特許第6707134号(P6707134)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エイチエルサイエンス カンパニー,リミテッドの特許一覧 ▶ イ,へ−ヨンの特許一覧

特許6707134ゴシツ、トチュウ、ザクロの抽出物の複合物(HL‐Joint 100)のCOX2、PGE2抑制を通じた抗炎効果、MMP‐2、9抑制を通じた軟骨保護効果およびコラーゲンタイプIIの合成増加を通じた軟骨再生効果による骨関節炎の改善方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6707134
(24)【登録日】2020年5月21日
(45)【発行日】2020年6月10日
(54)【発明の名称】ゴシツ、トチュウ、ザクロの抽出物の複合物(HL‐Joint 100)のCOX2、PGE2抑制を通じた抗炎効果、MMP‐2、9抑制を通じた軟骨保護効果およびコラーゲンタイプIIの合成増加を通じた軟骨再生効果による骨関節炎の改善方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/185 20060101AFI20200601BHJP
   A61K 36/46 20060101ALI20200601BHJP
   A61K 36/21 20060101ALI20200601BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20200601BHJP
   A61K 31/37 20060101ALI20200601BHJP
   A61K 31/7048 20060101ALI20200601BHJP
   A61K 31/575 20060101ALI20200601BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20200601BHJP
【FI】
   A61K36/185
   A61K36/46
   A61K36/21
   A61P19/02
   A61K31/37
   A61K31/7048
   A61K31/575
   A23L33/105
【請求項の数】12
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2018-530516(P2018-530516)
(86)(22)【出願日】2016年8月4日
(65)【公表番号】特表2018-536694(P2018-536694A)
(43)【公表日】2018年12月13日
(86)【国際出願番号】KR2016008616
(87)【国際公開番号】WO2017099327
(87)【国際公開日】20170615
【審査請求日】2018年6月11日
(31)【優先権主張番号】10-2015-0175161
(32)【優先日】2015年12月9日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】516311102
【氏名又は名称】エイチエルサイエンス カンパニー,リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】516311113
【氏名又は名称】イ,へ−ヨン
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】イ,ヘ−ヨン
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ボム−ラク
(72)【発明者】
【氏名】パク,ヘ−リム
(72)【発明者】
【氏名】キム,スン−ヒ
【審査官】 菊池 美香
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−047817(JP,A)
【文献】 特開2005−089304(JP,A)
【文献】 特開2008−104394(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/160226(WO,A1)
【文献】 特開平04−360694(JP,A)
【文献】 特開2011−231110(JP,A)
【文献】 Journal of Ethnopharmacology, 2012, Vol.144, pp.109-117
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/185
A23L 33/105
A61K 31/37
A61K 31/575
A61K 31/7048
A61K 36/21
A61K 36/46
A61P 19/02
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)ザクロ濃縮物100重量部、および(ii)トチュウ抽出物とゴシツ抽出物との混合物100重量部を有効成分として含ませる段階を含む、骨関節炎の予防または改善用の組成物の製造方法であって、前記トチュウ抽出物とゴシツ抽出物との重量比は、2:1〜4:1であることを特徴とする、骨関節炎の予防または改善用の組成物の製造方法
【請求項2】
前記ザクロ濃縮物、トチュウ抽出物およびゴシツ抽出物の重量比は、100:67:33〜100:80:20であることを特徴とする、請求項1に記載の骨関節炎の予防または改善用の組成物の製造方法
【請求項3】
前記ザクロ濃縮物は、ザクロ果肉にでん粉分解酵素処理を施した後、加熱濃縮したものであることを特徴とする、請求項1に記載の骨関節炎の予防または改善用の組成物の製造方法
【請求項4】
前記トチュウ抽出物またはゴシツ抽出物の抽出溶媒は、水、炭素数1〜4のアルコール、またはこれらの混合物であることを特徴とする、請求項1に記載の骨関節炎の予防または改善用の組成物の製造方法
【請求項5】
前記ザクロ濃縮物には、0.5〜2mg/gのエラグ酸が含有されていることを特徴とする、請求項1に記載の骨関節炎の予防または改善用の組成物の製造方法
【請求項6】
前記トチュウ抽物は、0.5〜3mg/gのピノレジノールジグルコシドが含有されているトチュウの水抽出物であることを特徴とする、請求項1に記載の骨関節炎の予防または改善用の組成物の製造方法
【請求項7】
前記トチュウ抽物は、0.8〜4mg/gのピノレジノールジグルコシドが含有されているトチュウのアルコール抽出物であることを特徴とする、請求項1に記載の骨関節炎の予防または改善用の組成物の製造方法
【請求項8】
前記ゴシツ抽物は、0.1〜0.5mg/gのエクジステロンが含有されているゴシツの水抽出物であることを特徴とする、請求項1に記載の骨関節炎の予防または改善用の組成物の製造方法
【請求項9】
前記ゴシツ抽物は、0.2〜2.5mg/gのエクジステロンが含有されているゴシツのアルコール抽出物であることを特徴とする、請求項1に記載の骨関節炎の予防または改善用の組成物の製造方法
【請求項10】
前記組成物は、軟骨保護、軟骨再生または関節の硬さの改善効果を有することを特徴とする、請求項1に記載の骨関節炎の予防または改善用の組成物の製造方法
【請求項11】
前記組成物は、健康機能食品組成物または薬学組成物であることを特徴とする、請求項1に記載の骨関節炎の予防または改善用の組成物の製造方法
【請求項12】
(i)ザクロ濃縮物100重量部、および(ii)トチュウ抽出物とゴシツ抽出物との混合物100重量部を有効成分として含み、前記トチュウ抽出物とゴシツ抽出物との重量比が2:1〜4:1である、骨関節炎の予防または改善用の組成物の製造方法であって、
ザクロ果肉にでん粉分解酵素を添加し且つ加熱濃縮して、ザクロ濃縮物を製造するステップと;
トチュウに水、炭素数1〜4の低級アルコールまたはこれらの混合物溶媒を添加して、トチュウ抽出物を製造するステップと;
ゴシツに水、炭素数1〜4の低級アルコールまたはこれらの混合物溶媒を添加して、ゴシツ抽出物を製造するステップと;
ザクロ濃縮物、トチュウ抽出物およびゴシツ抽出物を混合し且つ攪拌するステップと;を含む、骨関節炎の予防および改善用の組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2015年12月9日付けで出願された韓国特許出願第10‐2015‐0175161号に基づく優先権を主張し、当該出願の明細書および図面に開示された全ての内容は本出願に援用される。
【0002】
本発明は、骨関節炎の予防および改善用の組成物に関する。より具体的に、骨関節炎の症状の緩和効果を超えて、損傷された関節軟骨の再生を通じた骨関節の損傷を直接的に治療することのできる、天然物由来の有効成分を含む骨関節炎の予防および改善用の組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
骨関節炎(Osteoarthritis,OA)は、主に関節軟骨の構成成分であるプロテオグリカン(proteoglycan,PG)の消失を特徴とする疾患であり、関節軟骨の細胞と構成組織の破壊を招いて関節の機能障害を誘発する代表的な疾患である[Felson and Zhang,1998]。骨関節炎の発症時にMMP−3、MMP−9及びMMP−13などの発現が増加し、このようなMMPsの増加により軟骨を構成するコラーゲン基質(collagen matrix)を損傷させて退行性関節炎を悪化させることが知られている。
【0004】
現在、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)、鎮痛剤、ヒアルロン酸(hyaluronan)、グルコサミン(glucosamine)及びコンドロイチン(chondroitin)が骨関節炎(OA)の治療剤として主に使用されているが、これらは根本的な治療ではなく、症状緩和効果だけを示しているのが現状である。特に、一部のNSAIDsの場合、関節軟骨のプロテオグリカン(proteoglaycan)の合成を抑制し、むしろ骨関節炎(OA)症状を悪化させる傾向を示していることが知られている[Tamura and Ohmori,2001]。したがって、関節軟骨自体を保護したり、損傷を直接治療することができる代替用法の開発が急務となっている。このような観点から、天然物由来の骨関節炎(OA)改善剤を見つけるための努力が、様々な方面で試みられており、特に近年になって天然物由来の食品または成分を組み合わせて、骨関節炎(OA)の改善効果が相乗的に増加した新しい複合組成を開発するための努力が行われている[Tamura and Ohmori,2001;Qin et al.,2013;Na et al.,2014;Nam et al.,2014]。
【0005】
現在までに機能性食品または成分の適切な複合組成によって薬効が向上すると報告されている複数の成分がある[Lee et al.,2008;Choi et al.,2014ab;Choi et al.,2015;Kang et al.,2015]が、ザクロ濃縮粉末、トチュウ及び牛膝抽出物の複合組成による骨関節炎の改善効果については全く研究されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、天然物を有効成分として含む骨関節炎の予防または改善用の組成物、および前記組成物を食餌または投与して骨関節炎を予防または改善する方法を開発することである。特に、骨関節炎による症状の緩和を超えて、損傷された関節軟骨の再生または骨関節の損傷を直接的に治療することができるという効果を有する骨関節炎改善用の組成物を開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明は、ザクロ濃縮物、トチュウ抽出物およびゴシツ抽出物を有効成分として含む骨関節炎の予防または改善用の組成物およびその製造方法を提供する。
