特許第6707235号(P6707235)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6707235
(24)【登録日】2020年5月22日
(45)【発行日】2020年6月10日
(54)【発明の名称】美容装置
(51)【国際特許分類】
   A45D 26/00 20060101AFI20200601BHJP
【FI】
   A45D26/00 G
【請求項の数】2
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-198759(P2017-198759)
(22)【出願日】2017年10月12日
(65)【公開番号】特開2019-71990(P2019-71990A)
(43)【公開日】2019年5月16日
【審査請求日】2019年8月1日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年5月15日乃至17日に、ビューティーワールド ジャパン2017にて発明に係る美容装置の一部を公開した。
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514182160
【氏名又は名称】レナード株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002055
【氏名又は名称】特許業務法人JAZY国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三原 孔明
(72)【発明者】
【氏名】小山 定美
(72)【発明者】
【氏名】田口 晋
【審査官】 山本 健晴
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−286326(JP,A)
【文献】 特開2007−252742(JP,A)
【文献】 特開2014−151083(JP,A)
【文献】 特開2009−022333(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 26/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱毛処理を行う美容装置であって、
皮膚表面に光を当てるべく操作者が把持する2つのハンドピースと、
前記ハンドピースに必要な電源及び冷却のための流体を供給する本体装置と、
制御装置と、を有し、
前記ハンドピースは、温度センサを有し、
前記制御装置は、
所定の表示を行う表示部と、
操作入力を受け付ける操作部と、
音声を出力する音声出力部と、
前記温度センサの出力に基づいてハンドピースの温度を検出する検出制御部と、
前記検出制御部に検出結果に基づいて警告音を出力する警告音出力制御部と、
前記ハンドピースの切り替えを制御する切替制御部と、
前記ハンドピースの冷却を少なくとも制御する主制御部と、を有し、
前記主制御部は、電源投入後、前記2つのハンドピースの冷却を同時に開始し、前記検出制御部が、施術に用いている一のハンドピースの温度が予め定められた閾値以上になったと検出したときは、前記警告音出力制御部が警告音を出力し、前記操作部が操作されると、前記切替制御部は、施術用のハンドピースを他のハンドピースに切り替えるように制御するとともに、当該一のハンドピースの施術時の設定条件を他のハンドピースの施術時の設定条件として反映させることを特徴とする美容装置。
【請求項2】
前記ハンドピースは、
光源と、
前記光源から皮膚に向けて光を通過させる光路を有する透過媒体と、
前記透過媒体に冷たくなる側が接するように設けられた複数のペルチエ素子と、
前記複数のペルチエ素子の熱くなる側と前記光源とに接し、全体が一つの循環路となるように形成された流路とを有する
請求項1に記載の美容装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、美容のため、医療(外科手術時の切開部の皮膚の脱毛を含む)のために人体又は動物の皮膚から毛を除去する脱毛装置やフェイシャル装置等の美容装置に係り、特に複数のハンドピースを連続的に使用することができる美容装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザビーム、キセノンランプ、ハロゲンランプなどの光源からの光を照射して人体などの皮膚から脱毛をすることができることが知られている。この場合、これらの光が熱をも伴うため、火傷などの不具合を招く可能性がある。従って、このように光を使った脱毛装置については、人体への熱障害を回避するために、ハンドピースを冷却する必要があり、その為の種々の技術が提案されている。
