(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
単純ヘルペスウイルスI型チミジンキナーゼ(HSV-TK)遺伝子を組込んだアデノウイルスベクター及びFEAUを組合せて含む、細胞療法の際のGVHDをモニタリングするための試薬。
単純ヘルペスウイルスI型チミジンキナーゼ(HSV-TK)遺伝子を組込んだアデノウイルスベクターを導入した細胞療法用細胞及びFEAUを組合せて含む、細胞療法の際のGVHDをモニタリングするための試薬。
アデノウイルスベクターが、(i) 第1のプロモーター、発現させようとする単純ヘルペスウイルスI型チミジンキナーゼ(HSV-TK)遺伝子及びポリA付加配列をこの順で連結したDNA構築物、(ii) エンハンサー又は上流にUASが連結したエンハンサーであって、hTERTエンハンサーを含むエンハンサーを、(i)及び(ii)の順で含み、ポリA付加配列の直ぐ下流にエンハンサー又は上流にUASが連結したエンハンサーが連結した、単純ヘルペスウイルスI型チミジンキナーゼ(HSV-TK)遺伝子のタンパク質発現を増強し得るアデノウイルスベクターである、請求項1又は2に記載の試薬。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、細胞療法における効果及び副作用の非侵襲的モニタリングを可能にする方法、及びその方法に用いる試薬の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、細胞療法において、GVHDに特化した診断指標が確立されていないという問題点を克服するため、PETイメージング技術、及びレポーター/自殺遺伝子である単純ヘルペスウイルスI型チミジンキナーゼ(HSV-TK)遺伝子を導入したリンパ球を用いることで、細胞移植療法におけるモニタリングシステムの確立を目的として検討を行った。すなわち、単純ヘルペスウイルスI型チミジンキナーゼ(HSV-TK)遺伝子導入ドナーリンパ球移植マウスにおいて、腫瘍や炎症部位・悪性度を可視化することの出来るFDG(2-deoxy-2-[
18F]fluoro-D-glucose)、及び単純ヘルペスウイルスI型チミジンキナーゼ(HSV-TK)を認識して単純ヘルペスウイルスI型チミジンキナーゼ(HSV-TK)発現細胞の生体内分布及びGVHDの発症を可視化するFEAU(2'-deoxy-2'-[
18F]fluoro-5-ethyl-1- arabinofuranosyl-uracil)を用いることにより、単純ヘルペスウイルスI型チミジンキナーゼ(HSV-TK)遺伝子導入ドナーリンパ球移植を移植したマウスにおけるGVHD発症部位のPETイメージングが可能になることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1] 単純ヘルペスウイルスI型チミジンキナーゼ(HSV-TK)遺伝子を組込んだアデノウイルスベクター及びFEAUを組合せて含む、細胞療法の際のGVHDをモニタリングするための試薬。
[2] 単純ヘルペスウイルスI型チミジンキナーゼ(HSV-TK)遺伝子を組込んだアデノウイルスベクターを導入した細胞療法用細胞及びFEAUを組合せて含む、細胞療法の際のGVHDをモニタリングするための試薬。
[3] アデノウイルスベクターが、(i) 第1のプロモーター、発現させようとする単純ヘルペスウイルスI型チミジンキナーゼ(HSV-TK)遺伝子及びポリA付加配列をこの順で連結したDNA構築物、(ii) エンハンサー又は上流にUASが連結したエンハンサーであって、hTERTエンハンサーを含むエンハンサーを、(i)及び(ii)の順で含み、ポリA付加配列の直ぐ下流にエンハンサー又は上流にUASが連結したエンハンサーが連結した、単純ヘルペスウイルスI型チミジンキナーゼ(HSV-TK)遺伝子のタンパク質発現を増強し得るアデノウイルスベクターである、[1]又は[2]の試薬。
[4] GVHDのモニタリングをPETイメージングにより行う、[1]〜[3]のいずれかの試薬。
[5] 単純ヘルペスウイルスI型チミジンキナーゼ(HSV-TK)遺伝子を組込んだアデノウイルスベクター及びFDGを組合せて含む、細胞療法による癌治療効果をモニタリングするための試薬。
[6] HSV-TK遺伝子を組込んだアデノウイルスベクターを導入した細胞療法用細胞及びFDGを組合せて含む、細胞療法による癌治療効果をモニタリングするための試薬。