【0008】
より具体的に、一実施形態によって、本発明は、前記トチュウ抽出物およびゴシツ抽出物の重量比が、2:1〜4:1であることを特徴とする骨関節炎の予防または改善用の組成物、前記組成物を食餌または投与して骨関節炎を予防または改善する方法、または前記組成物の骨関節炎の予防または改善用途を提供する。
【0009】
他の一実施形態によって、本発明は、前記ザクロ濃縮物、トチュウ抽出物およびゴシツ抽出物の重量比は、5:2:1〜5:4:1であることを特徴とする骨関節炎の予防または改善用の組成物、前記組成物を食餌または投与して骨関節炎を予防または改善する方法、または前記組成物の骨関節炎の予防または改善用途を提供する。
【0010】
さらに他の一実施形態によって、本発明は、前記ザクロ濃縮物が、ザクロ果肉にでん粉分解酵素処理を施した後、加熱濃縮したものであることを特徴とする骨関節炎の予防または改善用の組成物、前記組成物を食餌または投与して骨関節炎を予防または改善する方法、または前記組成物の骨関節炎の予防または改善用途を提供する。
【0011】
さらに他の一実施形態によって、本発明は、前記トチュウ抽出物またはゴシツ抽出物の抽出溶媒が、水、炭素数1〜4のアルコール、またはこれらの混合物であることを特徴とする骨関節炎の予防または改善用の組成物、前記組成物を食餌または投与して骨関節炎を予防または改善する方法、または前記組成物の骨関節炎の予防または改善用途を提供する。
【0012】
さらに他の一実施形態によって、本発明は、前記ザクロ濃縮物には、0.5〜2mg/gのエラグ酸が含有されていることを特徴とする骨関節炎の予防または改善用の組成物、前記組成物を食餌または投与して骨関節炎を予防または改善する方法、または前記組成物の骨関節炎の予防または改善用途を提供する。
【0013】
さらに他の一実施形態によって、本発明は、前記トチュウの水抽出物には、0.5〜3mg/gのピノレジノールジグルコシドが含有されていることを特徴とする骨関節炎の予防または改善用の組成物、前記組成物を食餌または投与して骨関節炎を予防または改善する方法、または前記組成物の骨関節炎の予防または改善用途を提供する。
【0014】
さらに他の一実施形態によって、本発明は、前記トチュウのアルコール抽出物には、0.8〜4mg/gのピノレジノールジグルコシドが含有されていることを特徴とする骨関節炎の予防または改善用の組成物、前記組成物を食餌または投与して骨関節炎を予防または改善する方法、または前記組成物の骨関節炎の予防または改善用途を提供する。
【0015】
さらに他の一実施形態によって、本発明は、前記ゴシツの水抽出物には、0.1〜0.5mg/gのエクジステロンが含有されていることを特徴とする骨関節炎の予防または改善用の組成物、前記組成物を食餌または投与して骨関節炎を予防または改善する方法、または前記組成物の骨関節炎の予防または改善用途を提供する。
【0016】
さらに他の一実施形態によって、本発明は、前記ゴシツのアルコール抽出物には、0.2〜2.5mg/gのエクジステロンが含有されていることを特徴とする骨関節炎の予防または改善用の組成物、前記組成物を食餌または投与して骨関節炎を予防または改善する方法、または前記組成物の骨関節炎の予防または改善用途を提供する。
【0017】
さらに他の一実施形態によって、本発明は、前記組成物は、軟骨保護、軟骨再生または関節の硬さの改善効果を有することを特徴とする骨関節炎の予防または改善用の組成物、前記組成物を食餌または投与して骨関節炎を予防または改善する方法、または前記組成物の骨関節炎の予防または改善用途を提供する。
【0018】
さらに他の一実施形態によって、本発明は、前記組成物は、健康機能食品組成物または薬学組成物であることを特徴とする骨関節炎の予防または改善用の組成物、前記組成物を食餌または投与して骨関節炎を予防または改善する方法、または前記組成物の骨関節炎の予防または改善用途を提供する。
【0019】
他の態様として、本発明は、ザクロ果肉にでん粉分解酵素を添加し且つ加熱濃縮して、ザクロ濃縮物を製造するステップと;
トチュウに水、炭素数1〜4の低級アルコールまたはこれらの混合物溶媒を添加して、トチュウ抽出物を製造するステップと;
ゴシツに水、炭素数1〜4の低級アルコールまたはこれらの混合物溶媒を添加して、ゴシツ抽出物を製造するステップと;
ザクロ濃縮物、トチュウ抽出物およびゴシツ抽出物を混合し且つ攪拌するステップと;を含むことを特徴とする、ザクロ濃縮物、トチュウ抽出物およびゴシツ抽出物を有効成分として含む骨関節炎の予防および改善用の組成物の製造方法を提供する。
【0020】
以下、本発明を詳述する。
【0021】
〔ザクロ濃縮物、トチュウ抽出物およびゴシツ抽出物〕
本発明者らは、ザクロ濃縮物(PCP)と、トチュウ抽出物(EC)およびゴシツ抽出物(AR)の複合物は、骨関節炎の予防および改善の側面からみて、相乗的な生物学的活性を有することを見出した。
【0022】
ザクロ(石榴、柘榴、若榴、Pomegranate、Punica granatum L)は、アジアの西南部、インドの北西部および米国のカリフォルニアの自生植物であり、現在は、亜熱帯および熱帯の各地に広く分布されている植物である。昔から、ザクロ、特に、赤ザクロは強壮剤として知られており、とりわけ、高血圧および動脈硬化の予防に卓越した効果を示すことが知られている。なお、水溶性糖質が38〜47%と多量に含有されており、様々なビタミンおよびミネラルを含む。
【0023】
本発明に用いられるザクロの種類には特に制限はないが、赤ザクロであることが好ましく、具体例として、イラン、カリフォルニア、台湾、ウズベキスタン、トルコおよび韓国産の赤ザクロが挙げられる。例えば、トルコ産ザクロの品種には、Hicaznar pomegranate cv., Cekirdeksiz VI pomegranate cv., Silifke Asisi pomegranate cv., Katirbasi pomegranate cv.またはLefan pomegranate cv.などがあるが、これらに制限されない。本発明によるザクロ抽出物は、用いられたザクロの産地および収穫時期などに応じて差があり得る。
【0024】
本発明において、用語「濃縮物」とは、後述する方法に従って得る濃縮液、濃縮液の希釈液、前記濃縮液を乾燥させて得られる乾燥物、前記濃縮液の粗精製物や精製物、またはこれらの混合物など、濃縮液それ自体および濃縮液を用いて形成可能なあらゆる剤形の濃縮物を網羅する。
【0025】
本発明によるザクロ濃縮物を製造するための好適なザクロの部位は、ザクロ果肉である。
【0026】
本発明によるザクロ濃縮物は、次の方法によって製造可能である。例えば、まず、ザクロを洗浄した後、皮および種子を完全に除去し、高温で短時間内に殺菌し、でん粉分解酵素を添加してザクロに含有されているでん粉など多糖類を分解する。次いで、選択的に、ゼラチン、二酸化ケイ素、ベントナイト、シリカゾル(silicasol)、タンニン、セルロースまたはカゼインカリウム(potassium caseinate)などの添加剤を添加して、ザクロ濃縮物の濁度、色相、粘度などを調節し、加熱濃縮してザクロ濃縮物を製造することができる。併せて、各ステップの間にろ過するステップをさらに含んでいてもよいが、例えば、皮および種子を除去するステップの後、且つ、高温殺菌するステップの前、でん粉分解酵素を処理するステップ後、且つ、濃縮ステップの前、または濃縮ステップの後のうちのいずれか一つ以上のステップにおいてろ過する工程をさらに含んでいてもよい。
【0027】
より具体的に、下記のステップを含んで製造可能である。
【0028】
S1)ザクロの皮および種子を除去し、ザクロ果肉のみを得るステップ。
【0029】
S2)ザクロ果肉を、100〜105℃において50〜80秒間殺菌した後に、48〜55℃まで冷却させるステップ。
【0030】
S3)冷却されたザクロ果肉に、48〜55℃においてでん粉分解酵素を処理するステップおよび
S4)ザクロ果肉分解物を、順次に70〜100℃および400〜850mbarにおいて加温加圧して2回以上加熱濃縮し、40〜80℃および100〜350mbarにおいて減温減圧して1回以上加熱濃縮するステップ。
【0031】
選択的に、S1ステップの後、且つ、S2ステップの前、S3ステップの後、且つ、S4ステップの前、およびS4ステップの後のうちのいずれか一つ以上において、ろ過するステップをさらに含んでいてもよい。
【0032】
各ステップについて具体的に説明する。
【0033】
S1)ザクロ皮および種子を除去し、ザクロ果肉のみを得るステップ。
【0034】
本発明は、ザクロの皮および種子を含んでいないザクロ果肉のみを用いた抽出物を提供する。ザクロの皮および種子は、副作用を招く虞があるが、例えば、ザクロ皮に含有されている特定のアルカロイド(alkaloid)は、身体の機能を低下させる働きをし、呼吸系および筋肉に影響を及ぼして、中毒されれば、発作、痙攣が起きたり昏睡状態などに陥ったりする虞がある。なお、ザクロ種子の抽出物の服用に際しては、一部の服用者にアレルギーである舌の腫脹(tongue swelling)などの副作用が生じる虞がある。
【0035】
S2)ザクロ果肉を、100〜105℃において50〜80秒間殺菌した後、48〜55℃まで冷却させるステップ。
【0036】
ザクロ果肉は、順次に殺菌した後に冷却させるステップを経る。殺菌は、100〜105℃において50〜80秒間、より好ましくは、55〜70秒間速やかに行われることが好ましく、48〜55℃まで冷却させることが好ましい。
【0037】
S3)冷却されたザクロ果肉に、48〜55℃においてでん粉分解酵素を処理するステップ
冷却されたザクロ果肉にでん粉分解酵素を処理するステップを経る。好ましくは、48〜55℃において10〜60分間行い、より好ましくは、48〜55℃において20〜40分間行うことができる。利用可能なでん粉分解酵素としては、特に制限はなく、当業界における公知の様々なでん粉分解酵素が使用可能であり、例えば、ペクチナーゼ(pectinase)、プロテイナーゼ(proteinase)、アミラーゼ、セルラーゼなどを使用することができるが、好ましくは、ペクチナーゼを使用することができる。
【0038】
S4)ザクロ果肉分解物を、順次に70〜100℃および400〜850mbarにおいて加温加圧して2回以上加熱濃縮し、40〜80℃および100〜350mbarにおいて減温減圧して1回以上加熱濃縮するステップ。
【0039】
ザクロ果肉分解物を順次に加温加圧して加熱濃縮し、減温減圧して加熱濃縮するステップを経る。
【0040】
好ましくは、加温加圧して2回以上、さらに好ましくは、3回以上加熱濃縮し、減温減圧して1回以上、さらに好ましくは、2回以上加熱濃縮することができ、合計で3回以上加熱濃縮することができる。
【0041】
加温加圧して加熱濃縮することは、70〜100℃の温度条件および400〜850mbarの圧力条件の範囲内において行われ、加熱濃縮の次数(回数)別に温度および圧力を異にするが、前記温度および圧力の範囲内において温度を加温し且つ圧力を加圧することであれば、制限なしに本発明の範囲に含まれ得る。好ましくは、70〜85℃および400〜550mbarにおいて1次加熱濃縮を行い、85〜92℃および550〜750mbarにおいて2次加熱濃縮を行い、且つ、92〜100℃および750〜850mbarにおいて3次加熱濃縮を行うことができる。さらに好ましくは、78〜82℃および450〜500mbarにおいて1次加熱濃縮を行い、85〜90℃および600〜650mbarにおいて2次加熱濃縮を行い、且つ、92〜98℃および800〜850mbarにおいて3次加熱濃縮を行うことができる。
