(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6707228
(24)【登録日】2020年5月22日
(45)【発行日】2020年6月10日
(54)【発明の名称】コンクリート組成物及びコンクリート硬化体
(51)【国際特許分類】
C04B 28/04 20060101AFI20200601BHJP
C04B 24/26 20060101ALI20200601BHJP
C04B 24/32 20060101ALI20200601BHJP
C04B 18/08 20060101ALI20200601BHJP
C04B 18/14 20060101ALI20200601BHJP
【FI】
C04B28/04
C04B24/26 B
C04B24/26 E
C04B24/26 H
C04B24/26 F
C04B24/26 A
C04B24/32 A
C04B18/08 Z
C04B18/14 A
【請求項の数】7
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-122766(P2016-122766)
(22)【出願日】2016年6月21日
(65)【公開番号】特開2017-226565(P2017-226565A)
(43)【公開日】2017年12月28日
【審査請求日】2019年4月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000210654
【氏名又は名称】竹本油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】森田 篤史
(72)【発明者】
【氏名】玉木 伸二
(72)【発明者】
【氏名】山崎 未希
【審査官】
有田 恭子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−203636(JP,A)
【文献】
特開平08−109057(JP,A)
【文献】
特開2006−083001(JP,A)
【文献】
特開2014−144878(JP,A)
【文献】
特開2004−175651(JP,A)
【文献】
特開2003−286060(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 28/04
C04B 18/08
C04B 18/14
C04B 24/26
C04B 24/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結合材、水、細骨材、粗骨材及び混和剤からなるコンクリート組成物であって、水/結合材比が30〜70質量%、またスランプフロー値が35〜80cmであり、結合材中にポルトランドセメントを20質量%以上の割合で含有し、且つ下記の混和剤を結合材100質量部に対して0.05〜0.5質量部の割合で含有することを特徴とするコンクリート組成物。
混和剤:下記のA成分、下記のB成分及び下記のC成分を含有して成るもの。
A成分:分子中に下記の化1で示される単量体から形成された構成単位Lと、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸、フマル酸及びそれらの塩から選ばれる少なくとも一つから形成された構成単位Mとを有し、且つ全構成単位中に構成単位Lを50〜99質量%及び構成単位Mを1〜30質量%の割合で有する質量平均分子量2000〜500000の水溶性ビニル共重合体。
B成分:全構成単位中にカルボキシル基を有するビニル単量体から形成された構成単位を30質量%超〜80質量%有する数平均分子量20000〜2000000のビニル共重合体。
C成分:黒ずみ抑制剤。
【化1】
(化1において、
R
1:炭素数2〜5のアルケニル基又は炭素数3又は4の不飽和アシル基
R
2:水素原子、炭素数1〜22のアルキル基又は炭素数1〜22の脂肪族アシル基
A
1:1〜300個の炭素数2〜4のオキシアルキレン単位で構成された(ポリ)オキシアルキレン基)
【請求項2】
C成分が、炭素数6〜10のオレフィンから形成された構成単位と(無水)マレイン酸及びその塩から選ばれるものから形成された構成単位を有する質量平均分子量1000〜20000の水溶性ビニル共重合体から成るものである請求項1記載のコンクリート組成物。
【請求項3】
混和剤が、A成分を60〜96質量%、B成分を2〜20質量%及びC成分を2〜20質量%(合計100質量%)の割合で含有して成るものである請求項1又は2記載のコンクリート組成物。
【請求項4】
混和剤が、その水溶液のpHが5〜10となるものである請求項1〜3のいずれか一つの項記載のコンクリート組成物。
【請求項5】
混和剤が、更に下記のD成分を0.02〜5質量%の割合で含有するものである請求項1〜4のいずれか一つの項記載のコンクリート組成物。
D成分:下記の化2で示されるアルキレンオキサイド付加物。
【化2】
(化2において、
R
3:水素原子又は炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基
A
2:10〜100個の炭素数2〜4のオキシアルキレン単位で構成されたポリオキシアルキレン基であり、且つ全オキシアルキレン単位中に炭素数3のオキシプロピレン単位を70モル%以上有するポリオキシアルキレン基)
【請求項6】