【0003】
例えば、ペルチエ素子及び液体を流通可能な流路を持つ放熱機構により、火傷を防ぐ脱毛装置が提案されている(特許文献1参照)。また、気流により、光源とペルチエ素子とを冷却することが提案されている(特許文献2参照)。
【0004】
より詳細には、例えば特許文献1には、加圧された空気を供給する送風機構から供給された空気を冷却する冷却機構、送風機構から供給された空気を流通する流路が形成された熱伝導部材、熱伝導部材を冷却する3個のペルチエ素子、ペルチエ素子の発熱を放熱するための放熱機構を供える脱毛装置が開示されている。冷却機構によって氷点下15度乃至氷点下10度程度まで冷却された空気は、人体の脱毛領域に吹き付けられる。
【0005】
さらに、例えば特許文献2には、肌面に対し発光部から光を照射し肌面における脱毛処理を行う美容器において、使用者が把持する把持部と、把持しながら処理対象部位に当接させる肌ガイド面とを有し、肌ガイド面には、発光部からの光が照射される照射部と、肌面を冷却する冷却手段とを同一面に配設した構成において、冷却手段からの放熱を行うための気流と、発光部を空冷するための気流とを同時に生じさせるファンを供えた光照射型脱毛機構を備えた美容器を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−000334号公報
【特許文献2】国際公開JP WO2015/098427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、エステサロンにおいて用いられる脱毛装置では、一人当たりの施術時間をなるべく短く終わらせたいという要望がある。とりわけ、近時、多数の店舗が競争する状況にあっては、一日にどれだけの顧客の予約をとれるかが重要であり、一人当たりの施術時間をどれだけ短く出来るかが問題である。この点、前述した特許文献1,2では、施術時間短縮のための工夫は開示されていなかった。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、複数のハンドピースを設けることで、待機させるハンドピースの存在により冷却を効率良く行い、待機時の冷却によりハンドピース交換の待ち時間を節約できるようにし、複数のハンドピースの連続的な使用を可能とし、ひいては、施術時間を短縮することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明のの態様に係る美容装置は、脱毛処理を行う美容装置であって、皮膚表面に光を当てるべく操作者が把持する複数のハンドピースと、前記ハンドピースに必要な電源及び冷却のための流体を供給する本体装置と、制御装置と、を有し、前記ハンドピースは、温度センサを有し、前記制御装置は、所定の表示を行う表示部と、操作入力を受け付ける操作部と、音声を出力する音声出力部と、前記温度センサの出力に基づいてハンドピースの温度を検出する検出制御部と、前記検出制御部に検出結果に基づいて警告音を出力する警告音出力制御部と、前記ハンドピースの切り替えを制御する切替制御部と、前記ハンドピースの冷却を少なくとも制御する主制御部と、を有し、前記主制御部は、電源投入後、前記2つのハンドピースの冷却を同時に開始し、前記検出制御部が、施術に用いている一のハンドピースの温度が予め定められた閾値以上になったと検出したときは、前記警告音出力制御部が警告音を出力し、前記操作部が操作されると、前記切替制御部は、施術用のハンドピースを他のハンドピースに切り替えるように制御するとともに、当該一のハンドピースの施術時の設定条件を他のハンドピースの施術時の設定条件として反映させることを特徴とする。
【0013】
の態様において、前記ハンドピースは、光源と、前記光源から皮膚に向けて光を通過させる光路を有する透過媒体と、前記透過媒体に冷たくなる側が接するように設けられた複数のペルチエ素子と、前記複数のペルチエ素子の熱くなる側と前記光源とに接し、全体が一つの循環路となるように形成された流路とを有してよい。


