特許第6707259号(P6707259)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6707259
(24)【登録日】2020年5月22日
(45)【発行日】2020年6月10日
(54)【発明の名称】高周波加熱器及び高周波出力回路
(51)【国際特許分類】
   H05B 6/46 20060101AFI20200601BHJP
   H05B 6/48 20060101ALI20200601BHJP
   H05B 6/72 20060101ALI20200601BHJP
【FI】
   H05B6/46
   H05B6/48
   H05B6/72
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-195089(P2017-195089)
(22)【出願日】2017年10月5日
(65)【公開番号】特開2019-67729(P2019-67729A)
(43)【公開日】2019年4月25日
【審査請求日】2018年3月28日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514011859
【氏名又は名称】株式会社ダイレクト・アール・エフ
(74)【代理人】
【識別番号】100111567
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 寛
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】特許業務法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】戸谷 一幸
【審査官】 西村 賢
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭58−061593(JP,A)
【文献】 特開2008−146967(JP,A)
【文献】 特開2011−172060(JP,A)
【文献】 特開2013−165384(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/167938(WO,A1)
【文献】 実開昭59−053795(JP,U)
【文献】 特開2010−272216(JP,A)
【文献】 特開2009−238402(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 6/46−6/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱対象に高周波を照射する第1アンテナと、
前記第1アンテナから照射される高周波を出力する第1増幅器と、
前記第1アンテナと前記第1増幅器との間でインピーダンス整合をとるために設けられ、前記第1増幅器の出力インピーダンスを、第1インピーダンスに変換する第1非可変インピーダンス変換器と、
前記加熱対象に高周波を照射する第2アンテナと、
前記第2アンテナから照射される高周波を出力する第2増幅器と、
前記第2アンテナと前記第2増幅器との間でインピーダンス整合をとるために設けられ、前記第2増幅器の出力インピーダンスを、前記第1インピーダンスとは異なる第2インピーダンスに変換する第2非可変インピーダンス変換器と、
前記第1増幅器及び前記第2増幅器を含む複数の増幅器の中から、高周波が供給される増幅器を切り替えるための切替器であって、前記複数の増幅器の入力側に設けられた前記切替器と、
を備え
前記切替器による前記増幅器の切り替えは、前記複数の増幅器それぞれの出力側に設けられた複数のモニタ回路のモニタ結果が与えられるコントローラによって、前記モニタ結果に基づいて制御される
高周波加熱器。
【請求項2】
前記コントローラは、前記第1増幅器の出力の反射波及び前記第2増幅器の出力の反射波のモニタ結果に基づいて、前記第1増幅器及び前記第2増幅器を含む複数の増幅器の中から、高周波を出力する動作増幅器を選択す
請求項1に記載の高周波加熱器。
【請求項3】
前記加熱対象に照射される高周波の周波数を変化させる周波数可変器を更に備える
請求項1又は2に記載の高周波加熱器。
【請求項4】
前記第1増幅器及び前記第2増幅器のうちの少なくともいずれか一方は、増幅器の出力の大きさに応じて電源電圧が変化する
請求項1〜3のいずれか1項に記載の高周波加熱器。
【請求項5】
前記第1アンテナ及び前記第2アンテナは、同心円状に配置されている
請求項1〜4のいずれか1項に記載の高周波加熱器。
【請求項6】
加熱対象に高周波を照射する第1アンテナから照射される高周波を出力する第1増幅器と、
