【文献】
濱田久光,コーティング&ラミネーティングマシン,日本,株式会社 加工技術研究会,1996年 2月29日,131−132頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
[第1実施形態]
(熱転写受像シート)
以下、本発明を適用した第1実施形態の熱転写受像シート10について説明する。なお、以下の説明で用いる図面において、各構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。
【0017】
図1は、第1実施形態の熱転写受像シート10を示す模式図である。
図2は、熱転写受像シート10の第2面パール光沢層4を示す模式図である。以下は、
図1において、インク受容層2が基材層1の上面側に位置するとして、各構成の位置関係を説明することがある。
【0018】
熱転写受像シート10は、例えば、感熱昇華型転写方式により画像が形成されるシートである。感熱昇華型転写方式では、昇華性染料を色材とし、画像情報に応じて発熱制御されるサーマルヘッドなどの加熱デバイスを用いて、熱転写シート上に形成された昇華性染料層中の染料を熱転写受像シートに移行させて画像を形成する。
【0019】
図1に示すように、熱転写受像シート10は、基材層1と、インク受容層2と、接着層3と、第2面パール光沢層4とを備えている。
【0020】
基材層1は、インク受容層2、接着層3および第2面パール光沢層4を支持する支持体として機能する。基材層1としては、紙、コート紙、アート紙、キャスト紙などの紙材が使用できる。基材層1としては、ポリエチレンレテフタレート(PET)、ポリプロピレン等の樹脂フィルムを使用してもよい。基材層1としては、合成紙(樹脂フィルムと紙材とを貼り合わせた複合材料)を使用してもよい。なかでも特に、コート紙を用いることが好ましい。コート紙は、上質紙、中質紙などの原紙の表面に、コート層7が形成されている。コート層7は、白色顔料(白土、炭酸カルシウムなど)を含む塗料を前記原紙の表面に塗布して得られる。前記塗料には、バインダとして、天然植物から精製した澱紛、ヒドロキシエチル化澱粉、酸化澱紛、エーテル化澱紛、リン酸エステル化澱粉、酵素変性澱紛、それらをフラッシュドライして得られる冷水可溶性澱粉、デキストリン、マンナン、キトサン、アラビノガラクタン、グリコーゲン、イヌリン、ペクチン、ヒアルロン酸、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどの天然多糖類およびそのオリゴマーさらにはその変性体を使用してもよい。前記バインダは、カゼイン、ゼラチン、大豆蛋白、コラーゲンなどの天然タンパク質およびその変性体、ポリ乳酸、ペプチドなどの合成高分子やオリゴマーを含んでいてもよい。
【0021】
前記バインダには、スチレンブタジエン系、アクリル系、ポリ酢酸ビニル、エチレン酢酸ビニルなどの各種共重合体ラテックスを用いることができる。前記バインダには、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルアミド、ユリアまたはメラミン/ホルマリン樹脂、ポリエチレンイミン、ポリアミドポリアミン/エピクロルヒドリンなどの水溶性合成物などを用いてもよい。澱粉成分及びラテックス成分を用いたコート層7を基材層1の第2面1bに設けると、パール光沢層4の外面から入射した光が効果的に反射されるため、高い装飾性を表現しやすくなる。なお、コート層7は、基材層1の一方の面に形成されていても、両面に形成されていてもよい。本実施形態では、コート層7は、少なくとも基材層1の第2面1bに形成されている。
基材層1の厚さは、例えば35〜300μmである。
図1の「1a」は基材層1の第1面である。「1b」は基材層1の第2面である。第2面1bは第1面1aの反対の面である。
【0022】
インク受容層2は、基材層1の第1面1aに形成される。インク受容層2は、例えば、染料染着性を有する樹脂材料を含む層である。インク受容層2は、熱転写受像シート10への印画の際に、熱転写シートに担持されたインク(染料)が転写される。前記樹脂材料は、例えば、インクを染着し易いバインダ樹脂に、必要に応じて離型剤等の各種添加剤を加えて構成される。バインダ樹脂としては、ポリオレフィン樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン等);ビニル系樹脂(ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のハロゲン化樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸エステル、その共重合体等);ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等);ポリスチレン系樹脂;ポリアミド系樹脂;オレフィン(エチレン、プロピレン等)と他のビニル系モノマーとの共重合体;アイオノマー;セルロース誘導体;アクリル樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は単独で用いてもよいし、2以上を併用してもよい。離型剤としては、例えば、シリコーンオイル、リン酸エステル系可塑剤、フッ素系化合物などが挙げられる。インク受容層2の坪量は、例えば0.5〜6.0g/m
2としてよい。
【0023】
