(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6707281
(24)【登録日】2020年5月22日
(45)【発行日】2020年6月10日
(54)【発明の名称】織物管の接続方法
(51)【国際特許分類】
F16L 21/00 20060101AFI20200601BHJP
E02D 29/02 20060101ALI20200601BHJP
D03D 1/00 20060101ALI20200601BHJP
D03D 3/02 20060101ALI20200601BHJP
D03D 15/02 20060101ALI20200601BHJP
D03D 15/00 20060101ALI20200601BHJP
E02D 17/20 20060101ALI20200601BHJP
F16B 4/00 20060101ALI20200601BHJP
F16B 7/20 20060101ALI20200601BHJP
F16L 11/02 20060101ALN20200601BHJP
【FI】
F16L21/00 E
E02D29/02 312
D03D1/00 Z
D03D3/02
D03D15/02 B
D03D15/00 G
D03D15/00 D
E02D17/20 106
F16B4/00 A
F16B4/00 J
F16B7/20 Z
!F16L11/02
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-12959(P2016-12959)
(22)【出願日】2016年1月27日
(65)【公開番号】特開2017-133576(P2017-133576A)
(43)【公開日】2017年8月3日
【審査請求日】2018年12月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000117135
【氏名又は名称】芦森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082027
【弁理士】
【氏名又は名称】竹安 英雄
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 京太郎
(72)【発明者】
【氏名】平子 健志朗
【審査官】
岩▲崎▼ 則昌
(56)【参考文献】
【文献】
特開2017−75410(JP,A)
【文献】
特開2009−261744(JP,A)
【文献】
特開2007−71385(JP,A)
【文献】
特公昭52−13545(JP,B1)
【文献】
中国実用新案第2630608(CN,Y)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 21/00
D03D 1/00
D03D 3/02
D03D 15/00
D03D 15/02
E02D 17/20
E02D 29/02
F16B 4/00
F16B 7/20
F16L 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状に配置されたたて糸(2)と、当該たて糸(2)に対して螺旋状に織り込まれた合成樹脂の剛直なモノフィラメントよりなるよこ糸(3)とを織成してなる織物管(1)の接続方法であって、接続される一方の織物管(1a)の一端を、その外径が他の部分の内径より若干小さくなるまで縮小し、その縮小した端末を他方の織物管(1b)の一端に挿入し、当該他方の織物管(1b)の一端部を加熱して前記よこ糸(3)を収縮せしめることを特徴とする、織物管の接続方法
【請求項2】
前記たて糸(2)の一部が低融点たて糸(2a)よりなり、織物管(1)を加熱して前記低融点たて糸(2a)を溶融せしめることにより織物管(1)を長さ方向に剛直化せしめていることを特徴とする、請求項1に記載の織物管の接続方法
【請求項3】
前記低融点たて糸(2a)が、高融点の合成樹脂よりなる芯部(5)と、該芯部(5)の周囲を取り巻いた低融点の合成樹脂よりなる鞘部(6)とよりなる、芯鞘型繊維(4)よりなることを特徴とする、請求項2に記載の織物管の接続方法
【請求項4】
前記一方の織物管(1a)の一端を加熱して、よこ糸(3)を収縮せしめることにより、その外径が他の部分の内径より若干小さくなるまで縮小していることを特徴とする、請求項1に記載の織物管の接続方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は崖地などにおいて、土中に含まれた水を集めて抜くための集排水管として使用される織物管を、長さ方向に接続するための方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
崖地などにおいて土中に水を多量に含んでいると、地滑りや崖崩れなどの災害を生じる恐れがあり、当該土中に含まれた水を集めて、崖地などの外部に排除することが必要とされる。
【0003】
このための集排水管として、実開昭54−98010号公報に記載されているように、金属線又は硬質合成樹脂の線材をよこ糸とし、通常の軟質繊維をたて糸として織成した筒状織布を使用することが考えられている。
【0004】
当該筒状織布を前記水抜き用の管体として水を含んだ土中に敷設し、当該筒状織布の布目の間から土中の水を筒状織布の内部に集め、筒状織布の中を通して崖地などの外部に排出するとするものである。
【0005】