前記第1アンテナと前記第1増幅器との間でインピーダンス整合をとるために設けられ、前記第1増幅器の出力インピーダンスを、第1インピーダンスに変換する第1非可変インピーダンス変換器と、
前記加熱対象に高周波を照射する第2アンテナから照射される高周波を出力する第2増幅器と、
前記第2アンテナと前記第2増幅器との間でインピーダンス整合をとるために設けられ、前記第2増幅器の出力インピーダンスを、前記第1インピーダンスとは異なる第2インピーダンスに変換する第2非可変インピーダンス変換器と、
前記第1増幅器及び前記第2増幅器を含む複数の増幅器の中から、高周波が供給される増幅器を切り替えるための切替器であって、前記複数の増幅器の入力側に設けられた前記切替器と、
を備え
前記切替器による前記増幅器の切り替えは、前記複数の増幅器それぞれの出力側に設けられた複数のモニタ回路のモニタ結果が与えられるコントローラによって、前記モニタ結果に基づいて制御される
高周波出力回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波加熱器及び高周波出力回路に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、冷凍物を誘導加熱によって解凍する高周波解凍装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−134953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
加熱対象を加熱するには、アンテナから照射される高周波エネルギが、効率よく加熱対象に供給される必要がある。そのためには、加熱対象の高周波インピーダンスと同じインピーダンス条件で、高周波電磁界を形成する必要がある。しかし、高周波を出力する増幅器の出力インピーダンスは一定であるのに対して、加熱対象の高周波インピーダンスは、加熱対象によって異なり、一定ではない。したがって、加熱対象の高周波インピーダンスと増幅器の出力インピーダンスとの整合をとるためには、可変インピーダンス変換器が必要となる。
【0005】
例えば、前述の特許文献1は、負荷インピーダンスの被解凍物の負荷インピーダンスの変動に応じて、負荷インピーダンスと高周波増幅回路の出力インピーダンスとの整合の調整が必要であることを開示している。
【0006】
しかし、高周波加熱器のように大電力を扱う回路に用いられる可変インピーダンス変換器は、高電圧に耐えつつインピーダンスの調整が可能であることが求められるため、大型化し、構造も複雑になり、高コストである。
【0007】
したがって、可変インピーダンス変換器を用いなくても、一定でない加熱対象のインピーダンスに対処できることが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ある側面からみた本発明は、高周波加熱器である。高周波加熱器は、加熱対象に高周波を照射する第1アンテナと、前記第1アンテナから照射される高周波を出力する第1増幅器と、前記第1アンテナと前記第1増幅器との間に設けられ、前記第1増幅器の出力インピーダンスを、第1インピーダンスに変換する第1非可変インピーダンス変換器と、前記加熱対象に高周波を照射する第2アンテナと、前記第2アンテナから照射される高周波を出力する第2増幅器と、前記第2アンテナと前記第2増幅器との間に設けられ、前記第2増幅器の出力インピーダンスを、前記第1インピーダンスとは異なる第2インピーダンスに変換する第2非可変インピーダンス変換器と、を備えることができる。
【0009】
他の側面からみた本発明は、高周波出力回路である。高周波出力回路は、例えば、加熱対象に高周波を照射する第1アンテナから照射される高周波を出力する第1増幅器と、前記第1増幅器の出力インピーダンスを、第1インピーダンスに変換する第1非可変インピーダンス変換器と、前記加熱対象に高周波を照射する第2アンテナから照射される高周波を出力する第2増幅器と、前記第2増幅器の出力インピーダンスを、前記第1インピーダンスとは異なる第2インピーダンスに変換する第2非可変インピーダンス変換器と、を備えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は高周波加熱器の回路図である。
図2図2は高周波加熱器の回路図である。
図3A図3Aは複数のアンテナの配置を示す斜視図である。
図3B図3B図3AのA−A線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[1.高周波加熱器及び高周波出力回路]
【0012】
