特許第6707257号(P6707257)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6707257
(24)【登録日】2020年5月22日
(45)【発行日】2020年6月10日
(54)【発明の名称】処理装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 15/14 20060101AFI20200601BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20200601BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20200601BHJP
【FI】
   G01N15/14 A
   G01N15/14 C
   C12M1/00 A
   C12M1/34 B
   G01N15/14 K
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-93358(P2016-93358)
(22)【出願日】2016年5月6日
(65)【公開番号】特開2017-201278(P2017-201278A)
(43)【公開日】2017年11月9日
【審査請求日】2019年2月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】516134187
【氏名又は名称】アライドフロー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】神田 昌彦
【審査官】 多田 達也
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2014/0170697(US,A1)
【文献】 特開平06−288896(JP,A)
【文献】 特開2011−232033(JP,A)
【文献】 特開2015−152439(JP,A)
【文献】 特開2010−025911(JP,A)
【文献】 特開2014−095595(JP,A)
【文献】 特表2002−505423(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/078307(WO,A1)
【文献】 国際公開第2016/031486(WO,A1)
【文献】 国際公開第2008/153056(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/095391(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N15/14
C12M1/00
C12M1/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物学的粒子を含む液体フローを形成する装置と、
超音波発生部と、
電荷供給部とを備え、
前記装置は
チャンバと、前記チャンバに接続されるフローセルとを含むチャンバ部材と、
前記チャンバ内に、前記生物学的粒子を含むサンプル液を供給するサンプル液供給部と、
前記チャンバ内にシース液を供給するシース液供給部と、
前記チャンバの内部から外部に延在し、導電材料からな振動電極部材とを含み
超音波は、前記超音波発生部から、前記振動電極部材を伝播して、前記チャンバ内の前記シース液および前記サンプル液に供給され、
電荷は、前記電荷供給部から、前記振動電極部材を介して、前記チャンバ内の前記シース液および前記サンプル液に供給される、処理装置。
【請求項2】
前記振動電極部材において前記チャンバ内に露出する端面は、前記端面に隣接する前記チャンバの内面の部分に連なるように配置されている、請求項1に記載の処理装置。
【請求項3】
滅菌処理が可能な滅菌処理可能領域を含む滅菌処理部をさらに備え
前記装置は、前記滅菌処理可能領域の内部に配置されている、請求項1または請求項2に記載の処理装置。
【請求項4】
導電部材と、
封止部材とをさらに備え、
前記滅菌処理部は、前記滅菌処理可能領域の外部と前記滅菌処理可能領域とを区画する隔壁を含み、
前記隔壁には開口部が形成されており、
前記導電部材は、前記開口部を通り、前記滅菌処理可能領域の前記外部から前記滅菌処理可能領域にまで延在し、前記振動電極部材接続されており、
前記封止部材は、前記導電部材と前記隔壁との間を気密に封止しており
前記超音波発生部は、前記滅菌処理可能領域の前記外部に配置され、かつ、前記導電部材に接続されており、