結合材が、ポルトランドセメントを20〜90質量%、フライアッシュを5〜35質量%及び高炉スラグ微粉末を5〜45質量%の割合で含有し、且つポルトランドセメント、フライアッシュ及び高炉スラグ微粉末を合計で70質量%以上となる割合で含有するものである請求項1〜5のいずれか一つの項記載のコンクリート組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一つの項記載のコンクリート組成物を硬化させて得られるコンクリート硬化体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコンクリート組成物及びコンクリート硬化体に関し、更に詳しくは流動性の高いコンクリート組成物であってその材料分離抵抗性を改善したコンクリート組成物及びかかるコンクリート組成物から得られる表面美観を改善したコンクリート硬化体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、作業性向上や省力化を図るため、中流動コンクリート組成物(スランプフロー値が35〜50cm)や高流動コンクリート組成物(スランプフロー値が50cm超)のような流動性の高いコンクリート組成物の使用事例が増加している。一例としてトンネルの覆工工事が挙げられ、作業性の悪い狭小空間での打設において、流動性の高いコンクリート組成物を用いることにより、その高い充填性から作業性の向上や締固めの省力化が図られている。
【0003】
しかし、このような流動性の高いコンクリート組成物は、骨材等の材料の分離が生じやすくなる。材料の分離はそのようなコンクリート組成物のポンプ圧送性の低下や品質低下の原因となり、更には材料中に含まれる黒色微粉の浮揚により、得られるコンクリート硬化体の表面美観を損なう原因となる。
【0004】
従来、前記のような材料分離を改善するため、コンクリート組成物に石灰石微粉末のような微粉末を加えたり(例えば、特許文献1参照)、粉末状のセルロースや多糖類のような増粘剤を加えたりすることが提案されている(例えば、特許文献2及び3参照)。
【0005】
しかし、特許文献1のような従来手段には、貯蔵サイロ等が別に必要となり、またそれらには黒色微粉が多量に存在することが多いという問題がある。また特許文献2や3のような従来手段には、計量等が別に必要になるという問題がある。増粘剤を減水剤等と一液化して加えることも提案されているが(例えば、特許文献4参照)、特許文献4のような減水剤との組み合わせでは黒色微粉の浮揚による黒ずみの発生を抑制することができないという問題がある。
【0006】
近年、産業副産物の有効利用を図りつつ、単位水量の低減、マスコンクリートにおける水和熱の抑制や水密性の向上、硫酸塩や海水に対する化学抵抗性の向上等、コンクリート組成物の性能向上を図るため、フライアッシュや高炉スラグ微粉末等の使用事例が増加してきている。しかし、とりわけ石炭を燃焼させる際の副産物であるフライアッシュには多量の未燃カーボンが残存しており、コンクリート用フライアッシュのJIS規格(JIS A6021)では、未燃カーボン量の目安となる強熱減量は8.0%以下で管理されている。未燃カーボンは比較的流動性の高いコンクリート組成物においてその表面に浮揚し、得られるコンクリート硬化体に黒ずみを生じ易い。
【0007】
従来、得られるコンクリート硬化体の黒ずみを防止するため、コンクリート組成物にアミン化合物やオレフィン−マレイン酸共重合体のような黒ずみ抑制剤を加えることが提案されている(例えば、特許文献5及び6参照)。
【0008】
しかし、特許文献5や6のように黒ずみ抑制剤のみを用いたのでは、流動性の高いコンクリート組成物の場合、得られるコンクリート硬化体に黒ずみが発生するのを充分に防止できないだけでなく、コンクリート組成物が分離するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平10−29849号公報
【特許文献2】特開平4−139047号公報
【特許文献3】特開平5−9053号公報
【特許文献4】特開平9−71447号公報
【特許文献5】特開平5−132347号公報
【特許文献6】特開2004−175651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、流動性の高いコンクリート組成物において、骨材等の材料の分離や黒色微粉の分離を抑制する材料分離抵抗性の高いコンクリート組成物及びかかるコンクリート組成物を硬化させたコンクリート硬化体を提供する処にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、前記の課題を解決するべく鋭意研究した結果、流動性の高いコンクリート組成物においては、混和剤として特定のA成分、特定のB成分及び特定のC成分を組み合わせたものを用いたコンクリート組成物が正しく好適であることを見出した。
【0012】
すなわち本発明は、結合材、水、細骨材、粗骨材及び混和剤からなるコンクリート組成物であって、水/結合材比が30〜70質量%、またスランプフロー値が35〜80cmであり、結合材中にポルトランドセメントを20質量%以上の割合で含有し、且つ下記の混和剤を結合材100質量部に対して0.05〜0.5質量部の割合で含有することを特徴とするコンクリート組成物に係る。また本発明は、かかるコンクリート組成物を硬化させて得られるコンクリート硬化体に係る。
【0013】
混和剤:下記のA成分、下記のB成分及び下記のC成分を含有して成るもの。
【0014】
A成分:分子中に下記の化1で示される単量体から形成された構成単位Lと、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸、フマル酸及びそれらの塩から選ばれる少なくとも一つから形成された構成単位Mとを有し、且つ全構成単位中に構成単位Lを50〜99質量%及び構成単位Mを1〜30質量%の割合で有する質量平均分子量2000〜500000の水溶性ビニル共重合体。
