/相互作用を抑制するように最適化される。被覆の形成後、診断チップ26の下面に検出部が所定のパターン(例えば、アレイ)で形成される。検出部の形成は、マイクロアレイプリンタを用いたドロップオンデマンド方式により行われる。試薬と試料の混合液が検出部に到達した後、診断チップ26がマイクロ流体チップ24から取り外され、診断チップホルダ58に収容され、光学検査部32による分析物の検出が行われる。診断チップ26に残存する試料と試薬の混合液は、診断チップ26をマイクロ流体チップ24から取り外す前または後に乾燥される。
【0022】
本発明の一実施形態として、診断チップ26表面の被覆処理およびH7N9インフルエンザウイルスの抗原等を含む検出部の形成処理の手順について、
図9および以下の説明で述べる。
【0023】
洗浄工程88:ガラス製の診断チップ26を、アセトンを含む250mlビーカーに浸漬し、5分間超音波処理した。診断チップ26を上記ビーカーから取り出した後、エタノールを含む250mlビーカーに浸漬し、さらに5分間超音波処理を行った。
【0024】
ヒドロキシル化工程90:250mlビーカーに95体積%濃硫酸75mlおよび34.5体積%過酸化水素水25mlを入れ、過酸化水素の最終濃度が8.63%、濃硫酸および過酸化水素水の体積比が3:1の溶液(ピラニア溶液)を調製した。次に、洗浄工程88で得られた診断チップ26を上記ピラニア溶液に室温で2時間浸漬した。診断チップ26をピラニア溶液から取り出し、ピラニア溶液を廃液ボトルに廃棄した後、診断チップ26を洗浄瓶を用いて超純水で5分間洗浄した。続いて、診断チップ26を95%無水エタノールを含む250mlビーカーに入れ、5分間超音波処理した。続いて、診断チップ26を精製水を含む250mlビーカーに入れ、さらに5分間超音波処理を行った。
【0025】
酸性化工程92:50ml反応管に塩酸25mlを入れ、さらにエタノール25mlを添加した。ヒドロキシル化工程90で得られた診断チップ26を上記溶液に入れ、37℃で3時間反応させた。診断チップ26を溶液から取り出し、溶液を廃液ボトルに廃棄した。診断チップ26を洗浄瓶を用いて超純水で5分間洗浄した。続いて、診断チップ26を95%無水エタノールを含む250mlビーカーに入れ、5分間超音波処理した。
【0026】
さらに、診断チップ26を精製水を含む250mlビーカーに入れ、5分間超音波処理した。その後、診断チップ26を250mlビーカーに入れ、乾燥炉を用いて60℃で30分間加熱した。
【0027】
アミノ化工程94:50ml反応管に3−アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)6.641g(感湿)を入れ、室温でエタノール43mlを加えた後、さらに酢酸0.1mlを添加した。酸性化工程92で得られた診断チップ26を上記溶液に入れ、50℃で24時間反応させた。診断チップ26を溶液から取り出し、95%無水エタノールを含む250mlビーカーに入れ、5分間超音波処理した。さらに、診断チップ26を精製水を含む250mlビーカーに入れ、5分間超音波処理を行った。続いて、診断チップ26を250mlビーカーに入れ、乾燥炉を用いて120℃で30分間加熱した。
【0028】
アルデヒド添加工程96:50ml反応管に25%グルタルアルデヒドを入れ、アミノ化工程94で得られた診断チップ26を添加し、室温で24時間反応させた。診断チップ26を溶液から取り出し、95%無水エタノールを含む250mlビーカーに入れ、5分間超音波処理した。次に、診断チップ26を精製水を含む250mlビーカーに入れ、5分間超音波処理を行った。さらに、診断チップ26を別の精製水を含む250mlビーカーに入れ、5分間超音波処理を行った。続いて、診断チップ26を250mlビーカーに入れ、乾燥炉を用いて60℃で30分間加熱した。
【0029】
他の実施形態では、さらに以下の処理を行った。診断チップ26を脱イオン(デカンテーション)水で洗浄した後、洗浄剤および脱イオン水を体積比1:3で混合した溶液に入れて5分間超音波処理した。次に、診断チップ26を溶液から取り出し、脱イオン水に5分間浸漬した後、アセトンに5分間浸漬した。続いて、診断チップ26を圧縮空気で乾燥させた。3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランをアセトンに溶解し、コロジオン溶液(10%、和光純薬製)と混合した。診断チップ26を上記混合液に浸漬した後、診断チップ26をゆっくりと取り出した。診断チップを空気中で乾燥させた(診断チップ26は、コロジオンで被覆され白色となっている)。被覆された診断チップ26を80℃で1時間加熱した。室温で平衡化した後、診断チップ26をエタノール20mlに5分間浸漬した。続いて、診断チップ26を水で十分に洗浄した後、さらにアセトンと水で洗浄した。洗浄後、診断チップ26を常温で保存した(診断チップ26は、透明となっている)。
