特許第6707241号(P6707241)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6707241
(24)【登録日】2020年5月22日
(45)【発行日】2020年6月10日
(54)【発明の名称】水素水生成装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/461 20060101AFI20200601BHJP
   C25B 1/04 20060101ALI20200601BHJP
   C25B 9/02 20060101ALI20200601BHJP
   C25B 15/00 20060101ALI20200601BHJP
【FI】
   C02F1/461 A
   C25B1/04
   C25B9/02 302
   C25B15/00 302A
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2019-160476(P2019-160476)
(22)【出願日】2019年9月3日
【審査請求日】2019年10月4日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】593011450
【氏名又は名称】株式会社コスモスエンタープライズ
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】特許業務法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】深沢 三夫
【審査官】 ▲高▼ 美葉子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2018−43210(JP,A)
【文献】 特開2009−22927(JP,A)
【文献】 特開2006−239531(JP,A)
【文献】 特開2017−214653(JP,A)
【文献】 実公昭47−31074(JP,Y1)
【文献】 実公昭60−26880(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/46− 1/48
C25B 1/00− 9/20
C25B 13/00−15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部に保持される電解槽と、
前記電解槽の上部を被い、前記本体部に対して回動により開閉可能に取り付けられる蓋部材と、
前記蓋部材に上部が固定される棒状の第一の電極と、
一対の電極板からなり、前記蓋部材に前記電極板の上部がそれぞれ固定され、且つ前記電極板が前記第一の電極の周囲に配置される第二の電極と、
前記第一の電極及び前記第二の電極の外側を被う状態で配置される第三の電極と、
前記第一の電極に着脱自在に装着保持され、かつ当該第一の電極と密着し一部が接触する導電性のあるパイプ電極材と、を有し、
前記第二の電極の各電極材間に給電部から供給される交流を印加し、前記第一の電極及び前記第三の電極をそれぞれ接地電極とし、
前記蓋部材の裏面部に、電極部材として前記第一の電極、前記第二の電極、前記パイプ電極材及び前記第三の電極を取り付け、前記蓋部材を閉じた状態で、全ての前記電極部材を前記電解槽内の水中に配置して水の電気分解を行い、
前記蓋部材の開操作により、前記電極部材を前記電解槽から引き揚げ、この状態で前記本体部に対して前記蓋部材が保持され、前記パイプ電極材を前記第一の電極から脱着することが可能であることを特徴とする水素水生成装置。
【請求項2】
前記第二の電極の各電極板を、それぞれ網目が形成された板状に形成し、前記第一の電極の中心対称位置に配置したことを特徴とする請求項1に記載の水素水生成装置。
【請求項3】
前記第三の電極を、網目が形成された筒状に形成したことを特徴とする請求項1乃至2の何れかに記載の水素水生成装置。
【請求項4】
前記第三の電極に底面部を形成し、当該底面部の中央に挿通孔部を設け、
前記第三の電極の内部に、前記パイプ電極材を装着した前記第一の電極及び前記第二の電極を収納し、この状態で前記第一の電極の下端部を前記第三の電極の前記挿通孔部から突出させ、当該突出させた部位を止着具で止着し、当該第一の電極に、前記パイプ電極材及び第三の電極を保持させたことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の水素水生成装置。
【請求項5】