【0015】
B成分:全構成単位中にカルボキシル基を有するビニル単量体から形成された構成単位を30質量%超〜80質量%有する数平均分子量20000〜2000000のビニル共重合体。
【0016】
C成分:黒ずみ抑制剤。
【0017】
【化1】
【0018】
化1において、
R
1:炭素数2〜5のアルケニル基又は炭素数3又は4の不飽和アシル基
R
2:水素原子、炭素数1〜22のアルキル基又は炭素数1〜22の脂肪族アシル基
A
1:1〜300個の炭素数2〜4のオキシアルキレン単位で構成された(ポリ)オキシアルキレン基)
【0019】
本発明に係るコンクリート組成物は、結合材、水、細骨材、粗骨材及び混和剤からなるものであり、水/結合材比が30〜70質量%、スランプフロー値が35〜80cmであるものである。
【0020】
水/結合材比が30質量%より小さい場合やスランプフロー値が35cmより小さい場合は、そのようなコンクリート組成物に過剰の粘性を付与し、施工性の悪化を招くこととなるので好ましくない。逆に水/結合材比が70質量%より大きい場合やスランプフロー値が80cmより大きい場合は、そのようなコンクリート組成物に充分な材料分離抵抗性を付与することができず、所望のコンクリート組成物を得ることができない。
【0021】
所望通りのコンクリート組成物を調製し、コンクリート硬化体を得るためには、水/結合材比を30〜70質量%とし、またスランプフロー値を35〜80cmとするが、好ましくは水/結合材比を40〜65質量%とし、またスランプフロー値を45〜75cmとする。
【0022】
本発明に係るコンクリート組成物に用いる結合材は、結合材中にポルトランドセメントを20質量%以上の割合で含有するものである。ポルトランドセメントの含有割合が20質量%を下回ると、初期強度の発現性が低下し、型枠の設置期間が長くなる。結合材の構成成分としては、ポルトランドセメントの他に、フライアッシュ、高炉スラグ微粉末、石灰石微粉末、石粉、シリカフューム、膨張剤等が挙げられるが、なかでも結合材としては、ポルトランドセメントを20〜90質量%、フライアッシュを5〜35質量%及び高炉スラグ微粉末を5〜45質量%の割合で含有し、且つポルトランドセメント、フライアッシュ及び高炉スラグ微粉末を合計で70質量%以上となる割合で含有するものが好ましい。フライアッシュや高炉スラグ微粉末の使用により、得られるコンクリート硬化体の強度調整が可能になり、低強度領域のコンクリート硬化体を得る場合に経済性を高めることができる。本発明によると、より低強度のコンクリート硬化体を得るためのコンクリート組成物をも高流動化できるのである。またフライアッシュや高炉スラグ微粉末を使用すると、コンクリート組成物の流動性や材料分離抵抗性が向上し、マスコンクリートにおける水和熱の抑制効果などその性能を向上する。コンクリート硬化体においては水密性の向上、硫酸塩や海水に対する化学抵抗性の向上などの効果がある。ポルトランドセメントとしては、普通ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメントなどの各種ポルトランドセメントを使用することができる。
【0023】
本発明に係るコンクリート組成物において、結合材の調製方法は、特に限定されるものではない。結合材の調製方法としては、セメント工場での調製や生コンクリート工場での調製が挙げられる。
【0024】
本発明に係るコンクリート組成物に供する混和剤は、特定のA成分、特定のB成分及び特定のC成分を含有して成るものである。
【0025】
A成分は前記の水溶性ビニル共重合体であり、主にコンクリートの流動性を高める減水剤としての性能を有する。この水溶性ビニル共重合体は、前記した通り、分子中に化1で示される単量体から形成された構成単位Lと、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸、フマル酸及びそれらの塩から選ばれる少なくとも一つから形成された構成単位Mとを有し、且つ全構成単位中に構成単位Lを50〜99質量%、好ましくは60〜98質量%、より好ましくは70〜97質量%及び構成単位Mを1〜30質量%、好ましくは2〜30質量%、より好ましくは3〜30質量%の割合で有する質量平均分子量2000〜500000の水溶性ビニル共重合体であり、好ましくは質量平均分子量10000〜100000の水溶性ビニル共重合体である。
【0026】
構成単位Lを形成することとなる化1で示される単量体において、化1中のR
1としては、1)ビニル基、アリル基、メタリル基、3−ブテニル基、2−メチル−1−ブテニル基、3−メチル−1−ブテニル基、2−メチル−3−ブテニル基、3−メチル−3−ブテニル基等の炭素数2〜5のアルケニル基、2)アクリロイル基、メタクリロイル基等の炭素数3又は4の不飽和アシル基が挙げられる。なかでも化1中のR
1としては、アリル基、メタリル基、3−メチル−1−ブテニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基が好ましい。
【0027】
化1中のR
