(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
式(A1)、式(A2)、式(B1)、式(B2)、式(C1)または式(C2):
【化1】
[式中:
PFPEは、各出現においてそれぞれ独立して、式:
−(OC
6F
12)
a−(OC
5F
10)
b−(OC
4F
8)
c−(OC
3F
6)
d−(OC
2F
4)
e−(OCF
2)
f−
(a、b、c、d、eおよびfは、それぞれ独立して0以上200以下の整数であって、a、b、c、d、eおよびfの和は少なくとも1であり、a、b、c、d、eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。)
で表される基であり;
Rfは、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1〜16のアルキル基を表し;
R
13は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解可能な基を表し;
R
14は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または炭素数1〜22のアルキル基を表し;
R
11は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子またはハロゲン原子を表し;
R
12は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または低級アルキル基を表し;
nは、(−SiR
13nR
143−n)単位毎に独立して、0〜3の整数であり;
ただし、式(A1)および(A2)において、水酸基または加水分解可能な基に結合したSiが少なくとも2つ存在し;
X
1は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合または2〜10価の有機基を表し;
X
2は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合または2価の有機基を表し;
tは、各出現においてそれぞれ独立して、1〜10の整数であり;
αは、各出現においてそれぞれ独立して、1〜9の整数であり;
α’は、それぞれ独立して、1〜9の整数であり;
X
3は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合または2〜10価の有機基を表し;
βは、各出現においてそれぞれ独立して、1〜9の整数であり;
β’は、それぞれ独立して、1〜9の整数であり;
R
aは、各出現においてそれぞれ独立して、−Z
1−SiR
1pR
2qR
3rを表し;
Z
1は、各出現においてそれぞれ独立して、酸素原子または2価の有機基を表し;
R
1は、各出現においてそれぞれ独立して、R
a’を表し;
R
a’は、R
aと同意義であり;
R
a中、Z
1基を介して直鎖状に連結されるSiは最大で5個であり;
R
2は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解可能な基を表し;
R
3は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または低級アルキル基を表し;
pは、各出現においてそれぞれ独立して、0〜3の整数であり;
qは、各出現においてそれぞれ独立して、0〜3の整数であり;
rは、各出現においてそれぞれ独立して、0〜3の整数であり;
ただし、−Z
1−SiR
1pR
2qR
3r毎において、p、qおよびrの和は3であり、式(B1)および(B2)において、水酸基または加水分解可能な基に結合したSiが少なくとも2つ存在し;
R
bは、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解可能な基を表し;
R
cは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または低級アルキル基を表し;
k1は、各出現においてそれぞれ独立して、0〜3の整数であり;
l1は、各出現においてそれぞれ独立して、0〜3の整数であり;
m1は、各出現においてそれぞれ独立して、0〜3の整数であり;
ただし、−SiR
ak1R
bl1R
cm1毎において、k1、l1およびm1の和は3であり、
X
4は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合または2〜10価の有機基を表し;
γは、各出現においてそれぞれ独立して、1〜9の整数であり;
γ’は、それぞれ独立して、1〜9の整数であり;
R
dは、各出現においてそれぞれ独立して、−Z
2−CR
81p2R
82q2R
83r2を表し;
Z
2は、各出現においてそれぞれ独立して、酸素原子または2価の有機基を表し;
R
81は、各出現においてそれぞれ独立して、R
d’を表し;
R
d’は、R
dと同意義であり;
R
d中、Z
2基を介して直鎖状に連結されるCは最大で5個であり;
R
82は、各出現においてそれぞれ独立して、−Y−SiR
85n2R
863−n2を表し;
Yは、各出現においてそれぞれ独立して、2価の有機基を表し;
R
85は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解可能な基を表し;
R
86は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または低級アルキル基を表し;
n2は、(−Y−SiR
85n2R
863−n2)単位毎に独立して、0〜3の整数を表し;
R
83は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または低級アルキル基を表し;
p2は、各出現においてそれぞれ独立して、0〜3の整数であり;
q2は、各出現においてそれぞれ独立して、0〜3の整数であり;
r2は、各出現においてそれぞれ独立して、0〜3の整数であり;
ただし、−Z
2−CR
81p2R
82q2R
83r2毎において、p2、q2およびr2の和は3であり;
R
eは、各出現においてそれぞれ独立して、−Y−SiR
85n2R
863−n2を表し;
R
fは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または低級アルキル基を表し;
k2は、各出現においてそれぞれ独立して、0〜3の整数であり;
l2は、各出現においてそれぞれ独立して、0〜3の整数であり;
m2は、各出現においてそれぞれ独立して、0〜3の整数であり;
ただし、(CR
dk2R
el2R
fm2)毎において、k2、l2およびm2の和は3であり、式(C1)および(C2)において、n2が1〜3の整数である少なくとも2つの−Y−SiR
85n2R
863−n2基が存在する。]
のいずれかで表されるパーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物、および分子構造内に非共有電子対を有する原子を含む化合物を含有する表面処理剤であり、
分子構造内に非共有電子対を有する原子を含む化合物は、アニリン、ピリジン、ヘキサメチルホスホルアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、テトラメチル尿素、ジメチルスルホキシド、およびテトラメチレンスルホキシドからなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物であり、
分子構造内に非共有電子対を有する原子を含む化合物が、表面処理剤全体に対して、
0.0002質量%以上1質量
%以下含まれ
、
分子構造内に非共有電子対を有する原子を含む化合物が、パーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物1モルに対して、0.15モル以上含まれる表面処理剤。
分子構造内に非共有電子対を有する原子を含む化合物を、パーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物の水酸基または加水分解基に結合したSi原子1モルに対して、0.01〜10モル含む、請求項1に記載の表面処理剤。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書において用いられる場合、「炭化水素基」とは、炭素および水素を含む基であって、炭化水素から1個の水素原子を脱離させた基を意味する。かかる炭化水素基としては、特に限定されるものではないが、1つまたはそれ以上の置換基により置換されていてもよい、炭素数1〜20の炭化水素基、例えば、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基等が挙げられる。上記「脂肪族炭化水素基」は、直鎖状、分枝鎖状または環状のいずれであってもよく、飽和または不飽和のいずれであってもよい。また、炭化水素基は、1つまたはそれ以上の環構造を含んでいてもよい。尚、かかる炭化水素基は、その末端または分子鎖中に、1つまたはそれ以上のN、O、S、Si、アミド、スルホニル、シロキサン、カルボニル、カルボニルオキシ等を有していてもよい。
【0012】
本明細書において用いられる場合、「炭化水素基」の置換基としては、特に限定されないが、例えば、ハロゲン原子;1個またはそれ以上のハロゲン原子により置換されていてもよい、C
1−6アルキル基、C
2−6アルケニル基、C
2−6アルキニル基、C
3−10シクロアルキル基、C
3−10不飽和シクロアルキル基、5〜10員のヘテロシクリル基、5〜10員の不飽和ヘテロシクリル基、C
6−10アリール基および5〜10員のヘテロアリール基から選択される1個またはそれ以上の基が挙げられる。
【0013】
本明細書において、アルキル基およびフェニル基は、特記しない限り、非置換であっても、置換されていてもよい。かかる基の置換基としては、特に限定されないが、例えば、ハロゲン原子、C
1−6アルキル基、C
2−6アルケニル基およびC
2−6アルキニル基から選択される1個またはそれ以上の基が挙げられる。
【0014】
本明細書において用いられる場合、「2〜10価の有機基」とは、炭素を含有する2〜10価の基を意味する。かかる2〜10価の有機基としては、特に限定されないが、炭化水素基からさらに1〜9個の水素原子を脱離させた2〜10価の基が挙げられる。
【0015】
[表面処理剤]
以下、本発明の表面処理剤について説明する。
【0016】
本発明の表面処理剤は、PFPE含有シラン化合物、および分子構造内に非共有電子対を有する原子を含む化合物を含有する。
【0017】
(PFPE含有シラン化合物)
上記PFPE含有シラン化合物は、式(A1)、式(A2)、式(B1)、式(B2)、式(C1)または式(C2)のいずれかで表される化合物である。
【化2】
【0018】
上記PFPE含有シラン化合物は、表面処理剤100質量部に対し、好ましくは0.01〜100質量部、より好ましくは0.1〜30質量部含まれる。
【0019】
上記PFPE含有シラン化合物は、特に限定されるものではないが、5×10
2〜1×10
5の数平均分子量を有し得る。かかる範囲のなかでも、2,000〜30,000、より好ましくは2,500〜12,000の数平均分子量を有することが、摩擦耐久性の観点から好ましい。なお、本発明において、数平均分子量は、
19F−NMRにより測定される値とする。
【0020】
一の態様において、本発明のPFPE含有シラン化合物は、1,000〜40,000、好ましくは1,000〜32,000、より好ましくは1,000〜20,000、さらにより好ましくは1,000〜12,000の数平均分子量を有し得る。
【0021】
以下、上記式(A1)、(A2)、(B1)、(B2)、(C1)および(C2)で表されるPFPE含有シラン化合物について説明する。
【0022】
式(A1)および(A2):
【化3】
【0023】
上記式中、Rfは、各出現において独立して、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1〜16のアルキル基を表す。
【0024】
上記1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1〜16のアルキル基における「炭素数1〜16のアルキル基」は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよく、好ましくは、直鎖または分枝鎖の炭素数1〜6、特に炭素数1〜3のアルキル基であり、より好ましくは直鎖の炭素数1〜3のアルキル基である。
【0025】
上記Rfは、好ましくは、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されている炭素数1〜16のアルキル基であり、より好ましくはCF
2H−C
1−15パーフルオロアルキレン基またはC
1−16パーフルオロアルキル基であり、さらに好ましくはC
1−16パーフルオロアルキル基である。
【0026】
該炭素数1〜16のパーフルオロアルキル基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよく、好ましくは、直鎖または分枝鎖の炭素数1〜6、特に炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基であり、より好ましくは直鎖の炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基、具体的には−CF
3、−CF
2CF
3、または−CF
2CF
2CF
3である。
【0027】
上記式中、PFPEは、各出現において独立して、
−(OC
6F
12)
a−(OC
5F
10)
b−(OC
4F
8)
c−(OC
3F
6)
d−(OC
2F
4)
e−(OCF
2)
f−
で表される基である。式中、a、b、c、d、eおよびfは、それぞれ独立して0以上200以下の整数であって、a、b、c、d、eおよびfの和は少なくとも1である。好ましくは、a、b、c、d、eおよびfは、それぞれ独立して、0以上100以下の整数である。好ましくは、a、b、c、d、eおよびfの和は5以上であり、より好ましくは10以上である。好ましくは、a、b、c、d、eおよびfの和は200以下であり、より好ましくは100以下であり、例えば10以上200以下であり、より具体的には10以上100以下である。また、a、b、c、d、eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。
【0028】
これら繰り返し単位は、直鎖状であっても、分枝鎖状であってもよいが、好ましくは直鎖状である。例えば、−(OC
6F
12)−は、−(OCF
2CF
2CF
2CF
2CF
2CF
2)−、−(OCF(CF
3)CF
2CF
2CF
2CF
2)−、−(OCF
2CF(CF
3)CF
2CF
2CF
2)−、−(OCF
2CF
2CF(CF
3)CF
2CF
2)−、−(OCF
2CF
2CF
2CF(CF
3)CF
2)−、−(OCF
2CF
2CF
2CF
2CF(CF
3))−等であってもよいが、好ましくは−(OCF
2CF
2CF
2CF
2CF
2CF
2)−である。−(OC
5F
10)−は、−(OCF
2CF
2CF
2CF
2CF
2)−、−(OCF(CF
3)CF
2CF
2CF
2)−、−(OCF
2CF(CF
3)CF
2CF
2)−、−(OCF
2CF
2CF(CF
3)CF
2)−、−(OCF
2CF
2CF
2CF(CF
3))−等であってもよいが、好ましくは−(OCF
2CF
2CF
2CF
2CF
2)−である。−(OC
4F
8)−は、−(OCF
2CF
2CF
2CF
2)−、−(OCF(CF
3)CF
2CF
2)−、−(OCF
2CF(CF
3)CF
2)−、−(OCF
2CF
2CF(CF
3))−、−(OC(CF
3)
2CF
2)−、−(OCF
2C(CF
3)
2)−、−(OCF(CF
3)CF(CF
3))−、−(OCF(C
2F
5)CF
2)−および−(OCF
2CF(C
2F
5))−のいずれであってもよいが、好ましくは−(OCF
2CF
2CF
2CF
2)−である。−(OC
3F
6)−は、−(OCF
2CF
2CF
2)−、−(OCF(CF
3)CF
2)−および−(OCF
2CF(CF
3))−のいずれであってもよいが、好ましくは−(OCF
2CF
2CF
2)−である。また、−(OC
2F
4)−は、−(OCF
2CF
2)−および−(OCF(CF
3))−のいずれであってもよいが、好ましくは−(OCF
2CF
2)−である。
【0029】
一の態様において、上記PFPEは、−(OC
3F
6)
d−(式中、dは1以上200以下、好ましくは5以上200以下、より好ましくは10以上200以下の整数である)である。好ましくは、PFPEは、−(OCF
2CF
2CF
2)
d−(式中、dは1以上200以下、好ましくは5以上200以下、より好ましくは10以上200以下の整数である)または−(OCF(CF
3)CF
2)
d−(式中、dは1以上200以下、好ましくは5以上200以下、より好ましくは10以上200以下の整数である)である。より好ましくは、PFPEは、−(OCF
2CF
2CF
2)
d−(式中、dは1以上200以下、好ましくは5以上200以下、より好ましくは10以上200以下の整数である)である。
【0030】
別の態様において、PFPEは、−(OC
4F
8)
c−(OC
3F
6)
d−(OC
2F
4)
e−(OCF
2)
