特許第6707269号(P6707269)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 華為技術有限公司の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6707269
(24)【登録日】2020年5月22日
(45)【発行日】2020年6月10日
(54)【発明の名称】デュアルバンドアンテナ
(51)【国際特許分類】
   H01Q 5/55 20150101AFI20200601BHJP
   H01Q 13/02 20060101ALI20200601BHJP
   H01Q 13/06 20060101ALI20200601BHJP
【FI】
   H01Q5/55
   H01Q13/02
   H01Q13/06
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2019-506088(P2019-506088)
(86)(22)【出願日】2017年1月22日
(65)【公表番号】特表2019-523615(P2019-523615A)
(43)【公表日】2019年8月22日
(86)【国際出願番号】CN2017072085
(87)【国際公開番号】WO2018133071
(87)【国際公開日】20180726
【審査請求日】2019年2月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】503433420
【氏名又は名称】華為技術有限公司
【氏名又は名称原語表記】HUAWEI TECHNOLOGIES CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100140534
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 敬二
(72)【発明者】
【氏名】▲羅▼ ▲シン▼
(72)【発明者】
【氏名】林 ▲紅▼勇
(72)【発明者】
【氏名】郭 智力
【審査官】 福田 正悟
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2011/0291903(US,A1)
【文献】 米国特許第05907309(US,A)
【文献】 米国特許第04740795(US,A)
【文献】 特開平02−262702(JP,A)
【文献】 実開昭60−095710(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 5/55
H01Q 13/02
H01Q 13/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導波管、環状溝、高周波フィード、および誘電体リングを含む同軸デュアルバンドアンテナであって、
前記導波管は管状構造を有しており、第1の電磁波を伝送するように構成されており、その開口方向が前記第1の電磁波の出力方向と同じである前記環状溝が前記導波管の壁上にあり、前記第1の電磁波の周波数は、前記高周波フィードによって伝送される電磁波の周波数よりも低く、前記環状溝の半径と前記導波管の内壁の半径との間の差が、前記第1の電磁波の波長の1/8であり、前記環状溝の深さは、前記第1の電磁波の波長の1/5から1/4の間であり、前記環状溝の幅は、前記第1の電磁波の波長の1/8であり、
前記高周波フィードは前記導波管内に位置しており、前記導波管と同じ軸を有しており、前記第1の電磁波は前記導波管内で横電界モードTE11を励起し、
前記誘電体リングは前記導波管と前記高周波フィードとの間に充填され、前記誘電体リングは多層構造を有しており、前記導波管と同じ軸を有しており、前記誘電体リングの層における、および前記軸に垂直な平面の領域の大きさは交互に変化し、前記誘電体リングの高さは前記導波管の高さよりも低い、同軸デュアルバンドアンテナ。
【請求項2】
前記高周波フィードの高さは、前記導波管の高さと同じである、請求項1に記載の同軸デュアルバンドアンテナ。
【請求項3】
前記導波管の内壁の半径および前記高周波フィードの外壁の半径の合計が、前記第1の電磁波の波長の1/πより大きく、2つの半径の間の差は、前記第1の電磁波の波長の1/2より小さい、請求項1に記載の同軸デュアルバンドアンテナ。
【請求項4】
前記誘電体リングの隣接する2つの層のうちの一方のみの外壁が前記導波管の前記内壁に接続されており、前記誘電体リングの前記層における内壁が前記高周波フィードの前記外壁に接続されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の同軸デュアルバンドアンテナ。