2としては、1)水素原子、2)メチル基、エチル基、ブチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基、ヘンエイコシル基、ドコシル基、トリコシル基、テトラコシル基、ペンタコシル基、ヘキサコシル基、ヘプタコシル基、オクタコシル基、2−メチル−ペンチル基、2−エチル−ヘキシル基、2−プロピル−ヘプチル基、2−ブチル−オクチル基、2−ペンチル−ノニル基、2−ヘキシル−デシル基、2−ヘプチル−ウンデシル基、2−オクチル−ドデシル基、2−ノニル−トリデシル基、2−デシル−テトラデシル基、2−ウンデシル−ペンタデシル基、2−ドデシル−ヘキサデシル基等の炭素数1〜22のアルキル基、3)ホルミル基、アセチル基、プロパノイル基、ブタノイル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基、オクタノイル基、ノナノイル基、デカノイル基、ヘキサデカノイル基、オクタデカノイル基、ヘキサデセノイル基、エイコセノイル基、オクタデセノイル基等の炭素数1〜22の脂肪族アシル基が挙げられる。なかでも化1中のR
2としては、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4の脂肪族アシル基が好ましい。
【0028】
化1中のA
1としては、1)炭素数2〜4のオキシアルキレン基、2)合計2〜300個の炭素数2〜4のオキシアルキレン単位で構成されたポリオキシアルキレン基が挙げられる。なかでも化1中のA
1としては、合計1〜160個のオキシエチレン単位及び/又はオキシプロピレン単位で構成された(ポリ)オキシアルキレン基が好ましい。尚、ポリオキシアルキレン基はブロック結合でもランダム結合でもよい。
【0029】
以上説明した化1で示される単量体の具体例としては、α−アリル−ω−アセチル−(ポリ)オキシエチレン、α−アリル−ω−アセチル−(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン、α−アリル−ω−ヒドロキシ−(ポリ)オキシエチレン、α−アリル−ω−ヒドロキシ−(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン、α−アリル−ω−メトキシ−(ポリ)オキシエチレン、α−アリル−ω−メトキシ−(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン、α−メタリル−ω−アセチル−(ポリ)オキシエチレン、α−メタリル−ω−アセチル−(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン、α−メタリル−ω−ヒドロキシ−(ポリ)オキシエチレン、α−メタリル−ω−ヒドロキシ−(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン、α−メタリル−ω−メトキシ−(ポリ)オキシエチレン、α−メタリル−ω−メトキシ−(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン、α−メタリル−ω−ブトキシ−(ポリ)オキシエチレン、α−メタリル−ω−ブトキシ−(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン、α−(3−メチル−3−ブテニル)−ω−ヒドロキシ−(ポリ)オキシエチレン、α−(3−メチル−3−ブテニル)−ω−ヒドロキシ−(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン、α−(3−メチル−3−ブテニル)−ω−メトキシ−(ポリ)オキシエチレン、α−(3−メチル−3−ブテニル)−ω−メトキシ−(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、α−アクリロイル−ω−ヒドロキシ−(ポリ)オキシエチレン、α−アクリロイル−ω−ヒドロキシ−(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン、α−アクリロイル−ω−メトキシ−(ポリ)オキシエチレン、α−アクリロイル−ω−メトキシ−(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン、α−アクリロイル−ω−ブトキシ−(ポリ)オキシエチレン、α−アクリロイル−ω−ブトキシ−(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン、α−メタクリロイル−ω−アセチル−(ポリ)オキシエチレン、α−メタクリロイル−ω−アセチル−(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン、α−メタクリロイル−ω−ヒドロキシ−(ポリ)オキシエチレン、α−メタクリロイル−ω−ヒドロキシ−(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン、α−メタクリロイル−ω−メトキシ−(ポリ)オキシエチレン、α−メタクリロイル−ω−メトキシ−(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン、α−メタクリロイル−ω−ブトキシ−(ポリ)オキシエチレン、α−メタクリロイル−ω−ブトキシ−(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン、α−ビニル−ω−ヒドロキシ−(ポリ)オキシエチレン、α−ビニル−ω−ヒドロキシ−(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン、α−ビニル−ω−メトキシ−(ポリ)オキシエチレン、α−ビニル−ω−メトキシ−(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン等が挙げられる。
【0030】
構成単位Mを形成することとなる単量体は、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸、フマル酸及びそれらの塩から選ばれるものである。
