(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る眼科用顕微鏡システムの実施形態の例について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、この明細書で引用された文献の内容や任意の公知技術を、本発明の実施形態に援用できる。
【0012】
眼科用顕微鏡システムは、眼科分野における診療や手術において患者眼の拡大像を観察(撮影)するために使用される。観察対象部位は、患者眼の任意の部位であってよく、たとえば、前眼部においては角膜や隅角や硝子体や水晶体や毛様体などであってよく、後眼部においては網膜や脈絡膜や硝子体であってよい。また、観察対象部位は、瞼や眼窩など眼の周辺部位であってもよい。眼科用顕微鏡システムは、患者眼を拡大観察するための機能に加えてOCT機能を備える。
【0013】
以下の実施形態の眼科用顕微鏡システムはグリノー式実体顕微鏡を備えているが、他の実施形態ではガリレオ式実体顕微鏡を備えていてよい。グリノー式実体顕微鏡は、左右の光学系が個別の対物レンズを備えている点や、左右の光軸が非平行である点を特徴とし、立体像を得やすい、設計の自由度が高いといった利点を有する。一方、ガリレオ式実体顕微鏡は、左右の光学系が共通の対物レンズを備えている点や、左右の光軸が平行である点を特徴とし、他の光学系や光学素子を組み合わせ易いといった利点を有する。
【0014】
[構成]
実施形態に係る眼科用顕微鏡システムの構成を
図1〜
図5に示す。
図1〜
図3は光学系の構成を示す。
図1は後眼部を観察するときの光学系を示し、
図2は前眼部を観察するときの光学系を示す。
図3は、OCT機能を提供するための光学系を示す。
図4及び
図5は処理系の構成を示す。また、
図6A〜
図6Cは、処理系に予め記憶された情報を示す。
【0015】
眼科用顕微鏡システム1は、照明系10(10L、10R)と、受光系20(20L、20R)と、接眼系30(30L、30R)と、照射系40と、OCT部60とを備える。後眼部(網膜等)を観察するときには、患者眼Eの直前に前置レンズ90が配置される。なお、
図1に示すような非接触の前置レンズ90の代わりにコンタクトレンズ等を用いることが可能である。また、隅角を観察するときにはコンタクトミラー(三面鏡等)等を用いることができる。
【0016】
(照明系10)
照明系10は、患者眼Eに照明光を照射する。図示は省略するが、照明系10は、照明光を発する光源や、照明野を規定する絞りや、レンズ系などを含む。照明系の構成は、従来の眼科装置(たとえばスリットランプ顕微鏡、眼底カメラ、レフラクトメータ等)と同様であってよい。
【0017】
本実施形態の照明系10L及び10Rは、それぞれ受光系20L及び20Rと同軸に構成されている。具体的には、観察者の左眼E
0Lに提示される像を取得するための左受光系20Lには、たとえばハーフミラーからなるビームスプリッタ11Lが斜設されている。ビームスプリッタ11Lは、左受光系20Lの光路に左照明系10Lの光路を結合している。左照明系10Lから出力された照明光は、ビームスプリッタ10Lにより反射され、左受光系20Lと同軸で患者眼Eを照明する。同様に、観察者の右眼E
0Rに提示される像を取得するための右受光系20Rには、右受光系20Rの光路に右照明系10Rの光路を結合するビームスプリッタ11Rが斜設されている。
【0018】
受光系20L(20R)の光軸に対する照明光の位置を変更可能に構成することができる。この構成は、たとえば、従来の眼科手術用顕微鏡と同様に、ビームスプリッタ11L(11R)に対する照明光の照射位置を変更するための手段を設けることにより実現される。
【0019】
本例では、対物レンズ21L(21R)と患者眼Eとの間にビームスプリッタ11L(11R)が配置されているが、照明光の光路が受光系20L(20R)に結合される位置は、受光系20L(20R)の任意の位置でよい。また、照明系と受光系とが非同軸に配置されてもよい。この構成は、スリットランプ顕微鏡が含まれる場合などに適用される。
【0020】
(受光系20)
本実施形態では、左右一対の受光系20L及び20Rが設けられている。左受光系20Lは、観察者の左眼E
0Lに提示される像を取得するための構成を有し、右受光系20Rは、右眼E
0Rに提示される像を取得するための構成を有する。左受光系20Lと右受光系20Rは同じ構成を備える。左受光系20L(右受光系20R)は、対物レンズ21L(21R)と、結像レンズ22L(22R)と、撮像素子23L(23R)とを含む。
【0021】
なお、結像レンズ22L(22R)が設けられていない構成を適用することも可能である。本実施形態のように結像レンズ22L(22R)が設けられている場合、対物レンズ21L(21R)と結像レンズ22L(22R)との間をアフォーカルな光路(平行光路)とすることができ、フィルタ等の光学素子を配置することや、光路結合部材を配置して他の光学系からの光路を結合することが容易になる(すなわち、光学的構成の自由度や拡張性が向上される)。
【0022】
符号AL1は、左受光系20Lの対物レンズ21Lの光軸(対物光軸)を示し、符号AR1は、右受光系20Rの対物レンズ21Rの光軸(対物光軸)を示す。受光素子23L(23R)は、たとえばCCDイメージセンサやCMOSイメージセンサ等のエリアセンサである。
【0023】
以上は、患者眼Eの後眼部(眼底)を観察するときの受光系20の構成である(
図1)。一方、前眼部を観察するときには、
図2に示すように、対物レンズ21L(21R)に対して患者眼E側の位置に、フォーカスレンズ24L(24R)とウェッジプリズム25L(25R)とが配置される。本例のフォーカスレンズ24L(24R)は凹レンズであり、対物レンズ21L(21R)の焦点距離を延長するように作用する。ウェッジプリズム25L(25R)は、左受光系20L(右受光系20R)の光路(対物光軸AL1(AR1))を所定角度だけ外側に偏向する(符号AL2及びAR2で示す)。このように、フォーカスレンズ24L及びウェッジプリズム25Lが左受光系20Lに配置され、かつ、フォーカスレンズ24R及びウェッジプリズム25Rが右受光系20Rに配置されることにより、後眼部観察用の焦点位置F1から前眼部観察用の焦点位置F2に切り替えられる。
【0024】
フォーカスレンズとして凸レンズを用いることが可能である。その場合、フォーカスレンズは、後眼部観察時に光路に配置され、前眼部観察時に光路から退避される。フォーカスレンズの挿入/退避によって焦点距離を切り替える代わりに、たとえば光軸方向に移動可能なフォーカスレンズを設けることにより焦点距離を連続的又は段階的に変更できるように構成することが可能である。
【0025】
図2に示す例では、ウェッジプリズム25L(25R)の基底方向は外側である(つまりベースアウト配置である)が、ベースイン配置のウェッジプリズムを用いることができる。その場合、ウェッジプリズムは、後眼部観察時に光路に配置され、前眼部観察時に光路から退避される。ウェッジプリズムの挿入/退避によって光路の方向を切り替える代わりに、プリズム量(及びプリズム方向)が可変なプリズムを設けることにより光路の向きを連続的又は段階的に変更できるように構成することが可能である。