【0030】
印刷工程98:以下の手順により、アルデヒド添加工程96または酸性化工程92で得られた診断チップ26にPBS緩衝液、H7N9抗原またはBSAを印刷した。PBS緩衝液については、PBS4mlと40%グリセロールを混合し、H7N9抗原については、H7N9抗原(Sino Biological社製、1mg/ml)0.1mlと40%グリセロールとPBS1.5mlを混合し、BSAについては、BSA(テルモ社製、製品番号23208、1000μg/ml)1mlと40%グリセロールとPBS4mlを混合してインクを調製し、それぞれのインクカートリッジに充填した。続いて、各インクカートリッジをFUJIFILM Dimatix社製マテリアルプリンタ(型番DMP-2831)の印刷ヘッドに固定した(この場合、特に入口流路に捕捉されたインク液中に気泡が生じないようにする必要がある)。16個のノズルのインク滴下安定性を確認し、良好な結果を示した少なくとも1つのノズルを用いて、アルデヒド添加工程96で得られた診断チップ26にH7N9抗原またはBSAをドット径200μmで ドット印刷した。印刷後、診断チップ26をペトリ皿に載せてカバーをかけ、乾燥炉を用いて37℃で2時間加熱した(乾燥工程100)。
【0031】
乾燥工程100の完了後、接着剤74を用いて、診断チップ26の印刷面を試料が配置されたマイクロ流体チップ24の上部68に着脱可能に接合した。
図10は、25%グルタルアルデヒドにより24時間処理した診断チップ26に、H7N9抗原の1:80希釈液を用いて形成した印刷パターン(拡大率4倍)の一例を示す。
【0032】
図11は、現場診断方法およびシステムの動作を示す。載置工程102では、分析物を含む適量の試料(例えば、血清試料)がマイクロ流体チップ24のリザーバ80に載置される。さらに、分析物の検出を補助するための試薬がリザーバ80に載置される。リザーバ80内に配置される試薬は、洗浄緩衝液またはブロッキング緩衝液である。本発明の一実施形態において、洗浄緩衝液はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)であり、ブロッキング緩衝液はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)とウシ血清アルブミン(BSA)の混合液である。接合工程104では、接着剤74を用いて診断チップ26がマイクロ流体チップ24に接合される。被覆および検出部を備える診断チップ26の下面は、マイクロ流体チップ24の上部68に配置されたチャネル開口72と接着剤74に対向している。検出部および被覆は、チャネル開口72の周囲1〜15mmの範囲内に配置される。接続工程106では、電気接続インターフェース78をマイクロ流体カートリッジ収容孔36に差し込み、カートリッジ室42の電気コネクタ44に接続することで、マイクロ流体チップ24と診断チップ26を接合して構成したマイクロ流体カートリッジ22がマイクロ流体カートリッジ駆動部30に接続される。分析物移動工程108では、試料と試薬の混合物が検出部を覆うように移動する。まず、試料および試薬が、マイクロ流体チップ24のマイクロ流体チャネル86を通ってリザーバ80からチャネル開口72に移動する。電気接続インターフェース78が電気コネクタ44を介してカートリッジ室42から電流および電気信号を受け取ると、マイクロポンプが制御部28のマイクロプロセッサから指示されたタイミング、速度および順序で試料をマイクロ流体チャネル86を通じて移動させる。試料と試薬の混合液(先述のように、試料と試薬はマイクロ流体チップ24のマイクロ流体チャネル86内を移動する間に混合される)は、チャネル開口72を通って診断チップ26の下面に広がる。試料がマイクロ流体チャネル86内を移動する間、マイクロ流体チップ24の下部70に配置された微多孔膜76からリザーバ80内の気泡が除去される。試料と試薬の混合液が検出部を覆うと、検出部内で分析物と相互作用分子の反応/相互作用が生じる。他の実施形態では、工程108はさらに、第2の補助試薬を導入する工程を含んでもよい。第2の試薬は、マイクロ流体チップ24のマイクロ流体チャネル86を通り、検出部に分析物の検出を補助するための第2の相互作用分子を供給する。試料と試薬の混合液の移動および分析物の反応/相互作用が終了した後、マイクロ流体カートリッジ22がマイクロ流体カートリッジ駆動部30のカートリッジ室42から取り外される。分離工程110では、分析物を含む診断チップ26がマイクロ流体チップ24から分離される。