f−(式中、cおよびdは、それぞれ独立して0以上30以下の整数であり、eおよびfは、それぞれ独立して1以上200以下、好ましくは5以上200以下、より好ましくは10以上200以下の整数であり、c、d、eおよびfの和は少なくとも5以上、好ましくは10以上であり、添字c、d、eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である)である。好ましくは、PFPEは、−(OCF
2CF
2CF
2CF
2)
c−(OCF
2CF
2CF
2)
d−(OCF
2CF
2)
e−(OCF
2)
f−である。一の態様において、PFPEは、−(OC
2F
4)
e−(OCF
2)
f−(式中、eおよびfは、それぞれ独立して1以上200以下、好ましくは5以上200以下、より好ましくは10以上200以下の整数であり、添字eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である)であってもよい。
【0031】
一の態様において、PFPEは、−(OC
2F
4)
e−(OCF
2)
f−(式中、eおよびfは、それぞれ独立して1以上200以下、好ましくは5以上200以下、より好ましくは10以上200以下の整数であり、添字eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である)であってもよい。
【0032】
上記式中、PFPEにおいて、fに対するeの比(以下、「e/f比」という)は、0.1以上10以下であり、好ましくは0.2以上5.0以下であり、より好ましくは0.2以上2.0以下であり、さらに好ましくは0.2以上1.5以下である。e/f比を上記範囲にすることにより、この化合物から得られる硬化物の撥水性、撥油性、および耐ケミカル性(例えば、塩水、酸又は塩基性水溶液、アセトン、オレイン酸又はヘキサンに対する耐久性)がより向上し得る。e/f比がより小さいほど、上記硬化物の撥水性、撥油性、耐ケミカル性より向上する。一方、e/f比を0.1以上にすることにより、化合物の安定性をより高めることができる。e/f比がより大きいほど、化合物の安定性はより向上する。
【0033】
さらに別の態様において、PFPEは、−(R
6−R
7)
j−で表される基である。式中、R
6は、OCF
2またはOC
2F
4であり、好ましくはOC
2F
4である。式中、R
7は、OC
2F
4、OC
3F
6、OC
4F
8、OC
5F
10およびOC
6F
12から選択される基であるか、あるいは、これらの基から独立して選択される2または3つの基の組み合わせである。好ましくは、R
7は、OC
2F
4、OC
3F
6およびOC
4F
8から選択される基であるか、OC
3F
6、OC
4F
8、OC
5F
10およびOC
6F
12から選択される基であるか、あるいは、これらの基から独立して選択される2または3つの基の組み合わせである。OC
2F
4、OC
3F
6およびOC
4F
8から独立して選択される2または3つの基の組み合わせとしては、特に限定されないが、例えば−OC
2F
4OC
3F
6−、−OC
2F
4OC
4F
8−、−OC
3F
6OC
2F
4−、−OC
3F
6OC
3F
6−、−OC
3F
6OC
4F
8−、−OC
4F
8OC
4F
8−、−OC
4F
8OC
3F
6−、−OC
4F
8OC
2F
4−、−OC
2F
4OC
2F
4OC
3F
6−、−OC
2F
4OC
2F
4OC
4F
8−、−OC
2F
4OC
3F
6OC
2F
4−、−OC
2F
4OC
3F
6OC
3F
6−、−OC
2F
4OC
4F
8OC
2F
4−、−OC
3F
6OC
2F
4OC
2F
4−、−OC
3F
6OC
2F
4OC
3F
6−、−OC
3F
6OC
3F
6OC
2F
4−、および−OC
4F
8OC
2F
4OC
2F
4−等が挙げられる。上記jは、2以上、好ましくは3以上、より好ましくは5以上であり、100以下、好ましくは50以下の整数である。上記式中、OC
2F
4、OC
3F
6、OC
4F
8、OC
5F
10およびOC
6F
12は、直鎖または分枝鎖のいずれであってもよく、好ましくは直鎖である。この態様において、PFPEは、好ましくは、−(OC
2F
4−OC
3F
6)
j−または−(OC
2F
4−OC
4F
8)
j−である。
【0034】
一の態様において、上記式中、PFPEは、各出現において独立して、
−(OC
6F
12)
a−(OC
5F
10)
b−(OC
4F
8)
c−(OC
3F
6)
d−(OC
2F
4)
e−(OCF
2)
f−
で表される基であり、かつ、PFPE中に少なくとも1の分岐構造を有する。すなわち、本態様において、上記PFPEは、少なくとも1のCF
3末端(具体的には、−CF
3、−C
2F
5等、より具体的には−CF
3)を有する。このような構造のPFPEを有することにより、本発明の表面処理剤を用いて形成された層(例えば表面処理層)の紫外線耐久性、撥水性、撥油性、防汚性(例えば指紋等の汚れの付着を防止する)、耐ケミカル性、耐加水分解性、滑り性の抑制効果、高い摩擦耐久性、耐熱性、防湿性等がより良好になり得る。
【0035】
上記態様において、a、b、c、d、eおよびfは、それぞれ独立して0以上200以下の整数であって、a、b、c、d、eおよびfの和は少なくとも1である。好ましくは、a、b、c、d、eおよびfは、それぞれ独立して、0以上100以下の整数である。好ましくは、a、b、c、d、eおよびfの和は5以上であり、より好ましくは10以上である。好ましくは、a、b、c、d、eおよびfの和は200以下であり、より好ましくは100以下であり、例えば10以上200以下であり、より具体的には10以上100以下である。また、a、b、c、d、eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。
【0036】
上記態様において、PFPEは、分岐構造を少なくとも5有することが好ましく、10有することがより好ましく、20有することが特に好ましい。
【0037】
上記態様において、PFPE構造中、繰り返し単位数の合計数(例えば、上記a、b、c、d、eおよびfの和)100に対して、分岐構造を有する繰り返し単位の数は40以上であることが好ましく、60以上であることがより好ましく、80以上であることが特に好ましい。PFPE構造中、繰り返し単位数の合計数100に対して、分岐構造を有する繰り返し単位の数は100以下であってもよく、例えば90以下であってもよい。
【0038】
上記態様において、PFPE構造中、繰り返し単位数の合計数100に対して、分岐構造を有する繰り返し単位の数は、40〜100の範囲にあることが好ましく、60〜100の範囲にあることがより好ましく、80〜100の範囲にあることが特に好ましい。
【0039】
上記態様において、上記分岐構造における分岐鎖としては、例えばCF
3を挙げることができる。
【0040】
上記態様において、分岐構造を有する繰り返し単位としては、例えば、−(OC
6F
12)−としては、−(OCF(CF
3)CF
2CF
2CF
2CF
2)−、−(OCF
2CF(CF
3)CF
2CF
2CF
2)−、−(OCF
2CF
2CF(CF
3)CF
2CF
2)−、−(OCF
2CF
2CF
2CF(CF
3)CF
2)−、−(OCF
2CF
2CF
2CF
2CF(CF
3))−等を挙げることができる。−(OC
5F
10)−としては、−(OCF(CF
3)CF
2CF
2CF
2)−、−(OCF
2CF(CF
3)CF
2CF
2)−、−(OCF
2CF
2CF(CF
3)CF
2)−、−(OCF
2CF
2CF
2CF(CF
3))−等を挙げることができる。−(OC
4F
8)−としては、−(OCF(CF
3)CF
2CF
2)−、−(OCF
2CF(CF
3)CF
2)−、−(OCF
2CF
2CF(CF
3))−、−(OC(CF
3)
2CF
2)−、−(OCF
2C(CF
3)
2)−、−(OCF(CF
3)CF(CF
3))−、−(OCF(C
2F
5)CF
2)−および−(OCF
2CF(C
2F
5))−を挙げることができる。−(OC
3F
6)−としては、−(OCF(CF
3)CF
2)−および−(OCF
2CF(CF
3))−を挙げることができる。−(OC
2F
4)−としては、−(OCF(CF
3))−を挙げることができる。
【0041】
上記態様において、上記PFPEは、分岐構造を有する繰り返し単位とともに、直鎖状の繰り返し単位を含み得る。直鎖状の繰り返し単位としては、−(OCF
2CF
2CF
2CF
2CF
2CF
2)−、−(OCF
2CF
2CF
2CF
2CF
2)−、−(OCF
2CF
2CF
2CF
2)−、−(OCF
2CF
2CF
2)−、−(OCF
2CF
2)−を挙げることができる。
【0042】
上記態様において、好ましくは、上記PFPE中、繰り返し単位−(OC
6F
12)−、−(OC
5F
10)−、−(OC
4F
8)−、および−(OC
3F
6)−が分岐構造を有する。
【0043】
上記態様において、より好ましくは、PFPEは、分岐構造の繰り返し単位OC
6F
12、OC
5F
10、OC
4F
8、およびOC
3F
6からなる。
【0044】
一の態様において、上記PFPEは、−(OC
3F
6)
d−(式中、dは1以上200以下、好ましくは5以上200以下、より好ましくは10以上200以下の整数である)であり、PFPE中に少なくとも1の分岐構造を有する。
【0045】
上記態様において、PFPEは、さらに、直鎖状の繰り返し単位−(OCF
2CF
2CF
2)−を含んでいてもよい。
【0046】
上記態様において、上記PFPEは、分岐構造の繰り返し単位OC
3F
6からなることが好ましい。上記PFPEは、式:−(OCF
2CF(CF
3))
dで表されることがより好ましい。上記式中、dは1以上200以下であり、好ましくは5以上200以下、より好ましくは10以上200以下の整数である。
【0047】
別の態様において、PFPEは、−(OC
4F
8)
c−(OC
3F
6)
d−(OC
2F
4)
e−(OCF
2)
f−(式中、cおよびdは、それぞれ独立して0以上30以下の整数であり、eおよびfは、それぞれ独立して1以上200以下、好ましくは5以上200以下、より好ましくは10以上200以下の整数であり、c、d、eおよびfの和は少なくとも5以上、好ましくは10以上であり、添字c、d、eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である)であり、PFPE中に少なくとも1の分岐構造を有する。
【0048】
さらに別の態様において、PFPEは、−(R
6−R
7)
j−で表される基であり、PFPE中少なくとも1の分岐構造を有する。式中、R
6は、OCF
2またはOC
2F
4であり、好ましくはOC
2F
4である。式中、R
7は、OC
2F
4、OC
3F
6、OC
4F
8、OC
5F
10およびOC
6F
12から選択される基であるか、あるいは、これらの基から独立して選択される2または3つの基の組み合わせである。好ましくは、R
7は、OC
2F
4、OC
3F
6およびOC
4F
8から選択される基であるか、OC
3F
6、OC
4F
8、OC
5F
10およびOC
6F
12から選択される基であるか、あるいは、これらの基から独立して選択される2または3つの基の組み合わせである。OC
2F
4、OC
3F
6およびOC
4F
8から独立して選択される2または3つの基の組み合わせとしては、特に限定されないが、例えば−OC
2F
4OC
3F
6−、−OC
2F
4OC
4F
8−、−OC
3F
6OC
2F
4−、−OC
3F
6OC
3F
6−、−OC
3F
6OC
4F
8−、−OC
4F
8OC
4F
8−、−OC
4F
8OC
3F
6−、−OC
4F
8OC
2F
4−、−OC
2F
4OC
2F
4OC
3F
6−、−OC
2F
4OC
2F
4OC
4F
8−、−OC
2F
4OC
3F
6OC
2F
4−、−OC
2F
4OC
3F
6OC
3F
6−、−OC
2F
4OC
4F
8OC
2F
4−、−OC
3F
6OC
2F
4OC
2F
4−、−OC
3F
6OC
2F
4OC
3F
6−、−OC
3F
6OC
3F
6OC
2F
4−、および−OC
4F
8OC
2F
4OC
2F
4−等が挙げられる。上記jは、2以上、好ましくは3以上、より好ましくは5以上であり、100以下、好ましくは50以下の整数である。上記式中、OC
2F
4、OC
3F
6、OC
4F
8、OC
5F
10およびOC
6F
12は、分岐構造を有することが好ましい。
【0049】
より好ましくは、上記態様において、PFPEは、分岐構造の繰り返し単位OC
6F
12、OC
5F
10、OC
4F
8、およびOC
3F
6からなる。
【0050】
Rf−PFPE−部分の平均分子量は、特に限定されるものではないが、500〜30,000、好ましくは1,500〜30,000、より好ましくは2,000〜10,000である。
【0051】
別の態様において、Rf−PFPE部分の数平均分子量は、500〜30,000、好ましくは1,000〜20,000、より好ましくは2,000〜15,000である。
【0052】
別の態様において、Rf−PFPE−部分または−PFPE−部分の数平均分子量は、4,000〜30,000、好ましくは5,000〜10,000であり得る。
【0053】
上記式中、R
13は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解可能な基を表す。
【0054】
上記「加水分解可能な基」とは、本明細書において用いられる場合、加水分解反応を受け得る基を意味し、即ち、加水分解反応により、化合物の主骨格から脱離し得る基を意味する。加水分解可能な基の例としては、−OR、−OCOR、−O−N=CR
2、−NR
2、−NHR、ハロゲン原子(これら式中、Rは、置換または非置換の炭素数1〜4のアルキル基を示す)などが挙げられ、好ましくは−OR(即ち、アルコキシ基)である。Rの例には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基などの非置換アルキル基;クロロメチル基などの置換アルキル基が含まれる。それらの中でも、アルキル基、特に非置換アルキル基が好ましく、メチル基またはエチル基がより好ましい。上記「水酸基」は、特に限定されないが、加水分解可能な基が加水分解して生じたものであってよい。
【0055】
上記式中、R
14は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または炭素数1〜22のアルキル基、好ましくは炭素数1〜4のアルキル基を表す。
【0056】
上記式中、R
11は、各出現において、それぞれ独立して、水素原子またはハロゲン原子を表す。ハロゲン原子は、好ましくはヨウ素原子、塩素原子またはフッ素原子であり、より好ましくはフッ素原子である。
【0057】
上記式中、R
12は、各出現において、それぞれ独立して、水素原子または低級アルキル基を表す。低級アルキル基は、好ましくは炭素数1〜20のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜6のアルキル基であり、例えばメチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられる。
【0058】
上記式中、nは、(−SiR
13nR
143−n)単位毎に独立して、0〜3の整数であり、好ましくは1〜3であり、より好ましくは3である。ただし、式(A1)および(A2)において、水酸基または加水分解可能な基に結合したSiが少なくとも2つ存在する。即ち、式(A1)および(A2)において、SiR
13の構造が少なくとも2つ存在する。
【0059】
上記式中、X
1は、それぞれ独立して、単結合または2〜10価の有機基を表す。当該X
1は、式(A1)および(A2)で表される化合物において、主に撥水性および表面滑り性等を提供するパーフルオロポリエーテル部(即ち、Rf−PFPE部または−PFPE−部)と、基材との結合能を提供するシラン部(即ち、αを付して括弧でくくられた基)とを連結するリンカーと解される。従って、当該X
1は、式(A1)および(A2)で表される化合物が安定に存在し得るものであれば、いずれの有機基であってもよい。
【0060】
別の態様において、X
1は、X
eを表す。X
eは、単結合または2〜10価の有機基を表し、好ましくは、単結合または−C
6H
4−(即ち−フェニレン−。以下、フェニレン基を示す。)、−CO−(カルボニル基)、−NR
4−および−SO
2−からなる群より選ばれる少なくとも1つを有する2〜10価の有機基を表す。上記R
4は、それぞれ独立して、水素原子、フェニル基、またはC
1〜6アルキル基(好ましくはメチル基)を表し、好ましくは水素原子、またはメチル基である。上記の−C
6H
4−、−CO−、−NR
4−または−SO
2−は、PFPE含有シラン化合物の分子主鎖中に含まれることが好ましい。ここで、分子主鎖とは、PFPE含有シラン化合物の分子中で相対的に最も長いPFPEを含む結合鎖を表す。
【0061】
X
eは、より好ましくは、単結合または−C
6H
4−、−CONR
4−、−CONR
4−C
6H
4−、−CO−、−CO−C
6H
4−、−SO
2NR
4−、−SO
2NR
4−C
6H
4−、−SO
2−、および−SO
2−C
6H
4−からなる群より選ばれる少なくとも1つを有する2〜10価の有機基を表す。上記の−C
6H
4−、−CONR
4−、−CONR
4−C
6H
4−、−CO−、−CO−C
6H
4−、−SO
2NR
4−、−SO
2NR
4−C
6H
4−、−SO
2−、または−SO
2−C
6H
4−は、PFPE含有シラン化合物の分子主鎖中に含まれることが好ましい。