前記第一の電極の下端部にネジ部を設け、当該ネジ部を前記第三の電極の前記挿通孔部から突出させ、前記ネジ部にナット部材を螺着し、前記第一の電極に、前記パイプ電極材及び第三の電極を保持させたことを特徴とする請求項4に記載の水素水生成装置。
【請求項6】
前記第二の電極に、チタン材に白金メッキを施した材料を用い、前記第三の電極にステンレス網材を用いたことを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の水素水生成装置。
【請求項7】
前記パイプ電極材及び第二の電極の下部側に、これら電極を保持する電極保持具を配置し、当該電極保持具にマグネシウム合金材を保持させたことを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の水素水生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メンテナンス性を改善し、電気分解によりナノバブル水素水を生成する水素水生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載の電解装置は、図7に示すように、電解槽110と、電解槽110に着脱可能に装着される本体部112と、電解槽110内に配置される電極部114と、電極部114に給電するための給電部116とを備え、給電部116は、本体部112に取り付けられ、本体部112から電解槽110の底面側へ延伸しており、電極部114は給電部116に着脱可能に取り付けられており、これにより電極部114の着脱作業を容易にするというものである。
【0003】
特許文献2に記載の還元水素水生成装置は、電極ユニットを構成するシャフトの外側に、間隔をおいて、金属製電極網を一体にした金属製パイプを垂直方向に設け、このシャフトと金属製パイプとの間に、金属製板ばねを間隔をおいて設け、電極ユニットと金属製パイプとをシャフトから着脱自在に止着することにより、取り外しの複雑な手間を解消し、ミネラル等がシャフトに付着するのを解消するというものである。
【0004】
また、特許文献3に記載の水素水生成器は、容器を陰極として、飲料水に浸漬された陽極と該容器との間に直流電源により直流電圧を印加して水素水を生成することにより、スケールは容器の内面に付着することになり、電気分解中に生成するスケールを取り除く作業が容易であるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017−51918号公報
【特許文献2】特開2015−98638号公報
【特許文献3】特許第6167391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
さて、前記特許文献1に係る電解装置は、電極部の着脱作業は容易であるが、複雑な電極部の掃除等の作業性に欠けるという問題がある。また、特許文献2の還元水素水生成装置は、金属製電極網を金属製パイプと一体とし、また金属製板バネ等を用いていることから、電極等の着脱作業或いは掃除が煩わしく、また特許文献3の水素水生成器は、スケールが容器全体に付着することから、容器の掃除等に手間取るという問題がある。
【0007】
本発明は前記問題点に鑑みてなされたものであり、簡単な構成で電極の着脱が容易に行えて、電極の保守性に優れた水素水生成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の技術的課題を解決するため、本発明に係る水素水生成装置は図1等に示すように、本体部4に保持される電解槽6と、前記電解槽6の上部を被い、前記本体部4に対して回動により開閉可能に取り付けられる蓋部材8と、前記蓋部材8に上部が固定される棒状の第一の電極50と、一対の電極板からなり、前記蓋部材8に前記電極板の上部がそれぞれ固定され、且つ前記電極板が前記第一の電極50の周囲に配置される第二の電極52と、前記第一の電極50及び前記第二の電極52の外側を被う状態で配置される第三の電極54と、前記第一の電極50に着脱自在に装着保持され、かつ当該第一の電極50と密着し一部が接触する導電性のあるパイプ電極材56と、を有し、前記第二の電極52の各電極材間に給電部14から供給される交流を印加し、前記第一の電極50及び前記第三の電極54をそれぞれ接地電極とし、前記蓋部材8の裏面部に、前記第一の電極50、前記第二の電極52、前記パイプ電極材56及び前記第三の電極54を取り付け、前記蓋部材8を閉じた状態で、全ての前記電極部材10を前記電解槽6内の水中に配置して水の電気分解を行い、前記蓋部材8の開操作により、前記電極部材10を前記電解槽6から引き揚げ、この状態で前記本体部4に対して前記蓋部材8が保持され、前記パイプ電極材56を前記第一の電極50から脱着することが可能である構成である。