この方法では筒状織布を使用するため、前記硬質ポリ塩化ビニルの管に比べると柔軟であり、これを巻回した状態で運搬することができるので、比較的長い筒状織布を敷設することが可能である。
【0006】
しかしながらかかる長い筒状織布を土中に穿設した敷設孔に押し込もうとすると、敷設孔の外から筒状織布を押し込むこととなり、筒状織布自体が比較的柔軟であり、しかも運搬のときの巻回癖がついているため、筒状織布が敷設孔内に引っ掛かり、高々数メートル程度の距離しか押し込むことができない。
【0007】
前述のような水を含んだ土中に水抜き管を敷設する場合には、数十メートル程度の長さに亙って敷設することが好ましく、前記特許文献に記載された方法ではこのような長い範囲に敷設することができない。
【0008】
かかる事情に鑑み出願人は、たて糸の少なくとも一部が低融点糸よりなり、よこ糸の少なくとも一部が剛性の高いモノフィラメントよりなる織物管を発明し(特願2015−200351号)、これを加熱して低融点糸を溶融した後冷却し、剛直化しながら崖地に押し込むことを考えた。
【0009】
前記発明の織物管は、土中に埋設した状態においては、集排水管としての性能に優れているのであるが、これを作業現場において加熱したり冷却したりして敷設するために、多大の労力を要し、傾斜地などにおいては現場作業に向いていなかった。
【0010】
そこで前記織物管を予め加熱して剛直化しておくことを考えたが、それでは長尺のものを一体のものとして取り扱うことができず、短尺に裁断しなければトラックなどで運搬することができない。
【0011】
また
図5に示すように、織物管1を短尺に裁断して、それを接続部10において接続して長くしながら崖地11に穿設した敷設孔12に押し込むことも考えられるが、これを敷設孔12に押し込むときに、敷設孔12内に引っ掛かり、押し引きを繰り返さざるを得ないことも少なくなく、そのようなときに接続部10が抜けると、先の方が崖地11内に取り残されてしまい、その敷設孔12を使用できなくなる恐れもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】実開昭54−98010号公報
【特許文献2】特願2015−200351号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明はかかる事情に鑑みなされたものであって、前記織物管を作業現場において容易に且つ強固に接続し、長尺の一体の織物管として取り扱うことができる方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
而して本発明は、環状に配置されたたて糸と、当該たて糸に対して螺旋状に織り込まれた合成樹脂の剛直なモノフィラメントよりなるよこ糸とを織成してなる織物管の接続方法であって、接続される一方の織物管の一端を、その外径が他の部分の内径より若干小さくなるまで縮小し、その縮小した端末を他方の織物管の一端に挿入し、当該他方の織物管の一端部を加熱して前記よこ糸を収縮せしめることを特徴とするものである。
【0015】
本発明においては、前記たて糸の一部が低融点たて糸よりなり、織物管を加熱して前記低融点たて糸を溶融せしめることにより、当該織物管を長さ方向に剛直化せしめていることが好ましい。
【0016】
前記低融点たて糸としては、高融点の合成樹脂よりなる芯部と、該芯部の周囲を取り巻いた低融点の合成樹脂よりなる鞘部とよりなる、芯鞘型繊維よりなるものであることが好ましい。
【0017】
また本発明においては、前記一方の織物管の一端を加熱して、よこ糸を収縮せしめることにより、その外径が他の部分の内径より若干小さくなるまで縮小していることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、一方の織物管の一端をその外径が他の部分の内径より若干小さくなるまで縮小し、その縮小した端末を他方の織物管の一端に挿入し、当該他方の織物管の一端部を加熱して前記よこ糸を収縮せしめるので、当該他方の織物管の端末が前記一方の織物管の端末を締め付け、強固に固定することができる。
【0019】
特に本発明においては、織物管のよこ糸が剛直なモノフィラメントよりなっているので、前記他方の織物管のよこ糸のモノフィラメントが熱収縮によりその内側の前記一方の織物管を締め付け、織物管の凹凸が互いに食い込むことにより、織物管同士が強固に固定されるのである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図4】芯鞘型低融点糸の横断面図であって、(a)は通常状態、(b)は加熱した状態を示す。
【
図5】本発明により接続された織物管の使用状態を示す中央縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下本発明を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の工程を示すものであって、(a)は接続される織物管1の端部を示し、(b)はその端部を結合した状態、(c)はその端部を確実に接続した状態を示す。
【0022】
而して本発明における織物管1は、
図2に示すようなものであって、環状に配置されたたて糸2と、当該たて糸2に対して螺旋状に織り込まれた合成樹脂の剛直なモノフィラメントよりなるよこ糸3とを織成してなっている。そして前記たて糸2としては、低融点糸よりなる低融点たて糸2aと、通常の糸条よりなる通常たて糸2bとが、数本ずつ交互に配置されている。
【0023】
前記低融点たて糸2aを構成する低融点糸は、
