特許第6707203号(P6707203)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6707203誘電性シート、及び誘電性シートの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6707203
(24)【登録日】2020年5月21日
(45)【発行日】2020年6月10日
(54)【発明の名称】誘電性シート、及び誘電性シートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01B 17/60 20060101AFI20200601BHJP
   C01G 23/00 20060101ALI20200601BHJP
   B32B 7/025 20190101ALI20200601BHJP
   B32B 18/00 20060101ALI20200601BHJP
   B05D 5/12 20060101ALI20200601BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20200601BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20200601BHJP
   B05D 7/04 20060101ALI20200601BHJP
   B05D 1/36 20060101ALI20200601BHJP
   B05D 3/12 20060101ALI20200601BHJP
【FI】
   H01B17/60 A
   C01G23/00 C
   B32B7/025
   B32B18/00 C
   B05D5/12 Z
   B05D7/24 303E
   B05D7/24 303B
   B05D3/00 D
   B05D7/04
   B05D1/36 Z
   B05D3/12 Z
   B05D7/24 302A
   B05D7/24 301B
【請求項の数】14
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2019-533120(P2019-533120)
(86)(22)【出願日】2018年9月19日
(86)【国際出願番号】JP2018034597
(87)【国際公開番号】WO2019059216
(87)【国際公開日】20190328
【審査請求日】2019年6月17日
(31)【優先権主張番号】特願2017-183835(P2017-183835)
(32)【優先日】2017年9月25日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】特許業務法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大高 翔
(72)【発明者】
【氏名】廣永 麻貴
(72)【発明者】
【氏名】宮田 壮
【審査官】 神田 太郎
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/128270(WO,A1)
【文献】 特開2005−247660(JP,A)
【文献】 特開2012−015379(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 17/60
B05D 1/36
B05D 3/00
B05D 3/12
B05D 5/12
B05D 7/04
B05D 7/24
B32B 7/025
B32B 18/00
C01G 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材及びセラミックゲル層を有し、
前記セラミックゲル層が、金属アルコキシドを原料としたゾルゲル法により合成されたセラミックゲル(A)及び金属錯体(B)を含有するコーティング溶液から形成された層であり、
前記基材が、樹脂を含む樹脂シートである、
誘電性シート。
【請求項2】
金属錯体(B)が、チタン、アルミニウム、ジルコニウム、クロム、コバルト、鉄、マンガン、ニッケル、スズ、及び亜鉛から選ばれる金属の金属錯体である、請求項1に記載の誘電性シート。
【請求項3】
前記金属錯体が、金属キレートである、請求項2に記載の誘電性シート。
【請求項4】
金属錯体(B)が、チタン錯体(B1)を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の誘電性シート。
【請求項5】
金属錯体(B)の含有量が、前記コーティング溶液中の成分(A)の全量100質量部に対して、1〜35質量部である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の誘電性シート。
【請求項6】
前記金属アルコキシドが、
Mg、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Cd、Pb、及びBiから選ばれる金属原子を含む金属アルコキシド(I)と、
Ti、Zr、Hf、Sn、Sbから選ばれる金属原子を含む金属アルコキシド(II)とを含む、
請求項1〜5のいずれか一項に記載の誘電性シート。
【請求項7】
セラミックゲル(A)が、チタン酸バリウム(BaTiO)ゲルを含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の誘電性シート。
【請求項8】
前記セラミックゲル層を800℃まで加熱した際の、下記式から算出される質量減少率が10%以上である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の誘電性シート。
・質量減少率(%)=([加熱前の前記セラミックゲル層の質量]−[800℃まで加熱後の前記セラミックゲル層の質量])/[加熱前の前記セラミックゲル層の質量]×100
【請求項9】
前記基材が、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、アセテート樹脂、ABS樹脂、ポリスチレン樹脂、塩化ビニル樹脂から選ばれる1種以上の樹脂を含む樹脂シートである、請求項1〜8のいずれか一項に記載の誘電性シート。
【請求項10】
前記樹脂シートがプライマー処理が施された表面を有し、当該表面上に前記セラミックゲル層が直接積層した構成を有する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の誘電性シート。
【請求項11】