接着層3は、基材層1の第2面1bに形成されている。接着層3を構成する接着剤は、例えば、酢酸ビニル樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル−アクリル系共重合体、酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリウレタン樹脂、天然ゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴムなどが挙げられる。これらの材料は単独で用いてもよいし、2以上を併用してもよい。
【0024】
第2面パール光沢層4(パール光沢層)は、接着層3の下面(基材層1側とは反対の面)に形成されている。すなわち、第2面パール光沢層4は、接着層3を介して基材層1の第2面1bに接着されている。第2面パール光沢層4は、基材層1の第2面1bの側に設けられているといえる。
【0025】
第2面パール光沢層4は、例えば、基材樹脂に、後述する核材5が添加されて構成される。基材樹脂は、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)等のポリエステル系樹脂などが使用できる。基材樹脂としては、プロピレン系重合体組成物(ポリプロピレン組成物)が好ましい。
【0026】
図2に示すように、第2面パール光沢層4は、複数の核材5と、複数の空隙部6とを有する。
図2において、Z方向は第2面パール光沢層4の厚さ方向である。核材5は、無機物であっても有機物であってもよいが、無機物であることが好ましい。
【0027】
核材5としては、例えば、(i)填料粉末、(ii)無機顔料、(iii)有機顔料、(iv)パール顔料などを使用できる。(i)〜(iv)は単独で用いてもよいし、2以上を併用してもよい。
(i)填料粉末としては、炭酸カルシウム、クレー(カオリン)、水酸化アルミニウム、焼成クレー、タルク、シリカ、ゼオライト、硫酸バリウム、硫酸アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ケイ素、スチレン樹脂粉、フェノール樹脂粉等が使用できる。これらの材料は単独で用いてもよいし、2以上を併用してもよい。
(ii)無機顔料としては、酸化チタン、赤酸化鉄、酸化亜鉛、酸化クロム、鉄黒、複合酸化物(たとえば、チタンエロー系、亜鉛−鉄系ブラウン、チタン・コバルト系グリーン、コバルトグリーン、コバルトブルー、銅−クロム系ブラック、銅−鉄系ブラック)などの酸化物;カーボンブラック等の炭素;黄鉛、モリブデートオレンジ等のクロム酸塩;紺青等のフェロシアン化物;カドミウムエロー、カドミウムレッド、硫化亜鉛などの硫化物;硫酸バリウムなどの硫酸塩;塩酸塩;群青等のケイ酸塩;炭酸カルシウム等の炭酸塩;マンガンバイオレット等のリン酸塩;黄色酸化鉄等の水酸化物;アルミニウム粉、ブロンズ粉等の金属粉;チタン被覆雲母等が使用できる。これらの材料は単独で用いてもよいし、2以上を併用してもよい。
(iii)有機顔料としては、アゾ顔料(モノアゾ(アセト酢酸アリリド)系、ジスアゾ系、β−ナフトール・ナフトールAS系、アゾレーキ系、ベンズイミダゾロン系、ジスアゾ縮合系)、金属錯体顔料、フタロシアニン顔料、イソインドリノン・イソインドリン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、ジケトピロロビロール顔料、キノフタロン顔料、Vat染料系顔料(ペリレン・ペリノン系、チオインジゴ系、アントラキノン系)等が使用できる。これらの材料は単独で用いてもよいし、2以上を併用してもよい。
(iv)パール顔料としては、酸化チタン被覆雲母(雲母チタン)、酸化チタン被覆ガラスフレーク、酸化チタン被覆タルク等を使用することができる。これらの材料は単独で用いてもよいし、2以上を併用してもよい。
これらの核材5の中でも、過度な光沢感を抑え、良好な視認性を得やすいことから炭酸カルシウムおよび酸化チタンを用いることが好ましく、特に、炭酸カルシウムが好適である。
【0028】
核材5の体積平均粒径は、例えば0.3μm〜5μmであることが好ましい。個数平均粒径は、0.3μm〜2μmであることが好ましい。また、核材5の標準偏差は、2以下が好ましい。このような粒子径及び粒度分布であることにより、より効果的に多重反射の効果を奏し、良好な視認性と高い装飾性を得やすくなる。平均粒径は、例えばレーザー回折散乱法に基づく粒度分布測定装置によって測定することができる。
核材5の平均粒径、標準偏差は、例えばマイクロトラックベル社製、MT3300IIで測定することができる。第2面パール光沢層4から核材5を分離する方法としては、例えば第2面パール光沢層4を525℃、30分の条件で加熱し、残渣(核材5)を集める方法がある。
平均粒径は、粒子を観察した画像に基づく十分な数(例えば100以上)の粒子についての測定値の平均値を採用してもよい。粒子の画像は、例えば光学顕微鏡、電子顕微鏡などを用いて得られた観察画像である。非球形の粒子の粒径は、例えば観察画像における最長径と最短径の平均値であってよい。
【0029】
第2面パール光沢層4における核材5の含有率(核材5の添加量)は、2〜20質量%が好ましく、2〜10質量%がより好ましく、2〜8質量%が更に好ましい。核材5の配合量(含有率)が2質量%以上であると優れたパール光沢感が得られる。核材5の配合量(含有率)が20質量%以下(特に10質量%以下)であると、印字・印刷面の視認性、および第2面パール光沢層4の強度を高くできる。第2面パール光沢層4中における核材5の含有率は、例えば、第2面パール光沢層4の燃焼灰分の重量測定によって算出できる。核材5の含有率は、断面観察画像と化学分析の併用等により求めることもできる。
【0030】
