特許第6707289号(P6707289)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6707289
(24)【登録日】2020年5月22日
(45)【発行日】2020年6月10日
(54)【発明の名称】選択還元型触媒の再生方法
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/20 20060101AFI20200601BHJP
   F01N 3/08 20060101ALI20200601BHJP
   F02D 41/04 20060101ALI20200601BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20200601BHJP
【FI】
   F01N3/20 E
   F01N3/08 B
   F02D41/04 380Z
   F02D41/04 385Z
   F02D41/04 375
   B01D53/94 222
   B01D53/94 400
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-185125(P2016-185125)
(22)【出願日】2016年9月23日
(65)【公開番号】特開2018-48603(P2018-48603A)
(43)【公開日】2018年3月29日
【審査請求日】2019年6月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000512
【氏名又は名称】特許業務法人山田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】南川 仁一
(72)【発明者】
【氏名】丑久保 聡
(72)【発明者】
【氏名】林 孝次
【審査官】 二之湯 正俊
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−041437(JP,A)
【文献】 特開2015−105633(JP,A)
【文献】 特開2013−002314(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/00− 3/38
F01N 9/00−11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素共存下でも選択的にNOxをアンモニアと反応させる性質を備えた選択還元型触媒をHC被毒から再生する方法であって、排気ガス中に残存するHC分の選択還元型触媒に対する蓄積量を重質分と軽質分とに分けて個別に推定し、その推定された重質分の蓄積量及び軽質分の蓄積量について夫々設定された閾値に対し何れか一方の蓄積量が到達した時に前記選択還元型触媒が再生を要するHC被毒の状態にあると判定し、その判定に基づいて排気温度を所定のHC脱離温度以上に高める昇温制御を実施することを特徴とする選択還元型触媒の再生方法。
【請求項2】
HC分における重質分の蓄積量及び軽質分の蓄積量を個別に推定するにあたり、エンジンの運転状態に基づき排気ガス中におけるHC分の残存量を求め、該残存量のうちに占める重質分及び軽質分の比率に基づき重質分及び軽質分の生成量を求め、これら重質分及び軽質分の生成量から排気温度に対する夫々の吸着率の特性に基づき重質分及び軽質分の吸着量を求める一方、排気温度に対する重質分及び軽質分の脱離量の脱離率の特性に基づき夫々の脱離量を求め、前記重質分及び軽質分の吸着量から夫々の脱離量を個別に減算することで単位時間当たりの重質分及び軽質分の蓄積量を求めて単位時間毎に積算することを特徴とする請求項1に記載の選択還元型触媒の再生方法。
【請求項3】
昇温制御の実施後に重質分及び軽質分の蓄積量の何れもが所定の許容量以下まで低下するのを待って再生完了を判定し、その再生完了の判定に伴い昇温制御を終了することを特徴とする請求項1又は2に記載の選択還元型触媒の再生方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、選択還元型触媒の再生方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ディーゼルエンジンにおいては、排気ガスが流通する排気管の途中に、酸素共存下でも選択的にNOx(窒素酸化物)を還元剤と反応させる性質を備えた選択還元型触媒を装備し、該選択還元型触媒の上流側に必要量の還元剤を添加して該還元剤を選択還元型触媒上で排気ガス中のNOxと還元反応させ、これによりNOxの排出濃度を低減し得るようにしたものがある。
【0003】
他方、プラント等における工業的な排煙脱硝処理の分野では、還元剤にアンモニア(NH3)を用いてNOxを還元浄化する手法の有効性が既に広く知られているところであるが、自動車の場合には、アンモニアそのものを搭載して走行することに関し安全確保が困難であるため、近年においては、尿素水を還元剤として使用することが提案されている。
【0004】