【0009】
本発明に係る水素水生成装置は、前記第二の電極52の各電極板を、それぞれ網目が形成された板状に形成し、前記第一の電極50の中心対称位置に配置した構成である。
【0010】
本発明に係る水素水生成装置は、前記第三の電極54を、網目が形成された筒状に形成した構成である。
【0011】
本発明に係る水素水生成装置は、前記第三の電極54に底面部72を形成し、当該底面部72の中央に挿通孔部74を設け、前記第三の電極54の内部に、前記パイプ電極材56を装着した前記第一の電極50及び前記第二の電極52を収納し、この状態で前記第一の電極50の下端部を前記第三の電極54の前記挿通孔部74から突出させ、当該突出させた部位を止着具94で止着し、当該第一の電極50に、前記パイプ電極材56及び前記第三の電極54を保持させた構成である。
【0012】
本発明に係る水素水生成装置は、前記第一の電極50の下端部にネジ部64を設け、当該ネジ部64を前記第三の電極54の前記挿通孔部74から突出させ、前記ネジ部64にナット部材94を螺着し、前記第一の電極50に、前記パイプ電極材56及び第三の電極54を保持させた構成である。
【0013】
本発明に係る水素水生成装置は、前記第二の電極52に、チタン材に白金メッキを施した材料を用い、前記第三の電極54にステンレス網材を用いた構成である。
【0014】
本発明に係る水素水生成装置は、前記パイプ電極材56及び第二の電極52の下部側に、これら電極を保持する電極保持具84を配置し、当該電極保持具84にマグネシウム合金材を保持させた構成である。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る水素水生成装置によれば、第一の電極及び第三の電極をそれぞれ接地電極とし、第二の電極の各電極材間に給電部から供給される交流を印加し、蓋部材の裏面部に、第一の電極、第二の電極、パイプ電極材及び第三の電極を取り付け、蓋部材を閉じた状態で、全ての電極を電解槽内の水中に配置して水の電気分解を行い、蓋部材の開操作により、各電極を電解槽から引き揚げ、この状態で本体部に対して蓋部材を保持し、パイプ電極材を第一の電極から脱着可能な構成としたから、簡単な構成でメンテナンスの必要なパイプ電極材等の着脱が容易に行え、また電極の掃除等も簡単に行えて保守性が改善され、管理が容易であるという効果を奏する。
【0016】
本発明に係る水素水生成装置によれば、第三の電極の内部に、パイプ電極材を装着した第一の電極及び第二の電極を収納し、この状態で第一の電極の下端部を第三の電極の孔部から突出させ、突出させた部位を止着具で止着し、第一の電極に、パイプ電極材及び第三の電極を保持させた構成としたから、電極の着脱が容易で作業性に優れ、また電極の保守が容易に行えるという効果がある。
【0017】
本発明に係る水素水生成装置は、第一の電極の下端部にネジ部を設け、ネジ部を第三の電極の孔部から突出させ、ネジ部にナット部材を螺着し、第一の電極に、パイプ電極材及び第三の電極を保持させた構成としたから、電極の着脱が手作業で簡単に行なえ電極の保守に寄与するという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施の形態に係る水素水生成装置の断面を示す図である。を示す図である。
図2】実施の形態に係る水素水生成装置の電極部材等の分解斜視図である。
図3】実施の形態に係り、電極保持具の斜視図(a)(b)である。
図4】実施の形態に係り、蓋部材を開いた状態を示す図であり、パイプ電極材、第三の電極を取り付ける前の状態を示す。
図5】実施の形態に係り、蓋部材を開いた状態を示す図であり、パイプ電極材、第三の電極等全ての電極を取り付けた状態を示す。
図6】実施の形態に係る水素水生成装置の外観を示す図であり、(a)は装置の正面、(b)は電解槽、(c)は装置の平面をそれぞれ示す。水素水生成装置の使用状態を示す図である。
図7】従来例に係る電解装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る水素水生成装置の実施の形態を説明する。
図1,6等に示すように、この実施の形態に係る水素水生成装置2は、全体が筒状で、本体部4、電解槽6、蓋部材8及び電極部材10等を有する。
本体部4の内部には、制御部12、給電部14等が内蔵され、上側には電解槽6を載置可能な台部16が形成されている。また本体部4の一部には上方に延長されたアーム部18が形成され、アーム部18の上部には連結部20が設けられている。