周波数1GHzにおける誘電正接(tanδ)が8.0×10−2以下である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の誘電性シート。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の誘電性シートを製造する方法であって、
下記工程(1)〜(2)を有する、誘電性シートの製造方法。
・工程(1):金属アルコキシドを原料としてゾルゲル法により合成したセラミックゲル(A)に、金属錯体(B)を配合し、コーティング溶液を調製する工程。
・工程(2):基材の表面上に、前記コーティング溶液を塗布して塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥してセラミックゲル層を形成する工程。
【請求項13】
工程(1)において、さらに酸触媒(C)を配合する、請求項12に記載の誘電性シートの製造方法。
【請求項14】
焼結工程を有しない、請求項12又は13に記載の誘電性シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘電性シート、及び、当該誘電性シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高周波の電磁波を発信又は受信する高周波デバイスの開発が進んでいる。
例えば、携帯電話、高速無線LAN、非接触型ICカードシステム、危険物検知センサー、自動車に組み込まれた衝突回避システム、GPS(Global Positioning System)測位システム、産業科学医療用機器等の装置は、10MHz以上の高周波を発信又は受信する高周波デバイスである。
【0003】
このような高周波デバイスは、消費電力が問題の一つとなっている。そのため、高周波デバイスを構成する部材には、消費電力の低減化に寄与するような材料が求められている。
また、消費電力に関する問題は、配線間距離が小さい集積回路を有する装置においても生じる事項であり、集積回路を構成する誘電材料についても、消費電力の低減効果が求められている。
【0004】
例えば、特許文献1には、チタン酸バリウム等の金属アルコキシドを0.5mol/L以上の高濃度で溶解した前駆体溶液をゲル化して得られる、結晶粒子を含む結晶性ゲルを均一に溶媒中に分散させた薄膜形成用コーティング溶液が開示されている。
特許文献1には、シリコン基板上に、当該コーティング溶液をコーティングして被膜層を形成した後、シリコン基板と共に被膜層を450〜800℃で焼成することで、高周波領域においても、比誘電率が高く、誘電正接が低い結晶性薄膜を形成できる旨の記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−275390号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のコーティング溶液を用いた結晶性薄膜の形成方法は、450〜800℃での焼成工程を経ることが前提であるため、コーティング溶液を塗布できる基材は、シリコン基板等の金属材に限られ、焼成工程での高温では耐えられない樹脂基材を用いることはできない。
また、本発明者らの検討によれば、樹脂基材上に、特許文献1に記載されたようなコーティング溶液を塗布し塗膜を形成し、当該塗膜を100℃程度で乾燥して形成したコーティング層は、耐溶剤性が劣ることが分かった。つまり、このような方法で形成されたコーティング層上に、さらに他の層を形成するために、溶剤を含む溶液を塗布した際、コーティング層が剥がれてしまうといった問題が生じ易い。
【0007】
本発明は、耐溶剤性に優れると共に、高周波領域において誘電正接が低いため、搭載される装置の消費電力の低減化に寄与し得る、誘電性シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、金属アルコキシドを原料としたゾルゲル法によって合成されたセラミックゲルと共に、金属化合物を含有するコーティング溶液から形成されたセラミックゲル層を有する誘電性シートが、上記課題を解決し得ることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明は、下記[1]〜[14]を提供する。
[1]基材及びセラミックゲル層を有し、前記セラミックゲル層が、金属アルコキシドを原料としたゾルゲル法により合成されたセラミックゲル(A)及び金属化合物(B)を含有するコーティング溶液から形成された層である、誘電性シート。
[2]金属化合物(B)が、チタン、アルミニウム、ジルコニウム、クロム、コバルト、鉄、マンガン、ニッケル、スズ、及び亜鉛から選ばれる金属の金属錯体である、上記[1]に記載の誘電性シート。
[3]前記金属錯体が、金属キレートである、上記[2]に記載の誘電性シート。
[4]金属化合物(B)が、チタン錯体(B1)を含む、上記[1]〜[3]のいずれか一項に記載の誘電性シート。
[5]金属化合物(B)の含有量が、前記コーティング溶液中の成分(A)の全量100質量部に対して、1〜35質量部である、上記[1]〜[4]のいずれか一項に記載の誘電性シート。
[6]前記金属アルコキシドが、Mg、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Cd、Pb、及びBiから選ばれる金属原子を含む金属アルコキシド(I)と、Ti、Zr、Hf、Sn、Sbから選ばれる金属原子を含む金属アルコキシド(II)とを含む、上記[1]〜[5]のいずれか一項に記載の誘電性シート。
[7]セラミックゲル(A)が、チタン酸バリウム(BaTiO)ゲルを含む、上記[1]〜[6]のいずれか一項に記載の誘電性シート。
[8]前記セラミックゲル層を800℃まで加熱した際の、下記式から算出される質量減少率が10%以上である、上記[1]〜[7]のいずれか一項に記載の誘電性シート。
・質量減少率(%)=([加熱前の前記セラミックゲル層の質量]−[800℃まで加熱後の前記セラミックゲル層の質量])/[加熱前の前記セラミックゲル層の質量]×100
[9]前記基材が、樹脂を含む樹脂シートである、上記[1]〜[8]のいずれか一項に記載の誘電性シート。
[10]前記基材が、樹脂を含む樹脂シートであって、当該樹脂シートがプライマー処理が施された表面を有し、当該表面上に前記セラミックゲル層が直接積層した構成を有する、上記[9]に記載の誘電性シート。
[11]周波数1GHzにおける誘電正接(tanδ)が8.0×10−2以下である、上記[1]〜[10]のいずれか一項に記載の誘電性シート。
[12]上記[1]〜[11]のいずれか一項に記載の誘電性シートを製造する方法であって、下記工程(1)〜(2)を有する、誘電性シートの製造方法。
