(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながらこのような防水シートの固定構造(
図6(6−1)を参照)において、施工時または施工後に外部から力が加わったり経時により断熱材自体が痩せることにより、断熱材と固定用ディスクとが沈み込むことで下地に固定されているビスのみがそのまま残り突き上がるといった現象が起こることがある。このようなビスの突き上げにより、
図6(6−2)のようにビスが防水シートを突き破ってしまう場合もあり、防水シートの破れたところから漏水する危険があった。このような断熱材の沈み込みを防止するため、断熱材の上に通常より強度の高い断熱材や無機板を重ねる方法もあるが、コストアップや施工が煩雑となる懸念があった。
【0007】
そこで本発明は上記の点を考慮してなされたもので、断熱工法において固定用ディスクをビスで止め付けても、断熱材の沈み込みによるビスの突き上げの懸念がなく、コストや施工性に優れた防水シートの固定構造およびその固定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の概要は、筒状部とかさ部とからなるプラグが固定用ディスクの下に配置され、固定用ディスクの上からプラグを貫通された状態で下地に対して固定用ビスが打たれることで、固定用ディスクがプラグのかさ部に支持された状態で下地に対して固定された構造とすることである。
【0009】
より詳細には、下地の上に配置された断熱材と、前記断熱材に埋設された筒状部と前記断熱材の上に配置されたかさ部とからなるプラグと、前記プラグの上に配置された固定用ディスクと、前記固定用ディスクの上から前記プラグを貫通された状態で前記下地に固定されている固定用ビスと、前記断熱材の上に配置され前記固定用ディスクにより固定された状態の防水シートとを備え、
前記固定用ビスのビス頭が前記固定用ディスクの上に配置固定されており、前記固定用ディスクが前記プラグの前記かさ部によって支持された防水シート固定構造とすることである。
また、下地の上に配置された断熱材と、前記断熱材に埋設された筒状部と前記断熱材の上に配置されたかさ部とからなるプラグと、前記プラグの前記かさ部の上に配置された固定用ディスクと、前記固定用ディスクの上から前記プラグを貫通された状態で前記下地に固定されている固定用ビスと、前記断熱材の上に配置され前記固定用ディスクにより固定された状態の防水シートとを備え、前記固定用ディスクが前記プラグの前記かさ部によって支持された防水シート固定構造とすることである。
また、下地の上に配置された断熱材と、前記断熱材に埋設された筒状部と前記断熱材の上に配置されたかさ部とからなるプラグと、前記プラグの前記かさ部の上に配置された固定用ディスクと、前記固定用ディスクの上から前記プラグを貫通された状態で前記下地に固定されている固定用ビスと、前記断熱材の上に配置され前記固定用ディスクにより固定された状態の防水シートとを備え、前記固定用ビスのビス頭が前記固定用ディスクの上に配置固定されており、前記固定用ディスクが前記プラグの前記かさ部によって支持された防水シート固定構造とすることである。
【0010】
上記のような構成とすることにより、断熱材が沈み込んでも固定用ディスクはプラグのかさ部に支持された状態で下地に固定されているためそのままの状態で保持され、ゆえにビスの突き上げの懸念のない固定構造とすることができる。
【0011】
また、プラグのかさ部の径が固定用ディスクの径の1/3以上である防水シート固定構造とすることもできる。これによってプラグのかさ部が断熱材の上部にしっかりとかかり、固定用ディスクがプラグのかさ部により安定して支持されるので、ビスの突き上げ防止効果が増大する。
【0012】
そして、プラグの筒状部の下端が前記下地に埋設された防水シート固定構造とすることができる。これによって固定用ビスだけでなくプラグ自体も直接下地に固定されるため、ビスの突き上げ防止の効果が増すとともにより安定した防水シート固定構造とすることができる。
【0013】