【0020】
電解槽6は、底部22及び円筒状の筒部24からなる容器であり、筒部24の上部寄りの左右の箇所にはそれぞれ取っ手26が設けられている。また、筒部24の上端部には、外側に丸く屈曲形成された縁部28が形成されている。電解槽6の下部近傍には、給水用のコック27が取り付けられている。
【0021】
電解槽6は、本体部4の台部16に載置した状態で使用する。この台部16の周囲部は、上方に環状に突出した環状保持部30が形成され、これにより電解槽6が台部16に安定して保持される。なお、電解槽6は円筒形状であり、内径は220mm程度、また高さは170mmである。
【0022】
このように、電解槽6は、本体部4とは独立しており、必要に応じて本体部4から外し、洗浄等のメンテナンスが行える。ここでは、電解槽6に充填可能な水量を最大5リットルとしている。
この水量は、家庭内、或いは施設内等において十分に消費量がまかなえ、また水素水生成装置の能力、重量及び設置場所等を考慮して定めたものである。他に、3リットル〜8リットル程度の水量をまかなうことも可能である。水量を増加した場合には、その分、電気分解に要する時間を増やすことで対処可能である。
【0023】
蓋部材8は、全体が円盤状であり、周囲部の一部に形成された連結受部34を介してアーム部18と連結されている。蓋部材8の連結受部34は、アーム部18の上部の連結部20と連結し、回動軸32を中心に蓋部材8が回動自在(開閉自在)に構成されている。また蓋部材8の裏面部36には、各種電極の取付部が形成されている。
蓋部材8の閉時には、蓋部材8の裏面部36の周囲に配置された環状のシール部材が、電解槽6の上部の縁部28と係合し、電解槽6の上部を密閉する。また同時に、蓋部材8に対するロック機能により、蓋部材8は閉状態を維持する。
【0024】
また、蓋部材8は回動軸32を中心に回動し、開閉することができる。蓋部材8を開いたときには、閉状態から90度或いはそれ以上(例えば120度)の開角度の状態で、ストッパ40により開移動が停止する。これと同時に、連結受部34と連結部20間に設けた保持機能、ロック機能等による停止状態の保持機能により、当該開角度で、蓋部材8の開操作に伴う停止状態が維持される。この蓋部材8の停止状態において、電極部材10に係る各電極の脱着及び装着等の作業を行う。
【0025】
蓋部材8の裏面部36には、電極の接続端子42が設けられている。本体部4における電源の給電部14で発生供給される電解用の電気は、電気配線によりアーム部18を経由し、アーム部18から連結部20を経由し、蓋部材8の接続端子42に送られる。電解用に給電される電気配線は、第二の電極52に送られる交流の電気配線、及び第一の電極50用のグランド(接地電極)の電気配線等がある。第三の電極54は、第一の電極50を介して電気的に接地される。
給電部14からは、第二の電極52を形成する一対の各電極板52a,52bに対して、それぞれに交流の電気配線が行われる。
【0026】
図2は、蓋部材8、及び蓋部材8の裏面部36に取り付けられる各電極等の分解図である。電極部材10としては、棒状の第一の電極50、網目が形成された一対の電極板52a,52bからなる第二の電極52、及び網目が形成された筒状の第三の電極54を有する。また、第一の電極50の周囲を被い、第一の電極50に着脱自在に嵌装される導電性のある円筒状等のパイプ電極材56を有する。このパイプ電極材56は、第一の電極50と互いに電気的に接触し電気的に導通している。
【0027】
これら第一、第二、及び第三の各電極、及びパイプ電極材56の材料は、チタン、ステンレス、マグネシウム、アルミニウム等が用いられ、各材料の表面に白金等のメッキを施すのも有効である。ここでは、第二の電極52の材料は、チタン材に白金メッキを施したものを使用している。白金メッキにより、電極として良好な電気的特性が維持される。また、第一の電極50、パイプ電極材56及び第三の電極54は何れもステンレス材を用い、電極の耐久性を高めている。
【0028】
第一の電極50は、棒状であり、断面円形状等の電極部60の上端部には電極端子62が形成され、電極部60の下端部にはネジ溝が形成されたネジ部64が突出している。
パイプ電極材56は、円筒状のパイプ材からなる。パイプ電極材56の長さは、第一の電極50の電極部60の長さと同じ(同程度)で、電極部60はパイプ電極材56によって完全に覆われる形状である。このため、実質的に、電気分解は第一の電極50に替えてパイプ電極材56によって行われることになる。これにより、シリカ等のスケールが第一の電極50に付着することが防止でき、メンテナンスは、スケールが付着するパイプ電極材56について行えばよいことになる。