・工程(1):金属アルコキシドを原料としてゾルゲル法により合成したセラミックゲル(A)に、金属化合物(B)を配合し、コーティング溶液を調製する工程。
・工程(2):基材の表面上に、前記コーティング溶液を塗布して塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥してセラミックゲル層を形成する工程。
[13]工程(1)において、さらに酸触媒(C)を配合する、上記[12]に記載の誘電性シートの製造方法。
[14]焼結工程を有しない、上記[12]又は[13]に記載の誘電性シートの製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の誘電性シートは、耐溶剤性に優れると共に、高周波領域において誘電正接が低いため、搭載される装置の消費電力の低減化に寄与し得る。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔誘電性シートの構成〕
本発明の誘電性シートは、基材及びセラミックゲル層を有するものであるが、これら以外の他の層を有していてもよい。
例えば、基材のセラミックゲル層が存在する側とは反対側の表面上に、更に粘着剤層を有してもよい。
当該粘着剤層を構成する粘着剤としては、誘電性シートの用途に応じて適宜選択されるが、例えば、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤等が挙げられる。
また、当該粘着剤層の厚さとしては、好ましくは1〜200μm、より好ましくは5〜150μm、更に好ましくは10〜100μmである。
【0012】
また、セラミックゲル層の基材が存在する側とは反対側の表面上に、更に剥離シートを有していてもよい。当該剥離シートは、誘電性シートの保管時にセラミックゲル層を保護するために設けられるものであり、誘電性シートの使用時には除去される。
なお、本発明の一態様の誘電性シートは、基材とセラミックゲル層とが直接積層した構成を有するものであることが好ましい。
【0013】
本発明の誘電性シートは、高周波領域において、比誘電率が高く、且つ誘電正接が低い。
なお、本明細書において、「高周波領域」とは、波長が通常10MHz以上(好ましくは50MHz以上、より好ましくは100MHz以上、更に好ましくは1GHz以上)の領域を意味する。
【0014】
ところで、一般的に、消費電力の大小は、伝播信号の減衰の程度を示す減衰定数aの値を指標とすることができ、減衰定数aが小さい誘電性シートほど、消費電力の低減効果に優れているといえる。
そして、減衰定数aは、下記式(i)に示すように、周波数f、比誘電率ε’、及び誘電正接tanδと関連することが知られている。
【0015】
【数1】

(上記式(i)において、aは減衰定数、fは周波数、ε’は比誘電率、tanδは誘電正接、Cは真空中の光速(=299792458m/s)を表す。)
【0016】
上記式(i)からも判るとおり、例えば、静電容量方式タッチパネル等の低周波デバイスにおいては、fが小さいため、減衰定数aはあまり大きくならず、消費電力が問題となる場合はあまり無い。
一方で、高周波デバイスにおいては、fが大きいために、減衰定数aが大きくなり、消費電力の上昇が問題となる。ここで、上記式(i)によれば、減衰定数aは、特に誘電正接tanδの値に対する依存度が大きいと考えられる。そのため、減衰定数aを小さくするためには、誘電正接tanδの値を小さくする必要がある。
本発明の誘電性シートは、高周波領域においても誘電正接が低いため、上記式(i)から算出される減衰定数aの値が小さくなり、消費電力が低減されると考えられる。
【0017】
本発明の一態様の誘電性シートの周波数100MHzにおける誘電正接(tanδ)は、好ましくは8.0×10−2以下、より好ましくは5.0×10−2以下、更に好ましくは1.0×10−2以下であり、また、通常、1.0×10−7以上である。
また、本発明の一態様の誘電性シートの周波数1GHzにおける誘電正接(tanδ)は、好ましくは8.0×10−2以下、より好ましくは1.0×10−2以下、更に好ましくは8.0×10−3以下、より更に好ましくは5.0×10−3以下であり、また、通常、1.0×10−7以上である。
それぞれの周波数における誘電正接(tanδ)が上記範囲であれば、高周波デバイスや配線間距離が小さい配電板を備える装置の部材の固定に用いた際に、これらの装置の消費電力の抑制効果が高い。
【0018】
なお、本発明の一態様の誘電性シートにおいて、周波数100MHz及び1GHzにおける比誘電率としては、それぞれ独立に、好ましくは1.50〜3.20、より好ましくは1.60〜3.10、更に好ましくは1.70〜3.00である。
比誘電率が1.50以上であれば、高周波デバイスに適用した際に、電波を効率良く発信及び受信できる。
一方、比誘電率が3.20以下であれば、誘電正接をより小さくし、高周波デバイスや配線間距離が小さい配電板を備える装置の部材の固定に用いた際に、これらの装置の消費電力を効果的に低減させることができる。また、電磁波を受信する装置に用いた場合、当該装置の小型化にも寄与する。さらに、配線間距離が小さい半導体集積回路に用いた場合、交流電流を流した際のリーク(漏電)を防止することもできる。
【0019】
なお、本明細書において、誘電性シートの周波数100MHz又は1GHzにおける比誘電率及び誘電正接(tanδ)は、実施例に記載の方法により、測定した値を意味する。
【0020】
本発明の一態様の誘電性シートの全光線透過率としては、好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上、更に好ましくは85%以上、より更に好ましくは88%以上であり、また、好ましくは95%以下、より好ましくは93%以下である。
本明細書において、誘電性シートの全光線透過率は、JIS K7361−1:1997に準拠して測定した値であり、具体的には、実施例に記載の方法に基づいて測定した値である。
【0021】
本発明の一態様の誘電性シートのヘーズとしては、好ましくは1%以上、より好ましくは1.5%以上、更に好ましくは3%以上、より更に好ましくは5%以上であり、また、好ましくは20%以下、より好ましくは15%以下、更に好ましくは13%以下である。
本明細書において、誘電性シートのヘーズは、JIS K7136:2000に準拠して測定した値であり、具体的には、実施例に記載の方法に基づいて測定した値である。
【0022】
以下、本発明の誘電性シートを構成する、基材及びセラミックゲル層について説明する。
【0023】
<基材>