空隙部6は、1または複数の核材5を含む。複数の空隙部6のうち少なくとも一部は、厚さ方向が第2面パール光沢層4の厚さ方向に沿う扁平形状である。厚さ方向から見た空隙部6の形状は、例えば円形状、楕円形状、多角形状(矩形状、三角形状など)等である。扁平形状とは、例えば、厚さ方向から見た空隙部6の平均外形寸法が厚さより大である形状である。例えば、厚さ方向から見た空隙部6の形状が円形である場合、空隙部6の直径(平均外形寸法)が厚さ寸法より大であると、空隙部6は扁平形状であるといえる。平均外形寸法としては、例えば光学顕微鏡、電子顕微鏡などを用いて得られた空隙部6の観察画像における最長径と最短径の平均値を採用してよい。なお、
図2では、すべての空隙部6は、厚さ方向が第2面パール光沢層4の厚さ方向に沿う扁平形状である。
【0031】
空隙部6のアスペクト比(
図2に示す長さL1/厚さT1)は、例えば5〜70である。アスペクト比が5以上であると乱反射より多重反射が優位となるためパール光沢感が高められる。アスペクト比が70以下であると第2面パール光沢層4の強度が高くなるため層内剥離等が生じにくくなる。なお、長さL1は、例えば空隙部6の最長径である。厚さT1は、例えば空隙部6の最短径である。
【0032】
厚さ方向が第2面パール光沢層4の厚さ方向(Z方向)に沿う扁平形状の空隙部6のうち2以上は、第2面パール光沢層4内における、厚さ方向(Z方向)の位置が異なる。例えば、複数の空隙部6のうち空隙部6A,6B,6C,6D,6E,6Fは、第2面パール光沢層4内における厚さ方向(Z方向)の位置が互いに異なる。これにより、第2面パール光沢層4に入射した光は多重反射するため、パール光沢が発現される。
なお、ここでいう「空隙部6の厚さ方向が第2面パール光沢層4の厚さ方向に沿う」において、空隙部6の厚さ方向は厳密に第2面パール光沢層4の厚さ方向に一致している必要はない。例えば、空隙部6の厚さ方向と第2面パール光沢層4の厚さ方向とがなす角度が10°以下であれば「空隙部6の厚さ方向が第2面パール光沢層4の厚さ方向に沿う」を満たすと考えることができる。
【0033】
空隙部6は、後述するように、複数の核材5を含む基材樹脂を一軸または二軸延伸(押出延伸)することで形成することができる。押出延伸により基材樹脂と核材5との間に空間が形成されることによって第2面パール光沢層4に空隙部6が形成される。
【0034】
第2面パール光沢層4のフリップフロップインデックス値(FI)は4以上、20以下である。FIは、次の式(1)によって算出できる。
【0035】
FI=2.69×(L
*15°−L
*110°)
1.11/L
*45°
0.86 ・・・(1)
【0036】
L
*15°、L
*45°、L
*110°は、それぞれ、積層された面の垂線方向に対して45°の角度で入射した光の正反射光からのオフセット角15°、45°、110°のJIS Z8729で規定されるL
*a
*b
*表色系のL
*である。測色には、例えば、株式会社村上色彩技術研究所の変角分光測色システムGCMS−4型を使用できる。
なお、第2面パール光沢層が最表面でない場合(第2面パール光沢層の表面にインク受容層、接着層、裏印刷層等がある場合)には、基材樹脂へのダメージがない(若しくは基材樹脂へのダメージが小さい)溶剤を使用して、インク受容層、接着層、裏印刷層等を除去した後に、FIを測定することができる。
【0037】
FIが4以上であることにより、第2面パール光沢層4は十分なパール光沢を発現できる。FIが20以下であることにより、ユーザーが第2面パール光沢層4を目視したときに目にかかる負担を抑えることができると共に、過度の光沢感による視認性の低下を抑えることができる。
【0038】
第2面パール光沢層4の表面4aから空隙部6までの最短距離(
図2に示す距離L2)は、10μm以下(好ましくは3μm以下)であることが好ましい。表面4aから空隙部6までの最短距離L2とは、例えば、表面4aから、最も表面4aに近い空隙部6までの距離である。第2面パール光沢層4の表面4aから空隙部6までの最短距離が10μm以下(好ましくは3μm以下)であることによって、第2面パール光沢層4の表層部分における核材5による乱反射によりパール光沢感が損なわれるのを防ぐことができる。そのため、第2面パール光沢層4のパール光沢感を高めることができる。
【0039】
第2面パール光沢層4の表面4aから空隙部6までの最短距離L2は、1μm以上であってもよい。本実施形態では、第2面パール光沢層4は、空隙部が存在しない表層部分4Aと、表層部分4A以外の主部4Bとを備える。表層部分4Aは、表面4aから、最も表面4aに近い空隙部6までの深さ範囲の領域である。表層部分4Aは、主部4Bの表面に形成される。最短距離L2は表層部分4Aの厚さである。最短距離L2は、1μm以上であると、第2面パール光沢層4の光沢感を適度に抑制し、視認性および装飾性を確保し易い。空隙部が存在しない表層部分4Aは、1μm未満でも構わない。すなわち、表層部分4Aの存在自体が、視認性、装飾性の確保には重要となる。
【0040】
第2面パール光沢層4に、空隙部が存在しない表層部分4Aを形成する方法は特に限定されないが、例えば、共押出法を採用できる。共押出法によれば、例えば、核材5を含まない第1材料と、核材5を含む第2材料とを共通のダイスで押出成形・積層して積層シートを得る。第1材料層(第1材料で構成される層)は表層部分4Aとなり、第2材料層(第2材料で構成される層)は主部4Bとなる。主部4Bは、核材5および空隙部6を含む。表層部分4Aと主部4Bとは一体形成されていてよい。表層部分4Aと主部4Bとの間には境界が形成されていてもよいし、表層部分4Aと主部4Bとは境目なしで一体化されていてもよい。
【0041】