【0029】
第二の電極52は、一対の板状の電極板52a,52bからなる。これら電極板52a,52bは、網目が形成された長方形(縦に長い)の板状である。また各電極板52a,52bの上部の中央部には、それぞれ上方に突出した電極端子66が形成されている。電極板52a,52bを網目状に形成したのは、表面積を大きくし又表裏の両側で化学反応を生じさせ、電気分解の効果を高めるためである。
第二の電極52の各電極板52a,52bの配置は、それぞれ第一の電極50の近傍であって、かつ第一の電極50の中心対称位置に配置される。これにより、棒状の第一の電極50に対して、各電極同士のバランスがとれ電気分解も安定して行われる。
【0030】
第三の電極54は、筒部70と底面部72からなる有底筒状の形状であり、材料はステンレス製で縦横の網目が形成された網材が用いられている。第三の電極54の筒部70は、円筒形状であり、筒部70の上下部の各周囲には、それぞれ上カバー材71、下カバー材73が取り付けられている。筒部70の中間部には、補強用の環状線材75が取り付けられている。また、底面部72は、筒部70と同様の網目が形成された平坦な形状であり、その中央部には挿通孔部74が設けられたリング材76が取り付けられている。
【0031】
第三の電極54は、第一及び第二の電極等の周囲を被う大きさの筒状に形成され、上下(筒の中心線)の長さは、第一の電極50の長さと同程度である。
第三の電極54を、筒状とし全体を網目状に形成したのは、この電極の表面積を大きくし、筒状の表裏の両側で化学反応を生じさせ、電気分解の効果を高めるためである。
【0032】
電極として、第一の電極50は、接地(グランド)電極である。第二の電極52として一対の電極板52a,52bには、それぞれ交流電圧等が印加される。また、第三の電極54は、第一の電極50と同様の接地(グランド)電極である。
第一の電極50とパイプ電極材56との間は、両者が挿通可能な程度で、隙間は殆んど無い状態である。パイプ電極材56は導電性があり、第一の電極50に嵌装(被篏)されていることから、第一の電極50との間は接触により電気的に導通している。このため、パイプ電極材56は第一の電極50と電気的に一体であり、また電気的作用も同様である。
【0033】
表面的には、パイプ電極材56は第一の電極50とは電気的には一体化され、電極として機能するのはパイプ電極材56である。このため、第一の電極50に係る電気的作用は、実質的にはパイプ電極材56によって行われ、またスケール(シリカ等)もパイプ電極材56に付着し、第一の電極50にはスケールは付着しない。
蓋部材8には、第一の電極50及び第二の電極52の上部が固定(着脱不可)され、またパイプ電極材56及び第三の電極54が着脱可能に保持される。
【0034】
また、ここでは、電極部材10の各電極の面積(表面積)の関係を次のように規定している。
(パイプ電極材56(第一の電極50)の面積<第二の電極52(電極板52a及び電極板52b)の面積<第三の電極54の面積)
なお、第一の電極50の直径は6mm程度、パイプ電極材56の外径は8mm程度であり、また、第三の電極54の筒部70は直径70mm程度である。また、電極が網材の場合、網を形成する線材の表面積が、電極の面積に該当する。
【0035】
このように、第三の電極54は、その電極の面積(表面積)を他の電極の面積と比べて大きくしている。社内試験によれば、第三の電極54の面積を大きく設定することで、電気分解後の水中の遊離塩素の量が大幅に低減することが確認されている。
第二の電極52の各電極板52a,52b同士は平行に配置されており、またパイプ電極材56と第二の電極52(電極板52a,52b)との間の最短距離は数mm程度である。
【0036】
蓋部材8の裏面部36の接続端子42には、第一の電極50の電極端子62が溶接、半田等により接続され、また、第二の電極52の各電極板52a,52bの電極端子66が同様に溶接、半田等により接続されている。このため、第一の電極50及び第二の電極52の各電極端子は、それぞれ蓋部材8の接続端子42に固く固定されており、容易には外せない。
【0037】
電極部材10による水の電気分解では、交流電極として第二の電極52の一対の電極板52a,52b、及び接地電極として、第一の電極50及び第三の電極54を、それぞれ電解槽6の水中に沈め、電極板52a,52bにそれぞれ交流電流を通電して電圧を印加し、高周波交流等により電気分解処理を行う。