【0042】
減温減圧して加熱濃縮することは、40〜80℃の温度条件および100〜350mbarの圧力条件の範囲内において行われ、加熱濃縮の次数(回数)別に温度および圧力を異にするが、前記温度および圧力の範囲内において温度を減温し且つ圧力を減圧することであれば、制限なしに本発明の範囲に含まれ得る。好ましくは、60〜80℃および250〜350mbarにおいて4次加熱濃縮を行い、且つ、40〜60℃および100〜250mbarにおいて5次加熱濃縮を行うことができる。さらに好ましくは、65〜72℃および300〜330mbarにおいて4次加熱濃縮を行い、且つ、45〜55℃および100〜150mbarにおいて5次加熱濃縮を行うことができる。
【0043】
本発明によるザクロ濃縮物には、ザクロ濃縮物の総重量を基準として0.5〜3mg/gのエラグ酸が含有される。さらに好ましくは、ザクロ濃縮物の総重量を基準として0.5〜2mg/gのエラグ酸が含有される。本発明によるザクロ濃縮物のエラグ酸の含量が高い理由は、原料であるザクロ産地の差、果肉のみの利用、上述した特定の製造方法(例えば、濃縮方法、加熱温度および圧力)などに起因するものであると推測されるが、本発明は、このような事項に限定されるものではない。
【0044】
トチュウ(杜仲、Eucommia Bark)は、トチュウ木(Eucommia ulmoides Oliver(トチュウ科Eucommiaceae))の幹皮であり、周皮を除去したものである。板状であり、両側の周縁部が内側に向かって僅かに巻かれており、長さ及び幅は一定ではなく、厚さは3〜7mmである。外側面は薄い褐色または灰褐色であり、あるものにははっきりとしたシワ模様または縦に割れた溝模様があり、あるものは比較的に薄い。荒い皮が除去されていないものからははっきりとした皮目が観察される。内側面は平滑であり、褐色または暗い褐色を帯び、細い縦シワがある。内側面は質が弱くて折れ易い。これを折れば、細くて銀白色の細密で且つ弾性に富んだ樹脂の糸が出る。横断面を顕微鏡で観察したとき、最外側には厚い落皮層がある。落皮層は、内側に数層のコルク細胞が整然と配列されている。これら細胞の細胞壁は木化されており、その下にはコルク皮層がある。篩部はほとんどを占め、5〜7本の横に配列した石細胞環があり、それぞれの環帯には3〜5個の石細胞がある。髄線は2〜3列の細胞からなり、コルク層の近くにくっついており、時々は片側に偏っている。髄の近くからは白色のグッタペルカを含有する柔細胞が見られ、このような柔細胞は特に篩部の内側に多い。
【0045】
牛膝は、イノコズチ(Achyranthes japonica Nakai)またはトウイノコズチ(Achyranthes bidentata Blume(ヒユ科Amaranthaceae))の根である。円柱状の主根に細長い側根が多数くっついており、長さ5〜20cm、直径3〜5mmである。根の上部には茎が短く残っている。外側面は灰色のかかった黄色乃至薄い黄色である。質は硬いが、折れ易く、折れた面は角質であり、黄白色乃至黄褐色である。
【0046】
本発明において、用語「抽出物」とは、抽出処理によって得られる抽出液、前記抽出液の希釈液や濃縮液、前記抽出液を乾燥させて得られる乾燥物、前記抽出液の粗精製物や精製物、またはこれらの混合物など、抽出液それ自体および抽出液を用いて形成可能なあらゆる剤形の抽出物を網羅する。
【0047】
本発明の目的を阻害しない範囲内において、本発明による抽出物には、それぞれの植物を説明して特定した部位に加えて、その葉、幹や茎、樹皮、根、花または花芽、果実、種子、樹液および全体の植物が含まれ得る。
【0048】
本発明による抽出物を製造するために、通常の技術者であれば、当業界における公知の任意の好適な方法を用いることができる。例えば、溶媒抽出法を用いることができる。植物の全体または任意の部分を粉砕した後(例えば、ブレンダー)、抽出溶媒を処理して、溶媒抽出物を得ることができる。粉砕前に乾燥過程を経た後に粉砕することもできる。なお、溶媒抽出物は、減圧蒸留および凍結乾燥または噴霧乾燥などの追加的な過程によって粉末状態に製造することができる。
【0049】
前記使用される抽出溶媒の種類は特に制限されず、当該技術分野における公知の任意の溶媒を使用することができる。前記抽出溶媒の非制限的な例としては、水;メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコールなどのC1〜C4の低級アルコール;グリセリン、ブチレングリコール、プロピレングリコールなどの多価アルコール;およびメチルアセテート、エチルアセテート、アセトン、ベンゼン、ヘキサン、ジエチルエーテル、ジクロロメタンなどの炭化水素系溶媒;またはこれらの混合物を使用することができ、好ましくは、水、低級アルコールを単独で使用することができ、2種以上混合して使用することができる。前記溶媒を用いて1回以上抽出して溶媒抽出物を製造することができ、前記溶媒抽出物を減圧蒸留した後に凍結乾燥または噴霧乾燥して得た乾燥抽出物を製造することができる。
【0050】
前記抽出溶媒の量は、使用される抽出溶媒の種類に応じて様々に変更可能であるが、例えば、対象となる植物の乾燥重量を基準として、1〜20倍、または5〜20倍、さらに好ましくは、5〜10倍、最も好ましくは、5〜8倍で使用することができる。
前記溶媒抽出に際して、抽出温度、抽出時間、抽出気圧はこれに制限されないが、100〜150℃、5〜10時間、0.1〜0.3Mpaで行うことができる。
【0051】
加えて、当業界における公知の様々な抽出工程、例えば、温浸漬(maceration)、インフュージョン(infusion)、パーコレーション(percolation)、消化、煎じ汁(decoction)、高温連続抽出(hot continuous extraction)、水性‐アルコール性抽出、逆流抽出、マイクロ波補助抽出、超音波抽出、超臨界流体抽出、組織片抽出(phytonic extract)(例えば、ヒドロ‐フルオロ‐カーボン溶媒など)などを選択して使用することができ、 これらは単独で行ってもよく、2種以上の方法を併用して行ってもよい。
【0052】
本発明によるトチュウ抽出物にはピノレジノールジグルコシドが含有され、特に、トチュウの水抽出物にはトチュウの水抽出物の総重量を基準として0.5〜3mg/gのピノレジノールジグルコシドが含有され、トチュウのアルコール抽出物にはトチュウのアルコール抽出物の総重量を基準として0.8〜4mg/gのピノレジノールジグルコシドが含有される。本発明によるトチュウ抽出物において、上述した濃度のピノレジノールジグルコシドが得られる理由は、原料産地の差、使用部位の種類、上述した特定の製造方法(例えば、抽出溶媒)などに起因するものと推測されるが、本発明は、このような事項に限定されるものではない。
【0053】
本発明によるゴシツ抽出物にはエクジステロンが含有され、特に、ゴシツの水抽出物にはゴシツの水抽出物の総重量を基準として0.1〜0.5mg/gのエクジステロンが含有され、ゴシツのアルコール抽出物にはゴシツのアルコール抽出物の総重量を基準として0.2〜2.5mg/gのエクジステロンが含有される。本発明によるゴシツ抽出物において、上述した濃度のエクジステロンが得られる理由は、原料産地の差、使用部位の種類、上述した特定の製造方法(例えば、抽出溶媒)などに起因するものと推測されるが、本発明は、このような事項に限定されるものではない。
【0054】
〔組成物〕
本発明は、骨関節炎の予防または改善方法に用いられるための組成物を提供する。より具体的に、本発明は、ザクロ濃縮物、ゴシツ抽出物およびトチュウ抽出物を有効成分として含む骨関節炎の予防または改善方法に用いられるための組成物を提供する。
【0055】
本発明による組成物は、ザクロ濃縮物、ゴシツ抽出物およびトチュウ抽出物を有効成分として含む。
【0056】
本発明において、「有効成分として含まれる」とは、本発明による組成物から骨関節炎の改善乃至治療効果を示し得る程度に添加されることを意味し、ターゲット細胞への伝達および安定化などのために様々な成分を副成分として添加して様々な形態に剤形化(formulation)可能であることを含む意味である。
【0057】
本発明による組成物にそれぞれの成分は次のような割合にて含有され得る。
【0058】
トチュウ抽出物およびゴシツ抽出物の重量比は、2:1〜4:1であってもよい。前記重量比の範囲内において優れた相乗効果を発揮する。
【0059】
あるいは、ザクロ濃縮物、トチュウ抽出物およびゴシツ抽出物の重量比は、5:2:1〜5:4:1であってもよい。前記重量比の範囲内において最も優れた相乗効果を発揮する。
【0060】
また、本発明による組成物には、本発明のそれぞれの抽出物(および濃縮物)が組成物の最終的な形態中に少なくとも約0.0001%〜90%、0.001%〜90%、0.01%〜90%、0.1%〜90%、0.1%〜90%、0.1%〜80%、0.1%〜70%、0.1%〜60%、0.1%〜50%、0.1%〜40%、0.1%〜30%、0.1%〜20%または0.1%〜10%の範囲で含有され得る。
【0061】
さらに、本発明による組成物には、少なくとも約0.0001%、0.001%、0.01%、0.1%、1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%または99%以上の範囲で本発明の複合物が含有され得る。
【0062】
前記%は、組成物の総重量を基準とした重量または総体積を基準とした体積を目安に計算することができ、濃度は、組成物の目的とする効果または組成物が混入される製品に応じて調整可能である。
【0063】
本発明による組成物は、上述した方法によって製造されたザクロ濃縮物、トチュウ抽出物およびゴシツ抽出物を混合して製造することができる。これに加えて、組成物の保管性、流通性、安定性などを向上させる目的で追加工程を加えて製造することができる。
【0064】
本発明による組成物は、種々に製品化することができる。例えば、食品組成物または薬学組成物などに製品化することができる。
【0065】
本発明は、前記組成物のうちのいずれか一つの組成物を含む薬学的組成物を提供する。本発明は、前記組成物のうちのいずれか一つの組成物を投与して骨関節炎を予防、改善または治療する方法を提供する。
【0066】
本発明による薬学的組成物は、薬学的に有効な量のザクロ濃縮物、ゴシツ抽出物およびトチュウ抽出物を単独で含んでいてもよく、あるいは、一つ以上の薬学的に許容可能な担体、賦形剤または希釈剤をさらに含んでいてもよい。
【0067】
前記「薬学的に許容可能」とは、生理学的に許容され、且つ、人間に投与されるとき、活性成分の作用を阻害せず、通常、胃腸障害、目眩などのアレルギー反応またはこれと類似する反応を引き起こさない非毒性の組成物のことをいう。
【0068】
前記担体、賦形剤または希釈剤の例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、でん粉、アカシアゴム、アルジネート、ゼラチン、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、水、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、タルク、ステアリン酸マグネシウムおよび鉱物油などが挙げられる。なお、前記薬学的組成物は、充填剤、抗凝集剤、潤滑剤、湿潤剤、香料、乳化剤または防腐剤などをさらに含んでいてもよい。