【請求項5】
前記誘電体リングの、および前記導波管の出力面から最も遠い層は、前記導波管および前記高周波フィードに同時には接続されない、請求項に記載の同軸デュアルバンドアンテナ。
【請求項6】
前記誘電体リングの各層の高さは、前記第1の電磁波の波長の1/4である、請求項に記載の同軸デュアルバンドアンテナ。
【請求項7】
前記誘電体リングの比誘電率は、2から4の間である、請求項に記載の同軸デュアルバンドアンテナ。
【請求項8】
主反射器、副反射器および請求項1からのいずれか一項に記載の同軸デュアルバンドアンテナを含む、デュアルバンドパラボラアンテナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、無線通信の分野に関し、特に、デュアルバンドパラボラアンテナに使用することができる同軸デュアルバンドアンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信技術の急速な発展に伴い、マイクロ波のポイントツーポイント通信における伝送容量は継続的に増大しており、E−band(71から76GHz、81から86GHz)周波数帯のマイクロ波デバイスは、基地局バックホールネットワークにおいてますます重要な役割を果たす。しかしながら、E−band周波数帯の電磁波における「レイン・フェード」が非常に深刻であるため、E−bandマイクロ波のシングルホップ距離は通常3キロメートル未満である。E−bandマイクロ波のシングルホップ距離を増大させ、且つ現場展開コストを低減するために、E−band周波数帯のマイクロ波デバイスと別の低周波数マイクロ波デバイスとを協同して使用する解決策が提供されている。比較的大雨が降っているときに、たとえE−bandマイクロ波デバイスが正常に動作できなくても、低周波マイクロ波デバイスは依然として正常に動作することができる。
【0003】
この解決策では、デュアルバンドパラボラアンテナが使用され、デュアルバンドパラボラアンテナの構造が図1に示されている。デュアルバンドパラボラアンテナは、主反射器、副反射器、低周波フィード、および高周波フィードを含む。高周波フィードは低周波フィード内に挿入され、2つのフィードは同じ軸を使用し、同軸デュアルバンドアンテナを形成する。同軸デュアルバンドアンテナの2つのフィードは主反射器および副反射器を共有し、2つのフィードの位相中心は副反射器の焦点で重なり合わされて、デュアルバンド多重化機能を実現する。
【0004】
従来技術において、同軸デュアルバンドアンテナの低周波フィードは通常、大開口のホーン形状であり、誘電体ピンが高周波フィードに挿入される必要がある。高周波フィードおよび低周波フィードの双方は、放射効率が比較的低く、ゲインがシングルバンドアンテナのゲインレベルに達することができないという問題を有している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願の実施形態は、同軸デュアルバンドアンテナを提供する。既存の同軸デュアルバンドアンテナにおいて高周波フィードおよび低周波フィードの放射効率が比較的低く、ゲインがシングルバンドアンテナのゲインレベルに達することができないという問題を解決するために、大開口のホーン形状導波路の代わりに、直径が変化しない円形導波路または小さいフレア角を有する円形導波路が使用され、低周波数フィードとして機能する。
【0006】
第1の態様によれば、同軸デュアルバンドアンテナが提供され、導波管、環状溝、高周波フィードおよび誘電体リングを含み、導波管は管状構造を有しており、第1の電磁波を伝送するように構成されており、その開口方向が第1の電磁波の出力方向と同じである環状溝が導波管の壁上にあり、第1の電磁波の周波数は高周波フィードによって伝送される電磁波の周波数より低い。高周波フィードは導波管内に位置しており、導波管と同じ軸を有しており、第1の電磁波は導波管内で横電界モードTE11を励起する。誘電体リングが導波管と高周波フィードとの間に充填され、誘電体リングは多層構造を有しており、導波管と同じ軸を有している。誘電体リングの層にあり、および軸に垂直な平面の領域の大きさは交互に変化し、誘電体リングの高さは導波管の高さよりも低い。
【0007】
本願の実施形態において提供される同軸デュアルバンドアンテナは、低周波数で第1の電磁波のTE11モードを励起し、導波管内で高次モードは生成されない。これは、導波管内の高次モードの伝送損失を回避し、デュアルバンドアンテナの低周波放射効率を改善する。加えて、導波管内で高次モードが生成されないので、導波管内に位置する高周波フィードが高次モードの電磁場分布に影響を及ぼすことを心配する必要がない。従って、誘電体ピンを省略することができ、デュアルバンドアンテナの高周波放射効率を改善することができる。