【0026】
(接眼系30)
本実施形態では、左右一対の接眼系30L及び30Rが設けられている。左接眼系30Lは、左受光系20Lにより取得された患者眼Eの像を観察者の左眼E
0Lに提示するための構成を有し、右接眼系30Rは、右受光系20Rにより取得された患者眼Eの像を右眼E
0Rに提示するための構成を有する。左接眼系30Lと右接眼系30Rは同じ構成を備える。左接眼系30L(右接眼系30R)は、表示部31L(31R)と、接眼レンズ系32L(32R)とを含む。
【0027】
表示部31L(31R)は、たとえばLCD等のフラットパネルディスプレイである。表示部31L(31R)の表示面のサイズは、たとえば(対角線長)7インチ以下とされる。左右一対の接眼系30L及び30Rに設けられる表示デバイスの画面サイズは、観察者の眼幅(瞳孔間距離等)や、装置のサイズや、装置の設計(光学系や機構の配置等)などに制約を受ける。すなわち、このような制約条件と見掛け視野の広さはトレードオフの関係にある。このような観点から、表示部31L及び31Rの画面サイズの最大値は7インチ程度と考えられる。なお、接眼レンズ系32L及び32Rの構成や機構の配置を工夫することにより、7インチを超える画面サイズの表示部31L及び31Rを適用することができ、或いは、小サイズの表示部31L及び31Rを適用することができる。
【0028】
左接眼系30Lと右接眼系30Rとの間隔を変更することが可能である。それにより、左接眼系30Lと右接眼系30Rとの間隔を観察者の眼幅に応じて調整することができる。また、左接眼系30Lと右接眼系30Rとの相対的向きを変更することが可能である。つまり、左接眼系30Lの光軸と右接眼系30Rの光軸とがなす角度を変更することが可能である。それにより、両眼E
0L及びE
0Rの輻輳を誘発することができ、観察者による立体視を支援することができる。
【0029】
(照射系40)
照射系40は、OCT計測を行うための光(測定光)を、受光系20の対物光軸(AL1及びAR1、並びにAL2及びAR2)と異なる方向から患者眼Eに照射する。他の実施形態において、照射系は、OCTのための測定光に加え、他の光を患者眼に照射可能であってよい。その具体例として、レーザ治療のための光(照準光、治療用レーザ光)がある。
【0030】
照射系40は、光スキャナ41と、結像レンズ42と、リレーレンズ43と、偏向ミラー44とを含む。光スキャナ41にはOCT部60からの光が導かれる。
【0031】
OCT部60からの光(測定光)は、光ファイバ51により導かれ、そのファイバ端面から出射する。このファイバ端面に臨む位置には、コリメートレンズ52が配置されている。コリメートレンズ52によって平行光束とされた測定光は、光スキャナ41に導かれる。
【0032】
光スキャナ41は、2次元光スキャナであり、水平方向(x方向)へ光を偏向するxスキャナ41Hと、垂直方向(y方向)へ光を偏向するyスキャナ41Vとを含む。xスキャナ41H及びyスキャナ41Vは、それぞれ任意の形態の光スキャナであってよく、たとえばガルバノミラーが使用される。光スキャナ41は、たとえば、コリメートレンズ52の射出瞳位置又はその近傍位置に配置される。更に、光スキャナ41は、たとえば、結像レンズ42の入射瞳位置又はその近傍位置に配置される。
【0033】
本例のように2つの1次元光スキャナを組み合わせて2次元光スキャナを構成する場合、2つの1次元光スキャナは所定距離(たとえば10mm程度)だけ離れて配置されるので、たとえば、いずれかの1次元光スキャナを上記射出瞳位置及び/又は上記入射瞳位置に配置することができる。
【0034】
結像レンズ42は、光スキャナ41を通過した平行光束(測定光)を一旦結像させる。更に、この測定光を患者眼E(眼底、角膜等の観察部位)において再結像させるために、この光をリレーレンズ43によりリレーし、偏向ミラー44により患者眼Eに向けて反射する。
【0035】
照射系40により導かれてきた測定光が受光系20の対物光軸(AL1及びAR1、並びにAL2及びAR2)と異なる方向から患者眼Eに照射されるように、偏向ミラー44の位置は予め決定されている。本例では、互いの対物光軸が非平行に配置された左受光系20Lと右受光系20Rとの間の位置に偏向ミラー44が配置されている。このような配置を可能にする要因の一つに、リレーレンズ43を配置したことによる光学的構成の自由度の向上がある。また、たとえば、水平方向の光スキャナ(本例ではxスキャナ41H)と共役な位置と、対物レンズ21L及び21Rとの間の距離を十分に小さく設計することが可能となるため、装置の小型化を図ることができる。
【0036】
一般に、光スキャナ41によるスキャン可能範囲(スキャン可能角度)は制限されているので、焦点距離が可変な結像レンズ42(又は結像レンズ系)を適用することによってスキャン可能範囲を拡大することが可能である。その他にも、スキャン可能範囲を拡大するための任意の構成を適用することが可能である。また、焦点距離(OCT計測におけるフォーカス位置)を変更するための手段の例として、コリメートレンズ52、結像レンズ42及びリレーレンズ43のうちのいずれか1つ以上を光軸に沿って移動可能とした構成がある。
【0037】
(OCT部60)
OCT部60は、OCTを実行するための干渉光学系を含む。OCT部60の構成の例を
図3に示す。
図3に示す光学系は、スウェプトソースOCTの例であり、波長掃引型光源(波長可変光源)からの光を測定光と参照光とに分割し、患者眼Eからの測定光の戻り光と参照光路を経由した参照光とを干渉させて干渉光を生成し、この干渉光を検出する。干渉光学系による干渉光の検出結果(検出信号)は、干渉光のスペクトルを示す信号であり、制御部100に送られる。
【0038】
光源ユニット61は、一般的なスウェプトソースタイプのOCT装置と同様に、出射光の波長を走査(掃引)可能な波長掃引型光源を含む。光源ユニット61は、人眼では視認できない近赤外の波長帯において、出力波長を時間的に変化させる。
【0039】
光源ユニット61から出力された光L0は、光ファイバ62により偏波コントローラ63に導かれてその偏光状態が調整され、光ファイバ64によりファイバカプラ65に導かれて測定光LSと参照光LRとに分割される。
【0040】
参照光LRは、光ファイバ66Aによりコリメータ67に導かれて平行光束に変換され、光路長補正部材68及び分散補償部材69を経由し、コーナーキューブ70に導かれる。光路長補正部材68は、参照光LRの光路長(光学距離)と測定光LSの光路長とを合わせるための遅延手段として作用する。分散補償部材69は、参照光LRと測定光LSとの間の分散特性を合わせるための分散補償手段として作用する。
【0041】