図3は、共押出法に使用できる共押出成形装置の一例である共押出成形装置50を示す構成図である。共押出成形装置50は、ダイス51を備える。ダイス51は、第1の流路52と第2の流路53とが形成されている。加熱により溶融した第1材料および第2材料は、それぞれ第1の流路52および第2の流路53に導入される。第1材料層54と第2材料層55はダイス51内で積層シート56となって導出される。
本実施形態では、積層シート56は第1材料層54と第2材料層55とを有する2層構造体であるが、積層シートを構成する層の数は3以上の任意の数であってもよい。例えば、積層シートは、第2材料層の一方の面に第1材料層が積層され、他方の面に、核材を含まない第3材料で構成された第3材料層が形成されていてもよい。この積層シートは、第1材料層と第2材料層と第3材料層とがこの順で積層された3層構造体となる。この積層シートを作製するには、3つの流路(第1〜第3の流路)が形成されたダイスを備えた共押出成形装置を使用し、第1〜第3材料をそれぞれ第1〜第3の流路に導入する。第1〜第3材料層はダイス内で3層構造の積層シートとなって導出される。
【0042】
第2面パール光沢層4の表面4aから空隙部6までの最短距離L2は、光学顕微鏡、電子顕微鏡などを用いて得られた第2面パール光沢層4の断面画像に基づいて測定できる。例えば、SEM(走査型電子顕微鏡)等の顕微鏡による第2面パール光沢層4の複数の視野(例えば5視野以上)の断面画像について、それぞれ表面4aから空隙部6までの最短距離を測定し、それらの平均値を、当該第2面パール光沢層4における表面4aから空隙部6までの最短距離と認定することができる。
【0043】
第2面パール光沢層4の密度は、0.65g/cm
3〜0.80g/cm
3であることが好ましい。第2面パール光沢層4の密度は0.65g/cm
3以上であると第2面パール光沢層4の剛性が高くなる。第2面パール光沢層4の密度は0.80g/cm
3以下であると第2面パール光沢層4の光沢感が高くなる。
【0044】
図4は、第2面パール光沢層4の第1の例の断面を示す写真である。
図5は、第2面パール光沢層4を拡大した写真である。
図6は、第2面パール光沢層4の第2の例の断面を示す写真である。
図7は、第2面パール光沢層4を拡大した写真である。
図4〜
図7より、第2面パール光沢層4は、複数の核材5と、核材5を含む複数の空隙部6とを有することがわかる。また、
図5、
図7に示す通り、第2面パール光沢層4は、核材5を含まない表層部分4Aを備えていることがわかる。
【0045】
(熱転写受像シートの製造方法)
図1に示すように、熱転写受像シート10は、例えば次の方法により製造することができる。
【0046】
(第1工程)
基材層1の第1面1aにインク受容層2を設ける。
【0047】
(第2工程)
基材樹脂中に核材5を分散させた混練物をシート化する。このシートを一軸または二軸延伸(押出延伸)することにより、第2面パール光沢層4となる基材樹脂シートを得る。延伸により基材樹脂と核材5との間に空間が形成されることによって、基材樹脂シート(第2面パール光沢層4)内には空隙部6が形成される。この基材樹脂シートを、接着層3を介して基材層1の第2面1bに貼り付ける。
【0048】
空隙部が存在しない表層部分4Aを第2面光沢層4に形成する場合には、核材5を添加していない第1材料と、核材5が添加された第2材料とを用いて、前述の共押出法等によって積層シートを形成すればよい。この積層シートを一軸または二軸延伸(押出延伸)することにより、第2面パール光沢層4となる基材樹脂シートを得る。積層シートを共押出法により形成する工程と、積層シートを延伸する工程とを、「押出延伸工程」と呼ぶことができる。
第2材料層(主部4B)には、延伸により基材樹脂と核材5との間に空間が形成されることによって、空隙部6が形成される。第1材料層(表層部分4A)は核材5を含まないため、空隙部6は形成されない。この基材樹脂シートを、接着層3を介して基材層1の第2面1bに貼り付ける。
以上の手順により、
図1に示す熱転写受像シート10を得る。なお、第1工程と第2工程とは、いずれが先でもよい。
【0049】
(第1実施形態の作用効果)
第1実施形態の熱転写受像シート10によれば、基材層1の第2面1b側(裏面側)に形成された第2面パール光沢層4が複数の扁平形状の空隙部6を有し、それら空隙部6が第2面パール光沢層4の厚さ方向に位置を違えて形成されている。そのため、第2面パール光沢層4に入射した光は空隙部6で多重反射し、パール光沢が発現される。よって、熱転写受像シート10は、基材層1の第2面1b側(裏面側)の装飾性に優れている。熱転写受像シート10は、第2面パール光沢層4のFIを前記範囲とすることによって、視認性を高めることができる。
【0050】
[第2実施形態]
(熱転写受像シート)
以下、第2実施形態の熱転写受像シート110について
図8を参照して説明する。なお、第1実施形態の熱転写受像シート10と同一の構成には、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0051】
図8に示す熱転写受像シート110は、基材層1と、接着層8と、第1面パール光沢層9と、アンカー層11と、インク受容層2と、接着層3と、第2面パール光沢層4と、裏印刷層13とを備えている。
接着層8は、基材層1の第1面1aに形成されている。接着層8は、
図1の接着層3と同様の構成である。
【0052】
第1面パール光沢層9(パール光沢層)は、
図1の第2面パール光沢層4と同様の構成である。そのため、第1面パール光沢層9は、複数の核材5と、複数の空隙部6とを有する(