【0069】
前記「薬学的に有効な量」とは、陰性対照群に比べてそれ以上の反応を示す量のことをいい、好ましくは、骨関節炎の改善、予防および/または治療の効果を示すのに十分な量のことをいう。
【0070】
また、本発明の薬学的組成物は、哺乳動物に投与された後、活性成分の迅速、持続または遅延放出を提供するために、当業界における公知の方法を用いて剤形化することができる。剤形は、粉末、顆粒、錠剤、乳剤、シロップ、エアロゾール、軟質または硬質のゼラチンカプセル、滅菌注射溶液、滅菌粉末の形態であってもよい。
【0071】
本発明の薬学的組成物の投与経路としては、これに限定されるものではないが、経口的な投与経路または非経口的な投与経路が挙げられる。非経口的な投与経路としては、例えば、経皮、鼻腔、腹腔、筋肉、皮下または静脈などの種々の経路が挙げられる。経口投与を含む場合、当該組成物は、錠剤、カプセル剤、カシェー剤、ジェルキャップ剤(gelcap)、液剤、懸濁剤などの形態に経口剤形化することができる。錠剤またはカプセル剤としては、結合剤(例えば、プレゼラチン化されたトウモロコシでん粉、ポリビニルピロリドン、またはヒドロキシプロピルメチルセルロース);充填剤(例えば、ラクトース、微細結晶性セルロース、またはリン酸水素カルシウム);潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、滑石またはシリカ);崩壊剤(例えば、ジャガイモでん粉またはグリコール酸でん粉ナトリウム);または湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)などの薬剤学的に許容される賦形剤とともに通常の手段で製造することができる。錠剤は、当該分野における公知の方法で被覆することができる。経口投与用液体製剤は、液剤、シロップ剤または懸濁剤の形態を取ることができるが、これに限定されず、これらは、使用前に水または他の好適なビヒクルと組み合わせるための無水生成物として存在することができる。このような液体製剤は、懸濁化剤(例えば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体、または水素化された食用脂肪);乳化剤(例えば、レシチンまたはアカシア);非水性ビヒクル(例えば、アモンド油、油性エステル、エチルアルコール、または分画化された野菜油);および防腐剤(例えば、メチルまたはプロピル‐p‐ヒドロキシ安息香酸またはソルビン酸)などの薬剤学的に許容される添加剤とともに通常の手段で製造することができる。当該製剤は、また、場合によって、緩衝剤塩、風味剤、着色剤、および甘味剤を含有することができる。経口投与用製剤は、骨関節炎を治療するために、本発明において有用な結合タンパク質の徐放、制御放出、または持続放出のために好適に剤形化することができる。
【0072】
本発明の組成物の好適な投与量は、患者の状態および体重、疾病の重軽度、薬物の形態、投与経路および期間によって異なるが、当業者によって適切に選択可能である。
【0073】
本発明の組成物は、単独で使用してもよく、または手術、放射線治療、ホルモン治療、化学治療および生物学的反応調節剤を用いる方法などと併用して使用してもよい。例えば、本発明の薬学的組成物は、骨関節炎の改善、予防および/または治療効果を有する公知の化合物と併用して投与することができる。
【0074】
本発明は、前記組成物のうちのいずれか一つの組成物を含む食品組成物を提供する。本発明は、前記組成物のうちのいずれか一つの組成物を食餌して骨関節炎を予防または改善する方法を提供する。
【0075】
本発明による食品組成物は、食品学的に有効な量のザクロ濃縮物、ゴシツ抽出物およびトチュウ抽出物を単独で含んでいてもよく、あるいは、一つ以上の食品学的に許容可能な担体、賦形剤または希釈剤をさらに含んでいてもよい。
本発明の食品組成物は、食品、機能性食品(functional food)、栄養補助剤(nutritional supplement)、健康食品(health food)および食品添加剤(food additives)などのあらゆる天然素材の加工形態を含む。前記類型の食品組成物は、当業界における公知の通常の方法に従い様々な形態に製造することができる。
【0076】
前記食品の種類には特に制限はない。前記物質が添加可能な食品の例としては、ドリンク剤、肉類、ソーセージ、パン、ビスケット、餅、チョコレート、キャンディ類、スナック類、菓子類、ピザ、ラーメン、その他の麺類、ガム類、アイスクリーム類をはじめとする酪農製品、各種のスープ、飲料水、アルコール飲料およびビタミン複合剤、乳製品および乳加工製品などが挙げられ、通常の意味での健康機能食品を網羅する。
【0077】
本発明によるザクロ濃縮物、ゴシツ抽出物およびトチュウ抽出物の複合物は、食品にそのまま添加してもよく、他の食品または食品成分と併用してもよく、通常の方法に従い適切に使用してもよい。有効成分の混合量は、その使用目的(予防または改善用)に応じて適宜に決定することができる。一般に、健康食品中の前記化合物の量は、全体の食品の重量の0.1〜90重量部で加えることができる。しかしながら、健康および衛生を目的とするか、あるいは、健康調節を目的とする長期間の摂取の場合には、前記量は前記範囲以下であってもよく、安全性の側面からみていかなる問題もないため、有効成分は前記範囲以上の量でも使用することができる。
【0078】
本発明の食品組成物は、指示された割合で必須成分として前記ザクロ濃縮物、ゴシツ抽出物およびトチュウ抽出物の複合物を含有する以外は、他の成分には特に制限がなく、通常の飲料のように色々な香味剤または天然炭水化物などを追加成分として含有することができる。上述した天然炭水化物の例としては、モノサッカライド、例えば、葡萄糖、果糖など;ジサッカライド、例えば、マルトース、スクロースなど;およびポリサッカライド、例えば、デキストリン、シクロデキストリンなどの通常の糖、およびキシリトール、ソルビトール、エリスリトールなどの糖アルコールが挙げられる。上述したもの以外の香味剤として、天然香味剤(タウマチン、ステビア抽出物(例えば、レバウジオシドA、グリチルリチンなど)および合成香味剤(サッカリン、アスパルタムなど)を好適に使用することができる。
【0079】
上記に加えて、本発明の食品組成物には、様々な栄養剤、ビタミン、鉱物(電解質)、合成風味剤および天然風味剤などの風味剤、着色剤および増進剤(チーズ、チョコレートなど)、ペクチン酸およびその塩、アルギン酸およびその塩、有機酸、保護性コロイド増粘剤、pH調節剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコール、炭酸飲料に用いられる炭酸化剤などが含有可能である。これらに加えて、天然果物ジュースおよび果物ジュース飲料および野菜飲料の製造のための果肉を含有することができる。
【0080】
本発明による組成物は、キットとして提供することができる。
【0081】
本発明による組成物は、容器に入れられ、容器としては、瓶、金属チューブ、ラミネートチューブ、プラスチックチューブ、ディスペンサー、圧力容器、バリア容器、パッケージ、コンパートメント、コンパクト容器、組成物が収容可能なパン、または他のタイプの容器、例えば、分散媒体(dispersions)または組成物が維持される好適な瓶、ディスペンサー、またはパッケージ内に注入されたか、または吹き込み成形されたプラスチック容器などが挙げられ、これらに制限されない。前記キットには、キットまたは組成物を使用するための指示書が入れられていてもよく、指示書は別個の用紙に記載されたものであってもよく、または容器の表面、容器包装紙の表面の上に記載されてもよい。指示事項には、文字、文句、略語、絵柄または記号などが含まれ、これらに制限されない。指示書には、例えば、キットまたは組成物の使い方、適用方法および保持方法などに関する指示事項が含まれていてもよい。容器には、予め定められた量に応じて分配して入れても良い。
【0082】
〔骨関節炎の改善、予防および/または治療など〕
本発明による組成物は、骨関節炎の改善、予防および/または治療に有効である。
【0083】
より具体的に、本発明による組成物は、骨関節炎の症状を緩和乃至改善し、ひいては、損傷された関節軟骨の再生、または骨関節の損傷を直接的に治療することができるという効果がある。
【0084】
より具体的に、本発明による複合組成物は、Cox‐2、PGE2抑制を通じた骨関節炎の抗炎効果、MMP‐2、9抑制を通じた軟骨保護効果およびコラーゲンタイプIIの合成増加を通じた軟骨再生効果を発揮する。
【0085】
より具体的に、本発明による複合組成物は、骨関節炎による膝関節の厚さの減少(図6)、大腿骨関節軟骨内のPGE2の含量の減少(図7)、大腿骨関節軟骨内のCOX‐2免疫反応細胞の数的な減少(図8a)、大腿骨関節軟骨内のTNF‐α免疫反応細胞の数的な減少(図8b)に有効であり、特に、PCP(ザクロ濃縮物)とEC(トチュウ抽出物):AR(ゴシツ抽出物)=4:1、2:1との複合組成物の投与群においては、単独組成物の投与群はもとより、他の割合の複合組成物に比べてもその効果が非常に高かった。また、本発明による複合組成物の投与群においては、有意性のある関節の伸張角度の減少および関節膜上皮の厚さの減少が認められた。ジクロフェナク投与群と略同じ関節の硬さの抑制効果を、外科的に誘発された骨関節炎(OA)ラットにおいて示すことが観察された(図9)。さらに、PCPとEC:AR=4:1、2:1との複合組成物の投与群において、それぞれのPCP、ECおよびARの単独組成物の投与群はもとより、他の割合の複合組成物に比べても有意性のある軟骨形成関係のmRNAの発現の減少の抑制が認められ、PCPとEC:AR=4:1との複合組成物の経口投与は、ジクロフェナク皮下投与群と略同じ大腿骨関節軟骨の軟骨形成関係のmRNAの発現の変化の抑制効果を、外科的に誘発された骨関節炎(OA)ラットにおいて示すことが観察された。さらに、PCPと適切な割合のEC:ARとの複合組成は、PCP、ECおよびARの骨関節炎(OA)に対する抗炎、軟骨細胞の保護および増殖促進効果を通じた軟骨細胞外マトリックスの形成および軟骨膜内抗繊維化効果を相乗的に増加させることが認められ、中でも、PCPとEC:AR=4:1との複合組成物が最も優れた軟骨細胞外マトリックスの形成促進効果を示すことが観察された。のみならず、PCPとEC:AR=4:1、2:1との複合組成物の投与群においては、それぞれのPCP、ECおよびARの単独組成物の投与群はもとより、他の割合の複合組成物に比べても有意性のある大腿骨および硬骨関節軟骨内のコラーゲンタイプII mRNAの発現の増加と関節膜内のコラーゲンタイプII mRNAの発現の減少が認められた(表3)。また、PCPとEC:AR=4:1、2:1、1:1との複合組成物の投与群において、それぞれのPCP、ECおよびARの単独組成物の投与群はもとより、他の割合の複合組成物に比べても有意性のある大腿骨関節軟骨の厚さの増加が認められた。中でも、PCPとEC:AR=4:1との複合組成物が最も優れた関節軟骨の保護効果を示すことが観察された(図10)。さらに、PCPおよびEC:AR 4:1、2:1の複合組成物の投与群において、それぞれのPCP、ECおよびARの単独組成物の投与群はもとより、他の割合の複合組成物に比べても有意性のある大腿骨および硬骨関節の軟骨内のBrdU免疫反応細胞の数的な増加および関節膜内のBrdU免疫反応細胞の数的な減少が認められた。PCPおよびEC:AR 4:1の複合組成物が最も優れた関節軟骨の細胞増殖の促進効果を示すことが観察された(図11)。加えて、PCPと4:1、2:1のEC:ARとの複合組成は、PCP、ECおよびARのMMP活性抑制による軟骨細胞の保護効果を相乗的に増加させ、中でも、PCPとEC:AR=4:1との複合組成物が最も優れたMMP‐2およびMMP‐9活性抑制効果を示すことが観察され、PCPとEC:AR=4:1との複合組成物の経口投与は、ジクロフェナク皮下投与群と略同じMMP‐2およびMMP‐9活性抑制効果を、外科的に誘発された骨関節炎(OA)ラットにおいて示すことが観察された(図12)。
