(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6707338
(24)【登録日】2020年5月22日
(45)【発行日】2020年6月10日
(54)【発明の名称】不規則な周期的波形の検出及び表示
(51)【国際特許分類】
A61B 5/044 20060101AFI20200601BHJP
【FI】
A61B5/04 314G
【請求項の数】14
【外国語出願】
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-244100(P2015-244100)
(22)【出願日】2015年12月15日
(65)【公開番号】特開2016-112420(P2016-112420A)
(43)【公開日】2016年6月23日
【審査請求日】2018年10月15日
(31)【優先権主張番号】14/571,708
(32)【優先日】2014年12月16日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】アサフ・ゴバリ
(72)【発明者】
【氏名】ヤロン・エフラス
【審査官】
佐藤 高之
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第03457452(US,A)
【文献】
米国特許第03638066(US,A)
【文献】
欧州特許出願公開第02030565(EP,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0204875(US,A1)
【文献】
米国特許第05284152(US,A)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0030257(US,A1)
【文献】
国際公開第2006/123334(WO,A2)
【文献】
米国特許出願公開第2002/0091330(US,A1)
【文献】
特開昭52−033389(JP,A)
【文献】
国際公開第2005/027720(WO,A2)
【文献】
国際公開第2005/008418(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00−5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
心房細動を診断するためのシステムの作動方法であって、
プロセッサが、電気信号を複数の心臓サイクルにわたって対象の心臓から取得することと、
前記プロセッサが、前記信号を、前記心臓サイクル中の選択された注釈点においてそれぞれの開始時間を有する一続きの複数の同期化セグメントに分割することと、
前記複数の同期化セグメントのうちの各同期化セグメントが、前記同期化セグメントのそれぞれの開始時間に対応するそれぞれの表示時間において初期表示強度で先ず初めに表示画面上に提示されるように、前記プロセッサが、前記一続きの前記複数の同期化セグメントのそれぞれのグラフ表示を前記表示画面上で重ね合わせすることと、
前記プロセッサが、前記表示画面上で重ね合わせされた各同期化セグメントの表示強度を、前記それぞれの表示時間から経過した時間の減衰関数として、徐々に減少させることと、
前記プロセッサが、前記複数の同期化セグメントのうちの少なくとも一部が不規則であるが周期的な波形を有するかどうかを測定することと、
前記複数の同期化セグメントのうちの少なくとも一部が前記不規則であるが周期的な波形を有していた場合に、前記プロセッサが、前記不規則であるが周期的な波形を前記表示画面上で強調して表示することと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記プロセッサが、前記一続きの前記複数の同期化セグメントのそれぞれのグラフ表示を前記表示画面上で重ね合わせすることが、前記プロセッサが、前記同期化セグメントの重複点における前記同期化セグメントの前記表示強度を合計することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記プロセッサが、前記同期化セグメントの重複点における前記同期化セグメントの前記表示強度を合計することが、前記プロセッサが、前記同期化セグメントの選択された部分についての前記表示強度を合計することを含み、かつ前記選択された部分が前記同期化セグメントよりも小さい、