特許第6707119号(P6707119)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6707119
(24)【登録日】2020年5月21日
(45)【発行日】2020年6月10日
(54)【発明の名称】電池段別充電方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/02 20160101AFI20200601BHJP
   H02J 7/35 20060101ALI20200601BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20200601BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20200601BHJP
【FI】
   H02J7/02 G
   H02J7/02 J
   H02J7/35
   H01M10/44 Q
   H01M10/48 P
【請求項の数】9
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-241051(P2018-241051)
(22)【出願日】2018年12月25日
(65)【公開番号】特開2019-118255(P2019-118255A)
(43)【公開日】2019年7月18日
【審査請求日】2018年12月25日
(31)【優先権主張番号】106145746
(32)【優先日】2017年12月26日
(33)【優先権主張国】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】514173696
【氏名又は名称】國家中山科學研究院
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】蕭 ▲うぇい▼岷
(72)【発明者】
【氏名】任 國光
(72)【発明者】
【氏名】林 正乾
(72)【発明者】
【氏名】方 富民
【審査官】 羽鳥 友哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−157908(JP,A)
【文献】 特開2017−184539(JP,A)
【文献】 特開平08−140278(JP,A)
【文献】 特開2013−042647(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/02
H01M 10/44
H01M 10/48
H02J 7/35
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池セルを有するバッテリーパックに対して充電を行うための電池段別充電方法であって、
(a)前記バッテリーパックに対して充電を行い、前記バッテリーパック中の任意の1つの電池セルの電圧が満充電電圧に達したときに、充電動作を停止し;
(b)前記バッテリーパック中の全ての電池セルに対して現在の電圧の大小に従って並べ替えを行い、そして、最も低い電圧の電池セルから、並べ替えられた全ての電池セルに対してそれぞれ第1段の電圧まで充電を行い;
(c)並べ替えられた全ての電池セルに対してそれぞれ第2段の電圧まで充電を行い;及び
(d)並べ替えられた全ての電池セルに対してそれぞれ第3段の電圧まで充電を行い、前記バッテリーパックへの段別充電を完了するステップを含み、
前記ステップ(a)は、さらに、
前記バッテリーパックを充電すると同時に全ての電池セルの電圧をモニタリングし、全ての電池セルのうちの1つの電池セルと、他の電池セルとの電圧の差が第1平衡用設定値を超えたときに、前記1つの電池セルに対して平衡用電量補償を行い、前記1つの電池セルと、他の電池セルとの間の電圧の差が第2平衡用設定値よりも小さくなるようにさせた後に電量補償を停止することを含む、電池段別充電方法。
【請求項2】
請求項1に記載の電池段別充電方法であって、
前記第3段の電圧は、前記電池セルの満充電電圧である、電池段別充電方法。
【請求項3】
請求項に記載の電池段別充電方法であって、
前記第1平衡用設定値は、50mVである、電池段別充電方法。
【請求項4】
請求項に記載の電池段別充電方法であって、
前記第2平衡用設定値は、30mVである、電池段別充電方法。
【請求項5】
電池段別充電システムであって、
外部電源から電力を導入するための平衡用電源;