[7] アデノウイルスベクターが、(i) 第1のプロモーター、発現させようとする単純ヘルペスウイルスI型チミジンキナーゼ(HSV-TK)遺伝子及びポリA付加配列をこの順で連結したDNA構築物、(ii) エンハンサー又は上流にUASが連結したエンハンサーであって、hTERTエンハンサーを含むエンハンサーを、(i)及び(ii)の順で含み、ポリA付加配列の直ぐ下流にエンハンサー又は上流にUASが連結したエンハンサーが連結した、単純ヘルペスウイルスI型チミジンキナーゼ(HSV-TK)遺伝子のタンパク質発現を増強し得るアデノウイルスベクターである、[5]又は[6]の試薬。
[8] 細胞療法による癌治療効果のモニタリングをPETイメージングにより行う、[5]〜[7]のいずれかの試薬。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、細胞療法の主作用である抗腫瘍効果をモニタリングしつつ、移植片対宿主病(GVHD)の発症の有無をモニタリングすることができる。さらに、副作用であるGVHDの発症の際にはガンシクロビル(GCV)投与により原因となるHSV-TK遺伝子導入ドナーリンパ球が抑制されたかどうかの判断が可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、遺伝子導入細胞を移植して細胞療法を行う際の、治療効果及び移植片対宿主病(GVDH)をPETイメージングを利用して可視化しモニタリングする方法である。
【0012】
また、本発明は、遺伝子導入細胞を移植して細胞療法を行う際の、治療効果及び移植片対宿主病(GVDH)をPETイメージングを利用して可視化しモニタリングするための、FDG又はFEAUを含む組成物である。
【0013】
遺伝子導入細胞を移植して行う細胞療法として、細胞移植、免疫細胞治療、再生医療、遺伝子治療等が挙げられ、遺伝子導入細胞として、リンパ球、リンパ球以外の樹状細胞、NK細胞等の免疫細胞が挙げられ、さらに、iPS細胞等の幹細胞が挙げられる。例えば、固形癌や白血病等の癌治療に用いる細胞療法が挙げられる。
【0014】
本発明において、細胞療法に用いる遺伝子導入細胞として、ドナーから採取したリンパ球等の細胞に、単純ヘルペスウイルスI型チミジンキナーゼ(HSV-TK)遺伝子を導入したリンパ球等の細胞を用いる。単純ヘルペスウイルスI型チミジンキナーゼ(HSV-TK)遺伝子は自殺遺伝子と呼ばれ、この遺伝子が導入された細胞において、発現したHSV-TKタンパク質が抗ウイルス薬として一般的に用いられているガンシクロビルに作用し、DNA合成阻害活性を有する毒性物質に変換する。このため、HSV-TK遺伝子が導入された細胞において自らアポトーシスにより死に至る。
【0015】
単純ヘルペスウイルスI型チミジンキナーゼ(HSV-TK)遺伝子の導入には、単純ヘルペスウイルスI型チミジンキナーゼ(HSV-TK)遺伝子を組込んだウイルスベクターを用いればよく、例えば、単純ヘルペスウイルスI型チミジンキナーゼ(HSV-TK)遺伝子を組込んだアデノウイルスベクターが挙げられる。アデノウイルスベクターとしては、例えば、WO2011/062298号国際公開公報に記載のアデノウイルスベクターを用いることができ、このアデノウイルスベクターに単純ヘルペスウイルスI型チミジンキナーゼ(HSV-TK)遺伝子を導入すればよい。
【0016】
該アデノウイルスベクターは、少なくとも第1のプロモーターの下流に、発現させようとする単純ヘルペスウイルスI型チミジンキナーゼ(HSV-TK)遺伝子及びポリA付加配列を含むDNA構築物を含み、さらに該構築物の下流にエンハンサー又は第2のプロモーターが連結して含まれる構造を有する発現用カセットを含む。
【0017】
単純ヘルペスウイルスI型チミジンキナーゼ(HSV-TK)遺伝子の塩基配列を配列番号1に示す。
【0018】
前記アデノウイルスベクターは、連結したエンハンサー又は第2のプロモーターの下流に他の遺伝子発現用の機構を有さず、発現させようとする遺伝子を第1のプロモーター1つとエンハンサー1つで挟むか、又は第1のプロモーター1つと第2のプロモーター1つで挟んだ構造を有する。
【0019】
プロモーターは、CMVプロモーター、CMV iプロモーター、SV40プロモーター、hTERTプロモーター、βアクチンプロモーター及びCAGプロモーターからなる群から選択されるプロモーターであり、好ましくは、CMVプロモーターである。