【0086】
ザクロ濃縮物(PCP)、ゴシツ抽出物(EC)およびトチュウ抽出物(AR)の複合組成物は、相乗作用によってそれぞれの単独組成物に比べて優れた骨関節炎の改善などに効果があり、特に、トチュウ抽出物およびゴシツ抽出物の重量比は2:1〜4:1であり、さらに好ましくは、ザクロ濃縮物、トチュウ抽出物およびゴシツ抽出物の重量比は5:2:1〜5:4:1であるときに、顕著に優れた骨関節炎の改善などの効果を発揮する。
【発明の効果】
【0087】
本発明によれば、天然物を有効成分として含むことから、安全性に優れており、特に、骨関節炎による症状の緩和を超えて、損傷された関節軟骨の再生または骨関節の損傷を直接的に治療することができるという効果を有することから、骨関節炎の予防または改善用の組成物として様々な分野(健康機能食品、薬品など)において有効に活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0088】
本明細書に添付される次の図面は、本発明の好適な実施形態を例示するものであり、上述した発明の内容とともに本発明の技術思想をさらに容易に理解させる役割を果たすものであるため、本発明は、これらの図面に記載された事項にのみ限定されて解釈されてはならない。
図1】本発明による複合組成物の製造の一実施形態を図式化したものである。
図2】ザクロ濃縮粉末(PCP)、トチュウの水抽出粉末(EC)、ゴシツの水抽出粉末(AR)、トチュウの酒精抽出粉末(ECe)およびゴシツの酒精抽出粉末(ARe)を関節軟骨細胞に処理した結果の細胞の生存率をグラフで示したものである(各数値は、6回実験の平均±SDを示すものである。*は、LSDテストに従い、対照群と比較してp<0.05のものである。)。
図3a】ザクロ濃縮粉末(PCP)、トチュウの水抽出粉末(EC)、ゴシツの水抽出粉末(AR)、トチュウの酒精抽出粉末(ECe)およびゴシツの酒精抽出粉末(ARe)の処理による関節軟骨細胞におけるPGE2の含量の変化をグラフで示したものである。
図3b】ザクロ濃縮粉末(PCP)、トチュウの水抽出粉末(EC)、ゴシツの水抽出粉末(AR)、トチュウの酒精抽出粉末(ECe)およびゴシツの酒精抽出粉末(ARe)の処理による関節軟骨細胞における5‐LPOの含量の変化をグラフで示したものである(各数値は、6回実験の平均±SDを示すものである。**は、LSDテストに従い、rhIL‐1α処理群と比較してp<0.01のものである。)。
図4a】ザクロ濃縮粉末(PCP)、トチュウの水抽出粉末(EC)、ゴシツの水抽出粉末(AR)、トチュウの酒精抽出粉末(ECe)およびゴシツの酒精抽出粉末(ARe)の処理によるMMP‐2活性抑制効果をグラフで示したものである(各数値は、6回実験の平均±SDを示すものである。**は、LSDテストに従い、rhIL‐1α処理群と比較してp<0.01のものである。)。
図4b】ザクロ濃縮粉末(PCP)、トチュウの水抽出粉末(EC)、ゴシツの水抽出粉末(AR)、トチュウの酒精抽出粉末(ECe)およびゴシツの酒精抽出粉末(ARe)の処理によるMMP‐9活性抑制効果をグラフで示したものである(各数値は、6回実験の平均±SDを示すものである。**は、LSDテストに従い、rhIL‐1α処理群と比較してp<0.01のものである。)。
図5】ザクロ濃縮粉末(PCP)、トチュウの水抽出粉末(EC)、ゴシツの水抽出粉末(AR)、トチュウの酒精抽出粉末(ECe)およびゴシツの酒精抽出粉末(ARe)の処理によるコラーゲンタイプII mRNAの発現量の変化をグラフで示したものである(各数値は、6回実験の平均±SDを示すものである。**は、LSDテストに従い、rhIL‐1α処理群と比較してp<0.01のものである。)。
図6】骨関節炎手術ラットモデルにおいて、ザクロ濃縮粉末(PCP)、トチュウの水抽出粉末(EC)、ゴシツの水抽出粉末(AR)のそれぞれ単独処理乃至複合処理による膝関節の厚さの変化をグラフで示したものである(各数値は、10匹のラット実験の平均±SDを示すものである。)。
図7】骨関節炎手術ラットモデルにおいて、ザクロ濃縮粉末(PCP)、トチュウの水抽出粉末(EC)、ゴシツの水抽出粉末(AR)のそれぞれ単独処理乃至複合処理による大腿骨関節軟骨内のPGE2の含量の変化をグラフで示したものである(各数値は、10匹のラット実験の平均±SDを示すものである。**は、MWテストに従い、骨関節炎対照群と比較してp<0.01のものである。*は、MWテストに従い、骨関節炎対照群と比較してp<0.05のものである。)。
図8a】骨関節炎手術ラットモデルにおいて、ザクロ濃縮粉末(PCP)、トチュウの水抽出粉末(EC)、ゴシツの水抽出粉末(AR)のそれぞれ単独処理乃至複合処理による大腿骨および硬骨関節軟骨と関節膜内のCOX‐2免疫反応細胞の数的な変化をグラフで示したものである(各数値は、10匹のラット実験の平均±SDを示すものである。**は、MWテストに従い、骨関節炎対照群と比較してp<0.01のものである。*は、MWテストに従い、骨関節炎対照群と比較してp<0.05のものである。)。
図8b】骨関節炎手術ラットモデルにおいて、ザクロ濃縮粉末(PCP)、トチュウの水抽出粉末(EC)、ゴシツの水抽出粉末(AR)のそれぞれ単独処理乃至複合処理による大腿骨および硬骨関節軟骨と関節膜内のTNF‐α免疫反応細胞の数的な変化をグラフで示したものである(各数値は、10匹のラット実験の平均±SDを示すものである。**は、MWテストに従い、骨関節炎対照群と比較してp<0.01のものである。*は、MWテストに従い、骨関節炎対照群と比較してp<0.05のものである。)。
図9】骨関節炎手術ラットモデルにおいて、ザクロ濃縮粉末(PCP)、トチュウの水抽出粉末(EC)、ゴシツの水抽出粉末(AR)のそれぞれ単独処理乃至複合処理による関節の硬さの抑制活性の変化を、膝関節の最大伸張角度の変化のグラフで示したものである(各数値は、10匹のラット実験の平均±SDを示すものである。**は、LSDテストに従い、骨関節炎対照群と比較してp<0.01のものである。*は、LSDテストに従い、骨関節炎対照群と比較してp<0.05のものである。)。
図10】骨関節炎手術ラットモデルにおいて、ザクロ濃縮粉末(PCP)、トチュウの水抽出粉末(EC)、ゴシツの水抽出粉末(AR)のそれぞれ単独処理乃至複合処理による大腿骨関節軟骨の厚さの変化をグラフで示したものである(各数値は、10匹のラット実験の平均±SDを示すものである。**は、LSDテストに従い、骨関節炎対照群と比較してp<0.01のものである。*は、LSDテストに従い、骨関節炎対照群と比較してp<0.05のものである。)。
図11】骨関節炎手術ラットモデルにおいて、ザクロ濃縮粉末(PCP)、トチュウの水抽出粉末(EC)、ゴシツの水抽出粉末(AR)のそれぞれ単独処理乃至複合処理による大腿骨関節軟骨内の細胞増殖性の変化を、BrdU免疫反応細胞の変化のグラフで示したものである(各数値は、10匹のラット実験の平均±SDを示すものである。**は、MWテストに従い、骨関節炎対照群と比較してp<0.01のものである。*は、MWテストに従い、骨関節炎対照群と比較してp<0.05のものである。)。
図12a】骨関節炎手術ラットモデルにおいて、ザクロ濃縮粉末(PCP)、トチュウの水抽出粉末(EC)、ゴシツの水抽出粉末(AR)のそれぞれ単独処理乃至複合処理による大腿骨関節軟骨内のMMP‐2およびMMP‐9活性変化グラフを示すものである(各数値は、10匹のラット実験の平均±SDを示すものである。**は、MWテストに従い、骨関節炎対照群と比較してp<0.01のものである。*は、MWテストに従い、骨関節炎対照群と比較してp<0.05のものである。)。
図12b】骨関節炎手術ラットモデルにおいて、ザクロ濃縮粉末(PCP)、トチュウの水抽出粉末(EC)、ゴシツの水抽出粉末(AR)のそれぞれ単独処理乃至複合処理による大腿骨関節軟骨内のMMP‐2およびMMP‐9活性変化グラフを示すものである(各数値は、10匹のラット実験の平均±SDを示すものである。**は、MWテストに従い、骨関節炎対照群と比較してp<0.01のものである。*は、MWテストに従い、骨関節炎対照群と比較してp<0.05のものである。)。
【発明を実施するための形態】
【0089】
以下、本発明の理解への一助となるために実施例などを挙げて詳細に説明する。しかしながら、本発明による実施例は種々の他の形態に変形可能であり、本発明の範囲が下記の実施例に限定されるものと解釈されてはならない。本発明の実施例は当業界において平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0090】
〔1.試験物質の製造〕
ザクロ、トチュウおよびゴシツ抽出物を次の製造工程を通じて製造した。それぞれの原料に対して、次の抽出条件を通じて各2個のロット以上を製造して抽出収率、指標成分の含量、性状などを分析した。
【0091】
〔1.1 ザクロ濃縮粉末の製造〕
ザクロ濃縮物は、次のような方法で製造した。
【0092】
まず、ザクロ1000kgの異物を除去し、割れた果物を分離および洗浄した。分類した原果を切断して皮を剥き、圧着して種子を取り出してザクロ果肉450kgを得た。ろ過の後、100〜105℃において60秒間殺菌し、48〜55℃まで再び冷却させた。ペクチナーゼをザクロジュース1000Lあたりに70〜100ml投入して48〜55℃において30分間でん粉分解した。次いで、濁度および色相を保ち易く、且つ、服用し易い粘度の生成などのために、ザクロジュース10000L当たりにベントナイト900gを投入し、48〜55℃において10分間攪拌した。次いで、1.5mmおよび1mm真空ろ過し、加熱濃縮(順次に、80℃および475mbarにおいて12brixまで、87℃および626mbarにおいて17brixまで、95℃および847mbarにおいて31Brixまで、70℃および312mbarにおいて43Brixまで、且つ、49℃および118mbarにおいて65Brixまで加熱濃縮)した後、再び0.15mmろ過してエラグ酸1.8〜3.0mg/gを含有するザクロ濃縮液を得た。次いで、前記ザクロ濃縮液をデキストリンと9:1の割合で混合した後、スプレイドライ(spray dry)過程を通じてエラグ酸0.5〜2mg/gを含有するザクロ濃縮粉末を製造した。
【0093】
〔1.2 トチュウおよびゴシツ抽出物の製造(図1)〕
トチュウおよびゴシツの抽出物を製造するために、トチュウ乾皮(炒めたもの)およびゴシツ(牛膝、根)の乾燥原物をザーワンハーブ(ソウル、韓国)を通じてそれぞれ購買して使用した。乾燥されたトチュウ乾皮および牛膝をちょうど30kgの量に定量した後、きれいに洗浄し、原物:溶媒=3:20の割合(kg:kg)で抽出機に入れて121℃および0.15Mpaにおいて6時間かけて抽出し、これを繰り返し行って合計で2回抽出した。前記溶媒としては、水または70%エタノール(エタノールまたは酒精アルコール)を使用した。抽出物をろ過して固形分を除去した後、ろ過液を減圧濃縮して25brix(±5brix)の濃縮物を得た。濃縮物:デキストリン=9:1の割合(kg:kg)で混ぜてスプレイドライヤー(spray dryer)を用いて粉末化を行った。粉末化されたそれぞれの抽出物は、指標成分の含量の分析を通じた原料標準化および製造工程の標準化に供し、生体内での(in vitro)実験、試験管内での(in vivo)実験を通じた安全性および有効性の評価に供した。