図4(a)に示すように高融点の合成樹脂よりなる芯部5と、該芯部5の周囲を取り巻いた低融点の合成樹脂よりなる鞘部6とよりなる、芯鞘型繊維4よりなるものを使用するのが好ましい。かかる芯鞘型繊維4としては、ユニチカファイバー株式会社製の、商品名コルネッタとして市販されているものが知られている。
【0024】
そしてこの芯鞘型繊維4を加熱して低融点の合成樹脂よりなる鞘部6が溶融すると、
図4(b)に示すように溶融した鞘部6が合体して一体化するため、芯鞘型繊維4同士が一体化して、低融点糸は芯鞘型繊維4同士の融通が利かなくなり、糸条として剛直なものとなる。
【0025】
而してこの織物管1は、
図2の状態においては、低融点たて糸2aも通常たて糸2bも共に通常の糸条として挙動するので、通常の筒状の織布と同様であって、よこ糸3がモノフィラメントよりなっているので扁平に折り畳むことはできないものの、相当程度の柔軟性を有している。
【0026】
そしてこの織物管1を、前記低融点糸の融点よりもわずかに高い温度に加熱すると、
図3に示すように、低融点たて糸2aにおける低融点糸が一部溶融して隣接する低融点たて糸2aと合体する。
【0027】
なおこのとき、低融点たて糸2aは完全に溶融してドロドロの状態になるわけではなく、低融点たて糸2aを構成する単繊維が部分的に溶融し、隣接する単繊維と融着し、さらによこ糸3とも部分的に融着する。
【0028】
また低融点糸が前述の芯鞘型繊維4よりなるものである場合には、鞘部6の合成樹脂の融点より高い温度に加熱することにより、
図4(b)に示すように鞘部6が溶融して合体する。このときの温度は芯部5の合成樹脂の融点より低いので、芯部5は溶融することはない。
【0029】
次いで加熱していた織物管1を冷却すると、溶融していた低融点たて糸2aは隣接する低融点たて糸2aと合体した状態で固化し、低融点たて糸2aが集まった部分は一体化し、剛直化する。
【0030】
低融点糸が前記芯鞘型繊維4よりなる場合においても、鞘部6の合成樹脂は互いに合体した状態のままで固化する。これにより鞘部6の合成樹脂は全体として一体となり、芯鞘型繊維4の柔軟性は失われ、織物管1は剛直化する。
【0031】
本発明においては、この剛直化した織物管1を使用するのである。織物管1は剛直であるため、崖地の敷設孔に押し込むのは容易であるが、その反面運搬には短く切らなければならず、その短尺の織物管1を接続する必要があるのである。
【0032】
而して本発明においては、
図1(a)に示すように、一方の織物管1aの一端をその外径が他の部分の内径より若干小さくなるまで縮小して、縮小部7を形成している。この織物管1aの一端の径を縮小する方法としては、最初からその端部の径を小さくなるように織成することもできるが、当該端部を加熱してよこ糸3のモノフィラメントを熱収縮せしめ、それによって径を縮小するのが好ましい。
【0033】
この織物管1aのたて糸2の一部が低融点たて糸2aであるときには、前記端部を加熱するときに低融点糸も溶融するが、それ以外の通常たて糸2bもあるため、当該通常たて糸2bは溶融することなくたて糸としての役目を果たすことができる。また低融点たて糸2aが前記芯鞘型繊維4よりなるものであるときには、当該芯鞘型繊維4における芯部5も溶融することなく、強度を保っている。
【0034】
そして
図1(b)に示すように、この一方の織物管1aの端末の縮小部7を、他方の織物管1bの一端内に挿入し、当該他方の織物管1bの一端部を加熱し、当該他方の織物管1bのよこ糸3のモノフィラメントを縮小せしめ、これによって
図1(c)に示すように、当該他方の織物管1bの径を縮小せしめ、前記一方の織物管1aを締め付けて接続するのである。
【0035】
このとき
図1(c)に示すように、織物管1のよこ糸3が剛直なモノフィラメントであり、そのモノフィラメントによる凹凸が織物管1の内外面に現れており、その凹凸が噛み合い且つ他方の織物管1bのよこ糸が前記一方の織物管1aを締め付けることにより、両織物管1が抜けることなく接続されるのである。
【0036】
本発明により接続した織物管1について接続部10の両側から引っ張り試験をしたところ、接続部10において織物管1同士が抜けることなく、接続部10以外の部分において織物管1が破断した。
【0037】
なお本発明において織物管1の一端部の径を縮小せしめるのは、作業現場において縮小することも可能ではあるが、加熱の程度を設定して径を正確に縮小せしめるためには、織物管1を出荷する前に工場において径を縮小せしめるのが好ましい。
【0038】
また作業現場において他方の織物管1bの端末を加熱して縮小せしめる方法は、特に限定されるものではないが、通常のバーナー又はドライヤーなどを使用して加熱するのが適当である。
【0039】
本発明によれば、織物管1が剛直な状態で作業現場に供給され、当該作業現場で接続しながら敷設孔12内に押し込むことができるので、数十メートルに及ぶ織物管1を敷設孔12内に敷設することができる。
【0040】
しかも本発明によれば、織物管1の内外面の凹凸が強固に噛み合った状態で接続され、しかも前述のように織物管1が破断するまでその接続部10が抜けることがないので、織物管1が敷設孔12内に引っ掛かって織物管1を押し引きを繰り返すことになったとしても、それによって接続部10が抜けることがなく、十分に奥まで織物管1を挿入することが可能である。
【符号の説明】
【0041】
1 織物管
2 たて糸
3 よこ糸
4 芯鞘型繊維
5 芯部
6 鞘部
7 縮小部
10 接続部
11 崖地
12 敷設孔