【0008】
第1の態様に関連して、第1の態様の第1の可能な実施態様では、高周波フィードの高さは導波管の高さと同じである。
【0009】
第1の態様に関連して、第1の態様の第2の可能な実施態様では、導波管の内壁の半径および高周波フィードの外壁の半径の合計は、第1の電磁波の波長の1/πより大きく、2つの半径の間の差は、第1の電磁波の波長の1/2未満である。本実施形態では、TE11モードのみがアンテナにおいて存在し、高次モードは存在しないことを保証することができるため、導波路における高次モードの伝送損失は回避される。
【0010】
第1の態様、または第1の態様の第1もしくは第2の可能な実施態様に関連して、第1の態様の第3の可能な実施態様では、環状溝の半径と導波管の内壁の半径との間の差は、第1の電磁波の波長の1/8である。
【0011】
第1の態様の第3の可能な実施態様に関連して、第1の態様の第4の可能な実施態様では、環状溝の深さは、第1の電磁波の波長の1/5から1/4の間であり、環状溝の幅は、第1の電磁波の波長の1/8である。
【0012】
環状溝の大きさの要件は、前述の2つの実施形態において提供される。大きさの要件を満たす環状溝によって励起される高次モードは、TE11モードと重ね合わせてもよく、それにより、E面上の第1の電磁波のビーム幅は、H面上のビーム幅と一致し、第1の電磁波の放射効率が最大化される。
【0013】
第1の態様、または第1の態様の第1から第4の可能な実施態様のいずれか1つに関連して、第1の態様の第5の可能な実施態様では、誘電体リングの2つの隣接する層の一方のみの外壁が導波管の内壁に接続され、誘電体リングの層の内壁は高周波フィードの外壁に接続されている。これは、密封機能と防水機能を実現し、高周波フィードを固定することができる。
【0014】
第1の態様、または第1の態様の第1から第5の可能な実施態様のいずれか1つに関連して、第1の態様の第6の可能な実施態様では、誘電体リングの、および導波管の出力面から最も遠い層は、導波管および高周波フィードに同時には接続されない。これは、誘電体リング上での第1の電磁波の反射を低減し、放射効率を改善することができる。
【0015】
第1の態様の第6の可能な実施態様に関連して、第1の態様の第7の可能な実施態様では、誘電体リングの各層の高さは第1の電磁波の波長の1/4である。
【0016】
第1の態様の第6または第7の可能な実施態様に関連して、第1の態様の第8の可能な実施態様では、誘電体リングの比誘電率は2から4の間である。
【0017】
誘電体リングの各層の高さおよび比誘電率は、前述の2つの実施形態に記載されている。誘電体リングの各層の高さおよび比誘電率は、同軸デュアルバンドアンテナの特性インピーダンスおよび自由空間の波動インピーダンスを互いに一致させること、および放射効率を改善することを可能にしている。
【0018】
本願において提供される同軸デュアルバンドアンテナは、低周波数で第1の電磁波のTE11モードを励起し、導波管の内部で高次モードは生成されない。これは、導波管内の高次モードの伝送損失を回避し、デュアルバンドアンテナの低周波放射効率が改善する。加えて、高次モードが導波管の内部で生成されないので、導波管内に位置する高周波フィードが高次モードの電磁場分布に影響を及ぼすことを心配する必要がない。従って、誘電体ピンを省略することができ、デュアルバンドアンテナの高周波放射効率を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】既存のデュアルバンドパラボラアンテナの概略構造図である。
図2】既存の同軸デュアルバンドアンテナの概略構造図である。
図3(a)】本願の実施形態による同軸デュアルバンドアンテナの概略構造図である。
図3(b)】本願の別の実施形態による同軸デュアルバンドアンテナの概略構造図である。
図3(c)】本願の別の実施形態による同軸デュアルバンドアンテナの概略構造図である。
図4(a)】本願の実施形態による同軸デュアルバンドアンテナにおけるTE11モードの電場の分布図である。
図4(b)】本願の実施形態による同軸デュアルバンドアンテナにおけるTM11モードの電場の分布図である。
図4(c)】同軸デュアルバンドアンテナにおけるTE11モードおよびTM11モードが本願の実施形態に従って重ね合わされた後に得られる電場の分布図である。
図5(a)】本願の別の実施形態による同軸デュアルバンドアンテナの概略構造図である。