前記電荷供給部は、前記滅菌処理可能領域の前記外部に配置され、かつ、前記導電部材に電荷を供給する、請求項3に記載の処理装置。
【請求項5】
前記振動電極部材と前記導電部材とは着脱可能に接続されている、請求項4に記載の処理装置。
【請求項6】
前記導電部材に対する前記振動電極部材の接続位置を規定する位置決め機構をさらに備える、請求項5に記載の処理装置。
【請求項7】
前記滅菌処理可能領域の外部に配置され、前記装置で形成される前記液体フローに含まれる前記生物学的粒子の情報を得るための光学機構をさらに備える、請求項3から請求項6のいずれか1項に記載の処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、生物学的粒子を含む液体フローを形成する装置及び処理装置に関し、より特定的には無菌状態で生物学的粒子の分析や分離などの処理を行うための装置及び処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
バイオテクノロジーの発展に伴い、医学や生物学をはじめ様々な分野で、生物学的粒子の一例である多数の細胞粒子に対して分別・分析などの処理を行う装置の需要が増大してきている。このような装置の一例として、フローサイトメータやセルソータが挙げられる(たとえば、特開2011−232033号公報参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−232033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した装置がたとえば再生医療や抗体医療等に適用される場合、細胞粒子の処理を無菌状態で行うことが望まれる。そのため、たとえばセルプロセッシングセンター(CPC)のレベル1の部屋に設置された安全キャビネット中に上述した装置を配置し、細胞粒子の分別・分析などを行うことが考えられる。しかし、このような装置により細胞粒子の処理を行ったとしても、細胞粒子の処理時に発生するエアロゾルが装置内部を汚染していた。そのため、一度細胞粒子の処理を行った後に別の細胞粒子を処理するときに、無菌状態で上述した処理を行うためには、このようなエアロゾルによる汚染を装置内部から除去する必要がある。ところが、従来はエアロゾルによる汚染の除去は有効に行われていなかった。
【0005】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の目的は、無菌状態での生物学的粒子の処理を行うことが可能な装置および処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に従った装置は、生物学的粒子を含む液体フローを形成する装置であって、チャンバ部材と、サンプル液供給部と、シース液供給部と、振動電極部材とを備える。チャンバ部材は、チャンバと、当該チャンバの内部から外部へ延びるフローセルとを含む。サンプル液供給部は、チャンバ内に、生物学的粒子を含むサンプル液を供給する。シース液供給部は、チャンバ内にシース液を供給する。振動電極部材は、チャンバの内部から外部に延在し、導電材料からなりチャンバ内のシース液およびサンプル液に電荷を供給するとともに超音波を伝搬することが可能である。
【0007】
この発明に従った処理装置は、滅菌処理部と、上記装置とを備える。滅菌処理部は、滅菌処理が可能な滅菌処理可能領域を含む。上記装置は、滅菌処理可能領域の内部に配置されている。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、生物学的粒子を含む液体フローを形成する装置において、液体フローのエアロゾルによる汚染を除去することができるので、無菌状態での生物学的粒子の処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態に従った処理装置の断面模式図である。
図2図1に示した処理装置の部分断面模式図である。
図3図1に示した処理装置の部分断面模式図である。
図4図1に示した処理装置のフローセルチャンバユニットを取り外した状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰り返さない。
【0011】
<処理装置の構成>
図1図4を参照しながら、本実施形態に係る処理装置を説明する。図1図4に示した処理装置は、生物学的粒子を処理する装置である。以下、本発明の理解を容易にするために、処理装置としてのセルソータについて例示的に説明するが、本発明はフローサイトメータにも適用可能である。