(1)実施形態に係る高周波加熱器は、加熱対象に高周波を照射する第1アンテナを備える。加熱対象は、例えば、食品であるが、特に、限定されない。加熱は、解凍のための加熱を含む。高周波加熱器は、前記第1アンテナから照射される高周波を出力する第1増幅器を含む。高周波加熱器は、第1非可変インピーダンス変換器を備える。非可変インピーダンス変換器は、固定値のインピーダンスを持ち、インピーダンスが可変でない。非可変インピーダンス変換器は、可変インピーダンス変換器に比べてコスト安である。
【0013】
高周波加熱器は、前記加熱対象に高周波を照射する第2アンテナと、前記第2アンテナから照射される高周波を出力する第2増幅器と、前記第2アンテナと前記第2増幅器との間に設けられ、前記第2増幅器の出力インピーダンスを、前記第1インピーダンスとは異なる第2インピーダンスに変換する第2非可変インピーダンス変換器と、を備える。
【0014】
第1非可変インピーダンス変換器と第2非可変インピーダンス変換器とは、それぞれ異なるインピーダンスへの変換をするため、第1増幅器及び第2増幅器の出力インピーダンスが同じであっても、異なるインピーダンス条件での高周波照射が可能である。したがって、可変インピーダンス変換器を用いなくても、一定でない加熱対象のインピーダンスに対処できる。
【0015】
(2)高周波加熱器は、コントローラを更に備えることができる。コントローラは、前記第1増幅器及び前記第2増幅器を含む複数の増幅器の中から、高周波を出力する動作増幅器を選択することができる。動作増幅器とは、複数の増幅器のうち、照射される高周波を出力する増幅器をいう。動作増幅器は、1つでもよいし、複数でもよい。コントローラは、そのような選択を、前記第1増幅器の出力の反射波及び前記第2増幅器の出力の反射波のモニタ結果に基づいて行うことができる。コントローラは、例えば、反射波が少ない増幅器を動作増幅器として選択することができる。
【0016】
(3)高周波加熱器は、前記加熱対象に照射される高周波の周波数を変化させる周波数可変器を更に備えることができる。この場合、周波数の変更が可能となる。
【0017】
(4)前記第1増幅器及び前記第2増幅器のうちの少なくともいずれか一方は、増幅器の出力の大きさに応じて電源電圧が変化することができる。増幅器の出力の大きさに応じて電源電圧が変化することで、増幅器の効率的動作が可能である。
【0018】
(5)前記第1アンテナ及び前記第2アンテナは、同心円状に配置されている。この場合、複数のアンテナにとっての適切な配置が得られる。
【0019】
(6)実施形態に係る高周波出力回路は、加熱対象に高周波を照射する第1アンテナから照射される高周波を出力する第1増幅器と、前記第1増幅器の出力インピーダンスを、第1インピーダンスに変換する第1非可変インピーダンス変換器と、前記加熱対象に高周波を照射する第2アンテナから照射される高周波を出力する第2増幅器と、前記第2増幅器の出力インピーダンスを、前記第1インピーダンスとは異なる第2インピーダンスに変換する第2非可変インピーダンス変換器と、を備える。
【0020】
[2.高周波加熱器の例]
【0021】
図1に示す高周波加熱器10は、高周波出力回路50と、高周波出力回路50から出力された高周波を加熱対象Tに照射する複数のアンテナ25と、を備える。高周波出力回路50は、複数の増幅器19を備える。増幅器19の数は、2以上であれば特に限定されない。図1に示す複数の増幅器19は、第1増幅器19a、第2増幅器19b、第3増幅器19c、及び第4増幅器19dという4つの増幅器を含む。複数の増幅器19は、並列に配置されている。複数の増幅器19は、同じ出力インピーダンスを持つことができる。
【0022】
高周波出力回路50は、高周波を発生する発振器11を備える。高周波出力回路50は、発振器11から出力された高周波の周波数を変更する周波数可変器13を備える。周波数可変器13の出力は、前置増幅器15によって増幅される。
【0023】
高周波出力回路50は、高周波が供給される増幅器を切り替えるための増幅器切替器17を備える。切替器17は、例えば、前置増幅器15と複数の増幅器19との間に配置される。切替器17は、一入力複数出力の回路であり、入力された高周波を、複数の出力端の何れかから出力する。
【0024】
複数のアンテナ25は、第1アンテナ25a、第2アンテナ25b、第3アンテナ25c、第4アンテナ25dを含む。第1アンテナ25aは、第1増幅器19aから出力された高周波を対象Tに照射する。第2アンテナ25bは、第2増幅器19bから出力された高周波を対象Tに照射する。第3アンテナ25cは、第3増幅器19cから出力された高周波を対象Tに照射する。
【0025】