【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、複数のハンドピースを設けることで、待機させるハンドピースの存在により冷却を効率良く行い、待機時の冷却によりハンドピース交換の待ち時間を節約できるようにし、複数のハンドピースの連続的な使用を可能とし、ひいては、施術時間を短縮する美容装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る美容装置の制御系の構成を示すブロック図である。
図2】制御基板及びハンドピースの接続状態を示す図である。
図3】オペレーション画面の表示例を示す図である。
図4】冷却系の本体装置の内部構成を示す図である。
図5】同本体装置の筐体及びハンドピースとの接続状態を示す図である。
図6】同本体装置のハンドピース内部の光源取付部、透過媒体取付部、そして流路切替部における流体流路の詳細を示す図である。
図7】ペルチエ素子の温度が時間経過により変化することを示すグラフであって、図7(a)は、一定の電力を供給し続ける際にリバウンドが現れることを示す図であり、図7(b)は、適切な電力制御をすることにより、半分の時間で目的の温度まで冷却することができることを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明のシステムを実施するための最良の形態を詳細に説明する。これらの図において、同一の符号を付した部分は同一物を表わし、基本的な構成及び動作は同様であるものとする。
【0017】
本発明の一実施形態に係る美容装置は、光を使った脱毛装置やフェイシャル装置に関わるもので、施術ヘッド、即ちハンドピースの人体に接する部分の温度を常に適切に冷却させ、待機時間なく使用可能とするものである。従来の装置では、ハンドピースのヘッドの温度が施術に適切でないと判断された場合、数分の待ち時間をもたらし、それが顧客への精神的な負荷や作業効率の低下となっていた。一方、ハンドピースが温度の高い状態で無理に施術をすると、顧客の体への負担を増大させ、脱毛に関する不満を招くおそれがあった。この実施形態に係る美容装置によれば、これらの問題を解消できる。以下、美容装置の一例として脱毛装置を例に挙げて詳述する。
【0018】
図1には、本発明の一実施形態に係る脱毛装置の制御系の構成を示し説明する。
【0019】
同図に示されるように、脱毛装置は、その制御装置50内に、全体の制御を司るCPU(Central Processing Unit)等の制御部51を備えており、制御部51は、ハンドピースに実装される温度センサ52、操作部53、表示部54、記憶部55、及び音声出力部56と接続されている。操作部53は、各種操作スイッチ等の操作デバイスであり、表示部54はLCDディスプレイ等の表示デバイスであるが、この例では、両者をタッチパネルとして一体に構成している。記憶部55は、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等のメモリやハードディスクドライブ(Hard Disc drive)等で構成されており、制御部51で実行される制御プログラムも記憶されている。そして、音声出力部56は、スピーカ等の放音デバイスで構成されている。尚、ここでは不図示であるが、制御装置50には、本体内に設けられた、電源装置により電源を供給されると共に、各部(チラー、ポンプ、ハンドピースなど)への電源供給の制御も可能である。
【0020】
そして、制御部51は、記憶部55の制御プログラムを実行することで、主制御部51a、検出制御部51b、警告音出力制御部51c、切替制御部51d、及び表示制御部51eとして機能する。
【0021】
より詳細には、主制御部51aは、各種モードの切換え等、統括的な制御を司る。検出制御部51bは、温度センサ52からの出力信号に基づいて、ハンドピースのヘッドの温度を検出する。警告音出力制御部51cは、検出制御部51bが、ハンドピースのヘッドの温度が所定の閾値を超えたと判断したときなどに、音声出力部56より警告音を発生するように制御する。切替制御部51dは、詳細は後述するように、タッチパネルの操作によりモードが切替られたり、複数のハンドピースのうち、施術に使用するハンドピースが切替指示されたりしたときに、ハンドピースの使用状態、待機状態を切り替える等の制御を行う。表示制御部51eは、表示部54におけるオペレーションガイドの表示等の各種の表示を制御する。そして、表示部54には、処理内容や動作状況、更には顧客(施術対象者)を管理するためのカルテを表示したりすることもできる。