図2参照)。第1面パール光沢層9は、接着層8の上面(基材層1側とは反対の面)に形成されている。第1面パール光沢層9は、接着層8を介して基材層1の第1面1aに接着されている。第1面パール光沢層9は、基材層1とインク受容層2との間に位置する。第1面パール光沢層9のFIは、第2面パール光沢層4のFIと同様に、4以上、20以下である。
【0053】
第1面パール光沢層9における核材5(
図2参照)の含有率(核材5の添加率)は、第2面パール光沢層4における核材5の含有率と同様に、2〜20質量%が好ましく、2〜10質量%がより好ましく、2〜8質量%が更に好ましい。
【0054】
第1面パール光沢層9の表面9a(
図8の上面)から空隙部6(
図2参照)までの最短距離は、第2面パール光沢層4の表面4aから空隙部6までの最短距離(
図2に示す距離L2)と同様に、10μm以下(好ましくは3μm以下)であることが好ましい。第1面パール光沢層9の表面9aから空隙部6までの最短距離は、1μm以上であることが好ましい。第1面パール光沢層9の表面9aから最も表面9aに近い空隙部6までの深さ範囲の領域は、空隙部が存在しない表層部分である。
【0055】
アンカー層11は、第1面パール光沢層9の上面(基材層1側とは反対の面)に形成されている。アンカー層11は、第1面パール光沢層9に対するインク受容層2の接着性を高める。アンカー層11は、例えば、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノ−ル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂などで構成されている。
インク受容層2は、アンカー層11の上面(基材層1側とは反対の面)に形成されている。
【0056】
裏印刷層13は、公知の印刷法により形成された印刷層である。裏印刷層13は、第2面パール光沢層4の表面4a(基材層1側とは反対の面)に形成されている。
【0057】
(熱転写受像シートの製造方法)
熱転写受像シート110は、例えば次の方法により製造することができる。
【0058】
(第1工程)
第1実施形態と同様にして、基材樹脂中に核材5を分散させたシートを一軸または二軸延伸(押出延伸)することにより、空隙部6を有する第1基材樹脂シート(第1面パール光沢層9)を得る。この第1基材樹脂シートを、接着層8を介して基材層1の第1面1aに貼り付けることにより、基材層1と接着層8と第1面パール光沢層9とを有する積層体を得る。第1面パール光沢層9の表面9aにアンカー層11を形成する。次いで、アンカー層11の表面にインク受容層2を形成する。
【0059】
第1工程では、前述の方法に代えて、次の方法を採用してもよい。第1基材樹脂シートにアンカー層11を形成する。次いで、アンカー層11の表面にインク受容層2を形成する。第1基材樹脂シートのアンカー層の側とは反対の面を、接着層8を介して基材層1の第1面1aに貼り付ける。
【0060】
第1基材樹脂シート(第1面パール光沢層9)に空隙部が存在しない表層部分を形成する場合には、第1実施形態で説明したように、核材5を添加していない第1材料と、核材5が添加された第2材料とを用いて、前述の共押出法等によって積層シートを形成すればよい。
【0061】
(第2工程)
第1実施形態と同様にして、空隙部6を有する第2基材樹脂シート(第2面パール光沢層4)を得る。この第2基材樹脂シートを、接着層3を介して基材層1の第2面1bに貼り付け、次いで、第2基材樹脂シート(第2面パール光沢層4)の表面に裏印刷層13を形成する。
以上の手順により、
図8に示す熱転写受像シート110を得る。なお、第1工程と第2工程とは、いずれが先でもよい。
【0062】
(第2実施形態の作用効果)
第2実施形態の熱転写受像シート110によれば、第1面パール光沢層9および第2面パール光沢層4が複数の扁平形状の空隙部6を有し(
図2参照)、それら空隙部6はパール光沢層9,4の厚さ方向に位置を違えて形成されている。そのため、パール光沢層9,4に入射した光は空隙部6で多重反射し、パール光沢が発現される。よって、熱転写受像シート110は、基材層1の第1面1a側(表面側)および第2面1b側(裏面側)の装飾性に優れている。熱転写受像シート110は、パール光沢層9,4のFIを前記範囲とすることによって、視認性を高めることができる。
【0063】
[第3実施形態]
(熱転写受像シート)
以下、第3実施形態の熱転写受像シート210について
図9を参照して説明する。なお、第1実施形態の熱転写受像シート10または第2実施形態の熱転写受像シート110と同一の構成には、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0064】
図9に示す熱転写受像シート210は、第1基材層15と、接着層8と、第1面パール光沢層9と、アンカー層11と、インク受容層2と、ICタグ部16と、第2基材層17と、接着層3と、第2面パール光沢層4と、裏印刷層13とを備えている。
【0065】
第1基材層15および第2基材層17は、
図1の基材層1と同様の構成である。接着層8、第1面パール光沢層9、アンカー層11およびインク受容層2は、第1基材層15の第1面15a側に形成されている。接着層3、第2面パール光沢層4、および裏印刷層13は、第2基材層17の第2面17b側に形成されている。
【0066】
ICタグ部16は、第1基材層15の第2面15bと、第2基材層17の第1面17aとの間に形成されている。ICタグ部16は、接着層21と、インレイ22と、接着層23と、穴あきコート層24と、接着層25とをこの順で備えている。インレイ22は、図示しないICチップと、ICチップに電気的に接続されるアンテナを備える。また、インレイ22と穴あきコート層24の位置は入れ替わっても構わない。