高周波出力回路50は、複数のインピーダンス変換器23を備える。複数のインピーダンス変換器23それぞれは、インピーダンスが固定値である非可変インピーダンス変換器である。インピーダンス変換器23として、非可変型を採用することで、インピーダンス変換器23の大型化・複雑化を防止でき、コスト上昇も抑制できる。複数のインピーダンス変換器23は、増幅器19a,19b,19c,19dの出力インピーダンスを、互いに異なるインピーダンスに変換する。図1に示す複数のインピーダンス変換器23は、第1インピーダンス変換器23a、第2インピーダンス変換器23b、第3インピーダンス変換器23c、第4インピーダンス変換器23dを含む。
【0026】
第1インピーダンス変換器(第1非可変インピーダンス変換器)23aは、第1増幅器19aの出力インピーダンスを、第1インピーダンスに変換する。第1インピーダンスは、例えば、5Ωである。この場合、第1インピーダンス変換器23aに接続された第1アンテナ25aから放射される高周波エネルギは、対象Tの高周波インピーダンスが5Ω近傍である場合に、効率よく対象Tに供給される。
【0027】
第2インピーダンス変換器(第2非可変インピーダンス変換器)23bは、第2増幅器19bの出力インピーダンスを、第2インピーダンスに変換する。第2インピーダンスは、例えば、10Ωである。この場合、第2インピーダンス変換器23bに接続された第2アンテナ25bから放射される高周波エネルギは、対象Tの高周波インピーダンスが10Ω近傍である場合に、効率よく対象Tに供給される。
【0028】
第3インピーダンス変換器(第3非可変インピーダンス変換器)23cは、第3増幅器19cの出力インピーダンスを、第3インピーダンスに変換する。第3インピーダンスは、例えば、20Ωである。この場合、第3インピーダンス変換器23cに接続された第3アンテナ25cから放射される高周波エネルギは、対象Tの高周波インピーダンスが20Ω近傍である場合に、効率よく対象Tに供給される。
【0029】
第4インピーダンス変換器(第4非可変インピーダンス変換器)23dは、第4増幅器19dの出力インピーダンスを、第4インピーダンスに変換する。第4インピーダンスは、例えば、50Ωである。この場合、第4インピーダンス変換器23dに接続された第4アンテナ25dから放射される高周波エネルギは、対象Tの高周波インピーダンスが50Ω近傍である場合に、効率よく対象Tに供給される。
【0030】
以下では、第1増幅器19a及び第1アンテナ25aを有する経路を第1経路といい、第2増幅器19b及び第2アンテナ25bを有する経路を第2経路といい、第3増幅器19c及び第3アンテナ25cを有する経路を第3経路といい、第4増幅器19d及び第4アンテナ25dを有する経路を第4経路という。
【0031】
高周波出力回路50は、複数の増幅器19それぞれの出力の反射波をモニタする複数のモニタ回路21を備える。例えば、図1の複数のモニタ回路21は、第1モニタ回路21a、第2モニタ回路21b、第3モニタ回路21c、第4モニタ回路21dを含む。
【0032】
第1モニタ回路21aは、第1経路に設けられており、より具体的には、第1増幅器19aの出力側に接続されており、第1増幅器19aから出力された高周波の反射波をモニタする。第2モニタ回路21bは、第2経路に設けられており、より具体的には、第2増幅器19bの出力側に接続されており、第2増幅器19bから出力された高周波の反射波をモニタする。第3モニタ回路21cは、第3経路に設けられており、第3増幅器19cの出力側に接続されており、第3増幅器19cから出力された高周波の反射波をモニタする。第4モニタ回路21dは、第4経路に設けられており、第4増幅器19dの出力側に接続されており、第4増幅器19dから出力された高周波の反射波をモニタする。
【0033】
対象Tの高周波インピーダンスとは異なるインピーダンス条件で高周波が照射されると、高周波エネルギが効率良く対象Tに供給されなくなり、高周波の反射が大きくなる。したがって、反射波をモニタすることで、複数の増幅器19のうちのいずれの増幅器からの出力が、効率良く対象Tに供給されているかを把握することができる。
【0034】
複数のモニタ回路21によるモニタ結果は、コントローラ31に与えられる。モニタ結果は、反射波だけを示すものであってもよいし、反射波による影響を受けた増幅器出力を示すものであってもよい。コントローラ31は、モニタ結果に基づいて、高周波出力回路50を制御する。コントローラ31による制御は、切替器17の制御を含む。コントローラ31は、複数のモニタ回路21のうち、反射波が最も小さく観測されたモニタ回路に接続された増幅器を動作増幅器として選択する。コントローラ31は、切替器17に入力された高周波が、動作増幅器に入力されるように、高周波が入力される経路を切り替える。
【0035】