【0022】
ここで、図2に示されるように制御部51の制御基板200は、2つのハンドピース82,84ともケーブルで接続され、電力供給端子201よりペルチエ素子101等各部への電力供給の制御を行う。使用していないハンドピースについては、光源への電力供給を停止すると共に、複数のペルチエ素子への電力供給を抑えつつ使用可能な温度へと短時間で復帰する制御を実行する。制御基板200のNTCサーミスタ端子202は、各ハンドピース82,84の温度センサ52と接続される。各温度センサ52からの出力信号はNTCサーミスタ端子202より制御基板200に送られる。なお、ハンドピースが、ペルチエ素子近傍に温度センサを設ける場合には、当該センサにより検出される温度に従って適切な電力供給をする制御をすることもできる。
【0023】
すなわち、検出制御部51bは、この温度センサ52の出力信号に基づいて、ハンドピース82,84の温度が所定の閾値を超えていないか、適宜管理することができ、所定の閾値を超えた場合には、警告音出力制御部51cの制御の下、ブザーにより施術者に直接的に警告を行い、使用を中止させるように促すこともできる。尚、図1では、音声出力部56を制御装置50側に設ける例を示したが、これに限定されるものではなく、ハンドピース82,84側に設けても良いことは勿論である。
【0024】
また、設定されたモードに従い、ハンドピース82,84が過熱した場合に、その光源ランプの電源及びペルチェ素子101への通電を強制的にオフにするように制御してもよい。その場合、電源を強制的に切った後においても、冷却のために、流体の循環の動作は続けることが望ましい。
【0025】
次に、図3には、各ハンドピースの状態や施術状況、更には施術に用いるハンドピースの着替え等に係るオペレーション画面の表示例を示し説明する。
【0026】
オペレーション画面は、左側のハンドピースの確認及び設定領域300と、右側のハンドピースの確認及び設定領域301に大別される。領域300と301の表示及び操作ボタンは、同一であるので、左側を例に挙げて詳述する。左側のハンドピース用の画面300では、最上部にハンドピースを指標する記号が表示され、その下の領域300aに使用可能状態が表示される。そして、その下には、領域300bに光源の発光パワー[J/cm2]が表示され、領域300cに発光間隔が表示され、領域300dにハンドピースのヘッドの実際温度[℃]が表示され、領域300eに施術を開始してからの発光回数[発]が表示され、最下部には冷却のレベル(この例では、レベル1〜レベル5の5段階)が表示される。領域300bの右隣りには調光ボタン300fが表示され、領域300cの右隣りには調整ボタン300gが表示され、更に施術動作開始ボタン300hが表示される。領域300cの発光間隔表示については、発光回数[発/秒]で表示しても、電力[w]で表示してもよいことは勿論である。
【0027】
実際の施術時には、電源投入後、施術操作画面が表示されるまでは、主制御部51aの制御の下、複数のハンドピース(この例では、2本)が同時にフルパワーで冷却されることになる。そして、ハンドピースが使用可能温度(例えば、内部温度で20℃)に達すると、表示制御部51eの制御の下、各領域300,301の最上部に「正常に利用可能です。」と表示される。その後、調光ボタン300fと調整ボタン300gのユーザ操作により発光パワーと発光間隔が設定され、施術で用いる側の施術動作開始ボタン300hがタップされると、主制御部51aは、施術に使用していないハンドピースを待機状態にするために、冷却のレベル表示をレベル1(設定上、0℃)まで下げるよう制御する。こうして施術を開始し、発光源の発光でハンドピース82又は84の人に接する部分に部分温度が設定温度(内部設定可能で、例えば25℃)を超えた時点で、表示制御部51eの制御の下、待機中のハンドピースの冷却レベルを、フルパワーを指標するレベル5に切り替える。このとき施術者に警告を促すべく、警告音出力制御部51cは、音声出力部56より完結的なビープ音を出力する。施術者は、このビープ音を聞き、他方のハンドピースの温度状態を確認し、適切な施術のタイミングでハンドピースを切り替える。切替時には、それまで使っていたハンドピースの施術動作開始ボタン300hをタップしてOFF状態にして、他方のハンドピースの施術動作開始ボタンをタップする。すると、それまで使っていたハンドピースの発光パワーと発光周波数設定が自動的に他方のハンドピースの画面設定側に反映される。従って、ハンドピースを切り替えた後において、当初と同じ発光パワー及び発光周波数で継続的に施術を行うことが可能となる。