さらに、固定用ディスクの下地に対する上面に接着層を有しており、防水シートが断熱材および固定用ディスクの上に配置され、防水シートが接着層を介して固定用ディスクと接合されている防水シート固定構造とすることができる。この場合固定ディスクが防水シートの下に隠れるため、美観に優れたものとすることができる。また、防水シートが断熱材の上に配置され、防水シートの上に固定用ディスクが配置されている防水シート固定構造とすることもできる。この場合防水シートの上から固定ディスクで押さえて固定するため、確実に固定することができる。
【0014】
本発明においては、下地の上に断熱材を敷設し、かさ部と筒状部とからなるプラグを、筒状部の下端から断熱材に差し込みかさ部が断熱材の上になるように配置し、固定用ディスクをプラグの
前記かさ部の上に配置し、固定用ディスクの上からプラグを貫通して固定用ビスを下地に打ち込み、断熱材と固定用ディスクを覆うように防水シートを敷設し、接着層を介して防水シートと固定用ディスクを接合する防水シートの固定方法を用いることができる。
【0015】
また本発明においては、下地の上に断熱材を敷設し、断熱材を覆うように防水シートを敷設し、かさ部と筒状部とからなるプラグを、筒状部の下端から防水シートおよび断熱材に差し込みかさ部が防水シートの上になるように配置し、プラグの
前記かさ部の上に固定用ディスクを配置し、固定用ディスクの上からプラグを貫通して固定用ビスを前記下地に打ち込む防水シートの固定方法を用いることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の防水シート固定構造および固定方法によれば、固定用ディスクはプラグのかさ部に支持された状態で下地に固定されているため、断熱材が沈み込んでもその上に配置する固定用ディスクが沈み込むことなく、ゆえにビスの突き上げの懸念がなく、コストや施工性に優れたものとすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0019】
図1に第一の実施形態である防水シート固定構造の断面図を示す。本実施形態によると下地1の上に断熱材2が設けられ、中央に孔があいた円盤状のかさ部41とそのかさ部41の下部中央に垂直に連結する筒状部42を備えたプラグ4が、筒状部42が断熱材2に埋設され、その下端42bが下地1に埋設されており、かさ部41が断熱材2の上にかかる状態で配置されている。そしてプラグ4のかさ部41の上に固定用ディスク5が配置され、固定用ディスク5の上から挿入されプラグ4を貫通する固定用ビス6で下地1に止め付けられている。さらに断熱材2の上には防水シート3が配置され、固定用ディスク5によって防水シート3が固定されている。
【0020】
ここで固定用ディスク5は、プラグ4のかさ部41の上に配置されその上から固定用ビス6が打ち込まれていることでプラグ4の上で支持されている。そして固定用ディスク5の上面に接着層(図示せず)が設けられており、この接着層と防水シート3の裏面が接着することで固定用ディスク5に防水シート3が固定される。また本実施形態においては固定用ビス6が下地1に強固に固定されるよう、プラグ4の筒状部42の下端42bに硬化性の樹脂組成物(図示せず)が注入されており、その中を固定用ビス6が貫通して下地1に止め付けられている。また
図1の実施形態においては防水シート3に配合される可塑剤等の配合剤の移行を防ぐため、断熱材2の上に絶縁シート9が配置されている。
【0021】
本実施形態の各構成要素について説明する。
下地1は建築物の屋上、ベランダ、バルコニー等の躯体であり、コンクリート下地、金属下地、軽量発泡コンクリート(ALC)、鋼材、木質材等が用いられる。また、下地1の上に無機質板、モルタル材層等の他の層を積層しても良い。
図1の第一の実施形態では下地1はコンクリート下地である。
【0022】
断熱材2はポリスチレンフォーム、硬質ウレタンフォーム、フェノールフォーム、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンフォーム等が使用できる。
図1の第一の実施形態では断熱材2はポリスチレンフォームである。厚みは適宜選択でき、通常10mm〜100mm程度のものが使用できる。
【0023】
防水シート3としては熱可塑性樹脂製防水シートが好ましく使用され、塩化ビニル樹脂系、ポリオレフィン系、アクリル系等を使用することができる。
