(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6707232
(24)【登録日】2020年5月22日
(45)【発行日】2020年6月10日
(54)【発明の名称】小口径穴あけ加工用エントリーボードおよび小口径穴あけ加工方法
(51)【国際特許分類】
B26F 1/16 20060101AFI20200601BHJP
B23B 41/00 20060101ALI20200601BHJP
B23B 35/00 20060101ALI20200601BHJP
H05K 3/00 20060101ALI20200601BHJP
【FI】
B26F1/16
B23B41/00 D
B23B35/00
H05K3/00 K
H05K3/00 M
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-157293(P2016-157293)
(22)【出願日】2016年8月10日
(65)【公開番号】特開2018-24056(P2018-24056A)
(43)【公開日】2018年2月15日
【審査請求日】2019年6月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】511069932
【氏名又は名称】昭北ラミネート工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100079038
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100060874
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 瑛之助
(72)【発明者】
【氏名】三塚 知治
【審査官】
石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−25000(JP,A)
【文献】
特開2004−319886(JP,A)
【文献】
特開2007−222994(JP,A)
【文献】
特開平10−202599(JP,A)
【文献】
特開2017−128804(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3177296(JP,U)
【文献】
特許第5067519(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26F 1/16
B23B 35/00
B23B 41/00
H05K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚のアルミニウム箔を貼り合わせたアルミニウム箔複合材からなり、ドリル入側のアルミニウム箔の硬度がドリル出側のアルミニウム箔の硬度よりも小さくなされており、ドリル入側のアルミニウム箔の表面の凹凸の平均間隔(Rsm)が、同アルミニウム箔の圧延方向において15〜23μmであり、同アルミニウム箔の圧延方向と直角をなす方向において20〜48μmである、小口径穴あけ加工用エントリーボード。
【請求項2】
ドリル入側のアルミニウム箔の表面の十点平均粗さ(Rzjis)が、同アルミニウム箔の圧延方向において1.1〜1.25μmであり、同アルミニウム箔の圧延方向と直角をなす方向において0.6〜0.75μmである、請求項1記載の小口径穴あけ加工用エントリーボード。
【請求項3】
積み重ねられた複数枚のプリント配線板の上に、請求項1または2記載の小口径穴あけ加工用エントリーボードを重ねて配置し、これらのエントリーボードおよびプリント配線板に、上方からドリルによって口径0.1〜1.0mmの穴をあける、小口径穴あけ加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、プリント配線板等の被加工物にドリルによって小口径の穴をあける際に用いられるエントリーボード、および同エントリーボードを用いた小口径穴あけ加工方法に関する。
【0002】
この明細書および特許請求の範囲において、「アルミニウム」の語には、純アルミニウムの他、アルミニウム合金が含まれるものとする。
【背景技術】
【0003】
例えば、通信機器やOA機器等に用いられるプリント配線板は、配線パターンの微細化、高密度化、多層化に伴って、同板に形成される穴(ビア)の小口径化および位置精度の向上が要求されている。