本発明の一態様の誘電性シートが有する基材としては、用途に応じて適宜選択され、導電性基材であってもよく、絶縁性基材であってもよい。
【0024】
導電性基材としては、例えば、鉄、アルミニウム、金、銀、銅等からなる金属基材等が挙げられる。
絶縁性基材としては、例えば、上質紙、アート紙、コート紙、グラシン紙等やこれらの紙基材にポリエチレン等の熱可塑性樹脂をラミネートしたラミネート紙等の各種紙類;不織布等の多孔質材料;ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂等のポリエステル樹脂、アセテート樹脂、ABS樹脂、ポリスチレン樹脂、塩化ビニル樹脂等から選ばれる1種以上の樹脂を含む樹脂シート;ガラス基材;等が挙げられる。
なお、本発明の一態様で用いる基材は、単層フィルム又はシートであってもよく、2層以上の積層体である複層フィルム又はシートであってもよい。
【0025】
これらの中でも、本発明の誘電性シートは、後述の製造方法のとおり、焼結工程を有しないで製造することが可能である。
そのため、基材としては、樹脂を含む樹脂シートを好適に選択することができる。
【0026】
なお、基材として選択し得る、樹脂シートは、未延伸でもよいし、縦又は横等の一軸方向あるいは二軸方向に延伸されていてもよい。
また、樹脂シートは、上述の樹脂と共に、さらに紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、着色剤等が含有されていてもよい。
【0027】
さらに、基材が樹脂シートである場合、基材とセラミックゲル層との密着性を向上させる観点から、必要に応じて、基材である樹脂シートの表面に対して、酸化法、凹凸化法、プライマー処理等の表面処理を施すことが好ましい。
酸化法としては、例えば、コロナ放電処理法、プラズマ処理法、クロム酸酸化(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線照射処理等が挙げられる。
凹凸化法としては、例えば、サンドブラスト法、溶剤処理法等が挙げられる。
これらの中でも、本発明の一態様の誘電性シートにおいて、基材が樹脂を含む樹脂シートであって、当該樹脂シートがプライマー処理が施された表面を有し、当該表面上に前記セラミックゲル層が直接積層した構成を有することが好ましい。
【0028】
基材の厚さは、用途に応じて適宜選択されるが、取扱性の観点から、好ましくは10〜250μm、より好ましくは15〜200μm、更に好ましくは20〜150μmである。
【0029】
<セラミックゲル層>
セラミックゲル層は、金属アルコキシドを原料としたゾルゲル法により合成されたセラミックゲル(A)及び金属化合物(B)を含有するコーティング溶液から形成された層である。
セラミックゲル層中に含まれるセラミックゲル(A)の粒子は、金属アルコキシドを原料としたゾルゲル法により合成されたものであり、結晶相からなるコア層を取り囲むようにアモルファスが存在するコア・シェル構造を取るものと考えられる。
そして、セラミックゲル層中にて、セラミックゲル(A)の粒子のアモルファス部分の官能基が金属化合物(B)と結合し、金属化合物(B)を介して、セラミックゲル(A)の粒子が連結し合い、三次元網目構造が形成されるものと推測される。その結果、当該セラミックゲル層の誘電特性が向上すると共に、セラミックゲル層の硬化性も向上すると考えられる。
【0030】
一方で、例えば、固相法によって得られる結晶性が高い粒子であるセラミックを用いた場合、粒子同士の接触部分が小さいため、このような網目構造を形成することがなく、誘電特性もあまり向上せず、シート状に形成することも難しい。
【0031】
また、原料である金属アルコキシドを含む溶液を、塗布して塗膜を形成した後、当該塗膜から、ゾルゲル法によってセラミック前駆体としてシート状物とする方法も考えられる。
しかしながら、この方法で得られるシート状物は、アモルファスであるため誘電特性が劣るだけでなく、セラミック前駆体となる際の脱水縮合反応により、体積収縮するため、造膜性に問題がある。
【0032】
加えて、金属化合物(B)を含まず、セラミックゲル(A)を含むコーティング溶液から形成したセラミックゲル層では、セラミックゲル(A)の粒子同士のアモルファスが絡み合って、三次元網目構造を形成することも可能と考えられる。
しかしながら、金属化合物(B)を介して結合した場合と比べると、結合力が弱く、形成されるセラミックゲル層の硬化性が劣る傾向がある。
また、このようなセラミックゲル層の表面に、溶剤を含む溶液を塗布した場合、セラミックゲル(A)の粒子同士のアモルファスの絡み合いが外れてしまい、セラミックゲル層が溶剤によって膨潤し、剥がれてしまう場合がある。
それに対して、セラミックゲル(A)と共に、金属化合物(B)を含むコーティング溶液から形成したセラミックゲル層では、金属化合物(B)を介して、セラミックゲル(A)の粒子が連結されていると考えられるため、耐溶剤性を向上させることができる。
【0033】
本発明の一態様において、前記セラミックゲル層を800℃まで加熱した際の、下記式から算出される質量減少率としては、好ましくは10%以上、より好ましくは12%以上、更に好ましくは15%以上であり、また、通常30%以下である。
・質量減少率(%)=([加熱前の前記セラミックゲル層の質量]−[800℃まで加熱後の前記セラミックゲル層の質量])/[加熱前の前記セラミックゲル層の質量]×100
なお、当該質量減少率は、より具体的には、実施例に記載の方法を用いて算出される。
【0034】
前記セラミックゲル層を800℃まで加熱する過程で、セラミックゲル(A)の粒子のアモルファスの部分は熱分解して消失し、結晶相が残存する。なお、当該熱分解で焼失するアモルファス部分とは、アモルファス相に存在する未反応の水酸基及びアルコキシ基を指す。
つまり、上記質量減少率は、セラミックゲル(A)のアモルファスの部分の割合を間接的に示した指標である。
一方、固相法によって得られる結晶性が高い粒子である場合には、同様に800℃まで加熱をしても、質量はほとんど減少しないため、上記質量減少率は「0%」付近となる。
そのため、質量減少率が10%以上であれば、金属化合物(B)と結合し得る、セラミックゲル(A)のアモルファス部分の割合が多いため、より三次元網目構造を形成し易く、誘電性シートの誘電特性をより向上し得る。
【0035】
本発明の誘電性シートが有するセラミックゲル層の形成材料であるコーティング溶液は、セラミックゲル(A)及び金属化合物(B)を含有するが、硬化性をより向上させると共に、誘電特性をより向上させた誘電性シートとする観点から、さらに酸触媒(C)を含有することが好ましい。