前記平衡用電源に電気的に接続され、且つ前記バッテリーパック中の複数の電池セルにそれぞれ接続される複数の平衡用スイッチ;
前記複数の電池セルにそれぞれ電気的に接続され、前記複数の電池セルの電圧をそれぞれ測定するための複数の電圧測定ユニット;及び
前記複数の平衡用スイッチ及び前記複数の電圧測定ユニットに電気的に接続される制御ユニットを含み、
前記制御ユニットは、前記電圧測定ユニットからの各電池セルの電圧情報に基づいて、前記複数の平衡用スイッチを制御して請求項1に記載の電池段別充電方法を実行するようにさせる、電池段別充電システム。
【請求項6】
請求項に記載の電池段別充電システムであって、
前記平衡用電源は、直流-直流フォワード型コンバータ(DC-DC Forward Converter)を有する、電池段別充電システム。
【請求項7】
請求項に記載の電池段別充電システムであって、
前記外部電源は、商用電源である、電池段別充電システム。
【請求項8】
請求項に記載の電池段別充電システムであって、
前記外部電源は、太陽光発電システム、風力発電システム、又は他の種類のグレーンエネルギー発電システムである、電池段別充電システム。
【請求項9】
請求項に記載の電池段別充電システムであって、
前記外部電源、電力貯蔵用電池である、電池段別充電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池充電技術に関し、特に、従来の2段階充電方法を改良した電池段別充電方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム電池が、今のところ、電動車両、再生可能なグレーンエネルギーシステム、携帯電子機器などの分野で良く用いられるエネルギー貯蔵、動力電池である。一般的に言えば、充放電回数及び方法が電池の寿命にかかわるが、消費市場では、通常、充電時間が短いほど良いことを要求するので、大電流急速充電方法が良く用いられる。しかし、速すぎる及び強すぎる電流による充電方法を用いることにより、電池自身の寿命を短縮し、長期的な電池取得原価を増やし得るので、充電速度と電池寿命との間のバランスを如何に取るかは、電池電力応用分野における必要な課題である。
【0003】
一般的に、リチウム電池充電のために良く用いられる方法は、次のように数種類があり、即ち、(1)定電圧充電方法(CV):この充電方法は、文字どおり、電池の充電開始から充電完了まで固定電圧を用いて電池の充電を行う方法である。この充電方法は、電池充電を開始したばかりのときに、充電電圧が電池の内部電圧よりも大きいため、電池の内部に高電流が生じ、電池の内部温度の急上昇を引き起こすことができる。また、電池の電量が増加するにつれて、電池の内部電圧が充電器により与えられた定電圧に接近することができ、このときに電池の内部電流が降下し、充電時間が増加するので、この方法が要する充電時間は一番長い。(2)定電流充電方法(CC):定電流充電方法は、充電開始から充電完了まで固定電流を用いて充電を行う方法である。大きな定電流を用いて電池の充電を行う場合、充電時間を大幅に短縮することができるが、充電されている電池は、比較的高い温度を生成し、電池の寿命の低下を引く起こすことができる。また、比較的小さい定電流を用いて電池の充電を行う場合、相対温度が低くなるが、充電時間が長くなる。(3)細流充電方法:細流充電方法は、2段階方式で充電する方法であり、充電を始めたときに大電流方式で電池に対して充電を行い、後期になると小電流方式で充電を行う。この方法は、電池を保護し、電池の寿命を長くすることができるが、電池が満充電になるかについての判断が困難であり、また、充電に必要な時間も比較的長い。(4)パルス充電方法:Pulse充電方法とも称され、この方法は、先ず定電流を用いて電池に対して充電を行い、途中でしばらく休憩した後に再び定電流を用いて充電する方法である。この方法は、電池の充電効率を向上させることができ、また、途中で休憩時間を設けたので、電池が最大電流に耐え、且つ充電時間を短縮することもできるが、充電設備に必要な取得及び設計のコストが比較的高い。
【0004】