【0012】
なお、本実施形態に係る処理装置としてのセルソータとは、以下のような装置である。すなわち、生物学的粒子の一例である細胞粒子からの散乱光と蛍光などの固有の識別情報に基づき、フローセルから噴出される個々の細胞粒子を含む液滴に選択的に電荷を与える。そして、当該液滴が落下する経路上に、直流電場を形成して、液滴の進路を振り分けることにより、特定の細胞粒子を分取・分別することができる装置である。
【0013】
また、本実施形態に係る処理装置としてのフローサイトメータとは、以下のような装置である。すなわち、生体のたとえば血液などから採取された多数の細胞粒子を蛍光標識試薬などで染色しておく。そして、当該細胞粒子含むサンプル液をシース液で取り囲むシースフローを形成する。このシースフローをフローセル内に導入して、当該フローセル内で一列に配列したそれぞれの細胞粒子にたとえばレーザ光を照射する。そして、細胞粒子からの前方散乱光および側方散乱光などの散乱光と蛍光標識試薬に依存した多色蛍光を測定する。この測定結果に基づき細胞粒子を分析する装置である。
【0014】
図1図4に示す処理装置は、セルソータ1であって、滅菌処理部10と、本実施形態に係る装置としてのソートヘッド81と、超音波発生部31と、光学機構61と、制御部71と、サンプル液源部26と、シース液源部27とを備える。滅菌処理部10は、たとえばアイソレータであって、滅菌処理が可能な滅菌処理可能領域12と、隔壁11とを含む。隔壁11は、開口部14を有し、滅菌処理可能領域12の外部(非滅菌処理領域13)と滅菌処理可能領域12とを区画する。上記ソートヘッド81は、滅菌処理可能領域12の内部に配置されている。セルソータ1では、滅菌処理可能領域12の内部は気密状態に保たれる。また、滅菌処理可能領域12の内部は無菌状態に保たれている。
【0015】
滅菌処理部10の非滅菌処理領域13には、超音波発生部31と、光学機構61と、制御部71とが配置されている。また、滅菌処理部10の外部にはサンプル液源部26とシース液源部27とが配置されている。
【0016】
(ソートヘッド)
本実施形態に係る装置としてのソートヘッド81は、生物学的粒子の一例としての細胞粒子を含む液体フローを形成する装置であって、フローセルチャンバユニット80と、ソータ機構部40とを備える。
【0017】
(フローセルチャンバユニット)
フローセルチャンバユニット80は、チャンバ部材28と、サンプル液供給部24と、シース液供給部25と、振動電極部材35と、偏向板41,42と、収集部材43とを備える。チャンバ部材28は、チャンバとしてのシース・サンプル混合チャンバ21(以下、単にチャンバ21とも呼ぶ)と、当該チャンバ21の内部から外部へ延びるフローセル22とを含む。フローセル22はチャンバ21の下方に接続されている。サンプル液供給部24は、チャンバ21内に、生物学的粒子を含むサンプル液を供給する。サンプル液供給部24からチャンバ21の内部に延びるように導管23(サンプル管とも呼ぶ)が配置されている。サンプル液供給部24はチャンバ21の上方に配置されている。導管23はチャンバ21の上方から下方に向けて延びるように配置されている。サンプル液供給部24には配管を介してサンプル液源部26が接続されている。
【0018】
シース液供給部25は、チャンバ21内にシース液を供給する。シース液供給部25はチャンバ21の側方に配置されている。シース液供給部25には、配管を介してシース液源部27が接続されている。振動電極部材35は、チャンバ21の内部から外部に延在し、導電材料からなる。振動電極部材35は、チャンバ21の側方からチャンバ21に接続されている。つまり、振動電極部材35においてチャンバ21内部に露出する端面は、チャンバ21の内周面の側面部分に形成された開口部を介してチャンバ21内部に露出している。振動電極部材35の当該端面は、その端面に隣接するチャンバ21の内面の部分に連なるように配置されている。
【0019】
振動電極部材35には、導電部材36が接続されている。振動電極部材35および導電部材36の材料としては、たとえばステンレス鋼、特にSUS316などを用いることができる。導電部材36は、隔壁11の開口部14に挿入されている。導電部材36の外周側面上には絶縁スリーブ33が配置されている。絶縁スリーブ33の外周には、開口部14と絶縁スリーブ33の外周表面との間を封止する封止部材としてのOリング15が配置されている。Oリング15は開口部14の内壁と絶縁スリーブ33との間を気密に封止する。