プリント配線板に穴をあける場合、一般に、バックアップボード(捨て板)の上に複数枚のプリント配線板を積み重ねるとともに、その最上位のプリント配線板の上にエントリーボードを重ねて配置し、この状態で上方からドリルによってエントリーボードおよびプリント配線板に穴あけ加工を行う方法が採用されている。
ここで、エントリーボードは、当て板として、ドリルの食いつきをよくすると共に、プリント配線板の表面の加工時の損傷や、穴の周縁にバリが発生するのを防止する目的で使用されるものであり、従来は、アルミニウム単板よりなるものが用いられてきた。
【0004】
ところで、プリント配線板の穴が小口径化すると、それに応じて穴あけ用のドリルの径が小さくなるが、その場合、エントリーボードがアルミニウム単板製であると、ドリルがエントリーボード表面で横滑りしやすく、穴位置の精度が損なわれると共に、ドリルの折損が多発する。そのため、プリント配線板の積み重ね枚数を多くできず、生産性が高められないという問題があった。
【0005】
そこで、小口径穴あけ用エントリーボードとして、下記の特許文献1記載のものが提案された。このエントリーボードは、複数枚のアルミニウム箔を貼り合わせたアルミニウム箔複合材からなり、ドリル入側のアルミニウム箔の硬度がドリル出側のアルミニウム箔の硬度よりも小さくなされているものである。
上記のエントリーボードによれば、ドリル入側のアルミニウム箔として相対的に柔らかい材質のものが用いられているので、表面におけるドリルの食いつきが良く、またドリルの横滑りが抑制されて、穴位置の精度が向上するとともに、ドリルの折損が減少する。また、上記のエントリーボードによれば、ドリル出側のアルミニウム箔として相対的に硬度の高い材質が用いられているので、バリの発生が抑制され、1工程で穴あけ加工するプリント配線板の枚数を多くしても問題が生じ難く、高い生産性が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−216198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、プリント配線板の配線パターンの微細化、高密度化のニーズは益々アップしており、それに伴って、同板に形成される穴の位置精度も、より高いレベルで要求されるようになっている。
しかしながら、上述したアルミニウム箔複合材製のエントリーボードの場合、アルミニウム箔の硬度の調整のみによって穴位置精度を向上させるのは一定の限界があり、より高い穴位置精度を得るのは困難であった。
【0008】
この発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであって、プリント配線板等の被加工物にドリルによって小口径の穴をあける際に、穴位置精度をさらに向上させることが可能である小口径穴あけ加工用エントリーボードおよび小口径穴あけ加工方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、上記目的を達成するために以下の態様からなる。
【0010】
1)複数枚のアルミニウム箔を貼り合わせたアルミニウム箔複合材からなり、ドリル入側のアルミニウム箔の硬度がドリル出側のアルミニウム箔の硬度よりも小さくなされており、ドリル入側のアルミニウム箔の表面の凹凸の平均間隔(Rsm)が、同アルミニウム箔の圧延方向において15〜23μmであり、同アルミニウム箔の圧延方向と直角をなす方向において20〜48μmである、小口径穴あけ加工用エントリーボード。
【0011】
2)ドリル入側のアルミニウム箔の表面の十点平均粗さ(Rzjis)が、同アルミニウム箔の圧延方向において1.1〜1.25μmであり、同アルミニウム箔の圧延方向と直角をなす方向において0.6〜0.75μmである、上記1)の小口径穴あけ加工用エントリーボード。
【0012】
3)積み重ねられた複数枚のプリント配線板の上に、上記1)または2)の小口径穴あけ加工用エントリーボードを重ねて配置し、これらのエントリーボードおよびプリント配線板に、上方からドリルによって口径0.1〜1.0mmの穴をあける、小口径穴あけ加工方法。
【発明の効果】
【0013】
上記1)の小口径穴あけ加工用エントリーボードによれば、ドリル入側のアルミニウム箔の表面の凹凸の平均間隔(Rsm)を、同アルミニウム箔の圧延方向において15〜23μmとし、同アルミニウム箔の圧延方向と直角をなす方向において20〜48μmとすることにより、ドリル入側のアルミニウム箔の表面に当たるドリル先端の位置ズレが抑えられ、それによって穴位置精度が著しく向上する。