従来の2段階充電方法では、第1段階の充電完了時に、電圧が最も低いセル(電池セル)を選択して優先的に第2段階の充電を、このセルが満充電状態になるまで行い、そして、次の1つのセルに対して充電を行う。長時間で同一セルに対して充電を行うため、温度が持続的に上昇し、また、充電時に化学反応が起き、且つ電流が電池の内部抵抗に流れることにより熱エネルギーも生じるので、温度は、時間の経過に伴って累積的に上昇する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術の欠点を解決するために、本発明は、電池段別充電方法及びシステムを提供し、従来技術における2段階充電方法の欠点を改良することにより、先ずセルを任意段の電圧まで充電してセルの平衡状態を達成し、そしてこの平衡状態から次の段の電圧まで継続して充電することで、セル(電池セル)間で比較的小さい電圧の差で各段のセル平衡を、満充電までの段別充電プロセスを完了するまで行うことができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施例による電池段別充電方法は、複数の電池セルを有するバッテリーパックに対して充電を行い、前記電池段別充電方法は、(a)前記バッテリーパックに対して充電を行い、前記バッテリーパック中の任意の1つの電池セルの電圧が満充電電圧に達したときに充電動作を停止し;(b)前記バッテリーパックの全ての電池セルに対して、現在の電圧の高低(大小)に従って並べ替えを行い、そして、電圧が最も低い電池セルから、並べ替えられた全ての電池セルに対して、それぞれ、第1段の電圧まで充電を行い;(c)並べ替えられた全ての電池セルに対して、それぞれ、第2段の電圧まで充電を行い;及び、(d)並べ替えられた全ての電池セルに対して、それぞれ、第3段の電圧まで充電を行い、前記バッテリーパックの段別充電を完成するステップを含む。
【0007】
本発明の一実施例では、前記電池(バッテリーパック)は、リチウム鉄電池又は三元系リチウム電池(ternary polymer lithium battery)である。
【0008】
本発明の一実施例では、前記第3段の電圧は、前記電池セルの満充電電圧である。
【0009】
本発明の一実施例では、前記ステップ(a)は、さらに、前記バッテリーパックを充電する時に、同時に全ての電池セルの電圧を検出し、そのうちの1つの電池セルと、他の電池セルとの電圧の差が第1平衡用設定値を超えたときに、前記1つの電池セルに対して平衡用電量補償を行い、前記1つの電池セルと、他の電池セルとの間の電圧差が第2平衡用設定値によりも小さくなるようにした後に電量補償を停止することを含む。そのうち、前記第1平衡用設定値は、50mVであり、前記第2平衡用設定値は、30mVである。
【0010】
また、本発明の実施例によれば、電池段別充電システムが提供され、前記システムは、外部電源から電力を導入するための平衡用電源;前記平衡用電源に電気的に接続され、また、前記バッテリーパック中の複数の電池セルにそれぞれ接続される複数の平衡用スイッチ;前記複数の電池セルにそれぞれ電気的接続され、前記複数の電池セルの電圧をそれぞれ測定するための複数の電圧測定ユニット;及び、前記複数の平衡用スイッチ及び前記複数の電圧測定ユニットに電気的に接続され、前記電圧測定ユニットによりフィードバックされた各電池セルの電圧情報に基づいて、前記複数の平衡用スイッチを制御して前記電池段別充電方法に記載の電池段別充電を行うようにさせる制御ユニットを含む。
【0011】
本発明の一実施例では、前記平衡用電源は、直流-直流フォワード型コンバータ(DC-DC Forward Converter)を有する。
【0012】
本発明の一実施例では、前記外部電源は、商用電源、電力貯蔵用電池、太陽光発電システム、風力発電システム又は他の種類のグレーンエネルギー発電システムである。
【0013】
以上の概要及び以下の詳細な説明及び図面は、全て、本発明が所定の目的を達成するために採用する方法、手段、及び機能をさらに説明するためのものである。また、本発明の他の目的及び利点については、後続の説明及び図面において詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施例における電池段別充電システムの構成図である。
図2】本発明の実施例における電池段別充電方法のフローチャートである。
図3】従来技術における2段階充電方法及び充電試験による電圧-時間曲線図である。
図4】従来技術における2段階充電方法の未完成時のセル間の比較的大きい電圧差を示す図である。