例えば、対象Tの高周波インピーダンスが5Ω程度である場合には、第1モニタ回路21aによって観測される反射波が最も小さくなる。この場合、第1増幅器19aが動作増幅器として選択される。コントローラ31は、切替器17に入力された高周波が、動作増幅器である第1増幅器19aに与えられるように、切替器17の経路を切り替える。これにより、第1増幅器19aから出力された高周波が、第1アンテナ25aから対象Tへ照射される。第1増幅器19aから高周波を出力することで、対象Tの高周波インピーダンスと概ね整合がとれた状態となり、高周波エネルギが効率的に対象Tに供給される。
【0036】
コントローラ31による動作増幅器の選択は、第1経路、第2経路、第3経路、及び第4経路のうちのいずれか一つの経路の選択でもある。各経路は、高周波照射のインピーダンス条件が異なるため、対象Tの高周波インピーダンスに応じて、適切な経路を選択することで、高周波エネルギが効率的に対象Tに供給される。
【0037】
切替器17は、図1に示すように、動作増幅器を択一的に選択する切替方式であってもよいし、図2に示すように、複数の増幅器を同時に動作増幅器として選択可能な切替方式であってもよい。図2の切替器17の場合、コントローラ31は、動作増幅器として、一つの増幅器を選択することができるし、動作増幅器として、複数の増幅器19の一部又は全部の増幅器、すなわち、2個、3個、又は4個の増幅器を同時に選択することができる。なお、図2において、切替器17以外の構成は、図1と同様である。
【0038】
コントローラ31は、複数の動作増幅器として、反射波が少ない増幅器を選択することができる。例えば、第2モニタ回路21bによってモニタされる反射波が最も小さく、第3モニタ回路21cによってモニタされる反射波がその次に小さい場合、コントローラ31は、第2増幅器19b及び第3増幅器19cを、動作増幅器として選択することができる。
【0039】
複数の動作増幅器が選択される場合、コントローラ31は、反射波が小さい動作増幅器ほど大きなパワーの高周波を出力するように制御することができる。例えば、第2モニタ回路21bによってモニタされる反射波が最も小さく、第3モニタ回路21cによってモニタされる反射波がその次に小さい場合、コントローラ31は、第2増幅器19b及び第3増幅器19cを動作増幅器として選択し、第2増幅器19bの出力パワーを、第3増幅器19cよりも大きくすることができる。これにより、複数の増幅器による大きな高周波エネルギの供給を行いつつも、反射波の少ない増幅器からの比較的大きなパワー供給により、エネルギ供給の効率化の低下を抑制できる。なお、増幅器の出力のパワーは、例えば、増幅器の増幅率の調整、又は、増幅器に入力される信号の大きさの調整によって行うことができる。
【0040】
コントローラ31は、高周波加熱器10による加熱動作の開始直後に、1又は複数の動作増幅器を選択することができる。加熱動作の開始直後においては、複数の増幅器19を動作させ、反射波のモニタ結果に基づいて、適切な動作増幅器を選択することで、加熱動作の大部分において、高周波エネルギを効率的に供給できる。
【0041】
コントローラ31は、加熱動作中に、動作増幅器を切り替えてもよい。加熱動作中の動作増幅器の切り替えにより、加熱によって対象Tの高周波インピーダンスが変動した場合にも対処できる。例えば、コントローラ31は、加熱動作中において、動作増幅器及び動作増幅器以外の増幅器を動作させて、複数の増幅器19それぞれのモニタ結果を取得し、反射波の少ない増幅器を新たな動作増幅器として選択することができる。これにより、高周波加熱器10は、加熱中に加熱対象Tのインピーダンスが変動しても、その変動に追従して、適切なインピーダンス条件で高周波を照射することができる。
【0042】
コントローラ31による制御は、周波数可変器13の制御を含む。コントローラ31は、対象Tに与えられる高周波の周波数を最適化するため、発振器11から与えられた高周波の周波数を変更すべく、周波数可変器13を制御する。例えば、コントローラ31は、ユーザなどの外部からの指示又は設定値に基づいて、周波数可変器13を制御する。また、コントローラ31は、最適周波数のサーチのため、周波数を変化させつつ高周波を対象Tに照射させ、反射波のモニタ結果に基づいて、周波数可変器13を制御してもよい。
【0043】
コントローラ31は、複数の増幅器19から動作増幅器を選択した後に、周波数を設定する処理を行うことができる。また、コントローラ31は、選択された動作増幅器、すなわち、選択された経路に応じて、周波数を設定することができる。コントローラ31は、動作増幅器が含まれる複数の経路を選択した場合、選択された経路に応じて、適した周波数を設定することができる。コントローラ31は、複数の経路毎に異なる周波数に調整することができる。なお、経路毎に異なる周波数に調整する場合には、各経路が、周波数発振器を備えているのが好ましい。
【0044】