ここで、ドリル入側のアルミニウム箔の表面の凹凸の平均間隔(Rsm)は、同表面の粗さ曲線から、その平均線の方向に基準長さだけ抜き取り、1つの山およびそれに隣り合う1つの谷に対応する平均線の長さの和を求め、平均値を表したものである。
【0014】
上記2)の小口径穴あけ加工用エントリーボードによれば、ドリル入側のアルミニウム箔の表面の十点平均粗さ(Rzjis)を、同アルミニウム箔の圧延方向において1.1〜1.25μmとし、同アルミニウム箔の圧延方向と直角をなす方向において0.6〜0.75μmとすることにより、ドリル入側のアルミニウム箔の表面に刺さるドリル先端の角度がより垂直に近くなるので、ドリル先端の摩耗が低減され、ドリルの破損も防止される。
ここで、ドリル入側のアルミニウム箔の表面の十点平均粗さ(Rzjis)は、同表面の粗さ曲線からその平均線の方向に抜き取った基準長さにおいて、最も高い山頂から5番目までの山頂の標高の絶対値の平均値と、最も低い谷底から5番目までの谷底の標高の絶対値の平均値との和を表したものである。
【0015】
上記3)の小口径穴あけ加工方法によれば、プリント配線板に形成される穴の位置精度を大きく向上させることができ、また、ドリル先端の摩耗が低減され、ドリルの破損も防止される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】この発明による小口径穴あけ加工用エントリーボードの部分拡大断面図である。
【
図2】この発明による小口径穴あけ加工方法の1工程を示す断面図である。
【
図3】実施例1および比較例1の小口径穴あけ加工用エントリーボードについてのRsmの測定値を示すグラフであって、(a)は圧延方向の測定値であり、(b)は圧延方向と直角をなす方向の測定値である。
【
図4】実施例1および比較例1の小口径穴あけ加工用エントリーボードについてのRzjisの測定値を示すグラフであって、(a)は圧延方向の測定値であり、(b)は圧延方向と直角をなす方向の測定値である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、図面を参照して、この発明の実施形態を以下に説明する。
【0018】
図1は、この発明による小口径穴あけ加工用エントリーボードを示す。このエントリーボードは、ドリルによってプリント配線板に穴(ビア)を形成する際の当て板として用いられるものである。
図1を参照すると、エントリーボード(1)は、2枚のアルミニウム箔(11)(12)を貼り合わせたアルミニウム箔複合材(10)よりなる。
このアルミニウム箔複合材(10)は、ドリル入側(
図1の上側)のアルミニウム箔(11)の硬度が、ドリル出側(
図1の下側)のアルミニウム箔(12)の硬度よりも小さいものとなされている。
【0019】
ドリル入側のアルミニウム箔(11)の材質は、特に限定されないが、好ましくは、A8021やA8079等の8000系アルミニウム合金が用いられる。
同アルミニウム箔(11)の厚さは、使用するドリルの径等に応じて適宜設定されるが、通常5〜100μmとなされ、特にドリルの径が1.0mm以下の場合には、5〜50μmとなされるのが好ましい。
同アルミニウム箔(11)のマイクロビッカース硬度(Hv)は、通常20〜50、好ましくは25〜40となされる。これにより、ドリルの食いつきが良くなって、先端の横滑りが防止されるので、穴位置精度の向上に寄与し、また、ドリルの折損が抑制される。
【0020】
ドリル入側のアルミニウム箔(11)の表面(
図1の上面)は、以下のような条件を満たすマット面によって構成されている。
すなわち、同アルミニウム箔(11)の表面の凹凸の平均間隔(Rsm)は、圧延方向において15〜23μm(好ましくは、15〜20μm)であり、圧延方向と直角をなす方向において20〜48μm(好ましくは、25〜45μm)である。アルミニウム箔(11)表面の上記Rsm値は、例えば上記特許文献1記載のエントリーボードで用いられているA1N30やA3003よりなるドリル入側アルミニウム箔表面のRsm値と比べると、小さい、すなわち、前者の表面の方が細かい凹凸を有するものであることを示している。そのため、ドリル入側のアルミニウム箔(11)の表面に当たるドリル先端の位置ズレが効果的に抑えられ、それによって穴位置精度が著しく向上する。