【0020】
異なる観点から言えば、上記セルソータ1において、導電部材36は、開口部14を通り、滅菌処理可能領域12の外部(非滅菌処理領域13)から滅菌処理可能領域12にまで延在する。導電部材36は、振動電極部材35と接続される。振動電極部材35と導電部材36とから振動電極30が構成される。封止部材としてのOリング15は、導電部材36と隔壁11との間を気密に封止する。超音波発生部31は、滅菌処理可能領域12の外部に配置され、導電部材36に接続されている。超音波発生部31は制御部71に接続されている。超音波発生部31はたとえばピエゾ圧電素子を含んでいてもよい。また、電荷供給部としての制御部71は、滅菌処理可能領域12の外部(非滅菌処理領域13)に配置され、導電部材36に電荷を供給する。制御部71は、超音波発生部31を制御するとともに、導電部材36に電荷を供給する。導電部材36に供給された電荷は振動電極部材35を介してチャンバ21内に供給される。また、超音波発生部31から導電部材36に印加された超音波は振動電極部材35に伝播し、さらにチャンバ21内に伝わる。すなわち、振動電極部材35は、チャンバ21内のシース液およびサンプル液に電荷を供給するとともに超音波を伝搬することが可能である。
【0021】
また、図4に示すように、振動電極部材35は導電部材36に対して図4の矢印に示すように着脱可能に構成されている。また異なる観点から言えば、振動電極部材35と導電部材36とは着脱可能に接続されている。具体的には、振動電極部材35は凸部39を有している。図4に示した振動電極部材35では、複数の凸部39(図4では2つの凸部39)が形成されている。また、当該凸部39と対向する位置に、導電部材36を囲む絶縁スリーブ33には孔部34が形成されている。凸部39が孔部34に挿入されることで振動電極部材35は導電部材36と接続された状態となる。つまり、フローセルチャンバユニット80は導電部材36から取り外すことが可能である。上記凸部39と孔部34とが、導電部材36に対する振動電極部材35の接続位置を規定する位置決め機構に該当する。なお、孔部34は導電部材36に形成されてもよい。この場合、当該孔部34と凸部39との接触部により導電部材36と振動電極部材35とを確実に接続できる。位置決め機構としては、たとえば振動電極部材35に孔部を形成し、絶縁スリーブ33または導電部材36において当該孔部と対向する位置に凸部を形成してもよい。なお、位置決め機構の構成としては、図4に示した凸部39と孔部34との組合せ以外にも、位置決めを行うことが可能な任意の構成を採用することができる。振動電極部材35と導電部材36との接続部には電気的接合性を向上させるため、たとえば金属めっき層(具体例としてはニッケルメッキ層)を形成してもよい。あるいは、当該接続部に導電シール部材を配置してもよい。
【0022】
(光学機構)
隔壁11において光学機構61と対向する位置には窓部18が形成されいてる。窓部18はたとえば光学機構61から出射する光、あるいは光学機構61が受光光を透過可能な材料により構成されている。光学機構61は、滅菌処理可能領域12の外部(たとえば非滅菌処理領域13)に配置される。光学機構61は、フローセルチャンバユニット80で形成される液体フローに含まれる生物学的粒子の情報を得るためのものである。光学機構61は、たとえばフローセル22において一列に配列された個々の細胞粒子にレーザ光を照射するレーザ光源やレンズなどの光学系を含んでいてもよい。また、レーザ光を照射された細胞粒子からの散乱光および/または蛍光を検出して細胞粒子の識別情報を検知する受光部を含んでいてもよい。また、光学機構61はフローセル22から下方に放出される液滴51間の間隔を計測するための撮像部を含んでいてもよい。光学機構61は制御部71と接続されている。制御部71は光学機構61を制御する制御信号を送出する。また、制御部71は光学機構61の受光部から上記識別情報を受信してもよい。
【0023】
(ソータ機構部)