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記プロセッサが、前記一続きの前記複数の同期化セグメントのそれぞれのグラフ表示を前記表示画面上で重ね合わせすることが、前記プロセッサが、互いから選択された前記表示画面の画素数の範囲内で、前記同期化セグメントの点における前記同期化セグメントの前記表示強度を合計することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記選択された注釈点が、心臓信号のQRS群から導出される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記プロセッサが、前記一続きの前記複数の同期化セグメントのそれぞれのグラフ表示を前記表示画面上で重ね合わせすることが、前記プロセッサが、前記同期化セグメントのそれぞれのベースラインを揃えることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記プロセッサが、前記一続きの前記複数の同期化セグメントのそれぞれのグラフ表示を前記表示画面上で重ね合わせすることが、前記プロセッサが、前記同期化セグメントの各々の前記選択された注釈点を互いに揃えることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
心房細動を診断するための機器であって、
表示画面と、
プロセッサであって、
電気信号を複数の心臓サイクルにわたって対象の心臓から取得し、
前記信号を、前記心臓サイクル中の選択された注釈点においてそれぞれの開始時間を有する一続きの複数の同期化セグメントに分割し、
前記複数の同期化セグメントのうちの各同期化セグメントが、前記同期化セグメントのそれぞれの開始時間に対応するそれぞれの表示時間において初期表示強度で先ず初めに表示画面上に提示されるように、前記一続きの前記複数の同期化セグメントのそれぞれのグラフ表示を前記表示画面上で重ね合わせし、
前記表示画面上で重ね合わせされた各同期化セグメントの表示強度を、前記それぞれの表示時間から経過した時間の減衰関数として、徐々に減少させ、
前記複数の同期化セグメントのうちの少なくとも一部が不規則であるが周期的な波形を有するかどうかを測定し、
前記複数の同期化セグメントのうちの少なくとも一部が前記不規則であるが周期的な波形を有していた場合に、前記不規則であるが周期的な波形を前記表示画面上で強調して表示するように構成されている、プロセッサと、
を含む、機器。
【請求項9】
前記一続きの前記複数の同期化セグメントのそれぞれのグラフ表示を前記表示画面上で重ね合わせすることが、前記同期化セグメントの重複点における前記同期化セグメントの前記表示強度を合計することを含む、請求項8に記載の機器。
【請求項10】
前記同期化セグメントの重複点における前記同期化セグメントの前記表示強度を合計することが、前記同期化セグメントの選択された部分についての前記表示強度を合計することを含み、かつ前記選択された部分が前記同期化セグメントよりも小さい、請求項9に記載の機器。
【請求項11】
前記一続きの前記複数の同期化セグメントのそれぞれのグラフ表示を前記表示画面上で重ね合わせすることが、互いから選択された前記表示画面の画素数の範囲内で、前記同期化セグメントの点における前記同期化セグメントの前記表示強度を合計することを含む、請求項8に記載の機器。
【請求項12】
前記選択された注釈点が、心臓信号のQRS群から導出される、請求項8に記載の機器。
【請求項13】
前記一続きの前記複数の同期化セグメントのそれぞれのグラフ表示を前記表示画面上で重ね合わせすることが、前記同期化セグメントのそれぞれのベースラインを揃えることを含む、請求項8に記載の機器。
【請求項14】
前記一続きの前記複数の同期化セグメントのそれぞれのグラフ表示を前記表示画面上で重ね合わせすることが、前記同期化セグメントの各々の前記選択された注釈点を互いに揃えることを含む、請求項8に記載の機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全般的には、信号の表示に関し、具体的には、不規則な周期的信号の表示に関する。
【背景技術】
【0002】