【0031】
構成単位Mを形成する単量体の塩としては、特に制限するものではないが、例えばナトリウム塩やカリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩やマグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、ジエタノールアミン塩やトリエタノールアミン塩等のアミン塩等が挙げられる。
【0032】
本発明に係る水溶性ビニル共重合体は、公知の方法で合成することができる。これには、溶媒に水を用いたラジカル重合、溶媒に有機溶媒を用いたラジカル重合、無溶媒のラジカル重合等が挙げられる。ラジカル重合に用いるラジカル重合開始剤は、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過酸化物、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)等のアゾ系化合物のように、重合反応温度下において分解し、ラジカル発生するものであればその種類は特に制限されない。また、促進剤として亜硫酸水素ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸等の還元剤や、エチレンジアミン、グリシン等のアミン化合物等も併用することもできる。得られる水溶性ビニル重合体の質量平均分子量を所望の範囲とするため、連鎖移動剤を使用することもできる。
【0033】
かかる水溶性ビニル共重合体は、本発明の効果を損なわない範囲内で、上記のもの以外の共重合可能な単量体を共重合させたものとすることができるが、その共重合割合は20質量%以下とするのが好ましく、10質量%以下とするのがより好ましい。
【0034】
B成分は前記のビニル共重合体であり、主にコンクリートの粘性を高める増粘剤としての性能を有する。このビニル共重合体は、前記した通り、全構成単位中にカルボキシル基を有するビニル単量体から形成された構成単位を30質量%超〜80質量%有する数平均分子量20000〜2000000のビニル共重合体であり、好ましくは数平均分子量50000〜1000000のビニル共重合体である。
【0035】
カルボキシル基を有するビニル単量体としては、エチレン性不飽和モノカルボン酸、エチレン性不飽和ジカルボン酸及びそれらの塩等が挙げられる。エチレン性不飽和モノカルボン酸の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸及びそれらの塩等が挙げられ、またエチレン性不飽和ジカルボン酸としては、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸及びそれらの塩等が挙げられる。なかでもカルボキシル基を有するビニル単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸が好ましい。
【0036】
カルボキシル基を有するビニル単量体の塩としては、特に制限するものではないが、例えばナトリウム塩やカリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩やマグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、ジエタノールアミン塩やトリエタノールアミン塩等のアミン塩等が挙げられる。
【0037】
C成分は、黒ずみ抑制剤である。黒ずみ抑制剤としては、炭素数が9〜15のアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムやポリアオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウムのような分子中に長鎖のアルキル基を有するアニオン界面活性剤、特開平5−132347号公報に例示されるようなアミン化合物等が挙げられるが、炭素数6〜10のオレフィンから形成された構成単位と、(無水)マレイン酸及びその塩から選ばれるものから形成された構成単位とを有する質量平均分子量1000〜20000の水溶性ビニル共重合体が好ましい。
【0038】
炭素数6〜10のオレフィンの具体例としては、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、ジイソブチレン、メチルペンテン等が挙げられる。
【0039】
(無水)マレイン酸の塩としては、特に制限するものではないが、例えばナトリウム塩やカリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩やマグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、ジエタノールアミン塩やトリエタノールアミン塩等のアミン塩等が挙げられる。
【0040】
本発明に係るコンクリート組成物は、以上説明した混和剤を、結合材100質量部に対し0.05〜0.5質量%の割合で含有するものである。混和剤を構成する各成分の好ましい含有割合は、調製するコンクリート組成物に求められる条件により異なるが、A成分を60〜96質量%、B成分を2〜20質量%及びC成分を2〜20質量%(合計100質量%)の割合で含有するものが好ましい。
【0041】
混和剤としては、前記のA成分、B成分及びC成分に加えて、更に下記のD成分を0.02〜5質量%の割合で含有するものが好ましい。D成分はアルキレンオキサイド付加物であり、主にコンクリート中の巻き込み空気を消す消泡剤としての性能を有する。
【0042】