コーナーキューブ70は、参照光LRの進行方向を逆方向に折り返す。コーナーキューブ70は、参照光LRの入射光路及び出射光路に沿う方向に移動可能とされ、それにより参照光LRの光路の長さが変更される。なお、測定光LSの光路の長さを変更するための手段と、参照光LRの光路の長さを変更するための手段のうちのいずれか一方が設けられていればよい。
【0042】
コーナーキューブ70を経由した参照光LRは、分散補償部材69及び光路長補正部材68を経由し、コリメータ71によって平行光束から集束光束に変換されて光ファイバ72に入射し、偏波コントローラ73に導かれて参照光LRの偏光状態が調整される。更に、参照光LRは、光ファイバ74によりアッテネータ75に導かれて、制御部100の制御の下で光量が調整される。光量が調整された参照光LRは、光ファイバ76によりファイバカプラ77に導かれる。
【0043】
一方、ファイバカプラ65により生成された測定光LSは、光ファイバ51により導かれてファイバ端面から出射され、コリメータレンズ52により平行光束とされる。平行光束にされた測定光LSは、光スキャナ41、結像レンズ42、リレーレンズ43及び偏向ミラー44を経由して患者眼Eに照射される。測定光LSは、患者眼Eの様々な深さ位置において反射・散乱される。患者眼Eからの測定光LSの戻り光は、反射光や後方散乱光を含み、往路と同じ経路を逆向きに進行してファイバカプラ65に導かれ、光ファイバ66Bを経由してファイバカプラ77に到達する。
【0044】
ファイバカプラ77は、光ファイバ66Bを介して入射された測定光LSと、光ファイバ76を介して入射された参照光LRとを合成して(干渉させて)干渉光を生成する。ファイバカプラ77は、所定の分岐比(たとえば1:1)でこの干渉光を分割することにより、一対の干渉光LCを生成する。ファイバカプラ77から出射した一対の干渉光LCは、それぞれ光ファイバ78A及び78Bにより検出器79に導かれる。
【0045】
検出器79は、たとえば一対の干渉光LCをそれぞれ検出する一対のフォトディテクタを含み、これらによる検出結果の差分を出力するバランスドフォトダイオード(Balanced Photo Diode)である。検出器79は、その検出結果(検出信号)を制御部100に送る。
【0046】
本例ではスウェプトソースOCTが適用されているが、他のタイプのOCT、たとえばスペクトラルドメインOCTを適用することが可能である。
【0047】
(制御部100)
制御部100は、眼科用顕微鏡システム1の各部の制御を実行する(
図4参照)。照明系10の制御の例として次のものがある:光源の点灯、消灯、光量調整;絞りの調整;スリット照明が可能な場合にはスリット幅の調整。撮像素子23の制御として、露光調整やゲイン調整や撮影レート調整などがある。
【0048】
制御部100は、各種の情報を表示部31に表示させる。たとえば、制御部100は、撮像素子23Lにより取得された画像(又はそれを処理して得られた画像)を表示部31Lに表示させ、かつ、撮像素子23Rにより取得された画像(又はそれを処理して得られた画像)を表示部31Rに表示させる。
【0049】
制御部100は、OCTスキャンの形態を表す情報(スキャン形態情報)を表示部31(表示部31L及び31R、他の表示デバイス)に表示させることができる。スキャン形態情報は、たとえば、スキャンの範囲(輪郭等)を表す画像、スキャンの向きを表す情報(矢印画像等)、スキャンの軌跡を表す画像などがある。更に、制御部100は、スキャンのパラメータ値(スキャンサイズ、スキャン間隔、スキャン速度、波長等)を表示させることができる。
【0050】
光スキャナ41の制御は、たとえば、予め設定されたOCTスキャンパターンに応じた複数の位置に測定光LSが照射されるように、測定光LSを順次に偏向するものである。
【0051】
OCT部60に含まれる制御対象としては、光源ユニット61、偏波コントローラ63、コーナーキューブ70、偏波コントローラ73、アッテネータ75、検出器79などがある。
【0052】
更に、制御部100は、各種の機構を制御する。そのような機構としては、ステレオ角変更部20A、合焦部24A、光路偏向部25A、間隔変更部30A、及び向き変更部30Bが設けられている。
【0053】
ステレオ角変更部20Aは、左受光系20Lと右受光系20Rとを相対的に回転移動する。すなわち、ステレオ角変更部20Aは、互いの対物光軸(たとえばAL1とAR1)がなす角度を変更するように左受光系20Lと右受光系20Rとを相対移動させる。この相対移動は、たとえば、左受光系20Lと右受光系20Rとを反対の回転方向に同じ角度だけ移動させるものである。この移動態様においては、互いの対物光軸(たとえばAL1とAR1)がなす角の二等分線の向きは一定である。一方、当該二等分線の向きが変化するように上記相対移動を行うことも可能である。
【0054】
合焦部24Aは、左右のフォーカスレンズ24L及び24Rを光路に対して挿入/退避させる。合焦部24Aは、左右のフォーカスレンズ24L及び24Rを同時に挿入/退避させるように構成されていてよい。他の例において、合焦部24Aは、左右のフォーカスレンズ24L及び24Rを(同時に)光軸方向に移動させることによって焦点位置を変更するように構成されてよく、或いは、左右のフォーカスレンズ24L及び24Rの屈折力を(同時に)変更することによって焦点距離を変更するように構成されてよい。
【0055】
光路偏向部25Aは、左右のウェッジプリズム25L及び25Rを光路に対して挿入/退避させる。光路偏向部25Aは、左右のウェッジプリズム25L及び25Rを同時に挿入/退避させるように構成されていてよい。他の例において、光路偏向部25Aは、左右のウェッジプリズム25L及び25Rのプリズム量(及びプリズム方向)を(同時に)変更することによって左右の受光系20L及び20Rの光路の向きを変更するように構成されてよい。
【0056】
間隔変更部30Aは、左右の接眼系30L及び30Rの間隔を変更する。間隔変更部30Aは、互いの光軸の相対的向きを変化させずに左右の接眼系30L及び30Rを相対的に移動するように構成されてよい。
【0057】
向き変更部30Bは、左右の接眼系30L及び30Rの相対的向きを変更する。向き変更部30Bは、互いの光軸がなす角度を変更するように左接眼系30Lと右接眼系30Rとを相対移動させる。この相対移動は、たとえば、左接眼系30Lと右接眼系30Rとを反対の回転方向に同じ角度だけ移動させるものである。この移動態様においては、互いの光軸がなす角の二等分線の向きは一定である。一方、当該二等分線の向きが変化するように上記相対移動を行うことも可能である。
【0058】
(データ処理部200)
データ処理部200は、各種のデータ処理を実行する。このデータ処理には、画像を形成する処理や、画像を加工する処理などが含まれる。また、データ処理部200は、画像や検査結果や測定結果を解析する処理や、被検者に関する情報(電子カルテ情報等)に関する処理を実行可能であってよい。データ処理部200には、倍率変更部210と、条件設定部220と、OCT画像形成部230とが含まれる。
【0059】
(倍率変更部210)