【0038】
図3は、電極保持具84を示すものである。この電極保持具84は、各電極の下部側を支え保持する。電極保持具84は、第二の電極の保持部86、パイプ電極材56の支持部88、及び合金板ケース82のケース保持部90を有している。保持部86の一部には、第二の電極52とパイプ電極材56との間に介在する分離板87が形成されている。また電極保持具84の中央部には、上下に貫通する貫通孔部92が形成されている。
【0039】
また、ここでは、マグネシウム合金材として、マグネシウムと亜鉛の合金板80を合金板ケース82に納め、これを電極保持具84に保持させている。この合金板ケース82は、合金板80の周囲を被う矩形状の容器で、表裏部には窓が開けられている。合金板80により、電解槽6の水中にミネラルが豊富に含有される。
【0040】
本体部4における給電部14は、電解用電源として高周波交流等を発生させ給電する。この給電部14では、交流の発振周波数約5?100KHz(例えば30kHz)を中心に、変動幅・3?5KHzのFM変調を加えている。さらに、ランダム信号発生器を内蔵した回路により、ゆるやかな上下周波数変動中に急激に周波数上昇又は下降の変化する部分を発生させ、これにより電界干渉を発生させ衝撃波を作っている。
【0041】
給電部14における電源回路では、電源スイッチのオンにより、電気回路が動作してランダム信号に対応した制御信号が高周波発振回路に送出され、これにより発振周波数が制御されてランダムに変化する。そして、高周波切換指令回路にランダムな高周波信号が与えられると、この高周波切換指令回路から高周波の切換指令が出され、トランジスタ回路による高周波スイッチに与えられる。そして、一対の交流信号が高周波スイッチでON、OFFされ、ランダムに変化する高周波交流が発生する。
【0042】
前記一対の交流信号が、電気配線を介して、それぞれ第二の電極52の各電極板52a,52bに印加され、また第一の電極50と第三の電極54は接地状態に設定される。前記高周波交流、変調波及び衝撃波による交流電気を印加した電気分解により、発生する水素量を多くするとともに、ナノバブルまで小さくした水素及び酸素の各粒子を発生させることができる。
【0043】
ここで、水素水生成装置2におけるパイプ電極材56等の着脱方法について説明する。先ず、パイプ電極材56、第三の電極54等の装着方法について説明する。
図4は、蓋部材8を開いた状態であり、この蓋部材8には第一の電極50及び第二の電極52のみが取り付けられ、パイプ電極材56及び第三の電極54等は装着されていない形態を示している。この形態は、例えば、前記パイプ電極材56及び第三の電極54等を脱着して、スケール(シリカ等)の除去等の掃除(メンテナンス)を行っている場合等の状態である。
【0044】
この場合、蓋部材8の裏面部36には、第一の電極50及び第二の電極52が固定されており、これらを利用してパイプ電極材56及び第三の電極54等を装着する。
最初に、第一の電極50の端部(図中左端)からパイプ電極材56を嵌める。そして、これらの端部に電極保持具84を配置する。電極保持具84は、その貫通孔部92をパイプ電極材56に嵌め、同時に、第二の電極の各電極板52a,52bの端部(図中左端)を電極保持具84の保持部86に篏合させる。
この電極保持具84により、第二の電極52の端部(下部)が保持され、また分離板87の介在により、パイプ電極材56と第二の電極52とが正確に隔離される。
【0045】
次に、筒状の第三の電極54を取り付ける。この場合、第三の電極54の内部に、第一及び第二の電極50,52、パイプ電極材56及び電極保持具84等を収納し、これら電極等の周囲を被う状態に備え付ける。そして、第三の電極54の筒部70の上カバー材71を、蓋部材8の裏面部36に押し当てて保持させ、その底面部72の挿通孔部74から第一の電極50のネジ部64を突出させる。
【0046】
この状態で、第三の電極54の上部は蓋部材8の裏面部36に保持され、また第三の電極54の底面部72は、パイプ電極材56の端部(図中左端)及び電極保持具84の底部を保持する形態となる。
また、パイプ電極材56の下端部は、第三の電極54と接触しており、またパイプ電極材56は第一の電極50と接触していることから、第一の電極50の接地状態は、そのまま第三の電極54の接地状態となり、電気的に導通し一体化する。
【0047】