心臓手術の間に、心臓の状態は、とりわけ、グラフ形状における電気生理学的データを観察することによって、典型的には電位対時間グラフとして監視され得る。心臓が洞調律状態にある間、心臓によって発生される周期的心電図(ECG)波形は、比較的単純である。しかしながら、心房細動の間などの一部の心臓の非洞調律状態においては、各周期的ECG信号は、周期的信号の一部でのみ生じ得るが、全ての信号では生じ得ない1つ又は2つ以上の特徴部を含む場合がある。信号の不規則性のために、これらの特徴部を識別することは困難である。
【0003】
その開示が参照により本明細書に組み込まれる、PCT出願国際公開WO第2010/054409号(Ramanathanら)は、電気生理学データを可視化する方法を記載している。ある期間にわたる器官の表面上の電気活動を表す電気解剖学的データが記憶される。この期間内の間隔が、ユーザーの選択に応じて選択される。ユーザーによる間隔の選択に応答して、ユーザーが選択した間隔についての生理学的情報の視覚的表現が、少なくとも1つの方法を電気解剖学的データに適用することによって生成される。この視覚的表現は、器官の表面の所定の領域のグラフ表示上に空間的に表される。
【0004】
その開示が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許公開第2013/0245476号(Takizawaら)は、心筋興奮波形検出器を記載している。この検出器は、事前設定した期間中に心房細動の発生の最中に測定された心内心電図から波形を取得する波形取得セクションを含む。この開示は、この開示に記載された分析技術の下で計算される平均伝導時間の結果を示すことを述べている。
【0005】
その開示が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許公開第2007/0208260号(Afonso)は、コンプレックス細分化電位図情報などの患者の電気生理的活動を表わしている情報を提示するためのシステムを記載している。この開示は、電位図情報を、それが患者の心臓のモデル上で測定された位置と関連付けて提示する表示デバイスを記載している。
【0006】
参照により本特許出願に組み込まれる文書は、いずれかの用語が、それらの組み込まれた文書内で、本明細書で明示的又は黙示的に行なわれる定義と相反するように定義される場合を除き、本明細書における定義のみが考慮されるべきであり、本出願の一体部分と見なされるべきである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態は、表示する方法を提供し、本方法は、
電気信号を複数の心臓サイクルにわたって対象の心臓から取得することと、
この信号を、心臓サイクル中の選択され注釈点(annotation point)においてそれぞれの開始時間を有する一続きの同期化セグメントに分割することと、
前記一続きのうちの同期化セグメントのそれぞれのグラフ表示を、各セグメントが先ず初めに、セグメントのそれぞれの開始時間に対応するそれぞれの表示時間における初期表示強度で表示画面上に提示されるように、前記表示画面上に重ね合わせすることと、
表示画面上に重ね合わせされた各セグメントの表示強度を、それぞれの表示時間から経過した時間の減衰関数として、徐々に減少させることと、を含む。
【0008】
典型的には、それぞれのグラフ表示を重ね合わせすることが、同期化セグメントの重複点における同期化セグメントの表示強度を合計することを含む。表示強度を合計することが同期化セグメントの選択された部分についての表示強度を合計することを含んでもよく、かつ前記選択された部分は、前記同期化セグメントよりも小さい。
【0009】
開示された実施形態では、それぞれのグラフ表示を重ね合わせすることが、互いから選択された前記表示画面の画素数の範囲内で、前記同期化セグメントの点における前記同期化セグメントの前記表示強度を合計することを含む。
【0010】
更なる開示された実施形態では、選択され注釈点は、心臓信号のQRS群から導出される。
【0011】
なおも更なる開示された実施形態では、それぞれのグラフ表示を重ね合わせすることは、同期化セグメントのそれぞれのベースラインを揃えることを含む。
【0012】
代替実施形態では、それぞれのグラフ表示を重ね合わせすることは、同期化セグメントの各々の選択され注釈点を互いに揃えることを含む。
【0013】
本発明の実施形態によれば、機器が更に提供され、この機器は、
表示画面と、
プロセッサであって、
電気信号を複数の心臓サイクルにわたって対象の心臓から取得し、
この信号を、心臓サイクル中の選択され注釈点においてそれぞれの開始時間を有する一続きの同期化セグメントに分割し、