図5(b)】本願の別の実施形態による同軸デュアルバンドアンテナの概略構造図である。
図6(a)】本願の別の実施形態による同軸デュアルバンドアンテナの概略構造図である。
図6(b)】本願の別の実施形態による同軸デュアルバンドアンテナの概略構造図である。
図7(a)】本願の別の実施形態による同軸デュアルバンドアンテナの概略構造図である。
図7(b)】本願の別の実施形態による同軸デュアルバンドアンテナの概略構造図である。
図8(a)】本願の別の実施形態による同軸デュアルバンドアンテナの概略構造図である。
図8(b)】本願の別の実施形態による同軸デュアルバンドアンテナの概略構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下では、本願の実施形態における添付の図面を参照して、本願の実施形態における技術的解決策を説明する。
【0021】
既存の同軸デュアルバンドアンテナの構造を図2に示す。同軸デュアルバンドアンテナの低周波フィード201は大開口のホーン形状導波路であり、高周波フィード202は導波管内に包含され、誘電体ピン203が高周波フィード202内に挿入されている。ホーン形状導波路は、反射を低減するために、導波路の特性インピーダンスと自由空間の波動インピーダンスとの間のマッチングを容易にするために使用される。導波路の半径が大きくなると、高次モードが励起され、高次モードと横電界モードTE11が作用し、E面上の出力電磁波のビーム幅はH面上のビーム幅と一致し、最良のゲイン効果が達成される。E面は、電場が位置する方向および最も高い放射強度を有する方向を含む平面であり、H面は、磁界が位置する方向および最も高い放射強度を有する方向を含む平面である。しかしながら、高次モードは、大開口のホーン形状導波路の内部で発生し、導波路内の伝送損失は比較的大きい。従って、デュアルバンドアンテナの低周波放射効率は比較的低い。
【0022】
高周波フィードは金属製であり、高次モードの電磁場分布に影響を与える。従って、高周波フィードは、大開口のホーン形状導波路の開口部まで直接延在することはできず、誘電体ピンが高周波フィードの位相中心を大開口のホーン形状導波路の開口部に案内する必要がある。しかしながら、誘電体ピンの加工は容易ではなく、誘電体ピンの損失は比較的大きい。従って、デュアルバンドアンテナの高周波ゲインはシングルバンドアンテナのレベルには到達することができない。
【0023】
本出願の実施形態は、同軸デュアルバンドアンテナを提供する。図3(a)に示すように、アンテナは、導波菅301と、環状溝302と、高周波フィード303と、誘電体リング304とを含む。
【0024】
導波路301は管状構造を有しており、第1の電磁波を伝送するように構成され、その開口方向が第1の電磁波の出力方向と同じである環状溝302は、導波管301の壁上にあり、第1の電磁波の周波数は、高周波フィード303によって伝送される電磁波の周波数よりも低い。
【0025】
高周波フィード303は、導波管301内に置かれ、導波管301と同じ軸を有しており、第1の電磁波は、導波管301において横電界モードTE11を励起する。
【0026】
誘電体リング304は、導波管301と高周波フィード303との間に充填されている。誘電体リング304は、多層構造を有しており、導波管301と同じ軸を有している。誘電体リング304の層における、および軸に垂直な平面の領域の大きさは交互に変化する。誘電体リング304の高さは、導波管301の高さよりも低い。
【0027】
任意選択で、高周波フィード303の高さは導波管301の高さと同じである。高周波フィードの高さが導波管の高さよりもわずかに低い場合も可能であることを理解されたい。
【0028】
本願のこの実施形態において、導波管は、第1の電磁波のTE11モードを低周波数で励起し、高次モードは導波管の内部で生成されない。これは、導波路における高次モードの伝送損失が回避され、デュアルバンドアンテナの低周波放射効率を改善する。加えて、高次モードが導波管の内部で生成されないので、導波管内に位置する高周波フィードが高次モードの電磁場分布に影響を及ぼすことを心配する必要がない。従って、誘電体ピンを省略することができ、デュアルバンドアンテナの高周波放射効率が改善され得る。
【0029】
図3(a)に示された同軸デュアルバンドアンテナにおいて、誘電体リング304の内壁は、高周波フィード303の外壁に接続されていることが理解されたい。これは、本願で提供される同軸デュアルバンドアンテナの可能な構造にすぎない。誘電体リング304の層における、および軸に垂直な平面の領域の大きさが交互に変化するならば、図3(b)に示すように、アンテナにおいて、誘電体リング304の外壁は、導波管301の内壁に接続されてもよく、または図3(c)に示すように、誘電体リング304の一つ以上の層の内壁が高周波フィード303の外壁に接続されてもよく、誘電体リングの残りの層における外壁が導波管301の内壁に接続されてもよい。