図5】本発明の実施例における電池段別充電方法による電圧-時間曲線図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付した図面を参照しながら、本発明を実施するための好適な形態を詳細に説明する。なお、このような実施形態は、例示に過ぎず、本発明を限定するものでない。
【0016】
本発明の電池段別充電方法及びシステムは、従来技術における2段階充電方法の充電段階を改良したものであり、長時間で同一セルに対して充電を行うことによって前記セルの温度が過度に上がる欠点を改善するために、本発明は、セルの電圧を複数の段に分け、電圧均衡方式で充電を行い、最後に各セルが全て満充電になり且つ過充電にならないようさせる。従来の2段階充電方法は、必ず完全な充電プロセスを行った後にセルの平衡状態に達することができるため、充電時間がそれによって長くなる。これに対して、本発明は、各セルを先ず任意段の電圧のセル平衡状態まで充電し、そして、この平衡状態から継続して各段の段別充電を完成し、これにより、セルは、満充電までの段別充電プロセスが完成するまで、毎回、比較的小さい電圧差で平衡動作を行うことができる。よって、本発明は、各セルに対して平衡動作を行うための時間を短縮し、且つ単一セルが一回多すぎる電量を受けて温度が過度に上がることにより、セルの寿命が短くなる欠点を避けることができる。
【0017】
図1は、本発明の実施例における電池段別充電システムの構成図である。図1に示すように、この電池段別充電システム1は、次のようなものを含む。
【0018】
平衡用電源11:外部電源10から電力を導入し;
平衡用スイッチ12:前記平衡用電源11に電気的に接続され、前記平衡用スイッチ12の数量は、少なくとも、バッテリーパックA中の電池セルの数量と同じであり、複数の平衡用スイッチ12は、それぞれ、前記バッテリーパックA中の複数の電池セルに接続され;
電圧測定ユニット13:前記バッテリーパック中の各電池セルに電気的に接続され、前記複数の電池セルの電圧を測定し;及び
制御ユニット(MCU)14:前記平衡用スイッチ12及び前記電圧測定ユニット13に電気的に接続され、前記制御ユニット14は、前記電圧測定ユニット13からの各電池セルの電圧情報に基づいて、前記複数の平衡用スイッチ12を制御して本発明による電池段別充電を行うようにさせる。その詳細な動作プロセスは、後述する。
【0019】
図2は、本発明の実施例における電池段別充電方法のフローチャートである。この実施例の充電プロセスは、次のようなステップを含む。
【0020】
ステップS00:充電動作開始(S00);
ステップS01:本発明による電池段別充電システムは、前記バッテリーパックに対して一括充電を行い、即ち、バッテリーパック全体に対して充電を行い、同時に前記複数の電圧測定ユニットは、持続的にバッテリーパック中の各電池セルの電圧を測定し、制御ユニットにフィードバックし、制御ユニットは、電池セル間の最高と最低の電圧の差を計算し(S01);
ステップS02:任意の1つの電池セルの電圧が定格満充電電圧を達した後に一括充電を停止し、電池セル間の平衡用電量補償を行うように準備する(S02)。
【0021】
各電池セルの電気化学状態が異なるため、そのうちの1つの電池セルが先に満充電状態に達したときに、他の電池セルが満充電電圧に達していない可能性がある。平衡動作を行わずに継続してバッテリーパック全体に対して充電を行えば、元々満充電になっている電池セルが過充電になり、温度が過度に上がり、電池セルが壊れる恐れがある。従来技術における一番最初の2段階充電方法は、先ずバッテリーパックを満充電電圧よりも低いある電圧値まで受電し、そして、しばらく待ってからバッテリーパックを満充電電圧まで充電する。しかし、このような2段階式一括充電だけで、状態が異なる複数の電池セル間の電圧が平衡に達することを保証できないので、従来技術においてこのような2段階式一括充電方法を改良した2段階充電方法は、先ず一括充電でバッテリーパック中の任意の1つの電池セルを満充電電圧まで充電し、そして、満充電電圧に達していない他の電池セルに対して平衡用電量補償を行う。このような方法の主な欠点は、次の通りであり、即ち、電池に対しての平衡動作は、充電時間終了後に開始し、これは、余計な平衡用電量補償時間が増加することを意味し、また、充電プロセスにおいて一時的に電池の使用が必要になる場合、例えば、電動車が満充電になっていないまま継続して走行したい場合、このときに使用のために投入する電池は、各電池セルの電圧が不平衡である状態にあり、エネルギーの管理及びバッテリーパックの使用寿命に不利な影響を与えることがある。よって、本発明は、従来技術の欠点を改良し、後続の段別充電及び平衡メカニズムを提案する。