前記一続きのうちの同期化セグメントのそれぞれのグラフ表示を、各セグメントが先ず初めに、セグメントのそれぞれの開始時間に対応するそれぞれの表示時間における初期表示強度で表示画面上に提示されるように、前記表示画面上に連続して重ね合わせし、
表示画面上に重ね合わせされた各セグメントの表示強度を、前記それぞれの表示時間から経過した時間の減衰関数として、徐々に減少させるように構成されているプロセッサと、を含む。
【0014】
以下の本開示の発明を実施するための形態を、図面と併せ読むことによって、本開示のより深い理解が得られるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態による、波形表示システムの概略図である。
【
図2】本発明の実施形態による、心臓から導出されるECG信号の電位対時間グラフの概略図である。
【
図3】本発明の実施形態による、波形表示システムを実装することにおいて実施した工程の流れ図である。
【
図4】本発明の実施形態による、流れ図の工程において実行された動作のいくつかを示す概略図である。
【
図5】本発明の実施形態による、表示画面上に重ね合わせされている、波形の異なるセグメントを示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
概説
ある種の心房細動などの心臓の特定の状態における、各周期的ECG(心電図)信号は、信号の一部でのみ生じるが、全ての信号では生じない1つ又は2つ以上の波形特徴部を含む場合がある。これらの不規則的に繰り返される波形は、これらが繰り返される場合、この繰り返しが信号中のほぼ同じ位置(時間)にあるという意味で、周期的である。その不規則性のために、この波形は識別することが困難である。
【0017】
本発明の実施形態は、不規則に繰り返す波形がより視認可能にされるように、ECG信号を観察するための方法を提供する。一組の信号が対象の心臓から取得され、この組は、対象の複数の心臓サイクルにわたって採取される。プロセッサにより、セグメントの各々についての開始時間としての共通の注釈点を用いて、この信号を一続きの同期化セグメントに分割される。典型的なセグメントは、セグメントを画定するために、ECG信号のQRS群の一部を用い、後続のQRS群を終了時間として用いる。
【0018】
同期化セグメントのグラフ表示は、共通の注釈点をセグメントについての登録点として用いて、表示画面上に互いに重ね合わせされる。重ね合わせされたセグメントはまた、これらのベースラインが揃えられるように、互いに重ね合わせされてもよい。セグメントは、セグメントのそれぞれの開始時間に対応するそれぞれの表示時間で表示画面上に提示される。更に、各セグメントは、共通の初期表示強度で表示され、各セグメントの表示強度は、表示画面上のセグメントの初期提示から経過した時間の減衰関数として減少される。したがって、典型的には、表示画面上に異なる強度を有するいくつかの異なる信号が存在する。
【0019】
セグメントの点又は領域が重複する所では、重複点の表示強度が合計される。合計することは、信号中の不規則に繰り返す波形を強調し、従来技術の信号表示よりも波形を大幅により視認可能にする。
【0020】
システムの説明
次に
図1を参照すると、これは、本発明の実施形態による、波形表示システム20の概略図である。システム20は、典型的には身体器官への医療処置の間に使用され、本明細書の記載では、身体器官は、例として、心臓を含むと想定され、このシステムは、心電図(ECG)信号を表示するよう適用される。典型的には、このシステムは、心臓が心房細動を起こしている場合に使用され、ECG信号は、心内信号又は患者の皮膚からなどの、心臓に対して外部の位置から導出される信号であってもよい。しかしながら、システム20は、洞調律状態を含む心臓の他の状態に、又は脳波計(EEG)信号などの他の信号に用いられてもよいことが理解されるであろう。
【0021】
明確にするために、特に示された場合を除いて、以下の説明では、システム20によって表示される信号は、ECG信号であると想定される。
【0022】
本明細書の説明は、システム20が、プローブ24を用いて心臓22から心内ECG信号を感知すると想定する。プローブの遠位端部26は、信号を感知する電極28を有すると想定される。通常、プローブ24は、システム20のユーザー32によって実行される心臓手術の間に、患者30の体内に挿入されるカテーテルを含む。本明細書の説明において、ユーザー32は、医療専門家であると想定される。