即ち、排気管の途中(一般的には終端付近)に選択還元型触媒を介装し、その入側に備えた尿素水添加弁により排気ガスの流れに尿素水を添加すると、該尿素水がアンモニアと炭酸ガスに分解され、選択還元型触媒上で排気ガス中のNOxがアンモニアにより良好に還元浄化されることになる。
【0005】
一般的に、この種の尿素水を還元剤とする選択還元型触媒には、NOx浄化率の高いゼオライト系の選択還元型触媒が広く用いられているが、排気ガス中に含まれる未燃のHC分が表面に吸着し易いという性質があり、その蓄積量が増えて選択還元型触媒がHC被毒された状態になると、触媒機能が低下して所望のNOx浄化率を得ることが難しくなる。
【0006】
ただし、このような選択還元型触媒のHC被毒は、高負荷運転時に高温の排気ガスが選択還元型触媒に流れ込むことによりHCが脱離して解消されることが判っており、これまで積極的な選択還元型触媒のHC被毒を回復する対策は特に施されていないのが実情である。
【0007】
尚、このように尿素水を還元剤とする選択還元型触媒を用いた選択還元型触媒の再生方法に関連する先行技術文献情報としては下記の特許文献1等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−161732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、混雑した市街地ばかりを走行しているような運行形態の車両等では、高負荷運転に至らずに長時間にわたり中負荷以下の運転が続いてしまうことがあり、選択還元型触媒がHC被毒により機能低下したまま回復しないことで必要なNOx低減性能を発揮できない虞れがあった。
【0010】
本発明は上述の実情に鑑みてなしたもので、選択還元型触媒を大幅な機能低下を招く前にHC被毒の状態から回復し得る選択還元型触媒の再生方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、酸素共存下でも選択的にNOxをアンモニアと反応させる性質を備えた選択還元型触媒をHC被毒から再生する方法であって、排気ガス中に残存するHC分の選択還元型触媒に対する蓄積量を重質分と軽質分とに分けて個別に推定し、その推定された重質分の蓄積量及び軽質分の蓄積量について夫々設定された閾値に対し何れか一方の蓄積量が到達した時に前記選択還元型触媒が再生を要するHC被毒の状態にあると判定し、その判定に基づいて排気温度を所定のHC脱離温度以上に高める昇温制御を実施することを特徴とするものである。
【0012】
而して、このようにすれば、選択還元型触媒に対しそれほど吸着し易くないものの高温でもなかなか脱離しない性質の重質分と、選択還元型触媒に対し吸着し易いものの高温で容易に脱離する性質の軽質分とにHC分が分けられて個別に蓄積量が推定され、その推定された重質分の蓄積量及び軽質分の蓄積量について夫々設定された閾値に対し何れか一方の蓄積量が到達した時に選択還元型触媒が再生を要するHC被毒の状態にあると直ちに判定され、該選択還元型触媒が大幅な機能低下を招く前に昇温制御が実施されて選択還元型触媒の床温度がHC脱離温度以上に高められ、該選択還元型触媒に吸着していたHCが脱離してHC被毒が解消されることになる。
【0013】
また、本発明をより具体的に実施するにあたっては、HC分における重質分の蓄積量及び軽質分の蓄積量を個別に推定するに際し、エンジンの運転状態に基づき排気ガス中におけるHC分の残存量を求め、該残存量のうちに占める重質分及び軽質分の比率に基づき重質分及び軽質分の生成量を求め、これら重質分及び軽質分の生成量から排気温度に対する夫々の吸着率の特性に基づき重質分及び軽質分の吸着量を求める一方、排気温度に対する重質分及び軽質分の脱離量の脱離率の特性に基づき夫々の脱離量を求め、前記重質分及び軽質分の吸着量から夫々の脱離量を個別に減算することで単位時間当たりの重質分及び軽質分の蓄積量を求めて単位時間毎に積算すると良い。
【0014】
更に、本発明においては、昇温制御の実施後に重質分及び軽質分の蓄積量の何れもが所定の許容量以下まで低下するのを待って再生完了を判定し、その再生完了の判定に伴い昇温制御を終了することが好ましく、このようにすれば、より確実に選択還元型触媒のHC被毒の解消が見極められると共に、昇温制御が過不足のない適切な継続時間で実施されることになる。
【発明の効果】
【0015】
上記した本発明の選択還元型触媒の再生方法によれば、下記の如き種々の優れた効果を奏し得る。
【0016】
(I)本発明の請求項1、2に記載の発明によれば、選択還元型触媒が大幅な機能低下を招く前に昇温制御を実施してHC被毒の状態から回復させることができるので、高負荷運転に至らずに長時間にわたり中負荷以下の運転が続いてしまうような運行形態の車両であっても、選択還元型触媒がHC被毒により機能低下したまま回復しない事態を確実に回避してNOx低減性能を極力高く維持することができ、しかも、選択還元型触媒の再生タイミングを適切に見極めて効率的な再生を図ることができる。
【0017】