D成分:下記の化2で示されるアルキレンオキサイド付加物。
【0043】
【化2】
【0044】
化2において、
R
3:水素原子又は炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基
A
2:10〜100個の炭素数2〜4のオキシアルキレン単位で構成されたポリオキシアルキレン基であり、且つ全オキシアルキレン単位中に炭素数3のオキシプロピレン単位を70モル%以上有するポリオキシアルキレン基である。この場合、オキシアルキレン単位の結合状態は、ブロック結合でもランダム結合でもよいが、ブロック結合が好ましい。
【0045】
本発明に係るコンクリート組成物に供する混和剤は、その水溶液のpHが5〜10となるものが好ましく、pHが6〜9となるものがより好ましい。より良い状態のコンクリート組成物を調製し、コンクリート硬化体を得るためである。
【0046】
本発明に係るコンクリート組成物の調製方法は特に制限されない。調製方法それ自体には公知の方法を適用することができるが、A成分、B成分及びC成分を含有して成る混和剤、更にはD成分を含有して成る混和剤は、水性液の状態、例えばA成分、C成分及びD成分は水溶液の状態、またB成分は水性エマルションの状態で用意してこれらを混合した後、コンクリート組成物の調製に用いるのが好ましい。
【0047】
本発明に係るコンクリート組成物は、本発明の効果を損なわない範囲内で、必要に応じてAE調整剤、消泡剤、凝結遅延剤、硬化促進剤、乾燥収縮低減剤、防腐剤、防水剤、防錆剤等を併用することができる。
【0048】
本発明に係るコンクリート硬化体は、以上説明したような本発明に係るコンクリート組成物を硬化させて得られるものである。硬化の方法は特に制限されず、公知の方法が適用できる。
【発明の効果】
【0049】
本発明によると、流動性の高いコンクリート組成物を調製することを前提として、骨材など材料の分離や黒色微粉の分離を抑制する材料分離抵抗性の高いコンクリート組成物を調製することができ、同時に肌面への黒い斑点や全体的な黒ずみの発生を抑制した表面美観に優れたコンクリート硬化体を得ることができるという効果がある。
【0050】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明がこれらの実施例に限定されるというものではない。尚、以下の実施例等において、別に記載しない限り、%は質量%を意味する。
【実施例】
【0051】
試験区分1(結合材の調製)
表1に記載の内容で、ポルトランドセメント、フライアッシュ及び高炉スラグ微粉末を混合して、表1に記載の結合材(C−1)〜(C−5)及び(Cr−1)を調製した。尚、結合材(C−3)は普通ポルトランドセメントをそのまま使用した。
【0052】
【表1】
【0053】
表1において、
pc−1:早強ポルトランドセメント
pc−2:普通ポルトランドセメント
fa−1:粉末度3300cm
2/g、強熱減量3.2%のフライアッシュ
fa−2:粉末度3620cm
2/g、強熱減量5.4%のフライアッシュ
sg−1:比表面積が4100cm
2/gの高炉スラグ微粉末
sg−2:比表面積が6150cm
2/gの高炉スラグ微粉末
lp−1:比表面積が4300cm
2/gの石灰石微粉末
sf−1:比表面積が148000cm
2/gのシリカフューム
【0054】
試験区分2(A成分の水溶性ビニル共重合体の合成)
・水溶性ビニル共重合体(d−1)の合成
α−アリル−ω−メトキシ−ポリ(33モル)エチレングリコール1500g及び無水マレイン酸146gを反応容器に仕込み、反応容器内の雰囲気を窒素置換した後、徐々に加温して撹拌しながら均一に溶解した。反応系の温度を温水浴にて80℃に保ち、アゾビスイソブチロニトリル10gを投入してラジカル重合反応を開始した。2時間経過後、更にアゾビスイソブチロニトリル5gを投入し、ラジカル重合反応を2時間継続して反応させた。得られた共重合体に水を加えて、水溶性ビニル共重合体(d−1)の40%水溶液を得た。この水溶性ビニル共重合体を分析したところ、質量平均分子量40000(GPC法、プルラン換算)の水溶性ビニル共重合体であった。
【0055】
・水溶性ビニル共重合体(d−2)の合成
水1500g、3−メチル−3−ブテン−1オール・ポリ(80モル)エチレングリコール付加物1500gを反応容器に仕込み、反応容器内の雰囲気を窒素置換した後、撹拌しながら徐々に加温した。反応系の温度を温水浴にて70℃に保ち、温度を安定させた。その後、アクリル酸375gを3時間かけて滴下した。同時に、チオグリコール酸12g、L−アスコルビン酸8gを水500gに溶解させた水溶液及び5%過酸化水素水170gをそれぞれ3時間かけて滴下し、ラジカル重合反応を開始した。滴下終了から1時間経過後、得られた共重合体に水を加え、水溶性ビニル共重合体(d−2)の40%水溶液を得た。この水溶性ビニル共重合体を分析したところ、質量平均分子量71000(GPC法、プルラン換算)の水溶性ビニル共重合体であった。
【0056】
・水溶性ビニル共重合体(d−3)の合成
水1400g、メトキシポリ(45モル)エチレングリコールモノメタクリレート1034g、メタクリル酸141g、30%水酸化ナトリウム水溶液46g及び3−メルカプトプロピオン酸22gを反応容器に仕込み、反応容器内の雰囲気を窒素置換した後、撹拌しながら徐々に加温した。反応系の温度を温水浴にて60℃に保ち、過硫酸ナトリウムの20%水溶液55gを投入してラジカル重合反応を開始した。2時間経過後、更に過硫酸ナトリウムの20%水溶液30gを投入し、ラジカル重合反応を6時間継続して反応させた。得られた共重合体に水を加え、水溶性ビニル共重合体(d−3)の40%水溶液を得た。この水溶性ビニル共重合体を分析したところ、質量平均分子量43000(GPC法、プルラン換算)の水溶性ビニル共重合体であった。同様にして、水溶性ビニル共重合体(d−4)及び(d−5)を合成した。