【0023】
システム20は、ECGモジュール44と通信する処理ユニット42を備えるシステムプロセッサ40によって制御され得る。モジュール44は次に、波形表示モジュール46を備える。プロセッサ40は、典型的にはマウス又はトラックボールなどの位置指示デバイスを含む、オペレーティングコントロールを備える、コンソール50上に据え付けられてもよい。専門技術者32は、位置指示デバイスを用いてプロセッサと対話し、このプロセッサは、以下に説明するように、システム20によって生じた結果を専門技術者に表示画面54上で提示するために使用され得る。
【0024】
画面は、分析の結果及びECGモジュール44によるECG信号の処理を表示する。典型的には、得られたECG信号は、電位対時間グラフの形態で画面54上に提示され、このようなグラフの概略例60を
図1に示す。(より詳細なグラフを、以下に記載される
図2に示す。)しかしながら、得られたECG信号はまた、局所興奮時間(LAT)などの、ECG信号と関連付けられる他の結果を導出するために、プロセッサ40によって用いられてもよい。これらの結果は、典型的には、心臓22の内面の三次元(3D)マップ64の形態で画面54上に提示される。
【0025】
プロセッサ40は、プロセッサのメモリ内に記憶されたソフトウェアを用いてシステム20を操作する。ソフトウェアは、例えば、ネットワークを介して、電子的形態でプロセッサ40にダウンロードされてもよいし、又は代替的若しくは追加的に、磁気メモリ、光メモリ、若しくは電子メモリなどの、非一時的な有形媒体上に提供かつ/若しくは記憶されてもよい。
【0026】
プロセッサ40は、典型的には、プローブ追跡モジュール、遠位端部26上の力を測定する力モジュール、及び調整された電力を遠位端部における電極28又は別の電極に提供するアブレーションモジュールなどの他のモジュールを備える。簡単にするために、このようなモジュールは
図1には示していない。Biosense Webster(Diamond Bar,CA)により製造されるCarto(登録商標)システムは、このようなモジュールを使用する。
【0027】
図2は、本発明の実施形態による、心臓22から導出されるECG信号の電位対時間グラフ100の概略図である。例として、グラフ100は、ECG信号中で発生する6つのQRS群を示し、この群は実質的に規則的な間隔で繰り返し、信号を5つのセグメント102、104、106、108、及び110に分割する。洞調律で拍動する心臓、即ち、「正常な」心臓は、連続するQRS群間の僅かな変動を除けば、規則的に繰り返す実質的に不変のセグメントを備えるECG信号を発生する。しかしながら、グラフ100は、繰り返すQRS群を有して周期的であるが、連続するセグメントは不規則である。したがって、セグメント102、106、及び110は、セグメント中にそれぞれのピーク120、122、及び124を有するが、一方で、セグメント104及び108は、このようなピークを有しない。こうした不規則であるが周期的な波形は、いくつかのタイプの心房細動の間に生み出される信号の典型である。
【0028】
図3は、本発明の実施形態による、システム20を実装することにおいて、モジュール44及び46と一緒になり、プロセッサ40によって実施される工程の流れ図であり、
図4は、本発明の実施形態による、工程で実行される動作のいくつかを示す概略図を示す。
図2はまた、流れ図工程の動作のいくつかを示すために用いられる。
【0029】
最初の工程200において、プロセッサ40は、グラフ100によって示されるような、一連の心臓信号を受信する。
【0030】
分割工程202において、プロセッサは、セグメントの各々についての基準開始時間として選択され注釈点を用いて、一連の信号を一続きのセグメントに分割する。典型的には、注釈点は、電極28によって受信される信号から導出される。あるいは、注釈点は、カテーテル上の別の電極によって取得され得る別のECG信号から、あるいは体表面電極からの体表面信号として導出される。例として、グラフ100のセグメントについて選択され注釈点は、QRS群のピークであると想定され、各セグメントは、次の後続のQRS群において終結すると想定される。分割された後の一続きのセグメント102、104、106、108、及び110を
図4に示す。
【0031】
同期化工程204において、一続きのセグメントは、選択され注釈点に対して同期化される。同期化は、各セグメントの初期QRS群のピークが垂直線114上に位置することによって、