診断チップ26に残存する試料と試薬の混合液は、診断チップ26がマイクロ流体チップ24から分離される前または後に乾燥される。診断チップ設置工程112では、診断チップ26が診断チップホルダ58に設置される。診断チップ26の設置に先立ち、トレイボタン60を介して診断チップ収容トレイベイ56のフックを解除し、診断チップ収容トレイ52および診断チップホルダ58を引き出す。診断チップ26を診断チップホルダ58に設置した後、診断チップ収容トレイ52および診断チップホルダ58を診断装置20内に押し込み、診断チップ収容トレイ52を診断チップ収容トレイベイ56内に収納する。検出工程114では、診断チップ26上の分析物の検出が行われる。診断チップ収容トレイ52が診断チップ収容トレイベイ56に収納されると、診断チップ26は光センサ48の下方に配置される。マイクロプロセッサから開始信号を受信すると、照明システム50から診断チップ26に向かって光ビーム(例えば、レーザビーム)が照射され、試料と試薬の混合液に分析物が含まれる場合には診断チップ26から信号が生成される。一実施形態において、診断チップ26に所定波長(例えば、488nm)の光が照射されると、蛍光信号を含む信号が生成される。光センサ48により検出された信号は、デジタルデータに変換された後、制御部28のマイクロプロセッサに送られ、分析物の存在が定量的または定性的に判定される。判定結果は、比較的短時間(例えば、10〜25分以内)で表示部34に表示される。
【0033】
制御部28は、コンピュータが読み取り可能なコードを格納するための非一時的なコンピュータ可読媒体を備えることで、マイクロプロセッサを通じて診断装置20の各構成要素に対し信号の送信および制御を行うことができる。これにより、制御部28は上述の工程を実行することができる。非一時的コンピュータ可読媒体には、磁気媒体、光媒体、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、データキャッシュ、データオブジェクトなどのあらゆる公知のデータ記憶媒体および/またはデータ伝送媒体が含まれる。また、メモリは、1つまたは複数のタイプのデータ記憶装置を含む単一の物理的位置に存在し、あるいは複数の様々な形態の物理システムに分散されている。
【0034】
一実施形態では、制御部28は、システムの動作に必要なソフトウェアモジュールを備える。ソフトウェアモジュールには、オペレーティングシステム、アプリケーションモジュール、画像処理モジュール、マイクロ流体チップ24内の流体の流れを制御するためのマイクロ流体カートリッジ駆動ソフトウェアモジュール、およびユーザインタフェースソフトウェアモジュールが含まれる。オペレーティングシステムは、コンピュータのハードウェアリソースを管理し、すべてのコンピュータソフトウェアモジュールの機能を補助する。オペレーティングシステムは、例えば、Apple社のiOS、Android、Microsoft社のWindowsまたはLinux(登録商標)である。オペレーティングシステムは、ローカルエリアネットワーク(LAN)、USB、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)などの有線または無線による様々な通信プロトコルに統合されている。アプリケーションモジュールは、装置の動作を実行するために設計されたプログラムセットである。アプリケーションモジュールは、装置のデータに加え、ジョブデータ、プログラムデータ、顧客データ、マイクロ流体カートリッジデータ、マイクロポンプの設定、光センサの設定、および光学検査部32から収集したデータを管理する。画像処理モジュールは、光学検査部32からデータを収集する。画像処理モジュールは、診断チップ26における関心領域の選択と、選択した関心領域からの画像取得を制御する。画像処理モジュールは、取得した画像の輝度およびコントラストの補正も行う。これらの画像は、画像処理モジュールから制御部28へ送信される。制御部28は、光センサ48の設定に従い、受信した診断チップ26の画像を測定および比較する。画像処理モジュールは、上記設定に従って解析を行い、解析結果をユーザインターフェースソフトウェアモジュールに送信する。マイクロ流体カートリッジ駆動ソフトウェアモジュールは、マイクロ流体カートリッジ駆動部30に対し、マイクロ流体チップ24のマイクロ流体ポンプに印加する電流および印加時間に関する制御指示を行うように構成される。印加電流が大きいほど、および/または、電流の印加時間が長いほど、より多くの流体をリザーバ80から吸い上げることができる。ユーザインタフェースソフトウェアモジュールは、ユーザがグラ