【0062】
上記式中、αは1〜9の整数であり、α’は1〜9の整数である。これらαおよびα’は、X
1の価数に応じて変化し得る。式(A1)においては、αおよびα’の和は、X
1の価数と同じである。例えば、X
1が10価の有機基である場合、αおよびα’の和は10であり、例えばαが9かつα’が1、αが5かつα’が5、またはαが1かつα’が9となり得る。また、X
1が2価の有機基である場合、αおよびα’は1である。式(A2)においては、αはX
1の価数から1を引いた値である。
【0063】
上記X
1は、好ましくは2〜7価であり、より好ましくは2〜4価であり、さらに好ましくは2価の有機基である。
【0064】
一の態様において、X
1は2〜4価の有機基であり、αは1〜3であり、α’は1である。
【0065】
別の態様において、X
1は2価の有機基であり、αは1であり、α’は1である。この場合、式(A1)および(A2)は、下記式(A1’)および(A2’)で表される。
【化4】
【0066】
上記X
1の例としては、特に限定するものではないが、例えば、下記式:
−(R
31)
p’−(X
a)
q’−
[式中:
R
31は、単結合、−(CH
2)
s’−またはo−、m−もしくはp−フェニレン基を表し、好ましくは−(CH
2)
s’−であり、
s’は、1〜20の整数、好ましくは1〜6の整数、より好ましくは1〜3の整数、さらにより好ましくは1または2であり、
X
aは、−(X
b)
l’−を表し、
X
bは、各出現においてそれぞれ独立して、−O−、−S−、o−、m−もしくはp−フェニレン基、−C(O)O−、−Si(R
33)
2−、−(Si(R
33)
2O)
m’−Si(R
33)
2−、−CONR
34−、−O−CONR
34−、−NR
34−および−(CH
2)
n’−からなる群から選択される基を表し、
R
33は、各出現においてそれぞれ独立して、フェニル基、C
1−6アルキル基またはC
1−6アルコキシ基を表し、好ましくはフェニル基またはC
1−6アルキル基であり、より好ましくはメチル基であり、
R
34は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フェニル基またはC
1−6アルキル基(好ましくはメチル基)を表し、
m’は、各出現において、それぞれ独立して、1〜100の整数、好ましくは1〜20の整数であり、
n’は、各出現において、それぞれ独立して、1〜20の整数、好ましくは1〜6の整数、より好ましくは1〜3の整数であり、
l’は、1〜10の整数、好ましくは1〜5の整数、より好ましくは1〜3の整数であり、
p’は、0または1であり、
q’は、0または1であり、
ここに、p’およびq’の少なくとも一方は1であり、p’またはq’を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は任意である]
で表される2価の基が挙げられる。ここに、R
31およびX
a(典型的にはR
31およびX
aの水素原子)は、フッ素原子、C
1−3アルキル基およびC
1−3フルオロアルキル基から選択される1個またはそれ以上の置換基により置換されていてもよい。
【0067】
好ましくは、上記X
1は、−(R
31)
p’−(X
a)
q’−R
32−である。R
32は、単結合、−(CH
2)
t’−またはo−、m−もしくはp−フェニレン基を表し、好ましくは−(CH
2)
t’−である。t’は、1〜20の整数、好ましくは2〜6の整数、より好ましくは2〜3の整数である。ここに、R
32(典型的にはR
32の水素原子)は、フッ素原子、C
1−3アルキル基およびC
1−3フルオロアルキル基から選択される1個またはそれ以上の置換基により置換されていてもよい。
【0068】
好ましくは、上記X
1は、
C
1−20アルキレン基、
−R
31−X
c−R
32−、または
−X
d−R
32−
[式中、R
31およびR
32は、上記と同意義である。]
であり得る。なお、アルキレン基とは、−(C
δH
2δ)−構造を有する基であり、置換または非置換であってよく、直鎖状または分枝鎖状であってもよい。
【0069】
より好ましくは、上記X
1は、
C
1−20アルキレン基、
−(CH
2)
s’−X
c−、
−(CH
2)
s’−X
c−(CH
2)
t’−、
−X
d−、または
−X
d−(CH
2)
t’−
[式中、s’およびt’は、上記と同意義である。]
である。
【0070】
上記式中、X
cは、
−O−、
−S−、
−C(O)O−、
−CONR
34−、
−O−CONR
34−、
−Si(R
33)
2−、
−(Si(R
33)
2O)
m’−Si(R
33)
2−、
−O−(CH
2)
u’−(Si(R
33)
2O)
m’−Si(R
33)
2−、
−O−(CH
2)
u’−Si(R
33)
2−O−Si(R
33)
2−CH
2CH
2−Si(R
33)
2−O−Si(R
33)
2−、
−O−(CH
2)
u’−Si(OCH
3)
2OSi(OCH
3)
2−、
−CONR
34−(CH
2)
u’−(Si(R
33)
2O)
m’−Si(R
33)
2−、
−CONR
34−(CH
2)
u’−N(R
34)−、または
−CONR
34−(o−、m−またはp−フェニレン)−Si(R
33)
2−
[式中、R
33、R
34およびm’は、上記と同意義であり、
u’は1〜20の整数、好ましくは2〜6の整数、より好ましくは2〜3の整数である。]を表す。X
cは、好ましくは−O−である。
【0071】
上記式中、X
dは、
−S−、
−C(O)O−、
−CONR
34−、
−CONR
34−(CH
2)
u’−(Si(R
33)
2O)
m’−Si(R
33)
2−、
−CONR
34−(CH
2)
u’−N(R
34)−、または
−CONR
34−(o−、m−またはp−フェニレン)−Si(R
33)
2−
[式中、各記号は、上記と同意義である。]
を表す。
【0072】
より好ましくは、上記X
1は、
C
1−20アルキレン基、
−(CH
2)
s’−X
c−(CH
2)
t’−、または
−X
d−(CH
2)
t’−
[式中、各記号は、上記と同意義である。]
であり得る。
【0073】
さらにより好ましくは、上記X
1は、
C
1−20アルキレン基、
−(CH
2)
s’−O−(CH
2)
t’−、
−(CH
2)
s’−(Si(R
33)
2O)
m’−Si(R
33)
2−(CH
2)
t’−、
−(CH
2)
s’−O−(CH
2)
u’−(Si(R
33)
2O)
m’−Si(R
33)
2−(CH
2)
t’−、または
−(CH
2)
s’−O−(CH
2)
t’−Si(R
33)
2 −(CH
2)
u’−Si(R
33)
2−(C
vH
2v)−
[式中、R
33、m’、s’、t’およびu’は、上記と同意義であり、vは1〜20の整数、好ましくは2〜6の整数、より好ましくは2〜3の整数である。]
である。
【0074】
上記式中、−(C
vH
2v)−は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよく、例えば、−CH
2−、−CH
2CH
2−、−CH
2CH
2CH
2−、−CH(CH
3)−、−CH(CH
3)CH
2−であり得る。
【0075】
上記X
1基は、フッ素原子、C
1−3アルキル基およびC
1−3フルオロアルキル基(好ましくは、C
1−3パーフルオロアルキル基)から選択される1個またはそれ以上の置換基により置換されていてもよい。
【0076】
一の態様において、X
1基は、−O−C
1−6アルキレン基以外であり得る。
【0077】
別の態様において、X
1基としては、例えば下記の基が挙げられる:
【化5】
【化6】
[式中、R
41は、それぞれ独立して、水素原子、フェニル基、炭素数1〜6のアルキル基、またはC
1−6アルコキシ基、好ましくはメチル基であり;
Dは、
−CH
2O(CH
2)
2−、
−CH
2O(CH
2)
3−、
−CF
2O(CH
2)
3−、
−(CH
2)
2−、
−(CH
2)
3−、
−(CH
2)
4−、
−CONH−(CH
2)
3−、
−CON(CH
3)−(CH
2)
3−、
−CON(Ph)−(CH
2)
3−(式中、Phはフェニルを意味する)、および
【化7】
(式中、R
42は、それぞれ独立して、水素原子、C
1−6のアルキル基またはC
1−6のアルコキシ基、好ましくはメチル基またはメトキシ基、より好ましくはメチル基を表す。)
から選択される基であり、
Eは、−(CH
2)
ne−(neは2〜6の整数)であり、
Dは、分子主鎖のPFPEに結合し、Eは、PFPEと反対の基に結合する。]
【0078】
上記X
1の具体的な例としては、例えば:
−CH
2O(CH
2)
2−、
−CH
2O(CH
2)
3−、
−CH
2O(CH
2)
6−、
−(CH
2)
2−Si(CH
3)
2−(CH
2)
2−、
−CH
2O(CH
2)
3Si(CH
3)
2OSi(CH
3)
2(CH
2)
2−、
−CH
2O(CH
2)
3Si(CH
3)
2OSi(CH
3)
2OSi(CH
3)
2(CH
2)
2−、
−CH
2O(CH
2)
3Si(CH
3)
2O(Si(CH
3)
2O)
2Si(CH
3)
2(CH
2)
2−、
−CH
2O(CH
2)
3Si(CH
3)
2O(Si(CH
3)
2O)
3Si(CH
3)
2(CH
2)
2−、
−CH
2O(CH
2)
3Si(CH
3)
2O(Si(CH
3)
2O)
10Si(CH
3)
2(CH
2)
2−、
−CH
2O(CH
2)
3Si(CH
3)
2O(Si(CH
3)
2O)
20Si(CH
3)
2(CH
2)
2−、
−CH
2OCF
2CHFOCF
2−、
−CH
2OCF
2CHFOCF
2CF
2−、
−CH
2OCF
2CHFOCF
2CF
2CF
2−、
−CH
2OCH
2CF
2CF
2OCF
2−、
−CH
2OCH
2CF
2CF
2OCF
2CF
2−、
−CH
2OCH
2CF
2CF
2OCF
2CF
2CF
2−、
−CH
2OCH
2CF
2CF
2OCF(CF
3)CF
2OCF
2−、
−CH
2OCH
2CF
2CF
2OCF(CF
3)CF
2OCF
2CF
2−、
−CH
2OCH
2CF
2CF
2OCF(CF
3)CF
2OCF
2CF
2CF
2−、
−CH
2OCH
2CHFCF
2OCF
2−、
−CH
2OCH
2CHFCF
2OCF
2CF
2−、
−CH
2OCH
2CHFCF
2OCF
2CF
2CF
2−、
−CH
2OCH
2CHFCF
2OCF(CF
3)CF
2OCF
2−、
−CH
2OCH
2CHFCF
2OCF(CF
3)CF
2OCF
2CF
2−、
−CH
2OCH
2CHFCF
2OCF(CF
3)CF
2OCF
2CF
2CF
2−、
−CH
2OCH
2(CH
2)
7CH
2Si(OCH
3)
2OSi(OCH
3)
2(CH
2)
2Si(OCH
3)
2OSi(OCH
3)
2(CH
2)
2−、
−CH
2OCH
2CH
2CH
2Si(OCH
3)
2OSi(OCH
3)
2(CH
2)
3−、
−CH
2OCH
2CH
2CH
2Si(OCH
2CH
3)
2OSi(OCH
2CH
3)
2(CH
2)
3−、
−CH
2OCH
2CH
2CH
2Si(OCH
3)
2OSi(OCH
3)
2(CH
2)
2−、
−CH
2OCH
2CH
2CH
2Si(OCH
2CH
3)
2OSi(OCH
2CH
3)
2(CH
2)
2−、
−CH
2−、
−(CH
2)
2−、
−(CH
2)
3−、
−(CH
2)
4−、
−(CH
2)
5−、
−(CH
2)
6−、
−CO−、
−CONH−、
−CONH−CH
2−、
−CONH−(CH
2)
2−、
−CONH−(CH
2)
3−、
−CON(CH
3)−(CH
2)
3−、
−CON(Ph)−(CH
2)
3−(式中、Phはフェニルを意味する)、
−CONH−(CH
2)
6−、
−CON(CH
3)−(CH
2)
6−、
−CON(Ph)−(CH
2)
6−(式中、Phはフェニルを意味する)、
−CONH−(CH
2)
2NH(CH
2)
3−、
−CONH−(CH
2)
6NH(CH
2)
3−、
−CH
2O−CONH−(CH
2)
3−、
−CH
2O−CONH−(CH
2)
6−、
−S−(CH
2)
3−、
−(CH
2)
2S(CH
2)
3−、
−CONH−(CH
2)
3Si(CH
3)
2OSi(CH
3)
2(CH
2)
2−、
−CONH−(CH
2)
3Si(CH
3)
2OSi(CH
3)
2OSi(CH
3)
2(CH
2)
2−、
−CONH−(CH
2)
3Si(CH
3)
2O(Si(CH
3)
2O)
2Si(CH
3)
2(CH
2)
2−、
−CONH−(CH
2)
3Si(CH
3)
2O(Si(CH
3)
2O)
3Si(CH
3)
2(CH
2)
2−、
−CONH−(CH
2)
3Si(CH
3)
2O(Si(CH
3)
2O)
10Si(CH
3)
2(CH
2)
2−、
−CONH−(CH
2)
3Si(CH
3)
2O(Si(CH
3)
2O)
20Si(CH
3)
2(CH
2)
2−、
−C(O)O−(CH
2)
3−、
−C(O)O−(CH
2)
6−、
−CH
2−O−(CH
2)
3−Si(CH
3)
2−(CH
2)
2−Si(CH
3)
2−(CH
2)
2−、
−CH
2−O−(CH
2)
3−Si(CH
3)
2−(CH
2)
2−Si(CH
3)
2−CH(CH
3)−、
−CH
2−O−(CH
2)
3−Si(CH
3)
2−(CH
2)
2−Si(CH
3)
2−(CH
2)
3−、
−CH
2−O−(CH
2)
3−Si(CH
3)
2−(CH
2)
2−Si(CH
3)
2−CH(CH
3)−CH
2−、
−OCH
2−、
−O(CH
2)
3−、
−OCFHCF
2−、
【化8】
などが挙げられる。
【0079】
別の好ましい態様において、X
1は、X
e’を表す。X
e’は、単結合、炭素数1〜6のアルキレン基、−R
51−C
6H
4−R
52−、−R
51−CONR
4−R
52−、−R
51−CONR
4−C
6H
4−R
52−、−R
51−CO−R
52−、−R
51−CO−C
6H
4−R
52−、−R
51−SO
2NR
4−R
52−、−R
51−SO
2NR
4−C
6H
4−R
52−、−R
51−SO
2−R
52−、または−R
51−SO
2−C
6H
4−R
52−である。R
51およびR
52は、それぞれ独立して、単結合または炭素数1〜6のアルキレン基を表し、好ましくは単結合または炭素数1〜3のアルキレン基である。R
4は上記と同意義である。上記アルキレン基は、置換または非置換であり、好ましくは非置換である。上記アルキレン基の置換基としては、例えばハロゲン原子、好ましくはフッ素原子を挙げることができる。上記アルキレン基は、直鎖状または分枝鎖状であり、直鎖状であることが好ましい。
【0080】
さらに好ましい態様において、X
e’は、
単結合、
炭素数1〜6、好ましくは炭素数1〜3のアルキレン基、
−C
6H
4−R
52’−、
−CONR
4’−R
52’−、
−CONR
4’−C
6H
4−R
52’−、
−CO−R
52’−、
−CO−C
6H
4−R
52’−、
−SO
2NR
4’−R
52’−、
−SO
2NR
4’−C
6H
4−R
52’−、
−SO
2−R
52’−、
−SO
2−C
6H
4−R
52’−、
−R
51’−C
6H
4−、
−R
51’−CONR
4’−、
−R
51’−CONR
4’−C
6H
4−、
−R
51’−CO−、
−R
51’−CO−C
6H
4−、
−R
51’−SO
2NR
4’−、
−R
51’−SO
2NR
4’−C
6H
4−、
−R
51’−SO
2−、
−R
51’−SO
2−C
6H
4−、
−C
6H
4−、
−CONR
4’−、
−CONR
4’−C
6H
4−、
−CO−、
−CO−C
6H
4−、
−SO
2NR
4’−、
−SO
2NR
4’−C
6H
4−、
−SO
2−、または
−SO
2−C
6H
4−
(式中、R
51’およびR
52’は、それぞれ独立して、炭素数1〜6、好ましくは炭素数1〜3の直鎖のアルキレン基であり、
R
4’は、水素原子またはメチル基である。)
であり得る。
【0081】
本態様において、X
e’の具体例としては、例えば、
単結合、
炭素数1〜6のアルキレン基、
−CONH−、
−CONH−CH
2−、
−CONH−(CH
2)
2−、
−CONH−(CH
2)
3−、
−CON(CH
3)−、
−CON(CH
3)−CH
2−、
−CON(CH
3)−(CH
2)
2−、
−CON(CH
3)−(CH
2)
3−、
−CH
2−CONH−、
−CH
2−CONH−CH
2−、
−CH
2−CONH−(CH
2)
2−、
−CH
2−CONH−(CH
2)
3−、
−CONH−C
6H
4−、
−CON(CH
3)−C
6H
4−、
−CH
2−CON(CH
3)−CH
2−、
−CH
2−CON(CH
3)−(CH
2)
2−、
−CH
2−CON(CH
3)−(CH
2)
3−、
−CON(CH
3)−C
6H
4−、
−CO−、
−CO−C
6H
4−、
−C
6H
4−、
−SO
2NH−、
−SO
2NH−CH
2−、
−SO
2NH−(CH
2)
2−、
−SO
2NH−(CH
2)
3−、
−SO
2NH−C
6H
4−、
−SO
2N(CH
3)−、
−SO
2N(CH
3)−CH
2−、
−SO
2N(CH
3)−(CH
2)
2−、
−SO
2N(CH
3)−(CH
2)
3−、
−SO
2N(CH
3)−C
6H
4−、
−SO
2−、
−SO
2−CH
2−、
−SO
2−(CH
2)