【0020】
エンハンサーは、hTERTエンハンサー、SV40エンハンサー及びCMVエンハンサーからなる群から選択される少なくとも1つのエンハンサーであり、好ましくは、hTERTエンハンサー、SV40エンハンサー及びCMVエンハンサーをこの順で連結した3つのエンハンサーである。
【0021】
前記のアデノウイルスベクターは、さらに以下のエレメントの少なくともいずれか1つを含んでいてもよい。
(i) 外来タンパク質をコードするDNAの直ぐ上流に連結されたRU5';
(ii) エンハンサー及び/又はプロモーターの直ぐ上流に連結されたUAS;及び
(iii) 発現用カセットの最上流に連結されたSV40-ori。
【0022】
さらに、アデノウイルスベクターは、(i) 第1のプロモーター、発現させようとする単純ヘルペスウイルスI型チミジンキナーゼ(HSV-TK)遺伝子及びポリA付加配列をこの順で連結したDNA構築物、(ii) エンハンサー又は上流にUASが連結したエンハンサーであって、hTERTエンハンサーを含むエンハンサーを、(i)及び(ii)の順で含み、ポリA付加配列の直ぐ下流にエンハンサー又は上流にUASが連結したエンハンサーが連結した、単純ヘルペスウイルスI型チミジンキナーゼ(HSV-TK)遺伝子のタンパク質発現を増強し得るアデノウイルスベクターである。
【0023】
ポリA付加配列の下流に連結したエンハンサーがさらにCMVエンハンサー及び/又はSV40エンハンサーを含んでいてもよい。好ましくは、ポリA付加配列の下流に連結したエンハンサーは、hTERTエンハンサー、SV40エンハンサー及びCMVエンハンサーをこの順で連結したエンハンサーである。
【0024】
該アデノウイルスベクターにおいて、好ましくは、第1のプロモーターの上流にエンハンサーは存在しない。
【0025】
また、好ましくは、連結したエンハンサーの下流に他の遺伝子発現用の機構を有さず、発現させようとする遺伝子を第1のプロモーターとエンハンサーで挟んだ構造を有する。
【0026】
前記のアデノウイルスベクターは、さらに以下のエレメント(i)及び(ii)の少なくともいずれか1つを含んでいてもよい。
(i) 発現させようとする遺伝子の直ぐ上流に連結されたRU5';及び
(ii) 発現用カセットの最上流に連結されたSV40-ori。
【0027】
hTERTエンハンサーは、例えば、配列番号2に表される塩基配列からなる。
上記のアデノウイルスベクターは、導入した外来遺伝子の発現効率に優れており、例えば、他の発現ベクター(例えば、pTracer(登録商標)-EFベクター)と比較した場合、5〜10倍の量の単純ヘルペスウイルスI型チミジンキナーゼ(HSV-TK)タンパク質を生産することができる。
【0028】
単純ヘルペスウイルスI型チミジンキナーゼ(HSV-TK)遺伝子を導入した発現用カセットをSGE(Super Gene Expression)-HSV1tkと呼び、その構造を
図2に示す。
図2Aに示す発現用カセットがプラスミドpShuttle(
図2B)及びアデノウイルスゲノム(
図2C)に含まれる。該アデノウイルスをAd-SGE-HSV1tkやAd-SGEpro-HSV1-TKと呼ぶ。
【0029】
細胞療法による癌治療効果のモニタリングは、FDG(2-deoxy-2-[
18F]fluoro-D-glucose)を用いて行うことができる。また、移植片対宿主病(GVDH)の可視化によるモニタリングは、FEAU(2'-deoxy-2'-[
18F]fluoro-5-ethyl-1-arabinofuranosyl-uracil)を用いて行うことができる。
【0030】
FDGは被験体中の癌細胞に集積し易い性質を有する。従って、FDGにより癌の有無を可視化することにより癌治療効果をモニタリングすることができる。単純ヘルペスウイルスI型チミジンキナーゼ(HSV-TK)遺伝子を導入したリンパ球を癌治療の細胞療法に用いた後に、FDGによりイメージングした場合に、FDGが集積した細胞がない場合は、癌治療効果があり、癌細胞が減少したか、あるいは存在しなくなったと判断、評価することができる。
【0031】