防水シート3は熱可塑性樹脂層の単層でも良いが、寸法安定性、引張強度に優れるという点からガラスクロス、ガラス不織布、ポリエステルクロス、ポリエステル不織布等の基材層を積層した複層品が好ましい。基材層は最下層に設けても良いが熱可塑性樹脂層の中間に設けても良い。また熱可塑性樹脂層は一層であっても、複数の層であってもよく、それぞれの層の組成を異なるものとしてもよい。
【0024】
固定用ディスク5は板状の部材であり、厚み方向に貫通したビス穴を備えている。ビス穴の周囲にはビス頭が収容されるための座くりが設けられていることが好ましい。固定用ディスク5の厚みは0.5mm〜2.0mm程度で、形状は正方形または長方形をした矩形状のプレート状や、円形または楕円形状のディスク状、長尺状など任意であり、大きさは一辺または外径が50mm〜100mm程度に形成することができる。固定用ディスク5は金属製、硬質合成樹脂製、木製等が用いられる。強度や耐久性の点から金属製が好ましい。金属製の固定用ディスクを構成する鋼鈑の材質としては、ステンレス板や、亜鉛・アルミニウム・マグネシウムメッキまたは亜鉛メッキ等の防錆処理が施された鋼板など、多湿状態でも錆びにくい鋼鈑が好適に使用される。
【0025】
固定用ディスク5がプラグ4の上に配置された状態で下地1に対する上面に接着層を有する構造とすることができ、これにより固定用ディスク5は防水シート3や後述する補強用シート7との接着が可能となり好ましい形態である。接着層としてはアクリル系、ウレタン系、エポキシ系、ニトリルゴム系、スチレン‐ブタジエンゴム系などの各種接着剤や、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂等の熱可塑性樹脂被覆層、またポリ塩化ビニル系樹脂やアクリル系樹脂などの熱可塑性樹脂の組成物を溶剤に溶解したシール材などを用いることができる。
図1の第一の実施形態では固定用ディスク5の上面に熱可塑性樹脂被覆層であるポリ塩化ビニル系樹脂の被覆層が積層一体化されている(図示なし)。接合強度を考慮すると、防水シート3または補強用シート7とこの熱可塑性樹脂被覆層の材質は同種のものを用いるのが好ましく、防水シート3、補強用シート7がポリ塩化ビニル系樹脂製である場合には、固定用ディスク5の熱可塑性樹脂被覆層もポリ塩化ビニル系樹脂からなることが好ましい。また接着層は固定用ディスク5の上面に予め設けるだけでなく、施工時に新たに設けてもよい。
【0026】
固定用ビス6は少なくとも固定用ディスク5を下地に止め付けられるに足る長さが必要であり、プラグ4を貫通して下地に達するような長さのものが用いられている。
材質としては、炭素鋼、合金鋼、ステンレス鋼等の鋼材などが使用できる。また、固定用ディスク等の上面から頭部がはみ出ないように、固定用ビスのビス頭の形状は皿、平、なべがよく、ドライバーやレンチで掛ける座面の窪み形状は十字穴、六角穴、四角穴が好ましい。
【0027】
プラグ4は固定用ビス6がその中を貫通する筒状部42を備えており、またプラグ4の上部で固定用ディスク5を支持するかさ部41を備えている。プラグ4は金属製、合成樹脂製、木製等のものが用いられる。中でも強度や耐久性、軽量性、熱橋(ヒートブリッジ)による結露防止などの点から合成樹脂製のものが好ましい。合成樹脂製のプラグ4を構成する合成樹脂としては、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのオレフィン系樹脂やナイロンなどが好適に使用される。筒状部42の外径は4mm〜12mm程度が好ましく、より好ましくは6mm〜8mmである。またかさ部41の厚みは0.5mm〜3.0mm程度が好ましい。
【0028】
図4にプラグ4の形状例を示す。
図4の(4−1)は
図1の固定構造の実施形態において用いたプラグ4Aであり、中央に孔411があいた円盤状のかさ部41と、そのかさ部41の下部中央に垂直に連結し下端42bの外周にアンカーとなる凸部42cを複数有する筒状部42を備えている。かさ部41の形状はプラグ4Aのような円盤状に限らず正方形または長方形をした矩形状のプレート状などでもよく、固定用ディスク5の形状に対応する形状であるとより安定して固定用ディスクを支持することができ、好ましい。またかさ部41の大きさ(径)は固定用ディスク5を支持できればよく、10mm〜150mm程度が好ましい。また好ましくは固定用ディスク5の径の1/3以上である。ここで径とは一辺または外径とする。