【0022】
ステップS03:一括充電プロセスでは、各電池セルの電圧の持続的な測定及び電池セル間の電圧差の計算を行い、充電を行う必要のある電池セルがあるかを判断し、電池セル間の最高と最低の電圧の差が第1平衡用設定値(例えば、50mV)を超えたときに、最低電圧の電池セルに対応する平衡用スイッチをオンにし、最低電圧の電池セルに対して電量補償を行い、最低電圧の電池セルと最高電圧の電池セルとの間の電圧の差が第2平衡用設定値(例えば、30mV)よりも小さくなった後に、この平衡用スイッチをオフにし、前記電池セルに対しての電量補償を停止し、また、一括充電プロセス(ステップ(S02))中の全ての電池セルの電圧状態を継続してモニタリングする(S03)。
【0023】
ステップS04:ステップ(S02)に続き、任意の1つの電池セルの電圧が定格満充電電圧になったときに、バッテリーパック全体への一括充電を停止し、制御ユニットは、電圧測定ユニットからの全ての電池セルの現在の電圧の高低(大小)に従って、全ての電池セルに対して並べ替えを行い、そして、制御ユニットは、設定に従って最低電圧の電池セルから、並べ替えられた全ての電池セルをそれぞれ第1段の電圧まで充電し(前記第1段の電圧よりも高いものに対して充電しない)、全ての電池セルの電圧が第1段の電圧になった(又は、それによりも高くなった)後に、並べ替えられた全ての電池セルをそれぞれ第2段の電圧まで充電し、最後に、並べ替えられた全ての電池セルをそれぞれ第3段の電圧(即ち、電池セルの満充電電圧)まで充電した後に、段別充電動作が完了する(S04)。
【0024】
本発明の一実施例では、前記第1平衡用設定値及び前記第2平衡用設定値を設ける目的は、一括充電プロセスにおいて各電池セルの電圧が一定程度の平衡状態を維持できるようにさせるためであり、第1平衡用設定値及び第2平衡用設定値の実際の値は、電池の種類及び使用者のニーズに応じて確定されても良く、本発明の実施例に記載の態様に限定されない。
【0025】
本発明の電池段別充電方法は、従来技術を改良した2段階充電方法であり、充電開始時に先ず第1段階の一括充電を行い、一括充電期間において任意の1つのセルの電圧差が50mVよりも大きくなったときに、このセルに対して平衡動作を行って30mVよりも小さくなるようにプルアップし、任意の1つのセルが満充電電圧になったら、第1段階の一括充電を終了し、その後、電圧大小の並べ替え動作を行い、そして、第2段階の均衡充電を行う。本発明の電池段別充電方法は、第2段階においてセルの電圧を3段に分け、先ずバッテリーパック中のセルを逐一で第1段の電圧値まで充電し、バッテリーパック中のセルの平衡状態に達させ、そして、順に各段の平衡動作を完成し、第3段の満充電電圧設定値に達したら、2段階充電プロセスが完了し、これにより、各セルは、全て、満充電であり且つ過充電でない状態になる。従来技術における2段階充電方法に比べ、本発明の利点は、次の通りであり、即ち、平衡動作が第2段階の充電プロセスにおいて段を分けて複数回行われ、バッテリーパックが完全な満充電になる前に使用のために投入されても、全ての電池セルがほぼ電圧平衡状態にあることを確保でき、且つ電池セルは、各段で充電時に一回受ける電流が比較的小さく、充電時間が短く、そのため、電池セルの内部で熱の累積が難しく、温度の上昇幅が比較的低く、セルの寿命及びパフォーマンスに有利である。
【0026】
図3乃至図5は、本発明の電池段別充電方法及びシステムと、従来技術における2段階充電方法との電池セルの電圧趨勢比較図である。8個の電池セルを有するバッテリーパックを例とすると、一般的に言えば、2段階充電方法の第1段階の一括充電に必要な時間は、第2段階の段別充電よりもかなり短い。それは、各電池セルの電圧をモニタリングし、平衡用電量補償パラメータを計算するなどの制御ロジックは、単純にバッテリーパック全体に対して充電を行うことよりも複雑であるためである。また、実際に応用するときに、電動車、電動バスなどの乗り物は、しばしば、できるだけ急速充電を行い、完全に満充電になる前に走行し得ることを要求するので、バッテリーパックは、第2段階の段別充電が完了する前に使用のために投入され、電池セル間が不平衡状態にあることが多い。