フィカルアイコン、および表記やコマンドなどの視覚的インジケータを介して装置と相互作用できるようにするためのインターフェースである。ユーザインターフェースソフトウェアモジュールにより、専門知識を有しないユーザでも、本装置を通じて容易に情報を取得し、理解し、追加、変更および削除することができる。また、ユーザインタフェースソフトウェアモジュールを通じて、グラフィック、音声による相互作用や、通知およびコマンドの供給を利用することで、ユーザは光学検査部32とより密接に連携することができる。
【0035】
上述の実施形態は、本発明の実施形態の一例を示すものである。本発明が、その細部について種々の変形を加えて実施され得ることは当業者において明らかである。したがって、本発明の範囲は、本明細書に記載された実施形態に限定して解釈されるべきではない。
【0036】
本発明は、システムを実行するための電源部を有する。電源部は、少なくとも1つの充電池パック、充電ポート、電源スイッチ、および電力管理電子回路を備える。充電池パックとしては、例えば、リチウムイオン、リチウムポリマーなどの高容量電池が用いられる。電源部の電池パックは、遠隔地において電力供給を受けることなく数時間装置を動作させることができる。電源部は、電池パックを過充電、過電流および過昇温から保護するための電池保護回路を備えているため、装置およびユーザの安全性が保証される。電源部はさらに、装置の使用が電池パックによる限界動作時間を超えた場合に、空の電池パックを予備の充電済み電池パックに交換できるようにするための電池コネクタを備える。電力管理電子回路は、電池パックの電圧を各処理部に合わせて変更するように構成される。電力管理電子回路は、制御部28、電池パック、マイクロ流体カートリッジ駆動部30および光学検査モジュールに接続される。電力管理電子回路は、装置の消費電力を節約するために電圧の印加および変更を制御する。そのためのコマンド信号は、制御部28から送信される。電池パックの充電は、装置の背面パネルから充電ポートを介してシステム内の電池パックに直流電流を印加することで行われる。電池パックが空になった場合でも、電力供給設備からの電力供給を受けることで装置を動作させることができる。電池パックの充電が完了すると、充電ポートは取り外される。
【0037】
本発明に係る装置は、データ転送の一般的な通信プロトコルの動作を可能にするために、USBポートなどのデータ通信手段を有する。表示部は、ヒューマンインタフェース装置に搭載される。表示部は、液晶ディスプレイ(LCD)、有機発光ダイオード(OLED)などの高解像度カラーディスプレイである。表示部にタッチスクリーンパネルが組み込まれる場合は、ユーザがタッチスクリーンパネルを指でタッチすることでコマンドを送ることができる。表示部は制御部28に接続されるが、表示の内容および表示方法については、グラフィカルユーザインタフェースにより決定することができる。
【0038】
本発明において使用可能なマイクロ流体チップは、例えばドイツ特許出願第102010061910.8号およびドイツ特許出願第102010061909.4号に開示されている。
【0039】
別の実施形態では、
図12に示すように、光学検査部32の診断チップ収容トレイ52の代わりに分析スロット116が用いられる。分析スロット116は、診断チップ26を診断装置20の光学検査部32内にスライドおよび収容できるように構成された診断チップ収容スロット118を備える。診断チップ26を光学検査部32内の所定の方向にスライドさせることができるように、診断チップ収容スロット118の開口は、診断チップ26よりもわずかに大きく形成される。分析スロット116は、診断チップ収容スロット118内で診断チップ26をカメラ62の光センサ48の下方に固定するように構成される。分析スロット116はさらに、診断チップ26を上記位置で直接固定および解放するように構成されたスロットフック120を備える。
【0040】
別の実施形態では、診断チップ26から信号を生成させる手段として、レーザビームの代わりに光ビームが用いられる。この場合、照明システム50は、発光ダイオード(LED)、フィルタおよびダイクロイックミラーを備え、所定の波長を有する光ビームを診断用チップ26に照射するように構成される。
【0041】
別の実施形態では、照明システム50は、複数のダイオードレーザまたは複数のLEDを備える。
【0042】
別の実施形態では、光学検査部32のカメラ62は、相補型金属酸化物半導体(CMOS)センサまたは電荷結合素子(CCD)センサを備えるデジタル高解像度カメラ62である。デジタル高解像度カメラ62の画像センサの解像度は、例えば1.0〜30メガピクセルの範囲内である。
【0043】
別の実施形態では、複数の分析/診断を同時に実行することができるように、診断装置20は、複数のマイクロ流体カートリッジ駆動部30および複数の光学検査部32を有する。