2−、
−SO
2−(CH
2)
3−、または
−SO
2−C
6H
4−
などが挙げられる。
【0082】
一の態様において、X
e’は、単結合である。本態様において、PFPEと基材層との結合能を有する基(即ち、(A1)および(A2)においては、αを付して括弧でくくられた基)とが直接結合している。
【0083】
さらに別の態様において、X
1は、式:−(R
16)
x−(CFR
17)
y−(CH
2)
z−で表される基である。式中、x、yおよびzは、それぞれ独立して、0〜10の整数であり、x、yおよびzの和は1以上であり、括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。
【0084】
上記式中、R
16は、各出現においてそれぞれ独立して、酸素原子、フェニレン、カルバゾリレン、−NR
18−(式中、R
18は、水素原子または有機基を表す)または2価の有機基である。好ましくは、R
16は、酸素原子または2価の極性基である。
【0085】
上記「2価の極性基」としては、特に限定されないが、−C(O)−、−C(=NR
19)−、および−C(O)NR
19−(これらの式中、R
19は、水素原子または低級アルキル基を表す)が挙げられる。当該「低級アルキル基」は、例えば、炭素数1〜6のアルキル基、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基であり、これらは、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい。
【0086】
上記式中、R
17は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子または低級フルオロアルキル基であり、好ましくはフッ素原子である。当該「低級フルオロアルキル基」は、例えば、炭素数1〜6、好ましくは炭素数1〜3のフルオロアルキル基、好ましくは炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基、より好ましくはトリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、さらに好ましくはトリフルオロメチル基である。
【0087】
この態様において、X
1は、好ましくは、式:−(O)
x−(CF
2)
y−(CH
2)
z−(式中、x、yおよびzは、上記と同意義であり、括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である)で表される基である。
【0088】
上記式:−(O)
x−(CF
2)
y−(CH
2)
z−で表される基としては、例えば、−(O)
x’−(CH
2)
z”−O−[(CH
2)
z’’’−O−]
z””、および−(O)
x’−(CF
2)
y”−(CH
2)
z”−O−[(CH
2)
z’’’−O−]
z””(式中、x’は0または1であり、y”、z”およびz’’’は、それぞれ独立して、1〜10の整数であり、z””は、0または1である)で表される基が挙げられる。なお、これらの基は左端がPFPE側に結合する。
【0089】
別の好ましい態様において、X
1は、−O−CFR
20−(CF
2)
e’−である。
【0090】
上記R
20は、それぞれ独立して、フッ素原子または低級フルオロアルキル基を表す。ここで低級フルオロアルキル基は、例えば炭素数1〜3のフルオロアルキル基、好ましくは炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基、より好ましくはトリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、更に好ましくはトリフルオロメチル基である。
【0091】
上記e’は、それぞれ独立して、0または1である。
【0092】
一の具体例において、R
20はフッ素原子であり、e’は1である。
【0093】
さらに別の態様において、X
1基の例として、下記の基が挙げられる:
【化9】
[式中、
R
41は、それぞれ独立して、水素原子、フェニル基、炭素数1〜6のアルキル基、またはC
1−6アルコキシ基、好ましくはメチル基であり;
各X
1基において、Tのうち任意のいくつかは、分子主鎖のPFPEに結合する以下の基:
−CH
2O(CH
2)
2−、
−CH
2O(CH
2)
3−、
−CF
2O(CH
2)
3−、
−CH
2−、
−(CH
2)
2−、
−(CH
2)
3−、
−(CH
2)
4−、
−CONH−(CH
2)
3−、
−CON(CH
3)−(CH
2)
3−、
−CON(Ph)−(CH
2)
3−(式中、Phはフェニルを意味する)、または
【化10】
[式中、R
42は、それぞれ独立して、水素原子、C
1−6のアルキル基またはC
1−6のアルコキシ基、好ましくはメチル基またはメトキシ基、より好ましくはメチル基を表す。]
であり、別のTのいくつかは、分子主鎖のPFPEと反対の基に結合する−(CH
2)
n”−(n”は2〜6の整数)であり、存在する場合、残りのTは、それぞれ独立して、メチル基、フェニル基、C
1−6アルコキシ基またはラジカル捕捉基もしくは紫外線吸収基であり得る。
【0094】
ラジカル捕捉基は、光照射で生じるラジカルを捕捉できるものであれば特に限定されないが、例えばベンゾフェノン類、ベンゾトリアゾール類、安息香酸エステル類、サリチル酸フェニル類、クロトン酸類、マロン酸エステル類、オルガノアクリレート類、ヒンダードアミン類、ヒンダードフェノール類、またはトリアジン類の残基が挙げられる。
【0095】
紫外線吸収基は、紫外線を吸収できるものであれば特に限定されないが、例えばベンゾトリアゾール類、ヒドロキシベンゾフェノン類、置換および未置換安息香酸もしくはサリチル酸化合物のエステル類、アクリレートまたはアルコキシシンナメート類、オキサミド類、オキサニリド類、ベンゾキサジノン類、ベンゾキサゾール類の残基が挙げられる。
【0096】
好ましい態様において、好ましいラジカル捕捉基または紫外線吸収基としては、
【化11】
が挙げられる。
【0097】
この態様において、X
1、X
3およびX
4は、3〜10価の有機基であり得る。
【0098】
上記式中、X
2は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合または2価の有機基を表す。X
2は、好ましくは、炭素数1〜20のアルキレン基であり、より好ましくは、−(CH
2)
u−(式中、uは、0〜2の整数である)である。
【0099】
上記式中、tは、それぞれ独立して、1〜10の整数である。好ましい態様において、tは1〜6の整数である。別の好ましい態様において、tは2〜10の整数であり、好ましくは2〜6の整数である。
【0100】
一の態様において、式(A1)および(A2)で示される化合物は、αが2以上である。
【0101】
一の態様において、式(A1)および(A2)で示される化合物は、tが2以上である。
【0102】
一の態様において、式(A1)および(A2)で示される化合物は、αが1、α’が1、およびtが2以上である。
【0103】
好ましい式(A1)および(A2)で示される化合物は、下記式(A1’)および(A2’):
【化12】
[式中:
PFPEは、それぞれ独立して、式:
−(OC
6F
12)
a−(OC
5F
10)
b−(OC
4F
8)
c−(OC
3F
6)
d−(OC
2F
4)
e−(OCF
2)
f−
(式中、a、b、c、d、eおよびfは、それぞれ独立して0以上200以下の整数であって、a、b、c、d、eおよびfの和は少なくとも1である。a、b、c、d、eまたはfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。)
で表される基であり;
Rfは、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1〜16のアルキル基を表し;
R
13は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解可能な基を表し;
R
14は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または炭素数1〜22のアルキル基を表し;
R
11は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子またはハロゲン原子を表し;
R
12は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または低級アルキル基を表し;
nは、1〜3の整数であり、好ましくは3であり;
ただし、式(A1’)および(A2’)において、水酸基または加水分解可能な基に結合したSiが少なくとも2つ存在し;
X
1は、各出現においてそれぞれ独立して、−O−CFR
20−(CF
2)
e’−であり;
R
20は、各出現においてそれぞれ独立して、フッ素原子または低級フルオロアルキル基であり;
e’は、各出現においてそれぞれ独立して、0または1であり;
X
2は、−(CH
2)
u−であり;
uは、各出現においてそれぞれ独立して、0〜2の整数であり;
tは、各出現においてそれぞれ独立して、1〜10の整数である。]
で表される化合物である。
【0104】
上記式(A1)および(A2)で表される化合物は、例えば、Rf−PFPE−部分に対応するパーフルオロポリエーテル誘導体を原料として、末端にヨウ素を導入した後、−CH
2CR
12(X
2−SiR
13nR
143−n)−に対応するビニルモノマーを反応させることにより得ることができる。
【0105】
式(B1)および(B2):
【化13】
【0106】
上記式(B1)および(B2)中、RfおよびPFPEは、上記式(A1)および(A2)に関する記載と同意義である。
【0107】
上記式中、X
3は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合または2〜10価の有機基を表す。当該X
3は、式(B1)および(B2)で表される化合物において、主に撥水性および表面滑り性等を提供するパーフルオロポリエーテル部(即ち、Rf−PFPE部または−PFPE−部)と、基材との結合能を提供するシラン部(即ち、βを付して括弧でくくられた基)とを連結するリンカーと解される。従って、当該X
3は、式(B1)および(B2)で表される化合物が安定に存在し得るものであれば、いずれの有機基であってもよい。
【0108】
別の態様において、X
3は、X
eを表す。X
eは、上記と同意義である。
【0109】
上記式中、βは1〜9の整数であり、β’は1〜9の整数である。これらβおよびβ’は、X
3の価数に応じて変化し得る。式(B1)においては、βおよびβ’の和は、X3の価数と同じである。例えば、X3が10価の有機基である場合、βおよびβ’の和は10であり、例えばβが9かつβ’が1、βが5かつβ’が5、またはβが1かつβ’が9となり得る。また、X
3が2価の有機基である場合、βおよびβ’は1である。式(B2)においては、βはX
3の価数から1を引いた値である。
【0110】
上記X
3は、好ましくは2〜7価であり、より好ましくは2〜4価であり、さらに好ましくは2価の有機基である。
【0111】
一の態様において、X
3は2〜4価の有機基であり、βは1〜3であり、β’は1である。
【0112】
別の態様において、X
3は2価の有機基であり、βは1であり、β’は1である。この場合、式(B1)および(B2)は、下記式(B1’)および(B2’)で表される。
【化14】
【0113】
上記X
3の例としては、特に限定するものではないが、例えば、X
1に関して記載したものと同様のものが挙げられる。
【0114】
中でも、好ましい具体的なX
3は、
−CH
2O(CH
2)
2−、
−CH
2O(CH
2)
3−、
−CH
2O(CH
2)
6−、
−(CH
2)
2−Si(CH
3)
2−(CH
2)
2−、
−CH
2O(CH
2)
3Si(CH
3)
2OSi(CH
3)
2(CH
2)
2−、
−CH
2O(CH
2)
3Si(CH
3)
2OSi(CH
3)
2OSi(CH
3)
2(CH
2)
2−、
−CH
2O(CH
2)
3Si(CH
3)
2O(Si(CH
3)
2O)
2Si(CH
3)
2(CH
2)
2−、
−CH
2O(CH
2)
3Si(CH
3)
2O(Si(CH
3)
2O)
3Si(CH
3)
2(CH
2)
2−、
−CH
2O(CH
2)
3Si(CH
3)
2O(Si(CH
3)
2O)
10Si(CH
3)
2(CH
2)
2−、
−CH
2O(CH
2)
3Si(CH
3)
2O(Si(CH
3)
2O)
20Si(CH
3)
2(CH
2)
2−、
−CH
2OCF
2CHFOCF
2−、
−CH
2OCF
2CHFOCF
2CF
2−、
−CH
2OCF
2CHFOCF
2CF
2CF
2−、
−CH
2OCH
2CF
2CF
2OCF
2−、
−CH
2OCH
2CF
2CF
2OCF
2CF
2−、
−CH
2OCH
2CF
2CF
2OCF
2CF
2CF
2−、
−CH
2OCH
2CF
2CF
2OCF(CF
3)CF
2OCF
2−、
−CH
2OCH
2CF
2CF
2OCF(CF
3)CF
2OCF
2CF
2−、
−CH
2OCH
2CF
2CF
2OCF(CF
3)CF
2OCF
2CF
2CF
2−、
−CH
2OCH
2CHFCF
2OCF
2−、
−CH
2OCH
2CHFCF
2OCF
2CF
2−、
−CH
2OCH
2CHFCF
2OCF
2CF
2CF
2−、
−CH
2OCH
2CHFCF
2OCF(CF
3)CF
2OCF
2−、
−CH
2OCH
2CHFCF
2OCF(CF
3)CF
2OCF
2CF
2−、
−CH
2OCH
2CHFCF
2OCF(CF
3)CF
2OCF
2CF
2CF
2−、
−CH
2OCH
2(CH
2)
7CH
2Si(OCH
3)
2OSi(OCH
3)
2(CH
2)
2Si(OCH
3)
2OSi(OCH
3)
2(CH
2)
2−、
−CH
2OCH
2CH
2CH
2Si(OCH
3)
2OSi(OCH
3)
2(CH
2)
3−、
−CH
2OCH
2CH
2CH
2Si(OCH
2CH
3)
2OSi(OCH
2CH
3)
2(CH
2)
3−、
−CH
2OCH
2CH
2CH
2Si(OCH
3)
2OSi(OCH
3)
2(CH
2)
2−、
−CH
2OCH
2CH
2CH
2Si(OCH
2CH
3)
2OSi(OCH
2CH
3)
2(CH
2)
2−、
−CH
2−、
−(CH
2)
2−、
−(CH
2)
3−、
−(CH
2)
4−、
−(CH
2)
5−、
−(CH
2)
6−、
−CO−、
−CONH−、
−CONH−CH
2−、
−CONH−(CH
2)
2−、
−CONH−(CH
2)
3−、
−CON(CH
3)−(CH
2)
3−、
−CON(Ph)−(CH
2)
3−(式中、Phはフェニルを意味する)、
−CONH−(CH
2)
6−、
−CON(CH
3)−(CH
2)
6−、
−CON(Ph)−(CH
2)
6−(式中、Phはフェニルを意味する)、
−CONH−(CH
2)
2NH(CH
2)
3−、
−CONH−(CH
2)
6NH(CH
2)
3−、
−CH
2O−CONH−(CH
2)
3−、
−CH
2O−CONH−(CH
2)
6−、
−S−(CH
2)
3−、
−(CH
2)
2S(CH
2)
3−、
−CONH−(CH
2)
3Si(CH
3)
2OSi(CH
3)
2(CH
2)
2−、
−CONH−(CH
2)
3Si(CH
3)
2OSi(CH
3)
2OSi(CH
3)
2(CH
2)
2−、
−CONH−(CH
2)
3Si(CH
3)
2O(Si(CH
3)
2O)
2Si(CH
3)
2(CH
2)
2−、
−CONH−(CH
2)
3Si(CH
3)
2O(Si(CH
3)
2O)
3Si(CH
3)
2(CH
2)
2−、
−CONH−(CH
2)
3Si(CH
3)
2O(Si(CH
3)
2O)
10Si(CH
3)
2(CH
2)
2−、
−CONH−(CH
2)
3Si(CH
3)
2O(Si(CH
3)
2O)
20Si(CH
3)
2(CH
2)
2−、
−C(O)O−(CH
2)
3−、
−C(O)O−(CH
2)
6−、
−CH
2−O−(CH
2)
3−Si(CH
3)
2−(CH
2)
2−Si(CH
3)
2−(CH
2)
2−、
−CH
2−O−(CH
2)
3−Si(CH
3)
2−(CH
2)
2−Si(CH
3)
2−CH(CH
3)−、
−CH
2−O−(CH
2)
3−Si(CH
3)
2−(CH
2)
2−Si(CH
3)
2−(CH
2)
3−、
−CH
2−O−(CH
2)
3−Si(CH
3)
2−(CH
2)
2−Si(CH
3)
2−CH(CH
3)−CH
2−、
−OCH
2−、
−O(CH
2)
3−、
−OCFHCF
2−、
【化15】
などが挙げられる。
【0115】
別の好ましい態様において、X
3は、X
e’を表す。X
e’は、上記と同意義である。
【0116】
一の態様において、X
e’は、単結合である。本態様において、PFPEと基材層との結合能を有する基(即ち、(B1)および(B2)においては、βを付して括弧でくくられた基)とが直接結合している。
【0117】
上記式(B1)および式(B2)中、R
aは、各出現においてそれぞれ独立して、−Z
1−SiR
1pR
2qR
3rを表す。
【0118】
式中、Z
1は、各出現においてそれぞれ独立して、酸素原子または2価の有機基を表す。
【0119】
上記Z
1は、好ましくは、2価の有機基であり、式(B1)または式(B2)における分子主鎖の末端のSi原子(R