次に、同アルミニウム箔(11)の表面の十点平均粗さ(Rzjis)は、圧延方向において1.1〜1.25μm(好ましくは、1.1〜1.2μm)であり、圧延方向と直角をなす方向において0.6〜0.75μm(好ましくは、0.6〜0.7μm)である。アルミニウム箔(11)表面の上記Rzjis値は、例えばA1N30やA3003よりなるアルミニウム箔表面のRzjis値と比べて、小さい、すなわち、前者の表面の方が凹凸が浅いことを示している。そのため、アルミニウム箔(11)表面に当たるドリル先端の角度がより垂直に近くなるので、ドリル先端の摩耗が低減され、ドリルの破損も防止される。
【0021】
ドリル出側のアルミニウム箔(12)の材質も特に限定されないが、例えば、A3003、A3004等の3000系アルミニウム合金や、A5182等の5000系アルミニウム合金が用いられる。
同アルミニウム箔(12)の厚さは、アルミニウム箔複合材(10)全体として要求される厚さに応じて適宜設定される。すなわち、エントリーボード(1)を構成するアルミニウム箔複合材(10)の好適な厚さは、使用するドリルの径に応じて適宜設定され、具体的には、ドリル径が大きい場合、同厚さを大きくし、ドリル径が小さい場合、同厚さを小さくする必要がある。例えば、ドリル径が0.5mm以下の場合、エントリーボード(1)の厚さ、すなわち、アルミニウム箔複合材(10)の全体厚さは、30〜200μm程度、より好ましくは50〜150μm程度となされる。したがって、ドリル出側のアルミニウム箔(12)の厚さは、ドリル入側のアルミニウム箔(11)の厚さが決まれば、これをアルミニウム箔複合材(10)の全体厚さから減じることによって求められ、通常30〜200μm程度となされる。
また、ドリル出側のアルミニウム箔(12)のマイクロビッカース硬度(Hv)は、50〜140となされ、好ましくは65〜140となされる。これにより、発生するバリの高さが抑えられる。
【0022】
上記2枚のアルミニウム箔(11)(12)は、接着剤層(13)を介して貼り合せられている。接着剤層(13)を構成する接着剤としては、穴あけ加工時の発熱による融着が起こらない、例えば、熱硬化性のアクリル樹脂系、ポリアミド樹脂系、ゴム系、エポキシ樹脂系、ウレタン樹脂系などの接着剤が好適に用いられ、より好ましくは、接着性能およびコストの面で有利なウレタン樹脂系の接着剤が用いられる。接着剤の使用量も特に限定されないが、通常1〜5g/m
2程度となされる。
【0023】
なお、上記実施形態のエントリーボード(1)は、2枚のアルミニウム箔(11)(12)を貼り合せてなるアルミニウム箔複合材(10)によって構成されているが、これに限らず、上記2枚のアルミニウム箔(11)12)の間に1枚以上のアルミニウム箔を介在させた3層以上のアルミニウム箔複合材をエントリーボードとして用いてもよい。
また、図示は省略したが、上記エントリーボード(1)のドリル入側のアルミニウム箔(11)の表面に、ポリエチレングリコールを主成分とする潤滑層を形成してもよい。この潤滑層が、回転するドリルとの間の摩擦熱で溶融し、その潤滑作用によって切削抵抗が低減することにより、穴位置精度がさらに向上し、ドリルの折損も抑制される。
【0024】
図2は、この発明による小口径穴あけ加工方法の1工程を示すものである。この方法は、プリント配線板にドリルによって穴(ビア)を形成するためのものである。
図2に示すように、まず、バックアップボード(3)の上に、複数枚(ここでは3枚)のプリント配線板(4)を重ねて配置し、さらに最上位のプリント配線板(4)の上に、上記エントリーボード(1)を重ねて配置する。
そして、この状態で、上方からドリル(4)によってエントリーボード(1)およびプリント配線板(2)に穴あけ加工を行う。
こうして、各プリント配線板(2)に所要の穴(21)が形成される。
【0025】
プリント配線板(2)としては、適宜のものが用いられ、その材質や厚さは特に限定されない。
プリント配線板(2)の重ね枚数は、形成される穴(21)の口径、ドリル(4)の性能、穴位置精度およびバリの発生の程度等に応じて適宜設定されるが、この発明によるエントリーボード(1)を用いた場合、例えば、3枚程度まで重ねても、穴位置精度が損なわれることなく、高い生産性が得られる。
【0026】
バックアップボード(3)の材質は特に限定されないが、例えば、紙−フェノール樹脂積層材が用いられる。