【0094】
〔1.3 指標成分の含量確認〕
ザクロ濃縮粉末、トチュウ抽出粉末およびゴシツ(牛膝)抽出粉末の指標成分の含量の分析および原料の標準化のために、それぞれの原料に対して2種類以上の原料を用意した。
【0095】
ザクロ濃縮粉末の指標成分は、「エラグ酸(Ellagric acid)」に設定し、トチュウ抽出粉末の指標成分は、「ピノレジノールジグルコシド(Pinoresinol diglucoside)」に設定し、大韓生薬規格集の分析法に従い分析を行い、ゴシツ(牛膝)抽出粉末の指標成分は、「エクジステロン(Ecdysterone)」に設定して分析した。分析に基づき、各抽出粉末別の指標成分の含量を表1にまとめて示す。
【0096】
より具体的に、前記各抽出粉末の指標成分の含量の分析は、次のようにして行った。
【0097】
前記ザクロ濃縮粉末のエラグ酸の定量のために用いた分析法は、下記の通りである。
【0098】
標準溶液の製造のために、適量の標準物質をメタノールで溶解して1.0mg/mLになるように溶かして標準原液にした。前記溶液を震とうして溶かした後、メタノールで希釈して標準溶液にした(例えば、5〜200mg/L)。試験溶液の製造のために、ザクロ濃縮粉末約0.5gを精密に秤量して50mL体積のフラスコに入れ、抽出溶媒(エタノール:蒸留水:塩酸=10:60:8)10mLに溶かした。蓋をし、90℃、1時間かけて水浴中で酸加水分解および抽出を行った。室温まで完全に冷却させた後、メタノールで20mlになるように定容し、0.45μmのPTFEメンブレインフィルターでろ過して試験溶液にした。
【0099】
クロマトグラフィ操作条件は、次の通りであった。検出器としては紫外部吸光度計(測定波長:370nm)を使用し、カラムは、内径4〜6mm、長さ15〜25cmのステンレス鋼管に5〜10μmの液体クロマトグラフ用オクタデシリルシリカゲルを充填した。カラムの温度は、40℃付近の一定の温度であり、移動相として移動相Aおよび移動相Bを有し、段階的または濃度勾配的に制御した。移動相A‐(85%リン酸:メタノール=6:4)、移動相B‐メタノール
エラグ酸の含量(mg/g)={検量線の濃度(μg/ml)×試験溶液の全量(ml)×標準品の純度}/{試料の採取量(α)×100}
前記トチュウ抽出粉末の定量のための生薬規格集の分析法は、下記の通りであった。
【0100】
トチュウ抽出粉末約1.0gを精密に測って希釈させたエタノール(75→100)20mLを入れ、30分間超音波抽出を行った後にろ過して検液にした。別途に、ピノレジノールジグルコシド標準品約10mgを精密に測って希釈させたエタノール(75→100)に溶かしてちょうど100mLにした。この液ちょうど10mLを取って希釈させたエタノール(75→100)でちょうど50mLにして標準液にした。検液および標準液10μLずつをもって次の条件で液体クロマトグラフ法に従い試験して、検液および標準液のピーク面積ATおよびASを測定した。
【0101】
ピノレジノールジグルコシド(C32H42O16)の量(mg)=ピノレジノールジグルコシド標準品の量(mg)×Aγ/Aδ×1/25
クロマトグラフィ操作条件は、次の通りであった。検出器として紫外部吸光度計(測定波長:230nm)を使用し、カラムは、内径4〜6mm、長さ15〜25cmのステンレス鋼管に、5〜10μmの液体クロマトグラフ用オクタデシリルシリカゲルを充填した。カラムの温度は、35℃付近の一定の温度であり、移動相として移動相Aおよび移動相Bを有し、段階的または濃度勾配的に制御した。移動相A‐希釈させたホルム酸(1→1000)、移動相B‐アセトニトリル
前記ゴシツ(牛膝)抽出粉末の定量のために、エクジステロン(Ecdysterone)を指標成分として用いた分析法は、キムら(Analytical science & Technology. 25(4),250−256,2012)に準拠し、より具体的に、下記の通りであった。
【0102】
試料を粉末にした後、50mLの栓付きの試験管に入れ、50%エタノール20mLを加えた。試験管を常温の超音波抽出機に取り付け、90分間抽出した後、3,000rpmにて5分間遠心分離した。上澄み液500μLを取って内部標準品に350ppmのシリング酸100μLを加えた後、0.22μmの膜ろ過器でろ過した液を検液にした。検量線の作成のための標準液は、エクジステロン(ecdysterone)標準品をメタノールに溶かして1mg/mL保存溶液にし、段階別に希釈して使用した。クロマトグラフィ条件は、下記の通りである。移動相は、0.08%ギ酸溶液‐アセトニトリル(85:15.v/v)混合液にして1mL/minの速度で流した。注入量は30μLにしてUV254nmにおいて検出した。カラムの温度は30℃にした。分析法は、ICHガイドラインによって牛膝の指標成分の検量線から直線性を検討し、繰り返し測定の結果から日内および日間の精密度を検討し、その他に正確度と選択性、定量範囲、回収率を決定した。分離された成分の確認のためにLC/MSを使用し、分析条件は、陽イオンモードで噴霧ガス流速50L/min、イオンソース温度600℃、検出器の電圧は2.0kVであった。
【0103】
【表1】
【0104】
〔2.ザクロ濃縮粉末、トチュウ抽出物およびゴシツ(牛膝)抽出物の単独および複合物の効能の評価〕
前記1.1の製造方法に従い製造されたザクロ濃縮粉末、1.2の製造方法に従い製造されたトチュウ抽出物およびゴシツ抽出物の単独または複合物の骨関節炎モデルに対する抗炎および軟骨再生効果を確認した。
【0105】
〔2.1 細胞実験を通じた効能の評価〕
軟骨の採取のために、4〜6週齢の重さが約180〜200gの雄SDラットを頸椎脱骨して、皮膚を消毒し且つ切開した後、関節軟骨を約2〜3mm採取して培養した。培養された軟骨細胞にトチュウおよび牛膝の抽出物を処理してMTTアッセイを通じた細胞毒性能を確認した。
【0106】
ザクロ濃縮粉末、トチュウとゴシツの水抽出物10mg/mlを24時間かけてSDラットから分離して培養した関節軟骨細胞に処置したところ、媒体対照群と比較して有意的な細胞毒性は認められなかったが、トチュウとゴシツの酒精抽出物10mg/ml処理群においては、媒体対照群に比べて有意性のある(p<0.05)細胞生存率の減少がそれぞれ認められた(図2)。
【0107】
炎症性媒介物質であるプロスタグランジンE2(prostaglandin E2(PGE2))の発現の確認のために、培養された軟骨細胞にザクロ、トチュウおよび牛膝の抽出物を処理し、リポポリサッカライド(lipopolysaccaride;LPS)を50μg/ml処理して24時間かけて培養した後、上澄み液を分離してPGE2を測定した。また、5‐リポキシゲナーゼ(5‐lipoxygenase;5‐LO)阻害活性を測定するために、実験動物から分離した軟骨細胞を96ウェルプレートに1×104cells/wellの濃度で10%FBS入りDMEM培養液に分注して12時間かけて安定化させた後、試験物質を濃度別に処理し、LPSを処理して24時間かけて培養した後、上澄み液を分離して5‐LOを測定した。
【0108】
炎症媒介物質であるPGE2の含量およびロイコトリエン(Leukotriene)生合成経路の核心である5‐LPO酵素の活性の測定を通じて、実験物質の抗炎効果を比較検討しようとした。SDラットから分離して培養した関節軟骨細胞に50μg/mlのLPSを処置するときに、媒体対照群に比べて有意性のある(p<0.01)PGE2および5‐LPOの含量の増加が認められたが、LPS対照群に比べて有意性のある(p<0.01)PGE2の含量および5‐LPOの減少がザクロ濃縮粉末、トチュウの酒精抽出物、ゴシツの酒精抽出物、トチュウの水抽出物およびゴシツの水抽出物の順に認められた(図3)。
【0109】
炎症性関節において軟骨および骨の破壊に重要な役割を果たすものがマトリックスメタロプロテアーゼ(Matrix metalloproteinase;MMP)などの蛋白分解酵素であり、MMPは、組織内の拮抗システムによって拮抗される。なお、MMPは、生体内において細胞外マトリックスタンパク質(extracellular matrix protein)として働き、骨関節炎においてはPGの分解と関連性があるため、MMP活性の調節が関節炎の治療において非常に重要であることが知られている。
【0110】
軟骨吸収指標として、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)‐2、9活性の測定のために軟骨細胞に試験物質を濃度別に処理し、rhIL‐1aを処理して24時間かけて培養した後、上澄み液を用いてMMP‐2、9を測定した。
【0111】
本実験において、MMP‐2およびMMP‐9活性を測定したところ、rhIL‐1αによって顕著なMMP‐2および9活性の増加がSDラットから分離して培養した関節軟骨細胞において認められたが、このようなMMP‐2およびMMP‐9活性の増加がザクロ濃縮粉末、トチュウの酒精抽出物、ゴシツの酒精抽出物、トチュウの水抽出物およびゴシツの水抽出物の順に顕著に減少した。このような結果によれば、試験物質がMMP‐2およびMMP‐9活性を抑えるので、軟骨細胞組織の破壊を抑える効果があるものと考えられる(図4)。
【0112】
骨関節炎の炎症性反応を行ったところ、軟骨の恒常性の維持に重要な軟骨細胞の変化および死滅によってコラーゲンタイプII(collagen type II)、アグリカン(aggrecan)、SOX9など細胞外マトリックスの産生が減少し、分解が促されれば、軟骨の基本構造が破壊されて関節は体重負荷に耐えない。このため、軟骨形成の指標として、コラーゲンタイプII(collagen type II)活性の測定を行った。まず、軟骨細胞に試験物質を濃度別に1時間前処理した後、rhIL‐1aを軟骨細胞に2時間かけて処理した後、細胞を収集してRT‐PCRを通じて発現を確認した。rhIL‐1αによって顕著なコラーゲンタイプII mRNAの発現の減少がSDラットから分離して培養した関節軟骨細胞において確認されたが、このような軟骨細胞外マトリックスと関連するコラーゲンタイプII mRNAの発現がザクロ濃縮粉末、トチュウの酒精抽出物、ゴシツの酒精抽出物、トチュウの水抽出物およびゴシツの水抽出物の順に顕著に増加した。このような結果は、試験物質が軟骨細胞による細胞外マトリックスの産生を促して、軟骨組織を保存する効果があるものと考えられる(図5)。
【0113】
〔2.2 動物実験を通じた効能の評価〕