【0028】
従来は、業務用の光を用いた脱毛装置で複数本のハンドピースが装着されたものは存在していたものの、いずれも各ハンドピースの状態を同時に確認することはできず、各ハンドピースの実際の温度を表示する機能も有いていなかった。この点、本実施形態に係る美容装置では、各ハンドピースの状態を常に見ることができるオペレーション画面を実現することで、施術者の判断で、適切であると判断するハンドピースを待機時間なくして簡単に切り替えて同じ設定条件の下で継続的に使用することができる。
【0029】
これを実現するために、本実施形態では、前述したように、各ハンドピースは、本体の電源投入後、同時に冷却動作を開始するように制御され、各ハンドピースの温度を測定する温度センサで各状態を検出し、オペレーション画面には各ハンドピース毎に操作可能な専用の案内とボタンを表示して確認及び設定を可能とし、施術に使用していないハンドピースのスタンバイ状態についても常に確認することができるようにしている。
【0030】
続いて、以下では、冷却系の構成について言及する。
【0031】
図4は、冷却系の本体装置70の内部構成を示す図である。同図に示されるように、本体装置70の内部には、チラー、ポンプ、制御装置、そして本体装置の外部のハンドピースなどの各部へ電源を供給する電源装置10、ハンドピースの冷却のために循環させる流体を蓄積する流体タンク12、流体タンク12内の流体の温度を検出する流体温度センサ14、流体タンク12内の流体を冷却するために流体タンク12内に設けられた熱交換部25、熱交換部25に冷媒ガスを送るための冷媒管22、冷媒ガスを冷やして冷媒管22に送るチラー20、流体タンク12内の流体をハンドピースに循環させるポンプ30、ポンプ30から送られる流体をハンドピースに運ぶ流体送り管32,34,36、ハンドピースから戻る流体を運ぶ流体戻り管42,44,46、戻ってきた流体を流体タンク12に戻す直前にろ過するろ過フィルタ40、流体温度センサ14の計測結果に基づいて流体タンク12内の流体温度が一定範囲になるようにチラー20を制御するとともに、ポンプ30を制御してハンドピースへ送る流体の流量、圧力などを制御する制御装置50を有する。制御装置50は、前述したハンドピースの切換えに関わる制御等を司る制御部51をも含んでいる。
【0032】
流体タンク12内の流体は、液体、特に水とすることができる。一方、チラー20としては、冷媒管22を通して熱交換部25に冷媒ガスを送って、流体タンク12内の流体(水などの液体)を冷やすものを使うことができる。ポンプ30は、流量、圧力などを制御装置50により、制御可能なものを用いるのが望ましい。流体出入口62、64は、流体送り管34,36、流体戻り管44,46がハンドピースへ向けて延びるための、本体装置70の筐体に設けられた口である。描くのを省略してあるが、これらの管に沿って、ハンドピースへの電源供給のためのケーブル、ハンドピース側にセンサが設けられる場合のその検出結果を本体装置70側に送るためのケーブルが設けられる。
【0033】
図5には、本体装置70の筐体及びハンドピース82、84との接続状態を示し説明する。同図に示されるように、本体装置70は、図1に示す構成要素をその筐体内に納めている。そして、たとえばエステサロンの脱毛を施す部屋の、顧客が横たわるベッドの近くに設置される。流体出入口62(64)から延びる流体送り管34(36)と流体戻り管44(46)とは、図示しない電源供給ケーブル、データ線などとともに一体的にチューブに納められてハンドピース82(84)まで延びる。
【0034】