図4に示されている。
【0032】
表示工程206において、連続する同期化セグメントが表示画面54上に提示され、これらセグメントは、選択された注釈点によって互いに揃えられかつ重ね合わせされる。いくつかの実施形態では、最も安定な同期化を提供する信号を決定するために、専門技術者32は、典型的には重ね合わせされたセグメントのセットの予備観察によって、選択され注釈点について用いられるための信号(種々の可能な信号は上記工程202に記載されている)を選択する。典型的には、揃えることはまた、各セグメントの想定されたベースラインを揃えることを含む。各セグメントは、セグメントの開始時間に対応する表示時間において、初期表示強度でまず初めに提示される。
【0033】
初期提示後に、各セグメントの表示強度を、初期提示から経過した時間の所定の減衰関数によって、減衰させる。典型的な減衰関数は、隣接するセグメント間の時間間隔に対して強度を15%だけ直線的に減少させ、それにより、7つの時間間隔の後に、表示強度はゼロとなり、即ち、セグメントは表示されなくなる。しかしながら、任意の他の便利な関数が、低減された強度に対して用いられてもよい。
【0034】
図4は、
図2に示すセグメントの提示時間による、グラフ100の5つのセグメントの異なる表示強度を示す。したがって、
図2において、直近のセグメントはセグメント110であり、セグメント110についての提示時間と比較されたセグメントの各々の提示からの経過時間は、セグメント108、106、104、及び102を通して単調に増加し、それにより、セグメント102は最大経過時間を有する。明確化のために、
図4は、異なるセグメントが垂直方向に離隔されているものとして示している。それぞれのセグメント108、106、104、及び102についての経過時間が増加するので、セグメントの表示強度は減少する。例として、上記記載の15%の線形強度減少を想定し、セグメント110についての強度が1(任意の単位で測定)であるならば、セグメント108、106、104、及び102は、それぞれ0.85、0.7、0.55、及び0.4の強度を有する。
【0035】
図5は、本発明の実施形態による、表示画面54上に重ね合わせされている、異なるセグメントを示す。セグメントが重ね合わせされると、プロセッサ40は、グラフの重複点の強度を合計する。この合計は、不規則性に基づいて繰り返すグラフの領域の視認性を強調する。したがって、図示するように、重ね合わせされたセグメント102、104、106、108、及び110において、ピーク120、122、及び124は重複し、それにより、重複した点の強度は、グラフの重複していない点と比べて増加される。
図4に示すように、ピーク120、122、及び124は、それぞれの強度0.4、0.7、及び1を有し、それにより、重複したピークは、2.1の公称強度を有する。
図5は、重複したピークを、2の画面54上の強度を有するものとして示している。
【0036】
上述した実施形態は、各セグメントが、画面上のその第1の提示から表示画面上で経過した時間に従って、ある強度に割り当てられること、及びセグメントが重複するところで、強度が合計されることを想定した。本発明の代替実施形態では、強度の合計が完全なセグメントに適用されるよりはむしろ、強度の合計は、セグメントの各々の一部にのみ適用される。典型的には、合計が適用される部分は、専門技術者32によって選択される。
【0037】
例えば、専門技術者は、合計が各セグメントの中心75%にのみ適用されるように選択してもよい。この種の制限は、システム20が、他のセクション(例えば、開始QRS群及び/又は終了QRS群)を強調することなく、セグメントの強度を増加させることによって、専門技術者にとって関心のあるセグメントの選択されたセクションのみを強調することを可能にする。
【0038】
更なる代替実施形態では、セグメントが重複する箇所、例えば2つ以上のセグメントが画面54上の同一の画素を占有する部分を有する箇所の強度を合計するよりはむしろ、強度は、2つ以上つ以上のセグメントが互いに接近している画素を占有する部分を有する場合に合計されるよう構成されてもよい。接近度は、専門技術者32によって選択されてもよく、例えば、その部分が互いに画素の選択された数(例えば、2)の範囲以内であってもよい。この種の合計を可能にすることは、典型的にはノイズに起因して、関心のセクション間にわずかな変動があるとしても、専門技術者にセクションを合計するための能力を提供する。合計の結果は、互いに接近している画素の平均位置において、合計された強度と共に、1つ又は2つ以上の画素として画面54上に提示され得る。