以下では、ザクロ濃縮粉末(PCP)と、トチュウの水抽出粉末(EC)およびゴシツの水抽出粉末(AR)の単独または複合組成物の骨関節炎の改善効果を評価した。現在、代表的な骨関節炎(OA)実験動物モデルとして用いられている前十字靭帯切除および内側半月板部分切除術(anterior cruciate ligament transaction and partial medial meniscectomy)で誘発した骨関節炎(OA)ラット[Kim et al.,2012;Kang et al.,2014a;Moon et al.,2014;Choi et al.,2015]を用いて評価した。すなわち、骨関節炎(OA)手術を施してから6日後からPCP、ECおよびARの単独組成物、9種のPCPと、ECおよびARとの複合組成物(合計で200mgの複合組成のうちPCP(100mg)と所定の割合のEC:AR=1:1、1:2、1:4、1:6、1:8、2:1、4:1、6:1および8:1の複合組成物(100mg、表2))をそれぞれ滅菌蒸留水に溶解して、5ml/kgの容量(200mg/kg)で毎日1回ずつ28日間経口投与し、体重、膝関節(knee joint)の厚さの変化を28日間観察し、最終剖検の際に膝関節の厚さの変化とともに大腿骨関節軟骨内のPGE2の含量、MMP‐2、コラーゲンタイプII mRNAの発現をそれぞれ分析し、関節軟骨の厚さ、硬骨関節軟骨のシクロオキシゲナーゼ(cyclooxygenase;COX)‐2および腫瘍壊死因子(tumor necrosis factor;TNF)‐α免疫反応細胞の数的な変化もまたそれぞれ観察した[Moore et al.2005;Kim et al.,2012;Kang et al.,2014a;Choi et al.,2015]。本実験を通じて、ザクロ濃縮粉末、トチュウ抽出物およびゴシツ抽出物それぞれの抗炎および軟骨再生効能を評価した。
【0114】
また、それぞれのザクロ濃縮粉末(PCP)と、トチュウの水抽出粉末(EC)およびゴシツの水抽出粉末(AR)の単独組成物と比較して、同時に統計学的に有意性のある(p<0.01またはp<0.05)薬効の相乗を示す複合組成物を、相乗効果を示すザクロ濃縮粉末、トチュウ抽出粉末および牛膝抽出粉末の複合組成物と見なし、実験においては、骨関節炎(OA)実験の一般的な対照薬物として知られているジクロフェナクナトリウム[Kim et al.,2012;Kang et al.,2014a;Moon et al.,2014;Choi et al.,2015]における結果と比較評価した。
【0115】
170匹の健常なSPF/VAF Outbred Crl:CD[スプラーグドーリー;SD]雄ラット(オリエントバイオ、城南市、韓国)[ANNEX I、II]を7日間馴化させた後、骨関節炎(OA)または偽手術を施した後、手術を施してから6日後に体重(偽手術群平均264.40±19.48g、222〜283g;骨関節炎(OA)誘発群平均253.98±13.77g、222〜301g)および膝関節の厚さ(偽手術群平均10.00±0.35mm、9.52〜10.57mm;骨関節炎(OA)誘発群13.44±0.59mm、12.50〜16.38mm)を基準として、1群当たりに10匹ずつ、下記のように合計で12個の群を選別して実験に供し、本動物実験は、大丘漢医大学動物実験倫理委員会の事前承認下で行った(表2)。
【0116】
【表2】
【0117】
実験物質の組成および投与:
適正量のPCP、ECまたはARを滅菌蒸留水に溶解し、5ml/kgの容量で骨関節炎(OA)手術を施してから7日後から、毎日1回ずつ28日間経口投与した。すなわち、PCP、ECおよびARの単独組成物、PCPとEC:AR=1:1、1:2、1:4、1:6、1:8、2:1、4:1、6:1、8:1との複合組成物200mg/kgをそれぞれ28日間経口投与し、偽手術(sham)および骨関節炎(OA)対照群においては実験物質の代わりに媒体である滅菌蒸留水のみを同じ容量で同じ期間の間に経口投与し、2mgのジクロフェナクナトリウム(diclofenac sodium)(和光純薬工業株式会社、大阪、日本国)を5mlの滅菌生理食塩水に溶解して、5ml/kgの容量(2mg/kg)で骨関節炎(OA)手術を施してから7日後から毎日1回ずつ28日間背側皮膚に皮下投与した。複合組成物の投与容量は、ラットの体表面積を考慮して、人間臨床予定容量2,000mgの6倍、すなわち、2,000mg/60kg×6=200mg/kgに選定し、PCP、ECおよびARの単独組成物の容量もまた、直接的な薬効の比較評価のために、200mg/kgにそれぞれ選定した。複合組成物5mlの半分をPCP(100mg)に選定し、EC:ARの割合をそれぞれ1:1、1:2、1:4、1:6、1:8、2:1、4:1、6:1および8:1(50:50、33:67、20:80、14:86、11:89、67:33、80:20、86:14および89:11(mg:mg))に調節して、9種の複合組成物を選定した。複合組成物は、適切量のPCP、ECおよびARを同時に溶解して製造し、最小限週1回製造して、4℃の冷蔵庫に保管しながら使用した。単独組成物は、200mgのPCP、ECおよびARをそれぞれ5mlの滅菌蒸留水に溶解して製造し、最小限週1回製造して、4℃の冷蔵庫に保管しながら使用した。
【0118】
骨関節炎(OA)の誘発:
実験動物に、2〜3%イソフルラン(ハナ製薬株式会社、華城市、韓国)と70%N2Oおよび28.5%O2の混合ガスを吸入させて全身麻酔を誘導した後、1〜1.5%イソフルランと70%N2Oおよび28.5%O2の混合ガスで麻酔を維持しながら、左側関節嚢を露出させ、前十字靭帯切除および内側半月板の部分切除を行って骨関節炎(OA)を誘発した。Sham手術群においては関節嚢を切除して内側半月板を確認した後、切除せずに関節嚢を閉鎖した。
【0119】
〔2.2.1 骨関節炎(OA)が誘導されたモデルにおける骨関節の改善効果〕
骨関節炎(OA)は、代表的な慢性炎症性疾患であり、骨関節炎(OA)の際にCOX‐2および5‐LPOの発現が増加することに伴い、IL‐1、TNF‐αなどによって影響を受けてPGE2およびロイコトリエン(Leukotriene)が産生され、これによって、軟骨の損傷とともに周りの関節の浮腫による関節の厚さの顕著な増加とともに非正常的な骨成長および痛症を示すことが知られている[Sailer et al.,1998;Vane et al.,1998;Bensen et al.,1999;Guo et al.,2006;Hardy et al.,2002;Nam et al.,2014]。このため、本実験においては、骨関節炎(OA)手術を施してから6日後、偽手術対照群に比べて顕著な効果を示した実験動物(偽手術群平均10.00±0.35mm、9.52〜10.57mm;骨関節炎(OA)誘発群13.44±0.59mm、12.50〜16.38mm)のみを選別して使用し、これらの実験動物には大腿骨および硬骨関節軟骨の厚さの減少とともにCOX‐2およびTNF‐α免疫反応細胞の数的な増加が認められた。また、これとともに、大腿骨PGE2の含量、5‐LPO活性の増加もまたそれぞれ認められた。一方、骨関節炎(OA)関係の炎症反応の増加がそれぞれPCP、ECおよびARの単独組成物、9種の全てのPCPとEC:ARとの複合組成物の28日に亘っての連続経口投与によって顕著に抑えられ、特に、PCPとEC:AR=4:1、2:1、1:1との複合組成物の投与群の順に、それぞれのPCP、ECおよびARの単独組成物の投与群に比べても有意性のある骨関節炎の治療効果が認められた。このような結果は、PCPとEC:AR=4:1、2:1、1:1との複合組成物は、骨関節炎(OA)に対するPCP、ECおよびARの抗炎効果を相乗的に増加させる証拠であると判断され、中でも、PCPとEC:AR=4:1との複合組成物が最も優れた骨関節炎の改善効果を示すことが観察され、PCPとEC:AR=4:1との複合組成物200mg/kgの経口投与は、ジクロフェナクナトリウム2mg/kgの皮下投与群と略同じ抗炎効果を、外科的に誘発された骨関節炎(OA)ラットにおいて示すことが観察された。
【0120】
〔イ.膝関節の厚さの変化〕
本実験において、骨関節炎(OA)手術を施してから6日後、偽手術対照群に比べて顕著な膝関節の厚さの増加を示した実験動物のみを選別して使用したため(偽手術群平均10.00±0.35mm、9.52〜10.57mm;骨関節炎(OA)誘発群平均13.44±0.59mm、12.50〜16.38mm)、骨関節炎(OA)対照群においては、偽手術対照群に比べて有意性のある(p<0.01)膝関節の厚さの増加が骨関節炎(OA)手術を施してから6日後から実験の全期間に亘って認められた。一方、骨関節炎(OA)対照群と比較して有意性のある(p<0.01またはp<0.05)膝関節の厚さの減少が、ジクロフェナク、ARの単独組成物、PCPとEC:AR=1:2、1:8、2:1、4:1との複合組成物の投与群において観察されたが、特に、PCPとEC:AR=2:1、4:1との複合組成物の投与群においては、それぞれ3種類の単独組成物の投与群に比べても有意性のある(p<0.01またはp<0.05)膝関節の厚さの減少が、投与を始めてから7日後から認められ始め、投与を始めてから27日後からそれぞれ3種類の単独組成物の投与群に比べても有意性のある(p<0.01またはp<0.05)膝関節の厚さの減少が認められた(図6)。
【0121】
〔ロ.大腿骨関節軟骨内のPGE2の含量の変化〕
OA対照群においては、偽手術対照群に比べて有意性のある(p<0.01)大腿骨関節軟骨内のPGE2の含量の増加を示した。ARの単独組成物の投与群をはじめとする全ての投与群においては、骨関節炎(OA)対照群に比べて有意性のある(p<0.01またはp<0.05)大腿骨関節軟骨内のPGE2の含量の減少が認められたが、特に、PCPとEC:AR=4:1、2:1との複合組成物の投与群において、それぞれのPCP、ECおよびARの単独組成物の投与群はもとより、他の割合の複合組成物の投与群に比べても有意性のある(p<0.01またはp<0.05)大腿骨関節軟骨内のPGE2の含量の減少が認められた(図7)。
【0122】
OA対照群においては、偽手術対照群に比べて有意性のある(p<0.01)大腿骨関節軟骨内のCOX‐2免疫反応細胞の増加をそれぞれ示した。ECの単独組成物の投与群をはじめとする全ての投与群においては、骨関節炎(OA)対照群に比べて有意性のある(p<0.01またはp<0.05)大腿骨関節軟骨内のCOX‐2免疫反応細胞の数的な減少がそれぞれ認められたが、特に、PCPとEC:AR=4:1、2:1との複合組成物の投与群の方が、それぞれのPCP、ECおよびARの単独組成物の投与群はもとより、他の割合の複合組成物の投与群に比べても有意性のある(p<0.01またはp<0.05)大腿骨関節軟骨内のCOX‐2免疫反応細胞の数的な減少が認められた(図8)。
【0123】
OA対照群においては、偽手術対照群に比べて有意性のある(p<0.01)大腿骨関節軟骨内のTNF‐α免疫反応細胞の増加をそれぞれ示した。ARの単独組成物の投与群をはじめとする全ての投与群においては、骨関節炎(OA)対照群に比べて有意性のある(p<0.01)大腿骨関節軟骨内のTNF‐α免疫反応細胞の数的な減少がそれぞれ認められたが、特に、PCPとEC:AR=4:1、2:1との複合組成物の投与群において、それぞれのPCP、ECおよびARの単独組成物の投与群はもとより、他の割合の複合組成物の投与群に比べても有意性のある(p<0.01)大腿骨関節軟骨内のTNF‐α免疫反応細胞の数的な減少が認められた(図8)。
【0124】
〔2.2.2 硬さ抑制活性の測定〕
骨関節炎(OA)の際には、慢性炎症による繊維化が進むことに伴い、誘発された関節の運動性が非常に大きな制限を受けてしまう。このため、関節の最大の伸張角度は、このような運動性を評価する上で最も基本的な指標として用いられている。伸張角度が低くなればなるほど、高い運動性を示す[Rezende et al.,2006;Kim et al.,2012;Kang et al.,2014a;Moon et al.,2014;Choi et al.,2015]。