【0029】
図1に示すように、プラグ4Aはかさ部41が断熱材2の上側に配し、筒状部42の下端42bが下地1に埋設した状態で配置される。よって筒状部42の長さは断熱材2の厚みより長く、20mm〜160mm程度が好ましい。また筒状部42の下端42bの下地1への埋設部分の長さは、10mm〜60mm程度が好ましい。このようにプラグ4Aはそれ自身も下地1に埋設され固定用ビス6とアンカーの凸部42cとで下地に固定されるため、これを用いた
図1の実施形態の防水シートの固定構造は安定した固定強度を発現することが可能である。
【0030】
またプラグ4の筒状部42には樹脂組成物が充填されていることが好ましい。この場合、予め樹脂組成物を筒状部42に充填したプラグ4を使用してもよいし、施工の際にプラグ4の筒状部42に樹脂組成物を充填してもよい。これにより固定用ビス6が下地の動きや防水シートの風による動きによって緩むのを防止することができる。
図1の実施形態のようにプラグ4の筒状部42に硬化性の樹脂組成物を注入することができ、このような硬化性樹脂組成物としてシール材や接着剤等がある。シール材としては、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂が用いられる。接着剤としては、ウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、酢酸ビニル系接着剤等が用いられ、固定用ビス6が強固に固定されるという点からエポキシ系接着剤が好ましい。またこれらをプラグ4の筒状部42への注入方法としてはガン、オイラー、注射器等を用いることができる。
【0031】
図4の4−2のプラグ4Bは、中心に孔411があいた円盤状のかさ部41と、そのかさ部41の下部中央に連結された筒状部42を備えている点では
図4の4−1のプラグ4Aと共通するが、筒状部42の下端42bの外周にアンカーとなる凸部42cを有していない。また、筒状部42の下端42bの先端部はフラットであり、下地1に対し当接するようになっている。
【0032】
図2はプラグ4Bを使用した防水シート固定構造の他の実施形態を示す断面図であり、
図1の実施形態と異なる点としては前述のように筒状部42の下端42bは下地1に埋設せず下地1上に当接しており、プラグ4Bのかさ部41の上に固定用ディスク5が重ねられ、その上から固定用ビス6が固定用ディスク5のビス穴とプラグ4Bの筒状部42を貫通して下地1に固定されることで固定用ディスク5がプラグ4Bのかさ部41に支持された状態で下地1に固定されている。本実施形態においては、プラグ4Bの筒状部42の長さはおおよそ断熱材2の厚みと同じであることが好ましい。プラグ4Bにおいては下地1への穴あけを最小限にとどめることができ、下地1の耐久性に優れる固定構造とすることができる。またプラグ4Bは下地1が金属屋根下地などの厚みの薄いものである場合にも好ましく用いることができる。
【0033】
図4の4−3のプラグ4Cは、筒状部42がかさ部41と連結する上筒状部421と下筒状部422の二つの構成材からなり、下筒状部422は下地1に埋設させる際、アンカー効果を発現する凸部42cをその外周に複数備えている。プラグ4Cの筒状部42である上筒状部421と下筒状部422とは嵌合または連結可能な構造を備えていてもよく、そのような構造を備えずそれぞれ独立していてもよい。
【0034】
図3はプラグ4Cを使用した防水シートの固定構造の他の実施形態を示す断面図である。プラグ4Cの下筒状部422はコンクリート下地である下地1にほぼ埋没された状態であり、下筒状部422の上に上筒状部421が配置されている。プラグ4Cの筒状部42である上筒状部421と下筒状部422とが独立している場合において、
図3のように上筒状部421と下筒状部422とが接していてもよく、また上筒状部421と下筒状部422との間に空間があってもよい。プラグ4Cのように筒状部42が二つの構成材からなる場合、このように施工において断熱材の厚みによらずある程度任意に筒状部の長さを設定できるため、施工の自由度が増すという利点がある。
【0035】
また