【0030】
導波路の断面における電磁場分布は、導波路の伝搬モードと称されることを理解されたい。様々な伝搬モードが様々なカットオフ波長を有しており、カットオフ波長のないモードまたは最長のカットオフ波長を有するモードは、ドミナントモードまたはベースモードと称され、より短いカットオフ波長を有する別のモードは高次モードと称される。伝搬モードのより高い次数は、より短いカットオフ波長を示す。本願のこの実施形態では、TE11モードはベースモードとして使用され、TE11モードのカットオフ波長よりも短いカットオフ波長を有する別のモードが高次モードと称される。
【0031】
本願のこの実施形態において提供される導波管は、円筒形、矩形管などの形状であってもよいことが理解されたい。第1の電磁波の基本モードのみが、導波管、高周波フィード、環状溝および誘電体リングを含む同軸デュアルバンドアンテナにおいて励起されるのであれば、第1の電磁波を出力するための口をわずかに広げてもよい。導波管の壁は通常金属製である。
【0032】
任意選択で、導波管301の内壁の半径と高周波フィード303の外壁との半径の合計は、第1の電磁波の波長の1/πより大きく、2つの半径の間の差は、第1の電磁波の波長の1/2未満であり、第1の電磁波の周波数は、高周波フィード303によって伝送される電磁波の周波数よりも低い。
【0033】
具体的には、本願での高周波フィード303および導波管301を含む同軸導波管が例として使用される。異なるモードでの第1の電磁波のカットオフ波長は、同軸導波管における内側導波路の外径a(高周波フィード303の外壁の半径)および外側導波路の内径b(導波管301の内壁の半径)に関連している。対応関係が表1に列挙される。
【0034】
【表1】
【0035】
第1の電磁波の波長がλである場合に、同軸導波路が(b+a)>λ/πおよび(b−a)<λ/2の条件を満たす場合、第1の電磁波がTE11モードを励起し得ることが表1から分かる。同軸導波路中のbがより大きくなり、その結果(b−a)>λ/2および(b+a)<2λ/πとなる場合、第1の電磁波は、理論的にはTE11、TMm1、TE01などのモードを励起し得る。しかしながら、電磁場モードが変化するときに連続的な接線成分は保証される必要があり、すなわち、mが一定となる必要がある。従って、2つのモード(TE11およびTM11)だけが実際には存在する。同軸導波路における外側導波路の内径bが増加するにつれて、より多くのモードが徐々に存在する。
【0036】
横電磁モードTEMがまた同軸導波路内に存在してもよく、カットオフ波長はこのモードにおいて存在しないか、またはこのモードにおけるカットオフ波長は無限に長いことが理解されたい。しかしながら、同軸デュアルバンドアンテナで励起される前に、TEMモードは対称的な給電方式で抑制される。従って、このモードは、本願のこの実施形態において考慮されていない。
【0037】
さらに、図4(a)に示すように、TE11モードのみが導波管内に存在し、導波管内におけるTE11モードの電場分布は非均一、すなわち第1の電磁波の電場分布が非均一である。従って、E面上の第1の電磁波のビーム幅は、H面上のビーム幅と一致していない。前述の問題に対して、本願のこの実施形態では、その開口方向が第1の電磁波の出力方向と同じである環状溝302が、導波管301の壁上で掘り出され、高次モードが導波管301の壁の不連続性を使用することにより励起され、高次モードは、TE11モードの電場分布を均一にするために使用される。環状溝302の深さおよび幅、ならびに環状溝302から導波管301の内壁までの距離はすべて、高次モードの次数および振幅に影響を及ぼす。
【0038】
任意選択で、環状溝302の半径と導波管301の内壁の半径との間の差は、第1の電磁波の波長の1/8である。環状溝302の深さは、第1の電磁波の波長の1/5から1/4の間であり、環状溝302の幅は、第1の電磁波の波長の1/8である。具体的には、導波管の出力端における壁面上にある位置で、導波管の内壁との距離が第1の電磁波の波長の1/8であり、その幅および深さが前述の要求を満たす環が、環状溝302を形成するために壁上で掘り出される。環状溝302は、壁の表面上に不連続性を生じさせて、それにより高次モードが励起される。環状溝302の位置、幅、および深さは、前述の要求を満たし、それにより適切な振幅を有する高次モードTM11を生成することができる。TM11モードの電場分布が図4(b)に示される。図4(c)に示すように、TE11モードおよびTM11モードが重なり合うことにより、第1の電磁波の電場分布は均一になる。結果として、E面上の第1の電磁波のビーム幅は、H面上のビーム幅と一致しており、ゲイン効果が最大化される。