【0039】
上述の実施形態は、例として引用したものであり、本発明は、上に具体的に示し、記載した内容に限定されるものではないということが理解されるであろう。むしろ、本発明の範囲には、上で説明した様々な特徴の組み合わせと部分的組み合わせの両方、並びにそれらの変形形態及び修正形態が含まれ、これらは、上述の説明を読めば当業者には想到されるであろうものであり、従来技術では開示されていないものである。
【0040】
〔実施の態様〕
(1) 表示する方法であって、
電気信号を複数の心臓サイクルにわたって対象の心臓から取得することと、
前記信号を、前記心臓サイクル中の選択された注釈点においてそれぞれの開始時間を有する一続きの同期化セグメントに分割することと、
前記一続きのうちの前記同期化セグメントのそれぞれのグラフ表示を、各セグメントが先ず初めに、前記セグメントのそれぞれの開始時間に対応するそれぞれの表示時間における初期表示強度で、表示画面上に提示されるように、前記表示画面上に重ね合わせすることと、
前記表示画面上に重ね合わせされた各セグメントの表示強度を、前記それぞれの表示時間から経過した時間の減衰関数として、徐々に減少させることと、を含む、方法。
(2) 前記それぞれのグラフ表示を重ね合わせすることが、前記同期化セグメントの重複点における前記同期化セグメントの前記表示強度を合計することを含む、実施態様1に記載の方法。
(3) 前記表示強度を合計することが、前記同期化セグメントの選択された部分についての前記表示強度を合計することを含み、かつ前記選択された部分が前記同期化セグメントよりも小さい、実施態様2に記載の方法。
(4) 前記それぞれのグラフ表示を重ね合わせすることが、互いから選択された前記表示画面の画素数の範囲内で、前記同期化セグメントの点における前記同期化セグメントの前記表示強度を合計することを含む、実施態様1に記載の方法。
(5) 前記選択された注釈点が、前記心臓信号のQRS群から導出される、実施態様1に記載の方法。
【0041】
(6) 前記それぞれのグラフ表示を重ね合わせすることが、前記同期化セグメントのそれぞれのベースラインを揃えることを含む、実施態様1に記載の方法。
(7) 前記それぞれのグラフ表示を重ね合わせすることが、前記同期化セグメントの各々の前記選択された注釈点を互いに揃えることを含む、実施態様1に記載の方法。
(8) 機器であって、
表示画面と、
プロセッサであって、
電気信号を複数の心臓サイクルにわたって対象の心臓から取得し、
前記信号を、前記心臓サイクル中の選択された注釈点においてそれぞれの開始時間を有する一続きの同期化セグメントに分割し、
前記一続きのうちの前記同期化セグメントのそれぞれのグラフ表示を、各セグメントが先ず初めに、前記セグメントのそれぞれの開始時間に対応するそれぞれの表示時間における初期表示強度で前記表示画面上に提示されるように、前記表示画面上に重ね合わせし、
前記表示画面上に重ね合わせされた各セグメントの表示強度を、前記それぞれの表示時間から経過した時間の減衰関数として、徐々に減少させるように構成されている、プロセッサと、を含む、機器。
(9) 前記それぞれのグラフ表示を重ね合わせすることが、前記同期化セグメントの重複点における前記同期化セグメントの前記表示強度を合計することを含む、実施態様8に記載の機器。
(10) 前記表示強度を合計することが、前記同期化セグメントの選択された部分についての前記表示強度を合計することを含み、かつ前記選択された部分が前記同期化セグメントよりも小さい、実施態様9に記載の機器。
【0042】
(11) 前記それぞれのグラフ表示を重ね合わせすることが、互いから選択された前記表示画面の画素数の範囲内で、前記同期化セグメントの点における前記同期化セグメントの前記表示強度を合計することを含む、実施態様8に記載の機器。
(12) 前記選択された注釈点が、前記心臓信号のQRS群から導出される、実施態様8に記載の機器。
(13) 前記それぞれのグラフ表示を重ね合わせすることが、前記同期化セグメントのそれぞれのベースラインを揃えることを含む、実施態様8に記載の機器。
(14) 前記それぞれのグラフ表示を重ね合わせすることが、前記同期化セグメントの各々の前記選択された注釈点を互いに揃えることを含む、実施態様8に記載の機器。