そして、第三の電極54の底面部72の挿通孔部74から突出した、第一の電極50のネジ部64にナット部材94を締め付けて螺着する。このナット部材94は、外周が円形状であり、周囲は滑り止め用の凹凸部が形成されている。このため、ナット部材94は手作業により、簡単にネジ部64に締め付け或いは緩めて取り外すことができる。
止着具としてナット部材94を用いる方法以外に、第一の電極50の下端部に孔部を設けピン等の止着具で固定する方法、同下端部に凹部を設け、ここにバネ材等の弾性体を止着し固定する方法もある。
また、合金板80を納めた合金板ケース82は、電極保持具84のケース保持部90にその一端部を差し込んで保持固定する。
【0048】
図5に示すように、第一の電極50のネジ部64にナット部材94を螺着し固定することで、パイプ電極材56及び第三の電極54等が保持され、これらが第一の電極50に固定される形態となる。第二の電極52においても、電極保持具84を介して他の電極を保持する状態となる。
また、パイプ電極材56は、その上部が蓋部材8の裏面部36に、また下部が第三の電極54の底面部72にそれぞれ保持され、第一の電極50に嵌めた状態で保持固定される。
【0049】
そして、ナット部材94を、第一の電極50のネジ部64にねじ込むことで、これが第三の電極54の底面部72に接触し、第三の電極54と第一の電極50とは導通状態となり、両電極は接地(グランド)された状態となる。
また、電極保持具84は、その貫通孔部92に第一の電極50(及びパイプ電極材56)が貫通した状態で配置されており、第二の電極52等を保持した状態で、第三の電極54の底面部72に配置される。
【0050】
次に、パイプ電極材56、第三の電極54等を外して掃除等のメンテナンスを行う場合に、これらパイプ電極材56等を脱着(取り外し)する方法について説明する。
この脱着に際しては、パイプ電極材56及び第三の電極54等を固定しているナット部材94を、第一の電極50のネジ部64から緩めて取り外す。これにより、第三の電極54及び電極保持具84が取り外せ、同時に第一の電極50からパイプ電極材56を引き抜いて外すことができる。また、合金板ケース82は電極保持具84から抜き取る。
【0051】
このように、止着具としてのナット部材94を外すのみで、簡単にパイプ電極材56、第三の電極54等を取り外すことができる。そして、パイプ電極材56に付着したスケール等の異物を除去し、また必要により第三の電極54の掃除等を行う。また、合金板ケース82内の合金板80の交換等を行う。
【0052】
水素水生成装置2の制御部12は、電源スイッチのON及びOFFの制御、ランプ等の点灯、消灯、及びタイマーの管理等を行う。タイマーはここでは、60分、90分、及び120分のタイマーを設けている。また制御部12は、他に、通電時に水素水生成装置2の蓋部材8を開いて電極等が水中から引き上げられた場合、あるいは電極同士が接触(ショート)した場合等には、自動的に通電が停止するよう制御している。
【0053】
ここで、水素水生成装置2の一連の動作、及び使用方法について説明する。この装置の稼働は、全ての電極部材10等を装着した状態で行われる。
はじめに、蓋部材8を開けて開状態にし、本体部4の台部16から電解槽6を取り出す。そして、電解槽6に水道水等の水を注ぎ、約5リットルの水を充填する。電解槽6の内部には、この5リットルの水量の位置に印が設けてある。この水量に制限はないが、水量が多いほうが電気分解の効率が良い。そして、電解槽6を取っ手26で持ち、再度電解槽6を本体部4の台部16に載置し、蓋部材8を閉じて電極部材10等を電解槽6の水中に配置する。
【0054】
図6は水素水生成装置2の外観を示す図である。装置の稼働に際しては、電気分解の時間(還元時間)を指定するため、タイマーをセットする。ここでのタイマーは、例えば60分、90分、或いは120分としている。タイマーは、還元時間のスイッチ100の押下の毎に前記時間に該当するランプ102が点灯し、該当時間のランプの状態で止める。タイマーの時間は、長いほど水中に包含される水素量(ナノバブルの状態)が増大する。
装置の稼働開始のスタート(ストップ)スイッチ104を押下すると、還元ランプ106が緑色に点灯し、電気分解が開始される。途中で、電気分解を停止させたい場合にはスタート(ストップ)スイッチ104を再度押下する。このとき、停止ランプ108が点灯する。
【0055】
タイムアウトにより装置の稼働が終了すると、還元ランプ106が赤色に点灯する。水素水(ナノバブル水素水)は、電解槽6に取り付けたコック27を開いてコップ等に移し、飲用等に供することができる。