倍率変更部210は、撮像素子23により取得された画像を拡大する。この処理は、いわゆるデジタルズーム処理であり、撮像素子23により取得された画像の一部を切り取る処理と、その部分の拡大画像を作成する処理とを含む。画像の切り取り範囲は、観察者により又は制御部100により設定される。倍率変更部210は、左受光系20Lの撮像素子23Lにより取得された画像(左画像)と、右受光系20Rの撮像素子23Rにより取得された画像(右画像)とに対して、同じ処理を施す。それにより、観察者の左眼E
0Lと右眼E
0Rとに同じ倍率の画像が提示される。このように、倍率変更部210は、撮像素子23(23L、23R)からの出力を処理することにより、観察者に提示される画像の表示倍率を変更するよう機能する。
【0060】
このようなデジタルズーム機能に加えて、いわゆる光学ズーム機能を設けることが可能である。光学ズーム機能は、左右の受光系20L及び20Rのそれぞれに変倍レンズ(変倍レンズ系)を設けることにより実現される。具体例として、変倍レンズを(選択的に)光路に対して挿入/退避する構成や、変倍レンズを光軸方向に移動させる構成がある。光学ズーム機能に関する制御は制御部100によって実行される。
【0061】
(条件設定部220)
倍率変更部210により表示倍率が変更されると、その情報が条件設定部220に入力される。条件設定部220は、倍率変更部210から入力された情報に基づいて測定光LSの照射条件を設定する。
【0062】
照射条件は、患者眼Eに到達する測定光LSに関する任意の1以上の条件(パラメータ)を含む。このような条件の例として次のものがある:測定光LSによるスキャン範囲(スキャンエリア)のサイズ(スキャンサイズ条件);測定光LSの照射点の間隔(スキャン間隔条件:たとえばx方向における間隔及び/又はy方向における間隔);測定光LSの照射点の配列パターン(スキャンパターン条件);撮像素子23により得られる画像のフレーム内における測定光LSの照射点の位置(スキャン位置条件);測定光LSの焦点位置(フォーカス位置条件);測定光LS(OCT)による計測深度(計測深度条件);測定光LSの強度・光量・デューティー比・中心波長・波長幅・スペクトル分布・偏光軸等、測定光LSの光特性(光特性条件)。これら条件の少なくとも1つが照射条件に含まれていてよい。
【0063】
スキャンサイズ条件は、光スキャナ41を制御するための条件の1つであり、測定光LSの最大偏向角度(つまり、それに対応する光スキャナ41の最大偏向角度)を示す。スキャンサイズ条件は、xスキャナ41Hによる水平方向への最大偏向角度を示す条件と、yスキャナ41Vによる垂直方向への最大偏向角度を示す条件とのうち一方又は双方を含む。
【0064】
スキャン間隔条件は、光スキャナ41を制御するための条件の1つであり、測定光LSの単位偏向角度を示す。つまり、スキャン間隔条件は、測定光LSの一の照射点とそれに隣接する照射点との間隔に対応する光スキャナ41の偏向角度を示す。スキャン間隔条件は、xスキャナ41Hによる単位偏向角度を示す条件と、yスキャナ41Vによる単位偏向角度を示す条件とのうち一方又は双方を含む。なお、スキャン間隔条件は、OCT部60内の光源ユニット61を制御するための条件を含んでもよい。たとえば、光源ユニット61をパルス発光する場合、その発光レート(発光間隔、パルス周期)を示す情報がスキャン間隔条件に含まれていてもよい。
【0065】
スキャンパターン条件は、光スキャナ41を制御するための条件の1つであり、測定光LSによるスキャンの軌跡の形状を示す。スキャンパターンとしては、複数の照射点が線分上に配列されたラインスキャン、複数の照射点が十字形状に配列されたクロススキャン、複数の照射点が放射形状に配列されたラジアルスキャン、複数の照射点が円形に配列されたサークルスキャン、複数の照射点が格子点状に配列された3次元スキャン(ボリュームスキャン)などがある。
【0066】
スキャン位置条件は、光スキャナ41を制御するための条件の1つであり、撮像素子23により得られる画像(観察像)のフレームに対するOCTスキャンエリアの相対位置を示す。典型的には、OCTスキャンエリアの中心位置は観察像のフレーム中心に一致されるが、OCTスキャンエリアを移動させたいケースもある。たとえば、視神経乳頭と黄斑とを観察しつつ、この観察像のフレーム中心から外れた位置に描出されている黄斑のOCTスキャンを行いたいケースがある。スキャン位置条件は、たとえばこのような場合に有効である。
【0067】
フォーカス位置条件は、測定光LSの光路(測定光路)を形成する光学系の焦点距離(OCT計測におけるフォーカス位置)を変更する手段を制御するための条件である。本実施形態では、コリメートレンズ52、結像レンズ42及びリレーレンズ43のうちのいずれか1つ以上を光軸に沿って移動する機構(図示省略)が焦点距離変更手段に相当する。
【0068】
計測深度条件は、OCTによる計測深度を変更する手段を制御するための条件である。本実施形態では、OCT部60に設けられたコーナーキューブ70を移動して参照光LRの光路(参照光路)の長さを変更する機構(図示省略)が計測深度変更手段に相当する。なお、計測深度変更手段は、参照光路長を変更する手段と、測定光路長を変更する手段との一方又は双方を含む。
【0069】
光特性条件は、たとえば次のいずれか1つ以上を制御するための条件である:OCT部60に設けられた光源ユニット61;光源ユニット61から出力された光L0の光路に設けられた光特性変更手段;測定光LSの光路に設けられた光特性変更手段。光特性変更手段は、たとえば、光の強度等を変更するためのデバイス(アッテネータ等)、光量やデューティー比等を変更するためのデバイス(シャッタ等)、波長特性を変更するための光学素子(フィルタ等)、偏光軸を変更するための偏光素子などである。
【0070】
条件設定部220の構成の例を
図5に示す。本例の条件設定部220は、記憶部221と、画像解析部222と、条件選択部223とを備える。
【0071】
(記憶部221)
記憶部221は、対応情報221aを予め記憶している。対応情報221aには、所定項目と照射条件との間の対応関係が記録されている。所定項目は、照射条件を設定するために参照される項目である。所定項目の例として、観察像の表示倍率や、表示倍率の変更量(変更前後の表示倍率の差又は比など)や、眼の部位などがある。また、対応情報221aに記録されている照射条件は、たとえば上記の例示のいずれかである。
【0072】
観察像の表示倍率と照射条件との対応関係の例を
図6Aに示す。
図6Aに示す第1対応情報221bは対応情報221aに含まれる。第1対応情報221bにおいては、観察像の表示倍率に対し、照射条件としてのスキャンサイズ条件及びスキャン間隔条件が対応付けられている(他の照射条件が対応付けられてもよい)。
【0073】
第1対応情報221bは、表示倍率の欄と照射条件の欄とが設けられたテーブル情報である。表示倍率の欄には、最低倍率である4倍から、5倍、6倍、7倍、・・・と様々な倍率値が記録されている。照射条件の欄には、各表示倍率に対応するスキャンサイズの値とスキャン間隔の値とが記録されている。