図3の実施形態は
図1および
図2の実施形態と防水シート3の固定部分において異なっている。
図1および
図2の実施形態においては、防水シート3は断熱材2および固定用ディスク5の上に敷設されており、防水シート3の下面と固定用ディスク5の上面とが接着層により接合されているのに対し、
図3の実施形態では防水シート3は断熱材2および絶縁シート9の上に敷設され、固定用ディスク5が防水シート3の上のプラグ4Cのかさ部41の真上に配置され固定用ビス6により下地に固定されている。さらに、防水シート3と固定用ディスク5の上に補強シート7が敷設され防水シート3および固定用ディスク5の上面と補強用シート7とが接合されている。
【0036】
ここで補強シート7は防水シート3と同様のシートが使用でき、熱可塑性樹脂製防水シートが好ましく使用され、塩化ビニル樹脂系、ポリオレフィン系、アクリル系等を使用することができる。補強シート7は熱可塑性樹脂層の単層でも良く、ガラスクロス、ガラス不織布、ポリエステルクロス、ポリエステル不織布等の基材層を積層した複層品でも良い。また熱可塑性樹脂層は一層であっても、複数の層であってもよく、それぞれの層の組成を異なるものとしてもよい。
【0037】
図4の4−4のプラグ4Dは、筒状部42の外径が上端42aを含む上部と下端42bを含む下部とで異なり、また外径の異なる筒状部42の上部と下部との境界には肩部42dを備えている。筒状部42の外径は、上端42aを含む上部における外径D1は6mm〜12mm程度であり、下端42bを含む下部における外径D2は4mm〜10mm程度である。
プラグ4Dの筒状部42の長さは、上端42aを含む上部が断熱材2の厚みとほぼ同じであることが好ましく、10mm〜100mm程度が好ましい。また下端42bを含む下部の長さは10mm〜60mm程度が好ましい。プラグ4Dにおいては筒状部42の下端42bから外径D1とほぼ同じ内径のリング状または筒状のスペーサー(図示せず)を肩部42dに向かって挿入することで、筒状部42の上端42aを含む上部の長さを調整可能であり、断熱材の厚みにより適宜対応することが可能である。また下端42bの形状は、
図4の4−1のプラグ4Aや
図4の4−3のプラグ4Cのように、ビスで固定したときに開脚する先割れ形状をしていてもよく、また下端42bの外周に凸部42cを複数形成してもよい。このような形状とすることで、下地へのアンカー効果が発揮されるため、下地に対するプラグの固定強度が増大する。
【0038】
図5はプラグ4Dを用いた防水シート固定構造の他の実施形態の断面図である。本実施形態は既存防水層の改修構造であり、コンクリート下地である下地1の上にポリエチレンフォームである断熱材2が配置され、その上に既存防水シート8が敷設されて接着剤により固定された既存防水層を備えている。既存防水シート8の上には絶縁シート9が敷設され、新設の防水シート3が敷設されている。プラグ4Dはかさ部41が絶縁シート9の上に配置され、筒状部42の上端42aを含む上部は断熱材2,既存防水シート8,絶縁シート9に埋設されており、筒状部42の下端42bを含む下部は下地1に埋設されている。ここで筒状部42の肩部42dが下地1の上面にかかるようにして配置されている。プラグ4Dのかさ部41の上に固定用ディスク5が配置され固定用ビス6により下地1に固定されている。そして新設の防水シート3は固定用ディスク5の上に敷設され、防水シート3の下面が接着層(図示せず)により固定用ディスク5の上面に接着固定されている。
【0039】
図5の実施形態においてはプラグ4Dの筒状部42における肩部42dが下地1の上面にかかった状態となっていることで、固定用ビス6を下地1に固定する際にプラグ4Dが下地1に入り過ぎることを防止できるため、より確実に断熱材2が沈み込むことを防ぐことができる。そして
図5の実施形態のように本発明の防水シート固定構造は、既存防水層の改修にも適用することができる。
【0040】
続いて本発明の防水シートの固定方法について説明する。
まず