【0067】
(熱転写受像シートの製造方法)
熱転写受像シート210は、例えば次の方法により製造することができる。
【0068】
(第1工程)
ICタグ部16の両面にそれぞれ第1基材層15および第2基材層17が形成された積層体を作製する。
【0069】
(第2工程)
第2実施形態と同様にして、空隙部6を有する第1基材樹脂シート(第1面パール光沢層9)を得る。この第1基材樹脂シートを、接着層8を介して第1基材層15の第1面15aに貼り付ける。次いで、アンカー層11およびインク受容層2を形成する。
【0070】
(第3工程)
第2実施形態と同様にして、空隙部6を有する第2基材樹脂シート(第2面パール光沢層4)を得る。この第2基材樹脂シートを、接着層3を介して第2基材層17の第2面17bに貼り付ける。次いで、裏印刷層13を形成する。
以上の手順により、
図9に示す熱転写受像シート210を得る。なお、第1〜第3工程は、順序を問わない。
【0071】
熱転写受像シート210は、前述の方法に代えて、次の方法により製造することもできる。
(第1工程)
第2実施形態と同様にして、空隙部6を有する第1基材樹脂シート(第1面パール光沢層9)を得る。第1基材樹脂シートにアンカー層11を形成する。次いで、アンカー層11の表面にインク受容層2を形成する。第1基材樹脂シートのアンカー層11の側とは反対の面を、接着層8を介して第1基材層15の第1面15aに貼り付けて第一の積層体を得る。
【0072】
(第2工程)
第2実施形態と同様にして、空隙部6を有する第2基材樹脂シート(第2面パール光沢層4)を得る。第2基材樹脂シートを、接着層3を介して第2基材層17の第2面17bに貼り付ける。次いで、裏印刷層13を形成する。第2基材層17の第1面17aを、接着層25を介して穴あきコート層24に貼り付けて第二の積層体を得る。
【0073】
(第3工程)
第一の積層体の第1基材層15の第2面15bと、第二の積層体の穴あきコート層24の第2基材層17の側とは反対の面(すなわち、
図9において穴あきコート層24の上面)とを、インレイ22に、それぞれ接着層21および接着層23を介して貼り付ける。
以上の手順により、
図9に示す熱転写受像シート210を得る。なお、第1〜第3工程は、順序を問わない。
【0074】
(第3実施形態の作用効果)
第3実施形態の熱転写受像シート210によれば、第1面パール光沢層9および第2面パール光沢層4が複数の扁平形状の空隙部6を有し(
図2参照)、それら空隙部6はパール光沢層9,4の厚さ方向に位置を違えて形成されている。そのため、パール光沢層9,4に入射した光は空隙部6で多重反射し、パール光沢が発現される。よって、熱転写受像シート210は、第1基材層15の第1面15a側(表面側)および第2基材層17の第2面17b側(裏面側)の装飾性に優れている。熱転写受像シート210は、パール光沢層9,4のFIを前記範囲とすることによって、視認性を高めることができる。
熱転写受像シート210は、ICタグ部16を備えるため、非接触型情報媒体としての機能も有する。
【0075】
[第4実施形態]
(熱転写受像シート)
以下、第4実施形態の熱転写受像シート310について
図10を参照して説明する。なお、第1〜第3実施形態の熱転写受像シート10,110,210のいずれかと同一の構成には、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0076】
図10に示す熱転写受像シート310は、基材層1と、接着層8と、第1面パール光沢層9と、アンカー層11と、インク受容層2と、裏印刷層13とを備えている。裏印刷層13は、基材層1の第2面1bに形成されている。
【0077】
(熱転写受像シートの製造方法)
熱転写受像シート310は、例えば次の方法により製造することができる。
【0078】
(第1工程)
第2実施形態と同様にして、基材層1の第1面1aに接着層8を介して第1面パール光沢層9を形成する。次いで、アンカー層11およびインク受容層2を形成する。
第1工程では、前述の方法に代えて、次の方法を採用してもよい。第2実施形態と同様にして、第1基材樹脂シート(第1面パール光沢層9)を作製する。第1基材樹脂シートにアンカー層11およびインク受容層2を形成する。第1基材樹脂シートのアンカー層11の側とは反対の面を、接着層8を介して基材層1の第1面1aと貼り付ける。
【0079】
(第2工程)
基材層1の第2面1bに裏印刷層13を形成する。
以上の手順により、
図10に示す熱転写受像シート310を得る。なお、第1工程と第2工程とは、いずれが先でもよい。
【0080】
(第4実施形態の作用効果)
第4実施形態の熱転写受像シート310によれば、第1面パール光沢層9が複数の扁平形状の空隙部6を有し(
図2参照)、それら空隙部6は第1面パール光沢層9の厚さ方向に位置を違えて形成されている。そのため、第1面パール光沢層9に入射した光は空隙部6で多重反射し、パール光沢が発現される。よって、熱転写受像シート310は、基材層1の第1面1a側(表面側)の装飾性に優れている。熱転写受像シート310は、第1面パール光沢層9のFIを前記範囲とすることによって、視認性を高めることができる。
【0081】
[第5実施形態]
(熱転写受像シート)
以下、第5実施形態の熱転写受像シート410について