また、本発明の一態様で用いるコーティング溶液は、適宜選択した溶媒を含有すると共に、本発明の効果を損なわない範囲で、成分(A)〜(C)以外の添加剤を含有してもよい。
以下、コーティング溶液に含まれる各成分について説明する。
【0036】
[セラミックゲル(A)]
本発明で用いるセラミックゲル(A)は、金属アルコキシドを原料としたゾルゲル法により合成されたものである。
上述のとおり、ゾルゲル法により合成されたセラミックゲル(A)を用いることで、金属化合物(B)と結合し、金属化合物(B)を介して、セラミックゲル(A)の粒子が連結し合い、三次元網目構造が形成され易くなると推測される。
なお、ゾルゲル法により合成されたセラミックゲル(A)は、上述のとおり、特殊なコア・シェル構造を有しているものと推測されるが、特に、コア部の結晶相とシェル部のアモルファス部分との分布の態様や、結合形態等の構造を一義的に特定することは困難であり、特定することは非現実的である。
また、上述の質量減少率によって「固相法によって得られる結晶性が高い粒子とは異なる構造を有している」という点は推測可能であるが、セラミックゲル(A)のアモルファス部分の形状や結晶相との結合の仕方を特定すること自体は非常に難しいといわざるを得ない。
そのため、本発明においては、セラミックゲル(A)の特定を、「ゾルゲル法」という製法で規定している。
【0037】
セラミックゲル(A)の原料として用いる金属アルコキシドとしては、M(OR)で表される化合物(M:金属原子、R:有機基、p:Mの価数)であればよい。
Mとして選択し得る金属原子としては、例えば、Mg、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Cd、Pb、Bi、Ti、Zr、Hf、Sn、Sb等が挙げられる。
Rとして選択し得る有機基としては、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基等が挙げられる。
【0038】
本発明の一態様において、誘電特性をより向上させた誘電性シートとする観点から、前記金属アルコキシドが、Mg、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Cd、Pb、及びBiから選ばれる金属原子を含む金属アルコキシド(I)と、Ti、Zr、Hf、Sn、Sbから選ばれる金属原子を含む金属アルコキシド(II)とを含むことが好ましい。
【0039】
金属アルコキシド(I)としては、バリウムアルコキシド(Ba(OR))が好ましく、金属アルコキシド(II)としては、チタンアルコキシド(Ti(OR))が好ましい。
【0040】
金属アルコキシド(I)と金属アルコキシド(II)との配合量比〔(I)/(II)〕としては、モル比で、好ましくは0.80〜1.20、より好ましくは0.85〜1.15、更に好ましくは0.90〜1.10である。
【0041】
セラミックゲル(A)のゾルゲル法による合成方法としては、下記工程(i)〜(ii)を有する方法が好ましい。
・工程(i):不活性ガス雰囲気下、有機溶媒中に、原料である金属アルコキシドを添加する工程。
・工程(ii):反応容器内に加水分解剤を加え、金属アルコキシドの加水分解反応を進行させる工程。
【0042】
(工程(i))
工程(i)で使用する有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、2−メトキシエタノール、n−プロパノール、イソプロパノール等のアルコール類;メチルエチルケトン、アセトン等のケトン類;等が挙げられる。
有機溶媒は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、有機溶媒としては、アルコール類が好ましく、メタノールと2−メトキシエタノールとの混合溶媒がより好ましい。
【0043】
工程(i)で使用する不活性ガスとしては、例えば、窒素、アルゴン等が挙げられる。
また、工程(i)において、有機溶媒中に金属アルコキシドを添加した後、0〜90℃で、24〜120時間撹拌することが好ましい。
【0044】
(工程(ii))
工程(ii)で使用する加水分解剤としては、水が好ましいが、例えば、無機酸、有機酸、水酸化物、有機アミン類等の酸又はアルカリの水溶液を用いてもよい。
工程(ii)において、加水分解剤の配合量としては、金属アルコキシドの全量1モルに対して、好ましくは2〜20モル、より好ましくは4〜15モル、更に好ましくは6〜12モルである。
また、工程(ii)で加水分解剤を配合する際の温度条件としては、好ましくは−30〜0℃、より好ましくは−20〜0℃、更に好ましくは−10〜0℃である。
【0045】
なお、加水分解剤を配合後、エージング処理を行うことが好ましい。エージング処理を行うことで、ゲル中の前駆体組成に対応した結晶性物質の結晶相とアモルファスを含むゲルに調製し易くなる。
エージング処理の条件としては、0〜60℃で1〜480時間行うことが好ましい。
エージング処理後、容器に超音波をかけて、セラミックゲル(A)を均一に分散させた溶液に調製することが好ましい。
【0046】
なお、本発明の一態様で用いるセラミックゲル(A)が、チタン酸バリウム(BaTiO)ゲルを含むことがより好ましい。
チタン酸バリウム(BaTiO)ゲルは、金属アルコキシド(I)として、バリウムアルコキシド(Ba(OR))を用い、金属アルコキシド(II)として、チタンアルコキシド(Ti(OR))を用いて、上記の合成方法によって得ることができる。
【0047】
本発明の一態様において、前記コーティング溶液に含まれるセラミックゲル(A)の全量100質量%中のチタン酸バリウム(BaTiO)ゲルの含有割合としては、好ましくは70〜100質量%、より好ましくは80〜100質量%、更に好ましくは90〜100質量%、より更に好ましくは95〜100質量%である。
【0048】
[金属化合物(B)]
本発明で用いる金属化合物(B)としては、金属錯体が好ましく、チタン、アルミニウム、ジルコニウム、クロム、コバルト、鉄、マンガン、ニッケル、スズ、及び亜鉛から選ばれる金属の金属錯体であることがより好ましく、当該金属錯体が、金属キレートであることが更に好ましい。
【0049】
さらに、本発明の一態様で用いる金属化合物(B)としては、チタン錯体(B1)を含むことが好ましい。
本発明の一態様において、金属化合物(B)の全量(100質量%)中のチタン錯体(B1)の含有割合としては、好ましくは70〜100質量%、より好ましくは80〜100質量%、更に好ましくは90〜100質量%、より更に好ましくは95〜100質量%である。
【0050】