ハンドピース82,84は、施術者がその手に把持して、脱毛を施される顧客の脱毛部位に当てて、ハンドピース内の光源から発せられる光を照射するものである。この例ではハンドピース82,84は、同様のものが複数(2個)、設けられている。使用しているハンドピースが過熱して使用できなくなった場合に、冷ます間、他方のハンドピースを用いることにより、顧客の待ち時間を少なくするためである。ハンドピースの数は、二個に限らず、三個またはそれ以上であってもよい。
【0035】
ここで、図6に示すように、ハンドピース82及び84の各々は、光源取付部86、透過媒体取付部92,94、及び流路切替部96,98を有する。光源取付部86には、光源から熱を奪うことができるように、流体流路がその内部に設けられる。透過媒体取付部92,94には、ペルチエ素子101,102の発熱側の面から熱を奪うことができるように、流体流路がその内部に設けられる。キセノンランプ、ハロゲンランプなどの光源(不図示)は、細い円筒形状をしており、光源取付部86の内側に納められる。また、光源から出る光を透過して顧客の脱毛部位に導く働きをする透過媒体110は、クリスタル(液晶化されたガラス)からなる。透過媒体110は、ステンレス製の熱伝達媒体100にその側方を囲まれる。熱伝達媒体100には、ペルチエ素子101、102の吸熱側の面が貼りつけられる。ペルチエ素子二個が吸熱側を内側にして透過媒体の側面に貼り付けられると、ペルチエ素子の発熱側は、外側に向く。透過媒体110近傍には、温度センサ103が取り付けられる。
【0036】
その状態の透過媒体110を透過媒体取付部92,94で挟み込むようにして包んで固定する。透過媒体110の熱をペルチエ素子101,102で奪い、さらに、ペルチエ素子の発熱側から、流体の循環によって熱を奪うためである。
【0037】
より詳細には、透過媒体110は、直方体状をなしており、熱伝達媒体100は、透過媒体110よりも僅かに大きな寸法をもった中空な直方体状をなしている。熱伝達媒体100内に透過媒体110が収められた状態において、熱伝達媒体100の内側の4つの面は透過媒体110に接している。透過媒体110の外側の4つの面のうち最も広い2つの面にペルチエ素子101,102が配置される。ペルチエ素子101,102は、薄い直方体状をなしている。ペルチエ素子101,102の横幅は、熱伝達媒体100における当該ペルチエ素子が配置する面の横幅よりも僅かに小さくなっている。温度センサ103は、熱伝達媒体100におけるペルチエ素子101が貼られている面とペルチエ素子102が貼られている面との間に介在する面の1つに配置されている。熱伝達媒体100におけるペルチエ素子101,102が貼られている部分は、最も広い2面における上側(光源の位置する側)の半分を占める部分である。
【0038】
透過媒体取付部92及び94の各々は、例えば、板における一対の端辺の側を、上から見てコの字をなすように起立させたような形をなしている。透過媒体取付部92及び94の縦幅は、熱伝達媒体100におけるペルチエ素子101,102が貼られている部分の縦幅と略同じ(透過媒体110の縦幅の略半分)である。透過媒体取付部92及び94の各々の上面における横幅方向の一端部と他端部には開口がある。透過媒体取付部92及び94の各々の上面における2つの開口からは下方に向かって流路が延伸している。透過媒体取付部92及び94の各々における2つの開口から下方向に延びる2つの流路は途中の複数個所において分岐し、分岐点間には複数個の横方向流路が設けられている。複数個の横方向流路はほぼ均等の間隔をあけて離れている。透過媒体取付部92は、透過媒体110、熱伝達媒体100、ペルチエ素子101,102、及び温度センサ103からなる構造体におけるペルチエ素子101の貼られている側の半分を覆っている。透過媒体取付部94は、透過媒体110、熱伝達媒体100、ペルチエ素子101,102、及び温度センサ103からなる構造体におけるペルチエ素子102の貼られている側の半分を覆っている。透過媒体110、熱伝達媒体100、ペルチエ素子101,102、及び温度センサ103からなる構造体の下半分(ペルチエ素子101,102が貼られていない部分)は、透過媒体取付部92及び94に覆われずに外部に露出している。
【0039】