【0039】
加えて、大開口のホーン形状導波路は、本願のこの実施形態では省略されている。従って、同軸デュアルバンドアンテナの特性インピーダンスおよび自由空間の波動インピーダンスは、導波菅の直径を徐々に大きくすることにより、導波管の出力端における特性インピーダンスを徐々に変化させることにより互いに一致することができなくなる。本願のこの実施形態において、インピーダンスマッチングは、以下の2つの方法で実施されてもよい。
【0040】
(1)導波管301と高周波フィード303との間に充填された誘電体リング304は、インピーダンスマッチングをとるために使用される。誘電体リング304は、多層構造を有しており、導波管301と同じ軸を有している。誘電体リング304の層における、および軸に垂直な平面の領域の大きさは交互に変化する。誘電体リング304の高さは、導波管301の高さよりも低い。誘電体リング304の構造は、図3(a)、図3(b)および図3(c)に示される任意の構造であり得る。
【0041】
インピーダンスマッチングの原理によれば、導波路の負荷インピーダンスおよび特性インピーダンスが一致しない場合、エネルギーが負荷に伝達されて、且つ後ろに反射されないことを保証するために、負荷と導波路との間にマッチングセクションが必要とされる。マッチングセクションの特性インピーダンスZが下記式を満たすとき、導波路の特性インピーダンスはマッチングセクションによって変換された後で負荷インピーダンスに等しくなる。
【0042】
【数1】
【0043】
は、導波路の特性インピーダンスであり、Rは、負荷インピーダンスである。
【0044】
本発明のこの実施形態において、負荷インピーダンスは自由空間の波動インピーダンスであり、導波路の特性インピーダンスは同軸デュアルバンドアンテナの特性インピーダンスである。導波管の特性インピーダンスは、導波管内に誘電体を充填することによって変えることができる。すなわち、充填された誘電体リングは、マッチングセクションを形成する。しかしながら、導波管が誘電体で完全に充填されると、導波管において、特性インピーダンスの突然の変化が誘電体と空気との間の接触面上で生じ、強い反射がある。
【0045】
本願で使用される誘電体リング304は、導波管301と高周波フィード303との間の隙間を完全に充填するものではなく、導波管301と同じ軸を有する多層構造を使用している。誘電体リング304の層における、および軸に垂直な平面の領域の大きさは交互に変化し、誘電体および空気の混合物を形成する。従って、等価比誘電率はもはや材料の比誘電率と等しくなく、制御および変更することができる。そのような制御および変更の目的は、マッチングセクションの特性インピーダンスを前述の式を用いて計算することにより得られた値に到達させることである。
【0046】
任意選択で、誘電体リング304の各層の高さは、第1の電磁波の波長の1/4であり、第1の電磁波は同軸デュアルバンドアンテナによって伝送される低周波電磁波である。
【0047】
任意選択で、図5(a)または図5(b)で示された構造において、誘電体リング304の二つの隣接する層のうちの一方のみの外壁が導波管301の内壁に接続され、誘電体リング304の層の内壁が高周波フィード303の外壁に接続されている。このようにして、誘電体リング304の多層の内壁は、高周波フィード303の外壁に接続され、誘電体リング304の多層の外壁は、導波管301の内壁に接続されている。これは、気密機能と防水機能を実現することができ、その間に高周波フィード303を固定することができる。結果として、同軸デュアルバンドアンテナは、衛星通信に適用できるだけでなく、地上でも適用可能である。導波管301および高周波フィード303の双方に接続されている誘電体リングの層以外での、誘電体リング304の他の層における内壁と外壁との間の間隔は、前述の等価誘電率の原理に従って設計および最適化される必要がある。
【0048】
任意選択で、誘電体リング304の、および導波管301の出力面から最も遠い層は、第1の電磁波の反射を低減するために、導波管301および高周波フィード303に同時に接続されていない。誘電体リングの、および出力面から最も遠い層は、図5(a)および図5(b)に示される誘電体リングの下部層である。
【0049】