チタン錯体(B1)としては、例えば、トリエトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ−n−プロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリイソプロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ−n−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ−sec−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ−tert−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、ジエトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ−n−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジイソプロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ−n−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ−sec−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ−tert−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、モノエトキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ−n−プロポキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノイソプロポキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ−n−ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ−sec−ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ−tert−ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、テトラキス(アセチルアセトナート)チタン、トリエトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ−n−プロポキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリイソプロポキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ−n−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ−sec−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ−tert−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、ジエトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ−n−プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジイソプロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ−n−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ−sec−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ−tert−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、モノエトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ−n−プロポキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノイソプロポキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ−n−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ−sec−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ−tert−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、テトラキス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ(アセチルアセトナート)トリス(エチルアセトアセテート)チタン、ビス(アセチルアセトナート)ビス(エチルアセトアセテート)チタン、トリス(アセチルアセトナート)モノ(エチルアセトアセテート)チタン等が挙げられる。
これらのチタン錯体(B1)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0051】
金属化合物(B)の含有量は、前記コーティング溶液中の成分(A)の全量100質量部に対して、好ましくは1〜35質量部、より好ましくは3〜32質量部、更に好ましくは5〜30質量部、より更に好ましくは10〜28質量部、特に好ましくは15〜25質量部である。
金属化合物(B)の含有量が1質量部以上であれば、硬化性及び耐溶剤性に優れた誘電性シートとすることができる。
また、金属化合物(B)の含有量が35質量部以下であれば、光学特性に優れた誘電性シートとすることができる。
【0052】
[酸触媒(C)]
本発明で用いるコーティング溶液には、酸触媒(C)を含有してもよい。
酸触媒(C)を含有することで、セラミックゲル(A)のアモルファス部分と、金属化合物(B)との結合が促進され、より強固な三次元網目構造が形成されると考えられる。その結果、硬化性をより向上させると共に、誘電特性をより向上させた誘電性シートとすることができる。
【0053】
酸触媒としては、塩酸、リン酸、酢酸、ギ酸、硫酸、メタンスルホン酸、シュウ酸、p−トルエンスルホン酸、及びトリフルオロ酢酸からなる群より選ばれる1種以上を含むことが好ましく、塩酸を含むことがより好ましい。