【0074】
本例では、最低倍率である4倍に対し、スキャンサイズの値「A
0」と、スキャン間隔の値「B
0」とが対応付けられている。スキャンサイズの値「A
0」は、たとえば、6mm×6mm、9mm×9mm、又は9mm×12mm(垂直方向の長さ×水平方向の長さ)に設定される。スキャン間隔の値「B
0」は、たとえば、6mm/511(6mmのラインスキャンに512個の照射点が等間隔で配置される場合)、9mm/1023(9mmのラインスキャンに1024個の照射点が等間隔で配置される場合)、12mm/1023(12mmのラインスキャンに1024個の照射点が等間隔で配置される場合)に設定される。ここで、商の値は所定単位で丸められていてよい(以下同様)。
【0075】
本例において、最低倍率である4倍に対応するスキャンサイズの値「A
0」及びスキャン間隔の値「B
0」はそれぞれ最大サイズである。つまり、表示倍率が4倍を超える場合、スキャンサイズの値及びスキャン間隔の値はそれぞれ「A
0」及び「B
0」よりも小さい。更に、表示倍率が高くなるほど、スキャンサイズの値及びスキャン間隔の値はそれぞれ小さくなっていく。加えて、本例では、表示倍率の値に対し、スキャンサイズの値及びスキャン間隔の値がそれぞれ反比例している。
【0076】
第1対応情報221bが適用される場合、表示倍率が設定されたことを受けて(つまり、変更後の表示倍率に基づいて)、スキャンサイズの既定値及びスキャン間隔の既定値がそれぞれ選択適用される。なお、第1対応情報221bでは、各表示倍率に対して各照射条件の1つの値が対応付けられているが、各表示倍率に対して2以上の値又は区間が対応付けられていてもよい。また、選択適用された既定値をユーザが任意に変更できるようにしてもよい。
【0077】
第1対応情報221bの形式は、テーブル情報のような離散的情報には限定されず、グラフ情報のような連続的情報であってもよい。このグラフ情報は、たとえば、表示倍率の連続値を示す横軸と、照射条件の連続値を示す縦軸とにより定義された2次元座標系によって表現されたグラフである。
【0078】
観察像の表示倍率の変更量と照射条件との対応関係の例を
図6Bに示す。
図6Bに示す第2対応情報221cは対応情報221aに含まれる。第2対応情報221cにおいては、表示倍率の変更量である比(変更比、又は拡大率/縮小率)に対し、照射条件としてのスキャンサイズ条件及びスキャン間隔条件が対応付けられている(他の照射条件が対応付けられてもよい)。
【0079】
表示倍率の変更比は、たとえば、変更前の表示倍率に対する表示後の表示倍率により定義される。一例として、変更前の表示倍率が4倍であり、変更後の表示倍率が6倍である場合、その変更比は1.5である。
【0080】
第2対応情報221cは、表示倍率の変更比の欄と照射条件の欄とが設けられたテーブル情報である。変更比の欄には、1.5、2.0、2.5、3.0、・・・と様々な比の値が記録されている。照射条件の欄には、各変更比に対応するスキャンサイズの値とスキャン間隔の値とが記録されている。
【0081】
なお、第2対応情報221cには表示倍率が増加された場合の対応関係のみが記録されているが、表示倍率が減少された場合には、その変更比の逆数に相当する対応関係を適用することが可能である。
【0082】
また、変更比の欄に記録されていない変更比が適用された場合、第2対応情報221cに記録されている変更比の値に基づき今回の変更比に対応する照射条件を求めることができる。たとえば、表示倍率が4倍から7倍に変更された場合、その変更比は1.75となるので、変更比1.5に対応する照射条件の値と変更比2.0に対応する照射条件の値との平均値を算出し、この平均値を変更比1.75に対応する照射条件の値として適用することができる。
【0083】
本例では、表示倍率の変更比が大きくなるほど、スキャンサイズの値及びスキャン間隔の値がそれぞれ小さくなっていく。加えて、本例では、変更比の値に対し、スキャンサイズの値及びスキャン間隔の値がそれぞれ反比例している。
【0084】
第2対応情報221cが適用される場合、表示倍率が変更されたことを受けて(つまり、変更前の表示倍率と変更後の表示倍率とに基づいて)、スキャンサイズの既定値及びスキャン間隔の既定値がそれぞれ選択適用される。なお、第2対応情報221cでは、各変更比に対して各照射条件の1つの値が対応付けられているが、各変更比に対して2以上の値又は区間が対応付けられていてもよい。また、選択適用された既定値をユーザが任意に変更できるようにしてもよい。
【0085】
第2対応情報221cの形式は、テーブル情報のような離散的情報には限定されず、グラフ情報のような連続的情報であってもよい。このグラフ情報は、たとえば、表示倍率の変更比の連続値を示す横軸と、照射条件の連続値を示す縦軸とにより定義された2次元座標系によって表現されたグラフである。
【0086】
眼の部位と照射条件との対応関係の例を
図6Cに示す。
図6Cに示す第3対応情報221dは対応情報221aに含まれる。第3対応情報221dにおいては、眼の部位に対し、照射条件としてのスキャンパターン条件が対応付けられている(他の照射条件が対応付けられてもよい)。
【0087】
第3対応情報221dは、眼の部位の欄と照射条件の欄とが設けられたテーブル情報である。眼の部位の欄には、視神経乳頭、黄斑など、眼の様々な部位が記録されている。照射条件の欄には、各部位に対応するスキャンパターンが記録されている。
【0088】
第3対応情報221dが適用される場合、観察像に描出されている眼の部位が特定されたことを受けて、既定のスキャンパターンが選択適用される。なお、第3対応情報221dでは、各部位に対して1つのスキャンパターンが対応付けられているが、各部位に対して2以上のスキャンパターンが対応付けられていてもよい。また、選択適用されたスキャンパターンをユーザが任意に変更できるようにしてもよい。
【0089】
以上のような対応情報221aは、デフォルト設定された情報もよいし、ユーザが任意に編集・設定した情報もよい。また、対応情報221aに含まれる幾つかのサブ情報(第1〜第3対応情報221b〜221dなど)を選択的に適用できるようにしてもよい。
【0090】
(画像解析部222)
画像解析部222は、倍率変更部210により表示倍率が高められたときに、それにより拡大された画像を解析することにより、この拡大画像に描出されている患者眼Eの部位を特定する。この画像解析は特徴抽出やパターン認識を含んでよく、具体的には、画素値(輝度値、RGB値等)の閾値処理、フィルタ処理、パターンマッチング、2値化、エッジ検出、画像補正(ガンマ補正、階調補正等)、画像変換などを含んでよい。
【0091】
具体例を説明する。患者眼Eの眼底広域を観察しているときに、ユーザが視神経乳頭にズームアップすると、この拡大画像(動画像のフレーム)が画像解析部222に入力される。画像解析部222は、この拡大画像を構成する画素の輝度値を解析することで、特徴的な領域を抽出する。本例では視神経乳頭にズームアップされたので、高輝度かつ略楕円形の領域が抽出される。それにより、ズームアップされた部位が視神経乳頭であることが特定される。