ソータ機構部40は、図1および図3に示すように一対の偏向板41、42を含む。偏向板41、42は基本的に同様の構成を備える。図1に示す偏向板41を代表例としてその構成を説明する。偏向板41には隔壁11に向けて延びる延在部44が形成されている。また、延在部44と対向する隔壁11の部分には開口部16が形成されている。開口部16にはコネクタ45が気密にはめ込まれている。コネクタ45の表面には延在部44を挿入する開口部が形成されている。開口部の内部に延在部44が挿入されている。開口部の内部において、延在部44と開口部の内壁との間に封止部材としてのOリング46が配置されている。延在部44は非滅菌処理領域13において配線を介して制御部71と接続されている。偏向板41、42に電圧を印加することで、偏向板41、42の間に電場を形成する。この電場により、帯電した液滴51の落下方向を変更する。落下方向が変更された液滴51は、それぞれ所定の収集部材43に捕集される。なお詳細は後述する。
【0024】
<処理装置の動作>
フローセルチャンバユニット80において、サンプル液供給部24から導管23を介してチャンバ21内に細胞粒子を含むサンプル液が供給される。また、同時にシース液供給部25からチャンバ21内にシース液が供給される。このとき、チャンバ21内において、サンプル液はシース液に包囲されるように流れる。フローセル22では、フローセル22の延在方向に沿ってサンプル液に含まれる個々の細胞粒子が一列に配列される。つまり、フローセル22内ではシース液が層流状態で流れるとともに、当該層流の中心部をサンプル液が流れるように、フローセルチャンバユニット80は設計されている。
【0025】
そして、光学機構61において個々の細胞粒子の識別情報を検知するとともに、フローセル22の出側における液滴51間の距離情報を得る。振動電極部材35からチャンバ21内のサンプル液およびシース液に超音波振動が印加されることにより、フローセル22の出側において液体の流れが液滴に分離する。超音波の周波数などを調整することで液滴間の間隔を調整することができる。そして、光学機構61により得られた情報に基づき、分離される液滴51に含まれる細胞粒子の識別情報に応じた電荷を振動電極部材35からチャンバ21内の液体を介して当該液滴51に印加する。
【0026】
所定の電荷が印加された液滴51は、偏向板41、42の間の電場により力を受け、印加された電荷に応じて落下方向が変更される。この結果、液滴51に含まれる細胞粒子をその識別情報に応じて分別することができる。
【0027】
<処理装置の滅菌処理>
上述した処理装置としてのセルソータ1において、異なる種類の細胞粒子を処理する場合に、セルソータ1のソートヘッド81を滅菌処理する必要がある。この場合、滅菌処理可能領域12に滅菌用の気体を供給する。滅菌用の気体としては、たとえば過酸化水素水蒸気を用いることができる。過酸化水素水上記を用いた場合、従来の装置ではソートヘッド81に接続された配線のコネクタ部などがダメージを受ける(たとえば錆が発生する)という問題があった。しかし、本実施形態に係るセルソータ1では、ソートヘッド81には配線のコネクタなどが滅菌処理可能領域12に露出していないので、上述のような滅菌用の気体を用いた滅菌処理を行うことができる。
【0028】
さらに、図4に示すように、フローセルチャンバユニット80を取り外すことにより、放射線をフローセルチャンバユニット80に照射して滅菌処理を行う。このような放射線を用いた滅菌処理により、滅菌用の気体を用いた滅菌処理では除染が難しいような小さな径の孔(たとえば50μm〜200μm程度の径の孔)の内部についても確実に滅菌処理を行うことができる。そして、上記のような滅菌処理を行ったフローセルチャンバユニット80をセルソータ1に設置することにより、無菌状態での細胞粒子のソートなどの処理を行うことができる。また、このような滅菌処理を行ったフローセルチャンバユニット80を複数準備しておき、適宜フローセルチャンバユニット80を交換してもよい。このようにすれば、無菌状態での細胞粒子の処理を効率的に行うことができる。
【0029】
<処理装置の作用効果>
上記のようなフローセルチャンバユニット80を用いることで、振動電極部材35においてチャンバ21の外部に延在する部分(以下、延在部とも呼ぶ)から振動電極部材35を介して電荷や超音波をチャンバ21内部のシース液およびサンプル液に供給することができる。また、当該振動電極部材35の延在部はチャンバ21外部に位置するので、たとえば当該延在部を図2図4に示すような嵌合構造を有する導電部材36と接続し、当該導電部材36を滅菌処理可能領域12の外部に引き出すような構成を採用すれば、チャンバ部材28が配置された滅菌処理可能領域12に配線のコネクタなどが露出することなく、振動電極部材35に対して外部から電荷や超音波を印加することができる。この結果、チャンバ部材28自体に対して殺菌用の気体を用いてエアロゾルによる汚染の除去のための滅菌処理を行う場合に、振動電極部材35の上記コネクタなどが殺菌用の気体によりダメージを受けるといった問題の発生を防止できる。このため、チャンバ21において生物学的粒子(細胞粒子)を含む液体フローを形成した後、殺菌用の気体を用いて滅菌処理を行うことができる。この結果、当該液体フローのエアロゾルによる汚染をチャンバ部材28から確実に除去することができる。