なお、これらの酸触媒は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0054】
酸触媒の配合量としては、反応性をより向上させる観点から、酸触媒を配合後のコーティング溶液中の当該酸触媒の濃度が、好ましくは0.0001〜10M、より好ましくは0.0003〜1M、更に好ましくは0.0005〜0.01Mとなるように調製することが適切である。
【0055】
[他の添加剤]
本発明で用いるコーティング溶液には、本発明の効果を損なわない範囲で、上記成分(A)〜(C)以外の他の添加剤を含有してもよい。
成分(A)〜(C)以外の添加剤としては、例えば、樹脂成分、硬化剤、酸化防止剤、光安定剤、難燃剤、可塑剤、着色剤、防菌剤、防錆剤等が挙げられる。
これらの他の添加剤のそれぞれの含有量は、コーティング溶液の有効成分の全量に対して、好ましくは0〜20質量%、より好ましくは0〜10質量%、更に好ましくは0〜5質量%、より更に好ましくは0〜2質量%である。
なお、本明細書において、「コーティング溶液の有効成分」とは、コーティング溶液中に含まれる成分から、セラミックゲル層を形成する過程で蒸発除去される希釈用の水や有機溶媒等の溶媒を除いた液体成分、並びに、常温で固形である成分を指す。
【0056】
[溶媒]
本発明の一態様で用いるコーティング溶液には、成分(A)及び(B)、必要に応じて、成分(C)や上述の添加剤を含むが、さらに溶媒を含むことが好ましい。
コーティング溶液に含まれる溶媒としては、セラミックゲル(A)の合成時に使用した溶媒(水やアルコール類、ケトン類等)や、成分(B)を溶解させている溶媒をそのまま用いてもよく、新たに添加してもよい。
【0057】
具体的な溶媒としては、水や上述のアルコール類及びケトン類以外に、例えば、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、シクロヘキサン、n−ヘキサン、トルエン、キシレン、等が挙げられる。
これらの溶媒は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0058】
なお、本発明の一態様で用いるコーティング溶液の有効成分濃度としては、好ましくは0.5〜15質量%、より好ましくは0.75〜10質量%、更に好ましくは1〜5質量%である。
【0059】
〔誘電性シートの製造方法〕
本発明の誘電性シートの製造方法としては、下記工程(1)〜(2)を有することが好ましい。
・工程(1):金属アルコキシドを原料としてゾルゲル法により合成したセラミックゲル(A)に、金属化合物(B)を配合し、コーティング溶液を調製する工程。
・工程(2):基材の表面上に、前記コーティング溶液を塗布して塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥してセラミックゲル層を形成する工程。
【0060】
<工程(1)>
工程(1)では、上述のゾルゲル法により合成したセラミックゲル(A)に、金属化合物(B)を配合し、コーティング溶液を調製する。
この際、金属化合物(B)と共に、さらに酸触媒(C)を配合することが好ましい。
また、成分(A)〜(C)以外の他の添加剤も配合してもよい。
なお、本工程では、セラミックゲル(A)の合成時に使用した溶媒(水や上述のアルコール類及びケトン類)が残存するセラミックゲル(A)の溶液に、金属化合物(B)、酸触媒(C)、及び他の添加剤を配合することが好ましい。
【0061】
<工程(2)>
工程(2)では、基材の表面上に、前記コーティング溶液を塗布して塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥してセラミックゲル層を形成する。
コーティング溶液の塗布方法としては、例えば、スピンコート法、スプレーコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等が挙げられる。
【0062】
形成した塗膜の乾燥する際の温度条件としては、好ましくは70〜170℃、より好ましくは80〜150℃、更に好ましくは90〜120℃である。
また、乾燥時間としては、好ましくは6秒〜10分、より好ましくは1〜5分である。
【0063】
なお、上記製造方法において、焼結工程を経る必要がないため、基材として、樹脂シートを用いることが可能である。
そのため、本発明の誘電性シートの製造方法において、焼結工程を有しないことが好ましい。
【0064】
〔誘電性シートの用途〕
本発明の誘電性シートは、例えば、10MHz以上の高周波数の電磁波を発信又は受信する装置の部材や、配線間距離が3μm以下の集積回路を有する装置の部材に用いることで、これらの装置の消費電力の低減化に有効である。
【0065】
なお、本発明は、下記の装置も提供し得る。
・本発明の誘電性シートを用いた、10MHz以上の周波数の電磁波を発信又は受信する、装置。
・本発明の誘電性シートを用いた、配線間距離が3μm以下の集積回路を有する、装置。
【0066】
本発明において、10MHz以上の周波数の電磁波を発信又は受信する装置としては、例えば、携帯電話、高速無線LAN、非接触型ICカードシステム、危険物検知センサー、自動車に組み込まれた衝突回避システム、GPS(Global Positioning System)測位システム、産業科学医療用機器等が挙げられる。
配線間距離が3μm以下の集積回路を有する装置において、本発明の誘電性シートは、カバーレイとしての機能を有し、消費電力の低減化と共に、配線間のリーク(漏電)も防止し得る。
【実施例】
【0067】
実施例1
(1)セラミックゲル溶液の調製
窒素雰囲気下の反応容器内に、メタノール/2−メトキシエタノール=1/1(モル比)の混合溶媒を加え、さらに、バリウムエトキシド/チタンテトライソプロポキシド=1/1(モル比)にて配合して溶解させた。そして、窒素雰囲気下で、30℃にて、72時間撹拌した。
撹拌後、0℃まで冷却し、反応容器内にバリウムエトキシド1モルに対して、水を18モル噴霧し、30℃で1週間静置した。
そして、反応容器内の溶媒の一部を適宜除去し、有効成分濃度17質量%のチタン酸バリウム(BaTiO)ゲルの溶液を得た。
【0068】
(2)コーティング溶液の調製
上記(1)で得たチタン酸バリウムゲルの溶液の有効成分100質量部に対して、溶媒として、エタノールを980質量部と水を2550質量部を加え、さらに、チタン錯体である、チタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)(マツモトファインケミカル株式会社製、製品名「オルガチックス TC−750」)を19.6質量部(有効成分比)配合し、十分に撹拌して、有効成分濃度2.89質量%のコーティング溶液(i)を得た。