aが結合しているSi原子)とシロキサン結合を形成するものを含まない。
【0120】
上記Z
1は、好ましくは、アルキレン基、−(CH
2)
g−O−(CH
2)
h−(式中、gは、1〜6の整数であり、hは、1〜6の整数である)または、−フェニレン−(CH
2)
i−(式中、iは、0〜6の整数である)ある。これらの基は、例えば、フッ素原子、C
1−6アルキル基、C
2−6アルケニル基、およびC
2−6アルキニル基から選択される1個またはそれ以上の置換基により置換されていてもよい。耐UV性(紫外線耐久性)が特に良好な観点からは、上記Z
1は、より好ましくは、直鎖状または分枝鎖状のアルキレン基であり、さらに好ましくは直鎖状のアルキレン基である。上記Z
1のアルキレン基を構成する炭素数は、好ましくは1〜6の範囲にあり、より好ましくは1〜3の範囲にある。なお、アルキレン基については上記のとおりである。
【0121】
式中、R
1は、各出現においてそれぞれ独立して、R
a’を表す。R
a’は、R
aと同意義である。
【0122】
R
a中、Z
1基を介して直鎖状に連結されるSiは最大で5個である。即ち、上記R
aにおいて、R
1が少なくとも1つ存在する場合、R
a中にZ
1基を介して直鎖状に連結されるSi原子が2個以上存在するが、かかるZ
1基を介して直鎖状に連結されるSi原子の数は最大で5個である。なお、「R
a中のZ
1基を介して直鎖状に連結されるSi原子の数」とは、R
a中において直鎖状に連結される−Z
1−Si−の繰り返し数と等しくなる。
【0123】
例えば、下記にR
a中においてZ
1基を介してSi原子が連結された一例を示す。
【化16】
【0124】
上記式において、*は、主鎖のSiに結合する部位を意味し、…は、Z
1Si以外の所定の基が結合していること、即ち、Si原子の3本の結合手がすべて…である場合、Z
1Siの繰り返しの終了箇所を意味する。また、Siの右肩の数字は、*から数えたZ
1基を介して直鎖状に連結されたSiの出現数を意味する。即ち、Si
2でZ
1Si繰り返しが終了している鎖は「R
a中のZ
1基を介して直鎖状に連結されるSi原子の数」が2個であり、同様に、Si
3、Si
4およびSi
5でZ
1Si繰り返しが終了している鎖は、それぞれ、「R
a中のZ
1基を介して直鎖状に連結されるSi原子の数」が3、4および5個である。なお、上記の式から明らかなように、R
a中には、Z
1Si鎖が複数存在するが、これらはすべて同じ長さである必要はなく、それぞれ任意の長さであってもよい。
【0125】
好ましい態様において、下記に示すように、「R
a中のZ
1基を介して直鎖状に連結されるSi原子の数」は、すべての鎖において、1個(左式)または2個(右式)である。
【化17】
【0126】
一の態様において、R
a中のZ
1基を介して直鎖状に連結されるSi原子の数は1個または2個、好ましくは1個である。
【0127】
式中、R
2は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解可能な基を表す。
【0128】
上記「加水分解可能な基」とは、式(A1)および(A2)と同様のものが挙げられる。
【0129】
好ましくは、R
2は、−OR(式中、Rは、置換または非置換のC
1−3アルキル基、より好ましくはメチル基を表す)である。
【0130】
式中、R
3は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または低級アルキル基を表す。該低級アルキル基は、好ましくは炭素数1〜20のアルキル基、より好ましくは炭素数1〜6のアルキル基、さらに好ましくはメチル基である。
【0131】
式中、pは、各出現においてそれぞれ独立して、0〜3の整数であり;qは、各出現においてそれぞれ独立して、0〜3の整数であり;rは、各出現においてそれぞれ独立して、0〜3の整数である。ただし、−Z
1−SiR
1pR
2qR
3r毎において、p、qおよびrの和は3である。
【0132】
好ましい態様において、R
a中の末端のR
a’(R
a’が存在しない場合、R
a)において、上記qは、好ましくは2以上、例えば2または3であり、より好ましくは3である。
【0133】
好ましい態様において、R
aは、末端部に、少なくとも1つの、−Si(−Z
1−SiR
2qR
3r)
2または−Si(−Z
1−SiR
2qR
3r)
3、好ましくは−Si(−Z
1−SiR
2qR
3r)
3を有し得る。式中、(−Z
1−SiR
2qR
3r)の単位は、好ましくは(−Z
1−SiR
23)である。さらに好ましい態様において、R
aの末端部は、すべて−Si(−Z
1−SiR
2qR
3r)
3、好ましくは−Si(−Z
1−SiR
23)
3であり得る。
【0134】
上記式(B1)および(B2)においては、水酸基または加水分解可能な基に結合したSiが少なくとも2つ存在する。即ち、SiR
2および/またはSiR
bで表される基が少なくとも2つ存在する。このような構成を有することにより、本発明のPFPE含有シラン化合物は、基材表面等に良好に結合可能な表面処理層を形成し得る。
【0135】
上記式中、R
bは、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解可能な基を表す。
【0136】
上記R
bは、好ましくは、水酸基、−OR、−OCOR、−O−N=C(R)
2、−N(R)
2、−NHR、ハロゲン(これら式中、Rは、置換または非置換の炭素数1〜4のアルキル基を示す)であり、より好ましくは−ORである。Rは、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基などの非置換アルキル基;クロロメチル基などの置換アルキル基が含まれる。それらの中でも、アルキル基、特に非置換アルキル基が好ましく、メチル基またはエチル基がより好ましい。水酸基は、特に限定されないが、加水分解可能な基が加水分解して生じたものであってよい。より好ましくは、R
bは、−OR(式中、Rは、置換または非置換のC
1−3アルキル基、より好ましくはメチル基を表す)である。
【0137】
上記式中、R
cは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または低級アルキル基を表す。該低級アルキル基は、好ましくは炭素数1〜20のアルキル基、より好ましくは炭素数1〜6のアルキル基、さらに好ましくはメチル基である。
【0138】
式中、k1は、各出現においてそれぞれ独立して、0〜3の整数であり;l1は、各出現においてそれぞれ独立して、0〜3の整数であり;m1は、各出現においてそれぞれ独立して、0〜3の整数である。ただし、−SiR
ak1R
bl1R
cm1毎において、k1、l1およびm1の和は、3である。k1は、1〜3であることが好ましく、3であることがより好ましい。
【0139】
上記式(B1)および(B2)で表される化合物は、例えば、Rf−PFPE−部分に対応するパーフルオロポリエーテル誘導体を原料として、末端に水酸基を導入した後、末端に不飽和結合を有する基を導入し、この不飽和結合を有する基とハロゲン原子を有するシリル誘導体とを反応させ、さらにこのシリル基に末端に水酸基を導入し、導入した不飽和結合を有する基とシリル誘導体とを反応させることにより得ることができる。例えば、国際公開第2014/069592号に記載のように合成することができる。
【0140】
式(C1)および(C2):
【化18】
【0141】
上記式(C1)および(C2)中、RfおよびPFPEは、上記式(A1)および(A2)に関する記載と同意義である。
【0142】
上記式中、X
4は、それぞれ独立して、単結合または2〜10価の有機基を表す。当該X
4は、式(C1)および(C2)で表される化合物において、主に撥水性および表面滑り性等を提供するパーフルオロポリエーテル部(即ち、Rf−PFPE部または−PFPE−部)と、基材との結合能を提供する部(即ち、γを付して括弧でくくられた基)とを連結するリンカーと解される。従って、当該X
4は、式(C1)および(C2)で表される化合物が安定に存在し得るものであれば、いずれの有機基であってもよい。
【0143】
別の態様において、X
4は、X
eを表す。X
eは、上記と同意義である。
【0144】
上記式中、γは1〜9の整数であり、γ’は1〜9の整数である。これらγおよびγ’は、X
4の価数に応じて変化し得る。式(C1)においては、γおよびγ’の和は、X
4の価数と同じである。例えば、X
4が10価の有機基である場合、γおよびγ’の和は10であり、例えばγが9かつγ’が1、γが5かつγ’が5、またはγが1かつγ’が9となり得る。また、X
4が2価の有機基である場合、γおよびγ’は1である。式(C2)においては、γはX
4の価数から1を引いた値である。
【0145】
上記X
4は、好ましくは2〜7価、より好ましくは2〜4価、さらに好ましくは2価の有機基である。
【0146】
一の態様において、X
4は2〜4価の有機基であり、γは1〜3であり、γ’は1である。
【0147】
別の態様において、X
4は2価の有機基であり、γは1であり、γ’は1である。この場合、式(C1)および(C2)は、下記式(C1’)および(C2’)で表される。
【化19】
【0148】
上記X
4の例としては、特に限定するものではないが、例えば、X
1に関して記載したものと同様のものが挙げられる。
【0149】
中でも、好ましい具体的なX
4は、
−CH
2O(CH
2)
2−、
−CH
2O(CH
2)
3−、
−CH
2O(CH
2)
6−、
−(CH
2)
2−Si(CH
3)
2−(CH
2)
2−、
−CH
2O(CH
2)
3Si(CH
3)
2OSi(CH
3)
2(CH
2)
2−、
−CH
2O(CH
2)
3Si(CH
3)
2OSi(CH
3)
2OSi(CH
3)
2(CH
2)
2−、
−CH
2O(CH
2)
3Si(CH
3)
2O(Si(CH
3)
2O)
2Si(CH
3)
2(CH
2)
2−、
−CH
2O(CH
2)
3Si(CH
3)
2O(Si(CH
3)
2O)
3Si(CH
3)
2(CH
2)
2−、
−CH
2O(CH
2)
3Si(CH
3)
2O(Si(CH
3)
2O)
10Si(CH
3)
2(CH
2)
2−、
−CH
2O(CH
2)
3Si(CH
3)
2O(Si(CH
3)
2O)
20Si(CH
3)
2(CH
2)
2−、
−CH
2OCF
2CHFOCF
2−、
−CH
2OCF
2CHFOCF
2CF
2−、
−CH
2OCF
2CHFOCF
2CF
2CF
2−、
−CH
2OCH
2CF
2CF
2OCF
2−、
−CH
2OCH
2CF
2CF
2OCF
2CF
2−、
−CH
2OCH
2CF
2CF
2OCF
2CF
2CF
2−、
−CH
2OCH
2CF
2CF
2OCF(CF
3)CF
2OCF
2−、
−CH
2OCH
2CF
2CF
2OCF(CF
3)CF
2OCF
2CF
2−、
−CH
2OCH
2CF
2CF
2OCF(CF
3)CF
2OCF
2CF
2CF
2−、
−CH
2OCH
2CHFCF
2OCF
2−、
−CH
2OCH
2CHFCF
2OCF
2CF
2−、
−CH
2OCH
2CHFCF
2OCF
2CF
2CF
2−、
−CH
2OCH
2CHFCF
2OCF(CF
3)CF
2OCF
2−、
−CH
2OCH
2CHFCF
2OCF(CF
3)CF
2OCF
2CF
2−、
−CH
2OCH
2CHFCF
2OCF(CF
3)CF
2OCF
2CF
2CF
2−、
−CH
2OCH
2(CH
2)
7CH
2Si(OCH
3)
2OSi(OCH
3)
2(CH
2)
2Si(OCH
3)
2OSi(OCH
3)
2(CH
2)
2−、
−CH
2OCH
2CH
2CH
2Si(OCH
3)
2OSi(OCH
3)
2(CH
2)
3−、
−CH
2OCH
2CH
2CH
2Si(OCH
2CH
3)
2OSi(OCH
2CH
3)
2(CH
2)
3−、
−CH
2OCH
2CH
2CH
2Si(OCH
3)
2OSi(OCH
3)
2(CH
2)
2−、
−CH
2OCH
2CH
2CH
2Si(OCH
2CH
3)
2OSi(OCH
2CH
3)
2(CH
2)
2−、
−CH
2−、
−(CH
2)
2−、
−(CH
2)
3−、
−(CH
2)
4−、
−(CH
2)
5−、
−(CH
2)
6−、
−CO−、
−CONH−、
−CONH−CH
2−、
−CONH−(CH
2)
2−、
−CONH−(CH
2)
3−、
−CON(CH
3)−(CH
2)
3−、
−CON(Ph)−(CH
2)
3−(式中、Phはフェニルを意味する)、
−CONH−(CH
2)
6−、
−CON(CH
3)−(CH
2)
6−、
−CON(Ph)−(CH
2)
6−(式中、Phはフェニルを意味する)、
−CONH−(CH
2)
2NH(CH
2)
3−、
−CONH−(CH
2)
6NH(CH
2)
3−、
−CH
2O−CONH−(CH
2)
3−、
−CH
2O−CONH−(CH
2)
6−、
−S−(CH
2)
3−、
−(CH
2)
2S(CH
2)
3−、
−CONH−(CH
2)
3Si(CH
3)
2OSi(CH
3)
2(CH
2)
2−、
−CONH−(CH
2)
3Si(CH
3)
2OSi(CH
3)
2OSi(CH
3)
2(CH
2)
2−、
−CONH−(CH
2)
3Si(CH
3)
2O(Si(CH
3)
2O)
2Si(CH
3)
2(CH
2)
2−、
−CONH−(CH
2)
3Si(CH
3)
2O(Si(CH
3)
2O)
3Si(CH
3)
2(CH
2)
2−、
−CONH−(CH
2)
3Si(CH
3)
2O(Si(CH
3)
2O)
10Si(CH
3)
2(CH
2)
2−、
−CONH−(CH
2)
3Si(CH
3)
2O(Si(CH
3)
2O)
20Si(CH
3)
2(CH
2)
2−、
−C(O)O−(CH
2)
3−、
−C(O)O−(CH
2)
6−、
−CH
2−O−(CH
2)
3−Si(CH
3)
2−(CH
2)
2−Si(CH
3)
2−(CH
2)
2−、
−CH
2−O−(CH
2)
3−Si(CH
3)
2−(CH
2)
2−Si(CH
3)
2−CH(CH
3)−、
−CH
2−O−(CH
2)
3−Si(CH
3)
2−(CH
2)
2−Si(CH
3)
2−(CH
2)
3−、
−CH
2−O−(CH
2)
3−Si(CH
3)
2−(CH
2)
2−Si(CH
3)
2−CH(CH
3)−CH
2−、
−OCH
2−、
−O(CH
2)
3−、
−OCFHCF
2−、
【化20】
などが挙げられる。
【0150】
別の好ましい態様において、X
3は、X
e’を表す。X
e’は、上記と同意義である。
【0151】
一の態様において、X
e’は、単結合である。本態様において、PFPEと基材層との結合能を有する基(即ち、(C1)および(C2)においては、γを付して括弧でくくられた基)とが直接結合している。このような構造を有することによって、PFPEとγを付して括弧でくくられた基との結合力がより強くなると考えられる。また、PFPEと直接結合する炭素原子(即ち、γを付して括弧でくくられた基においてR
d、R
eおよびR
fと結合する炭素原子)は電荷の偏りが少なく、その結果、上記炭素原子において求核反応等が生じにくく、基材層と安定に結合すると考えられる。このような構造は、形成される表面処理層の摩擦耐久性をより向上する点から有利である。
【0152】
上記式中、R
dは、各出現においてそれぞれ独立して、−Z
2−CR
81p2R
82q2R
83r2を表す。
【0153】
式中、Z
2は、各出現においてそれぞれ独立して、酸素原子または2価の有機基を表す。
【0154】
上記Z
2は、好ましくは、C
1−6アルキレン基、−(CH
2)
g−O−(CH
2)
h−(式中、gは、0〜6の整数、例えば1〜6の整数であり、hは、0〜6の整数、例えば1〜6の整数である)または、−フェニレン−(CH
2)
i−(式中、iは、0〜6の整数である)であり、より好ましくはC
1−3アルキレン基である。これらの基は、例えば、フッ素原子、C
1−6アルキル基、C
2−6アルケニル基、およびC
2−6アルキニル基から選択される1個またはそれ以上の置換基により置換されていてもよい。
【0155】
式中、R
81は、各出現においてそれぞれ独立して、R
d’を表す。R
d’は、R
dと同意義である。
【0156】
R
d中、Z
2基を介して直鎖状に連結されるCは最大で5個である。即ち、上記R
dにおいて、R
81が少なくとも1つ存在する場合、R
d中にZ
2基を介して直鎖状に連結されるC原子が2個以上存在するが、かかるZ
2基を介して直鎖状に連結されるC原子の数は最大で5個である。なお、「R
d中のZ
2基を介して直鎖状に連結されるC原子の数」とは、R
d中において直鎖状に連結される−Z
2−C−の繰り返し数と等しくなる。
【0157】
好ましい態様において、下記に示すように、「R
d中のZ
2基を介して直鎖状に連結されるC原子の数」は、すべての鎖において、1個(左式)または2個(右式)である。
【化21】
【0158】
一の態様において、R
dのZ
2基を介して直鎖状に連結されるC原子の数は1個または2個、好ましくは1個である。
【0159】
式中、R
82は、各出現においてそれぞれ独立して、−Y−SiR
85n2R
863−n2を表す。
【0160】
Yは、各出現においてそれぞれ独立して、2価の有機基を表す。
【0161】
好ましい態様において、Yは、C
1−6アルキレン基、−(CH
2)
g’−O−(CH
2)
h’−(式中、g’は、0〜6の整数、例えば1〜6の整数であり、h’は、0〜6の整数、例えば1〜6の整数である)または、−フェニレン−(CH