一方、FEAUは単純ヘルペスウイルスI型チミジンキナーゼ(HSV-TK)遺伝子を発現する細胞に取り込まれ、チミジンキナーゼに結合し、チミジンキナーゼによりリン酸化される。リン酸化されたFEAUが染色体DNAに取り込まれると、DNA合成が阻害され細胞が死滅する。特に単純ヘルペスウイルスI型チミジンキナーゼ(HSV-TK)はFEAUを高率でリン酸化するという性質を有するので、単純ヘルペスウイルスI型チミジンキナーゼ(HSV-TK)遺伝子を導入したリンパ球の局在を可視化することができ、その結果GVDHのモニタリングを行うことできる。
【0032】
すなわち、FDGを用いて治療効果をモニタリグするときは、細胞療法のために単純ヘルペスウイルスI型チミジンキナーゼ(HSV-TK)遺伝子を導入した細胞を投与した被験体にFDGを投与し、PET(positron emission tomography;陽電子放射断層撮影)によりイメージングすればよい。癌細胞にFDGが集積するため、PETによるイメージングでFDGが集積した部位の状態、すなわち癌の位置や大きさを可視化することができる。
【0033】
また、FEAUを用いてGVDHをモニタリングするときは、細胞療法のために単純ヘルペスウイルスI型チミジンキナーゼ(HSV-TK)遺伝子を導入した細胞を投与した被験体にFEAUを投与し、PET(positron emission tomography;陽電子放射断層撮影)によりイメージングすればよい。PETによるイメージングにより、HVS-TK遺伝子導入細胞が集積した部位を可視化することができる。単純ヘルペスウイルスI型チミジンキナーゼ(HSV-TK)遺伝子導入細胞が集積した部位でGVDHが起こっていると判断することができる。
【0034】
さらに、副作用であるGVHDの発症の際にはガンシクロビル(GCV)投与により原因となる単純ヘルペスウイルスI型チミジンキナーゼ(HSV-TK)遺伝子導入ドナーリンパ球が抑制されたかどうかの判断も可能となる。すなわち、GVHDが発症した場合に、ガンシクロビルを投与し、単純ヘルペスウイルスI型チミジンキナーゼ(HSV-TK)遺伝子を導入した細胞を死滅させる。この際、FEAUを投与し、FEAUが特定の細胞に集積するか否かにより、単純ヘルペスウイルスI型チミジンキナーゼ(HSV-TK)遺伝子を導入した細胞が死滅し、GVHDが抑制されたか否かを評価し、判断することができる。FEAUが特定の細胞に集積しない場合、単純ヘルペスウイルスI型チミジンキナーゼ(HSV-TK)遺伝子を導入した細胞が死滅し、従って、GVHDが抑制されたと判断することができる。
【実施例】
【0035】
本発明を以下の実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0036】
実施例1 組換えアデノウイルスベクター(AdV)の調製
(1) 組換えAdVの発生、純化、及び継代
組換えAdV(Ad-SGEpro-HSV1-TK)の基となるコスミドDNAを用意した。これらのコスミドDNAを遺伝子導入した293AD細胞を20日間培養し、細胞変性を確認できた培養容器内の感染細胞を-80℃に保存した。感染細胞を3回凍結融解した後、限界希釈法によりAdVを純化した。1つの培養容器内の感染細胞から得るAdVクローンは1種類に限定した。
【0037】
限界希釈法で得られた96ウェルプレートの1ウェル分の感染細胞を1次感染細胞として-80℃に保存した。1次感染細胞を3回凍結融解した後、その遠心(3000 rpm、4℃、15分)上清を6ウェルプレートの1ウェル分の細胞に接種した。48時間後に、その感染細胞を2次感染細胞として-80℃に保存した。同様にして、3次、4次、及び5次の感染細胞をそれぞれ10cmディッシュ1枚分、15cmディッシュ2枚分、及び15cmディッシュ20枚分の細胞を用いて作製し、-80℃に保存した。
【0038】
(2) 組換えAdVの濃縮・精製
5mlの4.0M CsCl
2溶液{10mM Tris-HCl (pH8.0)含有}の上に5mlの2.2M CsCl
2溶液{10 mM Tris-HCl (pH8.0)含有}を重層した。5次感染細胞を3回凍結融解した後、その遠心(3000rpm、4℃、30分間)上清(30 ml)をCsCl
2溶液の上に重層し、スイングローターで1次遠心(10000rpm、4℃、15時間)した。4.0Mと2.2MのCsCl
2層の境界面に集積したAdV粒子を採取して、2次遠心の材料とした。2次遠心では、最初に2次遠心材料(5ml)に等量の6.5M CsCl
2溶液{10mM Tris-HCl (pH8.0)含有}を混和して遠心管に入れ、その上に5mlの4.0M CsCl