また、バックアップボード(3)の厚さは、ドリル(4)のサイズや1工程で穴あけ加工を行うプリント配線板(2)の重ね枚数等に応じて適宜設定される。
【0027】
ドリル(4)についても、プリント配線板(2)の材質・厚さや、これに形成される穴(21)の口径等に応じて、適宜のものが使用され、特に限定されない。
【実施例】
【0028】
次に、この発明の具体的実施例について説明するが、この発明は、これに限定されるものではない。
【0029】
[実施例1]
A8021の軟質材よりなる厚さ30μmのドリル入側アルミニウム箔と、A3004の硬質材よりなる厚さ120μmのドリル出側アルミニウム箔とを、1.5±0.5g/m
2の量のウレタン樹脂系接着剤を用いて貼り合せることにより、アルミニウム箔複合材を形成し、これを実施例1のエントリーボードとした。
【0030】
[比較例1]
A1N30の軟質材よりなる厚さ30μmのドリル入側アルミニウム箔と、A3004の硬質材よりなる厚さ120μmのドリル出側アルミニウム箔とを、1.5±0.5g/m
2の量のウレタン樹脂系接着剤を用いて貼り合せることにより、アルミニウム箔複合材を形成し、これを比較例1のエントリーボードとした。
【0031】
[比較例2]
A1N30の硬質材よりなる厚さ150μmのアルミニウム単板を用意し、これを比較例2のエントリーボードとした。
【0032】
[表面状態の測定]
次に、実施例1および比較例1のエントリーシートについて、ドリル入側のアルミニウム箔の表面の凹凸の平均間隔(Rsm)および十点平均粗さ(Rzjis)を測定した。測定は、それぞれのシートについて15枚ずつ行った。また、Rsm、Rzjisは、それぞれ、アルミニウム箔の圧延方向(0°)と、同圧延方向と直角をなす方向(90°)について測定した。
なお、比較例2については、比較例1と同一の結果が得られると考えられるので、測定を省略した。
【0033】
結果は、
図3および
図4のグラフに示す通りである。なお、これらのグラフ中、横軸が測定したエントリーシートのナンバーを示しており、縦軸が各エントリーシートのRsm値、Rzjis値を示している。
まずRsm値については、
図3のグラフに示すように、実施例1の場合、0°で約15〜21μm、90°で約30〜45μmであるのに対して、比較例1では、0°で約25〜34μm、90°で約50〜70μmであって、前者の方が小さい、すなわち、凹凸の間隔が狭くて細かいことがわかる。
次に、Rzjis値は、
図4のグラフに示すように、実施例1が、0°で約1.1〜1.2μm、90°で約0.65〜0.7μmであるのに対して、比較例1では、0°で約1.3〜1.5μm、90°で約0.8〜0.9μmであり、前者の方が小さい、すなわち、凹凸の間隔が狭くて細かいことがわかる。
【0034】
[穴位置精度評価]
次に、実施例1および比較例1,2のエントリーシートを用いて、上記穴あけ加工方法により、プリント配線板に穴を形成し、その穴位置精度を評価した。
【0035】
評価条件は、以下の通りとした。
ドリル径:0.3mm
プリント配線板:パナソニック社製 FR−4 R1566 6層板(板厚1.6mm)
プリント配線板重ね枚数:3枚
回転数:120krpm
送り速度:1.8m/min
チップロード:15μm/rev
上昇速度:25.4m/min
ヒット数:3000
バックアップボード:紙−フェノール樹脂積層板(板厚1.5mm)
【0036】
評価結果を以下の表1に示す。なお、表1中の評価項目については、「Avg+3S(avg)」の欄が、カッコ内のヒット数における穴飛び(単位:μm)を表しており、また、「MAX」の欄が、カッコ内のヒット数における最大穴飛び(単位:μm)を表している。
【0037】
【表1】
【0038】
表1に示す通り、実施例1のエントリーボードを使用してプリント配線板に穴をあけた場合、比較例1,2のエントリーボードを使用した場合と比べて、いずれの評価項目においても、穴位置精度が大幅に向上した。
【産業上の利用可能性】
【0039】
この発明による小口径穴あけ加工用エントリーボードは、被加工物、特にプリント配線板に、ドリルによって小口径の穴をあける際に好適に適用される。
【符号の説明】
【0040】
(1):小口径穴あけ加工用エントリーボード
(10):アルミニウム箔複合材
(11):ドリル入側のアルミニウム箔
(12):ドリル出側のアルミニウム箔
(13):接着剤層
(2):プリント配線板(被加工物)
(21):穴
(3):バックアップボード
(4):ドリル