さて、前記水素水生成装置を用いて水を電気分解した場合、その使用が長時間に及ぶと電極、特に接地電極としてパイプ電極材56等にスケール(シリカ等)が付着し、電極に係る電流値が低下し、処理効率が悪化する。このため、パイプ電極材56等におけるスケール除去などのメンテナンスを行う。また、蓋部材8に固定された第一の電極50にはスケールが付着しないため、実質的に第一の電極50はメンテナンスの必要はない。
第三の電極54についても、スケールが多少付着する場合があり、この場合も同様のメンテナンスを行う。メンテナンスは、装置の使用時間にもよるが、スケール(不純物)の付着の程度により、1〜3か月に一度程度、適宜行う。
【0056】
メンテナンスでは、先ず蓋部材8を開けて開状態を保持する。そして、第三の電極54の底面部72の下部に螺着により取り付けられたナット部材94を緩め、これを取り外す。これにより、第三の電極54及び電極保持具84はそのまま簡単に外れ、また第一の電極50に嵌めたパイプ電極材56も、引き抜けば簡単に外れる。
【0057】
そして、ブラシ、洗剤材等を用いて、パイプ電極材56に付着したスケール(シリカ等)を除去し掃除する。この場合、パイプ電極材56を別の新たなパイプ電極材56と交換しても良い。併せて、第三の電極54の筒部70、底面部72等についても、スケール等の付着があればこれを除去する。
このように、パイプ電極材56、第三の電極54等は簡単に取り外せることから、掃除等は容易で作業性にも寄与する。また、他の第二の電極52、第一の電極50等についても、必要により掃除を行う。この場合も、これら電極の掃除は、他のパイプ電極材56及び第三の電極54を取り外していることから邪魔がなく、作業がはかどる。
【0058】
上記水素水生成装置2で生成した水溶液(水素水)に関し、その粒子濃度及び気泡(バブル)の粒子径に関して、外部機関に委託して測定を行った。
その結果、この装置で水道水を2時間程度、電気分解により還元した場合、約3億個〜8億個のナノバブルを測定した。尚、この測定値は、原水にもナノサイズの物質が含まれていることから、このナノサイズの物質数を差し引いた数値である。
また、前記粒子(気泡)内の物質については、具体的な測定を行っていないが、多くの水素ガスが含有されているものと推測され、このため水素水生成装置2により、ナノサイズの気泡(ナノバブル水素水)が大量に生成されていると考えられる。
【0059】
なお、水の電気分解の際には、陽極から酸素ガスが発生して酸素水が一部生成されるが、酸素水についても一定の効果が確認されており、水素水と同様に飲料可能である。
また、この水素水生成装置2は、水道水等を用いた場合であっても塩素の発生量が少ないことが確認されている。社内試験によれば、この水素水生成装置2は、同等他社の水素水生成装置と比べて、遊離塩素(mg/L)の量が半分程度であった。この遊離塩素の量が減少するのは、特に第三の電極54を筒状の網体で構成し、その表面積を広くしたことによるものと推測している。
【0060】
従って、前記実施の形態によれば、簡単な構成で、電極部材、特にメンテナンスの必要なパイプ電極材及び第三の電極の着脱が容易に行えて、電極における汚れの除去等の掃除も簡単に行えて保守性が改善され、併せて管理も容易となり、また電極の電気伝導特性も良好な状態が維持され電気分解にも寄与するものとなり、このようにメンテナンス性が改善されたナノバブル水素水を生成する水素水生成装置が得られた。
【符号の説明】
【0061】
2 水素水生成装置
4 本体部
6 電解槽
8 蓋部材
10 電極部材
14 給電部
50 第一の電極
52 第二の電極
54 第三の電極
56 パイプ電極材
64 ネジ部
72 底面部
74 挿通孔部
84 電極保持具
94 止着具(ナット部材)
【要約】
【課題】 本発明は、水の電気分解により水素水を生成する水素水生成装置に関し、簡単な構成で電極の着脱が容易に行えて、電極の保守性に優れた水素水生成装置を提供することを課題とする。
【解決手段】 第二の電極52の各電極材間に給電部14から供給される交流を印加し、第一の電極50及び第三の電極54をそれぞれ接地電極とし、蓋部材8の裏面部に、第一の電極50、第二の電極52、パイプ電極材56及び第三の電極54を取り付け、蓋部材8を閉じた状態で、全ての電極部材10を電解槽6内の水中に配置して水の電気分解を行い、蓋部材8の開操作により、電極部材10を電解槽6から引き揚げ、この状態で本体部4に対して蓋部材8が保持され、パイプ電極材56を第一の電極50から脱着することが可能である構成とした。
【選択図】 図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7