図1の実施形態における防水シートの固定方法について説明する。初めにコンクリート下地である下地1の上にポリスチレンフォームである断熱材2、さらにその上に必要に応じて絶縁シート9を敷設する。次にドリル等で断熱材2(および絶縁シート9)および下地1に下穴を開け、その下穴にプラグ4Aを筒状部42の下端42bから挿入する。プラグ4Aのかさ部41が断熱材2(または絶縁シート9)に重なるようセットしたら、かさ部41の中心の孔411よりエポキシ系接着剤を専用のガンなどを用いて筒状部42の下端42bに向かい注入する。
【0041】
プラグ4Aの筒状部42にエポキシ系接着剤を注入したら、プラグ4Aのかさ部41の上に上面を塩化ビニル系樹脂層で被覆された鋼板からなる固定用ディスク5を中心が揃うように配置する。このとき、固定用ディスク5とプラグ4Aのかさ部41との間に耐熱シートを介在してもよい(あとの工程で固定用ディスク5を誘導加熱する際にプラグ4Aへの熱伝導を防止するため)。固定用ビス6を固定用ディスク5のビス穴から挿入してプラグ4Aのかさ部41の孔411および筒状部42を貫通し、下地1に打ち込み固定する。ポリ塩化ビニル樹脂系の防水シート3を断熱材2(または絶縁シート9)および固定用ディスク5の上から敷設して、誘導加熱装置を用いて固定用ディスク5の上面を覆う塩化ビニル系樹脂層を溶融させ、固定用ディスク5と防水シート3とを接合する。
【0042】
ここで固定用ディスク5は塩化ビニル系樹脂層で上面が被覆された鋼板を、また防水シート3は同じく塩化ビニル樹脂系のものを使用しており、誘導加熱により固定用ディスク5と防水シート3とを接合しているが、固定用ディスク5と防水シート3との接合方法はこれに限定されず、例えば固定用ディスク5の上面に防水シート3を重ねた上から注射器などで接着剤や溶剤を充填し、固定用ディスク5の上面と防水シート3の下面とを接着する方法を取ることもできる。
【0043】
図2の実施形態における防水シートの固定方法については、コンクリート下地である下地1の上にポリスチレンフォームである断熱材2(および絶縁シート9)を敷設したあと、ドリル等で断熱材2(および絶縁シート9)に下穴を開ける(下地1には下穴を開けない)以降は、
図1の実施形態と同様である。
【0044】
以上のような防水シートの固定方法をとることで固定用ディスク5がプラグ4に支持された状態で固定されるため、断熱工法の機械固定法において断熱材が沈み込むことを防止でき、固定用ビスの突き上げによる防水層の破損といった危険を回避することができる。また従来断熱材の沈み込み防止のため使用していた高強度の断熱材や無機板といった部材を使用する必要がなく、コストアップや施工の煩雑さも抑制することができる。
【0045】
続いて
図3の実施形態における防水シートの固定方法について説明する。初めにコンクリート下地である下地1の上にポリスチレンフォームである断熱材2(、絶縁シート9)およびポリ塩化ビニル樹脂系の防水シート3を敷設してドリル等で断熱材2(、絶縁シート9)、防水シート3および下地1に下穴を開ける。そのあと下地1に開けられた下穴にプラグ4Cの筒状部42の下筒状部422を挿入し下地1に埋設させる。そして下筒状部422の内部にエポキシ樹脂系接着剤を充填する。断熱材2(、絶縁シート9)および防水シート3に先に開けた下穴にプラグ4Cの上筒状部421の下端より挿入して断熱材2(絶縁シート9)の上面にプラグ4Cのかさ部41が重なるよう配置する。
【0046】
次に防水シート3の上でプラグ4Cのかさ部41の上に上面を塩化ビニル系樹脂層で被覆された鋼板からなる固定用ディスク5を配置する。固定用ディスク5を所定の位置に配置したら固定用ビス6を固定用ディスク5のビス穴から挿入し、プラグ4Cのかさ部41の孔411および上筒状部421、下筒状部422を貫通して下地1に打ち込み固定する。
【0047】
その後は防水シート3と同じくポリ塩化ビニル樹脂系の補強用シート7を固定用ディスク5の上面とその周囲の防水シート3に亘って重ねて配置する。そして溶剤による液溶着により防水シート3と固定用ディスク5の上面および周囲の防水シート3とを溶着接合する。最後に、補強用シート7の端部にシーリング材を塗付して端部をシールする。
【0048】