光源取付部86は、例えば、直方体状をなしている。光源取付部86の横幅は、透過媒体取付部92及び94の横幅と略同じである。光源取付部86の縦幅は、透過媒体取付部92及び94の縦幅の略半分である。光源取付部86の一面には、内側に凹んだ切り欠き部がある。光源取付部86内には、横方向に延伸する円筒孔が穿設されている。この円筒孔には、光源が収められる。光源取付部86の下面の4隅には4つの開口がある。4隅の4つの開口からは上方に向かって流路が延伸している。4隅の4つの開口のうちの第1の開口と第2の開口から上方に延びる2つの流路は、光源取付部86における上面より僅かに下を斜め方向に延びる斜め流路を介して繋がっている。4隅の4つの開口のうちの第3の開口と第4の開口から上方に延びる2つの流路は、光源取付部86における上面より僅かに下の位置においてそれぞれ横幅方向外側に折れ曲がっている。光源取付部86における横幅方向に対向する2つの面には、この折れ曲がった流路と繋がった開口が形成されている。
【0040】
流路切替部96及び98の各々は、例えば、直方体状をなしている。流路切替部96及び98の横幅は、光源取付部86の横幅よりも十分に小さくなっている。流路切替部96及び98の縦幅は、光源取付部86の縦幅と略同じである。流路切替部96には、当該流路切換部96内においてコの字に折れ曲がる流路が形成されている。このコの字の流路は、当該流路切換部96の一端面において2つの開口を形成している。流路切換部98には、2つの流路が形成されている。2つの流路のうち1つは当該流路切換部98の一端面と他端面の間を一直線状に貫いている。2つの流路のうち別の1つは当該流路切換部98内において折れ曲がっている。流路切替部96及び98は、光源取付部86を横幅方向の両側から挟むようにして光源取付部86に接合されている。光源取付部86と流路切替部96及び98とからなる構造体における光源取付部86の下面は、透過媒体取付部92及び94の上面と接合されている。
【0041】
流体送り管34(36)から、流路切換部98へとはいる流体は、流路切換部98により流路を曲げられて、透過媒体取付部92に設けられた流路に導かれる。透過媒体取付部92内の流路を巡る間に、流体はペルチエ素子101の発熱側から熱を奪う。流体は、透過媒体取付部92の流路を通り抜けると、光源取付部86に設けられた流路を通り、さらに、透過媒体取付部94内に設けられた流路に導かれる。そして、透過媒体取付部94内の流路を通過した流体は、ペルチエ素子102の発熱側から熱を奪い、その後、流路切換部96により流路を曲げられて、光源取付部86内の流路に導かれて、光源から熱を奪う。その後、流路切換部98に戻り、流体戻り管44(46)を通って、本体装置70へと返る。
【0042】
本体装置70に戻った流体は、ろ過フィルタ40を介して流体タンク12に戻る。流体タンク12に戻った流体は、チラー20、冷媒管22、熱交換部25の働きにより、冷却されて、再びポンプ30により、循環し、ハンドピースに送られる。
【0043】
上述したように、ペルチエ素子の発熱面、光源と冷却すべきものが二つあり、本発明では、それぞれを流体で冷やすために流体流路を設けてある。そして、さらにこれらの二つの流路が直列につながっている。このことは、二つの冷却のいずれかをなんらかの事情でし損ねてしまうというリスクを回避するという意義を有する。
【0044】
冷却をし損ねることは、顧客の火傷をもたらす可能性のあるものであるので、幾重にも防止対策を講ずべきである。一方、冷却を待つために長時間をかけてしまうと、施術時間が長引いてしまい、顧客の苦情にもつながる。エステサロンの経営上も、一人の顧客に費やす施術時間は短いほうが好ましい。そこで、本発明では、二つの流路を直列に結ぶことで、冷却の確実性をもたらすこととした。
【0045】
ペルチエ素子は、電力を供給することで、二つの面のうちの一方が吸熱し、他方が発熱するように構成された素子である。吸熱面側が熱を奪うことにより、温度を下げる効果は、時間の経過に伴い、あるところでリバウンド現象が見られる。リバウンド現象は、目標温度、たとえばマイナス5度という温度に下げようとしても、思うように下がらず、時間がかかってしまう現象である。
【0046】
次に、図7には、ペルチエ素子の温度が時間の経過により変化することを示すグラフを示し説明する。より詳細には、図7(a)には、一定の電力を供給し続ける際にリバウンドが現れることを示し、図7(b)には、適切な電力制御(エネルギー制御)をすることにより、半分の時間で目的の温度まで冷却することができることを示し説明する。図4において、横軸は時間経過を示し、縦軸は温度を示す。この温度はペルチエ素子の近傍に設けた温度センサにより測定する。