2溶液{10 mM Tris-HCl (pH8.0)含有}、5 mlの2.2M CsCl
2溶液{10mM Tris-HCl (pH8.0)含有}、10mlの10mM Tris-HCl (pH8.0)溶液をこの順に重層し、スイングローターで2次遠心(10000rpm、4℃、23時間)した。4.0Mと2.2MのCsCl
2層の境界面に集積したAdV粒子を採取して、10% Glycerol添加10mM Tris-HCl(pH8.0)溶液を用いて透析した後、分注して-80℃に保存した。
【0039】
(3) 組換えAdVの感染価測定、RCA不含有の確認、及びTK活性誘導能の比較
精製組換えAdVを段階希釈した後、96ウェルプレートに用意した293AD細胞に接種し、37℃で培養した。5日間の培養の後、96ウェルプレートごと293AD細胞を3回凍結融解し、その遠心(3000rpm、4℃、15分)上清を新たに96ウェルプレートに用意した293AD細胞に接種して5日間培養した。細胞変性の認められたウェルを陽性と判定し、Behrens-Karber の方法で50%組織培養感染量(TCID50)を算出した。
【0040】
RCAを検出するために、15cmディッシュ1枚の単層培養HeLa細胞に10μlの精製組換えAdVを接種して培養した。48時間の培養後、細胞を3回凍結融解し、その遠心(3000rpm、4℃、15分)上清を10cmディッシュ1枚の単層培養HeLa細胞に接種して培養した。48時間の培養後、細胞を3回凍結融解し、その遠心(3000rpm、4℃、15分)上清を6cmディッシュ1枚の単層培養HeLa細胞に接種して培養した。96時間の培養後、細胞変性の有無を光学顕微鏡下で確認した。
【0041】
実施例2 GVHDモデルマウスのPETイメージング
(1) GVHDモデルマウスの作製
C57BL/6マウスの骨髄、脾臓、及び末梢血から採取したリンパ球に対して、上記の手法で作製したHSV1-tk遺伝子をコードする非増殖型アデノウイルスベクターを導入し、HSV1-TK遺伝子導入ドナーリンパ球を得た。得られた遺伝子導入リンパ球をBALB/cマウスに対して尾静脈より投与することで、GVHDモデルマウスとした。
【0042】
(2) GVHDモデルマウスのin vivoイメージング
GVHDモデルマウス及び正常マウスを用いて、PET/CTイメージングを実施した。FDGについては約8MBqを各マウスの尾静脈より投与し1時間後に、また、FEAUについては約10MBqを尾静脈より投与し2時間後にイソフルラン吸入麻酔により不動化し、5〜10分間のスタティックPET撮像を行った。PET撮像に次いでCT撮像を行った。FDGについてはPET/CT撮像終了後に正常及びモデルマウスの腸管を摘出しオートラジオグラフィー撮像を行うことで、その詳細な放射能分布を比較・検討した。
【0043】
図3Aに正常及びGVHDモデルマウスへのFDG投与後のオートラジオグラフィー像を示し、
図3BにGVHDモデルマウスへのFDG及びFEAU投与後のPET/CT画像を示す。
【0044】
オートラジオグラフィー撮像の結果から、GVHDモデルマウスでは正常マウスと比較し、GVHD様炎症反応の高発部位である胃、小腸、盲腸、及び大腸の消化管全域、特に大腸下部においてFDGの高い集積が確認された。また、PET用レポータープローブとしてFDG、FEAUを用いて、モデル動物によるPETイメージング実験を行った結果、腸管部においてHSV-TK遺伝子導入リンパ球移入による炎症反応をFDGで、HSV-TK遺伝子導入リンパ球の局在・生存をFEAUで可視化することができた。
【0045】
FEAUを用いた場合では腸管部及び膀胱への高い放射能集積が確認された一方で、FDGではその他に心臓、骨格筋、及び脳への放射能集積が確認された。また、FDGは炎症部位全般に集積する性質を示すことから、GVHD特異的な診断は困難である。従って、FEAUを用いたPETイメージングを行うことにより、FDGでは困難な治療細胞移植に起因するGVHDに特異的なモニタリングが可能である。
【0046】
本実施例はT細胞を用いた検討であるが、さらに多種類の細胞(リンパ球以外の樹状細胞、NK細胞など免疫細胞やiPS細胞などの幹細胞)を用いて同様の手法を実施が可能であることが期待され、この種のPETによる評価系は、リンパ球療法のみでなく広範な治療細胞を用いた医療においても実用が見込まれる。