図11を参照して説明する。なお、第1〜第4実施形態の熱転写受像シート10,110,210,310のいずれかと同一の構成には、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0082】
図11は、第5実施形態の熱転写受像シート410を示す模式図である。
図12は、熱転写受像シート410の断面の一部を示す写真である。
図13は、熱転写受像シート410の断面の一部(
図12に仮想線で示す矩形部分)を拡大して示す写真である。
図14は、熱転写受像シート410のカバー層26の表面26aを示す写真である。
【0083】
図11に示す熱転写受像シート410は、第1基材層15と、接着層8と、第1面パール光沢層9と、アンカー層11と、インク受容層2と、ICタグ部16と、第2基材層17と、接着層3と、第2面パール光沢層4と、裏印刷層13と、カバー層26を備えている。
【0084】
インク受容層2から第2面パール光沢層4までの構成は、
図9に示す熱転写受像シート210と同様の構成である。裏印刷層13は、第2基材層17の第2面17b側にある。裏印刷層13は、第2面パール光沢層4の第2面(
図11において下面)を部分的に覆っている。カバー層26は、裏印刷層13の、第2面パール光沢層4とは逆の面(
図11において下面)側に形成されている。カバー層26は、裏印刷層13および第2面パール光沢層4を覆っている。
【0085】
カバー層26は、透光性を有する材料で形成されていることが好ましい。透光性を有する材料としては、例えば、ロジン変性フェノール樹脂、マレイン酸ロジン、重合ロジンエステルなどのロジン系樹脂;エステル系樹脂;アミド系樹脂;さらに、紫外線硬化型樹脂としてラジカル重合性のポリオールアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ロジン変性エポキシアクリレート、ロジン変性アクリレートなどの多官能オリゴアクリレートが例示される。
カバー層26は、通常のオフセット印刷、スクリーン印刷など公知の方法によって印刷することにより形成することができる。
【0086】
カバー層26には、例えば酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、アルミナ、炭酸カルシウム等のフィラーを添加してもよい。カバー層26にこのようなフィラーを添加すると、過度の光沢感を抑え、裏印刷層等の視認性を高め易い。これらフィラーの粒子径は限定されないが、0.1μm〜1.5μmが適度な光沢感と視認性の面から好適である。また、カバー層26の層厚は特に限定されないが、0.8μm〜5μmが好適である。カバー層26の裏印刷層13とは反対の面(
図11において下面)である表面26aは、
図14に示すように、緩やかな凹凸を有していてもよい。前記凹凸は、例えば、凸部26bおよび凹部26cによって構成される。
カバー層26がフィラーや凹凸を有することにより、過度な光沢感を抑え、裏印刷層等の良好な視認性と高い装飾性を得やすくなる。
【0087】
(熱転写受像シートの製造方法)
熱転写受像シート410は、例えば次の方法により製造することができる。
【0088】
(第1工程)
第2実施形態と同様にして、第1基材樹脂シート(第1面パール光沢層9)を作製する。第1基材樹脂シートを、第1基材層15の第1面15aに接着層8を介して貼り付ける。次いで、アンカー層11およびインク受容層2を形成する。これにより、第一の積層体を得る。
第1工程では、前述の方法に代えて、次の方法を採用してもよい。第1基材樹脂シート(第1面パール光沢層9)を作製する。第1基材樹脂シートにアンカー層11およびインク受容層2を形成する。第1基材樹脂シートのアンカー層11の側とは反対の面を、接着層8を介して第1基材層15の第1面15aと貼り付ける。これにより、第一の積層体を得る。
【0089】
(第2工程)
第2実施形態と同様にして、空隙部6を有する第2基材樹脂シート(第2面パール光沢層4)を作製する。第2基材樹脂シートを、接着層3を介して第2基材層17の第2面17bに貼り付ける。次いで、裏印刷層13を形成する。裏印刷層13およびパール光沢層4の、第2基材層17とは反対の面(
図11において下面)にカバー層26を印刷により形成する。第2基材層17の第1面17aを、接着層25を介して穴あきコート層24に貼り付けて第二の積層体を得る。
【0090】
(第3工程)
第一の積層体の第1基材層15の第2面15bと、第二の積層体の穴あきコート層24の第2基材層17の側とは反対の面(すなわち、
図11において穴あきコート層24の上面)とを、インレイ22に、それぞれ接着層21および接着層23を介して貼り付ける。
以上の手順により、
図11に示す熱転写受像シート410を得る。なお、第1〜第3工程は、順序を問わない。
【0091】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これは例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。上述の実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の置換、及び変更等を行うことができる。例えば、
図1に示す熱転写受像シート10、または、
図10に示す熱転写受像シート310に、
図9に示すICタグ部16を適用してもよい。
第2面パール光沢層4内における、厚さ方向(Z方向)の位置が異なる空隙部6の数は、2以上の任意の数であってよい。
【0092】
「核材を含まない」とは、実質的に核材を含まないことをいう。例えば、顕微鏡によるパール光沢層の複数の視野(例えば、