【0092】
他の具体例を説明する。患者眼Eの眼底広域を観察しているときに、ユーザが黄斑にズームアップすると、この拡大画像(動画像のフレーム)が画像解析部222に入力される。画像解析部222は、この拡大画像を構成する画素の輝度値を解析することで、低輝度かつ略円形の領域を抽出する。それにより、ズームアップされた部位が黄斑であることが特定される。
【0093】
眼科用顕微鏡システム1は、現在の観察対象が前眼部であるか眼底であるか認識することが可能である。たとえば、制御部100は、前置レンズ90が使用されているか否か、フォーカスレンズ24L及び24Rが光路に配置されているか否か、ウェッジプリズム25L及び25Rが光路に配置されているか否かに基づいて、現在の観察対象が前眼部であるか眼底であるか判断することが可能である。画像解析部222は、この判断結果を参照して部位の特定を行うことが可能である。たとえば、現在の観察対象が前眼部であるときに、低輝度かつ略円形の領域が拡大画像から抽出された場合、この領域は瞳孔(及び虹彩)に相当すると判断される。一方、現在の観察対象が眼底であるときに、低輝度かつ略円形の領域が拡大画像から抽出された場合、この領域は黄斑に相当すると判断される。
【0094】
(条件選択部223)
条件選択部223は、画像解析部222が拡大画像を解析して特定した部位に対応付けられたスキャンパターンを対応情報221a(第3対応情報221d)から選択する。たとえば、画像解析部222により特定された部位が視神経乳頭である場合、条件選択部223は、視神経乳頭に対応するスキャンパターンであるサークルスキャンを第3対応情報221dから取得する。或いは、画像解析部222により特定された部位が黄斑である場合、条件選択部223は、黄斑に対応するスキャンパターンである3次元スキャンを第3対応情報221dから取得する。
【0095】
(OCT画像形成部230)
OCT画像形成部230は、OCT部60の検出器79により得られた干渉光LCの検出結果に基づいて、患者眼Eの画像を形成する。制御部100は、検出器79から順次に出力される検出信号をOCT画像形成部230に送る。OCT画像形成部230は、たとえば一連の波長走査毎に(Aライン毎に)、検出器79により得られた検出結果に基づくスペクトル分布にフーリエ変換等を施すことにより、各Aラインにおける反射強度プロファイルを形成する。更に、OCT画像形成部230は、各Aラインプロファイルを画像化することにより画像データを形成する。それにより、Bスキャン像(断面像)やボリュームデータ(3次元画像データ)が得られる。
【0096】
データ処理部200は、OCT画像形成部230により形成された画像(OCT画像)を解析する機能を備えていてよい。この解析機能としては、網膜厚解析や、正常眼との比較解析などがある。このような解析機能は、公知のアプリケーションを用いて実行される。また、データ処理部200は、受光系20により取得された画像を解析する機能を備えていてよい。また、データ処理部200は、受光系20により取得された画像の解析とOCT画像の解析とを組み合わせた解析機能を備えていてもよい。
【0097】
(ユーザインターフェイス300)
ユーザインターフェイス(UI)300は、観察者等と眼科用顕微鏡システム1との間で情報のやりとりを行うための機能を備える。ユーザインターフェイス300は、表示デバイスと操作デバイス(入力デバイス)とを含む。表示デバイスは、表示部31を含んでよく、それ以外の表示デバイスを含んでもよい。操作デバイスは、各種のハードウェアキー及び/又はソフトウェアキーを含む。操作デバイスの少なくとも一部と表示デバイスの少なくとも一部とを一体的に構成することが可能である。タッチパネルディスプレイはその一例である。
【0098】
(通信部400)
通信部400は、他の装置に情報を送信する処理と、他の装置から送られた情報を受信する処理とを行う。通信部400は、既定のネットワーク(LAN、インターネット等)に準拠した通信デバイスを含んでいてよい。たとえば、通信部400は、医療機関内に設けられたLANを介して、電子カルテデータベースや医用画像データベースから情報を取得する。また、外部モニタが設けられている場合、通信部400は、眼科用顕微鏡システム1により取得される画像(受光系20により取得される画像、OCT画像等)を、実質的にリアルタイムで外部モニタに送信することができる。
【0099】
[使用形態]
本実施形態の眼科用顕微鏡システムの使用形態について説明する。眼科用顕微鏡システムの使用形態の一例を
図7に示す。
【0100】
(S1:患者眼の観察を開始する)
ユーザが所定の操作を行うと、制御部100は、左右の照明系10L及び10Rを制御して患者眼Eへの照明光の照射を開始させるとともに、左右の撮像素子23L及び23Rにより取得された画像をそれぞれ左右の表示部31L及び31Rに表示させる。それにより、ユーザは、左右の接眼系30L及び30Rを介して患者眼Eを双眼観察(立体観察)することができる。
【0101】
ユーザは、所望の観察野が得られるように左右の受光系20L及び20Rを操作する。このとき、観察倍率(表示部31L及び31Rに表示される画像の倍率)の調整も行われる。観察倍率は、デジタルズーム(倍率変更部210)により変更される。
【0102】
(S2:OCT条件を設定する)
次に、OCT条件(測定光LSの照射条件、OCT部60の条件等)が設定される。この条件設定は、ユーザによる手動設定、デフォルト条件(初期条件)の自動設定、及び/又は条件設定部220による自動設定を含む。条件設定部220による自動設定は、たとえば、ステップS1で設定された観察倍率に基づき実行される。具体的には、条件設定部220の条件選択部223が、ステップS1で設定された倍率に対応する照射条件を対応情報221a(たとえば第1対応情報221b)から選択する。選択された照射条件が適用される。
【0103】
この段階で、ライブOCTを開始することができる。ライブOCTとは、既定のスキャンパターンのOCT計測を反復することで患者眼Eの一定断面の動画を取得する画像化法である。或いは、ユーザ又は制御部100からの指示に応じてOCT計測を実行してもよい。
【0104】
(S3:スキャン形態情報を表示する)
制御部100は、ステップS2で設定されたOCT条件の形態を表すスキャン形態情報を表示させる。スキャン形態情報は、たとえば、表示部31L及び31Rに表示されている患者眼Eの観察像に重ねて表示される(オーバレイ表示)。
【0105】
このオーバレイ表示の例を
図8Aに示す。符号G0は、表示部31(31L、31R)に表示されている観察像を示す。この観察像G0は患者眼Eの眼底像であり、視神経乳頭Dと黄斑Mとを含む範囲を描出した広域画像である。ステップS2において設定されたスキャンパターンは3次元スキャンであるとする。制御部100は、この3次元スキャンの範囲(輪郭)を示す範囲画像H0と、3次元スキャンを構成する複数のラインスキャンの向きを示す向き画像J0とを、観察像G0に重ねて表示させる。