【0030】
上記フローセルチャンバユニット80では、図1図2に示すように、振動電極部材35においてチャンバ21内に露出する端面は、当該端面に隣接するチャンバ21の内面の部分に連なるように配置されている。この場合、チャンバ21の内部に露出する振動電極部材35の端面とチャンバ21内面とが滑らかにつながった面を構成するので、チャンバ21内部におけるシース液やサンプル液の流れが振動電極部材35の端面により乱される可能性を低減できる。
【0031】
上記処理装置としてのセルソータ1では、上記フローセルチャンバユニット80を滅菌処理可能領域12の内部に配置することで、滅菌処理可能領域12内に過酸化水素蒸気などの殺菌用の気体などを供給して上記フローセルチャンバユニット80の滅菌処理を確実に行うことができる。このため、上記フローセルチャンバユニット80においてサンプル液などのエアロゾルによる汚染を確実に除去できる。
【0032】
また、上記セルソータ1では、導電部材36を介して振動電極部材35へ電気および超音波をチャンバ21内部のシース液およびサンプル液へ供給できる。また、導電部材36と振動電極部材35の延在部との接続部を気密な構成としておけば、滅菌処理可能領域12に殺菌用の気体を供給して当該気体により上記フローセルチャンバユニット80を滅菌処理しても、当該気体が振動電極部材35と導電部材36との接続部に触れることは無い。このため、当該接続部が上記気体によりダメージを受ける可能性を低減できる。
【0033】
また、図4に示すように振動電極部材35と導電部材36とは着脱可能に接続されているので、フローセルチャンバユニット80をセルソータ1に対して着脱可能とすることができる。そのため、滅菌処理可能領域12において滅菌用の気体(たとえば過酸化水素蒸気)によりフローセルチャンバユニット80の滅菌処理を行ったあと、さらにフローセルチャンバユニット80をセルソータ1から取り外してさらなる滅菌処理(たとえば放射線を用いた滅菌処理)を行うことができる。このため、無菌状態での細胞粒子の処理を確実に行うことができる。
【0034】
また、図4に示すようにセルソータ1が位置決め機構(凸部39と孔部34)を備えているので、フローセルチャンバユニット80をセルソータ1に対して取り付けるときに、フローセルチャンバユニット80の位置決めを容易に行うことができる。
【0035】
また、上記セルソータ1では、光学機構61が滅菌処理可能領域12の外部に配置されているので、滅菌処理可能領域12に殺菌用の気体を供給してフローセルチャンバユニット80の滅菌処理を行っても、当該光学機構61に殺菌用の気体が接触することはない。このため、当該気体により光学機構61がダメージを受けるといった問題の発生を防止できる。
【0036】
以上のように本発明の実施の形態について説明を行ったが、上述の実施の形態を様々に変形することも可能である。また、本発明の範囲は上述の実施の形態に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むことが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、細胞粒子を処理するフローサイトメータやセルソータに特に有利に適用される。
【符号の説明】
【0038】
1 セルソータ、10 滅菌処理部、11 隔壁、12 滅菌処理可能領域、13 非滅菌処理領域、14,16 開口部、15,46 Oリング、18 窓部、21 サンプル混合チャンバ、22 フローセル、23 導管、24 サンプル液供給部、25 シース液供給部、26 サンプル液源部、27 シース液源部、28 チャンバ部材、30 振動電極、31 超音波発生部、33 絶縁スリーブ、34 孔部、35 振動電極部材、36 導電部材、39 凸部、40 ソータ機構部、41,42 偏向板、43 収集部材、44 延在部、45 コネクタ、51 液滴、61 光学機構、71 制御部、80 フローセルチャンバユニット、81 ソートヘッド。
図1
図2
図3
図4