【0069】
(3)誘電性シートの作製
基材として、一方の表面にプライマー処理が施された、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡株式会社製、製品名「コスモシャインA4100」)を用いた。
上記PETフィルムのプライマー処理が施された表面上に、上記(2)で調製したコーティング溶液(i)を、アプリケーターを用いて塗布し塗膜を形成し、当該塗膜を100℃で3分間加熱して、厚さ1μmのセラミックゲル層を形成し、誘電性シートを得た。
【0070】
実施例2
実施例1の上記(2)のコーティング溶液の調製工程において、チタン酸バリウムゲルの溶液の有効成分100質量部に対して、エタノール、水、及びチタン錯体と共に、さらに0.01Mの塩酸を196.1質量部配合した以外は、実施例1と同様にして、有効成分濃度2.76質量%のコーティング溶液(ii)を調製した。
そして、コーティング溶液(ii)を用いて、実施例1と同様にし、基材上に厚さ1μmのセラミックゲル層を形成し、誘電性シートを作製した。
また、セラミックゲル層の質量変化率(質量減少率)の測定サンプルとして、剥離フィルム(リンテック株式会社製、製品名「SP−PET381031」)の剥離処理面上に、コーティング溶液(ii)を用いて、同様の方法で、厚さ1μmセラミックゲル層を形成し、剥離フィルム及びセラミックゲル層からなる積層体も別途作製した。
【0071】
比較例1
実施例1の上記(2)のコーティング溶液の調製工程において、チタン錯体を配合しなかった以外は、実施例1と同様にして、コーティング溶液(iii)を調製した。
そして、コーティング溶液(iii)を用いて、実施例1と同様にし、基材上に厚さ1μmのセラミックゲル層を形成し、誘電性シートを作製した。
【0072】
比較例2
実施例1の上記(2)のコーティング溶液の調製工程において、チタン錯体を配合せずに、チタン酸バリウムゲルの溶液の有効成分100質量部に対して、0.01Mの塩酸を196.1質量部配合した以外は、実施例1と同様にして、コーティング溶液(iv)を調製した。
そして、コーティング溶液(iv)を用いて、実施例1と同様にし、基材上に厚さ1μmのセラミックゲル層を形成し、誘電性シートを作製した。
【0073】
作製した誘電性シート及びセラミックゲル層からなる測定サンプルを用いて、下記の測定を行った。これらの結果を表1に示す。
【0074】
(1)比誘電率及び誘電正接(tanδ)の測定
実施例及び比較例で作製した誘電性シートを、マテリアルアナライザ(アジレントテクノロジー社製、製品名「RFインピーダンス/マテリアルアナライザ E4991A」)に誘導体テスト・フィクスチャ(アジレントテクノロジー社製、製品名「Agilent 16453A」)を接続して、23℃、50%RH(相対湿度)の環境下で、周波数100MHz及び1GHzにおける誘電性シートの比誘電率ε’及び誘電損失ε”を測定した。
そして、誘電損失ε”と比誘電率ε’との比〔ε”/ε’〕を誘電正接(tanδ)として算出した。
【0075】
(2)誘電性シートの全光線透過率及びヘーズの測定
作製した誘電性シートを50mm×50mmに切断したものを試験サンプルとした。
全光線透過率については、ヘーズメーター(日本電色工業株式会社製、製品名「NDH2000」)を用いて、JIS K7361−1:1997に準拠し、試験サンプルの表面のうち、任意に選択した3点での全光線透過率を測定し、その平均値を測定対象となる誘電性シートの全光線透過率とした。
また、ヘーズについては、上記ヘーズメーターを用いて、JIS K7136:2000に準拠して、上記と同様に、試験サンプルの表面のうち、任意に選択した3点でのヘーズを測定し、その平均値を測定対象となる誘電性シートのヘーズとした。
【0076】
(3)セラミックゲル層の硬化性
作製した誘電性シートのセラミックゲル層の表面を指で10回擦った後のセラミックゲル層を目視で観察し、以下の基準により、セラミックゲル層の硬化性を評価した。
・A:指で擦る前と比べて変化は見られなかった。
・B:層の一部が若干剥がれたが、基材の表面は露出せず、許容できる程度である。
・C:層が完全に剥がれ、基材の表面が露出した。
【0077】
(4)セラミックゲル層の耐溶剤性
作製した誘電性シートのセラミックゲル層にエタノールを数滴滴下し、エタノールが付着しているセラミックゲル層の表面を、指で10回擦った後のセラミックゲル層を目視で観察し、以下の基準により、セラミックゲル層の耐溶剤性を評価した。
・A:指で擦る前と比べて変化は見られなかった。
・B:層の一部が若干剥がれたが、基材の表面は露出せず、許容できる程度である。
・C:層が完全に剥がれ、基材の表面が露出した。
【0078】
(5)セラミックゲル層の質量減少率の測定
実施例2で作製した積層体の剥離フィルムを除去し、セラミックゲル層の単体としたものを試験片とした。
加熱前の35℃での試験片の質量を測定した後、当該試験片を示差熱・熱重量同時測定装置(株式会社島津製作所社製、製品名「DTG−60」)に投入し、昇温速度10℃/分で800℃まで加熱した。そして、800℃まで加熱後の試験片の質量を測定し、下記式により、セラミックゲル層の質量減少率を算出した。
・質量減少率(%)=([加熱前の前記セラミックゲル層の質量]−[800℃まで加熱後の前記セラミックゲル層の質量])/[加熱前の前記セラミックゲル層の質量]×100
また、市販品であるチタン酸バリウム(BaTiO)フィラー(和光純薬工業株式会社製)についても、上記と同じ条件での質量減少率を測定したところ、質量減少率は「0%」であった。
【0079】
【表1】
【0080】
実施例1及び2で作製した誘電性シートは、100MHz及び1GHzのいずれにおいても誘電特性が良好であり、また、光学特性も良好であった。加えて、当該誘電性シートが有するセラミックゲル層は、硬化性及び耐溶剤性が共に優れた結果となった。
一方、比較例1及び2で作製した誘電性シートは、誘電特性は良好であるものの、耐溶剤性が劣る結果となった。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明の誘電性シートは、例えば、前述した10MHz以上の高周波数の電磁波を発信又は受信する装置等の部材に用いることができ、当該装置の消費電力の低減化に有効である。また、前述のとおり、配線間距離が3μm以下の集積回路等を有する装置の部材に好適に用いることができ、当該装置において、本発明の誘電性シートは、カバーレイとしての機能を有し、消費電力の低減化と共に、配線間のリーク(漏電)も防止し得る。