【0125】
本実験の結果、骨関節炎(OA)対照群の場合、正常対照群に比べて顕著な膝関節の最大伸張角度の増加が認められて、手術による骨関節炎(OA)が比較的に上手く誘発されたものと判断された。また、繊維化による関節の硬さの一環として関節膜の細胞増殖による表面上皮の肥厚および増殖が認められた[Permuy et al.,2015ab]。一方、このような骨関節炎(OA)による関節の伸張角度の増加、関節膜の表面上皮の組織学的な肥厚の所見がPCP、ECおよびARの単独組成物、9種の全てのPCPとEC:ARとの複合組成物の28日に亘っての連続経口投与によって抑えられたが、特に、PCPとEC:AR=4:1、2:1との複合組成物の投与群において、それぞれのPCP、ECおよびARの単独組成物の投与群はもとより、他の割合の複合組成物に比べても有意性のある関節の伸張角度の減少および関節膜の上皮の厚さの減少が認められた。したがって、PCPとEC:AR=4:1との複合組成物が最も優れた関節の硬さの抑制効果を示すことが観察され、PCPとEC:AR=4:1との複合組成物の200mg/kgの経口投与は、ジクロフェナクの2mg/kgの皮下投与群と略同じ関節の硬さの抑制効果を、外科的に誘発された骨関節炎(OA)ラットにおいて示すことが観察された(図9)。
【0126】
〔2.2.3 軟骨再生および保護効果〕
軟骨の細胞外マトリックスは、主としてコラーゲン、グリコサミノグリカン(Glycosaminoglycan)およびアグリカン(aggrecan)などのPGによって構成されており[Innes et al.,2013;Qin et al.,2013;Na et al.,2014]、SOX9は、軟骨細胞の分化に必須的な転写因子であることが知られている[Mundlos and Olsen,1997]。骨関節炎(OA)では、炎症性反応の結果、軟骨の恒常性維持に重要な軟骨細胞の変化および死滅によってコラーゲンタイプII(collagen type II)、アグリカン(aggrecan)、SOX9などの細胞外マトリックスの産生が減少し、分解が促されれば、軟骨の基本構造が破壊されて関節は体重負荷に耐えず、炎症および痛症を伴うため[Guzman et al.,2003]、これらの細胞外マトリックスの消失の抑制は、骨関節炎(OA)の治療に重要な標的の一つとして活用されてきた[Rai et al.,2011;Innes et al.,2013;Warnock et al.,2014]。
【0127】
本実験の結果においても、軟骨細胞外マトリックスの構成成分であるコラーゲンタイプIIに対するmRNAの発現の減少が大腿骨関節軟骨において認められ、骨関節炎(OA)の際に招かれる関節の繊維化および硬さ[Rezende et al.,2006;Kim et al.,2012;Kang et al.,2014a;Moon et al.,2014;Choi et al.,2015]の一環であると考えられるコラーゲンタイプII mRNAの発現の増加が関節膜において認められた。
【0128】
一方、PCP、ECおよびARの単独組成物、9種の全てのPCPとEC:ARとの複合組成物の28日に亘っての連続経口投与によって、骨関節炎(OA)による軟骨形成関係のmRNAの発現の減少の抑制が確認されたが、特に、PCPとEC:AR=4:1、2:1との複合組成物の投与群において、それぞれのPCP、ECおよびARの単独組成物の投与群はもとより、他の割合の複合組成物に比べても有意性のある軟骨形成関係のmRNAの発現の減少の抑制が認められ、PCPとEC:AR=4:1との複合組成物の200mg/kgの経口投与は、ジクロフェナクの2mg/kgの皮下投与群と略同じ大腿骨関節軟骨の軟骨形成関係のmRNAの発現の変化の抑制効果を、外科的に誘発された骨関節炎(OA)ラットにおいて示すことが観察された。したがって、PCPと適切な割合のEC:ARとの複合組成は、PCP、ECおよびARの骨関節炎(OA)に対する抗炎、軟骨細胞保護および増殖促進効果を通じた軟骨細胞外マトリックスの形成および軟骨膜内の抗繊維化効果を相乗的に増加させる証拠であると判断され、中でも、PCPとEC:AR=4:1との複合組成物が最も優れた軟骨細胞外マトリックスの形成促進効果を示すことが観察された。ジクロフェナク皮下投与群において認められた大腿骨および硬骨関節軟骨内のコラーゲンタイプII、SOX9およびアグリカンに対するmRNAの発現の増加は、BrdU免疫反応細胞の増加が伴われないことから、ジクロフェナクの抗炎効果による軟骨細胞保護効果に由来する二次的な変化であると判断される。
【0129】
〔イ.大腿骨関節軟骨内のコラーゲンタイプII mRNAの発現の変化〕
OA対照群においては、偽手術対照群に比べて有意性のある(p<0.01)大腿骨および硬骨関節軟骨内のコラーゲンタイプII mRNAの発現の減少とともに、関節膜内のコラーゲンタイプII mRNAの発現の有意性のある(p<0.01)増加をそれぞれ示した。
【0130】
単独組成物をはじめとする全ての投与群においては、骨関節炎(OA)対照群に比べて有意性のある(p<0.01またはp<0.05)大腿骨および硬骨関節軟骨内のコラーゲンタイプII mRNAの発現の増加と、関節膜内のコラーゲンタイプII mRNAの発現の減少がそれぞれ認められたが、特に、PCPとEC:AR=4:1、2:1との複合組成物の投与群においては、それぞれのPCP、ECおよびARの単独組成物の投与群はもとより、他の割合の複合組成物に比べても有意性のある(p<0.01またはp<0.05)大腿骨および硬骨関節軟骨内のコラーゲンタイプII mRNAの発現の増加と、関節膜内のコラーゲンタイプII mRNAの発現の減少が認められた(表3)。
【0131】
【表3】
【0132】
〔ロ.大腿骨関節軟骨の厚さの変化〕
骨関節炎(OA)の際には、関節軟骨の損傷による顕著な関節軟骨の厚さの減少が伴われる[Moore et al.,2005;Patel et al.,2005;Cao et al.,2006;Kim et al.,2012;Kang et al.,2014a;Moon et al.,2014;Choi et al.,2015]。
【0133】
本実験の結果、PCP、ECおよびARの単独組成物、9種の全てのPCPとEC:ARとの複合組成物の28日に亘っての連続経口投与によって、骨関節炎(OA)による硬骨関節軟骨の厚さの減少の所見が抑えられたが、特に、PCPとEC:AR=4:1、2:1、1:1との複合組成物の投与群において、それぞれのPCP、ECおよびARの単独組成物の投与群はもとより、他の割合の複合組成物に比べても有意性のある大腿骨関節軟骨の厚さの増加が認められた。このような結果によれば、PCPとEC:AR=4:1との複合組成物が最も優れた関節軟骨の保護効果を示すことが観察された(図10)。
【0134】
〔ハ.大腿骨関節軟骨内の細胞増殖性の変化‐BrdU免疫反応細胞の変化〕
BrdUの取り込みおよび一次抗体を用いた検出方法は、細胞の増殖有無を判断する上で最も頻繁に用いられてきた方法である[Ganey et al.,2003;Moore et al.,2005;Kim et al.,2012;Kang et al.,2014a;Moon et al.,2014;Choi et al.,2015]。取り込んだBrdUを含有する細胞は、新たに増殖した細胞または増殖が盛んに行われる細胞を意味する。
【0135】
本実験の結果、骨関節炎(OA)対照群においては、偽手術対照群に比べて顕著なBrdU免疫反応細胞の数的な減少が、大腿骨および硬骨関節軟骨において認められ、炎症細胞浸潤および増殖性繊維化の一環であると認められるBrdU免疫反応細胞の増加が、関節膜において認められた。ジクロフェナク投与群においては、骨関節炎(OA)対照群に比べて抗炎効果の一環であると判断されるBrdU免疫反応細胞の数的な減少が、関節膜において認められたのに対し、骨関節炎(OA)対照群と略同じBrdU免疫反応細胞の数的な変化を、大腿骨および硬骨関節軟骨において示した。PCP、ECおよびARの単独組成物、9種の全てのPCPとEC:ARとの複合組成物の投与群においては、軟骨細胞の増殖を意味する、骨関節炎(OA)対照群に比べて有意性のある硬骨および大腿骨関節軟骨内のBrdU免疫反応細胞の数的な増加と、抗炎効果を意味するBrdU免疫反応細胞の数的な減少が、関節膜において認められたが、特に、PCPとEC:AR=4:1、2:1との複合組成物の投与群において、それぞれのPCP、ECおよびARの単独組成物の投与群はもとより、他の割合の複合組成物に比べても有意性のある大腿骨および硬骨関節軟骨内のBrdU免疫反応細胞の数的な増加および関節膜内のBrdU免疫反応細胞の数的な減少が認められた。PCPとEC:AR=4:1との複合組成物が最も優れた関節軟骨細胞の増殖促進効果を示すことが観察された(図11)。
【0136】
〔ニ.大腿骨関節軟骨内のMMP‐2およびMMP‐9活性の変化〕
炎症性関節において軟骨および骨の破壊に重要な役割を果たすものがMMPなどの蛋白分解酵素であり、MMPは組織内の拮抗システムによって拮抗される[Bresnihan,1999]。なお、MMPは、生体内において細胞外マトリックスタンパク質として働き、骨関節炎においてはPGの分解と関連性があるため[Nagasa and Woessner,1999]、MMP活性の調節が関節炎の治療において非常に重要であることが知られている[Halliwell,2000;Na et al.,2014]。
【0137】
本実験の骨関節炎(OA)対照群において、大腿骨関節軟骨内のMMP‐2およびMMP‐9活性の増加が認められた。PCP、ECおよびARの単独組成物、9種の全てのPCPとEC:ARとの複合組成物の28日に亘っての連続経口投与によって、このようなMMP‐2およびMMP‐9活性の増加が抑えられたが、特に、PCPとEC:AR=4:1、2:1との複合組成物の投与群において、それぞれのPCP、ECおよびARの単独組成物の投与群はもとより、他の割合の複合組成物に比べても有意性のあるMMP‐2およびMMP‐9活性の減少が、大腿骨関節軟骨において認められた。
【0138】
したがって、PCPと4:1、2:1のEC:ARとの複合組成は、PCP、ECおよびARのMMP活性の抑制による軟骨細胞の保護効果を相乗的に増加させる証拠であると判断され、中でも、PCPとEC:AR=4:1との複合組成物が最も優れたMMP‐2およびMMP‐9活性の抑制効果を示すことが観察され、PCPとEC:AR=4:1との複合組成物の200mg/kgの経口投与は、ジクロフェナク2mg/kgの皮下投与群と略同じMMP‐2およびMMP‐9活性抑制効果を、外科的に誘発された骨関節炎(OA)ラットにおいて示すことが観察された(図12)。
【0139】
〔ホ.ウェスタンオンタリオおよびマクマスター大学関節症指数(Western Ontario and McMaster Universities Arthritis index;WOMAC)を通じた骨関節炎対象者に対する骨関節炎の改善効果の確認〕
骨関節炎の改善効果を確認するために、ゴシツ、トチュウおよびザクロなどの複合物を韓国の骨関節炎と診断された対象者を基準として、500mg/日、1000mg/日の濃度で12週間の人体適用試験を通じて、関節痛症、関節の硬さおよび日常生活の不便さに対して効能の評価を行ったところ、関節痛症、関節の硬さおよび日常生活における不便さなど全項目において有意的な改善があることを確認した。
図1
図2
図3a
図3b
図4a
図4b
図5
図6
図7
図8a
図8b
図9
図10
図11
図12a
図12b