(II)本発明の請求項3に記載の発明によれば、より確実に選択還元型触媒のHC被毒の解消を見極めることができて効果的なNOx低減性能の回復を図ることができ、しかも、昇温制御を過不足のない適切な継続時間で実施することができて昇温制御に伴う燃費の悪化を極力低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明を実施する形態の一例を示す概略図である。
図2】軽負荷運転時での重質分と軽質分の蓄積量の推移を示すグラフである。
図3】中負荷運転時での重質分と軽質分の蓄積量の推移を示すグラフである。
図4図1の制御装置における制御手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0020】
図1は本発明を実施する形態の一例を示すもので、排気管1途中に介装したケーシング2内に、酸素共存下でも選択的にNOxをアンモニアと反応させる性質を備えたゼオライト系の選択還元型触媒3を収容し、前記ケーシング2の入側に設けた尿素水添加弁4により排気ガス5の流れに尿素水を還元剤として添加し得るように構成してある。
【0021】
ここで、前記尿素水添加弁4における尿素水の噴射は、制御装置6によりエンジン7の運転状態に基づいて制御されるようになっており、より具体的には、エンジン7の運転状態に基づいて求められたNOxの発生量に見合う尿素水の噴射量が指示されるようになっている。
【0022】
また、ここに図示している例においては、前記尿素水添加弁4より上流の排気管1に酸化触媒8がケーシング9に抱持されて装備されており、この酸化触媒8により排気ガス5中のNOのNO2への酸化反応を促すことで選択還元型触媒3におけるNOx浄化反応の効率を向上し得るようにしてある。
【0023】
尚、この種の酸化触媒8にあっては、排気ガス5中に残存するHC分を酸化処理する能力も備えているが、高負荷運転に至らずに長時間にわたり中負荷以下の運転が続いてしまうケースでは、酸化触媒8の床温度が活性温度まで高まらないためにHC分が未反応のまま通過して選択還元型触媒3に吸着されてしまうことになる。
【0024】
既に背景技術についての説明の中で述べてある通り、このような選択還元型触媒3へのHC分の吸着は、該選択還元型触媒3にHC被毒を招いてNOx低減性能を低下させてしまうことになるため、本形態例にあっては、エンジン7の運転状態に基づき選択還元型触媒3のHC被毒を判定し、その判定に基づいて排気温度を所定のHC脱離温度以上に高める昇温制御を実施するようにしている。
【0025】
ただし、本発明者らは、排気ガス5中に残存するHC分の選択還元型触媒3に対する蓄積量を単一のマップから読み出すという安易な手法で精度の高い推定を行えないことを既に知見として得ており、その要因がHC分に重質分と軽質分とが混在しているためであることを見いだしている。
【0026】
即ち、本発明で言うところの重質分と軽質分は、本発明者らが夫々の特徴的な性質に着目して便宜上定義したものであり、HC分中で重質分として定義されるものは、選択還元型触媒3に対し時間が経過してもそれほど吸着していかない性質を持つ反面、かなり高い温度まで上がらないと脱離していかない性質を持つものであり、また、軽質分として定義されるものは、選択還元型触媒3に対し時間の経過と共にどんどん吸着していく性質を持つ反面、それほど高い温度まで上がらないうちに容易に脱離していく性質を持つものである。尚、どの程度の脱離温度を目安としてHC分を重質分と軽質分とに区分けするかについては、後述する選択還元型触媒3の再生方法を実施した結果から、より効率的な再生結果が得られるような脱離温度の目安を予備実験等に基づき任意に設定することが可能である。
【0027】
このため、図2に示す如く、排気温度の低い軽負荷運転時にあっては、運転時間の経過と共に軽質分の方が重質分より先行して蓄積量が増加し、比較的早い段階で軽質分の蓄積量が閾値(軽質分について設定された選択還元型触媒3の再生が必要なレベルの被毒状態となる蓄積量)に到達することになる。
【0028】
一方、図3に示す如く、排気温度が低い軽負荷運転時よりも高い中負荷運転時にあっては、軽質分の脱離量が吸着量を上まわる温度帯も存在することから運転時間が経過しても蓄積量が減ることもあり、なかなか脱離していかない重質分だけが確実に吸着し続けて比較的遅い段階で重質分の蓄積量が閾値(重質分について設定された選択還元型触媒3の再生が必要なレベルの被毒状態となる蓄積量)に到達することになる。
【0029】
このように軽負荷運転時と中負荷運転時とでは、選択還元型触媒3が再生の必要なレベルの被毒状態となるタイミングが異なるため、HC分の選択還元型触媒3に対する蓄積量を単一のマップから読み出すという安易な手法では、選択還元型触媒3が再生を要するHC被毒の状態にあるか否かを高い精度で判定することはできない。
【0030】
そこで、本形態例にあっては、図4にフローチャートで示す如く、排気ガス5中に残存するHC分の選択還元型触媒3に対する蓄積量を重質分と軽質分とに分けて個別に推定し、その推定された重質分の蓄積量及び軽質分の蓄積量について夫々設定された閾値に対し何れか一方の蓄積量が到達した時に前記選択還元型触媒3が再生を要するHC被毒の状態にあると判定し、その判定に基づいて排気温度を所定のHC脱離温度(重質分も軽質分も円滑に脱離していく温度)以上に高める昇温制御を実施するようにしている。