【0106】
(S4:注目部位にズームアップする)
ユーザは、より高倍率で注目部位を観察するために、受光系20L及び20Rの移動操作や倍率変更操作を行う。倍率の変更は、倍率変更部210(デジタルズーム)により実行される。
【0107】
(S5:OCT条件を変更する)
ステップS4で変更された倍率を示す情報は条件設定部220(条件選択部223)に入力される。条件選択部223は、入力された情報に対応する照射条件を対応情報221aから選択する。たとえば、入力された情報が変更後の倍率値を含む場合、条件選択部223は、この倍率値に対応する照射条件を第1対応情報221bから選択することができる。また、入力された情報が倍率の変更内容(たとえば変更前の倍率値及び変更後の倍率値)を含む場合、条件選択部223は、この変更内容から倍率の変更比を算出し、この変更比に対応する照射条件を第2対応情報221cから選択する。
【0108】
条件選択部223により選択された照射条件は、制御部100に送られる。制御部100は、現在のOCT条件(ステップS2で設定されたOCT条件)のうち、条件選択部223により選択された照射条件と同じ項目の条件を特定する。更に、制御部100は、特定された現在の条件を新たに選択された照射条件に置換する。これにより、ステップS2で設定されたOCT条件の少なくとも一部が変更される。
【0109】
(S6:スキャン形態情報を変更する)
制御部100は、ステップS3にて表示されたスキャン形態情報(ステップS2で設定されたOCT条件を表している)を、ステップS5で新たに設定されたOCT条件の形態を表すスキャン形態情報に変更する。この新たなスキャン形態情報は、引き続き観察像にオーバレイ表示される。
【0110】
この新たなオーバレイ表示の例を
図8Bに示す。符号G1は、表示部31(31L、31R)に表示されている、倍率変更後の観察像を示す。この観察像G1は視神経乳頭Dを注目部位とする拡大画像である。符号H1は、ステップS5で設定されたスキャンサイズを持つ3次元スキャンの範囲(輪郭)を示す範囲画像である。また、符号J1は、この新たな3次元スキャンを構成する複数のラインスキャンの向きを示す向き画像である。なお、本例では、スキャンパターンは変更されない。スキャンパターンも変更するケースについては後述する。
【0111】
(S7:OCTスキャンを実行する)
制御部100は、ステップS5で設定された照射条件を含むOCT条件に基づいてOCT部60や光スキャナ41を制御することにより、患者眼EのOCTスキャンを実行する。
図8A及び
図8Bに示す例の場合、視神経乳頭D及びその近傍に対してOCTスキャンが実行される。
【0112】
たとえば、
図8Bに示す画像G1の倍率が、
図8Aに示す画像G0の倍率の3倍であるとする。この場合、範囲画像H1が示す面積は、範囲画像HOが示す面積の1/3×1/3倍となる。更に、範囲画像H1が示す範囲の3次元スキャンのスキャン間隔は、範囲画像H0が示す範囲の3次元スキャンのスキャン間隔の1/3となる。このように、より高い倍率の観察像に変更されたことに対応し、より狭い範囲をより高密度でスキャンすることができる。
【0113】
(S8:OCTデータを生成する)
OCT画像形成部230は、ステップS7のOCTスキャンにより収集されたデータに基づいて画像を形成する。更に、データ処理部200は、この画像を解析することにより解析データを生成することが可能である。取得されたOCTデータ(画像、解析データ等)は、たとえば表示部31L及び31Rに表示される。
【0114】
(他の使用形態)
スキャンサイズやスキャン間隔の設定とともにスキャンパターンの設定も行う使用形態について説明する。本例では、上記のステップS5で説明した処理に加えて、スキャンパターンの設定を実行する。スキャンパターンの設定は、たとえば以下のようにして実行される。
【0115】
ステップS4において観察像の倍率が変更されると、この観察像(動画像のフレーム)が画像解析部222に入力される。画像解析部222は、入力された観察像を解析することにより、この観察像に描出されている患者眼Eの部位を特定する。特定された部位を示す情報(部位の名称、識別情報等)は条件選択部223に入力される。条件選択部223は、画像解析部222により特定された部位に対応するスキャンパターンを第3対応情報221d(
図6C)から選択する。
【0116】
条件選択部223により選択されたスキャンパターンを示す情報は、制御部100に送られる。制御部100は、現在のOCT条件におけるスキャンパターンを、新たに選択されたスキャンパターンに置換する。以上がステップS5において付加的に実行される処理である。
【0117】
更に、制御部100は、ステップS5で変更されたOCT条件(照射条件)に基づいて、観察像にオーバレイ表示されるスキャン形態情報を変更する。この新たなオーバレイ表示の例を
図8Cに示す。観察像G1は
図8Bの場合と同様であり、視神経乳頭Dを注目部位とする拡大画像である。画像解析部222は、観察像G1を解析することにより、視神経乳頭が描出されていることを特定する。条件選択部223は、第3対応情報221dを参照することで、視神経乳頭に対応するスキャンパターンとしてサークルスキャンを特定する。
【0118】
符号H2は、所定のスキャンサイズを持つサークルスキャンの軌跡を示す軌跡画像である。また、符号J2は、このサークルスキャンの向きを示す向き画像である。なお、サークルスキャンのサイズ(径)は、たとえばステップS5で設定されたスキャンサイズとされる。或いは、視神経乳頭Dのサイズに基づいてサークルスキャンのサイズを決定することもできる。また、サークルスキャンの位置は任意の手法で設定される。たとえば、サークルスキャンの中心は、視神経乳頭Dの中心(視神経乳頭Dの近似楕円の中心)に一致される。また、サークルスキャンにおけるスキャン間隔はステップS5で設定されてよい。
【0119】
[作用・効果]
本実施形態の眼科用顕微鏡システムの作用及び効果について説明する。
【0120】
本実施形態の眼科用顕微鏡システムは、照明系(10、10L、10R)と、受光系(20L、20R)と、表示制御部(制御部100)と、倍率変更部(210)と、干渉光学系(OCT部60)と、光スキャナ(41)と、OCTデータ生成部(データ処理部200、OCT画像形成部230)と、条件設定部(220)と、OCT制御部(制御部100)とを備える。
【0121】
照明系は、患者眼に照明光を照射する。受光系は、患者眼に照射された照明光の戻り光を撮像素子(23、23L、23R)に導く。ここで、撮像素子は、眼科用顕微鏡システムに接続された外部デバイスであってもよい。表示制御部は、撮像素子からの出力に基づく画像(観察像)を表示手段(表示部31、31L、31R、ユーザインターフェイス300等)に表示させる。ここで、表示手段は、眼科用顕微鏡システムに接続された外部デバイスであってもよい。倍率変更部は、撮像素子からの出力を処理することにより画像(観察像)の表示倍率を変更する。干渉光学系は、OCT光源(光源ユニット61)からの光を測定光(LS)と参照光(LR)とに分割し、患者眼からの測定光の戻り光と参照光との干渉光(LC)を検出する。光スキャナは、測定光で患者眼をスキャンする。OCTデータ生成部は、干渉光の検出結果を処理してデータ(画像、解析データ等)を生成する。条件設定部は、倍率変更部による表示倍率の変更に応じて測定光の照射条件を設定する。OCT制御部は、設定された照射条件に基づいて干渉光学系及び光スキャナの少なくとも一方を制御することにより、患者眼のOCTスキャンを実行させる。