2)
i’−(式中、i’は、0〜6の整数である)である。これらの基は、例えば、フッ素原子、C
1−6アルキル基、C
2−6アルケニル基、およびC
2−6アルキニル基から選択される1個またはそれ以上の置換基により置換されていてもよい。
【0162】
一の態様において、Yは、C
1−6アルキレン基または−フェニレン−(CH
2)
i’−であり得る。Yが上記の基である場合、光耐性、特に紫外線耐性がより高くなり得る。
【0163】
上記R
85は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解可能な基を表す。
【0164】
上記「加水分解可能な基」とは、式(A1)および(A2)と同様のものが挙げられる。
【0165】
好ましくは、R
85は、−OR(式中、Rは、置換または非置換のC
1−3アルキル基、より好ましくはエチル基またはメチル基、特にメチル基を表す)である。
【0166】
上記R
86は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または低級アルキル基を表す。該低級アルキル基は、好ましくは炭素数1〜20のアルキル基、より好ましくは炭素数1〜6のアルキル基、さらに好ましくはメチル基である。
【0167】
n2は、(−Y−SiR
85n2R
863−n2)単位毎に独立して、0〜3の整数を表し、好ましくは1〜3の整数、より好ましくは2または3、特に好ましくは3である。
【0168】
上記R
83は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または低級アルキル基を表す。該低級アルキル基は、好ましくは炭素数1〜20のアルキル基、より好ましくは炭素数1〜6のアルキル基、さらに好ましくはメチル基である。
【0169】
式中、p2は、各出現においてそれぞれ独立して、0〜3の整数であり;q2は、各出現においてそれぞれ独立して、0〜3の整数であり;r2は、各出現においてそれぞれ独立して、0〜3の整数である。ただし、(−Z
2−CR
81p2R
82q2R
83r2)毎において、p2、q2およびr2の和は3である。
【0170】
好ましい態様において、R
d中の末端のR
d’(R
d’が存在しない場合、R
d)において、上記q2は、好ましくは2以上、例えば2または3であり、より好ましくは3である。
【0171】
好ましい態様において、R
dの末端部の少なくとも1つは、−C(−Y−SiR
85n2R
863−n2)
2または−C(−Y−SiR
85n2R
863−n2)
3、好ましくは−C(−Y−SiR
85n2R
863−n2)
3であり得る。式中、(−Y−SiR
85n2R
863−n2)の単位は、好ましくは(−Y−SiR
853)である。さらに好ましい態様において、R
dの末端部は、すべて−C(−Y−SiR
85n2R
863−n2)
3、好ましくは−C(−Y−SiR
853)
3であり得る。
【0172】
上記式中、R
eは、各出現においてそれぞれ独立して、−Y−SiR
85n2R
863−n2を表す。ここに、Y、R
85、R
86およびn2は、上記R
82における記載と同意義である。
【0173】
上記式中、R
fは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または低級アルキル基を表す。該低級アルキル基は、好ましくは炭素数1〜20のアルキル基、より好ましくは炭素数1〜6のアルキル基、さらに好ましくはメチル基である。
【0174】
式中、k2は、各出現においてそれぞれ独立して、0〜3の整数であり;l2は、各出現においてそれぞれ独立して、0〜3の整数であり;m2は、各出現においてそれぞれ独立して、0〜3の整数である。ただし、(CR
dk2R
el2R
fm2)毎において、k2、l2およびm2の和は3である。
【0175】
一の態様において、少なくとも1つのk2は2または3であり、好ましくは3である。
【0176】
一の態様において、k2は2または3であり、好ましくは3である。
【0177】
一の態様において、l2は2または3であり、好ましくは3である。
【0178】
式(C1)および(C2)において、−Y−SiR
85で表される基が2以上存在する。好ましくは、式(C1)および(C2)において、2以上の−Y−SiR
85で表される基に結合した炭素原子が1以上存在する。即ち、−C−(Y−SiR
85n2R
863−n2)
2で表される基が1以上存在することが好ましい(式中、n2は1〜3の整数である。)。
【0179】
好ましくは、上記式(C1)および(C2)中、n2は1〜3の整数であり、および、少なくとも1つのq2は2または3であるか、あるいは、少なくとも1つのl2は2または3である。即ち、式中、少なくとも2つの−Y−SiR
85n2R
863−n2基が存在する。
【0180】
一の態様において、式(C1)および(C2)は、下記式(C1”)および(C2”)で表される。
【化22】
[式中:
RfおよびPFPEは、それぞれ上記と同意義であり;
X
4’は、X
4と同意義であり、好ましくはX
eを表し;
X
eは、上記と同意義であり;
γおよびγ’は、それぞれ上記と同意義であり;
R
d’は、各出現においてそれぞれ独立して、−Z
2’−CR
81p2’R
82’q2’R
83r2’を表し;
R
81およびR
83は、それぞれ上記と同意義であり;
Z
2’は、各出現においてそれぞれ独立して、−R
g−Z’−を表し;
R
gは、各出現においてそれぞれ独立して、低級アルキレン基を表し;
Z’は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合、酸素原子または2価の有機基を表し;
R
82’は、各出現においてそれぞれ独立して、−R
h−Y’−SiR
85n2’R
863−n2’を表し;
R
hは、各出現においてそれぞれ独立して、低級アルキレン基を表し;
Y’は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合、酸素原子または2価の有機基を表し;
n2’は、(−R
h−Y’−SiR
85n2’R
863−n2’)単位毎に独立して、1〜3の整数を表し、好ましくは2または3、より好ましくは3であり;
R
85およびR
86は、それぞれ上記と同意義であり;
p2’は、各出現においてそれぞれ独立して、0〜3の整数であり;
q2’は、各出現においてそれぞれ独立して、0〜3の整数であり;
r2’は、各出現においてそれぞれ独立して、0〜3の整数であり;
(−Z
2’−CR
81p2’R
82’q2’R
83r2’)単位毎において、p2’、q2’およびr2’の和は3であり;
R
e’は、各出現においてそれぞれ独立して、−R
h−Y’−SiR
85n2’R
863−n2’を表し;
R
fは、上記と同意義であり;
k2’は、各出現においてそれぞれ独立して、0〜3の整数であり;
l2’は、各出現においてそれぞれ独立して、0〜3の整数であり;
m2’は、各出現においてそれぞれ独立して、0〜3の整数であり;
ただし、(CR
d’k2’R
e’l2’R
fm2’)毎において、k2’、l2’およびm2’の和は3であり、式中、少なくとも1つのq2’は3であるか、あるいは、少なくとも1つのl2’は3である。]
【0181】
上記R
gは、各出現においてそれぞれ独立して、低級アルキレン基を表す。低級アルキレン基は、好ましくは、C
1−20アルキレン基であり、より好ましくはC
1−6アルキレン基であり、さらに好ましくはC
1−3アルキレン基、特に好ましくはメチレンである。
【0182】
上記Z’は、好ましくは酸素原子または2価の有機基であり、より好ましくは2価の有機基であり、さらに好ましくは、C
1−6アルキレン基、−(CH
2)
j1−O−(CH
2)
h1−(式中、j1は、0〜6の整数、例えば1〜6の整数であり、h1は、0〜6の整数、例えば1〜6の整数である)、または、−フェニレン−(CH
2)
i1−(式中、i1は、0〜6の整数である)であり、特に好ましくはC
1−6アルキレン基または−フェニレン−(CH
2)
i1−であり、より好ましくはC
1−6アルキレン基(好ましくは、C
1−3アルキレン基)である。これらの基は、例えば、フッ素原子、C
1−6アルキル基、C
2−6アルケニル基、およびC
2−6アルキニル基から選択される1個またはそれ以上の置換基により置換されていてもよい。好ましい態様において、Z’は非置換である。
【0183】
上記Z
2’は、好ましくはC
1−3アルキレン基、具体的には−CH
2−、−CH
2CH
2−、または−CH
2CH
2CH
2−であり得る。
【0184】
上記R
hは、各出現においてそれぞれ独立して、低級アルキレン基を表す。低級アルキレン基は、好ましくは、C
1−20アルキレン基であり、より好ましくはC
1−6アルキレン基であり、さらに好ましくはC
1−3アルキレン基、特に好ましくはメチレンである。
【0185】
上記Y’は、好ましい態様において、酸素結合または2価の有機基である。Y’は、より好ましくは2価の有機基であり、特に好ましくはC
1−6アルキレン基、−(CH
2)
g1’−O−(CH
2)
h1’−(式中、g1’は、0〜6の整数、例えば1〜6の整数であり、h1’は、0〜6の整数、例えば1〜6の整数である)、または−フェニレン−(CH
2)
i1’−(式中、i1’は、0〜6の整数である)であり、さらに好ましくはC
1−6アルキレン基または−フェニレン−(CH
2)
i1’−であり、特に好ましくはC
1−6アルキレン基(好ましくは、C
1−3アルキレン基)である。これらの基は、例えば、フッ素原子、C
1−6アルキル基、C
2−6アルケニル基、およびC
2−6アルキニル基から選択される1個またはそれ以上の置換基により置換されていてもよい。
【0186】
一の態様において、Y’は、C
1−6アルキレン基、−O−(CH
2)
h1’−または−フェニレン−(CH
2)
i1’−であり得る。Y’が上記の基である場合、光耐性、特に紫外線耐性がより高くなり得る。
【0187】
好ましい態様において、上記−R
h−Y’−は、C
1−3アルキレン基、具体的には−CH
2−、−CH
2CH
2−、または−CH
2CH
2CH
2−であり得る。
【0188】
一の態様において、少なくとも1つのk2’は2または3であり、好ましくは3である。
【0189】
一の態様において、k2’は2または3であり、好ましくは3である。
【0190】
一の態様において、l2’は2または3であり、好ましくは3である。
【0191】
好ましい態様において、l2’は3であり、n2’は3である。
【0192】
上記式(C1”)および(C2”)中、少なくとも1つのq2’は3であるか、あるいは、少なくとも1つのl2’は3である。即ち、式中、少なくとも1つの−X
4’−C(−R
h−Y’−SiR
85n2’R
863−n2’)
3基または−Z
2’−C(−R
h−Y’−SiR
85n2’R
863−n2’)
3基が存在する。このような構造を有することによって、本態様のPFPE含有シラン化合物は、化学的な耐久性を有する(例えば、酸および/またはアルカリ環境下、より具体的には汗の付着し得る環境下においても劣化しにくい)表面処理層の形成に寄与し得る。また、本態様のPFPE含有シラン化合物は、上記のような構造を有することによって、摩擦耐久性の良好な表面処理層の形成に寄与し得、特に、酸および/またはアルカリ環境に曝されやすい環境においても耐摩擦性の向上した表面処理層の形成に寄与し得る。
【0193】
上記式(C1”)または(C2”)において、より好ましくは、γは1であり、γ’は1であり、X
4’は、X
e’を表す。X
e’は、上記と同意義である。
【0194】
式(C1)または式(C2)で表されるPFPE含有シラン化合物は、公知の方法を組み合わせることにより製造することができる。例えば、X
4が2価である式(C1’)で表される化合物は、限定するものではないが、以下のようにして製造することができる。
【0195】
HO−X
4−C(YOH)
3(式中、X
4およびYは、それぞれ独立して、2価の有機基である。)で表される多価アルコールに、二重結合を含有する基(好ましくはアリル)、およびハロゲン(好ましくはブロモ)を導入して、Hal−X
4−C(Y−O−R−CH=CH
2)
3(式中、Halはハロゲン、例えばBrであり、Rは二価の有機基、例えばアルキレン基である。)で表される二重結合含有ハロゲン化物を得る。次いで、末端のハロゲンと、R
PFPE−OH(式中、R
PFPEは、パーフルオロポリエーテル基含有基である。)で表されるパーフルオロポリエーテル基含有アルコールとを反応させて、R
PFPE−O−X
4−C(Y−O−R−CH=CH
2)
3を得る。次いで、末端の−CH=CH
2と、HSiCl
3およびアルコールまたはHSiR
853と反応させて、R
PFPE−O−X
4−C(Y−O−R−CH
2−CH
2−SiR
853)
3を得ることができる。
【0196】
別の態様において、式(C1”)または式(C2”)で表される、X
4’として−R
51−CONH−R
52−を有するPFPE含有化合物は、限定するものではないが、以下のようにして製造することができる。
【0197】
二重結合を含有する基(好ましくはアリル)およびアミノ基を有する化合物(例えば、H
2NR
52C(CH
2−CH=CH
2)
3と、R
PFPE−R
51−COOCH
3と反応させることによってR
PFPE−R
51−CONH−R
52C(−CH
2−CH=CH
2)
3が合成される。得られた化合物と、HSiCl
3およびアルコールまたはHC(OCH
3)
3とを反応させて、PFPE含有化合物R
PFPE−R
51−CONH−R
52C(CH
2CH
2CH
2Si(OCH
3)
3)
3が得られる。上記において、R
PFPEは、PFPE含有基であり、R
51およびR
52は、上記と同意義である。
【0198】
(分子構造内に非共有電子対を有する原子を含む化合物)
本発明の表面処理剤は、耐摩擦性の向上した表面処理層の形成に寄与し得る。さらに、本発明の表面処理剤は、耐久性の向上した表面処理層、特に化学的にも安定であり、例えば、酸および/またはアルカリの存在下においても劣化しくにい表面処理層の形成に寄与し得る。これは、分子構造内に非共有電子対を有する原子を含む化合物が、触媒的な効果を奏することによって、基材とSi原子との結合がより強固となるためと思われる。
【0199】
上記分子構造内に非共有電子対を有する原子を含む化合物は、窒素原子、酸素原子、リン原子および硫黄原子からなる群より選ばれる少なくとも1つの原子を含むことが好ましく、硫黄原子または窒素原子含むことがより好ましい。
【0200】
上記分子構造内に非共有電子対を有する原子を含む化合物は、分子構造内に、アミノ基、アミド基、スルフィニル基、P=O基、S=O基およびスルホニル基からなる群より選ばれる少なくとも1つの官能基を含むことが好ましく、P=O基およびS=O基からなる群より選ばれる少なくとも1つの官能基を含むことがより好ましい。
【0201】
好ましい態様において、上記分子構造内に非共有電子対を有する原子を含む化合物は、上記官能基の中では、S=O基を含む。
【0202】
上記態様では、上記分子構造内に非共有電子対を有する原子を含む化合物は、式:R
91−S(=O)−R
92で表される化合物であることが好ましい。
【0203】
上記式中、R
91は、炭素原子数1〜12の炭化水素基であり、R
92は、炭素原子数1〜12の炭化水素基である。好ましくは、R
91は、炭素原子数1〜6の炭化水素基であり、R
92は、炭素原子数1〜6の炭化水素基である。
【0204】
上記炭化水素基としては、飽和炭化水素基、少なくとも1の炭素−炭素不飽和結合を有する不飽和炭化水素基、または芳香族炭化水素基を挙げることができる。好ましくは、上記炭化水素基としては、アルキル基、またはフェニル基を挙げることができる。
【0205】
好ましい態様において、R
91およびR
92は、各出現においてそれぞれ独立して、炭素原子数1〜6のアルキル基(具体的にはメチル基)である。
【0206】
上記式中、R
91およびR
92は、互いに結合し、かつ、R
91およびR
92に結合したS原子とともに、環構造を形成していてもよい。上記環構造は、少なくとも1のS原子(好ましくは1のS原子)および炭素原子3〜12からなることが好ましく、少なくとも1のS原子(好ましくは1のS原子)および炭素原子4〜6からなることがより好ましい。
【0207】
上記環構造としては、例えば、1のS原子および3の炭素原子からなる飽和の四員環構造、1のS原子および4の炭素原子からなる飽和の五員環構造、1のS原子および5の炭素原子からなる飽和の六員環構造、1のS原子および4の炭素原子からなる不飽和の五員環構造、1のS原子および5の炭素原子からなる不飽和の六員環構造等を挙げることができ、具体的には、1のS原子および4の炭素原子からなる飽和の五員環構造、1のS原子および4の炭素原子からなる不飽和の五員環構造等を挙げることができる。上記環構造を構成する炭素原子は、該炭素原子に結合した少なくとも1の水素原子が、アルキル基(例えば炭素原子数1〜6)、フェニル基等の置換基によって置換されていてもよく、上記置換基を有していなくてもよい。
【0208】
上記分子構造内に非共有電子対を有する原子を含む化合物は、脂肪族アミン化合物、芳香族アミン化合物、リン酸アミド化合物、アミド化合物、尿素化合物およびスルホキシド化合物からなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物であることが好ましく、脂肪族アミン化合物、芳香族アミン類、リン酸アミド、尿素化合物およびスルホキシド化合物からなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物であることがより好ましく、スルホキシド化合物、脂肪族アミン化合物および芳香族アミン化合物からなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物であることが特に好ましく、スルホキシド化合物であることがさらに好ましい。