【0031】
このようなHC被毒の判定から昇温制御の実施までの行程は制御装置6で実行することができ、例えば、排気ガス5中に残存するHC分の選択還元型触媒3に対する蓄積量を重質分と軽質分とに分けて個別に推定するにあたっては、制御装置6に取り込まれるエンジン7の運転状態を示す燃料噴射量やエンジン回転数、排気温度等の各種情報に基づき排気ガス5中におけるHC分の残存量を求め、前記残存量のうちに占める重質分及び軽質分の比率に基づき重質分及び軽質分の生成量を求め、これら重質分及び軽質分の生成量から排気温度に対する夫々の吸着率の特性に基づき重質分及び軽質分の吸着量を求める一方、排気温度に対する重質分及び軽質分の脱離量の脱離率の特性に基づき夫々の脱離量を求め、前記重質分及び軽質分の吸着量から夫々の脱離量を個別に減算することで単位時間当たりの重質分及び軽質分の蓄積量を求めて単位時間毎に積算すれば良く、この重質分及び軽質分の蓄積量を求める一連の計算行程は、少なくとも一部をマップ化して読み出すようにしても良いし、重質分と軽質分について夫々計算モデルを作成して算出するようにしても良い。
【0032】
そして、重質分の蓄積量及び軽質分の蓄積量について夫々設定された閾値に対し何れか一方の蓄積量が到達し、前記選択還元型触媒3が再生を要するHC被毒の状態にあると判定された後に、排気温度を所定のHC脱離温度以上に高める昇温制御を実施するにあたっては、例えば、制御装置6によりエンジン7に対し燃料のメイン噴射直後の燃焼可能なタイミングでアフタ噴射を追加するように燃料噴射制御を実施し、これにより排気温度を高めて酸化触媒8の床温度を活性温度まで高めた上、燃料のメイン噴射に続いて圧縮上死点より遅い非着火のタイミングでポスト噴射を追加するように燃料噴射制御を実施し、これにより排気ガス5中に燃料を添加して前記酸化触媒8で酸化反応を起こさせることで排気温度の更なる上昇を図るようにすれば良い。
【0033】
尚、ここでは既存のエンジン7の燃料噴射系と酸化触媒8とを利用して昇温制御を行う場合について例示しているが、電気ヒータやバーナ等を選択還元型触媒3の上流側に別途備えて排気温度を上げる手段として活用するようにしても良く、これら以外にも様々な排気温度の昇温手段を利用することが可能である。
【0034】
更に、前述の如き昇温制御は、過不足のない適切な継続時間で実施する必要があるが、本形態例においては、昇温制御により重質分及び軽質分の脱離量が大幅に増加することで低下してくる夫々の蓄積量を制御装置6で監視し、昇温制御の実施後に重質分及び軽質分の蓄積量の何れもが所定の許容量以下まで低下するのを待ってから再生完了を判定し、その再生完了の判定に伴い昇温制御を終了するようにしている(図4のフローチャート参照)。
【0035】
而して、このようにすれば、選択還元型触媒3に対しそれほど吸着し易くないものの高温でもなかなか脱離しない性質の重質分と、選択還元型触媒3に対し吸着し易いものの高温で容易に脱離する性質の軽質分とにHC分が分けられて個別に蓄積量が推定され、その推定された重質分の蓄積量及び軽質分の蓄積量について夫々設定された閾値に対し何れか一方の蓄積量が到達した時に選択還元型触媒3が再生を要するHC被毒の状態にあると直ちに判定され、該選択還元型触媒3が大幅な機能低下を招く前に昇温制御が実施されて選択還元型触媒3の床温度がHC脱離温度以上に高められ、該選択還元型触媒3に吸着していたHCが脱離してHC被毒が解消されることになる。
【0036】
従って、上記形態例によれば、選択還元型触媒3が大幅な機能低下を招く前に昇温制御を実施してHC被毒の状態から回復させることができるので、高負荷運転に至らずに長時間にわたり中負荷以下の運転が続いてしまうような運行形態の車両であっても、選択還元型触媒3がHC被毒により機能低下したまま回復しない事態を確実に回避してNOx低減性能を極力高く維持することができ、しかも、選択還元型触媒3の再生タイミングを適切に見極めて効率的な再生を図ることができる。
【0037】
更に、本形態例においては、昇温制御の実施後に重質分及び軽質分の蓄積量の何れもが所定の許容量以下まで低下するのを待って再生完了を判定し、その再生完了の判定に伴い昇温制御を終了するようにしているので、より確実に選択還元型触媒3のHC被毒の解消を見極めることができて効果的なNOx低減性能の回復を図ることができ、しかも、昇温制御を過不足のない適切な継続時間で実施することができて昇温制御に伴う燃費の悪化を極力低減することができる。
【0038】
尚、本発明の選択還元型触媒の再生方法は、上述の形態例にのみ限定されるものではなく、昇温制御については、走行中に自動的に実施されるようにしても良いし、アイドリング停車状態にて手動で実施するようにしても良いこと、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0039】
3 選択還元型触媒
5 排気ガス
7 エンジン
図1
図2
図3
図4