コントローラ31による制御は、複数の増幅器19の制御を含む。コントローラ31は、例えば、複数の増幅器それぞれの電源電圧を制御する。増幅器の出力電圧に応じて、増幅器の電源電圧を変化させることで、増幅器を高効率動作させることができる。例えば、増幅器の出力電圧が小さいときには、増幅器の電源電圧も小さくし、増幅器の出力電圧が大きいときは、増幅器の電源電圧も大きくすればよい。増幅器の出力電圧が小さいのに、増幅器の電源電圧が大きいと、高周波信号に変換されなかった電力が熱になって放熱され、非効率であるが、増幅器の出力電圧に応じて、増幅器の電源電圧を変化させることで、効率化が図られる。なお、コントローラ31は、複数の増幅器19のうち、動作増幅器として選択されたものの電源電圧を制御すればよい。
【0045】
コントローラ31は、増幅器の出力電圧を、ユーザなどの外部からの指示又は設定値に基づいて決定することができる。また、コントローラ31は、増幅器の出力電圧を、モニタ回路のモニタ結果に基づいて把握してもよい。増幅器の出力電圧は、増幅器の入力電圧をモニタすることで間接的に把握してもよいし、増幅器の出力電圧をモニタすることで直接把握してもよい。
【0046】
図3A及び図3Bは、複数のアンテナ25の配置の例を示している。図3Aは、調理用の高周波加熱器(いわゆる電子レンジ)10を示している。図3Aに示すように、複数のアンテナ25は、高周波加熱器10の調理室の天井面100aに配置される。複数のアンテナ25は、調理室の底面100b又は左右側面100c,100dに配置されていてもよい。複数のアンテナ25は、調理室を各面100a,100b,100c,100dのいずれか一つの面に、集中的に配置されていてもよい。例えば、図3Aでは、複数のアンテナ25全てが、天井面100aに集中的に配置されている。複数のアンテナ25は、調理室を区画する複数の面100a,100b,100c,100dのうちの2以上の面に分散配置されていてもよい。例えば、第1アンテナ25a及び第3アンテナ25cは、面100cに配置され、第2アンテナ25b及び第4アンテナ25dは、面100dに配置されていてもよい。
【0047】
図3A及び図3Bに示す複数のアンテナ25は、それぞれ、リング状であって、径方向の大きさが異なり、同心円状に配置される。複数のアンテナ25が同心円状に配置されることで、調理室底面100bのほぼ中央に設置される加熱対象Tに対して、複数のアンテナ25のいずれも対向配置となり、均一な高周波の照射が可能となり有利である。
【0048】
図3Bに示すように、複数のアンテナ25は、多層構造であるのが好ましい。各アンテナ25a,25b,25c,25dが異なる層に形成されていることで、各アンテナ25a,25b,25c,25dが無端リング状であっても、各アンテナ25a,25b,25c,25dにつながる給電線29a,29b,29,29dの配置が可能となる。
【0049】
例えば、図3Bにおいては、第1アンテナ25a及び第1アンテナ25aに接続される給電線29aは、基板28aの上面に形成されている。第2アンテナ25b及び第2アンテナ25bに接続される給電線29bは、基板28a及び基板28bの間に形成されている。第3アンテナ25c及び第3アンテナ25cに接続される給電線29cは、基板28bと基板28cとの間に形成されている。第4アンテナ25d及び第4アンテナ25dに接続される給電線29dは、基板28cの下面に形成されている。各給電線29a,29b,29d,29cは、接続されるアンテナ以外のアンテナとの接触が回避された配置となっている。なお、給電線29a,29b,29c,29dは、高周波出力回路50に接続されており、増幅器19a,19b,19c,19dから出力された高周波をアンテナに供給する。
【0050】
[3.変形]
【0051】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【符号の説明】
【0052】
10 高周波加熱器
11 発振器
13 周波数可変器
17 増幅器切替器
19 複数の増幅器
19a 第1増幅器
19b 第2増幅器
19c 第3増幅器
19d 第4増幅器
21 複数のモニタ回路
21a 第1モニタ回路
21b 第2モニタ回路
21c 第3モニタ回路
21d 第4モニタ回路
23 複数のインピーダンス変換器
23a 第1インピーダンス変換器
23b 第2インピーダンス変換器
23c 第3インピーダンス変換器
23d 第3インピーダンス変換器
25 複数のアンテナ
25a 第1アンテナ
25b 第2アンテナ
25c 第3アンテナ
25d 第4アンテナ
28a 基板
28b 基板
28c 基板
29a 第1給電線
29b 第2給電線
29c 第3給電線
29d 第4給電線
31 コントローラ
図1
図2
図3A
図3B