図5と同様の倍率(5000倍)の画像の5視野以上)の断面画像において核材が観察されない場合、当該表層部分には実質的に核材が含まれないと考えることができる。また、主部の核材含有率(質量比)に比べて表層部分の核材含有率(質量比)が100分の1以下なら、表層部分は実質的に核材を含まないといえる。
【実施例】
【0093】
(実施例1〜9および比較例1〜5)
表1に示す核材5を用いて、
図1に示す態様の熱転写受像シート10を次のようにして作製した。第2面パール光沢層4を構成する基材樹脂としては、ポリプロピレン系重合体組成物を用いた。表1における「パール光沢層の表面から空隙部までの最短距離」は、第2面パール光沢層4の表面4aから空隙部6までの最短距離である。基材樹脂中に核材を分散させた混練物をシート化した。このシートを二軸延伸することで、空隙部6を有する基材樹脂シート(第2面パール光沢層4)を得た。
【0094】
スチレンブタジエンラテックス、燐酸エステル化澱粉等で構成されるコート層を有する基材層1(コート紙)の第1面1aにインク受容層2を形成した。前記基材樹脂シート(第2面パール光沢層4)に接着剤を塗布して接着層3とした。接着層3に基材層1の第2面1bを貼り付けることにより、
図1に示す熱転写受像シート10を得た。第2面パール光沢層4の表面4aに、裏印刷層(
図11に示す裏印刷層13を参照)と、カバー層(
図11に示すカバー層26を参照)を形成した。
【0095】
(実施例10〜13)
図1に示す態様の熱転写受像シート10を次のようにして作製した。核材を含まない第1材料と、核材5(表1を参照)が添加された第2材料とを用いて、共押出法等によって積層シートを形成した。この積層シートは、第2材料層の両面に第1材料層が形成されている。この積層シートを二軸延伸することで、空隙部6を有する主部4B(
図2参照)と、主部4Bの両面に形成された表層部分4A(
図2参照)とを備えた基材樹脂シート(第2面パール光沢層4)を得た。第2面パール光沢層4の表面4aから空隙部6までの最短距離(表層部分4Aの厚さ)は、第1材料の供給量を調整することによって表1に示す値に設定した。その他の条件は実施例1〜9と同様とした。
【0096】
(実施例14,15)
第2面パール光沢層4の表面4aから空隙部6までの最短距離(表層部分4Aの厚さ)を表2に示す通りとしたこと以外は実施例10〜13と同様にして、
図1に示す態様の熱転写受像シート10を作製した。
【0097】
メチルエチルケトン(MEK)を用いて裏印刷層及びカバー層を除去した後、第2面パール光沢層4のフリップフロップインデックス値(FI)を測定した。FIの測定には、株式会社村上色彩技術研究所 変角分光測色システムGCMS−4型を用いた。測定条件として、光源D50、2度視野を採用した。FIは前述の式(1)に従って算出した。結果を表1に示す。
【0098】
実施例1〜13および比較例1〜5の熱転写受像シート(裏印刷層は未除去)の視認性とパール光沢感を、無作為に抽出した評価者5名により評価した。評価基準は以下の通りであり、10名の平均点を最終評価結果とした。結果を「視認性・光沢感の評価」として表1に示す。
5〜4:印字または、印刷面の視認性が極めて良好であり、かつパール光沢感が充分にある。
4未満〜3:印字または、印刷面の視認性が良好であり、かつパール光沢感がある。
3未満〜2:わずかにパール光沢感がある、あるいは光沢感が強く視認性が妨げられる傾向がある。
2未満:光沢感がない、あるいは光沢感が強すぎて視認性が著しく妨げられる。
【0099】
実施例1,10〜15の熱転写受像シートについては、装飾性についても評価者5名により評価した。評価基準は以下の通りであり、5名の平均的な評価を最終評価結果とした。結果を表2に示す。
◎(Very Good):光沢感が適度に抑制され、装飾性は非常に優れる。
〇(Good):光沢感が適度に抑制され、装飾性は良好である。
△(Fair):光沢感が非常に高い、または光沢感がやや低い。そのため、装飾性は良好であるものの、改善の余地がある。
×(Not good):光沢感が過剰または不足するため装飾性の点で問題がある。
【0100】
【表1】
【0101】
【表2】
【0102】
表1に示す実施例1〜3の結果より、核材5の粒径はFIに影響を及ぼすことがわかる。核材5の粒径は小さいほど隠蔽力が増し、FIは低くなった。
実施例1,4〜6の結果に示されるように、核材5の添加量が少ないと空隙部6の数が少なくなりFIも低下する傾向にある。一方、核材5の添加量が多い場合もFIが低下する。FIが低下するのは、核材自体の乱反射が強くなるからであると推測できる。
実施例7〜9の結果より、核材5としてパール顔料(酸化チタン被覆雲母)を使用する場合、FIは高くなることがわかる。
実施例10〜13の結果に示されるように、第2面パール光沢層4の表面から空隙部6までの最短距離が小さいと、FIが高くなる傾向があった。
【0103】
表2に示す実施例1,10〜15の結果より、第2面パール光沢層4の表面4aから空隙部6までの最短距離(表層部分4Aの厚さ)を1μm〜10μmとすることによって、光沢感を適度に抑制し、装飾性に優れた熱転写受像シートが得られたことが判る。
【0104】
図15は、実施例および比較例の結果に基づき、核材5の添加量とFIとの関係を示すグラフである。
図16は、実施例および比較例の結果に基づき、パール顔料の添加量とFIとの関係を示すグラフである。
【0105】
図15より、核材5の添加量は2質量%〜10質量%が好ましく、この範囲より低いとFIが低くなることがわかる。
図15および
図16より、核材5としてパール顔料を使用することでFIは高くなることがわかる。