図3の2段階充電方法は、先ずバッテリーパック全体に対して一括充電を行い、そして、個別の電池セルに対して段別充電を行い、理論上では、図3のフル充電動作を完成すれば、バッテリーパックは、平衡状態に達することができる。しかし、実際に応用する場合に、電池が不完全な充電状態のときに使用のために投入されることがあり、図3のフル充電動作を完成できないときに、段別充電完成後のセルと、段別充電未完成のセルとの電圧の差が非常に大きくなる問題が生じ、このときにバッテリーパック中の電池セルの電圧趨勢図は、図4に示すようにかなり乱れており、これは、バッテリーパック内の各電池セルの電圧が平衡状態に達できないことを表す。本発明の電池段別充電方法を利用する電池セルの電圧趨勢図は、図5に示すように、第2段階の段別充電の比較的長い期間においてトータルで3回の段別平衡を行っており、これで分かるように、本発明は、段別充電を中断する際に直列接続されるセルの電圧の差が大き過ぎる問題を解消でき、また、各段の区間におけるセルの電圧の差が改良前の2段階充電方法よりも小さいので、充電が不完全な場合が発生しても、段別充電完成後のセルと、段別充電未完成のセルとの間の電圧の差を小さくすることができる。
【0027】
本発明の一実施例では、第2段階の段別充電における電圧の段分けの数量及び各段の電圧の数値は、電池の種類及び使用者のニーズによって変化しても良く、本発明の実施例に開示の態様に限定されない。リチウム鉄電池を例とすると、3段に分けた電圧値は、それぞれ、3.4V、3.5V、3.6Vと設定されても良く、三元系リチウム電池を例とする場合、それぞれ、4.0V、4.1V、4.2Vと設定されても良い。
【0028】
これにより、本発明は、従来技術における2段階充電方法の欠点を改良した電池段別充電方法及びシステムを提供し、セルを先ず任意段の電圧まで充電してセル平衡状態を完成してから、この平衡状態を以て次の段の電圧まで継続して充電し、これにより、セル(電池セル)間で比較的小さい電圧差で各段のセル平衡を、満充電までの段別充電プロセスが完了するまで行うことができる。本発明は、各段の均衡充電を行うことで、バッテリーパック中のセルが比較的速いスピードでセル平衡状態に達し得るようにさせることができる。また、従来技術における段階的な充電メカニズムは、1セルずつに各セルを満充電まで充電するから、第2段階のプロセスが終わった後に各セルが平衡状態に達するようにさせる必要がある。これに対して、本発明の改良後の段別充電メカニズムは、直接満充電電圧を平衡目標とせず、電圧の段分けを行い、最初の段の電圧値(即ち、最も低い電圧値)を以て先にセルの平衡を行い、そして、この平衡状態から逐段でセルを満充電まで充電するので、このような段別充電メカニズムは、従来の段階的な充電よりも先に平衡状態に達することができる。また、このような段別充電メカニズムは、同一セルに対しての充電時間が比較的短く、熱の累積時間が比較的少なく、且つ段別充電期間を利用して他のセルに降温の動作を行わせることができ、これにより、長時間で同一セルに対して平衡のための充電を行うことによる温度上昇の問題を解決することができる。また、本発明は、従来技術において第2段階の充電未完了時に充電電量不足による不平衡の欠点を解決することもできる。さらに、従来技術における段階的な充電メカニズムは、完全な第2段階の充電を完成することで、各セルが満充電平衡状態に達するようにさせる必要があるので、段階的な充電メカニズムが未完成の場合、バッテリーパックにおける全部のセルが満充電状態に達することができず、セルの電量に差が生じることがある。これに対して、本発明は、平衡を一番先の要点とし、電圧を複数の段に分けてバッテリーパックの均衡充電を行うため、各段の充電時にセル間のエネルギーの差を小さくすることができる。
【0029】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明はこの実施形態に限定されず、本発明の趣旨を離脱しない限り、本発明に対するあらゆる変更は本発明の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0030】
A バッテリーパック
1 電池段別充電システム
10 外部電源
11 平衡用電源
12 平衡用スイッチ
13 電圧測定ユニット
14 制御ユニット
S01〜S04 電池段別充電方法のステップ
図1
図2
図3
図4
図5