【0057】
・水溶性ビニル共重合体(dr−1)及び(dr−2)の合成
水溶性ビニル共重合体(d−1)や(d−3)と同様にして、水溶性ビニル共重合体(dr−1)及び(dr−2)を合成した。
【0058】
以上で合成した水溶性ビニル共重合体(d−1)〜(d−5)及び(dr−1)、(dr−2)の内容を表2にまとめて示した。
【0059】
【表2】
【0060】
表2において、
質量平均分子量:GPC法、プルラン換算
L―1:α−アリル−ω−メトキシポリ(33モル)エチレングリコールから形成された構成単位
L―2:3−メチル−3−ブテン−1−オール・ポリ(80モル)エチレングリコール付加物から形成された構成単位
L―3:メトキシポリ(45モル)エチレングリコールモノメタクリレートから形成された構成単位
M―1:無水マレイン酸から形成された構成単位
M―2:アクリル酸から形成された構成単位
M―3:メタクリル酸から形成された構成単位
S−1:アクリル酸メチルから形成された構成単位
【0061】
試験区分3(B成分のビニル共重合体の合成)
・ビニル共重合体(f−1)の合成
水2300g、アクリル酸490g、アクリル酸エチル470g、乳化剤としてポリオキシエチレンアルキルフェノール硫酸ナトリウム40gを反応容器に仕込み、30℃で撹拌しながら乳化した。反応容器内の雰囲気を窒素置換した後、徐々に加温して反応系の温度を50℃に保ち、過硫酸ナトリウムの2%水溶液及び亜硫酸ナトリウムの2%水溶液をそれぞれ80g滴下して重合を開始した。重合を開始してから2時間後、過硫酸ナトリウムの2%水溶液及び亜硫酸ナトリウムの2%水溶液をそれぞれ40g滴下し、2時間反応を継続して重合反応を完結した。得られた共重合体に水を加え、ビニル共重合体(f−1)の20%水性エマルションを得た。このビニル共重合体を分析したところ、アクリル酸から形成された構成単位の割合は51%、数平均分子量は210000(GPC法、ポリスチレン換算)であった。
【0062】
・ビニル共重合体(f−2)、(fr−1)及び(fr−2)の合成
ビニル共重合体(f−1)と同様にして、ビニル共重合体(f−2)、(fr−1)及び(fr−2)を合成した。
【0063】
以上で合成したビニル共重合体(f−1)、(f−2)、(fr−1)及び(fr−2)の内容を表3にまとめて示した。
【0064】
【表3】
【0065】
表3において、
数平均分子量:GPC法、ポリスチレン換算
【0066】
試験区分4(C成分の黒ずみ抑制剤としての水溶性ビニル共重合体の合成)
・水溶性ビニル共重合体(g−1)の合成
トルエン400g、1−ヘキセン84g、無水マレイン酸98gを反応容器に仕込み、反応容器内の雰囲気を窒素置換した後、徐々に加温して反応系の温度を75℃に保ち、ベンゾイルパーオキサイド4gを加え、8時間重合した。重合反応終了後、析出した重合体を濾別収集して減圧乾燥し、白色粉末状の共重合体を得た。得られた共重合体に水及び水酸化ナトリウムを加え、80℃で加熱撹拌して溶解し、水溶性ビニル共重合体(g−1)の20%水溶液を得た。これを分析したところ、質量平均分子量14300(GPC法、ポリスチレンスルホン酸換算)であった。
【0067】
・水溶性ビニル共重合体(g−2)、(gr−1)及び(gr−2)の合成
水溶性ビニル共重合体(g−1)と同様にして、水溶性ビニル共重合体(g−2)、(gr−1)及び(gr−2)を合成した。
【0068】
以上で合成した水溶性ビニル共重合体(g−1)、(g−2)、(gr−1)及び(gr−2)の内容を表4にまとめて示した。
【0069】
【表4】
【0070】
表4において、
数平均分子量:GPC法、ポリスチレンスルホン酸換算
【0071】
試験区分5(D成分のアルキレンオキサイド付加物の合成)
・アルキレンオキサイド付加物(e−1)の合成
ラウリルアルコール559gをオートクレーブに仕込み、触媒として水酸化カリウム5.4gを加えた後、オートクレーブ内を窒素置換した。撹拌しながら、反応温度を125〜140℃に保ち、エチレンオキサイド660g、プロピレンオキサイド4208gを圧入して付加反応を行った。圧入終了後、同温度で2時間熟成して反応を終了し、生成物を得た。この生成物の残存触媒を除くため、吸着剤を用いて吸着処理した後、濾別精製した。この精製処理物は、水酸基価の分析結果より、化2で示される化合物に相当する、ラウリルアルコール1モルにエチレンオキサイド5モル及びプロピレンオキサイド25モルを付加したアルキレンオキサイド付加物(e−1)であった。
【0072】
・アルキレンオキサイド付加物(e−2)、(e−3)、(er−1)及び(er−2)の合成
表5に示すように出発物質とアルキレンオキサイドの種類及び量を変更した以外はアルキレンオキサイド付加物(e−1)と同様にして、アルキレンオキサイド付加物(e−2)、(e―3)、(er−1)及び(er−2)を合成した。
【0073】
以上で合成したアルキレンオキサイド付加物(e−1)〜(e―3)、(er−1)及び(er−2)の内容を表5にまとめて示した。
【0074】
【表5】
【0075】
表5において、
e−1:ラウリルアルコールにエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとをランダムに付加反応させた共重合体
e−2:オレイルアルコールにエチレンオキサイドを付加した後、プロピレンオキサイドを付加反応させた共重合体