【0209】
上記脂肪族アミン化合物としては、例えば、ジエチルアミン、トリエチルアミン等を挙げることができる。上記芳香族アミン化合物としては、例えば、アニリン、ピリジン等を挙げることができる。上記リン酸アミド化合物としては、例えば、ヘキサメチルホスホルアミド等を挙げることができる。上記アミド化合物としては、例えば、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等を挙げることができる。上記尿素化合物としては、テトラメチル尿素等を挙げることができる。上記スルホキシド化合物としては、ジメチルスルホキシド(DMSO)、テトラメチレンスルホキシド、メチルフェニルスルホキシド、ジフェニルスルホキシド等を挙げることができる。これらの化合物の中で、ジメチルスルホキシド、またはテトラメチレンスルホキシドを用いることが好ましい。
【0210】
上記分子構造内に非共有電子対を有する原子を含む化合物は、分子量が、例えば、50〜500の範囲に合ってもよく、特に、50〜200の範囲にあってもよい。
【0211】
分子構造内に非共有電子対を有する原子を含む化合物は、表面処理剤全体に対して、例えば、0.0002質量%以上含まれ得る。上記化合物は、表面処理剤全体に対して、0.02質量%以上含まれることが好ましく、0.04質量%以上含まれることがより好ましい。上記化合物は、表面処理剤全体に対して、例えば、10質量%以下含まれてもよく、特に1質量%以下含まれる。本発明の表面処理剤は、上記化合物が、上記のような濃度含まれることによって、より耐久性の良好な表面処理層の形成に寄与し得る。
【0212】
分子構造内に非共有電子対を有する原子を含む化合物は、表面処理剤中にPFPE含有シラン化合物の水酸基または加水分解基に結合したSi原子1モルに対して、0.01モル以上含まれることが好ましく、0.03モル以上含まれることがより好ましく、0.15モル以上含まれることがさらに好ましく、0.33モル以上含まれることが特に好ましい。分子構造内に非共有電子対を有する原子を含む化合物を上記のような濃度で含むことにより、本発明の表面処理剤は、耐久性の良好な表面処理層の形成に特に寄与し得る。
【0213】
分子構造内に非共有電子対を有する原子を含む化合物は、表面処理剤中にPFPE含有シラン化合物の水酸基または加水分解基に結合したSi原子1モルに対して、10モル以下含まれることが好ましく、6モル以下含まれることがより好ましく、2モル以下含まれることが特に好ましい。分子構造内に非共有電子対を有する原子を含む化合物を上記のような濃度で含むことにより、本発明の表面処理剤の取り扱い性は良好になり得、特に表面処理剤の白濁を防ぐことができる。
【0214】
一の態様において、分子構造内に非共有電子対を有する原子を含む化合物は、表面処理剤中にPFPE含有シラン化合物の水酸基または加水分解基に結合したSi原子1モルに対して、3モル以下含まれていてもよい。
【0215】
分子構造内に非共有電子対を有する原子を含む化合物は、表面処理剤中にPFPE含有シラン化合物の水酸基または加水分解基に結合したSi原子1モルに対して、0.01〜10モル含まれることが好ましく、0.01〜3モル含まれることがより好ましく、0.33〜2モル含まれることが特に好ましい。
【0216】
一の態様において、分子構造内に非共有電子対を有する原子を含む化合物は、表面処理剤中にPFPE含有シラン化合物の水酸基または加水分解基に結合したSi原子1モルに対して、0.03〜3モル含まれることが好ましく、0.3〜3モル含まれることがより好ましい。
【0217】
分子構造内に非共有電子対を有する原子を含む化合物は、表面処理剤中にPFPE含有シラン化合物1モルに対して、0.01モル以上含まれることが好ましく、0.1モル以上含まれることがより好ましく、0.15モル以上含まれることがさらに好ましく、0.2モル以上含まれることがより好ましく、0.3モル以上含まれることが特に好ましい。分子構造内に非共有電子対を有する原子を含む化合物を上記のような濃度で含むことにより、本発明の表面処理剤は、耐久性の良好な表面処理層の形成に特に寄与し得る。
【0218】
分子構造内に非共有電子対を有する原子を含む化合物は、表面処理剤中にPFPE含有シラン化合物1モルに対して、15モル以下含まれることが好ましく、10モル以下含まれることがより好ましく、7モル以下含まれることが特に好ましい。
【0219】
分子構造内に非共有電子対を有する原子を含む化合物は、表面処理剤中にPFPE含有シラン化合物1モルに対して、6モル以下含まれることが好ましく、3モル以下含まれることがより好ましく、1モル以下含まれることが特に好ましい。分子構造内に非共有電子対を有する原子を含む化合物を上記のような濃度で含むことにより、本発明の表面処理剤の取り扱い性は良好になり得、特に表面処理剤の白濁を防ぐことができる。
【0220】
一の態様において、分子構造内に非共有電子対を有する原子を含む化合物は、表面処理剤中にPFPE含有シラン化合物1モルに対して、0.01〜15モル含まれることが好ましく、0.01〜10モル含まれることがより好ましく、0.1〜10モル含まれることがさらに好ましく、0.3〜7モル含まれることが特に好ましく、0.5〜7モル含まれることがより好ましい。
【0221】
分子構造内に非共有電子対を有する原子を含む化合物は、表面処理剤中にPFPE含有シラン化合物1モルに対して、0.01〜6モル含まれることが好ましく、0.1〜3モル含まれることがより好ましく、0.3〜2モル含まれることが特に好ましい。
【0222】
表面処理剤中に含まれる、分子構造内に非共有電子対を有する原子を含む化合物の濃度は、例えば、ガラスクロマトグラフィー、1H−NMR等を用いて測定することができる。
【0223】
本発明の表面処理剤は、撥水性、撥油性、防汚性、摩擦耐久性、耐UV性を基材に対して付与することができ、特に限定されるものではないが、防汚性コーティング剤として好適に使用され得る。
【0224】
本発明の表面処理剤は、溶媒で希釈されていてもよい。このような溶媒としては、特に限定するものではないが、例えば:
パーフルオロヘキサン、CF
3CF
2CHCl
2、CF
3CH
2CF
2CH
3、CF
3CHFCHFC
2F
5、1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6−トリデカフルオロオクタン、1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタン((ゼオローラH(商品名)等)、C
4F
9OCH
3、C
4F
9OC
2H
5、CF
3CH
2OCF
2CHF
2、C
6F
13CH=CH
2、キシレンヘキサフルオリド、パーフルオロベンゼン、メチルペンタデカフルオロヘプチルケトン、トリフルオロエタノール、ペンタフルオロプロパノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、HCF
2CF
2CH
2OH、メチルトリフルオロメタンスルホネート、トリフルオロ酢酸およびCF
3O(CF
2CF
2O)
m1(CF
2O)
n1CF
2CF
3[式中、m1およびn1は、それぞれ独立して0以上1000以下の整数であり、m1またはn1を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意であり、但しm1およびn1の和は1以上である。]、1,1−ジクロロ−2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペン、1,2−ジクロロ−1,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペン、1,2−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロ−1−プロペン、1,1−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロ−1−プロペン、1,1,2−トリクロロ―3,3,3−トリフルオロ−1−プロペン、1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテンからなる群から選択されるフッ素原子含有溶媒等が挙げられる。
【0225】
上記溶媒としては、C
6F
13OCH
3を用いてもよい。
【0226】
上記溶媒中に含まれる水分含有量は、質量換算で20ppm以下であることが好ましい。上記水分含有量は、カールフィッシャー法を用いて測定することができる。このような水分含有量であることによって、表面処理剤の保存安定性が向上し得る。
【0227】
本発明の表面処理剤は、さらに他の成分を含んでいてもよい。かかる他の成分としては、特に限定されるものではないが、例えば、他の表面処理化合物、含フッ素オイルとして理解され得る(非反応性の)フルオロポリエーテル化合物、好ましくはパーフルオロ(ポリ)エーテル化合物(以下、「含フッ素オイル」と言う)、シリコーンオイルとして理解され得る(非反応性の)シリコーン化合物(以下、「シリコーンオイル」と言う)、触媒などが挙げられる。
【0228】
上記含フッ素オイルとしては、特に限定されるものではないが、例えば、以下の一般式(1)で表される化合物(パーフルオロ(ポリ)エーテル化合物)が挙げられる。
Rf
5−(OC
4F
8)
a’−(OC
3F
6)
b’−(OC
2F
4)
c’−(OCF
2)
d’−Rf
6 ・・・(1)
式中、Rf
5は、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1〜16アルキル基(好ましくは、C
1―16のパーフルオロアルキル基)を表し、Rf
6は、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1〜16アルキル基(好ましくは、C
1−16パーフルオロアルキル基)、フッ素原子または水素原子を表し、Rf
5およびRf
6は、より好ましくは、それぞれ独立して、C
1−3パーフルオロアルキル基である。
a’、b’、c’およびd’は、ポリマーの主骨格を構成するパーフルオロ(ポリ)エーテルの4種の繰り返し単位数をそれぞれ表し、互いに独立して0以上300以下の整数であって、a’、b’、c’およびd’の和は少なくとも1、好ましくは1〜300、より好ましくは20〜300である。添字a’、b’、c’またはd’を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である。これら繰り返し単位のうち、−(OC
4F
8)−は、−(OCF
2CF
2CF
2CF
2)−、−(OCF(CF
3)CF
2CF
2)−、−(OCF
2CF(CF
3)CF
2)−、−(OCF
2CF
2CF(CF
3))−、−(OC(CF
3)
2CF
2)−、−(OCF
2C(CF
3)
2)−、−(OCF(CF
3)CF(CF
3))−、−(OCF(C
2F
5)CF
2)−および−(OCF
2CF(C
2F
5))−のいずれであってもよいが、好ましくは−(OCF
2CF
2CF
2CF
2)−である。−(OC
3F
6)−は、−(OCF
2CF
2CF
2)−、−(OCF(CF
3)CF
2)−および−(OCF
2CF(CF
3))−のいずれであってもよく、好ましくは−(OCF
2CF
2CF
2)−である。−(OC
2F
4)−は、−(OCF
2CF
2)−および−(OCF(CF
3))−のいずれであってもよいが、好ましくは−(OCF
2CF
2)−である。
【0229】
上記一般式(1)で表されるパーフルオロ(ポリ)エーテル化合物の例として、以下の一般式(1a)および(1b)のいずれかで示される化合物(1種または2種以上の混合物であってよい)が挙げられる。
Rf
5−(OCF
2CF
2CF
2)
b’’−Rf
6 ・・・(1a)
Rf
5−(OCF
2CF
2CF
2CF
2)
a’’−(OCF
2CF
2CF
2)
b’’−(OCF
2CF
2)
c’’−(OCF
2)
d’’−Rf
6 ・・・(1b)
これら式中、Rf
5およびRf
6は上記の通りであり;式(1a)において、b’’は1以上100以下の整数であり;式(1b)において、a’’およびb’’は、それぞれ独立して1以上30以下の整数であり、c’’およびd’’はそれぞれ独立して1以上300以下の整数である。添字a’’、b’’、c’’、d’’を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である。
【0230】
上記含フッ素オイルは、1,000〜30,000の平均分子量を有していてよい。これにより、高い表面滑り性を得ることができる。
【0231】
本発明の表面処理剤中、含フッ素オイルは、上記パーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物および上記カルボン酸エステル化合物の合計100質量部(それぞれ、2種以上の場合にはこれらの合計、以下も同様)に対して、例えば0〜500質量部、好ましくは0〜400質量部、より好ましくは5〜300質量部で含まれ得る。
【0232】
一般式(1a)で示される化合物および一般式(1b)で示される化合物は、それぞれ単独で用いても、組み合わせて用いてもよい。一般式(1a)で示される化合物よりも、一般式(1b)で示される化合物を用いるほうが、より高い表面滑り性が得られるので好ましい。これらを組み合わせて用いる場合、一般式(1a)で表される化合物と、一般式(1b)で表される化合物との質量比は、1:1〜1:30が好ましく、1:1〜1:10がより好ましい。かかる質量比によれば、表面滑り性と摩擦耐久性のバランスに優れた表面処理層を得ることができる。
【0233】
一の態様において、含フッ素オイルは、一般式(1b)で表される1種またはそれ以上の化合物を含む。かかる態様において、表面処理剤中の上記パーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物と、式(1b)で表される化合物との質量比は、10:1〜1:10であることが好ましく、4:1〜1:4であることがより好ましい。
【0234】
一の態様において、式(1a)で表される化合物の平均分子量は、2,000〜8,000であることが好ましい。
【0235】
一の態様において、式(1b)で表される化合物の平均分子量は、8,000〜30,000であることが好ましい。
【0236】
別の態様において、式(1b)で表される化合物の平均分子量は、3,000〜8,000であることが好ましい。
【0237】
好ましい態様において、真空蒸着法により表面処理層を形成する場合には、パーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物の数平均分子量よりも、含フッ素オイルの数平均分子量を大きくしてもよい。例えば、パーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物の数平均分子量よりも、含フッ素オイルの数平均分子量を、2,000以上、好ましくは3,000以上、より好ましくは5,000以上大きくしてもよい。このような数平均分子量とすることにより、より優れた摩擦耐久性と表面滑り性を得ることができる。
【0238】
また、別の観点から、含フッ素オイルは、一般式Rf’−F(式中、Rf’はC
5−16パーフルオロアルキル基である。)で表される化合物であってよい。また、クロロトリフルオロエチレンオリゴマーであってもよい。Rf’−Fで表される化合物およびクロロトリフルオロエチレンオリゴマーは、Rf
1がC
1−16パーフルオロアルキル基である上記パーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物と高い親和性が得られる点で好ましい。
【0239】
含フッ素オイルは、表面処理層の表面滑り性を向上させるのに寄与する。
【0240】
上記シリコーンオイルとしては、例えばシロキサン結合が2,000以下の直鎖状または環状のシリコーンオイルを用い得る。直鎖状のシリコーンオイルは、いわゆるストレートシリコーンオイルおよび変性シリコーンオイルであってよい。ストレートシリコーンオイルとしては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイルが挙げられる。変性シリコーンオイルとしては、ストレートシリコーンオイルを、アルキル、アラルキル、ポリエーテル、高級脂肪酸エステル、フルオロアルキル、アミノ、エポキシ、カルボキシル、アルコールなどにより変性したものが挙げられる。環状のシリコーンオイルは、例えば環状ジメチルシロキサンオイルなどが挙げられる。
【0241】
本発明の表面処理剤中、かかるシリコーンオイルは、上記PFPE含有シラン化合物100質量部(2種以上の場合にはこれらの合計、以下も同様)に対して、例えば0〜300質量部、好ましくは0〜200質量部で含まれ得る。
【0242】
シリコーンオイルは、表面処理層の表面滑り性を向上させるのに寄与する。
【0243】
上記触媒としては、酸(例えば酢酸、トリフルオロ酢酸等)、塩基(例えばアンモニア、トリエチルアミン、ジエチルアミン等)、遷移金属(例えばTi、Ni、Sn等)等が挙げられる。
【0244】
触媒は、上記パーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物の加水分解および脱水縮合を促進し、表面処理層の形成を促進する。
【0245】