【0122】
このような実施形態によれば、倍率変更部による観察像のデジタルズームの倍率に基づきOCTスキャンの照射条件を自動で設定できるので、ユーザは、照射条件を設定するための煩雑な操作を行う必要がない。
【0123】
条件設定部により自動で設定される照射条件は、測定光によるスキャン範囲のサイズを示すスキャンサイズ条件、測定光の照射点の間隔を示すスキャン間隔条件、及び、測定光の照射点の配列パターンを示すスキャンパターン条件のいずれかを含んでいてよい。
【0124】
スキャンサイズ条件が設定された場合、OCT制御部は、設定されたスキャンサイズ条件に基づいて光スキャナの制御を行う。それにより、観察像の倍率の変更に応じて自動設定された範囲のOCTスキャンを行うことができる。
【0125】
本例が適用される場合において、倍率変更部により表示倍率が高められたとき、条件設定部は、スキャン範囲のサイズを小さくするようにスキャンサイズ条件を設定することが可能である。これにより、高倍率で観察されている部位に合った範囲のOCT画像を円滑に取得することができる。逆に、倍率変更部により表示倍率が低められたときに、条件設定部は、スキャン範囲のサイズを大きくするようにスキャンサイズ条件を設定することも可能である。
【0126】
スキャン間隔条件が設定された場合、OCT制御部は、設定されたスキャン間隔条件に基づいて光スキャナの制御を行う。それにより、観察像の倍率の変更に応じて自動設定された密度でOCTスキャンを行うことができる。
【0127】
本例が適用される場合において、倍率変更部により表示倍率が高められたとき、条件設定部は、測定光の照射点の間隔を小さくするようにスキャン間隔条件を設定することが可能である。これにより、高倍率で観察されている部位に関する高精細なOCT画像を円滑に取得することができる。逆に、倍率変更部により表示倍率が低められたときに、条件設定部は、測定光の照射点の間隔を大きくするようにスキャン間隔条件を設定することも可能である。
【0128】
スキャンパターン条件が設定された場合、OCT制御部は、設定されたスキャンパターン条件に基づいて光スキャナの制御を行う。それにより、観察像の倍率の変更に応じて自動設定されたパターンでOCTスキャンを行うことができる。
【0129】
本例が適用される場合において、条件設定部(220)は、記憶部(221)と、画像解析部(222)と、条件選択部(223)とを備えていてよい。記憶部には、眼の1以上の部位のそれぞれにスキャンパターンが対応付けられた対応情報(第3対応情報221d)が予め記憶される。画像解析部は、倍率変更部により観察像の表示倍率が高められたときに、それにより拡大された画像を解析することによってこの観察像に描出されている患者眼の部位を特定する。条件選択部は、画像解析部により特定された部位に対応付けられたスキャンパターンを対応情報から選択する。選択されたスキャンパターンが光スキャナの制御に用いられる。この構成によれば、高倍率で観察されている部位に応じたスキャンパターンを自動選択してOCTスキャンを実行することが可能である。逆に、倍率変更部により表示倍率が低められたときにもスキャンパターンを自動設定するよう構成することも可能である。
【0130】
なお、実施形態によって自動で設定可能な照射条件は、これらに限定されない。たとえば、撮像素子により得られる画像(観察像)のフレーム内における測定光の照射点の位置を示すスキャン位置条件や、測定光の焦点位置を示すフォーカス位置条件や、測定光(OCT)による計測深度を示す計測深度条件や、測定光の光特性を示す光特性条件などを、自動で設定するよう構成することができる。
【0131】
実施形態において、表示制御部は、条件設定部により設定された照射条件を示す情報(スキャン形態情報)を観察像とともに表示させることができる。この構成によれば、どのような照射条件が設定されたかユーザに提示することが可能である。照射条件を示す情報は、たとえば、観察像にオーバレイ表示される。それにより、ユーザは、患者眼の顕微鏡観察を行いながら照射条件を確認することができる。特に、患者眼のどの範囲のOCTスキャンが行われるか、どのような向きでOCTスキャンが行われるか、どのような密度でOCTスキャンが行われるかといった情報を、ユーザは容易に且つ直感的に把握できる。
【0132】
[変形例]
上記の実施形態は、本発明を実施するための例示に過ぎない。本発明を実施しようとする者は、本発明の要旨の範囲内において任意の変形、省略、追加、置換等を施すことが可能である。
【0133】
上記の実施形態では、眼底観察と前眼部観察との切り替えを、フォーカスレンズ24L、24Rとウェッジプリズム25L、25Rとの受光系20の光路への挿入/退避によって行っている。具体的には、眼底観察時にはこれら光学素子は光路から退避されており、前眼部観察時にはこれらが光路に配置されて焦点距離と対物光軸の向きとが切り替えられる。
【0134】
このような観察部位の切り替えを実現するための変形例を
図9及び
図10に示す。
図9は、前眼部観察時における眼科用顕微鏡システム1000の状態を表し、
図9は眼底観察時におけるその状態を表す。眼科用顕微鏡システム1000は、上記実施形態とそれぞれ同様の照明系10L及び10R、受光系20L及び20R、接眼系30L及び30R、照射系40、並びにOCT系60を備える。上記実施形態と同じ構成要素には同じ符号が付されており、その説明は省略される。
【0135】
前眼部観察時には、
図9に示すように、受光系20L及び20Rの焦点位置F1に患者眼Eの前眼部(たとえば角膜前面)が配置される。一方、眼底観察時には、
図10に示すように、前置レンズ90と光路長変換レンズ91が受光系20L及び20Rの光路に配置される。前置レンズ90は、上記実施形態と同様の光学素子であり、焦点位置F1と患者眼Eとの間に配置される。光路長変換レンズ91は、照明系10Lの光路を受光系20Lの光路に結合するビームスプリッタ11Lと焦点位置F1との間、かつ、照明系10Rの光路を受光系20Rの光路に結合するビームスプリッタ11Rと焦点位置F1との間に配置される。本例では、受光系20L及び20Rの双方の光路にまたがるように単一の光路長変換レンズ91が設けられているが、受光系20L及び20Rのそれぞれに個別の光学素子を設けるようにしてもよい。
【0136】
本変形例によれば、光路長変換レンズ91を利用することにより、受光系20L及び20Rと患者眼E(角膜)との間の距離を変更することなく前眼部観察時と同じ位置で眼底観察を行うことができる。