比誘電率が2から4の間の誘電体材料、例えば、ポリカーボネート、ポリスチレン、およびポリテトラフルオロエチレンが本願のこの実施形態における誘電体リングに対して使用されてもよい。本願のこの実施形態において、特定の材料は限定されない。
【0050】
材料が決定された後で、誘電体リング304の各層における内壁と外壁との間の間隔は、第1の電磁波の波長にさらに関連している。以下は、第1の電磁波の周波数が18GHzである特定の実施形態を提供する。比誘電率が2.8であるポリカーボネートが誘電体リングを準備するために使用され、導波管の内壁の半径がRであり、誘電体リングが6つの層を有すると仮定する。図5(a)に示すように、誘電体リングの層の半径の長さは、上から下に交互に変化し、誘電体リングの第1の層、第3の層および第5の層の外壁の半径はRであり、誘電体リングの第2の層における外壁の半径は0.78Rであり、誘電体リングの第4の層における外壁の半径は0.7Rであり、誘電体リングの第6層における外壁の半径は0.7Rである。マッチングセクションの特性インピーダンスは、前述のサイズを有する誘電体リングを用いることで式(1)を満たすことができ、同軸デュアルバンドアンテナの特性インピーダンスおよび自由空間の波動インピーダンスが互いにマッチングし、電磁波の反射が低減され、放射効率が改善される。
【0051】
(2)インピーダンスマッチングを実現するために、導波管内に複数の金属リング601を配置する。金属リングはマッチングセクションを形成する。可能な構造が図6(a)に示されており、各金属リング601の内壁は、高周波フィード303の外壁に接続されている。各金属リング601の半径および金属リング601間の間隔を変えることにより、各金属リング601の等価インダクタンスおよび等価静電容量を変えることができ、それにより、マッチングセクションの特性インピーダンスは、式(1)を用いる計算により得られた値に達する。
【0052】
任意選択で、誘電体層602が、導波管301の内側で、出力面に近い位置でさらに充填されてもよい。図6(b)に示すように、誘電体層602の内壁は高周波フィード303の外壁に接続され、誘電体層602の外壁は導波管301の内壁に接続されている。これは気密機能および防水機能を実現することができ、且つ高周波フィードを固定することができる。硬質材料が誘電体層602に対して使用されてもよく、特定の材料は本願において限定されない。
【0053】
図6(a)および図6(b)は本願のこの実施形態における可能な構造のみを示していることを理解されたい。図7(a)および図7(b)に示すように、金属リング601の外壁は、マッチングセクションを形成するために導波管301の内壁に接続されてもよい。あるいは、図8(a)および図8(b)に示すように、マッチングセクションを形成するために、いくつかの金属リング601の外壁が導波管301の内壁に接続され、他の金属リング601の内壁が高周波フィード303の外壁に接続されている。本願のこの実施形態において、特定の実施形態に限定されない。
【0054】
本願において提供される同軸デュアルバンドアンテナは、以下の利点を有している。導波管301は、第1の電磁波のTE11モードを低周波数で励起し、高次モードは導波管301の内部で生成されない。これは、導波管301内の高次モードの伝送損失を回避し、デュアルバンドアンテナの低周波放射効率を改善する。加えて、高次モードが導波管301の内部で生成されないので、導波管301内に位置する高周波フィード303が高次モードの電磁場分布に影響を与えることを心配する必要がない。従って、誘電体ピンを省略することができ、デュアルバンドアンテナの高周波放射効率を改善することができる。加えて、環状溝302および誘電体リング304の設計に従い、E面上の第1の電磁波のビーム幅は、H面上のビーム幅と一致することができ、同軸デュアルバンドアンテナの特性インピーダンスおよび自由空間の波動インピーダンスは互いにマッチングすることができる。
【0055】
前述の説明は、本願の単なる特定の実施形態であるが、本願の保護範囲を限定することを意図するものではない。本願で開示された技術的範囲内で当業者によって容易に考え出されるいかなる変形または置換も、本願の保護範囲内に入るものとする。従って、本願の保護範囲は特許請求の範囲の保護範囲に従うものとする。
【符号の説明】
【0056】
201 低周波フィード
202 高周波フィード
203 誘電体ピン
301 導波管
302 環状溝
303 高周波フィード
304 誘電体リング
601 金属リング
602 誘電体層
図1
図2
図3(a)】
図3(b)】
図3(c)】
図4(a)】
図4(b)】
図4(c)】
図5(a)】
図5(b)】
図6(a)】
図6(b)】
図7(a)】
図7(b)】
図8(a)】
図8(b)】