以上のような防水シートの固定方法をとることで固定用ディスク5がプラグ4に支持された状態で固定されるため、断熱工法の機械的固定工法において断熱材が沈み込むことを防止でき、固定用ビスの突き上げによる防水層の破損といった危険を回避することができる。また従来断熱材の沈み込み防止のため使用していた高強度の断熱材や無機板といった部材を使用する必要がなく、コストアップや施工の煩雑さも抑制することができる。また、プラグ4が二つの部材で構成されているためある程度任意の厚さの断熱材2に対応することができ、水勾配をつけるドレン周りなど、断熱材2の厚みが変わることによってプラグの長さを変更する手間がなく施工しやすい。
【0049】
図5の実施形態における防水シートの固定方法について説明する。本実施形態は下地1、断熱材2、既存防水シート8からなる既存防水層の改修における新規防水シートの固定方法である。ここで下地1はコンクリート下地、断熱材2はポリエチレンフォーム、既存防水シート8はゴム系防水シートであり、下地1と断熱材2および断熱材2と既存防水シート8とは、それぞれ接着剤で固定されている。
【0050】
まず既存防水シート8の上に絶縁シート9を敷設する。プラグ4Dを設置する位置に、プラグ4Dの筒状部42の下端42bを含む下部の外径D2と同等の下穴を、ドリル等を用いて絶縁シート9の上から既存防水シート8と断熱材2とを貫通し下地1に達して形成する。下地1に形成する下穴の深さは、プラグ4Dの筒状部42の下端42bから肩部42dまでの長さと同程度であることが好ましい。
【0051】
ここで絶縁シート9は既存防水シート8の上に新規防水シート3を敷設する際、主に新規防水シートから既存防水シート8への可塑剤の移行を防止するためのものであり、1〜5mm厚みの発泡ポリエチレンシート、ポリエステル繊維やポリプロピレン繊維系の不織布、ポリエチレンを発泡させた格子状ネット等を用いることができる。本実施形態においては発泡ポリエチレンシートにポリエチレンクロスを積層したものを使用した。
【0052】
そして絶縁シート9の上から既存防水シート8と断熱材2とを貫通し下地1に達して形成した下穴にプラグ4Dの筒状部42を挿入する。このとき下地1に形成された下穴の径はプラグ4Dの筒状部42の下部の外径D2と同等であるため、プラグ4Dの筒状部42の肩部42d(外径D1)が下地1の上面にかかり、それ以上深く入らないようになる。そしてプラグ4Dのかさ部41が緩衝シート9の上に重なるよう配置したら、かさ部41の中心の孔411よりエポキシ系接着剤を専用のガンなどを用いて筒状部42の下端42bに向かい注入する。かさ部41の上に必要に応じ緩衝シートを介在させて上面を塩化ビニル系樹脂層で被覆された鋼板からなる固定用ディスク5を配置し、固定用ビス6により下地に固定する。
【0053】
絶縁シート9および固定用ディスク5の上に新規の防水シート3を敷設して、誘導加熱装置を用いて固定用ディスク5の上面を覆う塩化ビニル系樹脂層を溶融させ、固定用ディスク5と新規の防水シート3とを接合する。ここで誘導加熱により固定用ディスク5と防水シート3とを接合しているが、固定用ディスク5と防水シート3との固定方法はこれに限定されず、例えば固定用ディスク5の上面に防水シート3を重ねた上から注射器などで接着剤や溶剤を充填し、固定用ディスク5の上面と防水シート3の下面とを接着する方法を取ることもできる。
【0054】
以上のような防水シートの固定方法をとることで固定用ディスク5がプラグ4に支持された状態で固定されるため、既存断熱防水層の改修における機械的固定工法において断熱材が沈み込むことを防止でき、さらに固定用ビスの突き上げによる防水層の破損といった危険を回避することができる。また従来断熱材の沈み込み防止のため使用していた高強度の断熱材や無機板といった部材を使用する必要がなく、コストアップや施工の煩雑さも抑制することができる。またプラグ4の筒状部42の外径が下地に埋設される下部と断熱材層に囲まれる上部とで異なり、下部の外径が上部の外径より小さく形成されているため、筒状部42の上部と下部の境界にある肩部42dがストッパーの役目を果たし、プラグ4を万一強く打ち込み過ぎても断熱材2が沈み込む恐れがなく安定して固定することができる。
【0055】
なお、本発明は以上説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば各実施形態に使用したプラグ4A〜4Dは他の実施形態に使用することも可能であり、またこの他にも本発明の技術的思想内においてさまざまな形態をとり得ることができる。