e−3:ポリプロプレンオキサイドにエチレンオキサイドを付加反応させた共重合体
er−1:ブチルアルコールにエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドをランダムに付加反応させた共重合体
er−2:オレイルアルコールにエチレンオキサイドを付加反応させた後、プロピレンオキサイドを付加反応させた共重合体
【0076】
試験区分6(混和剤の調製)
・混和剤(h−1)の調製
表2に記載の水溶性ビニル共重合体(d−3)の40%水溶液86.5g、表3に記載のビニル共重合体(f−1)の20%水性エマルション16g、表4に記載の水溶性ビニル共重合体(g−2)の20%水溶液6g、表5に記載のアルキレンオキサイド付加物(e−2)1g及び水90.5gをガラス容器に投入して撹拌混合し、水溶性ビニル共重合体(d−3)を86.5質量%、ビニル共重合体の水性エマルション(f−1)を8質量%、水溶性ビニル共重合体(g−2)を3質量%及びアルキレンオキサイド付加物(e−2)を2.5質量%の割合で含有する混和剤(h−1)の20%水溶液を調製した。
【0077】
・混和剤(h−2)〜(h−17)及び(hr−1)〜(hr−10)の調製
混和剤(h−1)の調製と同様にして、混和剤(h−2)〜(h−17)及び(hr−1)〜(hr−10)を調製した。
【0078】
以上で調製した混和剤の内容を表6にまとめて示した。
【0079】
【表6】
【0080】
表6において、
g−3:アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(テイカ社製の商品名テイカパワーBN2060)
g−4:ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム(テイカ社製の商品名テイカポールNE7030)
*1:ナフタレンスルホン酸ホルマリン高縮合物塩(竹本油脂社製のコンクリート用高性能減水剤、商品名ポールファイン510AN)
*2:メラミンスルホン酸ホルマリン高縮合物塩(竹本油脂社製のコンクリート用高性能減水剤、商品名ポールファインMF)
【0081】
試験区分7(コンクリート組成物の調製)
・実施例1〜28及び比較例1〜13
容量60リットルの傾動二軸ミキサーを用い、表7、表8及び表9に記載の条件で、90秒間練混ぜを行い、表8及び表9に記載した各例のコンクリート組成物を調製した。尚、各例のコンクリート組成物について、AE剤(竹本油脂社製の商品名AE−300)を用い、目標空気量を4.5±1.0%とし、また目標スランプフロー値を60±5cmとした。
【0082】
【表7】
【0083】
表7において、
細骨材:陸砂(表乾密度2.50g/cm
3)
粗骨材:陸石(表乾密度2.57g/cm
3)
【0084】
試験区分8(調製したコンクリート組成物の物性評価)
調製した各例のコンクリート組成物について、練混ぜ直後のスランプフロー値、空気量を下記のように測定し、結果を表8及び表9にまとめて示した。
【0085】
・スランプフロー(cm):練混ぜ直後のコンクリート組成物について、JIS−A1150に準拠して測定した。
・空気量(容積%):練混ぜ直後のコンクリート組成物について、JIS−A1128に準拠して測定した。
【0086】
【表8】
【0087】
【表9】
【0088】
表8及び表9において、
配合No.:表7に記載の配合No.
結合材の種類:表1に記載の結合材の種類
混和剤の種類:表6に記載の混和剤の種類
添加量:結合材100質量部に対する混和剤の割合(質量部)
【0089】
試験区分9
調製した各例のコンクリート組成物及びこれらを硬化させて得られたコンクリート硬化体(24時間後)を次のように評価した。結果を表10及び表11にまとめて示した。
【0090】
・流動性の評価:練混ぜ直後のコンクリート組成物について、目標スランプスランプフロー値を得るための混和剤添加割合により次の基準で評価した。
◎:結合材100質量部に対して混和剤の添加割合が0.28質量部未満
○:結合材100質量部に対して混和剤の添加割合が0.28質量部〜0.50質量部
×:結合材100質量部に対して混和剤の添加割合が0.50質量部超
【0091】
・黒ずみの程度の評価:コンクリート組成物及びコンクリート硬化体について、目視により、黒ずみの程度を次の基準で評価した。
◎:黒ずみは確認されなかった
○:ごく少量の黒ずみが確認された
×:黒ずみが確認された
【0092】
・コンクリート組成物の状態:コンクリート組成物について、目視により、材料の一体感を次の基準で評価した。
◎:非常に良好(骨材とモルタル・ペーストの分離なし)
○:良好(わずかに骨材とモルタル・ペーストが分離)
×:悪い(骨材とモルタル・ペーストが分離)
××:非常に悪い(骨材とモルタル・ペーストの分離が顕著)
【0093】
・コンクリート表面の気泡の評価:コンクリート硬化体の表面気泡(あばた)の状態を評価した。
◎:あばたがほとんどなく美麗
○:わずかにあばたが目立つ
×:あばたが目立つ
【0094】
【表10】
【0095】
【表11】
【0096】
比較例1、比較例5及び比較例10の場合には、コンクリート硬化体の初期強度発現性が著しく悪く、翌日に脱型することができなかった。
【0097】
表8及び表9、とりわけ表10及び表11の結果から明らかなように、本発明によると、流動性の高いコンクリート組成物を調製することを前提として、骨材など材料の分離や黒色微粉の分離を抑制する材料分離抵抗性の高いコンクリート組成物を得ることができ、同時に肌面への黒い斑点や全体的な黒ずみの発生を抑制した表面美観に優れたコンクリート硬化体を得ることができる。