【0047】
本発明の発明者は、このリバウンド現象が現れる時点で、ペルチエ素子に対する電力供給(エネルギー供給)を制御することが目標温度に達する時間を短縮することに役立つと考えて、実験を行った。電力制御には、第一に、電流の制御、第二に、電圧の制御、第三に、通電時間の制御(たとえば、断続的に通電する制御をすること)と三つの方法を試してみたところ、いずれの方法においても、目標温度に達するまでの時間を半分に短縮することができることを確認した。すなわち、図7(a)で見られるリバウンド現象で目標の温度にいたるまでの時間をt1とすると、電力制御により図7(b)の曲線では、目標の温度にいたるまでの時間t2は、t1のおよそ半分になった。
【0048】
この知見を脱毛装置に生かすべく、ペルチエ素子の発熱側の面に近いところに温度センサ(不図示)を設けて、その検出結果を制御装置50に入力して、それに基づいて、電力制御(電流制御、電圧制御、通電時間のいずれかの制御、または、これらの組合せ)を実行することとした。
【0049】
この制御方法では、制御装置50は、温度センサ103の検出温度が目標温度(例えばマイナス5℃)よりも高い場合に、温度センサ103の検出温度が目標温度よりも高い所定の基準温度まで低下するまでの間は、エネルギー出力量を出力可能範囲内における最大量で出力し、温度センサ103の検出温度が基準温度に達した時点で、エネルギー出力を最大出力量よりも低い所定の出力量に落とし、以降は、温度センサ103の検出温度が目標温度に達するまで、エネルギー出力を段階的に落とす。例えば、エネルギー出力量を電流、電圧、又は、電力のデューティ比により制御するのであれば、温度センサ103の検出温度が0℃以上の状態ではデューティ比100パーセントとし、マイナス0℃〜マイナス1℃の状態でではデューティ比40パーセントとし、マイナス1℃〜マイナス2℃の状態ではデューティ比30パーセントとし、マイナス2℃〜マイナス3℃の状態ではデューティ比20パーセントとし、マイナス3℃〜マイナス4℃の状態ではデューティ比10パーセントとする。この制御方法については、たとえば通常の使用方法において起こる可能性の高い曲線を経験則により事前に見出しておき、制御装置50(又はハンドピース内に設けた補助的な制御装置)で監視して、その微分値(又は差分値)が所定の値に到達したところで、電力を減らす制御に切り替えることができる。
【0050】
マイナス5度に保たれた状態のハンドピースを施術に用いようとして、脱毛すべき肌に当てると、およそ13度上がってプラス8℃ほどになることが経験的に知られる。施術に適した温度は、10℃から20℃の間の温度である。熱くなりすぎると施術には不適切であることが知らされ、施術者は、そのハンドピースを使うのを中止し、他のハンドピースを用いる。
【0051】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の改良・変更が可能である。
【0052】
例えば、前述したように、流体を循環させて、光源とペルチエ素子とを冷却するというアイデア(アイデア1)と、ペルチエ素子への電力供給を制御して、ペルチエ素子の冷却効率を上げるというアイデア(アイデア2)とは、このたびの脱毛装置においては、両方を組み合わせて実施している。しかし、ペルチエ素子の発熱面の冷却は、流体循環により行う以外にも他のやりかたもあり得ることに鑑みるとき、アイデア2は、アイデア1とは独立させて実施可能なものである。
【符号の説明】
【0053】
10…電源装置、12…流体タンク、14…流体温度センサ、20…チラー、22…冷媒管、25…熱交換部、30…ポンプ、32,34,36…流体送り管、40…ろ過フィルタ、42,44,46…流体戻り管、50…制御装置、51…制御部、51a…主制御部、51b…検出制御部、51c…警告音出力制御部、51d…切替制御部、51e…表示制御部、52…温度センサ、53…操作部、54…表示部、55…記憶部、56…音声出力部、62,64…流体出入り口、70…本体装置、82,84…ハンドピース、86…光源取付部、92,94…透過媒体取付部、96,98…流路切替部、100…熱伝達媒体、101,102…ペルチエ素子、103…温度センサ、110…透過媒体。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7