他の成分としては、上記以外に、例えば、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン等も挙げられる。
【0246】
他の成分としては、上記以外に、例えば、炭素数1〜6のアルコール化合物が挙げられる。
【0247】
[ペレット]
本発明の表面処理剤は、多孔質物質、例えば多孔質のセラミック材料、金属繊維、例えばスチールウールを綿状に固めたものに含浸させて、ペレットとすることができる。当該ペレットは、例えば、真空蒸着に用いることができる。
【0248】
本発明の表面処理剤は、撥水性、撥油性、防汚性、防水性、高い摩擦耐久性および耐UV性を基材に対して付与することができることから、表面処理剤として好適に使用される。具体的には、本発明の表面処理剤は、特に限定されるものではないが、防汚性コーティング剤または防水性コーティング剤として好適に使用され得る。
【0249】
[物品]
次に、本発明の物品について説明する。
【0250】
本発明の物品は、基材と、該基材の表面に本発明の表面処理剤より形成された層(表面処理層)とを含む。この物品は、例えば以下のようにして製造できる。
【0251】
まず、基材を準備する。本発明に使用可能な基材は、例えばガラス、樹脂(天然または合成樹脂、例えば一般的なプラスチック材料であってよく、板状、フィルム、その他の形態であってよい)、金属(アルミニウム、銅、鉄等の金属単体または合金等の複合体であってよい)、セラミックス、半導体(シリコン、ゲルマニウム等)、繊維(織物、不織布等)、毛皮、皮革、木材、陶磁器、石材等、建築部材等、任意の適切な材料で構成され得る。
【0252】
上記ガラスとしては、サファイアガラス、ソーダライムガラス、アルカリアルミノケイ酸塩ガラス、ホウ珪酸ガラス、無アルカリガラス、クリスタルガラス、石英ガラスが好ましく、化学強化したソーダライムガラス、化学強化したアルカリアルミノケイ酸塩ガラス、および化学結合したホウ珪酸ガラスが特に好ましい。
樹脂としては、アクリル樹脂、ポリカーボネートが好ましい。
【0253】
例えば、製造すべき物品が光学部材である場合、基材の表面を構成する材料は、光学部材用材料、例えばガラスまたは透明プラスチックなどであってよい。また、製造すべき物品が光学部材である場合、基材の表面(最外層)に何らかの層(または膜)、例えばハードコート層や反射防止層などが形成されていてもよい。反射防止層には、単層反射防止層および多層反射防止層のいずれを使用してもよい。反射防止層に使用可能な無機物の例としては、SiO
2、SiO、ZrO
2、TiO
2、TiO、Ti
2O
3、Ti
2O
5、Al
2O
3、Ta
2O
5、CeO
2、MgO、Y
2O
3、SnO
2、MgF
2、WO
3などが挙げられる。これらの無機物は、単独で、またはこれらの2種以上を組み合わせて(例えば混合物として)使用してもよい。多層反射防止層とする場合、その最外層にはSiO
2および/またはSiOを用いることが好ましい。製造すべき物品が、タッチパネル用の光学ガラス部品である場合、透明電極、例えば酸化インジウムスズ(ITO)や酸化インジウム亜鉛などを用いた薄膜を、基材(ガラス)の表面の一部に有していてもよい。また、基材は、その具体的仕様等に応じて、絶縁層、粘着層、保護層、装飾枠層(I−CON)、霧化膜層、ハードコーティング膜層、偏光フィルム、相位差フィルム、および液晶表示モジュールなどを有していてもよい。
【0254】
基材の形状は特に限定されない。また、表面処理層を形成すべき基材の表面領域は、基材表面の少なくとも一部であればよく、製造すべき物品の用途および具体的仕様等に応じて適宜決定され得る。
【0255】
かかる基材としては、少なくともその表面部分が、水酸基を元々有する材料から成るものであってよい。かかる材料としては、ガラスが挙げられ、また、表面に自然酸化膜または熱酸化膜が形成される金属(特に卑金属)、セラミックス、半導体等が挙げられる。あるいは、樹脂等のように、水酸基を有していても十分でない場合や、水酸基を元々有していない場合には、基材に何らかの前処理を施すことにより、基材の表面に水酸基を導入したり、増加させたりすることができる。かかる前処理の例としては、プラズマ処理(例えばコロナ放電)や、イオンビーム照射が挙げられる。プラズマ処理は、基材表面に水酸基を導入または増加させ得ると共に、基材表面を清浄化する(異物等を除去する)ためにも好適に利用され得る。また、かかる前処理の別の例としては、炭素−炭素不飽和結合基を有する界面吸着剤をLB法(ラングミュア−ブロジェット法)や化学吸着法等によって、基材表面に予め単分子膜の形態で形成し、その後、酸素や窒素等を含む雰囲気下にて不飽和結合を開裂する方法が挙げられる。
【0256】
またあるいは、かかる基材としては、少なくともその表面部分が、別の反応性基、例えばSi−H基を1つ以上有するシリコーン化合物や、アルコキシシランを含む材料から成るものであってもよい。
【0257】
次に、かかる基材の表面に、上記の本発明の表面処理剤の膜を形成し、この膜を必要に応じて後処理し、これにより、本発明の表面処理剤から表面処理層を形成する。
【0258】
本発明の表面処理剤の膜形成は、本発明の表面処理剤を基材の表面に対して、該表面を被覆するように適用することによって実施できる。被覆方法は、特に限定されない。例えば、湿潤被覆法および乾燥被覆法を使用できる。
【0259】
湿潤被覆法の例としては、浸漬コーティング、スピンコーティング、フローコーティング、スプレーコーティング、ロールコーティング、グラビアコーティングおよび類似の方法が挙げられる。
【0260】
乾燥被覆法の例としては、蒸着(通常、真空蒸着)、スパッタリング、CVDおよび類似の方法が挙げられる。蒸着法(通常、真空蒸着法)の具体例としては、抵抗加熱、電子ビーム、マイクロ波等を用いた高周波加熱、イオンビームおよび類似の方法が挙げられる。CVD方法の具体例としては、プラズマ−CVD、光学CVD、熱CVDおよび類似の方法が挙げられる。
【0261】
更に、常圧プラズマ法による被覆も可能である。
【0262】
湿潤被覆法を使用する場合、本発明の表面処理剤は、溶媒で希釈されてから基材表面に適用され得る。本発明の表面処理剤の安定性および溶媒の揮発性の観点から、次の溶媒が好ましく使用される:C
5−12のパーフルオロ脂肪族炭化水素(例えば、パーフルオロヘキサン、パーフルオロメチルシクロヘキサンおよびパーフルオロ−1,3−ジメチルシクロヘキサン);ポリフルオロ芳香族炭化水素(例えば、ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン);ポリフルオロ脂肪族炭化水素(例えば、C
6F
13CH
2CH
3(例えば、旭硝子株式会社製のアサヒクリン(登録商標)AC−6000)、1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタン(例えば、日本ゼオン株式会社製のゼオローラ(登録商標)H);ハイドロフルオロカーボン(HFC)(例えば、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(HFC−365mfc));ハイドロクロロフルオロカーボン(例えば、HCFC−225(アサヒクリン(登録商標)AK225));ヒドロフルオロエーテル(HFE)(例えば、パーフルオロプロピルメチルエーテル(C
3F
7OCH
3)(例えば、住友スリーエム株式会社製のNovec(商標名)7000)、パーフルオロブチルメチルエーテル(C
4F
9OCH
3)(例えば、住友スリーエム株式会社製のNovec(商標名)7100)、パーフルオロブチルエチルエーテル(C
4F
9OC
2H
5)(例えば、住友スリーエム株式会社製のNovec(商標名)7200)、パーフルオロヘキシルメチルエーテル(C
2F
5CF(OCH
3)C
3F
7)(例えば、住友スリーエム株式会社製のNovec(商標名)7300)などのアルキルパーフルオロアルキルエーテル(パーフルオロアルキル基およびアルキル基は直鎖または分枝状であってよい)、あるいはCF
3CH
2OCF
2CHF
2(例えば、旭硝子株式会社製のアサヒクリン(登録商標)AE−3000))、1,2−ジクロロ−1,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペン(例えば、三井・デュポンフロロケミカル社製のバートレル(登録商標)サイオン)など。これらの溶媒は、単独で、または、2種以上を組み合わせて混合物として用いることができる。さらに、例えば、パーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物およびパーフルオロポリエーテル変性化合物の溶解性を調整する等のために、別の溶媒と混合することもできる。
【0263】
乾燥被覆法を使用する場合、本発明の表面処理剤は、そのまま乾燥被覆法に付してもよく、または、上記した溶媒で希釈してから乾燥被覆法に付してもよい。
【0264】
膜形成は、膜中で本発明の表面処理剤が、加水分解および脱水縮合のための触媒と共に存在するように実施することが好ましい。簡便には、湿潤被覆法による場合、本発明の表面処理剤を溶媒で希釈した後、基材表面に適用する直前に、本発明の表面処理剤の希釈液に触媒を添加してよい。乾燥被覆法による場合には、触媒添加した本発明の表面処理剤をそのまま蒸着(通常、真空蒸着)処理するか、あるいは鉄や銅などの金属多孔体に、触媒添加した本発明の表面処理剤を含浸させたペレット状物質を用いて蒸着(通常、真空蒸着)処理をしてもよい。
【0265】
触媒には、任意の適切な酸または塩基を使用できる。酸触媒としては、例えば、酢酸、ギ酸、トリフルオロ酢酸などを使用できる。また、塩基触媒としては、例えばアンモニア、有機アミン類などを使用できる。
【0266】
次に、必要に応じて、膜を後処理する。この後処理は、特に限定されないが、例えば、水分供給および乾燥加熱を逐次的に実施するものであってよく、より詳細には、以下のようにして実施してよい。
【0267】
上記のようにして基材表面に本発明の表面処理剤を膜形成した後、この膜(以下、「前駆体膜」とも言う)に水分を供給する。水分の供給方法は、特に限定されず、例えば、前駆体膜(および基材)と周囲雰囲気との温度差による結露や、水蒸気(スチーム)の吹付けなどの方法を使用してよい。
【0268】
水分の供給は、例えば0〜250℃、好ましくは60℃以上、さらに好ましくは100℃以上とし、好ましくは180℃以下、さらに好ましくは150℃以下の雰囲気下にて実施し得る。このような温度範囲において水分を供給することにより、加水分解を進行させることが可能である。このときの圧力は特に限定されないが、簡便には常圧とし得る。
【0269】
次に、該前駆体膜を該基材の表面で、60℃を超える乾燥雰囲気下にて加熱する。乾燥加熱方法は、特に限定されず、前駆体膜を基材と共に、60℃を超え、好ましくは100℃を超える温度であって、例えば250℃以下、好ましくは180℃以下の温度で、かつ不飽和水蒸気圧の雰囲気下に配置すればよい。このときの圧力は特に限定されないが、簡便には常圧とし得る。
【0270】
このような雰囲気下では、本発明のパーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物間では、加水分解後のSiに結合した基同士が速やかに脱水縮合する。また、かかる化合物と基材との間では、当該化合物の加水分解後のSiに結合した基と、基材表面に存在する反応性基との間で速やかに反応し、基材表面に存在する反応性基が水酸基である場合には脱水縮合する。その結果、パーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物と基材との間で結合が形成される。
【0271】
上記の水分供給および乾燥加熱は、過熱水蒸気を用いることにより連続的に実施してもよい。
【0272】
以上のようにして後処理が実施され得る。かかる後処理は、摩擦耐久性を一層向上させるために実施され得るが、本発明の物品を製造するのに必須でないことに留意されたい。例えば、本発明の表面処理剤を基材表面に適用した後、そのまま静置しておくだけでもよい。
【0273】
上記のようにして、基材の表面に、本発明の表面処理剤の膜に由来する表面処理層が形成され、本発明の物品が製造される。これにより得られる表面処理層は、良好な耐UV性を有する。また、この表面処理層は、良好な耐UV性に加えて、使用する組成物の組成にもよるが、撥水性、撥油性、防汚性(例えば指紋等の汚れの付着を防止する)、表面滑り性(または潤滑性、例えば指紋等の汚れの拭き取り性や、指に対する優れた触感)、高い摩擦耐久性などを有し得、機能性薄膜として好適に利用され得る。
【0274】
即ち本発明はさらに、前記硬化物を最外層に有する光学材料にも関する。
【0275】
光学材料としては、後記に例示するようなディスプレイ等に関する光学材料のほか、多種多様な光学材料が好ましく挙げられる:例えば、陰極線管(CRT;例、TV、パソコンモニター)、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、無機薄膜ELドットマトリクスディスプレイ、背面投写型ディスプレイ、蛍光表示管(VFD)、電界放出ディスプレイ(FED;Field Emission Display)などのディスプレイまたはそれらのディスプレイの保護板、またはそれらの表面に反射防止膜処理を施したもの。
【0276】
本発明によって得られる表面処理層を有する物品は、特に限定されるものではないが、光学部材であり得る。光学部材の例には、次のものが挙げられる:眼鏡などのレンズ;PDP、LCDなどのディスプレイの前面保護板、反射防止板、偏光板、アンチグレア板;携帯電話、携帯情報端末などの機器のタッチパネルシート;ブルーレイ(Blu−ray(登録商標))ディスク、DVDディスク、CD−R、MOなどの光ディスクのディスク面;光ファイバーなど。
【0277】
また、本発明によって得られる表面処理層を有する物品は、医療機器または医療材料であってもよい。
【0278】
表面処理層の厚さは、特に限定されない。光学部材の場合、表面処理層の厚さは、1〜50nm、より好ましくは1〜30nm、特に好ましくは1〜15nmの範囲であることが、光学性能、表面滑り性、摩擦耐久性および防汚性の点から好ましい。
【0279】
別の形態としては、基材の表面に別途層を形成した後、その層の表面に本発明によって得られる表面処理層の膜を形成してもよい。
【0280】
以上、本発明の表面処理剤を使用して得られる物品について詳述した。なお、本発明の表面処理剤の用途、使用方法ないし物品の製造方法などは、上記で例示したものに限定されない。
【実施例】
【0281】
本発明の表面処理剤について、以下の実施例を通じてより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0282】
(実施例1〜4および比較例1)
下記表1に示す混合物または化合物を、合計濃度が20wt%になるように、それぞれハイドロフルオロエーテル(スリーエム社製、ノベックHFE7200)に溶解させ、表面処理剤を調製した。
【0283】
実施例および比較例で用いた化合物Aは以下のとおりである。
・パーフルオロポリエーテル基含有シラン化合物(A)
CF
3CF
2CF
2O(CF
2CF
2CF
2O)
20CF
2CF
2CH
2CH
2CH
2Si[CH
2CH
2CH
2Si(OCH
3)
3]
3
【0284】
【表1】
【0285】
上記で調製した表面処理剤を化学強化ガラス(コーニング社製、「ゴリラ」ガラス、厚さ0.7mm)上に真空蒸着した。真空蒸着の処理条件は、圧力3.0×10
−3Paとした。まず、化学強化ガラス表面に5nmの厚さの二酸化ケイ素膜を形成し、続いて、化学強化ガラス1枚(55mm×100mm)あたり、表面処理剤4mg(即ち、実施例1〜4では化合物AおよびDMSOの混合物を0.8mg含有、比較例1では化合物Aを0.8mg含有)を蒸着した。次に、得られた蒸着膜付き化学強化ガラスを、温度150℃の雰囲気下で30分静置した後、室温まで放冷し、表面処理層を形成した。
【0286】
<摩擦耐久性の評価>
上記の実施例1〜4および比較例1で形成した表面処理層について、実使用耐久性の評価として、以下に示す摩擦耐久試験を実施した。
【0287】
初期評価として、表面処理層形成後、その表面に未だ何も触れていない状態で、水の静的接触角を測定した(摩擦回数 ゼロ回)。水の静的接触角の測定は、接触角測定装置(協和界面科学社製)を用いて、水1μLにて実施した。
【0288】
その後、表面処理層を形成したサンプル物品を水平配置し、以下の摩擦子を表面処理層の表面に接触(接触面は直径1cmの円)させ、その上に5Nの荷重を付与し、その後、荷重を加えた状態で摩擦子を40mm/秒の速度で往復させた。摩擦子を最大4000回往復させ、往復回数(摩擦回数)1000回毎に水の静的接触角(度)を測定した。水の静的接触角の測定値が60度未満となった時点で試験を中止した。結果を表2に示す(表中、記号「−」は測定せず)。
・摩擦子
摩擦子としては、下記に示すシリコーンゴム加工品の表面(直径1cm)を、下記に示す組成の人工汗を浸漬したコットンを用いて覆ったものを用いた。
・人工汗の組成
無水リン酸水素二ナトリウム:2g
塩化ナトリウム:20g
85%乳酸:2g
ヒスチジン塩酸塩:5g
蒸留水:1Kg
・シリコーンゴム加工品
タイガースポリマー製、シリコーンゴム栓SR−51を、直径1cm、厚さ1cmの円柱状に加工したもの。
【0289】
【表2】
【0290】
表2の結果から、実施例1〜4の表面処理層は、接触角の低下が抑制され、優れた耐久性を示すことが確認された。これは、DMSOの触媒効果によって、形成された表面処理層の耐ケミカル性と耐摩擦性の両方が向上し、PFPE含有シラン化合物と基材(強化ガラス)とがより強固に結合されたためと考えられる。